説明

昇降装置

【課題】設置に際しての省スペース化・スリム化が図れるとともに全方向に対する高剛性を確保することができ、高精度かつスムーズな昇降動作が可能であり、また、製作コストの低減及び製作の容易性の向上を図ることができる昇降装置を提供する。
【解決手段】下部ベース6上に立設され上下方向に伸縮するシリンダ部5と、シリンダ部5の伸縮により昇降する上部ベース12とを備える昇降装置であって、上部ベース6上に立設される基部側固定子7と、上部ベース12下面に垂設される昇降部側固定子11と、基部側固定子7及び昇降部側固定子11間に配置されるとともにこれら基部側固定子7及び昇降部側固定子11に対して上下方向に摺動可能に係合する可動部15とを有し、シリンダ部5の周囲で螺旋面状を構成する螺旋構造体20を備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の物品を昇降させるための昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々の物品を昇降させるための装置としては、油圧シリンダや空圧シリンダ等のシリンダを上下方向に伸縮させることで物品(昇降物)の支持台などを昇降するものや、このようなシリンダ構造に加え、2つのリンクレバーを交差させ、その交点を回動自在に連結し、これを単独でまたは複数結合して用いるいわゆるシザース式のリンク機構を備え、このリンク機構を上下方向に伸縮させることで支持台などを昇降するもの等がある。
【0003】
また、昇降装置に用いられる構造として、重い負荷の支持などを行うことを可能とする伸縮可能なタワー構造物が特許文献1に示されている。すなわち、本文献においては、互いに嵌め合い結合され螺旋面を形成するように並べられる複数のタワー要素が、順次組み込まれることにより、または順次取り外されることにより伸縮するタワー構造物が示されている。そして、複数のタワー要素が結合するタワー要素複合体に対して、タワー要素を収納するタワー要素マガジンから後続のタワー要素が挿入されることにより、タワー要素複合体が持ち上げられてタワー構造物が伸長する構成となっており、このタワーの先端で重い負荷が支持される。
【特許文献1】特開平5−125858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したような従来のシザース式のリンク機構を備える昇降装置は、リンク機構が折りたたまれることにより支持台などが下降する構造であり、このリンク機構は平面的に折りたたまれる構造となる。このため、該昇降装置を設置するための平面スペースが大きくなる。このように昇降装置の設置スペースが大きくなると、例えば自動車の組立てライン等のように、昇降装置を作業者と共存させる設備へ昇降装置を組み込む場合、作業者による作業スペースが狭くなりその作業を阻害する要因となる。
また、シザース式のリンク機構は、その下部の支持がリンク支持ピン等による支持のみである構造のものが多い。このような構造の場合、該リンク機構において、昇降装置に対して横方向に作用する力を支持するのはリンク支持ピンのみとなるため、昇降装置の上昇時における横剛性が不足することが考えられる。このように横剛性が不足する昇降装置は、昇降の位置合わせに精度を要する場合には適さない。
【0005】
また、特許文献1に開示されているタワー構造物では、複数のタワー要素が螺旋面を形成するように結合されるタワー要素複合体において、螺旋面の方向に作用するずらしや剪断力が分散されることにより、高い横剛性が得られ重い負荷を安定して支持できると考えられるものの、次のような問題がある。すなわち、該タワー構造物においては、タワー要素を収納するタワー要素マガジンを昇降装置の周囲に配置する必要があり、さらに、該タワー要素マガジン内からタワー要素を取り出すための装置が必要となる。このため、構成部品点数が多くなり、その構成が大掛かりとなるので、製作コストの低減や設置に際しての省スペース化を図るのが困難となる。
また、該タワー構造物においては、タワー要素の組込み及び取外しによりタワー構造物の伸縮が行われるため、その伸縮がタワー要素の大きさによる段階的なものとなり、昇降の位置合わせに精度を要する場合には適さない。
【0006】
