説明

易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法、および易裂性二軸延伸ナイロンフィルム

【課題】Ny6とMXD6からなる混合樹脂に対し、さらに当該樹脂の熱履歴品を添加した原料を用いてチューブラー二軸延伸を行う際の安定性を向上させた易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】Ny6が40〜85質量部、MXD6が15〜60質量部からなるバージン原料と、Ny6およびMXD6を溶融混練してなる熱履歴品とを含み、熱履歴品におけるMXD6の融点が233〜238℃で、熱履歴品の含有量が原料全量基準で5〜40質量%であり、原料を溶融混練してチューブ状に押し出す押出工程と、前記押出工程により得られたチューブ状原反をチューブラー法によりMD方向とTD方向に延伸する延伸工程とを備え、延伸工程において、MD方向の最大延伸応力をσMD、TD方向の最大延伸応力をσTDとしたとき、σMDおよびσTDがともに30〜130MPaであるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法、および易裂性二軸延伸ナイロンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ナイロンフィルム(以後、ONyフィルムとも言う)は、強度や耐衝撃性、耐ピンホール性等に優れるため、レトルト食品等の各種食品用の包装材料、医薬品用包装材料、および電子部品用包装材料など非常に広い分野で使用されている。
一方、上述した各分野で用いられる包装用ONyフィルムには、搬送時や熱処理時等に必要な強度のほか、開封時に容易に開封することができるカット性が求められている。これまで、ナイロン6(Ny6)とメタキシリレンアジパミド(MXD6)からなる混合樹脂を原料とする易裂性ONyフィルムが知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1や特許文献2に記載された易裂性ONyフィルムは、直線カット性に優れた表基材を与え、ラミネートフィルムとした時でも、その優れた直線カット性を維持できるため、易裂性袋として実用上の価値が高い。しかしながら、Ny6とMXD6とのブレンド樹脂からなる二軸延伸フィルムは、ラミネートフィルムを構成した後に、過酷な条件下に置かれると、二軸延伸フィルムの層内で、いわゆる層内剥離を引き起こす恐れがある。このような、層内剥離が起こると、ラミネートフィルムの強度が不安定となり、袋を構成した場合に実用上の問題が生ずる。そこで、Ny6とMXD6樹脂からなる混合樹脂(バージン樹脂)に対し、Ny6とMXD6を溶融混練して、MXD6の融点を233〜238℃とした熱履歴品を添加することにより、層内剥離性を改善した易裂性ONyフィルムが提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−220837号公報
【特許文献2】特開平5−200958号公報
【特許文献3】特開2007−39664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献3のように、Ny6とMXD6を溶融混練してなる熱履歴品を添加した原料を用いてチューブラー法による二軸延伸を行うと、バブルが安定せず横揺れを起こしたり、時にはバブルが破裂するという製造上の問題がある。また、このように成形安定性が低下すると、結果としてフィルムの厚み精度(偏肉精度)も低下するという問題も生じる。従来、このような問題を解決するために、延伸倍率、延伸温度、延伸速度などの制御に基づく製造方法も考えられてきたが、良好な延伸安定性が得られる条件を明確に規定することは困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、Ny6とMXD6からなる混合樹脂に対し、さらに当該樹脂の熱履歴品を添加した原料を用いてチューブラー二軸延伸を行う際の安定性を向上させた易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法、およびこの製造方法で得られた易裂性二軸延伸ナイロンフィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決すべく、本発明は、以下に示すような易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法、およびこの製造方法で得られた易裂性二軸延伸ナイロンフィルムを提供するものである。
(1)ナイロン6(以後、Ny6ともいう)とメタキシリレンアジパミド(以後、MXD6ともいう)とを原料として含む易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法であって、前記原料は、Ny6が40質量部から85質量部まで、MXD6が15質量部から60質量部まで(両者の合計は100質量部)からなるバージン原料と、Ny6およびMXD6を溶融混練してなる熱履歴品とを含み、前記熱履歴品におけるMXD6の融点が233℃以上、238℃以下で、かつ、前記熱履歴品の含有量が原料全量基準で5質量%以上、40質量%以下であり、前記原料を溶融混練してチューブ状に押し出す押出工程と、前記押出工程により得られたチューブ状原反をチューブラー法によりMD方向とTD方向に延伸する延伸工程とを備え、前記延伸工程において、MD方向の最大延伸応力をσMD、TD方向の最大延伸応力をσTDとしたとき、σMDおよびσTDがともに30MPa以上、130MPa以下であるように制御することを特徴とする易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法。
ただし、前記したσMDとσTDは、それぞれ下式で表される。
σMD=(F×BMD)/A
F=T/r
ここで、Fは延伸力(N)、BMDはMD方向の延伸倍率、Aは原反フィルムの断面積(m)、Tはニップロールの回転トルク(N・m)、rはニップロールの半径(m)である。
σTD=(ΔP×R)/t
ここで、ΔPはバブル内圧力(Pa)、Rはバブル半径(m)、tはフィルムの厚み(m)である。
【0008】
(2)上述の(1)に記載の易裂性二軸延伸ナイロンフィルムにおいて、前記熱履歴品におけるNy6とMXD6の配合割合が、Ny6:MXD6=60質量部から85質量部まで:15質量部から40質量部まで(両者の合計は100質量部)であることを特徴とする易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法。
(3)上述の(1)または(2)に記載の易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法により製造されたことを特徴とする易裂性二軸延伸ナイロンフィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、チューブラー二軸延伸を行う際にバブルの安定性が向上するため、長時間に渡って安定して易裂性二軸延伸ナイロンフィルムを製造することが可能となる。また、得られた易裂性二軸延伸ナイロンフィルムは、層内剥離を生ずることがなく、厚み精度にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係るONyフィルムを製造する二軸延伸装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための一形態について詳述する。
〔易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの構成〕
本実施形態に係る易裂性二軸延伸ナイロンフィルム(以下、単に「ONyフィルム」ともいう。)は、Ny6とMXD6とを原料として含み、この原料は、Ny6が40質量部から85質量部まで、MXD6が15質量部から60質量部まで(両者の合計は100質量部)からなるバージン原料と、Ny6およびMXD6を溶融混練してなる熱履歴品とを含み、この熱履歴品におけるMXD6の融点が233℃から238℃までで、かつ、熱履歴品の含有量が原料全量基準で5質量%以上、40質量%以下である。
ここで、Ny6の化学式を下記式(1)に示し、MXD6の化学式を下記式(2)に示す。
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

【0014】
上述のバージン原料とは、通常は、Ny6とMXD6とが互いに混合され溶融混練された履歴を持つ混合原料ではない状態の原料を意味する。例えば、Ny6やMXD6が各々単独で溶融混練された履歴があっても(例えばリサイクル品)、これらが混合され溶融混練されていない場合は、バージン原料である。ただし、ONyフィルムとなったときの物性の面からは、リサイクル回数のできるだけ少ないバージン原料を用いることが好ましい。なお、Ny6とMXD6とが互いに混合され溶融混練された履歴を持っていても、その混練が弱いため、MXD6の融点降下があまりなく、238℃を超えていれば、これらのNy6とMXD6は依然としてバージン原料を構成するものであって、熱履歴品を構成するものではない。
