説明

時系列データを生成する装置および方法

【課題】時間変化の要因の分析に適したデータを生成するデータ生成装置を提供する。
【解決手段】識別情報とイベントとイベントの発生日時とを対応づけた入力データを入力する入力部101と、発生日時順にイベントを並べたイベント時系列を生成するイベント時系列生成部102と、イベント時系列に含まれるイベントの発生に伴う対象物の状態の遷移を表す状態時系列を生成する状態時系列生成部103と、状態遷移パターンと一致する複数の状態を含む時系列を状態時系列から抽出し、抽出した時系列に状態時系列に対応する識別情報を対応づけた部分状態時系列を生成する部分時系列生成部104と、識別情報に対応する属性情報を属性値記憶部125から取得し、部分状態時系列に含まれる状態それぞれに対して、取得した属性情報を対応づけた属性時系列を生成する属性値時系列生成部106と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、データ分析の対象物に付与されたRFID(Radio Frequency Identification)タグ等から検知された対象物の時間変化を表すデータから、分析に用いる時系列データを生成する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
データ分析等のために、時間経過に伴って変化する時系列データを生成するさまざまな技術が存在する。特許文献1では、複数の時系列データを組み合わせることにより、欠落しているデータを補間しながら、複数の時系列データを統合した時系列データを生成する技術が提案されている。また、特許文献2では、検索キーによって収集されたWebページを、そのURLに関する情報に基づいてクラスタリングするとともに、特定のクラスターに含まれるページを時間情報に基づいて分割することにより、系列データを生成する技術が提案されている。
【0003】
一方、データ分析の対象となる対象物に付されたRFIDタグを検出することにより対象物の移動などの時間変化を分析する技術も知られている。RFIDタグから収集されたデータを用いた従来の分析技術では、同時に計測された複数のRFIDタグの関連性を分析することができる。また、同一のRFIDタグが時間の経過に伴って位置的にどのような推移をとり、どのような結果となるかを分析することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−44518号公報
【特許文献2】特開2006−331089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法では、1つのタグの時系列から複数の動作(要因)を分析することができないという問題があった。例えば、同一のタグが付された商品を、複数ユーザがそれぞれ別に移動させた場合、複数のユーザによって別々に移動されたことを区別して分析することができなかった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、対象物の時間変化を表す時系列データから、時間変化の要因の分析に適したデータを生成することができる装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、対象物を識別する識別情報と、前記対象物の属性を表す属性情報とを対応づけて記憶する属性記憶部と、前記識別情報と、前記識別情報の前記対象物に対して発生したイベントと、前記イベントの発生日時とを対応づけた複数の入力データを入力する入力部と、前記入力データに含まれる前記識別情報ごとに、前記発生日時順に前記イベントを並べた時系列であって、前記識別情報を対応づけたイベント時系列を生成するイベント時系列生成部と、前記イベント時系列に含まれる前記イベントの発生に伴う前記対象物の状態の遷移を表す時系列であって、前記イベント時系列に対応する前記識別情報を対応づけた状態時系列を生成する状態時系列生成部と、複数の前記状態を予め定められた順序で並べた状態遷移パターンと一致する複数の前記状態を含む時系列を前記状態時系列から抽出し、抽出した時系列に前記状態時系列に対応する前記識別情報を対応づけた部分状態時系列を生成する部分時系列生成部と、前記部分状態時系列ごとに、前記部分状態時系列に対応づけられた前記識別情報に対応する前記属性情報を前記属性記憶部から取得し、前記部分状態時系列に含まれる前記状態それぞれに対して、取得した前記属性情報を対応づけた属性時系列を生成する属性時系列生成部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記装置を実行することができる方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、対象物の時間変化を表す時系列データから、時間変化の要因の分析に適したデータを生成することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる装置および方法の最良な実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