そこで、本発明は、設置に際しての省スペース化・スリム化が図れるとともに全方向に対する高剛性を確保することができ、高精度かつスムーズな昇降動作が可能であり、また、製作コストの低減及び製作の容易性の向上を図ることができる昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、基部上に立設され上下方向に伸縮するシリンダ部と、該シリンダ部の伸縮により昇降する昇降部とを備える昇降装置であって、前記基部上に立設される基部側固定子と、前記昇降部下面に垂設される昇降部側固定子と、前記基部側固定子及び前記昇降部側固定子間に配置されるとともにこれら基部側固定子及び昇降部側固定子に対して上下方向に摺動可能に係合する可動部とを有し、前記シリンダ部の周囲で螺旋面状を構成する螺旋構造体を備えるものである。
【0009】
請求項2においては、前記可動部を、前記基部側固定子に対して上下方向に摺動可能に係合する下可動子及び前記昇降部側固定子に対して上下方向に摺動可能に係合する上可動子を含む複数の可動子からなる可動子群とし、前記螺旋構造体を、前記昇降部の上昇に伴い、前記昇降部側固定子から前記下可動子にかけて順次螺旋状に伸びる構成としたものである。
【0010】
請求項3においては、前記可動子群を、前記下可動子、前記上可動子及びこれら両可動子に対して上下方向に摺動可能に係合する中可動子により構成し、前記基部側固定子、前記昇降部側固定子及び前記可動子群を、平面視で略重なることなく配設するとともに、それぞれの上下方向の長さが略同一長さとなるように構成し、前記シリンダ部を、その収縮時の上下方向の長さが、前記略同一長さとなるように複数段に構成したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、設置に際しての省スペース化・スリム化が図れるとともに全方向に対する高剛性を確保することができ、高精度かつスムーズな昇降動作が可能となる。
すなわち、シリンダ部の周囲に設けられる螺旋構造体は、昇降装置の基部と昇降部との間の空間内に収まる構成とすることが容易となるので、昇降装置の設置に際しての省スペース化やスリム化を図ることができる。
また、螺旋構造体が、シリンダ部による昇降部の支持に加え、該シリンダ部の周囲にて螺旋面状を構成するように昇降部を支持するので、全方向に対する剛性を高めることができる。つまり、上下方向に対しては、シリンダ部に加え螺旋構造体が昇降部を支持することにより高剛性を得ることができ、水平方向に対しては、螺旋構造体がシリンダ部の周囲で螺旋面状を構成することから、昇降部の上昇時などにおいても、水平方向の全方向に対して高い横剛性を得ることができる。
このように、全方向に対する高剛性が得られることにより、昇降物の重心位置が昇降部上におけるシリンダ部の延長線上にない場合などでも、昇降装置のたわみやねじれを抑制することができるので、たわみ等による影響の少ない高精度かつスムーズな昇降動作が可能となる。これにより、例えば、産業用ロボットを用いる自動組立てライン等における物品の搭載などのような高精度を要する物品の昇降に好適となる。
【0013】
請求項2においては、設置に際しての省スペース化・スリム化が図れ、低床で高揚程での使用が可能となるとともに、昇降部の上昇端状態などにおいても高い横剛性を得ることができる。また、螺旋構造体が昇降部の上昇に伴い順次螺旋状に伸びるので、高精度かつスムーズな昇降動作が確保できる。
【0014】
請求項3においては、製作コストの低減及び製作の容易性の向上を図ることができる。つまり、螺旋構造体における各係合部を、多品種市販されているリニアウェイ等を用いて構成することができるので、昇降物の重量などに応じて各種サイズの昇降装置を容易にかつ安価に製作することが可能となる。また、少ない部品点数により構成することができることからも、製作コストの低減及び製作の容易性の向上を図ることができる。
また、昇降部の下降端状態におけるシリンダ部及び螺旋構造体の高さの均一化を図ることにより、より低床でありかつ高揚程での使用が可能となる。つまり、昇降部の下降端状態においては、シリンダ部が収縮するとともに螺旋構造体が略筒状となり、これらが略同一の高さとなって昇降部を支持する一方、昇降部の上昇端状態においては、シリンダ部が伸長するとともに螺旋構造体が螺旋面状となって昇降部を支持するので、省スペース化・スリム化や高剛性化が図れるとともに、より低床で高揚程での使用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を説明する。
