説明

昇降装置

【課題】 段差解消機を使用する際、テーブル上に乗り込んだ車椅子の両サイドと後方とをコ字状の手摺りにてガードし、その手摺りを、使用しない場合は邪魔にならないようピット内に格納する。
【解決手段】 手摺りは、スライドテーブルに対し、角パイプ状をしたインナーリンク11aの両側面にプレート状のアウターリンク11b、11bを沿わせてX状に交叉し、交点を枢着することにより形成されたX型リンク11で連結する。X型リンクは、X型リンク11におけるインナーリンク11aの真下に当たる部位に配置した駆動歯車20に、一端がX型リンク11の枢着軸14に連結された支持軸16に設けられているラック21を歯合させ、更に駆動回転軸18を抱き込むように保持するブラケット22で歯合状態を維持可能とした作動部材により開閉動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車椅子にて家への出入りを補助するためにポーチやベランダ、或いは縁側、玄関の叩きなどに設置される段差解消機の手摺り(安全柵)用として好適利用できる昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、段差解消機としては、特許文献1に記載されている移動式と、特許文献2或いは特許文献3に記載されている設置式とが提案されている。
又、特許文献4や特許文献5に記載のように、昇降テーブルの左右、或いは周囲に昇降自在なガイドやネットを備えたテーブルリフターがも知られている。
【0003】
特許文献1に記載の移動式段差昇降機は、手押し台車に昇降可能な保持板を組み付け、保持板にて支持した車椅子をリフトアップさせたまま移動、及び所望高さまで持ち上げ可能としたものである。
そして前記保持板は、車椅子のフレームを保持するフレーム保持板と、車椅子の車輪を保持する車輪保持板とで構成されており、車輪保持板はフレーム保持板に畳まれた状態で収納され、作動時には前方へ張り出し可能となっており、手摺りは付属されていない。
【0004】
特許文献2に記載の設置式段差解消機は、ネジ送り機構によって水平昇降移動可能なテーブルを設置し、そのテーブルに乗り込んだ車椅子を持ち上げて可能としたもので、テーブルの両サイドには手摺りが取り付けられている。
特許文献3に記載の設置式段差解消機も、水平昇降移動可能なテーブルを備え、そのテーブルに乗り込んだ車椅子を持ち上げ可能に構成され、テーブルの両サイドには手摺りが取り付けられている。
そしてこの設置式段差昇降機では、上面に車椅子走行用のレールが敷かれ、任意の角度に回転可能なターンテーブル式が採用されている。
【0005】
特許文献4に記載のテーブルリフターにあっては、断面L状のガイド底面を垂直に立設した上方押し上げ機構(立設シリンダや圧縮バネ)にてガイドを直接昇降移動させる構造となっており、特許文献5に記載のテーブルリフターにあっては、ネットをテーブル昇降用の伸縮リンク側面に係止させて持ち上げる構造となっている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−116921号公報
【特許文献2】特開平9−108268号公報
【特許文献3】特許第2927749号公報
【特許文献4】特開平8−337395号公報
【特許文献5】実開平3−85390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の移動式段差解消機は、設置、操作、或いは片付け等をする介添え人が必要であるが、不使用時には邪魔にならないよう片付けておくことが可能であるばかりか、車椅子はリフトアップ時にフォークで確実に支持されるので、手摺りは不要である。
特許文献2に開示の設置式段差解消機は、テーブルを下死点まで降ろしても、テーブルの両サイドに昇降装置や手摺りが突設されたまま残るし、特許文献3に記載の設置段差解消機は、テーブルの下に昇降装置を格納しなくてはならないので、テーブルがフロア面から持ち上がった状態でストップし、それ以上テーブルを下げることができないので、フロアとテーブルとの間に段差が形成されてしまう。
テーブルや昇降装置を、フロアに堀設したピット内に格納可能に構成すれば、移動できない設置型であっても不使用時でも邪魔にはならない。