例えば、RFIDタグが付与された商品をデータ分析の対象物とする場合、RFIDタグの通過等を検知可能な複数のセンサを用いることにより、商品の移動の経過を表すデータを収集することができる。しかし、上述のように、このようなデータのみでは、例えば複数のユーザによって生じた商品の移動をそれぞれ区別して分析することができない。
【0012】
また、個々のRFIDタグから収集されるデータは、実際には同じ要因によってその推移が発生しているとしても、必ずしも同時に計測されるとは限らないため、複数のRFIDタグによって収集されたデータ間の時系列的な関係性を分析することは困難であった。
【0013】
そこで、第1の実施の形態にかかるデータ生成装置は、商品の移動経過を表すデータから、商品の状態の遷移を表す状態時系列を生成し、所定のルールに従って状態時系列を分割した部分状態時系列を生成する。これにより、時間変化の要因の分析に適したデータを生成することができる。また、第1の実施の形態にかかるデータ生成装置は、同一の要因によってその推移が生じたと考えられる、複数のRFIDタグに関する複数の部分状態時系列を結合する。これにより、特定の商品に対応する複数の要因間の関係を分析することができる。
【0014】
なお、以下では、RFIDタグが付与された商品を扱う洋品店で収集された商品の移動経過を表す入力データを元に分析用の時系列データを生成するデータ生成装置を例に説明する。適用可能なデータ収集環境はこれに限られず、例えば、スーパーなどの小売店を対象としてもよい。より一般的には、RFIDタグが設置可能な移動可能な物体(対象物)が存在し、特定のRFIDリーダーによってRFIDタグが通過した日時を記録できる環境から収集された入力データに対して本実施の形態の方法を適用することができる。
【0015】
ここで、上記のような入力データが収集される環境の一例について図1を用いて説明する。図1は、データ収集環境の一例を示す図である。同図に示すように、第1の実施の形態では、商品を保管する倉庫10、商品を陳列・販売する店内20からなるデータ収集環境を例に説明する。
【0016】
店内20には、商品を陳列する棚1〜棚4、顧客が商品を試着する試着室、商品を購入するレジが設置されている。また、倉庫10と店内20との間、棚1〜棚4と店内20との間、試着室と店内20との間、およびレジと店内20との間には、RFIDタグの通過を検知できるゲート31〜37が設置されている。
【0017】
なお、各商品は、商品を個々に識別可能なタグIDが格納されたRFIDタグが予め付与されているものとする。本環境を利用することにより、商品がゲート通過するたびに、通過した日時、通過したゲート、およびRFIDタグのタグIDを収集することができる。収集されたデータ(以下、タグIDデータという)が、入力データとして第1の実施の形態のデータ生成装置に入力される。
【0018】
なお、以下では、ゲート31を倉庫店内間ゲート、ゲート32〜ゲート35を棚1ゲート〜棚4ゲート、ゲート36を試着室ゲート、およびゲート37をレジゲートという場合がある。
【0019】
図2は、第1の実施の形態にかかるデータ生成装置100の構成を示すブロック図である。図2に示すように、データ生成装置100は、タグIDデータ記憶部121と、状態ルール記憶部122と、分割ルール記憶部123と、結合ルール記憶部124と、属性値記憶部125と、入力部101と、イベント時系列生成部102と、状態時系列生成部103と、部分時系列生成部104と、結合時系列生成部105と、属性値時系列生成部106と、出力部107と、を備えている。
【0020】
タグIDデータ記憶部121は、図1に示したようなデータ収集環境で収集されたタグIDデータを記憶する。図3は、タグIDデータ記憶部121に記憶されたタグIDデータのデータ構造の一例を示す図である。図3に示すように、タグIDデータ記憶部121は、イベントが発生した日時と、発生したイベントと、タグIDとを対応づけたタグIDデータを記憶している。
【0021】
本実施の形態では、RFIDタグを検知したことがイベントに相当するため、日時には、各ゲートでRFIDタグを検知した日時が設定される。また、イベントには、いずれかのゲートを通過したことを表すイベント(イベント情報)が設定される。なお、イベントの代わりに通過したゲート名を設定するように構成してもよい。タグIDは、該当するゲートでRFIDタグから読み取られたタグIDが設定される。
【0022】
図2に戻り、状態ルール記憶部122は、発生したイベントによって生じる対象物の状態遷移のルールを定めた状態ルールを記憶する。図4は、状態ルール記憶部122に記憶された状態ルールのデータ構造の一例を示す図である。図4に示すように、状態ルール記憶部122は、遷移前の状態と、イベントと、当該イベントにより遷移した後の状態(遷移後の状態)とを対応づけた状態ルールを記憶している。状態は、商品が倉庫または店内のいずれの箇所に存在するかを表す。例えば、同図の最初の状態ルールは、商品が倉庫に存在する状態から、商品が倉庫店内間ゲートを通過した後、店内に存在する状態に遷移することを表している。なお、本実施の形態では、初期状態を「倉庫」とする。
【0023】
図2に戻り、分割ルール記憶部123は、状態時系列生成部103(後述)によって生成された状態時系列を分割するための分割ルールを記憶する。図5は、分割ルール記憶部123に記憶された分割ルールのデータ構造の一例を示す図である。図5に示すように、分割ルール記憶部123は、複数の状態を所定の順序で並べた状態遷移パターンを分割ルールとして記憶する。例えば、同図の最初の状態遷移パターンは、倉庫から店内へ移動し、さらに店内からいずれかの棚(棚x(x=1〜4))に移動する状態遷移のパターンを表している。後述する部分時系列生成部104は、状態遷移パターンと一致する複数の状態を含む部分状態時系列を生成する。なお、分割ルールはこれに限られるものではない。
【0024】
図2に戻り、結合ルール記憶部124は、複数の部分状態時系列を結合するための状態に関する条件を定めた結合ルールを記憶する。図6は、結合ルール記憶部124に記憶された結合ルールのデータ構造の一例を示す図である。図6に示すように、結合ルール記憶部124は、タグIDと、位置と、結合する状態と、時間条件とを対応づけた結合ルールを記憶している。
【0025】
タグIDは、結合する複数の部分状態時系列に対応するタグIDに関する条件を表す。同図では、結合する部分状態時系列に対応するタグIDが異なることを表す「異種」が設定された例が示されている。
【0026】
位置は、複数の部分状態時系列を、部分状態時系列に含まれる状態のうち、いずれの位置に存在する状態で結合するかを表す。同図では、部分状態時系列の末尾の状態で結合することを表す「最終」、および、部分状態時系列の先頭・末尾以外の状態で結合することを表す「中間」が設定された例が示されている。
【0027】
時間条件は、結合する状態の時間に関する条件を表す。時間条件には、例えば、結合する状態に遷移する原因となったイベントの発生日時に関する条件を設定する。同図の最初の結合ルールでは、結合する状態に遷移する原因となったイベントの発生日時の差分が1分以内であることを表す時間条件の例が示されている。また、同図の2番目の結合ルールでは、結合する状態に遷移する原因となったイベントの発生日時から、次の状態に遷移する原因となったイベントの発生日時までの時間が重複することを表す時間条件の例が示されている。
【0028】
図2に戻り、属性値記憶部125は、タグIDが付与された商品の属性を表す属性情報(属性値)を記憶する。図7は、属性値記憶部125に記憶されたデータのデータ構造の一例を示す図である。図7に示すように、属性値記憶部125は、タグIDに、タグIDが付与された商品の品種、および、当該商品の色を属性値として対応づけたデータを記憶している。
【0029】
タグIDは、個々の商品を識別する識別情報である。すなわち、品種および色が同一の商品が複数存在する場合は、各商品に対してそれぞれ異なるタグIDが付与される。したがって、同図の最初のデータのように、複数のタグIDが、同一の属性値に対応づけられる場合がある。
【0030】
なお、タグIDデータ記憶部121、状態ルール記憶部122、分割ルール記憶部123、結合ルール記憶部124、および属性値記憶部125は、HDD(Hard Disk Drive)、光ディスク、メモリカード、RAM(Random Access Memory)などの一般的に利用されているあらゆる記憶媒体により構成することができる。
【0031】
図2に戻り、入力部101は、入力データとしてタグIDデータをタグIDデータ記憶部121から入力する。なお、入力元はタグIDデータ記憶部121に限られず、他の記憶媒体から入力するように構成してもよい。また、例えばネットワークを介して他の装置から入力するように構成してもよい。