本発明に係る昇降装置は、種々の物品(昇降物)を昇降させるためのものであり、図1に示すように、基部としての下部ベース6上に立設され上下方向に伸縮するシリンダ部5と、該シリンダ部5の伸縮により昇降する昇降部としての上部ベース12とを備えており、該上部ベース12上に載置などされる昇降物を昇降させる。
すなわち、シリンダ部5の下端部が下部ベース6に取り付けられるとともに先端部(上端部)が上部ベース12に取り付けられ、該シリンダ部5が、下部ベース6上で上部ベース12を支持した状態で伸縮することにより、上部ベース12上に載置などされる昇降物を昇降させる。
このシリンダ部5は、図示せぬ油圧ポンプや制御弁などを介して供給される油圧により伸縮する油圧シリンダにより構成される。ただし、これに限定するものではなく、例えば、空気圧により伸縮する空圧シリンダ等のその他の流体圧シリンダや電動シリンダ等を用いることができる。
【0016】
そして、シリンダ部5の周囲には、該シリンダ部5による支持に加え下部ベース6上で上部ベース12を支持するとともに、該シリンダ部5の周囲で螺旋面状を構成する螺旋構造体20が設けられている。
この螺旋構造体20は、基部である下部ベース6上に立設される基部側固定子7と、昇降部である上部ベース12下面に垂設される昇降部側固定子11と、基部側固定子7及び昇降部側固定子11間に配置されるとともにこれら基部側固定子7及び昇降部側固定子11に対して上下方向に摺動可能に係合する可動部15とを有する。
【0017】
前記可動部15は、単数または複数の可動子により螺旋状に構成されるものであり、下部ベース6と上部ベース12との間において、前記基部側固定子7及び昇降部側固定子11とともにシリンダ部5の周囲で螺旋面状を構成する。
そして、基部側固定子7と可動部15との係合及び可動部15と昇降部側固定子11との係合が、それぞれ上下方向に摺動可能であることにより、下部ベース6に対する上部ベース12の昇降が許容される。
【0018】
このように、シリンダ部5の周囲で螺旋面状を構成する螺旋構造体20を備えることにより、設置に際しての省スペース化・スリム化が図れるとともに全方向に対する高剛性を確保することができ、高精度かつスムーズな昇降動作が可能となる。
すなわち、シリンダ部5の周囲に設けられる螺旋構造体20は、昇降装置の基部である下部ベース6と、昇降部である上部ベース12との間の空間内に収まる構成とすることが容易となるので、昇降装置の設置に際しての省スペース化やスリム化を図ることができる。
また、螺旋構造体20が、シリンダ部5による上部ベース12の支持に加え、該シリンダ部5の周囲にて螺旋面状を構成するように上部ベース12を支持するので、全方向に対する剛性を高めることができる。つまり、上下方向に対しては、シリンダ部5に加え螺旋構造体20が上部ベース12を支持することにより高剛性を得ることができ、水平方向に対しては、螺旋構造体20がシリンダ部5の周囲で螺旋面状を構成することから、上部ベース12の上昇時などにおいても、水平方向の全方向に対して高い横剛性を得ることができる。
このように、全方向に対する高剛性が得られることにより、昇降物の重心位置が上部ベース12上におけるシリンダ部5の延長線上にない場合などでも、昇降装置のたわみやねじれを抑制することができるので、たわみ等による影響の少ない高精度かつスムーズな昇降動作が可能となる。これにより、例えば、産業用ロボットを用いる自動組立てライン等における物品の搭載などのような高精度を要する物品の昇降に好適となる。
【0019】
前記螺旋構造体20は、好ましくは次のように構成される。すなわち、螺旋構造体20を構成する前記可動部15は、前記基部側固定子7に対して上下方向に摺動可能に係合する下可動子8及び前記昇降部側固定子11に対して上下方向に摺動可能に係合する上可動子10を含む複数の可動子からなる可動子群により構成される。
そして、螺旋構造体20が、上部ベース12の上昇に伴い、昇降部側固定子11から下可動子8にかけて順次螺旋状に伸びる構成となる。
つまり、螺旋構造体20は、上部ベース12の最も下降した状態(下降端状態)においては、略筒状となってシリンダ部5を包囲するとともに昇降物が載置などされる上部ベース12を支持し、上部ベース12の最も上昇した状態(上昇端状態)においては、略螺旋面状となって昇降物が載置などされる上部ベース12を支持する。
【0020】
