説明

昇降駆動用噛合多列チェーン

【課題】チェーン全体の重量バランスの調整を図って被昇降物の重量などに対するチェーン幅方向における荷重バランスを向上し、被昇降物をより高い位置にまで安定して上昇させ、チェーン耐久性の向上、駆動騒音の低減、チェーンサイズの小型化を実現し、中間歯プレートと内歯プレートとがチェーン幅方向に偏ることを抑制する昇降駆動用噛合多列チェーンを提供すること。
【解決手段】内歯プレート110とブシュ120と中間歯プレートと140と外歯プレート150と連結ピン160とを備え、内歯プレート110と中間歯プレートと140と外歯プレート150が、同一形状の金型により同一方向からそれぞれ打ち抜き加工され、内歯プレート110と中間歯プレートと140と外歯プレート150の少なくとも1枚が、残りのプレートと表裏を反転させた状態で連結されている昇降駆動用噛合多列チェーン100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種製造分野の製造設備、運輸分野の移送設備、医療福祉分野の介護設備、芸術分野の舞台設備などに用いて昇降テーブルを設置面に対して平行に進退動させる昇降装置に組み込まれる昇降駆動用噛合多列チェーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、昇降装置として、相互に噛み合って一体的に昇降する一対の噛合チェーン、所謂、チャックチェーンを用いて重量物などの被昇降物を昇降移動させる昇降装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
そして、このような噛合チェーンとして、図8に示すように、左右一対の内プレート510に前後一対のブシュ520を圧入嵌合してなる内リンクユニット530をチェーン幅方向に中間プレート540を介して複数配置した多列状の噛合チェーン500が考案されている。
【0004】
そして、このような多列状の噛合チェーン500では、一般に、生産効率を向上させるために、同一のブランク材を用いて同一形状の金型により同一方向から打ち抜き加工することで内プレート510と中間プレート540と外プレート550とを成形しており、また、このような内プレート510と中間プレート540と外プレート550のプレート切断面には、図9に示すように、平滑面状の剪断面Xが打ち抜き方向後方に形成されているとともに粗面状の破断面Yが打ち抜き方向前方に形成されている。
【特許文献1】特許第3370928号公報(特許請求の範囲、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の多列状の噛合チェーン500では、図8に示すように、内プレート510と中間プレート540と外プレート550にそれぞれ形成されたフック部511、541、551を同一のプレート長手方向に向けた状態かつ同一のプレート高さ方向に向けて延出させた状態で内プレート510と中間プレート540と外プレート550をそれぞれ配置しており、その結果、図9に示すように、各プレート内における剪断面Xおよび破断面Yのプレート厚み方向への並び順が全てのプレートに共通して同じ並び順になるため、重量の軽い破断面Y側と重量の重い剪断面X側との間に生じた重量差に起因してプレート厚み方向、すなわち、チェーン幅方向に亘るチェーン全体の重量バランスに片寄りが生じ、このように重量バランスの片寄りが生じることで噛合チェーン500の上昇駆動時に被昇降物の重量に対するチェーン幅方向における荷重バランスが悪化して、チェーン耐久性が低下したり、駆動騒音が発生してしまうという問題があった。
【0006】
また、特に噛合チェーン500をチェーン長手方向に長くして被昇降物の上昇高度を高く設定した場合に、前述したような噛合チェーン500の荷重バランスの悪化に伴って上昇駆動時に噛合チェーン500が一定の方向に傾斜するため、一対の噛合チェーン500の内プレート510同士と中間プレート540同士と外プレート550同士とが噛み外れて座屈を生じることがあるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、従来の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、チェーン幅方向に亘るチェーン全体の重量バランスの調整を図って被昇降物の重量などに対する荷重バランスを向上して、被昇降物をより高い位置にまで安定して上昇させるとともに、チェーン耐久性の向上、駆動騒音の低減、チェーンサイズの小型化を実現し、しかも、中間歯プレートと内歯プレートとがチェーン幅方向のいずれかに偏ることを抑制する昇降駆動用噛合多列チェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本発明は、左右一対で離間配置されてフック部を有する内歯プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがフック部を有する中間歯プレートをチェーン幅方向に介して並列配置されているとともに、前記内リンクユニットがチェーン幅方向の最も外側に配置されてフック部を有する外歯プレートの前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、前記ブシュと噛合う一対の昇降用スプロケットにそれぞれ対向配置させて水平方向から垂直方向へ偏向しながら相互に対向する内歯プレート同士と外歯プレート同士と中間歯プレート同士とをそれぞれ噛み合せて一体に自立状態で上昇するとともに一対の昇降用スプロケットにより垂直方向から水平方向へ偏向しながら内歯プレート同士と外歯プレート同士と中間歯プレート同士とをそれぞれ噛み外して分岐する昇降駆動用噛合多列チェーンにおいて、前記外歯プレートと内歯プレートと中間歯プレートとが、同一のブランク材を用いて同一形状の金型により同一方向からそれぞれ打ち抜き加工されているとともに、前記チェーン幅方向に配置される外歯プレートと内歯プレートと中間歯プレートの少なくとも1枚が、残りのプレートと表裏を反転させた状態で連結ピンによって連結されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0009】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の構成に加えて、前記チェーン幅方向に配置される外歯プレートと内歯プレートと中間歯プレートの半数が、残りのプレートと表裏を反転させた状態で連結ピンによって連結されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0010】
請求項3に係る本発明は、請求項1または請求項2記載の構成に加えて、前記中間歯プレートが、連結ピンに圧入嵌合されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0011】
請求項4に係る本発明は、請求項1または請求項2記載の構成に加えて、前記中間歯プレートが連結ピンに遊嵌されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0012】
請求項5に係る本発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の構成に加えて、前記チェーン幅方向の最も外寄りに配置される外歯プレートと内歯プレートが、残りのプレートよりも大きなプレート厚みで形成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0013】
そこで、本発明は、左右一対で離間配置されてフック部を有する内歯プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがフック部を有する中間歯プレートをチェーン幅方向に介して並列配置されているとともに、内リンクユニットがチェーン幅方向の最も外側に配置されてフック部を有する外歯プレートの前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、ブシュと噛合う一対の昇降用スプロケットにそれぞれ対向配置させて水平方向から垂直方向へ偏向しながら相互に対向する内歯プレート同士と外歯プレート同士と中間歯プレート同士とをそれぞれ噛み合せて一体に自立状態で上昇するとともに一対の昇降用スプロケットにより垂直方向から水平方向へ偏向しながら内歯プレート同士と外歯プレート同士と中間歯プレート同士とをそれぞれ噛み外して分岐することにより、昇降用スプロケットの回転に合わせて被昇降物の昇降動作を等速かつ迅速に達成して、しかも、チェーン幅方向に内リンクユニットを並列配置することで外歯プレート同士と内歯プレート同士と中間歯プレート同士とをチェーン方向の複列に亙ってそれぞれ多重かつ強固に噛み合せてチェーン幅方向に生じがちな座屈を確実に抑制するとともにチェーン幅方向における昇降用スプロケットとの噛合バランスを向上するばかりでなく、以下のような特有の効果を奏することができる。
【0014】
