説明

時効硬化性銅基合金および製造方法

【課題】高降伏強度、中程度の導電性を必要とする用途の商業的有用なストリップ製品を作るための処理方法。
【解決手段】実質的に、重量で、チタン:0.35〜10%、X元素:0.001〜6%(Ni、Fe、Sn、P、Al、Zn、Si、Pb、Be、Mn、Mg、Bi、S、Te、Se、Ag、As、Sb、Zr、B、Cr、Co及びこれらの元素の組合から選択)、残部:銅と不可避不純物から成る銅基合金の鋳造工程、約750℃〜約1000℃で熱間圧延する工程、約50%〜約97%の面積減少率で第1回冷間圧延を施す工程、温度約850℃〜約1000℃で約10秒〜約1時間一次焼鈍を施し、周囲温度まで急冷する工程、最大約80%の減面率で第2回冷間圧延を施す工程、約400℃〜約650℃で約1分〜約10時間に二次焼鈍を施す工程、約10%〜約50%の減面率で第3回冷間圧延を施して仕上げ寸法にする工程を含む製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時効硬化性銅基合金およびこの合金から商業的に有用な製品を製造する方法に係わり、特に、銅合金、工程中の溶体化焼鈍および少なくとも1回の時効焼鈍を含む方法により、仕上げ寸法まで鍛錬される0.35〜5重量%のチタンを含む銅合金に関するものである。結果として得られる製品は、50%IACSを超える導電性および724MPa(105ksi)を超える降伏強度を有する。
【背景技術】
【0002】
本明細書全体を通して、別段の指示がない限り、全ての組成は重量パーセントであり、全ての機械的および電気的試験は、室温(公称22℃)で行った。「約」という用語は±10%を意味し、「銅基」における「基」は、その合金が少なくとも50重量%の特定された基本元素を含むことを意味する。「圧延加工」または「圧延加工された」という用語は、例えば、ワイヤ、ロッドまたは管の製造および処理の際に使用されるとおり、引き抜き加工すること、または、引き抜き加工されたこと、または、任意のその他の冷間減面加工を包含する。
【0003】
多くの種類の電気コネクタは、銅基合金で形成される。電気コネクタにとって重要な特性としては、降伏強度、曲げ成形性、耐応力緩和性、縦弾性係数、極限引張り強さ、および導電性等がある。
【0004】
これらの特性の目標値およびこれら特性の相対的重要性は、前記銅合金から製造された製品の目的とする用途によって異なる。以下の、特性に関する説明は、多くの目的とする用途に対する一般的なものであるが、目標値は、自動車のボンネット下で使用する場合には特定の値になる。
【0005】
降伏強度は、応力と歪みのバランスから、材料が、指定された逸脱(通常0.2%のずれである)を示す応力である。これは、弾性変形との関係で塑性変形が支配的になる応力を示す。コネクタとして使用する銅合金の場合、少なくとも724MPaの降伏強度を有することが望ましい。
【0006】
応力緩和は、コネクタとして折曲された後でストリップに負荷がかけられた場合のように、使用中の金属ストリップに外部応力が加えられた場合に明らかに生じる。金属は、反対方向の等しい内部応力を生じさせることによって反応する。金属を歪んだ状態に保持すると、内部応力は時間および温度の関数として減少する。このような現象が起こるのは、微小な塑性流によって金属中の弾性歪みが塑性歪みまたは永久歪みに変わるからである。
【0007】
銅基電気コネクタは、良好な電気接続を行うために、長時間係合部材上で閾値接触力を超える接触力を維持しなければならない。応力緩和は、接触力を閾値未満に低下させ、その結果回路が開く。コネクタ用銅合金は、温度105℃に1000時間曝露された時に、初期応力の少なくとも95%を維持することが望ましく、また温度150℃に1000時間曝露された時、初期応力の少なくとも85%を維持することが望ましい。
【0008】
ヤング率として知られる縦弾性係数は、金属の剛性または剛さの測定値であり、弾性域内での対応する歪みに対する応力の比率である。縦弾性係数は、材料の剛さの測定値であるので、140GPa(20×10ksi)程度の高い係数であることが望ましい。
【0009】
折曲性は、折曲部の外径部分に沿って破断を起こさずに、金属ストリップ内にどれだけ小さな折曲部を形成することができるのかを示す最小曲げ半径(MBR)を決定する。MBRは、各種角度で曲げることにより種々の形に形成しなければならないコネクタの重要な特性である。
【0010】
曲げ成形性は、MBR/tで表すことができる。ここで、tは金属ストリップの厚さである。MBR/tは、金属ストリップを首尾よく曲げることのできる、ストリップ厚さに対するマンドレルの最小曲率半径の比である。「マンドレル」試験については、「金属材料の延性用のセミガイド曲げ試験のための標準試験方法」(Standard Test Method for Semi−Guided Bend Test for Ductility of Metallic Materials)と題するASTM(米国材料試験協会)分類E290−92で規定されている。
【0011】
MBR/tは、金属ストリップの圧延方向に対して直角である「良方向」曲げ軸線、および、金属ストリップの圧延方向に対して平行である「悪方向」曲げ軸線について、ほぼ等方的で類似値を有することが望ましい。MBR/tは、90度曲げに対して約1.5以下、180度曲げに対して約2以下であることが望ましい。
【0012】
代替法として、90度曲げに対する曲げ成形性は、V形凹部を有するブロックと、所望半径を有する加工表面を含むパンチを用いて評価することができる。「Vブロック」法の場合には、試験対象である調質状態の銅合金ストリップが、ブロックとパンチの間に置かれ、パンチが凹部に押し込まれた時に、所望の曲げがストリップに形成される。
【0013】
Vブロック法に関連して、円筒形加工表面を有するパンチが、銅合金ストリップを180度曲げるために使用される180度「成形パンチ」法がある。
【0014】
