説明

昇降装置

【課題】リンクにより天板を平行に昇降させる昇降装置において、リンク同士での固定により天板を任意高さで固定できるようにすることを目的とする。
【解決手段】基台18と天板12とを連結して平行リンク機構を構成する第1リンク21及び第2リンク22を有し、第1リンク21には円弧状部21Cが形成され、第2リンク22には第1リンク21の揺動に伴い円弧状部21C上を移動可能な遊星ギヤ14(連動部)と、該遊星ギヤ14を固定することで第1リンク21を固定可能な固定手段16とが設けられている。平行リンク機構により、天板12を基台18と平行に昇降させることが可能であり、固定手段16により遊星ギヤ14を固定することで、リンク同士を互いに固定することができ、これにより天板12を任意高さで固定することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の昇降装置として、復帰ばねの押付力により、回動脚側に設けられた可動係止爪を、基台側に設けられた逆止爪の爪部に係合させることで、回動脚をその広がり方向においてロックし、該回動脚の一端にヒンジ結合されたテーブルを任意高さ位置で機械的に固定することが可能な構成が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭63−208500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来例では、テーブルを任意高さで機械的に固定するために、可動係止爪の係合対象である逆止爪を、回動脚以外の部位に別途設ける必要があった。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、リンクにより天板を平行に昇降させる昇降装置において、リンク同士での固定により天板を任意高さで固定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、一端が基台に枢着されると共に他端が天板に枢着され、前記一端と前記他端との間に円弧状部が形成された第1リンクと、該第1リンクと並列に配設され、一端が前記基台に枢着されると共に他端が前記天板に枢着されて前記第1リンクと共に平行リンク機構を構成する第2リンクと、該第2リンクに設けられ、前記第1リンクの揺動に伴い前記円弧状部上を移動可能に構成され前記第1リンクと互いに連動する連動部と、前記第2リンクに設けられ、前記連動部を任意に固定可能に構成され、該連動部の固定により前記第1リンクを固定可能な固定手段と、を有することを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の昇降装置では、基台、天板、第1リンク及び第2リンクにより、4節の平行リンク機構が構成されており、天板を基台に対して平行に昇降させることができる。第1リンクと第2リンクとを揺動させることで、天板が基台に対して平行に昇降する。
【0007】
第2リンクには、第1リンクの揺動に伴い該第1リンクの円弧状部上を移動可能な連動部が設けられており、該連動部は円弧状部と互いに連動するようになっているので、固定手段により連動部を固定することで、円弧状部を有する第1リンク、及び連動部を有する第2リンクを共に固定し、これにより天板の高さを固定することができる。このように、請求項1に記載の昇降装置によれば、リンク同士での固定により、天板を任意高さで固定することが可能である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の昇降装置において、前記円弧状部と前記連動部は、互いに噛合する歯付き部材として構成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の昇降装置では、第1リンクの円弧状部と、第2リンクに設けられた連動部が、互いに噛合する歯付き部材として構成されているので、天板の昇降時には、第1リンクの円弧状部上を連動部が転動しながら円滑に移動することができ、固定手段により連動部を固定した際には、第1リンク及び第2リンクをより確実に固定することができる。このため、天板の昇降を円滑に行うことができると共に、天板を任意高さに安定的に固定することが可能である。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の昇降装置において、前記固定手段は、付勢手段の付勢力を用いて前記連動部を固定可能に構成され、所定操作により前記付勢力に抗して前記連動部から離脱させることが可能なストッパを有していることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の昇降装置では、固定手段が、付勢手段の付勢力を用いて連動部を固定可能なストッパであり、通常時には該ストッパにより連動部が固定され、これに伴い第1リンク及び第2リンクも固定されて、天板の高さが一定に固定されている。