請求項1に係る本発明の昇降駆動用噛合多列チェーンによれば、外歯プレートと内歯プレートと中間歯プレートとが同一のブランク材を用いて同一形状の金型により同一方向からそれぞれ打ち抜き加工されているとともに、チェーン幅方向に配置される外歯プレートと内歯プレートと中間歯プレートの少なくとも1枚が残りのプレートと表裏を反転させた状態で連結ピンによって連結されていることにより、内歯プレートと外歯プレートと中間歯プレートとが、打ち抜き方向後方に形成される剪断面側と打ち抜き方向前方に形成された破断面側との間に生じる重量差に起因してプレート厚み方向へ重量の片寄りをそれぞれ生じた場合であっても、チェーン幅方向に亘るチェーン全体の重量バランスを調整するため、昇降駆動用噛合多列チェーンのチェーン幅方向への傾斜を抑制して被昇降物の重量などに対する荷重バランスを向上できる。
【0015】
また、このようにチェーン幅方向への荷重バランスを向上することで、昇降駆動用噛合多列チェーンのチェーン幅方向への傾倒や座屈を生じさせることなく被昇降物をより高い位置にまで安定して上昇できるとともに、昇降駆動用噛合多列チェーンに対して部分的な過負荷が作用することを回避してチェーン耐久性を向上でき、そして、チェーン稼動時に発生しがちな駆動騒音を低減でき、さらに、前述したように昇降駆動用噛合多列チェーンの座屈強度を向上することでチェーンサイズの小型化を図ることができる。
【0016】
請求項2に係る本発明の昇降駆動用噛合多列チェーンによれば、請求項1記載の昇降駆動用噛合多列チェーンが奏する効果に加えて、チェーン幅方向に配置される外歯プレートと内歯プレートと中間歯プレートの半数が、残りのプレートと表裏を反転させた状態で連結ピンによって連結されていることにより、チェーン幅方向に亘るチェーン全体の重量バランスを均一に維持するため、被昇降物の重量などに対する荷重バランスをより一層向上できる。
【0017】
請求項3に係る本発明の昇降駆動用噛合多列チェーンによれば、請求項1または請求項2記載の昇降駆動用噛合多列チェーンが奏する効果に加えて、中間歯プレートが連結ピンに圧入嵌合されていることにより、連結ピンに対する中間歯プレートのチェーン幅方向における位置がチェーン幅方向中央に固定されるため、中間歯プレートと内歯プレートとがチェーン幅方向のいずれかに偏ることを抑制して、チェーン幅方向の荷重バランスを著しく向上できる。
【0018】
また、昇降駆動用噛合多列チェーンに被昇降物などの重量に起因した負荷が作用した際にも、中間歯プレートのピン孔と連結ピンとの間の間隙を無くしたことで、連結ピンの湾曲を抑制できるので、連結ピンが湾曲することで発生しがちな疲労破壊を防止でき、また、前述したように連結ピンの湾曲を抑制したことで、中間歯プレート側に配置された各プレート、例えば、中間歯プレートや該中間歯プレートに近接する内歯プレートなども被昇降物などの重量に起因した高負荷を負担するので、チェーン幅方向の荷重バランスが著しく向上してチェーンの疲労強さを向上できる。
【0019】
そして、前述したように中間歯プレートのピン孔と連結ピンとの間の間隙を無くしたことで、被昇降物などの重量による負荷に起因して中間歯プレートが連結ピンに対して傾斜することを抑制するため、連結ピンに対して部分的な過負荷が作用することを回避することができる。
【0020】
請求項4に係る本発明の昇降駆動用噛合多列チェーンによれば、請求項1または請求項2記載の昇降駆動用噛合多列チェーンが奏する効果に加えて、中間歯プレートが連結ピンに遊嵌されていることにより、チェーン製造時に中間歯プレートのピン孔に対して連結ピンを遊嵌、所謂、スキマ嵌めすれば良く、中間歯プレートのピン孔径と連結ピンのピン径を高精度に加工する必要がないため、チェーン切り継ぎなどの分解組み付け作業を簡便に達成できる。
【0021】
請求項5に係る本発明の昇降駆動用噛合多列チェーンによれば、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の昇降駆動用噛合多列チェーンが奏する効果に加えて、チェーン幅方向の最も外寄りに配置される外歯プレートと内歯プレートが残りのプレートよりも大きなプレート厚みで形成されていることにより、中間歯プレートと該中間歯プレートに隣接する内歯プレートとから構成されてプレート枚数の多いチェーン幅方向内寄りのプレート群の総重量と、外歯プレートと該外歯プレートに隣接する内歯プレートとから構成されてプレート枚数の少ないチェーン幅方向外寄りのプレート群の総重量との間の重量差が減少するため、チェーン幅方向内寄りに重量が偏ることを回避してチェーン幅方向への重量バランスの調整を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の昇降駆動用噛合多列チェーンは、左右一対で離間配置されてフック部を有する内歯プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがフック部を有する中間歯プレートをチェーン幅方向に介して並列配置されているとともに、内リンクユニットがチェーン幅方向の最も外側に配置されてフック部を有する外歯プレートの前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、ブシュと噛合う一対の昇降用スプロケットにそれぞれ対向配置させて水平方向から垂直方向へ偏向しながら相互に対向する内歯プレート同士と外歯プレート同士と中間歯プレート同士とをそれぞれ噛み合せて一体に自立状態で上昇するとともに一対の昇降用スプロケットにより垂直方向から水平方向へ偏向しながら内歯プレート同士と外歯プレート同士と中間歯プレート同士とをそれぞれ噛み外して分岐し、外歯プレートと内歯プレートと中間歯プレートとが、同一のブランク材を用いて同一形状の金型により同一方向からそれぞれ打ち抜き加工されているとともに、チェーン幅方向に配置される外歯プレートと内歯プレートと中間歯プレートの少なくとも1枚が、残りのプレートと表裏を反転させた状態で連結ピンによって連結されて、チェーン幅方向に亘るチェーン全体の重量バランスの調整を図って被昇降物の重量などに対する荷重バランスを向上して、被昇降物をより高い位置にまで安定して上昇させるとともに、チェーン耐久性の向上、駆動騒音の低減、チェーンサイズの小型化を実現し、しかも、中間歯プレートと内歯プレートとがチェーン幅方向のいずれかに偏ることを抑制するものであれば、その具体的な実施の形態は如何なるものであっても何ら構わない。
【0023】
例えば、本発明の昇降駆動用噛合多列チェーンで用いる内歯プレート、外歯プレート、および、中間歯プレートの具体的な形状については、相互に対向する同種のプレート同士を相互に噛み合せて水平方向から垂直方向へ偏向しながら一体に自立状態で上昇するとともに垂直方向から水平方向へ偏向しながら相互に噛み外して分岐するものであれば如何なる形状を呈するものであっても良い。
【0024】
また、本発明の昇降駆動用噛合多列チェーンにおいてチェーン幅方向に並列配置する内リンクユニットの列数は、通常、2列乃至3列であるが、それ以上であっても差し支えない。
【0025】
また、本発明の昇降駆動用噛合多列チェーンにおいて用いられるブシュは、通常形状のブシュや、内歯プレートに圧入嵌合するプレート側圧入部と該プレート側圧入部より大径のスプロケット噛合部とを一体成形することで得られるブシュなど如何なるものであっても良く、プレート側圧入部とスプロケット噛合部とからなるブシュを採用した場合、スプロケット噛合部の特定された外周面で昇降用スプロケットと安定して接触するため、ローラを用いた場合のように昇降用スプロケットとの噛み合い時に連結ピンもしくはブシュの中心軸に対してローラの中心軸が偏在して昇降用スプロケットとの間で発生しがちな接触振動や接触騒音を防止でき、さらには、ローラを用いた場合と比べて、スプロケット噛合部がブシュと一体に成形されて充分な肉厚を確保できるため、重量物などの被昇降物を上昇させる際にかかる負荷に対して高い耐負荷性能を発揮できる。
【0026】
そして、本発明の昇降駆動用噛合多列チェーンが組み込まれる噛合チェーン式昇降装置は、設置面が据え置き設置形態となる床面であっても、吊り下げ設置形態となる天井面であっても昇降動作に何ら支障はなく、さらには、片持ち支持形態となる垂直壁面であっても前述した昇降動作に相当する進退動作に何ら支障はない。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の第1実施例である昇降駆動用噛合多列チェーン100を図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の第1実施例である昇降駆動用噛合多列チェーンを用いた使用態様図であり、図2は、図1から昇降テーブルとパンタアームを除いた状態の斜視図であり、図3は、昇降駆動用噛合多列チェーンを示す一部拡大図であり、図4は、昇降駆動用噛合多列チェーンを示す組み付け分解図であり、図5は、昇降駆動用噛合多列チェーンを示す一部断面図であり、図6は、昇降駆動用噛合多列チェーンのチェーン幅方向への重量バランスを説明する模式図である。
【0028】
まず、本発明の第1実施例である昇降駆動用噛合多列チェーン100は、図1に示すように、重量物などの被昇降物(図示しない)を搭載する昇降テーブルTを設置面に対して平行に昇降させるために、作業床面に据え置き状態で設置された噛合チェーン式昇降装置Eに組み込まれて使用されるものである。
【0029】
