説明

易架橋性熱可塑性樹脂

【課題】
本発明は、架橋特性が優れ、得られた架橋体または動的架橋体は、耐熱性、軟質性、耐油性、流動性、耐傷つき摩耗性、力学物性に優れる、クロス共重合体または本クロス共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】
アルキル置換スチレンを一定量以上含み、特定の条件を満たすクロス共重合体及びこれを含む熱可塑性樹脂組成物を用いて、これらを動的架橋またはエネルギー線架橋することで達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性と、軟質性、耐傷つき摩耗性、耐油性に優れ、動的架橋あるいは電子線架橋が可能な熱可塑性樹脂及びその組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、耐熱性、耐傷つき摩耗性、耐油性に優れ成形加工およびリサイクルが可能な熱可塑性エラストマーに対する市場ニーズが、例えば、自動車部品、工業部品、家電部品、電線被覆等の分野で増加している。
このような用途に対応するために、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物(以下水添ブロック共重合体と記す)を用いた樹脂組成物やエチレン系やプロピレン系の樹脂組成物が提案され、使用されている。これら樹脂組成物では、その耐熱性や高温での力学特性向上のために、その成分に一部または全部に対し、動的架橋処理や電子線架橋処理を行うことが一般に行われている(特許文献1〜3)。しかし、一般に水添ブロック共重合体系の樹脂組成物では、耐油性、耐摩耗性等に課題があり、ポリプロピレン系の樹脂組成物では、耐油性、耐傷つき摩耗性に課題がある。
一方、エチレン−スチレン共重合体に少量のジビニルベンゼンを共重合し、ジビニルベンゼンユニットのビニル基を介してポリスチレン(クロス鎖)を導入する方法、いわゆるクロス共重合体の製造方法および本方法により得られるクロス共重合体が提案されている(特許文献4、5)。本方法により得られるクロス共重合体は、スチレン−エチレン共重合体鎖をソフトセグメントとし、ポリスチレンをハードセグメントとして有する分岐型ブロック共重合体の一種であると考えられる。本共重合体は、スチレン−エチレン共重合体の特性、例えば耐傷つき摩耗性や室温耐油性を生かしながら、その耐熱性をポリスチレンのガラス転移温度付近(約100℃)まで向上させることができるが、より高い耐熱性が望まれている。耐熱性を向上させるべく架橋処理や動的架橋処理を行う場合、本共重合体自体には架橋席(ビニル基)が実質的に含まれていないため、架橋剤や架橋助剤の使用量が多くなり、また得られた架橋体の力学物性や動的架橋体の成形加工性や力学物性が低下してしまうことが課題である。電子線架橋を行う場合も同様に、十分な架橋量を与えるための必要電子線量が多く、経済性に課題があった。
【0003】
クリーンなエネルギー源として注目されている太陽電池は、近年、その普及が急速に進んでいる。太陽電池モジュールにおける太陽電池素子の封止材料として、柔軟性、透明性等の点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が使用されている。本熱可塑性軟質樹脂は耐熱性が不足しているところから、有機過酸化物等による架橋処理を行う必要があった。この場合、熱可塑性プロセスによりEVAシートを作成し、得られたシートを用いて太陽電池素子を封止するという2段階の工程を採用する必要があった。このシートの製造段階では、有機過酸化物が分解しないような低温成形であり、押出成形速度を大きくすることができず、また太陽電池素子の封止段階では、仮接着工程と、より高温度で数十分ないし1時間かける本接着工程とからなる多段接着工程を経る必要があった。そのため太陽電池モジュールの製造には手間と時間がかかり、その製造コストを上昇させる要因の一つとなっている。
一方、エチレンと、不飽和エステル及び不飽和カルボン酸から選ばれる単量体に電子線照射した架橋封止材が提案されている(特許文献6)。しかし、エチレンと不飽和エステル(EVA)からなる架橋封止材は、透明性と軟質性に優れ、かつ長年使用され実績を有する材料ではあるが、透湿性が比較的高く、体積抵抗が比較的低く、また酢酸等の遊離等、長期にわたる信頼性確保の観点の点で、さらに信頼性を確保するためには十分な厚さが必要である等の課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−145751号公報
【特許文献2】特開昭59−105040号公報
【特許文献3】特表2002−515530号公報
【特許文献4】再表00/037517号公報
【特許文献5】WO2007139116号公報
【特許文献6】特開2001−119047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、架橋特性が優れたクロス共重合体、または本クロス共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の(1)〜(4)の条件を満たすクロス共重合体及びこれを含む熱可塑性樹脂組成物である。
(1)配位重合工程とクロス化工程からなる重合工程を含む製造方法であって、配位重合工程として、シングルサイト配位重合触媒を用いてオレフィンモノマー、芳香族ビニル化合物モノマーおよび芳香族ポリエンの共重合を行ってオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体を合成し、次にクロス化工程として、このオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体と芳香族ビニル化合物モノマーの共存下、アニオン重合開始剤を用いて重合することを特徴とする製造方法で得られるクロス共重合体。
(2)配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成が、芳香族ビニル化合物含量5モル%以上40モル%以下、芳香族ポリエン含量0.01モル%以上0.3モル%以下、残部がオレフィン含量である。
(3)クロス化工程で得られるクロス共重合体に対する配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の質量割合が50〜95質量%である。
(4)得られたクロス共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の総モル含量に対し、含まれるアルキル置換スチレンのモル含量が5%以上である。

【発明の効果】
【0007】
本発明は、特定の条件を満たすクロス共重合体及びこれを含む熱可塑性樹脂組成物であって、架橋特性に優れ、得られた架橋体、または動的架橋体は、耐熱性、軟質性、耐油性、流動性、耐傷つき摩耗性、力学物性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例及び比較例で得られた樹脂組成物の粘弾性スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の(1)〜(4)の条件を満たすクロス共重合体及びこれを含む熱可塑性樹脂組成物である。
(1)配位重合工程とクロス化工程からなる重合工程を含む製造方法であって、配位重合工程として、シングルサイト配位重合触媒を用いてオレフィンモノマー、芳香族ビニル化合物モノマーおよび芳香族ポリエンの共重合を行ってオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体を合成し、次にクロス化工程として、このオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体と芳香族ビニル化合物モノマーの共存下、アニオン重合開始剤を用いて重合することを特徴とする製造方法で得られるクロス共重合体。
(2)配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成が、芳香族ビニル化合物含量5モル%以上40モル%以下、芳香族ポリエン含量0.01モル%以上0.3モル%以下、残部がオレフィン含量である。
(3)クロス化工程で得られるクロス共重合体に対する配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の質量割合が50〜95質量%である。
(4)得られたクロス共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の総モル含量に対し、含まれるアルキル置換スチレンのモル含量が5%以上である。
【0010】
クロス共重合体は、主鎖であるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体に、クロス鎖である芳香族ビニル化合物モノマーから構成されるポリマー鎖が、主鎖芳香族ポリエンユニットを介して結合している構造(クロス共重合構造、またはSegregated star copolymer構造)を含むと考えられるが、本明細書におけるクロス共重合体は本構造には限定されず、本発明で規定される製造方法により得られる共重合体として定義される。本発明のクロス共重合体の200℃、荷重98Nで測定したMFR値は、特に限定されないが、一般的には0.01g/10分以上、300g/10分以下である。
【0011】
本発明に用いられるクロス共重合体の製造において、その配位重合工程に用いられるオレフィンとしては、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン、すなわちプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサンや環状オレフィン、すなわちシクロペンテン、ノルボルネンが挙げられる。好ましくは、エチレンまたはエチレンとα−オレフィンすなわちプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、または1−オクテン等の混合物が用いられ、更に好ましくは、エチレンが用いられる。