Vブロック法および成形パンチ法の両者について、「銅合金ばね材料の成形性に関する曲げ試験のための標準試験方法」(Standard Test Method for Bend Test for Formability of Copper Alloy Spring Material)と題するASTM分類B820−98で規定されている。
【0015】
所定の金属試料に対して、両方法は、定量化可能な曲げ結果を示し、いずれの方法も相対曲げ成形性を測定するために使用できる。
【0016】
極限引張り強さは、引っ張り試験において破断を起こす前にストリップが耐えることのできる最大負荷をストリップの初期横断面積で割った比である。望ましい極限引張り強さは約760MPaである。
【0017】
導電性は、%IACS(国際焼鈍銅規格)で表される。この規格では、合金でない銅は、20℃において100%IACSの導電性を有するものとして定義される。
【0018】
とりわけ、米国特許第4601879号および4612167号に、チタンを含む銅基合金が開示されている。米国特許第4601879号に、0.25%〜3.0%のニッケル、0.25%〜3.0%の錫、および0.12%〜1.5%のチタンを含む銅基合金が開示されている。例示としての合金は、48.5%〜51.4%IACSの導電性を有し、568.8MPa〜579.2MPa(82.5ksi〜84ksi)の降伏強度を有する。
【0019】
米国特許第4612167号は、0.8%〜4.0%のニッケル、および0.2%〜4.0%のチタンを含む銅合金を開示している。例示合金は、51%IACSの導電性および663.3MPa〜679.2MPa(96.2ksi〜98.5ksi)の降伏強度を有する。
【0020】
AMAX Copper Inc.(Greenwich,CT)は、Cu−2%Ni−1%Ti、およびCu−5%Ni−2.5%Tiの公称組成を有する銅−ニッケル−チタン合金を市販している。同社が発表したCu−2%Ni−1%Ti合金の特性は、降伏強度が441.3MPa〜551.6MPa(64〜80ksi)であり、極限引張り強さが503.3MPa〜655.0MPa(73〜95ksi)であり、伸び率が9%であり、導電性が50〜60%IACSである。報告されているCu−5%Ni−2.5%Ti合金の特性は、降伏強度が620.6MPa〜689.5MPa(90〜100ksi)、極限引張り強さが744.7MPa(108ksi)UTS、伸び率が10%であり、導電性が40〜53%IACSである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第4601879号明細書
【特許文献2】米国特許第4612167号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
これら銅合金の多くの現在および将来の用途は、少なくとも50%IACSの導電性と、少なくとも724MPa(105ksi)の降伏強度を必要とする。必要なレベルの導電性と強度を達成することのできる銅−チタン合金およびその製造方法に対する必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、時効硬化性銅基合金と、高降伏強度および中程度の導電性を必要とするあらゆる用途の商業上有用な製品を作るための前記銅基合金の処理方法とを提供するものである。斯かる製品の通常の形態は、ストリップ、プレート、ワイヤ、箔、管、粉末または鋳造品を含む。このような合金を本発明方法によって処理した場合には、少なくとも724MPa(105ksi)の降伏強度と、50%IACSの導電性が得られ、もって、前記銅基合金は電気コネクタおよび相互接続用として特に適する。
【0024】
前記銅基合金は、実質的に、重量で、チタン:0.35%〜5%、X元素:0.001%〜10%、ここで、Xは、Ni、Fe、Sn、P、Al、Zn、Si、Pb、Be、Mn、Mg、Bi、S、Te、Se、Ag、As、Sb、Zr、B、CrおよびCoおよび上記元素の組合せから選択され、および残部としての銅および不可避不純物から成る。この合金は少なくとも50%IACSの導電性および少なくとも105ksiの降伏強度を有する。
【0025】
本発明の好適形態では、銅基合金は、実質的に、チタン:0.35%〜2.5%、ニッケル:0.5%〜5.0%、鉄、コバルトおよびこれらの混合物:0.5%〜0.8%、マグネシウム:0.01%〜1.0%、Cr、Zr、Agおよびこれらの組合せ:最大1%から成り、残部は銅および不可避不純物である。
【0026】
ベリリウムを含まない場合、前記銅基合金は、強度と導電性の同様な組合せを有し、現在のベリリウム銅合金に付随する潜在的に危険な健康問題を避ける。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明銅合金を処理するための第1方法のフローチャート。
【図2】本発明銅合金を処理するための第2方法のフローチャート。
【図3】本発明銅合金を処理するための第3方法のフローチャート。
【実施例】
【0028】
強度と導電性の組合せを有し、また優れた成形性と耐応力緩和性を有する銅合金は、多くの電流搬送用として需要が多い。例示としての2つの用途は、自動車のボンネット下での使用、および、マルチメディア用(コンピュータ、DVDプレーヤ、CDリーダ等)がある。
【0029】
自動車用の場合、優れた成形性、少なくとも50%IACSの導電性、および最高200℃までの耐応力緩和性を有する銅合金に対する需要が多い。マルチメディアの相互接続用の場合、約100℃での優れた耐応力緩和性を特徴とする724MPa(105ksi)を超える降伏強度、50%IACSを超える導電性、および室温および若干高い動作温度での機械的安定性を有する銅合金に対する需要が多い。
【0030】
