説明

昇降装置

【課題】樹木の上端部を伐採するための切断装置を上昇及び下降する昇降装置において、構造が簡単でしかもコンパクトな機構により極めて小型,軽量化して山間部での搬送を容易にし、かつ作業性を向上させると共に、作業者の危険を軽減する。
【解決手段】材質が樹脂材で径の異なる複数のシリンダ20を互いの筒状内に収納すると共に、それぞれのシリンダの外周部にレールとシリンダ上端部にガイド部を設け動作方向の案内手段とし、さらに駆動源30としての空気ポンプの吐出口と吸入口からの回路を、切り替えバルブで密閉された該シリンダの内室に空気圧導入又は内室から吸入する回路を変換する手段とすることにより、簡潔な機構とし小型,軽量化できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生立する樹木が生長すると共に、引き起こされる障害を排除するために、樹木の上端部を伐採切断する切断機構を所定の高さまで上昇、下降させる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の手段として、例えば送電線の直下に生立する樹木が、電線に接触して引き起こされる送電不良等を防止するための一方法として、作業者が樹木に登り所定の高さで伐採する方法が用いられていた。また、人が高所に登ることなく、樹木を所定の高さで伐採する伐採装置も提案されている。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開2000−78934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、樹木に登り上端部を切断する方法は、樹木の登り降りに困難が伴うし、作業者の落下等による危険性を有している。また、特許文献1の装置は自走可能な台車部を伴うものであるとともに、装置構成が複雑なものとなっている。
【0004】
本発明は上記の問題点を除き、地上から簡単に操作が可能で、安全でしかも山間部での運搬が容易に出来る小型、軽量で、さらに安価な切断機構の昇降装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明の手段は、複数の樹脂製で径の異なるシリンダ形状(筒形状)の機枠をそれぞれ内部に収納可能な状態とし、さらに該機枠間で接する機枠下方の周部にシール部材を設け、最小径機枠の上端及び、最大径機枠の下端部を密閉することにより構成される内室に空気を供給又は吸引し、機枠を伸張または収縮させる昇降装置を構成している。
【0006】
さらに、請求項2に記載の発明の手段は、樹木の上端部を切断伐採する切断機構を上昇、下降させる昇降装置において、複数の樹脂製で径の異なるシリンダ形状(筒形状)の機枠をそれぞれ内部に収納可能な状態とし、さらに該機枠間で接する機枠下方の周部にシール部材を設け、最小径機枠の上端及び、最大径機枠の下端部を密閉することにより構成される内室に空気を供給又は吸引し、機枠を伸張または収縮させることで樹木を切断伐採する切断機構を上昇、下降させる昇降装置を構成している。
【0007】
さらに、請求項3記載の発明の手段は、請求項1又は2に記載の発明において、複数のシリンダ形状をなす機枠の外周面に軸心方向と平行に凸状をなす軌道部と、内周面に前記軌道部と係合する凹状の案内部を設けることにより回動を規制し、複数の機枠を伸張または収縮させるものである。
【0008】
さらに、請求項4記載の発明の手段は、請求項1乃至3に記載の発明において、伸張の駆動源を発生させる機構にコンプレッサーを用い、さらに切り替えバルブにより伸張時には複数の機枠により構成された内室へ圧縮空気を供給し、収縮時には内室から吸気するものである。
【0009】
さらに、請求項5記載の発明の手段は、請求項1乃至4のいずれに記載の発明において、切断伐採される樹木と昇降装置とを連結し、固定を目的とした抱持機構を、機枠上に設置するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は次のような効果を奏する。請求項1又は2に記載された発明は、材質が樹脂からなり、径の異なる複数のシリンダを互いの筒内に収納する構成により小型,軽量化が可能で、さらに構成が簡潔で安価な昇降装置となり、山間部での搬送や、伐採作業効率の向上に多大な効果をもたらすことができる。
【0011】
請求項3に記載された発明は、径の異なる複数のシリンダの互いに係合する外周面にシール部材、及び内周面に回動を規制するレール部(軌道部)とガイド溝(案内部)を設けることにより、切断機構の向きを規制し切断方向面を安定させることが可能となると共に、簡潔で小型,軽量化することが可能となり、請求項1又は2と同様の効果をもたらすことできる。
【0012】
請求項4に記載されている発明は、昇降装置の伸張,収縮に用いる空気ポンプの吐出と吸気の作動圧力の差を利用し、切り替えバルブによりそれぞれ伸縮及び収縮作動をさせることにより、簡潔で小型,軽量化することが可能となり、請求項1又は2と同様の効果をもたらすことできる。
【0013】