【0012】
配位重合工程に用いられる芳香族ビニル化合物モノマーは、スチレンおよび各種の置換スチレン、例えばp(パラ)−メチルスチレン、m(メタ)−メチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、m−t−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン等が挙げられる。好ましくはスチレン、及びm−、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン等の芳香族環に炭素数1〜6のアルキル置換基を有するアルキル置換スチレンから選ばれる1種以上である。最も好ましくはスチレン、及びm−、p−メチルスチレンから選ばれる1種以上である。
【0013】
配位重合工程に用いられる芳香族ポリエンは10以上30以下の炭素数を持ち、複数の二重結合(ビニル基)と単数または複数の芳香族基を有し配位重合可能な芳香族ポリエンであり、二重結合(ビニル基)の1つが配位重合に用いられて重合した状態において残された二重結合がアニオン重合またはラジカル重合可能な芳香族ポリエンである。好ましくは、オルトジビニルベンゼン、パラジビニルベンゼン及びメタジビニルベンゼンのいずれか1種または2種以上の混合物が好適に用いられる。
【0014】
配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成が、芳香族ビニル化合物含量5モル%以上40モル%以下、芳香族ポリエン含量0.01モル%以上0.3モル%以下、残部がオレフィン含量である条件、好ましくは芳香族ビニル化合物含量5モル%以上30モル%以下、芳香族ポリエン含量0.01モル%以上0.3モル%以下、残部がオレフィン含量である条件を満たすことにより、優れた軟質性、耐傷つき摩耗性を有するクロス共重合体を得ることが出来る。オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成は、公知の一般的方法により上記範囲に制御することが達成できるが、最も簡単にはモノマ−仕込み組成比を変更することにより達成できる。
【0015】
上記オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成が、芳香族ビニル化合物含量5モル%未満の場合、オレフィン連鎖構造に由来する結晶構造、例えばエチレン連鎖やプロピレン連鎖に基づく結晶構造が一定以上存在し、最終的に得られる本発明の樹脂組成物の軟質性が損なわれてしまう場合があり、さらに成型加工時に結晶化による収縮等成型体の寸法安定性が損なわれてしまう場合がある。本発明により得られるクロス共重合体は、本オレフィン結晶性および他の結晶性も含めた総結晶融解熱としては50J/g以下、好ましくは30J/g以下である。総結晶融解熱はDSCにより50℃〜ほぼ200℃の範囲に観測される融点に由来するピ−クの面積の総和から求めることが出来る。
【0016】
上記オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成が、芳香族ビニル化合物含量40モル%を超える場合には、そのガラス転移温度が室温付近、例えば10℃以上にまで上昇し、耐衝撃性、軟質性や耐寒性が損なわれてしまうことがある。
【0017】
さらに、本製造方法の配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の重量がアニオン重合工程を経て最終的に得られるクロス共重合体重量の50質量%以上95質量%以下が好ましく、特に好ましくは60質量%以上90質量%以下である場合、軟質性に優れるクロス共重合体が得られ、ひいては耐衝撃性や軟質性に優れる樹脂組成物を得ることが出来る。
【0018】
さらに本製造方法の配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の重量平均分子量は、一般的に100万以下3万以上、本発明の樹脂組成物の成型加工性を考慮すると、好ましくは30万以下、3万以上である。オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、一般的に1.5以上8以下、好ましくは1.5以上6以下、最も好ましくは1.5以上4以下である。分子量分布がこれらより高い値の場合、オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体のポリエン部分の自己架橋が起こっている場合があり、成形加工性の悪化やゲル化が懸念される場合がある。
【0019】
さらに上記本製造方法の配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の芳香族ポリエン含量は0.01モル%以上0.3モル%以下、好ましくは0.01モル%以上0.2モル%以下である。上記範囲未満ではクロス共重合体としての特性が充分ではなく、上記範囲より高いと成形加工性が悪化してしまう場合がある。
【0020】
クロス鎖部分の長さ(分子量)は、クロス化されなかったホモポリマーの分子量から推定できるが、その長さは、重量平均分子量として、好ましくは5000以上15万以下、さらに好ましくは5000以上10万以下、特に好ましくは5000以上7万以下である。また、その分子量分布(Mw/Mn)は好ましくは5以下、特に好ましくは3以下である。
【0021】
本発明に用いられるクロス共重合体のクロス化工程において、芳香族ビニル化合物モノマ−がもちいられる。このような芳香族ビニル化合物モノマ−としては、スチレン、p(パラ)−メチルスチレン、m(メタ)−メチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−ターシャリ−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が例示でき、好ましくはスチレン、及びm−、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン等の芳香族環に炭素数1〜6のアルキル置換基を有するアルキル置換スチレンから選ばれる1種以上である。最も好ましくはスチレン、及びm−、p−メチルスチレンから選ばれる1種以上である。
クロス化工程に於いては、芳香族ビニル化合物モノマ−に加えて、アニオン重合やラジカル重合可能なモノマ−を添加しても良い。その添加量は、用いる芳香族ビニル化合物モノマ−量に対して最大でも等モル量までである。本発明のクロス工程では上記モノマ−以外に、配位重合工程で重合されずに重合液中に少量残存する芳香族ポリエンも重合されて良い。
【0022】
本発明のクロス化工程は、上記の配位重合工程の後に実施される。この際、配位重合工程で得られた共重合体を、クラムフォーミング法、スチームストリッピング法、脱揮槽、脱揮押出し機等を用いた直接脱溶媒法等、任意のポリマー回収法を用いて、重合液から分離、精製してクロス化工程に用いても良い。しかし、配位重合後の重合液から、残留オレフィンを放圧後、あるいは放圧せずに、必要であればモノマーを添加し、次のクロス化工程に用いるのが、経済的に好ましい。重合体を重合液から分離せずに、重合体を含んだ重合溶液をクロス化工程に用いることができることが本発明の特徴の1つである。
【0023】
本発明のクロス共重合体においては含まれる芳香族ビニル化合物の総モル含量に対し、含まれるアルキル置換スチレンのモル含量が5%以上である必要がある。さらに好ましくは、本発明のクロス共重合体に含まれるアルキル置換スチレンの質量%が5質量%以上である。本条件の達成のためには、前記配位重合工程及び/またはクロス化工程において、上記アルキル置換スチレン、好ましくはメタ及び/またはパラメチルスチレンを用いる必要がある。配位重合工程及び/またはクロス化工程のいずれの工程で用いるかは、得られる本クロス共重合体の物性、使用目的に照らして任意である。例えば配位重合工程及びクロス化工程の両工程でアルキル置換スチレンが用いられる場合がある。この場合、主鎖であるソフトセグメントとクロス鎖であるハードセグメント両方に架橋席となり得るアルキル置換スチレンが含まれることとなる。また、高価なアルキル置換スチレンの使用量を実用性を妨げない範囲で減じるためにスチレン等の他の芳香族ビニル化合物と併用することが出来る。この場合、クロス共重合体においては含まれる芳香族ビニル化合物の総モル含量に対し、含まれるアルキル置換スチレンのモル含量が5%以上である必要がある。
配位重合工程のみでアルキル置換スチレンが用いられる場合には、主鎖であるソフトセグメントに架橋席であるアルキル置換スチレンが導入される。
【0024】
クロス化工程のみでアルキル置換スチレンが用いられる場合にはクロス鎖であるハードセグメントに架橋席であるアルキル置換スチレンが含まれることとなる。ハードセグメントのみに架橋席を有すると、得られる架橋体や動的架橋コンパウンドの柔軟性、低温特性を維持したまま、耐熱性、耐油性を向上させることが可能となり好適である。クロス化工程のみでアルキル置換スチレンを用いる場合、以下のような重合手法が例示できる。例えば、アルキル置換スチレンを用いずに配位重合工程を行い、工程終了後上記のように得られたポリマ−を回収し、本ポリマーを新たな重合溶媒に溶解し、その際にアルキル置換スチレンを含む芳香族ビニル化合物を添加してクロス化工程の重合を行う。本方法は、ポリマ−回収、再溶解に手間がかかり経済的には好ましくはない。
工業的に好ましくは、アルキル置換スチレンを用いず、例えば芳香族ビニル化合物としてスチレンのみを用いて配位重合工程を行い、工程終了後の重合液にアルキル置換スチレンを添加してクロス化工程の重合を行う。この場合は、配位重合工程で未反応のスチレンとアルキル置換スチレンの混合物中でクロス化工程の重合を行うこととなり、クロス鎖の芳香族ビニル化合物鎖は、スチレンとアルキル置換スチレンのランダムまたはテ−パ−(傾斜組成)構造を有することができる。また、同様にスチレンのみを用いて配位重合工程及びクロス化工程の重合を行い、アニオン重合末端が生きている段階でアルキル置換スチレンを添加することも可能である。この場合は、クロス鎖の芳香族ビニル化合物鎖は、ポリスチレンブロックとポリアルキル置換スチレンブロックのブロック共重合構造を有することができる。