この合金の組成は、本発明の方法で処理した場合、驚くべきことに、自動車用およびマルチメディア用の両方およびその他の電気的および電子的用途の需要に適合する特性の最適な組合せを提供する。この合金は、高い導電性と一緒に中程度の強度を供給することができ、非常に高い強度と一緒に中程度の導電性を供給することができる。
【0031】
本発明合金は、Cu−Ti−Xを含む組成を有する。ここで、X元素は、Ni、Fe、Sn、P、Al、Zn、Si、Pb、Bi、S、Te、Se、Be、Mn、Mg、Ag、As、Sb、Zr、B、Cr、Coおよび前記元素の組合せから選択される。チタン量は0.35%〜5%であり、「X」元素の合計量は0.001%〜10%である。
【0032】
X元素を、Ni、Fe、Co、Mg、Cr、Zr、Ag、およびこれらの混合物から成る群から選択した場合に、強度と導電性が最大になる。
【0033】
酸素、硫黄および炭素は、電解(カソード)銅、または再溶融銅、または銅合金スクラップ中に通常含まれる量だけ、本発明銅基合金中に存在してよい。通常、これら各元素の量は、約2ppm〜約50ppmの範囲にあり、好適には、それぞれ20ppm未満であることが好ましい。
【0034】
合金の特性に影響を与えるその他の添加物を含んでもよい。このような添加物は、ビスマス、鉛、テルリウム、硫黄およびセレン等、合金の快削性を改善するための添加物を含む。快削性を向上するために添加した場合、これら添加物の量は最大2%である。好適には、快削性添加物の全量は約0.8%〜1.5%である。
【0035】
銅合金、特に再使用した銅またはスクラップ銅から成る銅合金に含まれる通常の不純物の量は、合計で最大約1%である。このような不純物としては、マグネシウム、アルミニウム、銀、珪素、カドミウム、ビスマス、マンガン、コバルト、ゲルマニウム、砒素、金、プラチナ、パラジウム、ハフニウム、ジルコニウム、インジウム、アンチモン、クローム、バナジウム、およびベリリウム等があるがこれらに限定されない。各不純物の量は0.35%未満でなければならず、好適には0.1%未満であることが好ましい。
【0036】
前記不純物のうちの幾つか、または、その他の不純物について、前記不純物範囲に重畳する量が、本発明銅合金に有利な効果を有する場合のあることを認識すべきである。例えば、強度または打抜き加工性を改善することができる。本発明は、このような少量の添加物を含む。
【0037】
本発明のより好ましい実施形態の場合、チタン量は0.35%〜2.5%であり、最も好ましい実施形態の場合、チタン量は0.8%〜1.4%である。
【0038】
チタンが銅合金マトリックス中に固溶していると、導電性は大きく低下する。それ故、「X」元素は、時効焼鈍中に固溶体から効果的にチタンを析出させるものであることが好ましい。このような析出を向上させるための「X」に適する元素は、Ni、Fe、Sn、P、A1、Si、S、Mg、Cr、Co、およびこれら元素の組合せを含む。
【0039】
一つの好適な添加物はニッケルである。NiとTiの組合せはCuNiTiから成る析出物を作り、FeとTiの存在はFeTiから成る析出物を作る。
【0040】
別の好適添加物はマグネシウムである。Mgを添加すると、仕上げ寸法、および調質品の耐応力緩和性および耐軟化性が増す。また、Mgは、製造過程での時効焼鈍熱処理中に耐軟化性を与える。
【0041】
低水準で存在する場合、Cr、Zrおよび/またはAgを添加すると、導電性を不当に低下させずに強度が増す。
【0042】
中程度の曲げ成形性と共に、改善された組合せの、降伏強度、導電性、耐応力緩和性を有する本発明による好適合金は、実質的に、
ニッケル:約0.5〜5.0%、
チタン:約0.35〜2.5%、
鉄またはコバルト:約0.5〜0.8%、
マグネシウム:約0.01〜1.0%、
選択元素としての1種以上のSn、P、Al、Zn、Si、Pb、Bi、S、Te、Se、Be、Mn、Mg、Ag、As、Sb、Zr、B、Cr、および
これらの混合物:最大約1.0%、および
残部である銅と不純物から成る。
【0043】
好適には、選択元素は、Cr、ZrおよびAgのうちの1種以上を最大1%含む。
【0044】
この合金の更に好適な範囲は、
ニッケル:約0.8〜1.7%、
チタン:約0.8〜1.4%、
鉄またはコバルト:約0.90〜1.10%、
マグネシウム:約0.10〜0.40%、
1種以上のCr、Zr、AgまたはSn、およびこれらの混合物:最大約1.0%、および
残部である銅と不純物である。
【0045】
本発明の第1形態では、前記合金組成と処理方法によれば、降伏強度は少なくとも約793MPa(115ksi)になるが、少なくとも降伏強度約827MPa(120ksi)が好ましい。この例では、導電性が最高約40%IACSである。本発明の第2形態では、前記合金組成と処理方法によれば、降伏強度が約724MPa(105ksi)を超えるが、最大約793MPa(115ksi)になることが好ましい。この第2形態では、合金の導電性は、好適には、約45%〜約55%IACSである。第3形態では、前記合金組成と処理方法によれば、降伏強度が約552MPa(80ksi)〜約690MPa(100ksi)であり、導電性は約55%〜約65%IACSである。
【0046】
図1は、本発明方法の第1形態によるフローチャートである。本発明合金は、従来方法によって溶解、鋳造される(段階10)。鋳造された合金は、温度約750℃〜約1000℃で熱間圧延される(段階12)。酸化物を除去するためにフライス削りを行った後で、合金は、約50%〜約99%に、圧延方向を横断する方向の横断面で減面するために冷間圧延加工される(段階14)。次いで、合金は、約10秒〜約1時間の間、溶体化焼鈍温度約850〜約1000℃で溶体化処理される(段階16)。その後、平均結晶粒径約5〜20μmの等軸晶を得るために、焼入れ(段階18)されるか、または環境温度までの急冷が行われる。その後、減面率最大80%(好適には、約30%〜約80%)まで、第1回冷間圧延加工を行うことができる(段階20)。第1回冷間圧延(段階20)の後、温度約400℃〜約650℃(好適には約450℃〜約600℃)で、約1分〜約10時間(好適には約1〜約8時間)、一次焼鈍が行われる(段階22)。次に、仕上げ寸法にするために、合金に対して減面率約10%〜約50%の第2回冷間圧延加工が行われる(段階24)。第2回冷間圧延の後、温度約150℃〜約600℃(好適には約200℃〜約500℃)で、約15秒〜約10時間、二次焼鈍が行われる(段階26)。