前述した噛合チェーン式昇降装置Eは、図1および図2に示すように、前述した昇降テーブルTが平行に昇降する設置面に据え付けたベースプレートPと、このベースプレートPに対して平行に併置された一対の回転軸を中心に同一面内で相互に対向して反対方向に正逆回転する一対の昇降用スプロケットSと、これらの一対の昇降用スプロケットSと噛み外れることによって昇降テーブルTを昇降する一対の昇降駆動用噛合多列チェーン100と、この昇降駆動用噛合多列チェーン100の上端に固着されて一体に昇降する前述した昇降テーブルTと、一対の昇降用スプロケットSを駆動する駆動モータMとを基本的な装置構成として備えている。
【0030】
なお、図1および図2に示す符号Dは、駆動モータMの出力軸側に同軸配置した一対の駆動側スプロケットであり、符号Cは、駆動側スプロケットDから一対の昇降用スプロケットS側へ動力伝達するためのローラチェーンからなる一対の動力伝達チェーンであり、符号Gは、一対の動力伝達チェーンCから一方向の回転を変速させるとともに一対の昇降用スプロケットSへ相互に反対方向に正逆回転するように動力伝達するための同期ギア群であり、符号Aは、昇降テーブルTと設置面側のベースプレートPとの間に設置されたX字状のパンタアームと称するインナーアームA1とアウターアームA2とからなる上下2段連結形態の昇降補助ガイド手段であり、符号Rは、インナーアームA1の下端が昇降動作に応じて摺動するスライドレールであり、符号Bは、相互に噛み外して分岐した一対の昇降駆動用噛合多列チェーン100の一方を収納する巻き取り型のチェーン収納ボックスである。
【0031】
また、噛合チェーン式昇降装置Eにおいて一対で用いられる本実施例の昇降駆動用噛合多列チェーン100は、図3乃至図5に示すように、左右一対で離間配置されてフック部111を有する内歯プレート110に前後一対のブシュ120を圧入嵌合してなる内リンクユニット130がチェーン幅方向にフック部141を有する2枚の中間歯プレート140を介して並列配置されているとともに、内リンクユニット130がチェーン幅方向の最も外側に配置されてフック部151を有する外歯プレート150の前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピン160によりチェーン長手方向に多数連結されたものである。
そして、ブシュ120の外周には、ローラ170が外嵌されている。
【0032】
そして、本発明の昇降駆動用噛合多列チェーン100は、内リンクユニット130をチェーン幅方向に並列配置したことにより、一対の昇降駆動用噛合多列チェーン100の一方を構成する内歯プレート110と中間歯プレート140と外歯プレート150とが、これに対向する他方の昇降駆動用噛合多列チェーン100を構成する内歯プレート110と中間歯プレート140と外歯プレート150とに対してチェーン方向の複列に亙ってそれぞれフック状、所謂、チャック状に多重かつ強固に噛み合って、昇降駆動用噛合多列チェーン100のチェーン幅方向に生じがちな座屈を確実に抑制し、また、チェーン幅方向における昇降用スプロケットSとの噛合バランスを向上するようになっている。
【0033】
また、一対の昇降駆動用噛合多列チェーン100は、図3乃至図5に示すように、前述した一対の昇降用スプロケットSにそれぞれ対向配置させて水平方向から垂直方向へ偏向しながら相互に対向する内歯プレート110同士および外歯プレート150同士および中間歯プレート140同士をそれぞれ噛み合せて一体に自立状態で上昇するようになっており、また、前述した一対の昇降用スプロケットSにより垂直方向から水平方向へ偏向しながら内歯プレート110同士および外歯プレート150同士および中間歯プレート140同士をそれぞれ噛み外して分岐するようになっている。
【0034】
そこで、本実施例の昇降駆動用噛合多列チェーン100が最も特徴とする内歯プレート110と外歯プレート150と中間歯プレート140の具体的な形態について図3乃至図6により詳しく説明する。
まず、外歯プレート150と内歯プレート110と中間歯プレート140は、図6に示すように、同一のブランク材を用いて同一形状の金型により同一方向からそれぞれ打ち抜き加工されているとともに、チェーン幅方向に配置される外歯プレート150と内歯プレート110と中間歯プレート140の半数が、残りのプレートと表裏を反転させた状態で連結ピン160によって連結されている。
すなわち、中間歯プレート140に隣接する2枚の内歯プレート110と2枚の外歯プレート150とが、同じ向きにフック部141、151を延出させた状態、かつ、外歯プレート150に隣接する2枚の内歯プレート110と2枚の中間歯プレート140とに対してチェーン幅方向における表裏を反転させた状態で配置されている。