すなわち、本実施形態では、バージン原料を構成するNy6とMXD6に熱履歴品を加えた三者(あるいは二者)がいわゆるドライブレンドされた後に溶融混練されてONyフィルムを構成する。
上述の熱履歴品とは、Ny6とMXD6の配合品で、一度押出機を通過したものをいい、本発明については、示査走査熱量計(DSC)でMXD6樹脂の融点が233℃以上、238℃以下の範囲に保持されたものを用いる。
【0015】
本実施形態のONyフィルムは、バージン原料におけるNy6とMXD6の配合割合が、Ny6が40質量部から85質量部まで、MXD6が15質量部から60質量部までであるので、直線カット性に優れている。そして、原料全体に対して、Ny6およびMXD6を溶融混練してなる熱履歴品が5質量%以上、40質量%以下含まれているので、ONyフィルムを過酷な条件下で使用しても層内剥離を起こしにくい。
ここで、層内剥離とは、ONyフィルムを適当なシーラントフィルムとラミネートした後に過酷な条件で使用すると、ONyフィルム(ナイロン層)内で剥離を引き起こす現象をいう。層内剥離の機構は必ずしも明確ではないが、ONyフィルム内では、Ny6とMXD6が層状に配向しており、その界面で剥離が起こるものと考えられる。
このような層内剥離が起こると、ラミネートフィルムの強度が不安定となり、袋を構成した場合に過酷な使用条件下では破袋等の問題を生ずるおそれがある。このような過酷な使用条件は、例えば、ラミネートフィルムのラミネート強度(剥離強度)を測定する試験により再現することができる。
【0016】
また、熱履歴品におけるMXD6の融点は233℃以上、238℃以下であり、好ましくは235℃以上、237℃以下である。熱履歴品におけるMXD6の融点が233℃未満になると、易裂性延伸フィルムの直線カット性と衝撃強度が低下する。また、熱履歴品におけるMXD6の融点が238℃を超えると、層内剥離を防止する効果が低くなる。
なお、熱履歴品が製造される過程で、混練時の温度や圧力が高いと熱履歴品中のMXD6の融点はより大きく下がる。
ここで、熱履歴品におけるMXD6の融点とは、バージン原料と溶融混練される前の状態で測定された融点をいう。
本実施形態のONyフィルムをラミネート袋の表基材として利用する場合には、易裂性の観点より、MD方向およびTD方向のいずれの方向についても引裂強度が70N/cm以下であることが好ましい。
【0017】
本実施形態のONyフィルムでは、熱履歴品におけるNy6とMXD6の配合割合が、Ny6:MXD6=60質量部から85質量部まで:15質量部から40質量部まで(両者の合計は100質量部)であることが好ましい。熱履歴品におけるNy6とMXD6の配合割合が、この範囲内であると、直線カット性、衝撃強度および層内剥離防止効果により優れる。
【0018】
〔易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法〕
本実施形態のONyフィルムは、チューブラー法による同時二軸延伸法により好適に製造できる。具体的には、以下のようにして製造できる。
まず、押出工程において、バージン原料と熱履歴品を含む原料を270℃で溶融混練した後、溶融物をダイスから円筒状のフィルムとして押出し、引き続き水で急冷して原反フィルムを作製する。
次に延伸工程において、図1に示すように、上述の原反フィルム11を一対のニップロール12間に挿通した後、中に気体を圧入しながらヒータ13で加熱すると共に、延伸開始点にエアーリング14よりエアー15を吹き付けてバブル16に膨張させ、下流側の一対のニップロール17で引き取ることにより、チューブラー法によるMD方向およびTD方向の同時二軸延伸を行う。この際、MD方向およびTD方向のそれぞれの延伸倍率が2.8倍以上であることが好ましい。延伸倍率が2.8倍未満である場合、衝撃強度が低下して実用性に問題が生ずるおそれがある。
そして、この延伸工程において、MD方向の最大延伸応力をσMD、TD方向の最大延伸応力をσTDとしたとき、σMDおよびσTDがともに30MPa以上、130MPa以下であるように制御する。
ただし、前記したσMDとσTDは、それぞれ下式で表される。
σMD=(F×BMD)/A
F=T/r
ここで、Fは延伸力(N)、BMDはMD方向の延伸倍率、Aは原反フィルムの断面積(m)、Tはニップロールの回転トルク(N・m)、rはニップロールの半径(m)である。
σTD=(ΔP×R)/t
ここで、ΔPはバブル内圧力(Pa)、Rはバブル半径(m)、tはフィルムの厚み(m)である。
【0019】