【0032】
イベント時系列生成部102は、タグIDデータをタグIDごとに分け、イベントの発生順に並べた時系列データであるイベント時系列を生成する。
【0033】
状態時系列生成部103は、イベント時系列に状態ルールを適用し、タグIDの商品の状態の遷移を表す状態時系列を生成する。
【0034】
部分時系列生成部104は、分割ルールを参照して、状態時系列を複数の部分状態時系列に分割する。具体的には、部分時系列生成部104は、状態時系列に含まれる複数の状態のうち、分割ルール記憶部123に記憶された状態遷移パターンと一致する複数の状態を抽出し、抽出した複数の状態を含む部分状態時系列を生成する。
【0035】
結合時系列生成部105は、結合ルールを参照して、部分状態時系列を結合した結合時系列を生成する。例えば、結合時系列生成部105は、図6のような結合ルールを参照し、対応するタグIDが相互に相違し(異種)、部分状態時系列の末尾の状態が共に「購入」であり、対応するイベントの発生日時の差分が1分以内である複数の部分状態時系列を結合した結合時系列を生成する。
【0036】
属性値時系列生成部106は、結合時系列生成部105によって生成された結合時系列のそれぞれに対して、時系列に含まれる各状態に対応するタグIDの属性値を属性値記憶部125から取得し、取得した属性値をタグIDの代わりに対応づけた時系列である属性値時系列を生成する。
【0037】
出力部107は、生成された属性値時系列を出力する。例えば、出力部107は、属性値時系列の出力用に用意された記憶部等(図示せず)に属性値時系列を出力する。なお、出力方法はこれに限られず、例えば、ネットワークを介して接続された他の装置に属性値時系列を出力するように構成してもよい。
【0038】
次に、このように構成された第1の実施の形態にかかるデータ生成装置100によるデータ生成処理について図8および図9を用いて説明する。図8および図9は、第1の実施の形態におけるデータ生成処理の全体の流れを示すフローチャートである。
【0039】
まず、入力部101が、タグIDデータ記憶部121から未処理のタグIDデータを取得する(ステップS801)。次に、イベント時系列生成部102が、取得したタグIDデータに含まれるタグIDが既に取得済みか否かを判断する(ステップS802)。
【0040】
例えば、図2の4番目のタグIDデータである「04/01 15:00, 棚1, r1」が取得されたとする。この場合は、1番目のタグIDデータである「04/01 15:00, 倉庫店内間, r1」が既に取り出されている。従って、イベント時系列生成部102は、タグID=r1は既に取得済みであると判断する。
【0041】
既に取得済みのタグIDでない場合は(ステップS802:NO)、イベント時系列生成部102は、新たに取得したタグID用のイベント時系列を初期化する(ステップS803)。例えば、図2の2番目のタグIDデータである「04/01 15:01, 倉庫店内間, r2」を取得した場合、イベント時系列生成部102は、タグID=r2に対応するイベント時系列を新たに生成し、生成したイベント時系列の先頭のデータとして、当該タグIDデータを登録する。
【0042】
既に取得済みのタグIDである場合は(ステップS802:YES)、イベント時系列生成部102は、既に生成済みのイベント時系列にタグIDデータを追加することにより、当該イベント時系列を延伸する(ステップS804)。例えば、図2の4番目のタグIDデータである「04/01 15:00, 棚1, r1」が取得された場合は、1番目のタグIDデータである「04/01 15:00, 倉庫店内間, r1」を先頭データとするイベント時系列に、当該タグIDデータを追加することにより、当該イベント時系列を延伸する。
【0043】
次に、イベント時系列生成部102は、タグIDデータ記憶部121に未処理のタグIDデータが存在するか否かを判断する(ステップS805)。未処理のタグIDデータが存在する場合は(ステップS805:YES)、未処理のタグIDデータを取得して処理を繰り返す(ステップS801)。
【0044】
未処理のタグIDデータが存在しない場合は(ステップS805:NO)、状態時系列生成部103が、生成されたイベント時系列から状態時系列を生成する状態時系列生成処理(ステップS806〜ステップS811)を実行する。
【0045】
例えば、図2の最後のタグIDデータである「04/04 19:00, 倉庫店内間, r3」を取得してイベント時系列を延伸した後であれば、未処理のタグIDデータが存在しないため、状態時系列生成処理が実行される。
【0046】