【0025】
以下に、本発明の製造方法について詳細に説明する。
<配位重合工程>
本製造方法の配位重合工程においては、シングルサイト配位重合触媒が用いられる。好ましくは、下記の一般式(1)または(2)で表される遷移金属化合物と助触媒から構成されるシングルサイト配位重合触媒を用いる。
【0026】
【化1】



式中、A、Bは同一でも異なっていてもよく、非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換シクロペンタジエニル基、非置換もしくは置換インデニル基、または非置換もしくは置換フルオレニル基から選ばれる基である。ここで、例えば置換ベンゾインデニル基とは、置換可能な任意の数の水素を置換基である炭素数1〜5のアルキル基や炭素数6〜20のアリ−ル基、炭素数7〜20のアルキルアリ−ル基で置換したベンゾインデニル基を示す。本置換基は、1個または2個の珪素、酸素、硫黄、燐原子を含んでも良い。置換インデニル基、置換シクロペンタジエニル基、置換フルオレニル基も同様である。
YはA、Bと結合を有し、他に置換基として水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基(1〜3個の窒素、酸素、硫黄、燐、珪素原子を含んでもよい)を有するメチレン基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Yは環状構造を有していてもよい。
Xは、水素、水酸基、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜4の炭化水素置換基を有するシリル基、または炭素数1〜20の炭化水素置換基を有するアミド基である。Xが複数の場合、X同士は結合を有しても良い。nは、1または2の整数である。
Mはジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。
好ましくは、A、Bは非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換インデニル基から選ばれる基である。
【0027】
かかる遷移金属化合物の好適な例としては、EP−0872492A2公報、特開平11−130808号公報、特開平9−309925号公報に具体的に例示した置換メチレン架橋構造を有する遷移金属化合物である。
【0028】
【化2】



式中、Cpは非置換もしくは置換シクロペンタフェナンスリル基、非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換シクロペンタジエニル基、非置換もしくは置換インデニル基、または非置換もしくは置換フルオレニル基から選ばれる基である。ここで、例えば置換ベンゾインデニル基とは、置換可能な任意の数の水素を置換基である炭素数1〜5のアルキル基や炭素数6〜20のアリ−ル基、炭素数7〜20のアルキルアリ−ル基で置換したベンゾインデニル基を示す。本置換基は、1個または2個の珪素、酸素、硫黄、燐原子を含んでも良い。置換シクロペンタフェナンスリル基、置換インデニル基、置換シクロペンタジエニル基、置換フルオレニル基も同様である。
Y’は、Cp、Zと結合を有し、他に水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基を有するメチレン基、シリレン基、エチレン基、ゲルミレン基、硼素残基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Y’は環状構造を有していてもよい。Zは窒素、酸素またはイオウを含み、窒素、酸素またはイオウでM’に配位する配位子でY’と結合を有し、他に水素、炭素数1〜15の置換基を有する基である。
M’はジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。
X’は、水素、ハロゲン、炭素数1−15のアルキル基、炭素数6−10のアリール基、炭素数8−12のアルキルアリール基、炭素数1−4の炭化水素置換基を有するシリル基、炭素数1−10のアルコキシ基、または炭素数1−6のアルキル置換基を有するジアルキルアミド基である。
nは、1または2の整数である。
一般式(2)で示される遷移金属化合物の好適な例としては、EP−416815A公報、USP6323294B1公報に具体的に例示された遷移金属化合物である。
【0029】
本製造方法の配位重合工程においては、さらに好ましくは、上記の一般式(1)で表されるシングルサイト配位重合触媒と助触媒から構成される重合触媒が用いられる。
本製造方法の配位重合工程で用いる助触媒としては、従来遷移金属化合物と組み合わせて用いられている公知の助触媒を使用することができるが、そのような助触媒として、メチルアルミノキサン(またはメチルアルモキサンまたはMAOと記す)等のアルモキサンまたは硼素化合物が好適に用いられる。用いられる助触媒の例としては、EP−0872492A2号公報、特開平11−130808号公報、特開平9−309925号公報、WO00/20426号公報、EP0985689A2号公報、特開平6−184179号公報に記載されている助触媒やアルキルアルミニウム化合物が挙げられる。
アルモキサン等の助触媒は、遷移金属化合物の金属に対し、アルミニウム原子/遷移金属原子比で0.1〜100000、好ましくは10〜10000の比で用いられる。0.1より小さいと有効に遷移金属化合物を活性化出来ず、100000を超えると経済的に不利となる。
【0030】
助触媒として硼素化合物を用いる場合には、硼素原子/遷移金属原子比で0.01〜100の比で用いられるが、好ましくは0.1〜10、特に好ましくは1で用いられる。0.01より小さいと有効に遷移金属化合物を活性化出来ず、100を超えると経済的に不利となる。遷移金属化合物と助触媒は、重合設備外で混合、調製しても、重合時に設備内で混合してもよい。
【0031】
本発明の配位重合工程でオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体を製造するにあたっては、上記に例示した各モノマー、遷移金属化合物および助触媒を接触させるが、接触の順番、接触方法は任意の公知の方法を用いることができる。
以上の共重合の方法としては溶媒を用いずに液状モノマー中で重合させる方法、あるいはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クロロ置換ベンゼン、クロロ置換トルエン、塩化メチレン、クロロホルム等の飽和脂肪族または芳香族炭化水素またはハロゲン化炭化水素の単独または混合溶媒を用いる方法がある。好ましくは混合アルカン系溶媒やシクロヘキサンやトルエン、エチルベンゼンを用いる。重合形態は溶液重合、スラリ−重合いずれでもよい。また、必要に応じ、バッチ重合、連続重合、予備重合、多段式重合等の公知の方法を用いることが出来る。
単数や連結された複数のタンク式重合缶やリニアやル−プの単数、連結された複数のパイプ重合設備を用いることも可能である。パイプ状の重合缶には、動的、あるいは静的な混合機や除熱を兼ねた静的混合機等の公知の各種混合機、除熱用の細管を備えた冷却器等の公知の各種冷却器を有しても良い。また、バッチタイプの予備重合缶を有していても良い。さらには気相重合等の方法を用いることができる。
重合温度は、−78℃から200℃が適当である。−78℃より低い重合温度は工業的に不利であり、200℃を超えると遷移金属化合物の分解が起こるので適当ではない。さらに工業的に好ましくは、0℃〜160℃、特に好ましくは30℃〜160℃である。
重合時の圧力は、0.1気圧〜100気圧が適当であり、好ましくは1〜30気圧、特に工業的に特に好ましくは、1〜10気圧である。
【0032】
さらに用いられるシングルサイト配位重合触媒の遷移金属化合物が一般式(1)で示される構造を有し、かつA、Bは非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換インデニル基から選ばれる基であり、YはA、Bと結合を有し、他に置換基として水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基(1〜3個の窒素、酸素、硫黄、燐、珪素原子を含んでもよい)を有するメチレン基または硼素基であり、かつ本遷移金属化合物はラセミ体である場合、得られる本組成範囲のオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体は、オレフィン−芳香族ビニル化合物の交互構造、好ましくはエチレン−芳香族ビニル化合物交互構造にアイソタクティックの立体規則性を有し、そのため本発明のクロス共重合体は本交互構造に由来する微結晶性を有することが出来る。そのため、本オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体は、立体規則性がない場合と比較し交互構造の微結晶性に基づく良好な力学物性や耐油性を与えることができ、この特徴は最終的に本発明のクロス共重合体にも受け継ぐことが出来る。
さらに用いられる一般式(1)で示される遷移金属化合物のA、Bが非置換ベンゾインデニル基、非置換インデニル基から選ばれる基である場合、オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体製造における重合活性が非常に高く、好適である。
【0033】
オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の交互構造の微結晶性による結晶融点は概ね50℃〜120℃の範囲にありDSCによるその結晶融解熱は1〜30J/g以下であるので、本発明のクロス共重合体は総体として、50J/g以下、好ましくは30J/g以下の結晶融解熱を有することができる。本範囲の結晶融解熱の結晶性は、本クロス共重合体の軟質性、成型加工性に悪影響は与えず、むしろ優れた力学物性や耐油性の面で有益である。