なお、図6における内歯プレート110と外歯プレート150と中間歯プレート140のプレート切断面に関しては、その剪断面Xおよび破断面Yに起因にして生じた傾斜を大幅に誇張して示している。
【0035】
また、中間歯プレート140は、図4および図5に示すように、連結ピン160に圧入嵌合されている。
【0036】
このようにして得られた本実施例の昇降駆動用噛合多列チェーン100は、外歯プレート150と内歯プレート110と中間歯プレート140とが同一のブランク材を用いて同一形状の金型により同一方向からそれぞれ打ち抜き加工されているとともに、チェーン幅方向に配置される外歯プレート150と内歯プレート110と中間歯プレート140の半数が残りのプレートと表裏を反転させた状態で連結ピン160によって連結されている。
したがって、内歯プレート110と外歯プレート150と中間歯プレート140とが、打ち抜き方向後方に形成される剪断面X側と打ち抜き方向前方に形成された破断面Y側との間に生じる重量差に起因してプレート厚み方向へ重量の片寄りをそれぞれ生じた場合であっても、チェーン幅方向に亘るチェーン全体の重量バランスを調整して均一に維持するため、昇降駆動用噛合多列チェーン100のチェーン幅方向への傾斜を抑制して被昇降物の重量などに対する荷重バランスを向上できる。
【0037】
また、このようにチェーン幅方向への荷重バランスを向上することで、昇降駆動用噛合多列チェーン100のチェーン幅方向への傾倒や座屈を生じさせることなく被昇降物をより高い位置にまで安定して上昇できるとともに、昇降駆動用噛合多列チェーン100に対して部分的な過負荷が作用することを回避してチェーン耐久性を向上でき、そして、チェーン稼動時に発生しがちな駆動騒音を低減でき、さらに、前述したように昇降駆動用噛合多列チェーン100の座屈強度を向上することでチェーンサイズの小型化を図ることができる。
【0038】
中間歯プレート140が連結ピン160に圧入嵌合されている。
したがって、連結ピン160に対する中間歯プレート140のチェーン幅方向における位置がチェーン幅方向中央に固定されるため、中間歯プレート140と内歯プレート110とがチェーン幅方向のいずれかに偏ることを抑制して、チェーン幅方向の荷重バランスを著しく向上できる。
【0039】
また、昇降駆動用噛合多列チェーン100に被昇降物などの重量に起因した負荷が作用した際にも、中間歯プレート140のピン孔と連結ピン160との間の間隙を無くしたことで、連結ピン160の湾曲を抑制できるので、連結ピン160が湾曲することで発生しがちな疲労破壊を防止でき、また、前述したように連結ピン160の湾曲を抑制したことで、中間歯プレート140側に配置された各プレート、例えば、中間歯プレート140や中間歯プレート140に近接する内歯プレート110なども被昇降物などの重量に起因した高負荷を負担するので、チェーン幅方向の荷重バランスが著しく向上してチェーンの疲労強さを向上できる。
【0040】
そして、前述したように中間歯プレート140のピン孔と連結ピン160との間の間隙を無くしたことで、被昇降物などの重量による負荷に起因して中間歯プレート140が連結ピン160に対して傾斜することを抑制するため、連結ピン160に対して部分的な過負荷が作用することを回避できるなど、その効果は甚大である。
【0041】
つぎに、本発明の第2実施例である昇降駆動用噛合多列チェーン200について、図7に基づいて以下に説明する。
ここで、本発明の第2実施例である昇降駆動用噛合多列チェーン200における内歯プレート210と外歯プレート250以外の構成は、前述した第1実施例の昇降駆動用噛合多列チェーン100と全く同じであるため、第1実施例の昇降駆動用噛合多列チェーン100に関する明細書、および、図1乃至図6に示す100番台の符号を200番台の符号に読み替えることによって、以外の構成についてはその説明を省略する。
【0042】
そこで、本実施例の昇降駆動用噛合多列チェーン200が最も特徴とする内歯プレート210と外歯プレート250の具体的な形態について詳しく説明する。
すなわち、図7に示すように、チェーン幅方向の最も外寄りに配置される外歯プレート250と該外歯プレート250に隣接する内歯プレート210とが、残りのプレートよりも大きなプレート厚みで形成されている。
【0043】
このようにして得られた本実施例の昇降駆動用噛合多列チェーン200は、チェーン幅方向の最も外寄りに配置される内歯プレート210と外歯プレート250が残りのプレートよりも大きなプレート厚みで形成されている。