なお、図10は、図2のようなタグIDデータからイベント時系列生成部102によって生成されたイベント時系列の一例を示す図である。図10に示すように、イベント時系列生成部102は、イベントの発生日時と、イベントと、タグIDとを発生日時順に並べたイベント時系列を生成する。なお、同図では、説明の便宜上、3列を単位とするタグIDごとのイベント時系列を、水平方向に並べて記載している。
【0047】
状態時系列生成処理では、まず、状態時系列生成部103が、生成されたイベント時系列から未処理のタグIDのイベント時系列を取得する(ステップS806)。次に、状態時系列生成部103は、取得したイベント時系列に対応する状態時系列を初期化する(ステップS807)。例えば、状態時系列の初期状態を「倉庫」とする場合には、状態時系列生成部103は、最初の状態として「倉庫」を設定するとともに、イベント時系列に対応するタグIDを設定することにより状態時系列を初期化する。
【0048】
次に、状態時系列生成部103は、取得したイベント時系列からイベントを抽出する(ステップS808)。次に、状態時系列生成部103は、状態ルール記憶部122に記憶された状態ルールと、取得したイベント時系列に含まれる状態である現在の状態とを参照し、遷移後の状態を決定し、状態時系列に設定する(ステップS809)。
【0049】
例えば、図4に示すような状態ルールが状態ルール記憶部122に記憶されているとする。また、すべてのイベント時系列における初期状態に、「倉庫」が設定されているとする。そして、図10のタグID=r1に対応するイベント時系列の1番目に位置するデータからイベントが取り出されたとする。このデータは、図4の1番目に位置する状態ルールに合致するため、状態時系列生成部103は、遷移後の状態を「店内」に決定する。
【0050】
また、同様に図10のタグID=r1に対応するイベント時系列の2番目に位置するデータからイベントが取り出されたとする。このデータは、現在の状態が「店内」であるため、図4の3番目の状態ルールと合致する。このため、状態時系列生成部103は、遷移後の状態を「棚1」に決定する。
【0051】
次に、状態時系列生成部103は、イベント時系列に未処理のイベントが存在するか否かを判断する(ステップS810)。存在する場合は(ステップS810:YES)、未処理のイベントを抽出して処理を繰り返す(ステップS808)。
【0052】
例えば、図10のタグID=r1に対応するイベント時系列を処理対象とした場合、イベント時系列の最後に位置するデータ「04/03 15:00, レジ, r1」が抽出された直後では、当該イベント時系列に未処理のイベントが存在しないと判断される。
【0053】
未処理のイベントが存在しない場合は(ステップS810:NO)、状態時系列生成部103は、さらに未処理のタグIDのイベント時系列が存在するか否かを判断する(ステップS811)。未処理のタグIDのイベント時系列が存在する場合は(ステップS811:YES)、未処理のタグIDのイベント時系列を取得して処理を繰り返す(ステップS806)。
【0054】
未処理のタグIDのイベント時系列が存在しない場合、すなわち、すべてのタグIDのイベント時系列に対して状態時系列を生成した場合は(ステップS811:NO)、部分時系列生成部104が、生成された状態時系列から部分状態時系列を生成する部分時系列生成処理(ステップS812〜ステップS817)を実行する。
【0055】
例えば、図10のタグID=r3に対応するイベント時系列を処理した後であれば、未処理のタグIDのイベント時系列は存在しないので、部分時系列生成処理が実行される。
【0056】
なお、図11は、図10のようなイベント時系列から状態時系列生成部103によって生成された状態時系列の一例を示す図である。図11に示すように、状態時系列生成部103は、状態の遷移を生じさせたイベントの発生日時と、状態と、タグIDとを発生日時順に並べた状態時系列を生成する。
【0057】
部分時系列生成処理では、まず、部分時系列生成部104が、生成された状態時系列から未処理のタグIDの状態時系列を取得する(ステップS812)。次に、部分時系列生成部104は、状態時系列の末尾の状態から順に状態を一つ抽出する(ステップS813)。なお、状態時系列の末尾の状態から順に抽出するのは、適合する状態遷移パターンの絞り込みを早くしうるからである。部分時系列生成部104が、状態時系列の先頭の状態から抽出するように構成してもよい。
【0058】
次に、部分時系列生成部104は、分割ルール記憶部123に格納されている分割ルールを参照し、抽出した状態に合致する状態遷移パターンを選択する(ステップS814)。また、部分時系列生成部104は、選択された状態遷移パターンに従って、抽出した状態から状態遷移パターンの先頭の状態までの状態時系列の部分系列を、部分状態時系列として抽出する(ステップS815)。