σMDとσTDのいずれかが130MPaを越えると、延伸途上のバブルの破袋が頻発するため、連続生産が困難となる。また、σMDとσTDのいずれかが30MPa未満の場合には、延伸途上のバブルが不安定になるため、フィルムの厚み精度が悪くなる。それ故、σMDとσTDは、少なくともいずれか一方の下限が40MPa以上、少なくともいずれか一方の上限が120MPa以下になるように調製することが好ましい。もちろん、σMDとσTDは、ともに下限が40MPa以上、ともに上限が120MPa以下になるように調製することがさらに好ましい。
【0020】
上述の延伸工程後、延伸されたフィルムをテンター式熱処理炉(図示せず)に入れ、160〜210℃で熱固定を施すことにより、本実施形態のONyフィルム18を得ることができる。
【0021】
なお、ONyフィルムには、必要な添加剤を適宜添加することができる。このような添加剤として、例えばアンチブロッキング剤(無機フィラー等)、はっ水剤(エチレンビスステアリン酸エステル等)、滑剤(ステアリン酸カルシウム等)を挙げることができる。
【実施例】
【0022】
次に、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの例によって何等限定されるものではない。
【0023】
[評価方法]
各種の原料を用いて、図1の装置によりチューブラー二軸延伸を行い、以下に示す評価を行った。結果を表1に示す。
【0024】
(成形安定性)
延伸フィルム18の製膜時におけるバブルの安定性を成形安定性として評価した。具体
的には、バブルが安定しているものを◎、バブルの揺れがあって不安定なものを×として
評価した。なお、当初、バブルの揺れがあっても、微調節でバブルを安定化できたものは○とした。
【0025】
(層内剥離)
延伸フィルム18を表基材フィルム、L−LDPEフィルム〔ユニラックス LS−711C(商品名)、出光ユニテック(株)製、厚さ50μm〕をシーラントフィルムとして、両者をドライラミネートしてラミネートフィルムを作成した。ドライラミネート用の接着剤としては、三井タケダケミカル製のタケラックA−615/タケネートA−65の配合品(配合比16/1)を用いた。また、ドライラミネート後のラミネートフィルムは、40℃で3日間エージングを行った。
上述のラミネートフィルムから15mm幅の短冊状試験片を切り出し、その端部を手で数cmほど界面剥離を行い、表基材フィルム(延伸フィルム18)とシーラントフィルムとに分離した。その後、各々のフィルム片を引張り試験機(インストロン万能試験機 1123型)にセットして、300mm/minの速度でラミネート部分の剥離試験を行った(90度剥離)。
剥離試験の最中に表基材フィルム内部で層内剥離が生ずると剥離強度が急激に減少するため、そのような挙動が発現したか否かで層内剥離発生の有無を判別できる。例えば、剥離試験の開始時は、剥離強度が7N/m程度であったものが、剥離試験の途中で急激に1〜2N/m程度に減少すれば、層内剥離が生じたと判断できる。
そして、表基材フィルム内部で層内剥離の挙動を示さないものを◎、層内剥離の挙動を示したものを×として評価した。
【0026】
(厚み精度)
延伸フィルム18の幅方向に1cmごとに厚みを測定し、下記式で厚み精度(%)を求めた。
((フィルム最大厚み−フィルム最小厚み)/2/フィルム平均厚み)×100%
そして、この式で求めた厚み精度(%)に基づき、以下の基準で評価した。
◎:4%以下
○:4%を超え、6%以下
×:6%を超える
【0027】
(総合評価)
上述した成形安定性、層内剥離、および厚み精度の3項目すべてに◎がつくか、3項目のうち◎が2つで○が1つであるものを◎とする総合評価を行った。上述の3項目のうち、一つでも×があれば総合評価として×とした。
【0028】
【表1】

【0029】
[実施例1]
(延伸フィルムの製造)
Ny6ペレット70質量部と、MXD6ペレット30質量部を混合してなるバージン原料に対して、すでに一度、この配合比で溶融混合してペレット化した熱履歴品(MXD6の融点が236℃のもの)を原料全量基準(バージン原料と熱履歴品の合計量基準)で30質量%配合した。後述する他の実施例・比較例においても、Ny6とMXD6の配合比は、バージン原料と熱履歴品ともに同じである。結局、本実施例におけるNy6全体とMXD6全体の質量比は、Ny6/MXD6=70/30である。
このドライブレンド品を押出機中、270℃で溶融混練した後、溶融物をダイスから円筒状のフィルムとして押出し、引き続き水(15℃)で急冷して原反フィルムを作製した。なお、MXD6の融点は、パーキンエルマー社製示差走査熱量測定装置(DSC)を用い、昇温速度10℃/minで50℃から280℃まで昇温を行って測定した。いずれもファーストランにおけるピーク値を融点とした。なお、熱履歴品は、270℃で10分間熱処理を行ったものである。