【0047】
代替法として、本発明の別形態によれば、銅基合金が、製造過程中の溶体化熱処理を行なわずに仕上げ寸法に処理される。すなわち、銅基合金を、より低い温度での焼鈍処理と中間冷間加工の反復で処理して仕上げることができる。この代替法は、より高い導電性レベルを有する製品を製造するために特に有用である。
【0048】
図2は、別の本発明方法のフローチャートである。本発明合金は、従来方法によって溶解、鋳造される(段階10)。鋳造された合金は、温度約750℃〜約1000℃で熱間圧延加工され(段階12)、次いで、焼入れされるか、急冷される。酸化物を除去するためにフライス削りを行った後で、熱間圧延加工された合金は、減面率約50%〜約99%を得るために冷間圧延加工される(段階14)。次に、焼鈍温度約400℃〜約650℃で、約15秒〜約10時間、合金に対して一次焼鈍を施す(段階28)。そうしたい場合には、必要に応じて、冷間圧延段階および一次焼鈍段階を反復して行うことができる。次に、合金を、減面率約40%〜約80%を得るために冷間圧延加工され(段階30)、その後、約400℃〜650℃(好適には約450℃〜約600℃)で、約1〜約10時間、合金に対して二次焼鈍を施す(段階32)。次に、合金を仕上げ寸法にする目的で、減面率約10%〜約50%を得るために冷間圧延加工が行われる(段階34)。この後、そうしたい場合には、約150℃〜約600℃(好適には約200℃〜約500℃)で、約15秒〜約10時間、三次焼鈍を行う(段階26)。
【0049】
本発明方法の第2の好適代替形態では、好適な組成範囲の合金を用いる。この方法は、約758MPa(110ksi)YSと約50%IACS導電性の公称特性を有する本発明合金を製造できる。図3について説明すると、合金は、従来方法によって溶解、鋳造される(段階10)。鋳造された合金は、温度約750℃〜約1000℃で熱間圧延加工される(段階12)。酸化物を除去するためにフライス削りを行った後で、熱間圧延加工された合金は、減面率約50%〜約99%を得るために冷間圧延加工される(段階14)。次に、合金は、約15秒から約1時間の間、約950℃〜1000℃の温度で溶体化処理される(段階16)。次に、合金は、面積を約40%〜約60%低減するために冷間圧延加工され(段階20)、次に、温度約400℃〜約650℃(好適には、約450℃〜約600℃)で、約1〜約10時間(好適には、約1〜約3時間)、一次焼鈍が行われる(段階28)。一次焼鈍(段階28)の後で、減面率約40%〜約60%を得るために冷間圧延加工が行われる(段階30)。次に、一次焼鈍(段階28)よりも低い温度で、二次焼鈍が合金に施される(段階32)。二次焼鈍は、温度約375℃〜約550℃で、約1〜約3時間行われる。次に、2回焼鈍された合金は、仕上げ寸法にする目的で少なくとも約30%面積を低減するために冷間圧延加工される(段階34)。この場合、温度約150℃〜約600℃(好適には約200℃〜約500℃)で、約1〜約3時間、合金に対して3回目の焼鈍が施される(段階26)。
【0050】
本発明合金および本発明方法は、以下の例により、さらによく理解できるだろう。
【0051】
実施例
以下の例では、方法関連の記載、特性および単位のうちのあるものは略語で行う。例えば、「”」=インチ、WQ=水焼入れ、スラッシュ記号「/」=「に対して」、SA=溶体化焼鈍、CR=「冷間圧延加工された」または「冷間減面加工された」、YS=降伏強度、TS=引張り強さ、EL=伸び率、%IACS=導電性、MBR/t=ストリップの厚さで割った最小曲げ半径、SR=耐応力緩和性、Gs=結晶粒径、μm=ミクロンまたはマイクロメートル、beg=開始、recr=「再結晶化された」、n.c.r.=「完全には再結晶化されていない」、sec.またはs=秒、hrsまたはh=時間、MS/m=メートル当たりのメガ・ジーメンス、ksi=平方インチ当たりの数千ポンド。
【0052】
例1
図1の工程により、表1の分析組成の一連の4.5kg(10ポンド)の実験室インゴットをシリカ坩堝内で溶融し、Durville鋳造して鋼製モールドにした。湯口後のインゴット寸法は、10.16cm×10.16cm×4.45cm(4インチ×4インチ×1.75インチ)であった。950℃で3時間均熱処理した後、インゴットを3回熱間圧延加工して2.8cm(1.1インチ)とし、950℃で10分間再加熱し、さらに3回熱間圧延加工して1.27cm(0.50インチ)とし、水焼入れを行った。結果として得られた熱間圧延板を、1000℃で2時間均熱処理して拡散焼鈍を行い、その後、水焼入れを行った。酸化物皮膜を除去するために、トリミングおよびフライス削りを行った後で、合金を冷間圧延して1.27mm(0.050インチ)とした。次に、950℃で60秒間の溶体化処理を施した合金J346を除いて、温度1000℃、20〜60秒間の溶体化処理を合金に施した。溶体化処理および焼入れの後、合金を50%冷間圧延加工して0.64mm(0.025インチ)とし、550℃で3時間の時効焼鈍を行った。次に、合金を50%冷間圧延加工し、275℃で2時間の応力除去焼鈍を行って0.32mm(0.0125インチ)とし、表2に示す特性を測定した。
【0053】
表2のデータは、621MPa〜765MPa(90ksi〜111ksi)の降伏強度、および38.2%IACS〜63.8%IACSの導電性の高い値が得られたことを示す。得られた耐応力緩和性は、Cu−Ni−Ti−Fe合金J345およびJ346に対して、105℃で1000時間の後、95%の所望値に近いものであった。所望値はCu−Ni−Ti−Mg合金J354により得られた。
【表1】