そうなると手摺も一緒に格納してしまいたいところではあるが、例えば特許文献4に記載のテーブルリフターでは、上方押し上げ機構のストロークがテーブルの昇降高さには到底及ばないし、上方押し上げ機構をテーブルに取り付けて、手摺りをテーブルの上方まで突設させるようにすると、常時垂直姿勢の押し上げ機構がテーブルの下方へ突出してしまう。
又、特許文献5に記載の構造では、手摺りをテーブルより高い位置まで上げることは構造上不可能である。
このように、これまでは手摺りのような幅の狭い部材専用、或いは手摺りを効率よく格納する手段がないため、手摺りを着脱式とするか、撤廃してしまうかの二者選択を強いられてしまっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、段差解消機の手摺り昇降用として好適利用できる昇降装置であって、その構成は、被昇降体とベースとを、角パイプ状をしたインナーリンクの両側面にプレート状のアウターリンクを沿わせてX状に交叉し、交点を枢着することにより形成されたX型リンクによって連結し、そのX型リンクの枢着された部分におけるインナーリンクの少なくとも下面に切り欠き窓を設け、インナーリンクの真下に当たる任意部位と、前記X型リンクを枢着している枢着軸におけるインナーリンクの貫通部分との相互間に、それら両部位間の距離を可変とする作動部材を設けたことにある。
そして前記作動部材は、支持軸に設けたラックを、ベースの任意部位に設けられた駆動歯車に対して常時歯合可能に配置したものとすることができ、その駆動歯車と支持軸のラックとを常時噛み合い可能とする手段としては、駆動軸を抱きかかえるように保持するブラケットを、駆動歯車の駆動軸に対して回動自在に取り付けることにより達成できる。
又、前記作動部材にラックピニオン式の機械的手段を採用した場合は、駆動回転軸の両端に取り付けられた駆動歯車で個々に作動部材を駆動し、それらの作動部材でコ字状をした被昇降体の平行する左右二辺を昇降動作するようにもできる。
【発明の効果】
【0009】
角パイプ状のインナーリンク両側面にプレート状のアウターリンクを沿わせたX型リンクに対し、アウターリンク間において枢着軸と作動部材とが連結されているので、X型リンクと作動部材とがX型リンクの幅内に垂直配置され、被昇降体が手摺りのように幅が狭く長尺であっても、その被昇降体の幅内に収めることができる。
又、被昇降体を降ろした状態で、昇降装置を薄く折り畳むことができる。
そして前記作動部材は、ラックをベースの任意部位に設けられた駆動歯車に対して常時歯合可能に配置したものとすれば、確実に作動するので信頼性に富むし、駆動歯車と支持軸のラックとを常時噛み合い可能とする手段として、支持軸を抱きかかえるように保持するブラケットを、駆動歯車の駆動回転軸に対して回動自在に取り付ければ、噛み合い状態が保証されるし、駆動回転軸の両端に取り付けられた駆動歯車で個々に作動部材を駆動し、それらの作動部材でコ字状被昇降体の平行する二辺を昇降動作するようにすれば、コ字状被昇降体における左右の同期が図られ、被昇降体を水平維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る昇降装置が採用された段差解消機の実施例を図面に基づいて説明する。
図1及び図2において、1はピット枠であり、このピット枠1は、玄関の叩きなど、フロアに堀設したピット内に、開口上面をフロアのレベルに合致するよう設置される。
このピット枠1の内底面にはベースフレーム2が固定され、ベースフレーム2には、ベーステーブル3が、開閉動作するX型リンク4を介し、前記ベースフレーム2に対して真上方向へ昇降移動可能に組み付けられている。
前記X型リンク4は、モータ駆動されるスクリュー式シリンダ5によって開閉動作されるようになっている。
【0011】
前記ベーステーブル3には、そのベーステーブル3に対して前方へ摺動可能なスライドテーブル6が組み付けられており、スライドテーブル6の裏面にはラック7が取り付けられている。
このラック7には、ベーステーブル3に装備したモータ8の軸に取り付けられているピニオン歯9が歯合されていて、前記スライドテーブル6を、前記モータ8の回転力で前方へ摺動させることができ、これらベーステーブル3とスライドテーブル6とによりテーブルが構成されている。
又、前記スライドテーブル6の外縁には、両側と後側の3辺にわたってコ字状に連続した被昇降体である手摺り10が、真上方向へ昇降可能に組み付けられている。