具体的には、螺旋構造体20は、前述の如く上部ベース12の下降端状態においてシリンダ部5を包囲する略筒状の状態から、シリンダ部5が伸長されることによる上部ベース12の上昇により、上部ベース12に固定される昇降部側固定子11、該昇降部側固定子11に対して上下方向に摺動可能に係合する上可動子10、該上可動子10及び下可動子8とともに可動子群を構成する中可動子9、基部側固定子7に対して上下方向に摺動可能に係合する下可動子8の順番にそれぞれが順次上昇することにより、略螺旋面状を構成しながら昇降物が載置などされる上部ベース12を支持する。
【0021】
このように、螺旋構造体20を、上部ベース12の下降端状態時における略筒状の状態から上部ベース12の上昇に伴い螺旋状に伸びる構成とすることにより、設置に際しての省スペース化・スリム化が図れ、低床で高揚程での使用が可能となるとともに、上部ベース12の上昇端状態などにおいても高い横剛性を得ることができる。また、螺旋構造体20が上部ベース12の上昇に伴い順次螺旋状に伸びるので、高精度かつスムーズな昇降動作が確保できる。
【0022】
以下、図1〜図4に示す、本発明に係る昇降装置の一実施形態に即して説明する。
本実施形態における昇降装置においては、下部ベース6及び上部ベース12が、それぞれ略正八角形の盤状に形成され、これらが略同一の大きさに構成される。そして、下部ベース6及び上部ベース12が平面視で略重なるように配置された状態で、下部ベース6上の略中央部にシリンダ部5が立設される。
【0023】
シリンダ部5は、前述の如く油圧シリンダにより構成され、下部ベース6上に固設される外筒部5aと、該外筒部5a内に上下方向に摺動可能に収納される内筒部5bと、該内筒部5b内に上下方向に摺動可能に収納されるとともにその先端部が上部ベース12下面に固定されるロッド部5cとを有するいわゆる二段のテレスコープシリンダに構成される。
【0024】
また、本実施形態における螺旋構造体20について、基部である下部ベース6に固定される基部側固定子7は、平面断面視で略T字状に形成される基部固定ベース7aを基体として構成され、下部ベース6上においてシリンダ部5の一側(図4における右側)に配置される。基部側固定子7は、その基部固定ベース7aの一端部に、下可動子8を摺動可能に係合させるための上下方向の案内部としての一段目リニアレール1aを有している。
【0025】
一方、昇降部である上部ベース12に固定される昇降部側固定子11は、略柱状に形成される昇降部固定ベース11aを基体として構成され、上部ベース12下面においてシリンダ部5に対して基部側固定子7と同じ側(図4における右側)の位置であって該基部側固定子7と平面視で重ならないように配置構成される。昇降部側固定子11は、その昇降部固定ベース11aの一端部に、上可動子10を摺動可能に係合させるための上下方向の案内部としての四段目リニアレール4aを有している。
【0026】
基部側固定子7に対して上下方向に摺動可能に係合する下可動子8は、側面視略平行四辺形状に形成されるとともに(図2参照)、平面断面視略T字状に形成される板状部材である下可動ベース8aを基体として構成され(図4参照)、シリンダ部5の他の一側(図4における上側)において、基部側固定子7に対して平面視で略直角となるように隣接配置される。
そして、下可動子8は、その下可動ベース8aの一端部に、基部側固定子7が有する一段目リニアレール1aと摺動可能に係合する摺接部としてのリニアベアリング1bを有しており、該リニアベアリング1bが一段目リニアレール1aに係合することにより、下可動子8が基部側固定子7に対して上下方向に摺動可能に構成される。
【0027】
また、昇降部側固定子11に対して上下方向に摺動可能に係合する上可動子10は、前記下可動子8と同様にして、下可動ベース8aと略同一形状である上可動ベース10aを基体として構成され、該下可動子8とシリンダ部5に対して略対称となる側(図4における下側)に配置される。つまり、下可動子8と上可動子10とは、平面視においてシリンダ部5を挟んで対向するように配置される。
そして、上可動子10は、その上可動ベース10aの一端部に、昇降部側固定子11が有する四段目リニアレール4aと摺動可能に係合する摺接部としてのリニアベアリング4bを有しており、該リニアベアリング4bが四段目リニアレール4aに係合することにより、上可動子10が昇降部側固定子11に対して上下方向に摺動可能に構成される。
【0028】
そして、下可動子8と上可動子10との間であってシリンダ部5の他側(図4における左側)、即ち平面視において基部側固定子7及び昇降部側固定子11とシリンダ部5を挟んで反対側には、中可動子9が配置されている。