【0034】
配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体(エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体)においては、TUS/DOU値は好ましくは1.1より高い値をとり、概ね1.2以上10以下、より好ましくは1.2以上5以下の値をとる。TUS/DOU値がより大きい場合、芳香族ポリエンユニット含量が少なすぎ、本発明のクロス共重合体としての機能が失われてしまう場合がある。また、TUS/DOU値が1.1以下の場合、芳香族ポリエンユニット含量が多すぎて主鎖に由来する機能が失われやすくなり、またクロス共重合体の成形加工性が悪化してしまったり、クロス共重合体中にゲル分が生成してしまう恐れがある。ここで、TUSは、共重合体に含まれるト−タルのビニル基含量で、芳香族ポリエン(ジビニルベンゼン)ユニットに由来するビニル基とポリマ−末端のビニル基の含量の総和であり、1H−NMR測定により求められる。またDOU値は主鎖エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体に含まれるジビニルベンゼンユニット含量である。本TUS/DOU値の意味、求め方については、米国特許US6414102、US6265493、US6096849にも記載してある。
【0035】
<クロス化工程>
本発明の製造方法のクロス化工程では、配位重合工程で得られたオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体と芳香族ビニル化合物モノマーの共存下、アニオン重合開始剤を用いてアニオン重合を行う。
【0036】
本発明のクロス化工程のアニオン重合では、公知のアニオン重合開始剤を用いることができる。好ましくは、アルキルリチウム化合物やビフェニル、ナフタレン、ピレン等のリチウム塩あるいはナトリウム塩、特に好ましくは、sec−ブチルリチウム、n(ノルマル)−ブチルリチウムが用いられる。また、多官能性開始剤、ジリチウム化合物、トリリチウム化合物を用いても良い。さらに必要に応じて公知のアニオン重合末端カップリング剤を用いてもよい。
溶媒は、連鎖移動等の不都合を生じない混合アルカン系溶媒やシクロヘキサンやベンゼン等の溶媒が特に好ましいが、重合温度が150℃以下であれば、トルエン、エチルベンゼン等の他の溶媒も用いることが可能である。
【0037】
溶媒は、アルカン系溶媒やシクロヘキサンやベンゼン等の溶媒が特に好ましいが、トルエン、エチルベンゼン等の他の溶媒も用いることが可能である。
本発明のクロス化工程では、芳香族ビニル化合物モノマ−の重合転換率が高いほど好ましい力学物性や光学物性のクロス共重合体が得られる。そのため、比較的短い時間で容易に芳香族ビニル化合物モノマ−の高重合転換率が達成可能なアニオン重合が採用される。
【0038】
重合形態は、アニオン重合に用いられる任意の公知の方法を用いることができる。重合温度は、−78℃から200℃が適当である。−78℃より低い重合温度は工業的に不利であり、150℃を超えると連鎖移動等が起こるので適当ではない。さらに工業的に好ましくは、0℃〜200℃、特に好ましくは30℃〜150℃である。
重合時の圧力は、0.1気圧〜100気圧が適当であり、好ましくは1〜30気圧、特に工業的に特に好ましくは、1〜10気圧である。
【0039】
<動的架橋>
本発明のクロス共重合体及びその熱可塑性樹脂組成物は、動的架橋を行うことが出来る。本発明で云う動的架橋とは各種配合物を溶融状態で架橋剤が反応する温度条件下で強力に混練させる事により分散と架橋を同時に起こさせる手法であり、A.Y.Coranらの文献(Rub.Chem.andTechnol.vol.53.141〜(1980))に詳細に記されている。動的架橋時の混練機は通常バンバリーミキサー、加圧式ニーダーのような密閉式混練機、一軸や二軸押出機等を用いて行われる。混練温度は通常130〜300℃、好ましくは150〜200℃である。混練時間は通常1〜30分である。動的架橋の際の架橋剤としては通常有機過酸化物やフェノール樹脂架橋剤が良く用いられる。上記の有機過酸化物としては具体的には、ジキュミルパーオキサイド、2.5−ジメチル−2.5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)−ヘキサン、2.5−ジメチル−2.5−ジ(tertーブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ジ−ter−ブチルパーオキサイド等が例示できる。又架橋助剤としてマレイミド化合物や、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレートの様な多官能性ビニールモノマーを用いることも出来る。本発明において架橋剤の使用量は通常は芳香族ビニル化合物−オレフィンランダム共重合体100重量部に対し0.04〜15重量部の割合で用いる。
【0040】
<エネルギ−線架橋>
本発明のクロス共重合体及びその熱可塑性樹脂組成物は、各種エネルギ−線を用いて架橋することが出来る。配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体において芳香族ポリエン含量を40モル%以下、好ましくは30モル%以下とすることで、特にエネルギー線架橋性が向上し、低線量においても十分な架橋度(ゲル分、耐熱性)が得られ好ましい。エネルギ−線を用いての架橋は、成形後に架橋できる点がメリットであり、例えばシボ付きシ−ト成形後に、シボを保持したまま架橋させることができるため、自動車内装用シ−トや高級レザ−シ−トの作成に適している。ここで用いられるエネルギー線としては、粒子線、電磁波、およびこれらの組み合わせが挙げられる。粒子線としては電子線(EB)、α線、電磁波としては紫外線(UV)、可視光線、赤外線、γ線、X線などが挙げられる。これらの中でも、電子線(EB)または紫外線(UV)が好ましい。
これらの活性エネルギー線は、公知の装置を用いて照射することができる。電子線(EB)の場合の加速電圧としては0.1〜10MeV、照射線量としては1〜500kGyの範囲が適当である。本加速電圧と照射線量は、フィルム、シ−トの厚さと必要とされる架橋度により、適切に制御する。紫外線(UV)の場合、その線源として放射波長が200nm〜450nmのランプを好適に用いることができる。
本発明のクロス共重合体及びその熱可塑性樹脂組成物には必要に応じて、特にエネルギー線として紫外線(UV)を用いる場合、光重合開始剤をさらに配合することができる。使用できる光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−メチロールベンゾイン、α−メチロールベンゾインメチルエーテル、α−メトキシベンゾインメチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、α−t−ブチルベンゾインなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。光重合開始剤を配合する場合、樹脂成分の合計質量に対して0.01〜5質量%の範囲であるのが好ましい。
【0041】
本発明のクロス共重合体及びその熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて架橋助剤をさらに配合することができる。使用できる架橋助剤にはトリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、N,N’−フェニレンビスマレイミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの架橋助剤は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。架橋助剤を配合する場合、その含有量に特に制限はないが、通常、合計質量に対して0.01〜5質量%の範囲であるのが好ましい。
【0042】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、他に、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、通常の樹脂に用いられる添加剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐候剤、耐光剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、着色剤、滑剤、防曇剤、発泡剤、難燃剤、難燃助剤等を添加しても良い。
【0043】
熱可塑性樹脂組成物を用いた動的架橋体は、クロス共重合体が本来有する耐傷つき性、耐摩耗性を維持しつつ、改善された圧縮永久ひずみ性を有することが出来る。具体的には、JISK6262による圧縮永久ひずみ(70℃、22時間後)が60%以下の値を示すことが可能である。
【0044】
本発明のクロス共重合体または熱可塑性樹脂組成物を用いたエネルギー線架橋物は、クロス共重合体が本来有する耐傷つき性、耐摩耗性を維持しつつ、改善された耐熱性を有することが出来る。具体的にはエネルギー線架橋物は架橋前と比較し、より高いゲル分を有し、また粘弾性スペクトル測定において貯蔵弾性率(E’)が10Paに減少する温度を5℃以上上昇させることが可能である。好ましくは、エネルギー線架橋物は10質量%以上、好ましくは20質量%以上のゲル分と、上記貯蔵弾性率(E’)が10Paに減少する温度が120℃以上、好ましくは130℃以上を示すことができる。また、所定の測定法による耐傷つき性、耐摩耗性も優れた値を示すことが出来る。
【0045】
<熱可塑性樹脂組成物>