またストッパについては、所定操作により付勢手段の付勢力に抗して連動部から離脱させることができるようになっており、該所定操作によりストッパを連動部から離脱させると、該連動部の固定状態が解除されるので、第1リンク及び第2リンクが互いに揺動可能な状態となり、これによって天板の昇降が可能となる。天板を任意の高さに調節して所定操作を終了すると、付勢手段によりストッパが初期位置に復帰して連動部が再び固定される。このように請求項3に記載の昇降装置では、天板の昇降及び固定の操作を容易に行うことが可能である。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の昇降装置によれば、リンク同士での固定により、天板を任意高さで固定することができる、という優れた効果が得られる。
【0013】
請求項2に記載の昇降装置によれば、天板の昇降を円滑に行うことができると共に、天板を任意高さに安定的に固定することができる、という優れた効果が得られる。
【0014】
請求項3に記載の昇降装置によれば、天板の昇降及び固定の操作を容易に行うことができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1において、本実施の形態に係る昇降装置10は、例えば天板12の昇降のための特別な駆動源を有しない手動の昇降装置であって、第1リンク21と、第2リンク22と、連動部の一例たる遊星ギヤ14と、固定手段16とを有している。
【0016】
第1リンク21は、一端21Aが例えばピン24により基台18に枢着されると共に、他端21Bが例えばピン26により天板12に枢着され、一端21Aと他端21Bとの間に円弧状部21Cが形成された、天板12の脚部材である。円弧状部21Cは、第2リンク22に向かって凸に湾曲しており、該円弧状部21Cの略全長にわたって、例えばセクタギヤ21Gが形成されている。
【0017】
第2リンク22は、第1リンク21と並列に配設され、一端22Aが例えばピン30により基台18に枢着されると共に、他端22Bが例えばピン32により天板12に枢着された、天板12の脚部材である。この第2リンク22は、第1リンク21と共に平行リンク機構を構成している。基台18に対して天板12を平行に配置するために、ピン24,26間の距離は、ピン30,32間の距離と同一に設定され、基台18におけるピン24の高さ位置はピン30と同一に設定され、そして天板12におけるピン26の高さ位置はピン32と同一に設定されている。また第2リンク22は、その中央部が第1リンク21に接近するように屈曲形成されている。
【0018】
遊星ギヤ14は、第2リンク22の例えば中央部に設けられ、第1リンク21の揺動に伴い円弧状部21C上を移動可能に構成され、第1リンク21と互いに連動する歯付き部材として構成されている。遊星ギヤ14は、円弧状部21Cに形成されたセクタギヤ21Gに対して常時互いに噛合した状態となっている。図2において、第2リンク22の中央部には、回転軸34が貫通して枢支されており、該回転軸34の一端に遊星ギヤ14が取り付けられ、他端に固定用ギヤ36が取り付けられている。
【0019】
図1において、固定手段16は、第2リンク22に設けられ、遊星ギヤ14を任意に固定可能に構成され、該遊星ギヤ14の固定により第1リンク21を固定可能なストッパ38を有している。ストッパ38は、付勢手段の一例たる圧縮コイルばね40の付勢力を用いて遊星ギヤ14を固定可能に構成され、所定操作により圧縮コイルばね40の付勢力に抗して遊星ギヤ14から離脱させることが可能に構成されている。
【0020】
具体的には、図2,図3において、ストッパ38には、固定用ギヤ36と噛合可能なヘッド部38Aが形成されると共に、該ヘッド部38Aから固定用ギヤ36の半径方向に延びる本体部38Bが形成されている。本体部38B内には、スライド軸42が摺動可能に差し込まれる差込み穴38Dが形成されており、該差込み穴38Dは、本体部38Bの正面に形成された長孔状のガイド孔38Cと連通している。ガイド孔38C及び差込み穴38Dは、共に固定用ギヤ36の半径方向に沿って形成されている。
【0021】
図2に示されるように、スライド軸42には、ガイド孔38C内を摺動可能なスライダ44の例えばピン部44Aが嵌入されており、スライド軸42は、ガイド孔38Cにおけるスライダ44の摺動範囲内で、差込み穴38D内を摺動できるようになっている。
【0022】
図2,図3において、スライド軸42は、第2リンク22に固定された支持部材46に挿通され、該支持部材46に対して摺動可能に支持されている。圧縮コイルばね40は、支持部材46とストッパ38の本体部38Bとの間に配設され、該ストッパ38を矢印D方向、即ちヘッド部38Aが固定用ギヤ36と噛合する方向に付勢している。スライド軸42の端部にはケーブル48が接続されており、図1において、該ケーブル48は、第2リンク22に設けられたガイドローラ50を経由して、例えば天板12の裏面に設けられたベルクランク状の操作レバー52に接続されている。