請求項5に記載されている発明は、昇降装置の上昇,下降方向を安定させる手段として、昇降装置と被伐採切断木の例えば根幹とを連結し固定することにより、簡潔で小型,軽量化することが可能となり、請求項1又は2と同様の効果をもたらすことできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明における昇降装置の立ち木切断時の概要を示したものであり、図2は昇降装置および抱持機構の構成を示したものである。図3は昇降装置内部の詳細構成を示し、図4,図5は昇降装置の動作を示した図である。
【0015】
図1は切断時の主要な構成を示す。昇降装置1の上端には切断機構40が設けられ、下方部には抱持ベルト6が設けられている。切断機構40は地上からの操作により駆動する樹木切断用鋸とロープ42,43により地上から操作される樹木を挟持するクランパ41を有している。さらに昇降装置の下端にはフォーク4a,4bを有したベース2が設けられ、さらにベース2は昇降装置1のシリンダ部20と軸3によりCまたはD方向へ回動可能に係合されている。また機枠20には継手5が設けられ、駆動機構30に接続されたチューブ34と接続されている。初期状態では昇降装置1はB方向に収縮されている。その後立ち木50の近傍の地面にフォーク4a,4bを突き刺し、さらに立ち木50の根幹部を抱持ベルト6で固定する。その後駆動機構30により発生された圧縮空気をチューブ34,継手5を介し昇降装置1の内部に導きA方向へ昇降装置1の上昇を開始させる。その時切断機構40はD方向へ回動した状態で所定の高さまで上昇して停止し、その後C方向へ回動し切断する幹部へ近接させる。その後切断機構40に設けられたロープ42,43を作業者が地上から操作し、クランパ41で立ち木50を挟持し、伐採部50bを切断面50aで切断する。
【0016】
図2は昇降装置1の構成を示す。ベース2の下方には地面に突き刺し固定するためのフォーク4a,4bが下方に向かって突き出し、さらに軸受け部2a,2bがシリンダ部20に設けられた軸3を回動可能に係合している。またシリンダ部の最外周面には内部へ空気圧を導くための継手5が設けられ、またシリンダ部20の最小径シリンダの上端部20aには立ち木を切断する為の切断機構40が取り付けられている。さらにシリンダ部20の側面には軸13a,13bを介しリンク12a,12bの一端が回動可能に係合している。またリンク12a,12bの他端は軸10a,10bを介しT字形状を成すリンク11a,11bの一端が回動可能に係合している。さらにリンク12a,12bの一端はレバー14で結合され、また一端は軸9a,9bを介しV溝を有するクランパ7の一端を回動可能に係合している。クランパ7の両側面には複数の軸穴7aが設けられ、抱持ベルト6が軸8を介し係合されている。
【0017】
図3はシリンダ部20の詳細な構成を示す。上方部が開口され下方部が閉鎖された筒状の最外周シリンダ21の内部には、上方及び下方部が開口されたシリンダ22,23が収納され、さらにシリンダ23の内部には上方部が閉鎖され、下方部が開放されたシリンダ24が挿入されている。またシリンダ22,23,24の長手方向の側面には凸状をなすレール22a,23a,24aが設けられ、さらにシリンダ23の内面にはレール24aを案内するための凹状のガイド溝23bが、シリンダ22の内面にはレール23aを案内するガイド溝22bが、さらにシリンダ21の内面にはレール22aを案内するガイド溝21bが設けられ、シリンダ22,23,24を回動方向が制限し、またA,B方向へ摺動可能に係合されている。一方シリンダ22,23,24の下方外周には、図4で示される様に弾力材よりなるシール22d,23d,24dがシール受け22c,23c,24cの溝に組み込まれ、それぞれ係合するシリンダ21,22,23の内面に常に接するように設けられている。これにより、シリンダ相互に隙間がないようにし、空気が漏れない構造としている。またシリンダ21の外周面にはシリンダ21,22,23,24で構成される密閉された内室Eに貫通した継手5が設けられている。一方シリンダ部20の内室E内にはワイヤー25が設けられ上端はシリンダ24の上端部に、また下端はシリンダ21の下端部に接続されている。
【0017】
図4は駆動機構30及びシリンダ部20の構成を示すと共に、動作を示す。駆動機構30はエンジン31,空気ポンプ32及び切り替えバルブ33より構成され、空気ポンプ32の吐出口32a,吸入口32bは切り替えバルブ33に接続されている。また切り替えバルブ33とシリンダ21に設けられた継手5はチューブ34で接続されている。
【0018】
さらに図4はシリンダ部20の初期状態を示す。エンジン31により駆動された空気ポンプ32はシリンダ部20の内室Eから継手5,チューブ34,切り替えバルブ33を介して空気を吸入し、再び切り替えバルブを介し大気へ放出される。その結果、シリンダ部20を構成するシリンダ21,シリンダ24,シール受け22c,23c,24c,シール22d,23d,24dで密閉された内室Eは負圧となり、シリンダ22,23,24はレール部22a,23a,24a,ガイド溝21b,22b,23bに案内されB方向へ収縮する。この時ワイヤ25は緩んだ状態で収納されている。
【0019】