中可動子9は、略柱状に形成される中可動ベース9aを基体として構成され、該中可動ベース9aの下可動子8側の端部に、該下可動子8を摺動可能に係合させるための上下方向の案内部としての二段目リニアレール2aを有している。一方、中可動ベース9aの上可動子10側の端部に、該上可動子10を摺動可能に係合させるための上下方向の案内部としての三段目リニアレール3aを有している。これにより、中可動子9は、その一側に配置される下可動子8に対して上下方向に摺動可能に係合するとともに、その他側に配置される上可動子10に対して上下方向に摺動可能に係合する。
【0029】
すなわち、下可動子8は、その下可動ベース8aの中可動子9側に二段目リニアレール2aと上下方向に摺動可能に係合する摺接部としてのリニアベアリング2bを有しており、これら二段目リニアレール2a及びリニアベアリング2bを介して下可動子8及び中可動子9が互いに摺動可能に構成される。
また、上可動子10は、その上可動ベース10aの中可動子9側に三段目リニアレール3aと上下方向に摺動可能に係合する摺接部としてのリニアベアリング3bを有しており、これら三段目リニアレール3a及びリニアベアリング3bを介して上可動子10及び中可動子9が互いに摺動可能に構成される。
つまり、本実施形態においては、複数の可動子からなる可動子群である可動部15が、下可動子8、上可動子10及びこれら両可動子8・10に対して上下方向に摺動可能に係合する中可動子9により構成されている。
【0030】
このような構成の螺旋構造体20においては、下側ベース6に固定される基部側固定子7から平面視で反時計回りに(図4に示す底面断面視においては時計周りに)、該基部側固定子7に対して一段目リニアレール1a及びリニアベアリング1bを介して上下方向に摺動可能に係合する下可動子8、該下可動子8に対して二段目リニアレール2a及びリニアベアリング2bを介して上下方向に摺動可能に係合する中可動子9、該中可動子9に対して三段目リニアレール3a及びリニアベアリング3bを介して上下方向に摺動可能に係合する上可動子10、該上可動子10に対して四段目リニアレール4a及びリニアベアリング4bを介して上下方向に摺動可能に係合するとともに上部ベース12に固定される昇降部側固定子11が、シリンダ部5を取り囲むように平面視で略重なることなく順に配設されている。
【0031】
そして、これら基部側固定子7、昇降部側固定子11及び上・中・下可動子10・9・8により構成される可動子群は、それぞれの上下方向の長さが略同一長さとなるように構成されている。すなわち、図3に示すように、上部ベース12の下降端状態においては、基部側固定子7、昇降部側固定子11及び上・中・下可動子10・9・8それぞれの上端部が略同じ高さとなり、これらで構成される螺旋構造体20が下部ベース6上でシリンダ部5を包囲する略筒状を構成する。
【0032】
また、上部ベース12の下降端状態において、シリンダ部5も、その収縮時の上下方向の長さが、前記略同一長さとなるように構成される。つまり、前述の如く、基部側固定子7、昇降部側固定子11及び可動子群の上下方向の長さが略同一長さとなるように構成される螺旋構造体20に対して、シリンダ部5を、その収縮時の高さが略同じとなるように構成することにより、上部ベース12の下降端状態におけるシリンダ部5及び螺旋構造体20の高さの均一化を図っている。
【0033】
本実施形態においては、シリンダ部5を構成する外筒部5a、内筒部5b及びロッド部5cを、それぞれ略同一長さ(シリンダ部5の最伸長時の約3分の一の長さ)とすることにより、該シリンダ部5の収縮時の高さが上部ベース12の下降端状態における螺旋構造体20の高さと略同一となるように構成されている。
なお、シリンダ部5の構成は、本実施形態に限定するものではなく、上部ベース12の下降端状態において螺旋構造体20の高さとの均一化が図れるものであればよい。
【0034】
また、下部ベース6と上部ベース12との間であって螺旋構造体20の外側(本実施形態においては中可動子9の外側)には、昇降装置上方への各種アクチュエータ等の取付けを考慮し、配線や配管などを通すための支持案内部13が設けられている。つまり、支持案内部13は中空柱状に構成され、該支持案内部13の下端部から、あるいは下部ベース6を貫通させて該下部ベース6の下面側から、配線などを支持案内部13内に通し、該支持案内部13の上端部、あるいは上部ベース12を貫通させて該上部ベースの上面側から、配線などを延出させる。