本発明のクロス共重合体は、以下に挙げる「オレフィン系ポリマ−」や「芳香族系ポリマー」との組成物として、上記動的架橋やエネルギ−線による架橋に供することが出来る。この場合、本発明のクロス共重合体は熱可塑性樹脂組成物全体質量に対し50〜99質量%の範囲で用いることが出来る。本発明のクロス共重合体は「オレフィン系ポリマ−」または「芳香族系ポリマー」に対し比較的良好な相溶性を示すため、得られる熱可塑性樹脂組成物の動的架橋体や架橋体は比較的軟質であり、耐傷つき摩耗性、耐熱性、耐パラフィンオイル性に優れる特徴がある。
【0046】
さらに本発明のクロス共重合体は、ブロック共重合体系ポリマ−との組成物として用いることが可能で、組成物の全体質量に対し50〜99質量%の範囲で用いることが出来る。本発明のクロス共重合体は良好な軟質性と耐油性を有するため、ブロック共重合体系ポリマ−との樹脂組成物の動的架橋体や架橋体はおいては軟質性、力学物性を損なわずに耐油性、耐寒性を付与することが出来る。
【0047】
「オレフィン系ポリマ−」
炭素数2〜20までのオレフィンモノマ−からなるオレフィン単独重合体または共重合体であり、例えば高密度ポリエチレン(LDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリオレフィンエラストマ−(POE)、アイソタクティックポリプロピレン(i−PP、ホモPP、ランダムPP、ブロックPPを含む)、シンジオタクティックポリプロピレン(s−PP)、アタクティックポリプロピレン(a−PP)、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−ノルボルネン共重合体、エチレン−ビニルシクロヘキサン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体が挙げられる。必要に応じてブタジエンやα−ωジエン等のジエン類を共重合した共重合体でも良い。このような例としてはエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体等が挙げられる。以上のオレフィン系ポリマ−は、その実用樹脂としての物性、成形加工性を発現するために、ポリスチレン換算重量平均分子量として、1万以上、好ましくは3万以上50万以下、好ましくは30万以下が必要である。
【0048】
「芳香族系ポリマー」
スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物の単独重合体またはこれらの共重合体及びポリフェニレンエーテル(PPE)系の重合体または共重合体を含む概念である。ここで芳香族ビニル化合物と共重合可能なモノマーとしては、ブタジエン、イソプレン、その他の共役ジエン類、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらのアミド誘導体やエステル誘導体、アクリロニトリル、無水マレイン酸及びその誘導体が挙げられる。芳香族ビニル化合物系重合体のポリスチレン換算重量平均分子量は、3万から50万の範囲である。また、これらの樹脂をポリブタジエン等のゴムで補強したいわゆるハイインパクトポリスチレン(HIPS)でも良い。
ポリフェニレンエーテル系樹脂との組成物化は、高温時の弾性率低下防止、耐傷つき摩耗性や高温耐油性の更なる向上に効果がある。用いられる「ポリフェニレンエーテル系樹脂」は、例えば特開昭53−71158号、特開昭54−88960号、特開昭59−100159号、EP0,209,874B1号公報、特開平11−181272号公報、特表2002−533478号公報、特開2000−178388号公報、特開2000−198918号公報、特公平8−3001号公報に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂が挙げられる。
【0049】
「ブロック共重合体系ポリマ−」
アニオン重合またはその他の重合方法によるリビング重合により得られるジブロック、トリブロック、マルチブロック、スタ−ブロックあるいはテ−パ−ドブロック構造を有するブロック共重合体である。この様な例として、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン共重合体(SIS)やこれらの水添物(SEBSやSIPS)が挙げられる。以上のブロック共重合体系ポリマ−は、その実用樹脂としての物性、成形加工性を発現するために、ポリスチレン換算重量平均分子量として、5000以上、好ましくは1万以上、50万以下、好ましくは30万以下が必要である。
【0050】
さらに本発明のクロス共重合体に対し、「石油樹脂、水添石油樹脂」を添加することも出来る。その添加量はクロス共重合体100質量部に対し、一般的に1〜40質量部、好ましくは1〜20質量部である。「石油樹脂、水添石油樹脂」を添加することで、各種物性、機能性を保持しつつ流動性を向上させ、特に動的架橋等の加工法に適合させることが可能となる。
さらに本発明のクロス共重合体は、「ポリアミド系樹脂」との組成物として用いることが可能で、本発明のクロス共重合体100質量部に対してこれらの樹脂を1〜100質量部の範囲で添加することが出来る。このような樹脂組成物は、クロス共重合体の耐熱性、軟質性、力学物性に加え、優れた高温耐油性、剛性と靱性のバランスを付与することが出来る。用いられる「ポリアミド系樹脂」は、例えば特開平8−217972号公報に記載のポリアミドが挙げられる。
【0051】
<可塑剤>
本発明のクロス共重合体またはその熱可塑性樹脂組成物には従来塩ビや他の樹脂に用いられる公知の任意の可塑剤を配合することが出来る。用いられる可塑剤は炭化水素系可塑剤、または含酸素または含窒素系可塑剤である。炭化水素系可塑剤(オイル)の例としては、脂肪族炭化水素系可塑剤、芳香族炭化水素系可塑剤やナフテン系可塑剤が例示でき、含酸素または含窒素系可塑剤としてはエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、エ−テル系可塑剤、またはアミド系可塑剤が例示できる。
これらの可塑剤は、本発明のクロス共重合体の硬度、あるいは流動性(成形加工性)の調整に用いることができる。またガラス転移温度を低下させ、脆化温度を下げる効果がある。
【0052】
本発明に好適に用いることができるエステル系可塑剤の例としては、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、アジピン酸エステル、セバチン酸エステル、アゼレ−ト系エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、グルタミン酸エステル、コハク酸エステル、酢酸エステル等のモノ脂肪酸エステル、リン酸エステルやこれらのポリエステルである。
本発明に好適に用いることができるエポキシ系可塑剤の例としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油が挙げられる。
本発明に好適に用いることができるエ−テル系可塑剤の例としては、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、これらの共重合物、混合物が挙げられる。
本発明に好適に用いることができるアミド系可塑剤の例としては、スルホン酸アミドが挙げられる。これら可塑剤は単独で用いても、複数を用いてもよい。
【0053】
本発明に特に好ましく用いられるのはエステル系可塑剤である。これらの可塑剤は、クロス共重合体との相溶性に優れ、可塑化効果に優れ(ガラス転移温度低下度が高い)、ブリ−ドが少ないという利点がある。可塑剤の配合量は、本発明のクロス共重合体またはその熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、可塑剤1質量部以上25質量部以下、好ましくは1質量部以上15質量部以下である。1質量部未満では上記効果が不足し、25質量部より高いとブリ−ドや、過度の軟化、それによる過度のべたつきの発現等の原因となる場合がある。
【0054】
<無機質充填剤(フィラ−)>
以下、本発明に用いることができる無機質充填剤について示す。
無機質充填剤は、本発明のクロス共重合体またはその熱可塑性樹脂組成物に難燃性を付与するためにも用いられる。無機質充填剤の体積平均粒子径は、好ましくは50μm以下、好ましくは10μm以下の範囲である。体積平均粒子径が、0.5μm未満であったり50μmを超えるとフィルム化したときの力学物性(引張強度、破断伸度等)の低下が生じるとともに柔軟性の低下やピンホールの発生を引き起こしてしまうことがある。体積平均粒子径は、レーザ回析法で測定した体積平均粒子径である。
【0055】
無機質充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、トリフェニルホスフィート、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アミド、酸化ジリコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化モリブデン、リン酸グアニジン、ハイドロタルサイト、スネークタイト、硼酸亜鉛、無水硼酸亜鉛、メタ硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、酸化アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、赤燐、タルク、アルミナ、シリカ、ベーマイト、ベントナイト、珪酸ソーダ、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムであり、これらから選ばれる1種又は2種以上の化合物が使用される。特に、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、炭酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いるのが難燃性の付与効果に優れ、経済的に有利である。