したがって、中間歯プレート240と中間歯プレート240に隣接する内歯プレート210とから構成されてプレート枚数の多いチェーン幅方向内寄りのプレート群Piの総重量と、外歯プレート250と該外歯プレート250に隣接する内歯プレート210とから構成されてプレート枚数の少ないチェーン幅方向外寄りのプレート群Poの総重量との間の重量差が減少するため、チェーン幅方向内寄りに重量が偏ることを回避してチェーン幅方向への重量バランスの調整を図ることができるなど、その効果は甚大である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施例である昇降駆動用噛合多列チェーンを用いた使用態様図。
【図2】図1から昇降テーブルとパンタアームを除いた状態の斜視図。
【図3】昇降駆動用噛合多列チェーンを示す一部拡大図。
【図4】昇降駆動用噛合多列チェーンを示す組み付け分解図。
【図5】昇降駆動用噛合多列チェーンを示す一部断面図。
【図6】昇降駆動用噛合多列チェーンの重量バランスを説明する模式図。
【図7】本発明の第2実施例である昇降駆動用噛合多列チェーンを示す一部断面図。
【図8】従来の噛合チェーンを示す斜視図。
【図9】従来の噛合チェーンのチェーン幅方向への重量バランスを説明する模式図。
【符号の説明】
【0045】
100 ・・・ 昇降駆動用噛合多列チェーン
110 ・・・ 内歯プレート
111 ・・・ フック部
120 ・・・ ブシュ
130 ・・・ 内リンクユニット
140 ・・・ 中間歯プレート
141 ・・・ フック部
150 ・・・ 外歯プレート
151 ・・・ フック部
160 ・・・ 連結ピン
170 ・・・ ローラ
E ・・・ 噛合チェーン式昇降装置
S ・・・ 昇降用スプロケット
T ・・・ 昇降テーブル
P ・・・ ベースプレート
M ・・・ 駆動モータ
D ・・・ 駆動側スプロケット
C ・・・ 動力伝達チェーン
G ・・・ 同期ギア群
A ・・・ 昇降補助ガイド手段
A1 ・・・ インナーアーム
A2 ・・・ アウターアーム
R ・・・ スライドレール
B ・・・ チェーン収納ボックス
X ・・・ 剪断面
Y ・・・ 破断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対で離間配置されてフック部を有する内歯プレートに前後一対のブシュを圧入嵌合してなる内リンクユニットがフック部を有する中間歯プレートをチェーン幅方向に介して並列配置されているとともに、前記内リンクユニットがチェーン幅方向の最も外側に配置されてフック部を有する外歯プレートの前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピンによりチェーン長手方向に多数連結され、前記ブシュと噛合う一対の昇降用スプロケットにそれぞれ対向配置させて水平方向から垂直方向へ偏向しながら相互に対向する内歯プレート同士と外歯プレート同士と中間歯プレート同士とをそれぞれ噛み合せて一体に自立状態で上昇するとともに一対の昇降用スプロケットにより垂直方向から水平方向へ偏向しながら内歯プレート同士と外歯プレート同士と中間歯プレート同士とをそれぞれ噛み外して分岐する昇降駆動用噛合多列チェーンにおいて、
前記外歯プレートと内歯プレートと中間歯プレートとが、同一のブランク材を用いて同一形状の金型により同一方向からそれぞれ打ち抜き加工されているとともに、
前記チェーン幅方向に配置される外歯プレートと内歯プレートと中間歯プレートの少なくとも1枚が、残りのプレートと表裏を反転させた状態で連結ピンによって連結されていることを特徴とする昇降駆動用噛合多列チェーン。
【請求項2】
前記チェーン幅方向に配置される外歯プレートと内歯プレートと中間歯プレートの半数が、残りのプレートと表裏を反転させた状態で連結ピンによって連結されていることを特徴とする請求項1記載の昇降駆動用噛合多列チェーン。
【請求項3】
前記中間歯プレートが、前記連結ピンに圧入嵌合されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の昇降駆動用噛合多列チェーン。
【請求項4】
前記中間歯プレートが、前記連結ピンに遊嵌されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の昇降駆動用噛合多列チェーン。
【請求項5】
前記チェーン幅方向の最も外寄りに配置される外歯プレートと内歯プレートが、残りのプレートよりも大きなプレート厚みで形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の昇降駆動用噛合多列チェーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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