ただし、この支持案内部13は、上部ベース12の昇降に追従するとともに、該上部ベース12の下降端状態においてシリンダ部5及び螺旋構造体20の高さの均一化の妨げとならないように、収縮可能に複数段(本実施形態においては三段)に構成される。なお、図1においては、便宜上支持案内部13の図示を省略している。
【0035】
以上のように構成される昇降装置における螺旋構造体20は、上部ベース12の下降端状態における略筒状の状態から、シリンダ部5の伸長による上部ベース12の上昇に伴い、次のような態様により螺旋状に伸びて行く。
すなわち、図3に示す上部ベース12の下降端状態から、シリンダ部5の伸長により上部ベース12が上昇し始めると、まず、該上部ベース12に固定されている昇降部側固定子11が、その四段目リニアレール4aを上可動子10のリニアベアリング4bに摺動させながら上昇する。
【0036】
昇降部側固定子11の次には、上可動子10が、そのリニアベアリング3bを中可動子9の三段目リニアレール3aに摺動させながら上昇する。ここで、昇降部側固定子11の四段目リニアレール4aの下端部には、上可動子10のリニアベアリング4bの下面側に当接するストッパ4cが設けられており、該ストッパ4cにより昇降部側固定子11と上可動子10との摺動範囲が制限されるとともに、該ストッパ4cがリニアベアリング4bの下面側に当接してからは昇降部側固定子11の上昇に伴い上可動子10が上昇する。
【0037】
上可動子10の次には、中可動子9が、その二段目リニアレール2aを下可動子8のリニアベアリング2bに摺動させながら上昇する。ここで、中可動子9の三段目リニアレール3aの上端部には、上可動子10のリニアベアリング3bの上面側に当接するストッパ3cが設けられており、該ストッパ3cにより上可動子10と中可動子9との摺動範囲が制限されるとともに、該ストッパ3cがリニアベアリング3bの上面側に当接してからは上可動子10の上昇に伴い中可動子9が上昇する。
【0038】
中可動子9の次には、下可動子8が、そのリニアベアリング1bを下部ベース6に固定されている基部側固定子7の一段目リニアレール1aに摺動させながら上昇する。ここで、中可動子9の二段目リニアレール2aの下端部には、下可動子8のリニアベアリング2bの下面側に当接するストッパ2cが設けられており、該ストッパ2cにより中可動子9と下可動子8との摺動範囲が制限されるとともに、該ストッパ2cがリニアベアリング2bの下面側に当接してからは中可動子9の上昇に伴い下可動子8が上昇する。
【0039】
そして、下可動子8の上昇が停止することにより、上部ベース12の上昇が停止する。この下可動子8の上昇は、一段目リニアレール1aの上端部に設けられるストッパ1cにより規制される。すなわち、基部側固定子7の一段目リニアレール1aの上端部には、下可動子8のリニアベアリング1bの上面側に当接するストッパ1cが設けられており、該ストッパ1cにより下可動子8の基部側固定子7に対する摺動範囲が制限されている。
【0040】
このように、上部ベース12の上昇に伴い、螺旋構造体20は、昇降部側固定子11、上可動子10、中可動子9、下可動子8の順番で順次上昇することにより、螺旋面状を構成するとともに上部ベース12を支持する。
逆に、上部ベース12が、その上昇端状態から下降する場合は、上昇する過程とは逆の順番で螺旋構造体20が下降して行く。すなわち、上部ベース12の下降に伴い、下可動子8、中可動子9、上可動子10、昇降部側固定子11の順番で順次下部ベース6に当接して行き、上部ベース12の下降端状態において螺旋構造体20が略筒状となる。
【0041】
以上のように構成される本実施形態の昇降装置においては、製作コストの低減及び製作の容易性の向上を図ることができる。つまり、螺旋構造体20において、案内部としてのリニアレール及び摺接部としてのリニアベアリングにより構成される各係合部を、多品種市販されているリニアウェイ等を用いて構成することができるので、昇降物の重量などに応じて各種サイズの昇降装置を容易にかつ安価に製作することが可能となる。また、少ない部品点数により構成することができることからも、製作コストの低減及び製作の容易性の向上を図ることができる。
また、上部ベース12の下降端状態におけるシリンダ部5及び螺旋構造体20の高さの均一化を図ることにより、より低床でありかつ高揚程での使用が可能となる。つまり、上部ベース12の下降端状態においては、シリンダ部5が収縮するとともに螺旋構造体20が略筒状となり、これらが略同一の高さとなって上部ベース12を支持する一方、上部ベース12の上昇端状態においては、シリンダ部5が伸長するとともに螺旋構造体20が螺旋面状となって上部ベース12を支持するので、省スペース化・スリム化や高剛性化が図れるとともに、より低床で高揚程での使用が可能となる。