【表2】

【0054】
例2
図2の工程により、表1の合金を熱間圧延加工したプレート寸法で、均質化熱処理を通して例1のように処理した。この例の場合、合金を製造過程中溶体化熱処理を行わないで仕上げ寸法に処理した。酸化物皮膜を除去するためにトリミングおよびフライス削りを行った後で、合金を冷間圧延加工して2.54mm(0.100インチ)にし、550℃で3時間の一次時効焼鈍を行った。次に、合金を70%冷間圧延加工し、0.76mm(0.030インチ)とし、525℃で3時間の二次時効焼鈍を行った。次に、合金を50%冷間圧延加工して、0.38mm(0.015インチ)の寸法とし、275℃で2時間の応力除去焼鈍を行い、この条件で表3に示す特性を測定した。
【0055】
表2のデータが示すように、この例の合金は676MPa〜738MPa(98ksi〜107ksi)の高い降伏強度の組合せを有していたが、導電性はもっと高く49.9%IACS〜69.7%IACSであった。ベースであるCu−Ni−Ti合金にFeまたはMgを添加すると、強化した耐応力緩和性が得られた。表3のデータは、Cu−Ni−Ti合金にMgを添加した場合に最も高い耐応力緩和性が得られたことを示す。合金J354と合金J351と比較した。
【表3】

【0056】
例3
図1の工程により、表4の分析組成の一連の4.5kg(10ポンド)の実験室インゴットをシリカ坩堝内で溶融し、Durville鋳造して鋼製モールドにした。湯口後のインゴット寸法は、10.16cm×10.16cm×4.45cm(4インチ×4インチ×1.75インチ)であった。950℃で3時間均熱処理した後で、3回熱間圧延加工し、950℃で10分間再加熱して2.8cm(1.1インチ)とし、さらに熱間圧延加工して厚さを1.27cm(0.50インチ)とし、水焼入れを行った。酸化物皮膜を除去するためにトリミングおよびフライス削りを行った後で、合金を冷間圧延して1.27mm(0.050インチ)とした。
【0057】
次に、J477を除いて、温度1000℃で25秒の間溶体化熱処理を合金に施し、その後、直径12〜24μmの制御された微細な再結晶化した粒径を得るために水焼入れを行った。合金J477を25秒+WQ間950℃で溶体化熱処理し、結晶粒径9μmを得た。
【0058】
次に、すべての合金を50%冷間圧延加工して厚さ0.64mm(0.025インチ)とし、マトリックスを不当に軟化させずに、導電性を最大にするために有効な時間の間、550℃で時効焼鈍を行った。表5は550℃での時効焼鈍時間を示す。次に、合金を50%冷間圧延加工して0.32mm(0.0125インチ)の寸法にし、275℃で2時間の応力除去焼鈍を行った。この条件で表5の特性を測定した。
【0059】
表5のデータは、ベース合金J477は、634MPa(92ksi)YSおよび58.1%IACS導電性の優れた特性の組合せを有しているが、Feを添加すると、導電性は若干低下するが、ベース合金の強度(J483対J477)が690MPa(100ksi)に増大することを示す。さらにMg添加の利点は、Ni、TiおよびFeの量を一定に維持しながら、合金J481と合金J491を比較すれば分かるように、105℃で耐応力緩和性が増大することである。合金J491の特性(表5)を表2の合金J345およびJ346と比較するとMgの利点も分かる。
【表4】