無機質充填剤の配合量は、本発明のクロス共重合体またはその熱可塑性樹脂組成物100質量部に対し1〜1000質量部、好ましくは5〜200質量部の範囲である。無機質充填剤が1質量部未満では、難燃性が劣る場合がある。一方で、無機質充填剤が1000質量部を超えると、熱可塑性樹脂組成物の成形性及び強度等の機械的物性が劣る場合がある。
無機質充填剤を非ハロゲン系難燃剤として配合した場合は、チャー(炭化層)の形成を図り、フィルム等の難燃性を向上させることもできる。
【0056】
<難燃剤>
以下、本発明に用いることができる難燃剤について示す。有機難燃剤としてはペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカンなどの臭素化合物、トリフェニルホスフェートなどの芳香族のリン酸エステル、赤リン、ハロゲンを含むリン酸エステル等のリン化合物、1,3,5−トリアジン誘導体等の含窒素化合物、塩素化パラフィン、臭素化パラフィン等のハロゲン含有化合物が例示できる。
無機難燃剤としては上記無機質充填材でもあるアンチモン化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物が例示できる。これら難燃剤は、用途に応じ、適切な添加量で用いることが出来る。これらは公知の適当な難燃助剤と共に用いても良い。難燃剤の例は例えば、特開平11−199724、特表2002−533478号公報等にも記載してある。
【0057】
<耐光剤>
本発明に用いられる耐光剤は、公知の耐光剤である。一般的には耐光剤は、光エネルギーを無害な熱エネルギーに変換する紫外線吸収剤と光酸化で生成するラジカルを捕捉するヒンダードアミン系光安定剤から構成される。紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤の質量比は1:100〜100:1の範囲で、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤の質量の合計量を耐光剤質量とし、その使用量は、本発明のクロス共重合体またはその熱可塑性樹脂組成物100質量部に対し、0.05〜5質量部の範囲である。
【0058】
本発明の樹脂組成物、可塑剤組成物、フィラ−組成物を製造する方法は特に限定されず、公知の適当なブレンド法を用いることができる。例えば、単軸、二軸のスクリュー押出機、バンバリー型ミキサー、プラストミル、コニーダー、加熱ロールなどで溶融混合を行うことができる。溶融混合を行う前に、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサー、タンブラーなどで各原料を均一に混合しておくこともよい。溶融混合温度はとくに制限はないが、一般的には150〜300℃、好ましくは200〜250℃である。
【0059】
<フィルム、テ−プ基材>
本発明のクロス共重合体またはその熱可塑性樹脂組成物をフィルムとして用いる場合、その厚みに特に制限はないが、一般に3μm〜1mm、好ましくは10μm〜0.5mmである。
フィルム(シート)を製造するには、インフレーション成形、Tダイ成形、カレンダ−成形、ロ−ル成形などの成形法を採用することができる。本発明のフィルムは、物性の改善を目的として、他の適当なフィルム、例えば、アイソタクティックまたはシンジオタクティックのポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE、またはLLDPE)、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のフィルムと多層化することができる。また、本発明のフィルムに様々な加飾処理、例えばシボ成形等を行うことが出来る。
【0060】
この様なフィルムは、上記エネルギ−線照射、好ましくは電子線照射により架橋を行うことができる。このようなフィルムの具体的用途は、特に限定されないが、その優れた力学物性、風合い、耐油性、耐傷つき摩耗性、耐熱性から、様々な表皮材として有用である。例えば合成皮革、特に自動車内装用の合成皮革に好適に用いることができる。
自動車用内装材としては、例えばインパネ、ドアトリム、シ−トの表皮、天井材、床材の表皮、ハンドル、ブレーキ、レバー、グリップ等の表皮が例示できる。また、フロアーマット材としても好適に使用できる。これらの用途の場合、ポリオレフィン系またはポリウレタン系の発泡シートと共に多層化して用いてもよく、それ自体を発泡させて用いることも出来る。必要に応じて各種コート剤をその表面に塗布しても良い。
また、本発明のフィルムは各種テ−プ基材として用いることが出来る。テ−プ基材として用いる場合、本発明のクロス共重合体またはその熱可塑性樹脂組成物のエネルギ−線架橋体は、軟質性、耐熱性、耐油性、特徴ある引張物性がメリットとなる。本クロス共重合体を含む組成物をテ−プ基材とし、公知の粘着剤、添加剤、成型方法が用いられる。このような粘着剤、添加剤、成型方法は例えば特許公開公報2000−111646号公報に記載されている。本テ−プ基材からなる粘着テ−プは、各種耐熱性を必要とされるテ−プとして好適に用いることが出来る。
【0061】
本フィルムは必要に応じて、コロナ、オゾン、プラズマ等の表面処理、防曇剤塗布、滑剤塗布、印刷等を実施することができる。本発明のフィルムは、必要に応じて1軸または2軸等の延伸配向を行った延伸フィルムとして作製することが出来る。本発明のフィルムは必要に応じて、熱、超音波、高周波等の手法による融着、溶剤等による接着等の手法によりフィルム同士、あるいは他の熱可塑性樹脂等の材料と接合することができる。
更に、本発明のフィルムは、例えば100μm以上の厚みを有する場合、真空成形、圧縮成形、圧空成形等の熱成形等の手法により食品、電気製品等の包装用トレーを成形することができる。
【0062】
更に、本発明のクロス共重合体またはその熱可塑性樹脂組成物は、エネルギ−線照射による架橋処理を行い、各種電線被覆材、ケ−ブル被覆材として好適に用いることができる。その際には、本発明の熱可塑性樹脂組成物の軟質性、耐熱性、耐油性、耐傷つき摩耗性、難燃性がメリットとなる。
さらに本発明のクロス共重合体またはその熱可塑性樹脂組成物は、架橋材と共に公知の方法で発泡体とすることができる。また本発明のクロス共重合体またはその熱可塑性樹脂組成物の動的架橋体またはエネルギー線架橋体は公知の方法で発泡体とすることができる。本発泡体は、連続気泡、独立気泡いずれでもよく、押し出し発泡、ビ−ズ発泡等公知の製造方法を適用できる。発泡体の製造方法は、再表00/037517号公報、特表2001−514275号公報、特表2002−506903号公報に記載してある方法が採用できる。このような発泡体は自動車バンパ−充填物や自動車構造材、あるいは各種ガスケットとして有用である。
【0063】
また、本発明のクロス共重合体またはその熱可塑性樹脂組成物は、太陽電池セルの封止材として好適に用いることができる。例えば、本発明のクロス共重合体またはその熱可塑性樹脂組成物からなるシートにエネルギー線架橋処理、好ましくは電子線架橋処理を行い、太陽電池セルを本シ−トではさんで接着する方法や、熱可塑性プロセスによりクロス共重合体またはその熱可塑性樹脂組成物で太陽電池セルを封止した後に電子線架橋を行う方法が例示できる。これらの方法は、架橋が簡単で室温、短時間で行えるため、工程時間の短縮が可能であり好適である。またロ−ル・トウ・ロ−ルプロセスとすることも可能であり、太陽電池製造法として有利である。本発明のクロス共重合体またはその熱可塑性樹脂組成物のエネルギー線架橋物は、透明性、耐熱性、水蒸気バリア性、電気絶縁性、耐候性に優れるため、太陽電池の信頼性向上に寄与することができる。
本発明の樹脂組成物はハロゲンを基本的に含有しないため、環境適応性や安全性が高いという基本的特徴を有する。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により、本発明を説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0065】
実施例で得られた共重合体の分析は以下の手段によって実施した。
13C−NMRスペクトルは、日本電子社製α−500を使用し、重クロロホルム溶媒または重1,1,2,2−テトラクロロエタン溶媒を用い、TMSを基準として測定した。ここでいうTMSを基準とした測定は以下のような測定である。先ずTMSを基準として重1,1,2,2−テトラクロロエタンの3重線13C−NMRピークの中心ピークのシフト値を決めた。次いで共重合体を重1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解して13C−NMRを測定し、各ピークシフト値を、重1,1,2,2−テトラクロロエタンの3重線中心ピークを基準として算出した。重1,1,2,2−テトラクロロエタンの3重線中心ピークのシフト値は73.89ppmであった。測定は、これら溶媒に対し、ポリマーを3質量/体積%溶解して行った。
ピーク面積の定量を行う13C−NMRスペクトル測定は、NOEを消去させたプロトンゲートデカップリング法により、パルス幅は45°パルスを用い、繰り返し時間5秒を標準として行った。
【0066】
共重合体中のスチレン含量の決定は、1H−NMRで行い、機器は日本電子社製α−500及びBRUCKER社製AC−250を用いた。重1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解し、測定は、80〜100℃で行った。TMSを基準としてフェニル基プロトン由来のピーク(6.5〜7.5ppm)とアルキル基由来のプロトンピーク(0.8〜3ppm)の面積強度比較で行った。
【0067】
分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求めた。測定は以下の条件で行った。
カラム:TSK−GEL MultiporeHXL-M φ7.8×300mm(東ソ−社製)を2本直列に繋いで用いた。
カラム温度:40℃
溶媒:THF
送液流量:1.0ml/min.