Ny6として使用したものは、宇部興産(株)製ナイロン6〔UBEナイロン 1023FD(商品名)、相対粘度 ηr=3.6〕であり、MXD6として使用したものは、三菱ガス化学(株)製メタキシリレンジアジパミド「MXナイロン 6007(商品名)、相対粘度 ηr=2.7」である。
次に、図1に示すように、この原反フィルム11を一対のニップロール12間に挿通した後、中に気体を圧入しながらヒータ13(設定温度 310℃)で加熱すると共に、延伸開始点にエアーリング14よりエアー15を15m/分の風量で吹き付けてバブル16に膨張させ、下流側の一対のニップロール17で引き取ることにより、チューブラー法によるMD方向およびTD方向の同時二軸延伸を行った。この延伸の際の倍率はMD方向で3.0倍、TD方向で3.2倍とした。
結果を表1に示す。以下の各実施例・比較例についても同様に結果を表1に示す。
【0030】
[実施例2]
熱履歴品(熱履歴品融点 237℃)を5質量%添加した以外は、実施例1と同様にして行った。なお、熱履歴品は、270℃で3分間熱処理を行ったものである。
【0031】
[実施例3]
Ny6とMXD6の配合比をNy6/MXD6=80/20とし、実施例2で用いた熱履歴品(熱履歴品融点 237℃)を20質量%添加した以外は実施例1と同様にして行った。
【0032】
[実施例4]
Ny6とMXD6の配合比をNy6/MXD6=60/40とし、熱履歴品(熱履歴品融点 235℃)を15質量%添加した以外は実施例1と同様にして行った。なお、熱履歴品は、280℃で5分間熱処理を行ったものである。
【0033】
[実施例5]
Ny6とMXD6の配合比をNy6/MXD6=60/40とし、実施例2で用いた熱履歴品(熱履歴品融点 237℃)を20質量%添加した以外は実施例1と同様にして行った。
【0034】
[実施例6]
Ny6とMXD6の配合比をNy6/MXD6=70/30とし、熱履歴品(熱履歴品融点 234℃)を35質量%添加した以外は実施例1と同様にして行った。なお、熱履歴品は、290℃で6分間熱処理を行ったものである。
【0035】
[比較例1]
Ny6とMXD6の配合比をNy6/MXD6=70/30とし、熱履歴品(熱履歴品融点 234℃)を45質量%添加した以外は実施例1と同様にして行った。熱履歴品は、実施例6で用いたものと同じである。
延伸時にバブルの横揺れがひどく成形安定性が悪かった。また、厚み精度も悪かった。
【0036】
[比較例2]
Ny6とMXD6の配合比をNy6/MXD6=70/30とし、熱履歴品(熱履歴品融点 210℃)を30質量%添加した以外は実施例1と同様にして行った。なお、熱履歴品は、295℃で30分間熱処理を行ったものである。
延伸時にバブルの横揺れがひどく成形安定性が悪かった。また、厚み精度も悪かった。
【0037】
[比較例3]
Ny6とMXD6の配合比をNy6/MXD6=60/40とし、熱履歴品(熱履歴品融点 235℃)を20質量%添加した。また。延伸倍率をMD方向で2.4倍、TD方向で3.2倍とした。それ以外は実施例1と同様にして行った。熱履歴品は、実施例4で用いたものと同じである。
延伸時にバブルの破袋が発生して連続成形が困難であった。また、厚み精度も悪かった。
【0038】
[比較例4]
Ny6とMXD6の配合比をNy6/MXD6=60/40とし、熱履歴品(熱履歴品融点 234℃)を10質量%添加した。熱履歴品は、実施例6で用いたものと同じである。また、延伸倍率をMD方向で3.8倍、TD方向で3.2倍とした。それ以外は実施例1と同様にして行った。
延伸応力が非常に高く、バブルの破袋が発生して連続成形が困難であった。また、厚み精度も悪かった。
【0039】
[比較例5]
Ny6とMXD6の配合比をNy6/MXD6=70/30とし、熱履歴品は添加しなかった。それ以外は実施例1と同様にして行った。
成形安定性は良好であったが、ONyフィルムに層内剥離が発生した。また、厚み精度も悪かった。
【0040】
[比較例6]
Ny6とMXD6の配合比をNy6/MXD6=60/40とし、熱履歴品(熱履歴品融点 237℃)を15質量%添加した。熱履歴品は、実施例2で用いたものと同じである。また、ヒータ13の設定温度を280℃とした。それ以外は実施例1と同様にして行った。
延伸時にバブルの破袋が発生して連続成形が困難であった。また、厚み精度も悪かった。
【0041】
[比較例7]
Ny6とMXD6の配合比をNy6/MXD6=60/40とし、熱履歴品(熱履歴品融点 234℃)を25質量%添加した。熱履歴品は、実施例6で用いたものと同じである。また、ヒータ13の設定温度を400℃とした。それ以外は実施例1と同様にして行った。