【表5】

【0060】
例4
図2の工程により、表4の合金を製造過程中溶体化熱処理を行わないで処理して仕上げ寸法にした。酸化物皮膜を除去するためにトリミングおよびフライス削りを行った後で、熱間圧延加工した合金を冷間圧延加工して0.050インチ(1.27mm)の寸法にし、導電性を最大にするのに効果がある表6の温度および時間で一次時効焼鈍を行った。次に、合金を50%冷間圧延加工し、0.025インチ(0.635mm)の寸法にし、マトリックスを不当に軟化させることなく導電性を最大にするために選択した、表6に示す温度および時間で二次時効焼鈍を行った。表6は、各合金に対して行った特定の時効焼鈍を示す。次に、合金を50%冷間圧延加工して、0.0125インチ(0.32mm)の寸法とし、275℃で2時間の応力除去焼鈍を行い、この条件で表7に示す特性を測定した。このプロセスにより、添加物FeおよびMgを含む合金は、もっと高い導電性と優れた耐応力緩和性とともに低いが依然として優れた強度を有する。
【表6】


【表7】

【0061】
例5
図3の工程により、表8の分析組成の一連の4.5kg(10ポンド)の実験室インゴットをシリカ坩堝内で溶融し、Durville鋳造して鋼製モールドにした。湯口後のインゴット寸法は、10.16cm×10.16cm×4.45cm(4インチ×4インチ×1.75インチ)であった。950℃で3時間均熱処理した後で、インゴットを3回熱間圧延加工して2.8cm(1.1インチ)の厚さにし、10分間950℃で再加熱し、さらに、3回熱間圧延して1.27cm(0.50インチ)の寸法にし、水焼入れを行った。酸化物皮膜を除去するために、トリミングおよびフライス削りを行った後で、合金を冷間圧延して2.54mm(0.100インチ)の厚さにし、950℃で40秒間、炉内で溶体化熱処理し、8.0〜12μmの制御された再結晶化された微細粒径を得るために水焼入れを行った。次に、合金を50%冷間圧延加工して1.27mm(0.050インチ)の寸法にし、マトリックスを不当に軟化させないで、導電性を最大にするように設計された温度565℃で3時間の時効焼鈍を行った。次に、合金を50%冷間圧延加工して0.64mm(0.025インチ)の寸法にし、410℃で2時間の二次時効焼鈍を行い、冷間圧延加工して0.25mm(0.010インチ)とした。この後、250℃で2時間の応力除去焼鈍を行った。この条件で表9の特性を測定した。
【表8】


【表9】

【0062】
ベースライン合金J694をジルコニウムを含む合金J698と比較した結果、少量のジルコニウムが、導電性に影響を与えることなく降伏強度を増大することが分かった。合金J694を銀を含む合金J699と比較すると、少量の銀は降伏強度と導電性両方を増大することが分かる。合金J694をクロームを含む合金J700と比較すると、少量のクロームは導電性を若干低減するが、降伏強度を若干増大することが分かる。
【0063】
例6
図3の工程により、表10の分析組成の一連の4.5kg(10ポンド)の実験室インゴットをシリカ坩堝内で溶融し、Durville鋳造して鋼製モールドにした。湯口後のインゴット寸法は、10.16cm×10.16cm×4.45cm(4インチ×4インチ×1.75インチ)であった。950℃で3時間均熱処理した後、インゴットを3回熱間圧延加工して2.8cm(1.1インチ)の厚さにし、10分間950℃で再加熱し、さらに、3回熱間圧延して1.27cm(0.50インチ)の厚さにし、水焼入れを行った。酸化物皮膜を除去するために、トリミングおよびフライス削りを行った後で、合金を冷間圧延加工を行って2.54mm(0.100インチ)の寸法にし、25〜35秒間1000℃で炉内で溶体化熱処理を行い、その後で6〜12μmの制御された微細な再結晶化した粒径を得るために水焼入れを行った。次に、合金を50%冷間圧延加工し、1.27mm(0.050インチ)の寸法にし、550〜600℃で3〜4時間の時効焼鈍を行った。次に、合金を50%冷間圧延加工して0.64mm(0.025インチ)の寸法にし、再度2時間の間410〜425℃で時効焼鈍を行い、その後で冷間圧延加工を行い0.25mm(0.010インチ)とし、250〜275℃で2時間の応力除去焼鈍を行った。
【0064】
表11の仕上げ寸法における特性は、Mgを添加することにより降伏強度も導電性も増大し(J603と比較した場合のJ604)、および/またはジルコニウムを添加したことにより降伏強度も導電性も増大する(J603と比較した場合のJ644)ことを示している。
【0065】
Mgの添加がなければ、Crの添加は、それ自体有効ではない(表11(列D)におけるJ646の低い強度を、表9におけるJ700の高い強度と比較せよ)。また、表11から、Mgの添加(添加量:0、0.16、0.25、0.31重量%)が、どのように降伏強度(および引張り強さ)値を向上させるか(703(758)、710(772)、745(772)、745(800)、758(814)MPa[102(110)、103(112)、108(116)、110(118)ksi])について留意されたし。
【表10】