【0068】
DSC測定は、セイコー電子社製DSC200を用い、窒素気流下で行った。すなわち樹脂組成物10mgを用い、昇温速度10℃/分で−50℃から240℃までDSC測定を行い、融点、結晶融解熱及びガラス転移点を求めた。1回目の測定後液体窒素で急冷した後に行う2度目の測定は行わなかった。
【0069】
<サンプルシ−ト作成>
なお、引張試験の試料には加熱プレス法(温度200℃、時間5分間、圧力50kg/cm2)により成形した厚さ1.0mmのシ−トを用いた。粘弾性スペクトル、電子線架橋用の試料には同様の加熱プレス法(温度200℃、時間5分間、圧力50kg/cm2)により成形した厚さ0.5mmのシ−トを用いた。
【0070】
<電子線架橋>
岩崎電気EB装置TYPE:CB250/15/180Lを用い、加速電圧250kVで所定の照射線量(kGy)の照射を実施した。照射はシートの両面から同一線量で各1回行った。
【0071】
<引張試験>
JIS K−6251に準拠し、厚さ1mmのシートを2号1/2号型テストピース形状にカットし、島津製作所AGS−100D型引張試験機を用い、引張速度500mm/minにて測定した。
【0072】
<硬度>
硬度はJIS K−7215プラスチックのデュロメーター硬さ試験法に準じてタイプAのデュロメーター硬度を求めた。この硬度は瞬間値である。
【0073】
<粘弾性スペクトル>
上記加熱プレス法により得た厚み約0.5mmのフィルムから測定用サンプル(3mm×40mm)を切り出し、動的粘弾性測定装置(レオメトリックス社RSA−III)を使用し、周波数1Hz、温度領域−50℃〜+250℃の範囲で測定した。
その他測定パラメ−タ−は以下の通り
測定周波数1Hz
昇温速度4℃/分
サンプル測定長10mm
Initial Static Force 5.0g
Auto Tension Sensitivity 1.0g
Max Auto Tension Rate 0.033mm/s
Max Applied Strain 1.5%
Min Allowed Force 1.0g
【0074】
<圧縮永久歪み>
JISK6262に従って、70℃、22時間後の値を求めた。
【0075】
<耐傷つき性試験>
200℃、100気圧でプレス成型して得られた厚さ2mm、一辺100mmの正方形試験片を用い、下記スクラッチテスタ−、下記条件にてスクラッチ後、表面粗さ測定器にて評価を行った。
また、傷の形状をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察した。
スクラッチ
装置)スクラッチテスタ−:テ−バ−式スクラッチテスタ−(東洋精機社製)
条件)荷重:1N
針:サファイヤ針
スクラッチ速度:0.67mm/s
傷測定
装置)表面粗さ測定機:サ−フテストSJ−400(Mitutoyo社製)
条件)測定速度:0.5mm/s
評価項目:傷の最深部と最高部の差(高低差)を測定した。
測定は場所を変えて6回行い、最大値と最小値を除いた後、4回の平均を求めた。
【0076】
<テ−バ−摩耗試験>
テ−バ−摩耗試験はJISK7204に準拠し、東洋精機製テ−バ−磨耗試験機を用い、以下の試験条件下で実施し、摩耗量を測定した。
摩耗輪:H−22
円盤の回転速度:1rpm、荷重:1kg (回転数1000回転)
試験片:200℃、50気圧でプレス成型し得られた2mm、一辺約100mmの正方形試験片。
【0077】
<耐光性試験>
プレス成形で得られた0.5mm厚さフィルムを用い、フェードメータ−(光源カ−ボンア−クランプJISD0205)、シャワー無し、ブラックパネル温度83℃、1000時間の条件で実施し、黄変の有無を目視で確認し、全光線透過率、ヘイズ測定を行った。
また、試験後のサンプルを短冊状に切断し、 JIS K−6251に準拠し島津製作所社製AGS−100D型引張試験機を用いて、引張速度500mm/minにて引っ張り試験を行った。
【0078】
<ゲル分>
1mm厚さのシ−トを数mmに細断し、70℃のトルエン中24時間処理した後に不溶分を濾別し、その乾燥重量から、トルエン不溶ゲル分を、質量%として算出した。
【0079】
<ジビニルベンゼン>
ジビニルベンゼンは、新日鐵化学社製810(ジビニルベンゼンとしての純度81%、メタ体、パラ体混合物、メタ体:パラ体質量比70:30)である。
【0080】
<触媒(遷移金属化合物)>
以下の実施例1〜11では、触媒(遷移金属化合物)として、rac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライド(化3)を用いた。
【0081】
【化3】



【0082】
(合成例1)
<クロス共重合体の製造>
触媒としてrac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを用い、以下のように実施した。
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。シクロヘキサン4200ml、パラメチルスチレン(アルドリッチ社製、純度96%、比重0.897)600ml及び新日鐵化学社製ジビニルベンゼン(メタ、パラ混合品、純度81質量%、ジビニルベンゼン分として11mmol)を仕込み、内温60℃に調整し攪拌(200rpm)した。乾燥窒素ガスを1L/分の流量で数十分、液中にバブリングして系内及び重合液の水分をパージした。次いで、トリイソブチルアルミニウム8.4mmol、メチルアルモキサン(東ソーアクゾ社製、MMAO−3A/ヘキサン溶液)をAl基準で12.8mmol(表中ではMAOと記載)加え、ただちにエチレンで系内をパ−ジした。その後、内温を80℃に昇温してエチレンを導入し、圧力0.40MPa(3kg/cmG)で安定した後に、オートクレーブ上に設置した触媒タンクから、rac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを16.8μmol、トリイソブチルアルミニウム1mmolを溶かしたトルエン溶液約50mlをオートクレーブ中に加えた。重合熱により内温の上昇が観測され、流量制御弁を介しエチレンを補給し、内温を85℃、圧力を0.40MPaに維持しながら80分間重合を実施した。エチレンの流速、積算流量から重合進行状況をモニタ−した。エチレンの積算流量180Lにてエチレンの供給を停止し、エチレンを放圧すると共に内温を70℃まで冷却した(以上配位重合工程)。n−ブチルリチウム55mmolを触媒タンクから窒素ガスに同伴させて重合缶内に導入した(以降クロス化工程)。直ちにアニオン重合が開始し、内温は70℃から一時80℃まで上昇した。そのまま30分間温度を70〜80℃に維持し攪拌を継続し重合を続けた。数十mlのメタノ−ルを重合缶に加え、アニオン重合を停止した。
得られた重合液を大量のヘキサンとメタノ−ルの混合液中に少しずつ投入し、ポリマ−を析出させ溶媒と分離し、一昼夜風乾後真空乾燥機で70℃、10時間以上、質量変化が認められなくなるまで乾燥した。その結果、約710gのポリマーを回収した。
【0083】
(合成例2〜4)
合成例1と同様に、表1に示す仕込み、重合条件で重合を実施した。ただし、合成例3では芳香族ビニル化合物としてスチレン(電気化学社製純度99%、比重0.909)のみで配位重合工程を行い、配位重合終了後にパラメチルスチレンを重合液に加え、アニオン重合(クロス化工程)を実施した。合成例4ではスチレンのみで配位重合工程とアニオン重合を行い、アニオン重合活性種の失活前にパラメチルスチレンを重合液に加えた。
表1に重合条件を、表2〜3に得られたクロス共重合体の組成分析値を示す。
配位重合工程で得られたポリマ−の分析値(配位重合工程でのポリマ−収量、組成、分子量等)は、配位重合工程終了時にサンプリングした少量(数十ml)の重合液をメタノールに混合してポリマ−を析出させて回収し乾燥後、分析を行うことで求めた。配位重合工程で得られたポリマ−のジビニルベンゼンユニット含量は、ガスクロマトグラフィ分析により求めた重合液中の未反応ジビニルベンゼン量と重合に用いたジビニルベンゼン量の差から求めた。
【0084】
また、表中にUS6096849号公報に従って、本実施例配位重合工程で得られた主鎖エチレン−芳香族ビニル化合物−ジビニルベンゼン共重合体のTUS/DOU値を示した。ここで、TUSは、共重合体に含まれるト−タルのビニル基含量で、ジビニルベンゼンユニットに由来するビニル基とポリマ−末端のビニル基の含量の総和であり、1H−NMR測定により求めた。またDOU値は主鎖エチレン−芳香族ビニル化合物−ジビニルベンゼン共重合体に含まれるジビニルベンゼンユニット含量である。
本発明の配位重合工程で得られるエチレン−芳香族ビニル化合物−ジビニルベンゼン共重合体においては、TUS/DOU値は1.1より高い値をとり、概ね1.2以上10以下、好ましくは1.2以上5以下の値をとる。TUS/DOU値がより大きい場合、芳香族ポリエンユニット含量が少なすぎ、本発明のクロス共重合体としての機能が失われてしまう場合がある。また、TUS/DOU値が1.1以下の場合、芳香族ポリエンユニット含量が多すぎて主鎖に由来する機能が失われやすくなり、またクロス共重合体の成形加工性が悪化してしまったり、クロス共重合体中にゲル分が生成してしまう恐れがある。