【0042】
以上のように構成される本発明に係る昇降装置は、重い負荷の支持を可能とする高い支持剛性を得るため、鉄鋼製であることが好ましいが、例えば強化樹脂製など、その用途などに応じて所望の支持剛性が得られる素材により構成することができる。
【0043】
なお、螺旋構造体20における各係合部は、省スペース化・スリム化を図りつつ高い剛性を得るためには、本実施形態のように、基部側固定子7において一段目リニアレール1aを下部ベース6に一体的に固設し、昇降部側固定子11において四段目リニアレール4aを上部ベース12に一体的に固設することが好ましいが、昇降部側固定子11、上・中・下可動子10・9・8、基部側固定子7それぞれが前述の如く摺動可能に構成されればよく、各係合部におけるリニアレールとリニアベアリングとの配置関係などは本実施形態に限定するものではない。
すなわち、例えば、昇降部側固定子11と上可動子10との係合部において、四段目リニアレール4aを上可動子10に設けるとともに、該四段目リニアレール4aに係合するリニアベアリング4bを昇降部側固定子11に設けてもよい。この際、低床で高揚程での使用が可能となるように、リニアベアリングを設ける位置やその形状、また、リニアレールのストッパを設ける位置などが適宜決められる。
また、螺旋構造体20における各係合部を構成するリニアレールやリニアベアリング等は、本実施形態のように、別部材のものを螺旋構造体20の各構成要素における基体、即ち基部側固定子7における基部固定ベース7a等と一体的に設ける構成に限らず、螺旋構造体20の各構成要素において一体構造物として構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の昇降装置を示す全体鳥瞰図。
【図2】同じく昇降部の上昇端状態を示す側面図。
【図3】同じく昇降部の下降端状態を示す側面図。
【図4】図3におけるA−A矢視断面図。
【符号の説明】
【0045】
1a 一段目リニアレール
2a 二段目リニアレール
3a 三段目リニアレール
4a 四段目リニアレール
5 シリンダ部
6 下部ベース
7 基部側固定子
8 下可動子
9 中可動子
10 上可動子
11 昇降部側固定子
12 上部ベース
15 可動部
20 螺旋構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部上に立設され上下方向に伸縮するシリンダ部と、該シリンダ部の伸縮により昇降する昇降部とを備える昇降装置であって、
前記基部上に立設される基部側固定子と、前記昇降部下面に垂設される昇降部側固定子と、前記基部側固定子及び前記昇降部側固定子間に配置されるとともにこれら基部側固定子及び昇降部側固定子に対して上下方向に摺動可能に係合する可動部とを有し、前記シリンダ部の周囲で螺旋面状を構成する螺旋構造体を備えることを特徴とする昇降装置。
【請求項2】
前記可動部を、前記基部側固定子に対して上下方向に摺動可能に係合する下可動子及び前記昇降部側固定子に対して上下方向に摺動可能に係合する上可動子を含む複数の可動子からなる可動子群とし、
前記螺旋構造体を、前記昇降部の上昇に伴い、前記昇降部側固定子から前記下可動子にかけて順次螺旋状に伸びる構成としたことを特徴とする請求項1記載の昇降装置。
【請求項3】
前記可動子群を、前記下可動子、前記上可動子及びこれら両可動子に対して上下方向に摺動可能に係合する中可動子により構成し、
前記基部側固定子、前記昇降部側固定子及び前記可動子群を、平面視で略重なることなく配設するとともに、それぞれの上下方向の長さが略同一長さとなるように構成し、
前記シリンダ部を、その収縮時の上下方向の長さが、前記略同一長さとなるように複数段に構成したことを特徴とする請求項2記載の昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−290587(P2006−290587A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115888(P2005−115888)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)