【表11】

【0066】
例7
この例は、降伏強度および導電性への組成および処理の影響を示す。表12の組成を有する合金J694およびJ709を950℃で3時間均熱処理し、1.27cm(0.50インチ)に熱間圧延加工し、その後で水焼入れを行うことにより、10.16cm×10.16cm×4.45cm(4インチ×4インチ×1.75インチ)インゴットから処理した。酸化物を除去するためにトリミングおよびフライス削りを行った後で、合金を冷間圧延加工して2.54mm(0.10インチ)とし、1000℃で35秒間溶体化熱処理し、水焼入れを行った。次に、合金を冷間圧延加工して1.27mm(0.05インチ)とし、950℃で35秒間溶体化処理し、水焼入れを行った。さらに表13に示す処理を行い、表14に示す特性を得た。
【表12】


【表13】

【0067】
今まで本発明の1つまたはそれ以上の実施形態について説明してきた。しかし、本発明の精神および範囲から逸脱することなしに、種々の修正を行うことができることを理解することができるだろう。それ故、他の実施形態も特許請求の範囲に入る。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
降伏強度、導電性、応力緩和性の、改善された組合せを有する銅基合金の製造方法において、
実質的に、重量で、チタン:0.35%〜10%、X元素:0.001%〜6%(ここで、X元素は、Ni、Fe、Sn、P、Al、Zn、Si、Pb、Be、Mn、Mg、Bi、S、Te、Se、Ag、As、Sb、Zr、B、Cr、Co、および前記元素の組合せから選択される)、および、残部としての銅と不可避不純物から成る銅基合金を鋳造(10)する工程と、
前記銅基合金を約750℃〜約1000℃で熱間圧延加工する段階(12)と、
前記銅基合金に、約50%〜約97%の面積減少率で、第1回冷間圧延加工(14)を施す段階と、
温度約850℃〜約1000℃で、約10秒〜約1時間、前記銅基合金に一次焼鈍(16)を施し、その後、周囲温度まで急冷(18)する段階と、
前記銅基合金に、最大約80%の減面率で、第2回冷間圧延加工(20)を施す段階と、
約400℃〜約650℃で、約1分〜約10時間、前記銅基合金に二次焼鈍(22)を施す段階と、
前記銅基合金に、約10%〜約50%の減面率で、第3回冷間圧延加工(24)を施して仕上げ寸法にする段階とによって特徴づけられる銅基合金の製造方法。
【請求項2】
前記第3回冷間圧延加工(24)段階の後、前記銅基合金に、温度約150℃〜約600℃で、約15秒〜約10時間、焼鈍(26)を施すことを特徴とする請求項1に記載された銅基合金の製造方法。
【請求項3】
仕上げ寸法で、少なくとも724MPa(105ksi)の降伏強度と、少なくとも50%IACSの導電性を前記銅基合金が有するようにするために有効な時間と温度で、前記一次焼鈍(16)、二次焼鈍(22)および三次焼鈍(26)が行なわれることを特徴とする請求項2に記載された銅基合金の製造方法。
【請求項4】
降伏強度、導電性、耐応力緩和性の、改善された組合せを有する銅基合金の製造方法において、
実質的に、重量で、チタン:0.35%〜10%、X元素:0.001%〜6%(ここで、X元素は、Ni、Fe、Sn、P、Al、Zn、Si、Pb、Be、Mn、Mg、Bi、S、Te、Se、Ag、As、Sb、Zr、B、CrおよびCoおよび前記元素の組合せから選択される)、および残部としての銅と不可避不純物から成る銅基合金を鋳造(10)する段階と、
前記銅基合金を約750℃〜約1000℃で熱間減面加工(12)する段階と、
減面率約50%〜約99%までの冷間減面加工(14)と、焼鈍温度約400℃〜約650℃、約15秒〜約10時間の時効焼鈍(28)とを含む1回以上のサイクルを、前記銅基合金に施す段階と、
前記銅基合金に減面率約40%〜約80%の冷間減面加工(30)を施す段階と、
約400℃〜約650℃、約1時間〜約10時間の焼鈍によって前記銅基合金に時効硬化(32)を施す段階と、
約10%〜約50%の減面率の最終減面加工(34)を前記銅基合金に施して仕上げ寸法にする段階とによって特徴づけられる銅基合金の製造方法。
【請求項5】
前記最終冷間圧延加工段階(34)の後、前記銅基合金に、温度約150℃〜約600℃、約15秒〜約10時間の焼鈍(26)を施すことを特徴とする請求項4に記載された銅基合金の製造方法。
【請求項6】
仕上げ寸法で、少なくとも724MPa(105ksi)の降伏強度と、少なくとも50%IACSの導電性を前記銅基合金が有するようにするために有効な時間と温度で、前記焼鈍段階(28,32,26)が実行されることを特徴とする請求項5に記載された銅基合金の製造方法。
【請求項7】