延伸時にバブルの揺れ発生して連続成形が困難であった。また、厚み精度も悪かった。
【0042】
[比較例8]
Ny6とMXD6の配合比をNy6/MXD6=70/30とし、熱履歴品(熱履歴品融点 232℃)を15質量%添加した。なお、熱履歴品は、300℃で5分間熱処理を行ったものである。それ以外は実施例1と同様にして行った。
延伸時にバブルの揺れ発生して連続成形が困難であった。また、厚み精度も悪かった。
【0043】
[比較例9]
Ny6とMXD6の配合比をNy6/MXD6=70/30とし、熱履歴品(熱履歴品融点 237℃)を4質量%添加した。熱履歴品は、実施例2で用いたものと同じである。それ以外は実施例1と同様にして行った。
成形安定性は良好であったが、ONyフィルムに層内剥離が発生した。また、厚み精度も悪かった。
【0044】
[評価結果(まとめ)]
上述したONyフィルム製造時の状況や表1の結果より、本発明の実施例1〜6では、いずれも所定の原料に所定の熱履歴品が所定量含まれており、しかも、延伸時の最大応力が所定の範囲にあるので、成形安定性に優れ、得られたONyフィルムも層内剥離を起こさず、さらに厚み精度にも優れている。
一方、これらの条件のいずれかを満たさない比較例1〜8は、成形安定性、層内剥離、および厚み精度のいずれかが劣っている。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、包装材料等として直線カット性に優れるとともに層内剥離を起こすことのない易裂性延伸フィルムおよびその製造方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
11 原反フィルム
12 ニップロール
13 ヒータ
14 エアーリング
15 エアー
16 バブル
17 ニップロール
18 延伸フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナイロン6(以後、Ny6ともいう)とメタキシリレンアジパミド(以後、MXD6ともいう)とを原料として含む易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法であって、
前記原料は、Ny6が40質量部から85質量部まで、MXD6が15質量部から60質量部まで(両者の合計は100質量部)からなるバージン原料と、
Ny6およびMXD6を溶融混練してなる熱履歴品とを含み、
前記熱履歴品におけるMXD6の融点が233℃以上、238℃以下で、かつ、
前記熱履歴品の含有量が原料全量基準で5質量%以上、40質量%以下であり、
前記原料を溶融混練してチューブ状に押し出す押出工程と、
前記押出工程により得られたチューブ状原反をチューブラー法によりMD方向とTD方向に延伸する延伸工程とを備え、
前記延伸工程において、MD方向の最大延伸応力をσMD、TD方向の最大延伸応力をσTDとしたとき、σMDおよびσTDがともに30MPa以上、130MPa以下であるように制御する
ことを特徴とする易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法。
ただし、前記σMDとσTDは、それぞれ下式で表される。
σMD=(F×BMD)/A
F=T/r
ここで、Fは延伸力(N)、BMDはMD方向の延伸倍率、Aは原反フィルムの断面積(m)、Tはニップロールの回転トルク(N・m)、rはニップロールの半径(m)である。
σTD=(ΔP×R)/t
ここで、ΔPはバブル内圧力(Pa)、Rはバブル半径(m)、tはフィルムの厚み(m)である。
【請求項2】
請求項1に記載の易裂性二軸延伸ナイロンフィルムにおいて、
前記熱履歴品におけるNy6とMXD6の配合割合が、Ny6:MXD6=60質量部から85質量部まで:15質量部から40質量部まで(両者の合計は100質量部)である
ことを特徴とする易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の易裂性二軸延伸ナイロンフィルムの製造方法により製造された
ことを特徴とする易裂性二軸延伸ナイロンフィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−28660(P2013−28660A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163724(P2011−163724)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(500163366)出光ユニテック株式会社 (128)
【Fターム(参考)】