この手摺り10と前記スライドテーブル6との相互間には、X型リンク11の開閉動作によりスライドテーブル6に対して手摺り10を持ち上げ、或いは押し下げる昇降装置12が設けられている。
【0012】
ここで前記した昇降装置12について説明すると、被昇降体である手摺り10の上縁とべースとなるスライドテーブル6の側縁部とを、図3及び図4に示すように、角パイプ状をしたインナーリンク11aの両側面にプレート状をした一対のアウターリンク11b,11bを沿わせてX状に交叉した交点を枢着して構成された前記X型リンク11によって、平行する左右2辺をそれぞれを連結し、前記各枢着部においてインナーリンク11aの上下面に切り欠き窓13を設け、アウターリンク11b、11b間の枢着軸14に継ぎ手部材15を連結し、且つその継ぎ手部材15に延設された支持軸16を、下側の切り欠き窓13から下方へ突出させてある。
即ち、支持軸16は、継ぎ手部材15を介してインナーリンク11aの領域内において枢着軸14に連結され、前記切り欠き窓13を、継ぎ手部材15がインナーリンク11aの上下プレート部分に対する逃げとして機能するようになっている。
尚、アウターリンク11b,11bは、連結板11c、11cで上縁同士、或いは下縁同士を連結し、断面をコ字状に形成することによって補強が図られている。
【0013】
ベーステーブル3上にはモータ17が横置き配置されると共に、そのモータ17と平行に駆動回転軸18が設けられており、前記モータ17と駆動回転軸18とは、歯車伝達機構19により、回転力を伝達可能に連結されている。
前記駆動回転軸18の両端には、前記X型リンク11におけるインナーリンク11aの真下に当たる部位に駆動歯車20、20がそれぞれ取り付けられていると共に、それらの駆動歯車20、20に、前記支持軸16の側面に設けられたラック21を常時歯合させるべく、駆動軸を抱き込むように保持するブラケット22が取り付けられている。
ブラケット22は、支持軸16の軸を中心に回動自在に取り付けられ、L状の折り曲げ部分で、支持軸16におけるラック21が設けられている側と反対側を、その支持軸16が前記折り曲げ部分に対して互いに摺動可能となるように保持する構造となっている。
【0014】
昇降装置12がこのように形成されることで、X型リンク11と支持軸16、及び駆動歯車20などが、X型リンクの真下に当たる領域に垂直配置されるので、昇降装置12を手摺り10の幅内に納まるよう組み付けることができる。
又左右の昇降装置12は、駆動回転軸18によって同期が図られている。
更に前記手摺り10は、昇降装置12がむき出しにならないよう外側面がカバー23にて覆われており、又、ベーステーブル3の下方においても、X型リンク4を隠すために全周が蛇腹24にて覆われている。
【0015】
前記スライドテーブル6及び手摺り10の下死点は、いずれも上縁がピット開口面と同レベルの高さと一致するように設定されているが、ベーステーブル3と手摺り10の上死点及びそれらのリフトアップ高さ、スライドテーブル6の摺動量等は設置環境により任意に設定できる。
【0016】
このように形成された段差解消機は、ベーステーブル2と手摺り10とを下死点まで降ろすと、図5に示すように、スライドテーブル6と手摺り10の上面とが図示しないフロアと同一レベルとなるように畳まれ、段差解消機全体がピット内に収容され、スライドテーブルと手摺りとによってピットの開口面は閉塞される。
車椅子(図示せず)をスライドテーブル6の上に乗り込ませたら、上昇スイッチ(図示せず)を押し、ベーステーブル3上のモータ17を作動させて手摺り10を上昇させる(図6)。
次に左右及び後側を手摺り10にてガードした状態でベーステーブル2が上昇し(図7)、所定の高さまでリフトアップしたら、スライドテーブル6が前進し、車椅子が床上に直接乗り移り可能となる。
【0017】
車椅子が床上に乗り移ったら、下降スイッチ(図示せず)を押し、次にモータ6が逆転し、スライドテーブル6が後退し、ベーステーブル2が下がる。
続いて最下位置にて手擦り10が下がり、前記とは逆の動作で段差解消機全体をピット内に収容する。
通常はこの状態で待機させておき、車椅子を使用したい場合は前記の動作を繰り返えせばよいし、使用しない場合、待機状態のまま放置しておいても邪魔にはならない。
前記段差解消機の動作は、予め記憶させておいたプログラムに従って実行される。
【0018】