【0023】
なお、スライド軸42が差込み穴38D内を摺動できるようにしたのは、昇降装置10では、ケーブル48が天板12側の操作レバー52と第2リンク22側のスライド軸42とに接続されているので、第2リンク22の揺動角度によっては、ケーブル48に弛みが生じたり、また余分な張力が作用したりする場合があるので、それらを吸収できるようにするためである。
【0024】
固定用ギヤ36は、通常時には、ストッパ38のヘッド部38Aと噛合することで固定され、第2リンク22に対して回動できない状態となっており、これに伴って遊星ギヤ14も第2リンク22に対して回動できない状態となっている。その一方で、操作レバー52を操作してケーブル48を引くことで、圧縮コイルばね40の付勢力に抗してストッパ38を固定用ギヤ36から離脱させ、遊星ギヤ14の固定状態を解除できるようになっている。
【0025】
なお、第2リンク22における遊星ギヤ14の配置、及び円弧状部21Cの形状は、第1リンク21及び第2リンク22の揺動時に、遊星ギヤ14とセクタギヤ21Gとの噛合状態が常時維持されるように設定される。
【0026】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図3において、昇降装置10では、通常時には、圧縮コイルばね40の付勢力によりストッパ38が矢印D方向に付勢され、該ストッパ38のヘッド部38Aが固定用ギヤ36に噛合しており、そのため固定用ギヤ36が第2リンク22に対して回動できない状態となっている。
【0027】
図1において、第1リンク21のセクタギヤ21Gと噛合している遊星ギヤ14は、図2において、固定用ギヤ36と同一の回転軸34に取り付けられているので、固定用ギヤ36が固定されていると、遊星ギヤ14も第2リンク22に対して回動することができない。図1において、遊星ギヤ14は、セクタギヤ21Gと噛合して互いに連動するようになっているので、逆に遊星ギヤ14を固定することで、セクタギヤ21Gを有する第1リンク21と、遊星ギヤ14を有する第2リンク22とを共に固定し、これにより天板12の高さ固定することができる。即ち、第1リンク21及び第2リンク22におけるリンク同士での固定により、天板12を任意高さで固定することが可能である。
【0028】
次に固定手段16による遊星ギヤ14の固定を解除して、天板12を昇降させる場合の作用について説明する。昇降装置10では、基台18、天板12、第1リンク21及び第2リンク22により、4節の平行リンク機構が構成されており、遊星ギヤ14の固定が解除された状態において、第1リンク21と第2リンク22とを揺動させることで、天板12を基台18に対して平行に昇降させることができる。
【0029】
具体的には、図1において、所定の操作、即ち操作レバー52によりケーブル48を引く操作を行うと、図3に示されるように、該ケーブル48に接続されたスライド軸42が矢印U方向に移動する。ここで、スライダ44がガイド孔38Cの中間に位置している場合には、該スライダ44がガイド孔38Cの端部に当接するまで、スライド軸42が矢印U方向に移動する。スライダ44がガイド孔38Cの端部に当接した状態でケーブル48を引くと、ストッパ38が圧縮コイルばね40の付勢力に抗して矢印U方向に移動する。これにより、ストッパ38のヘッド部38Aが固定用ギヤ36から離脱するので、該固定用ギヤ36と、該固定用ギヤ36と同一の回転軸34に取り付けられた遊星ギヤ14が、第2リンク22に対して回動可能な状態となる。
【0030】
図4(A)に示される状態において、操作レバー52の操作により遊星ギヤ14の固定を解除したまま、天板12を紙面右方向へ押すと、図4(B),(C)に示されるように、第1リンク21及び第2リンク22が、基台18を中心として共に右方向に揺動して行き、これに伴って天板12が右下方へ平行に移動して行く。
【0031】
また図5(A)に示される状態において、操作レバー52の操作により遊星ギヤ14の固定を解除したまま、天板12を紙面左方向へ押すと、図5(B),(C)に示されるように、第1リンク21及び第2リンク22が、基台18を中心として共に左方向に揺動して行き、これに伴って天板12が左下方へ平行に移動して行く。
【0032】
図4,図5に示される天板12の昇降時において、遊星ギヤ14は、第1リンク21の円弧状部21Cに設けられたセクタギヤ21Gと常時噛合しており、第1リンク21及び第2リンク22の揺動時に、円弧状部21C上を転動しながら円滑に移動する。このため、天板12の昇降を円滑に行うことができる。