【0059】
例えば、図5の分割ルールが分割ルール記憶部123に格納されているとする。また、図11のタグID=r1の状態時系列の最後のデータの状態である「購入」が処理対象の状態として抽出されているとする。この場合、部分時系列生成部104は、分割ルールの各状態遷移パターンの最後の状態を、抽出した状態と比較し、3番目の状態遷移パターンと8番目の状態遷移パターンを抽出する。さらに、抽出した状態「購入」の前の状態は「棚2 → 店内→ 試着室→ 店内」であるため、部分時系列生成部104は、これらの状態と状態遷移パターンとを比較することにより、3番目の状態遷移パターンが抽出した状態に合致していると判断する。そこで、部分時系列生成部104は、部分状態時系列として、「棚2 → 店内→ 試着室→ 店内→ 購入」を取り出す。また、次の状態として「棚2」を設定する。このように、一致する状態遷移パターンが存在した場合、部分時系列生成部104は、状態遷移パターンの先頭の状態を次に処理する状態として処理を繰り返す。
【0060】
同様に、図11のタグID=r2の状態時系列の最後のデータの状態である「購入」が処理対象の状態として抽出されているとする。この場合、部分時系列生成部104は、分割ルールの各状態遷移パターンの最後の状態を、抽出した状態と比較し、3番目の状態遷移パターンと8番目の状態遷移パターンを抽出する。さらに、抽出した状態「購入」の前の状態は「棚2 → 店内」であるため、部分時系列生成部104は、これらの状態と状態遷移パターンとを比較することにより、8番目の状態遷移パターンが抽出した状態に合致していると判断する。そこで、部分時系列生成部104は、部分状態時系列として、「棚2 → 店内→ 購入」を取り出す。また、次の状態として「棚2」を設定する。
【0061】
部分状態時系列を抽出した後、部分時系列生成部104は、状態時系列内の未処理の状態が存在するか否かを判断する(ステップS816)。例えば、図11のタグID=r1に対応する状態時系列を処理対象とした場合、この状態時系列の1番目のデータ「04/01 15:00, 店内, r1」が処理された直後では、当該状態時系列に未処理の状態が存在しないと判断される。
【0062】
状態時系列内の未処理の状態が存在する場合は(ステップS816:YES)、次の状態を取得して処理を繰り返す(ステップS813)。
【0063】
未処理の状態が存在しない場合は(ステップS816:NO)、部分時系列生成部104は、さらに未処理のタグIDの状態時系列が存在するか否かを判断する(ステップS817)。未処理のタグIDの状態時系列が存在する場合は(ステップS817:YES)、未処理のタグIDの状態時系列を取得して処理を繰り返す(ステップS812)。
【0064】
未処理のタグIDの状態時系列が存在しない場合は(ステップS817:NO)、結合時系列生成部105が、部分状態時系列を結合する結合時系列生成処理(ステップS818〜ステップS826)を実行する。
【0065】
例えば、図11の状態時系列の場合、タグID=r3に対応する状態時系列が抽出された後であれば、未処理のタグIDの状態時系列が存在しないため、結合時系列生成処理が実行される。
【0066】
なお、図12は、図11のような状態時系列から部分時系列生成部104によって生成された部分状態時系列の一例を示す図である。図12に示すように、部分時系列生成部104は、タグIDを対応づけた部分状態時系列を生成する。
【0067】
結合時系列生成処理では、まず、結合時系列生成部105が、生成された部分状態時系列から未処理の部分状態時系列を取得する(ステップS818)。さらに、結合時系列生成部105は、ステップS818で取得した部分状態時系列と異なる部分状態時系列のうち未処理の部分時系列を取得する(ステップS819)。
【0068】
次に、結合時系列生成部105は、結合ルール記憶部124に格納されている結合ルールを参照することにより、抽出された2つの部分状態時系列が結合可能か否かを判断する(ステップS820)。
【0069】
例えば、図6のような結合ルールが結合ルール記憶部124に格納されているとする。また、図12の1番目の部分状態時系列および2番目の部分状態時系列が取り出されているとする。このとき、この2つの部分状態時系列は同一のタグIDが付与されている。一方、図6の結合ルールは、いずれもタグIDが異種であることを条件としているため、結合時系列生成部105は、部分状態時系列が結合できないと判断する。
【0070】