尚、実施例に示した段差解消機のテーブルは、ベーステーブルにスライドテーブルが前方へ摺動可能に組み付けられているが、スライドテーブルを省略することもできる。
又、ベーステーブルや手摺りの昇降動作、スライドテーブルを摺動させる機構は実施例に限定されるものでなく、周知の機構を採用することができる。
【0019】
本発明の昇降装置は、X型リンクと作動部材とを垂直面上に配置し、被昇降体が手摺りのように幅が狭く長尺であっても、その被昇降体の幅内にて薄く折り畳み可能とするものであって、インナーリンクに設ける切り欠き窓は、少なくとも支持軸を突出させる下側のみで充分ではあるが、実施例のように継ぎ手部材との干渉を避けるために上側にも設けることができ、単独(片側だけ)で使用の場合、作動部材にはラックピニオン式の機械的手段以外に油圧、空気圧、ネジ送り機構を利用した各種シリンダを採用することが可能である。
そして複数の作動部材が同期操作可能であれば、コ字状以外に、両サイドのみ、或いはテーブルの回りを囲む四角形に形成された手摺りにも適用されるし、手摺り以外に応用しても差し支えない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る段差昇降機の正面説明図である。
【図2】本発明に係る段差昇降機の平面説明図である。
【図3】昇降装置の平面説明図である。
【図4】(a)は昇降装置の正面説明図であり、(b)は駆動歯車とラックとの噛合部をX型リンクの枢着部側より見た説明図である。
【図5】段差昇降機の動作説明のうち、装置全体をピット内に収容し、いつでも車椅子の乗り込みを可能とする不使用時の状態を示す説明図である。
【図6】段差昇降機の動作説明のうち、手摺りを上昇させた状態を示す説明図である。
【図7】(a)は段差昇降機の動作説明のうち、テーブル(ベーステーブル)を上昇させた状態を示す説明図であり、(b)はX型リンクの枢着部分の説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1・・ピット枠、2・・ベースフレーム、3・・ベーステーブル、4・・X型リンク、5・・スクリュー式シリンダ、6・・スライドテーブル、7・・ラック、8・モータ、9・・ピニオン歯、10・・手摺り、11・・X型リンク、11a・・インナーリンク、11b・・アウターリンク、11c・・連結板、12・・昇降装置、13・・切り欠き窓、14・・枢着軸、15・・継ぎ手部材、16・・・支持軸、17・モータ、18・・駆動回転軸、19・・歯車伝達機構、20・・駆動歯車、21・・ラック、22・ブラケット、23・・カバー、24・・蛇腹。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被昇降体とベースとを、角パイプ状をしたインナーリンクの両側面にプレート状のアウターリンクを沿わせてX状に交叉し、交点を枢着することにより形成されたX型リンクによって連結し、そのX型リンクの枢着された部分におけるインナーリンクの少なくとも下面に切り欠き窓を設け、インナーリンクの真下に当たる任意部位と、前記X型リンクを枢着している枢着軸におけるインナーリンクの貫通部位との相互間に、それら両部位間の距離を可変とする作動部材を設けたことを特徴とする昇降装置。
【請求項2】
前記作動部材が、ラックを、ベースの任意部位に設けられた駆動歯車に対して常時歯合可能に配置したラックピニオン式の機械的手段である請求項1に記載の昇降装置。
【請求項3】
駆動歯車と駆動軸のラックとを常時噛み合い可能とする手段として、駆動軸を抱きかかえるように保持するブラケットを、駆動歯車の駆動軸に対して回動自在に取り付けた請求項2に記載の昇降装置。
【請求項4】
駆動回転軸の両端に取り付けられた駆動歯車で、ラックピニオン式の機械的手段を採用した作動部材を個々に駆動し、それらの作動部材でコ字状に形成された被昇降体の平行する二辺を昇降動作するようにした請求項2又は3に記載の昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−119122(P2007−119122A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310387(P2005−310387)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(390018326)株式会社スギヤス (35)