【0033】
天板12を任意の高さに調節して操作レバー52の操作を終了すると、圧縮コイルばね40によりストッパ38が初期位置に復帰して固定用ギヤ36と噛合し、遊星ギヤ14が再び固定される。これにより、第1リンク21及び第2リンク22が互いに固定されて、天板12の高さが固定される。ストッパ38が固定用ギヤ36に噛合することで第1リンク21及び第2リンク22をより確実に固定することができるので、天板12を任意高さに安定的に固定することが可能である。
【0034】
昇降装置10では、図4,図5に示されるように、天板12が昇降する際に左右方向へも移動するので、車両のコンソールテーブルの出し入れや、カップホルダ、アームレスト、フットレスト、シフトレバー支持部の位置調節等に適用することが可能であり、更に車両以外の用途にも適用することが可能である。天板12の昇降は手動で行うように構成されているため、シリンダ装置やモータ等の駆動手段(図示せず)が不要である。また遊星ギヤ14を固定する固定手段16が、第2リンク22に設けられているので、該第2リンク22以外に固定手段16の取付け用スペースが不要である。
【0035】
なお、固定手段としてストッパ38を挙げたが、固定手段はこれに限られるものではなく、セクタギヤ21Gと噛合する遊星ギヤ14が回転しないように固定できるものであればよい。
【0036】
固定手段16として、固定用ギヤ36と噛合するヘッド部38Aを有するストッパ38を挙げたが、ストッパ38は固定用ギヤ36と噛合するものに限られず、該固定用ギヤ36を確実に固定できる構成であればよい。また固定用ギヤ36を介して遊星ギヤ14を固定するのではなく、遊星ギヤ14を直接固定する構成であってもよい。
【0037】
第1リンク21の円弧状部21Cにセクタギヤ21Gを設け、第2リンク22側に該セクタギヤ21Gと噛合する遊星ギヤ14を設けることとしたが、これに限られず、例えば遊星ギヤ14の代わりに、円弧状部21Cとの間にリンク同士を互いに固定できる程度の摩擦力を生じさせることが可能な摩擦車を用いてもよい。
【0038】
また付勢手段として、圧縮コイルばね40を挙げたが、ストッパ38を付勢する手段は圧縮コイルばね40には限られず、例えばガススプリング等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】昇降装置の部分破断正面図である。
【図2】固定手段を示す拡大部分断面図である。
【図3】固定手段を示す拡大部分断面図である。
【図4】(A)昇降装置において、天板が最も高い位置にある状態を示す正面図である。(B)天板が紙面上右下方へ移動した状態を示す正面図である。(C)天板が紙面上最も右下方へ移動した状態を示す正面である。
【図5】(A)昇降装置において、天板が最も高い位置にある状態を示す正面図である。(B)天板が紙面上左下方へ移動した状態を示す正面図である。(C)天板が紙面上最も左下方へ移動した状態を示す正面である。
【符号の説明】
【0040】
10 昇降装置
12 天板
14 遊星ギヤ(連動部,歯付き部材)
16 固定手段
18 基台
21 第1リンク
21A 一端
21B 他端
21C 円弧状部
21G セクタギヤ(歯付き部材)
22 第2リンク
22A 一端
22B 他端
38 ストッパ
40 圧縮コイルばね(付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が基台に枢着されると共に他端が天板に枢着され、前記一端と前記他端との間に円弧状部が形成された第1リンクと、
該第1リンクと並列に配設され、一端が前記基台に枢着されると共に他端が前記天板に枢着されて前記第1リンクと共に平行リンク機構を構成する第2リンクと、
該第2リンクに設けられ、前記第1リンクの揺動に伴い前記円弧状部上を移動可能に構成され前記第1リンクと互いに連動する連動部と、
前記第2リンクに設けられ、前記連動部を任意に固定可能に構成され、該連動部の固定により前記第1リンクを固定可能な固定手段と、
を有することを特徴とする昇降装置。
【請求項2】
前記円弧状部と前記連動部は、互いに噛合する歯付き部材として構成されていることを特徴とする請求項1に記載の昇降装置。
【請求項3】
前記固定手段は、付勢手段の付勢力を用いて前記連動部を固定可能に構成され、所定操作により前記付勢力に抗して前記連動部から離脱させることが可能なストッパを有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−238246(P2007−238246A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61681(P2006−61681)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)