次の動作を図5で示す。切り替えバルブ33を操作すると、駆動機構30のエンジン31により駆動された空気ポンプ32の吐出口32aからの圧縮空気は、切替バルブ33,チューブ34,継手5を介し、シリンダ部20の内室Eへ導かれる。その際空気ポンプは大気中から切り替えバルブ33を介し、吸入口から空気を吸入する。その結果シリンダ21,24シール受け22c,23c,24c,シール22d,23d,24dから構成された密閉された内室Eが加圧されシリンダ22,23,24をレール22a,23a,24a,ガイド溝21b,22b,23bにより案内してA方向へ上昇せしめる。再度切り替えバルブ33を切り替えると、シリンダ部20は収縮し初期状態に復帰する。この時ワイヤ25は緊張した状態となりシリンダ21,22,23,24への加圧空気によるA方向の負荷を担い飛び出しを防止する。
【0020】
以上実施例としてシリンダ部を構成するシリンダを4部位で構成したが、部位数を増減しても同様の効果が得られる。
【0021】
以上実施例として抱持機構をリンク構成としたが、ワイヤーやカム機構等を用いても同様の効果を得られる。
【0022】
また実施例として駆動機構に、空気ポンプにエンジンを直結した構成としたが、油圧ポンプでも同様の効果があり、さらにエンジンにより発電機を作動させ、電気的にモータを駆動させる構成によっても同様の効果が得られる。
【0023】
本実施の形態に係わる昇降装置によれば、小型,安価,軽量で山間部での運搬が容易となり、作業性が向上するという利点がある。
【0024】
本実施の形態に係わる昇降装置によれば、装置を安定させる為に立ち木の根幹に固定することで、大掛かりな固定装置の必要が無い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明における昇降装置の伐採切断時の概要を示す要部斜視図である。
【図2】本発明における昇降装置の機構構成を示す要部斜視図である。
【図3】本発明における昇降装置におけるシリンダ部の詳細な構成を示す要部斜視図である。
【図4】本発明の昇降装置の動作を示す回路図である。
【図5】本発明の昇降装置の動作を示す回路図である。
【符号の説明】
【0025】
1 昇降装置
2 ベース
2a 軸受
2b 軸受
3 軸
4a フォーク
4b フォーク
5 継手
6 抱持ベルト
7 クランパ
8 軸
9a 軸
9b 軸
10a 軸
10b 軸
11a リンク
11b リンク
12a リンク
12b リンク
13a 軸
13b 軸
14 レバー
20 シリンダ部
20a 端面
21 シリンダ
21b ガイド
22 シリンダ
22a レール
22b ガイド
22c シール受け
22d シール
23 シリンダ
23a レール
23b ガイド
23c シール受け
23d シール
24 シリンダ
24a レール
25 ワイヤ
30 駆動機構
31 エンジン
32 空気ポンプ
32a 吐出口
32b 吸入口
33 切り替えバルブ
34 チューブ
40 切断機構
50 立ち木
50a 切断木
50b 切断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製で複数の径の異なる筒形状をなす機枠をそれぞれ内部に収納可能な構造とし、機枠の下方周部にシール部材を設け、さらに最小径機枠の上端部及び最大径機枠の下端部を密閉し、内部に加圧空気を給気、排気させることにより伸張、縮小動作を行うことを特徴とする昇降装置。
【請求項2】
樹木を切断伐採する切断機構を上昇、下降させる昇降装置において、樹脂製で複数の径が異なる筒形状をなす機枠をそれぞれ内部に収納可能な構成とし、機枠の下方周部にシール部材を設け、さらに最小径機枠の上端部及び最大径機枠の下端部を密閉し、内部に加圧空気を給気、排気させることにより伸張、縮小動作を行うことを特徴とする昇降装置。
【請求項3】
複数の径が異なる機枠の外周に軸芯方向と平行に凸状の軌道部と、さらに機枠の内周面に前記軌道部と係合する凹状の案内部を設け、伸張、収縮時に該機枠の回転防止を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の昇降装置。
【請求項4】
昇降に必要な圧縮空気の発生源であるコンプレッサーの吐出口と吸気口とを切替バルブに接続し、切替バルブにより、該機枠が伸張する時にはコンプレッサーからの吐出空気圧を機枠内に供給し、収縮する時には該機枠内空気をコンプレッサーで吸気口から吸入する回路構成を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の昇降装置。
【請求項5】
切断伐採する樹木と昇降装置を連結し、固定する手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−109815(P2006−109815A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325691(P2004−325691)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(502185618)株式会社高林製作所 (2)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)