高降伏強度、中程度の強度、導電性の、改善された組合せを有する銅基合金の製造方法において、
実質的に、重量で、チタン:0.35%〜10%、X元素:0.001%〜6%(ここで、X元素は、Ni、Fe、Sn、P、Al、Zn、Si、Pb、Be、Mn、Mg、Bi、S、Te、Se、Ag、As、Sb、Zr、B、Cr、Co、および前記元素の組合せから選択される)、および残部としての銅と不可避不純物から成る銅基合金を鋳造(10)する段階と、
約750℃〜約1000℃で、前記銅基合金に熱間減面加工(12)を施す段階と、
減面率約50%〜約99%まで、前記銅基合金に冷間減面加工(14)を施す段階と、
温度約950℃〜約1000℃、約15秒〜約1時間の溶体化焼鈍(16)を前記銅基合金に施し、その後、周囲温度まで急冷する段階と、
減面率約40%〜約60%まで、前記銅基合金に冷間減面加工(20)を施す段階と、
温度約400℃〜650℃、約1時間〜約10時間の時効焼鈍(28)を前記銅基合金に施す段階と、
減面率約40%〜約60%まで、前記銅基合金に冷間減面加工(30)を施す段階と、
前記第1回の時効焼鈍温度よりも低い温度約375℃〜約550℃、約1時間〜約3時間の第2回の時効焼鈍(32)を前記銅基合金に施す段階と、
仕上げ寸法にするために、少なくとも約30%の減面率で冷間減面加工(34)を施す段階とによって特徴づけられる銅基合金の製造方法。
【請求項8】
前記最終冷間圧延段階(34)の後、温度約150℃〜約600℃、約15秒〜約10時間の焼鈍(26)が前記銅基合金に施されることを特徴とする請求項7に記載された銅基合金の製造方法。
【請求項9】
仕上げ寸法で、少なくとも724MPa(105ksi)の降伏強度と、少なくとも50%IACSの導電性を前記銅基合金が有するようにするために有効な時間と温度で、前記一次焼鈍(16)、二次焼鈍(32)および三次焼鈍(26)が行なわれることを特徴とする請求項8に記載された銅基合金の製造方法。
【請求項10】
高降伏強度、中程度の強度、導電性の、改善された組合せを有する銅基合金の製造方法において、
実質的に、重量で、チタン:0.35%〜10%、X元素:0.001%〜6%(ここで、X元素は、Ni、Fe、Sn、P、Al、Zn、Si、Pb、Be、Mn、Mg、Bi、S、Te、Se、Ag、As、Sb、Zr、B、CrおよびCoおよび前記元素の組合せから選択される)、および残部としての銅と不可避不純物から成る銅基合金を鋳造(10)する段階と、
前記銅基合金を約750℃〜約1000℃で熱間圧延加工(12)する段階と、
減面率約50%〜約99%までの冷間圧延加工(14)を、前記銅基合金に施す段階と、
温度約950℃〜約1000℃、約10秒〜約1時間の溶体化焼鈍(16)を前記銅基合金に施し、その後、周囲温度まで急冷(18)する段階と、
減面率約40%〜約60%の冷間圧延加工(20)を前記銅基合金に施す段階と、
温度約500℃〜575℃、約15秒〜約10時間、または、温度約425℃〜475℃、約2.5時間〜約3.5時間の時効焼鈍(28)を前記銅基合金に施す段階と、
減面率約40%〜約60%の冷間圧延加工(30)を前記銅基合金に施す段階と、
温度約500℃〜550℃、約1時間〜約4時間の第2回の時効焼鈍(32)を前記銅基合金に施す段階(32)と、
仕上げ寸法にするために、少なくとも約30%の減面率で最終圧延加工(34)を施す段階(34)とによって特徴づけられる銅基合金の製造方法。
【請求項11】
前記最終冷間圧延加工段階(34)の後、温度約150℃〜約600℃、約15秒〜約10時間の焼鈍(26)を前記銅基合金に施すことを特徴とする請求項10に記載された銅基合金の製造方法。
【請求項12】
仕上げ寸法で、少なくとも724MPa(105ksi)の降伏強度と、少なくとも50%の導電性を前記銅基合金が有するようにするために有効な時間と温度で、前記焼鈍段階(16,28,32,26)が実行されることを特徴とする請求項11に記載された銅基合金の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−275640(P2010−275640A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180707(P2010−180707)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【分割の表示】特願2004−536112(P2004−536112)の分割
【原出願日】平成15年9月5日(2003.9.5)
【出願人】(506071210)オリン コーポレイション (12)
【出願人】(505090735)ヴィーラント − ヴェルケ アクチエンゲゼルシャフト (3)