また、各合成例で得られたクロス共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の総モル含量に対する、アルキル置換スチレンのモル含量は合成例1、2では100%、合成例3、4では、14%である。
【0085】
【表1】



【0086】
【表2】



【0087】
【表3】



【0088】
(実施例1〜2)
以下のようにして、熱可塑性樹脂組成物(動的架橋体)を得た。
バンバリ式混練機(東洋精機社製、容量250ml)を使用し、本実施例で得られたクロス共重合体と架橋剤(パ−オキサイド:日油製)、架橋助剤(ジビニルベンゼン:新日鐵化学社製)を表4に示す配合(質量部)で、開始時の温度150℃、100rpm、10分間混練しサンプルを作製した。混練中、樹脂温度は最大約200℃まで上昇した。酸化防止剤としてはイルガノックス1076を用いた。得られた組成物を用い、上記方法に従い、A硬度測定、引っ張り試験、粘弾性スペクトル測定、圧縮永久歪み(Cs)測定を行った。結果を表4に示す。
また比較例として、芳香族ビニル化合物としてパラメチルスチレンを用いずにスチレンのみで合成したクロス共重合体比較例A(合成方法は再表00/037517号公報、WO2007139116号公報に記載の方法)を用い、表4に示す配合(質量部)、方法で合成した熱可塑性樹脂組成物(動的架橋体)の物性測定結果(比較例1、2)も表4に示す。
【0089】
比較例Aのクロス共重合体は以下のパラメ−タで特定できる。
主鎖スチレン含量23モル%、主鎖分子量15万、主鎖分子量分布2.3、ジビニルベンゼン含量0.08モル%、PS鎖重量平均分子量1.5万、分子量分布1.3、配位重合行程で得られた共重合体(主鎖)の割合86質量%。本クロス共重合体にはDSC測定で結晶融解熱30J/g以上の融点ピ-クは観察されなかった。
【0090】
【表4】



【0091】
実施例で得られた熱可塑性樹脂組成物(動的架橋物)は、良好な軟質性、力学物性と、良好な低い圧縮永久歪み、具体的には60%以下の圧縮永久歪みを示す。本実施例熱可塑性樹脂組成物の圧縮永久歪みは、同一条件で得られた比較例の熱可塑性樹脂組成物(動的架橋物)より小さい値であり、優れている。
【0092】
(実施例3〜13)
実施例3〜13では以下のようにして、クロス共重合体樹脂組成物を得た。
ブラベンダ−プラスチコ−ダ−(ブラベンダ−社製PL2000型)を使用し、本合成例で得られたクロス共重合体100質量部、酸化防止剤(イルガノックス1076:チバスペシャルティケミカルズ社製)0.1質量部、耐光剤(LA36;紫外線吸収剤0.5質量部、LA77Y;ヒンダードアミン系光安定剤0.5質量部、いずれも株式会社ADEKAより入手)を200℃、100rpm、5分間混練しサンプルを作製した。本クロス共重合体組成物をプレス成形して得られたシ−ト(縦横145mm、厚さ0.5mm)に電子線(50〜150kGy)を照射し電子線架橋処理を行った。本シ−トのゲル分、力学物性、粘弾性スペクトル測定結果を表5に示す
【0093】
【表5】



【0094】
実施例の電子線照射シ−トは、概ね50kGy程度の照射量において、高いゲル分、具体的には25質量%以上のゲル分と、高められた耐熱性、具体的には粘弾性スペクトル測定において貯蔵弾性率(E’)が10Paに減少する温度が120℃以上、好ましくは130℃以上を示すことができる。これに対して、電子線架橋前のシ−ト(比較例3)や、パラメチルスチレンを含まないシ−ト(比較例4)はいずれも低いゲル分と低い耐熱性を示した。また、本発明のクロス共重合体は電子線架橋により力学物性、特に破断点強度が著しく向上することが示されている。
【0095】
実施例で得られた電子線架橋シ−トおよび比較例シ−トの粘弾性スペクトル(貯蔵弾性率の温度変化)を図1に示す。
【0096】
(実施例14〜15)
実施例14〜15では上記実施例と同様にして、パラメチルスチレンを含むクロス共重合体と、パラメチルスチレンを含まないクロス共重合体の樹脂組成物を得た。他に酸化防止剤(イルガノックス1076)0.1質量部、耐光剤(LA36;紫外線吸収剤0.5質量部、LA77Y;ヒンダードアミン系光安定剤0.5質量部)を添加した。本クロス共重合体組成物をプレス成形して得られたシ−ト(縦横145mm、厚さ0.5mm)に電子線(50〜150kGy)を照射し電子線架橋処理を行った。本シ−トのゲル分、力学物性、粘弾性スペクトル測定結果を表6に示す。
【0097】
【表6】



【0098】
実施例14、15のような樹脂組成物に於いても、樹脂組成物全体に含まれる芳香族ビニル化合物の総モル含量に対し、含まれるアルキル置換スチレンのモル含量が5%以上である条件を満たすことで、規定のゲル分と高められた耐熱性を示すことが出来る。
【0099】
【表7】



スクラッチ試験とテ−バ−摩耗試験の結果を表7に示す。本実施例で得られたクロス共重合体を含む樹脂組成物の電子線架橋物は、A硬度70〜80の市販軟質樹脂(軟質塩ビ、EVA、SEBS、PP系軟質コンパウンド)と比較し、良好な耐傷つき性(スクラッチ試験)と耐摩耗性(テ−バ−摩耗試験)を示す。
【0100】
<耐光性試験>
実施例15で得られた樹脂組成物の耐候性試験を上記フェードメータ−で実施した。1000時間後、両サンプル共に黄変は見られず、全光線透過率は91%(試験前は91%)であった。破断点強度は31MPa、破断点伸びは860%であり、共に試験前の値と比較し有意の変化は認められなかった。本結果から、太陽電池封止材として十分な耐光性を有することが示される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)〜(4)の条件を満たすクロス共重合体及びこれを含む熱可塑性樹脂組成物。
(1)配位重合工程とクロス化工程からなる重合工程を含む製造方法であって、配位重合工程として、シングルサイト配位重合触媒を用いてオレフィンモノマー、芳香族ビニル化合物モノマーおよび芳香族ポリエンの共重合を行ってオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体を合成し、次にクロス化工程として、このオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体と芳香族ビニル化合物モノマーの共存下、アニオン重合開始剤を用いて重合することを特徴とする製造方法で得られるクロス共重合体。
(2)配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の組成が、芳香族ビニル化合物含量5モル%以上40モル%以下、芳香族ポリエン含量0.01モル%以上0.3モル%以下、残部がオレフィン含量である。
(3)クロス化工程で得られるクロス共重合体に対する配位重合工程で得られるオレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の質量割合が50〜95質量%である。
(4)得られたクロス共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物の総モル含量に対し、含まれるアルキル置換スチレンのモル含量が5%以上である。
【請求項2】
請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物を含むフィルムまたはシ−ト。
【請求項3】
請求項1記載のクロス共重合体またはこれを含む熱可塑性樹脂組成物を用いた動的架橋体。
【請求項4】
請求項1記載のクロス共重合体またはこれを含む熱可塑性樹脂組成物、あるいは請求項2記載のフィルムまたはシ−トのエネルギー線架橋物。
【請求項5】
請求項4記載のエネルギー線架橋物からなる表皮材。
【請求項6】
請求項4記載のエネルギー線架橋物からなる自動車内装表皮材。
【請求項7】
請求項4記載のエネルギー線架橋物からなる合成皮革。
【請求項8】
請求項4記載のエネルギー線架橋物からなるテ−プ基材。
【請求項9】
請求項4記載のエネルギー線架橋物からなる電線被覆材。
【請求項10】
請求項1記載のクロス共重合体またはこれを含む熱可塑性樹脂組成物、あるいは請求項2記載のフィルムまたはシ−トからなる太陽電池封止材。
【請求項11】
請求項4記載のエネルギー線架橋物を封止層として含む太陽電池。


【図1】
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【公開番号】特開2011−74187(P2011−74187A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226414(P2009−226414)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】