また、他の例として、図12の1番目の部分状態時系列および6番目の部分状態時系列が取り出されているとする。このとき、この2つの部分状態時系列は対応するタグIDが異なっているものの、最終の状態が当該結合ルールに記載されている「購入」または「試着室」のいずれにも合致していない。このため、結合時系列生成部105は、部分状態時系列が結合できないと判断する。
【0071】
これに対して、図12の5番目の部分状態時系列および10番目の部分状態時系列が取り出されているとする。このとき、この2つの部分状態時系列は対応するタグIDが異なっており、最終の状態が共に「購入」となっている。また、この最終の状態の発生日時の差分は1分(15:00−15:01)となっている。したがって、この2つの部分状態時系列は、図6の1番目の結合ルールの条件と合致するため、結合時系列生成部105は、これらの部分状態時系列が結合できると判断する。
【0072】
さらに、他の例として、図12の9番目の部分状態時系列と、図12には示していないタグID=r4に対応する部分状態時系列である「(04/02 09:00, 棚2) → (04/02 11:10, 店内) → (04/02 11:16,試着室) → (04/02 11:20, 店内) → (04/02 11:25, 棚2)」(以下、部分状態時系列d1という)が抽出されているとする。このとき、この2つの部分状態時系列は対応するタグIDが異なっており、中間に「試着室」状態が存在する。そして、この状態「試着室」から次の状態である「店内」までの時間は、9番目の部分状態時系列では「04/02 11:05〜04/02 11:20」であり、部分状態時系列d1では「04/02 11:15〜04/02 11:20」である。すなわち、両者の日時の範囲には重複する部分が存在する。したがって、この2つの部分状態時系列は、図6の2番目の結合ルールの条件と合致するため、結合時系列生成部105は、これらの部分状態時系列が結合できると判断する。
【0073】
抽出された2つの部分状態時系列が結合できると判断した場合(ステップS820:YES)、結合時系列生成部105は、ステップS819で抽出し、結合ルールが成立した部分状態時系列を、ステップS818で抽出した部分状態時系列に対して結合する部分状態時系列として一時的に保存する(ステップS821)。
【0074】
例えば、図12の5番目の部分状態時系列および10番目の部分状態時系列の場合には、10番目の部分状態時系列が5番目の部分状態時系列に対応する部分状態時系列として格納される。また、図12の9番目の部分状態時系列と部分状態時系列d1の場合には、部分状態時系列d1が9番目の部分状態時系列に対応する部分状態時系列として格納される。
【0075】
抽出された2つの部分状態時系列が結合できないと判断した場合(ステップS820:NO)、結合時系列生成部105は、ステップS818で抽出した部分状態時系列に対して結合ルールが成立しなかった部分状態時系列を一時的に保存する(ステップS822)。
【0076】
例えば、図12の1番目の部分状態時系列がステップS818で取り出されている場合であれば、2番目の部分状態時系列は、1番目の部分状態時系列に対して結合ルールが成立しない部分状態時系列として格納される。また、図12の1番目の部分状態時系列および6番目の部分状態時系列が取り出されている場合には、6番目の部分状態時系列が、1番目の部分状態時系列に対して結合ルールが成立しない部分状態時系列として格納される。
【0077】
次に、結合時系列生成部105は、ステップS818で取得した部分状態時系列と異なる部分状態時系列のうち未処理の部分状態時系列が存在するか否かを判断する(ステップS823)。未処理の部分状態時系列が存在する場合(ステップS823:YES)、次の未処理の部分状態時系列を取得して処理を繰り返す(ステップS819)。
【0078】
未処理の部分状態時系列が存在しない場合(ステップS823:NO)、結合時系列生成部105は、ステップS818で取り出した部分状態時系列に対して、結合ルールが成立しているとして格納されている部分状態時系列を結合する(ステップS824)。このとき、結合する部分状態時系列が存在しない場合には、結合時系列生成部105は、ステップS818で取り出した部分状態時系列単独で構成される状態結合時系列を出力する。
【0079】
例えば、図12の部分状態時系列が、処理対象とする部分状態時系列のすべてとして与えられており、1番目の部分状態時系列が結合対象となっているとする。この場合、1番目の部分状態時系列に対しては、図6結合ルールと合致する他の部分状態時系列は存在しないため、結合時系列生成部105は、1番目の部分状態時系列単独で状態結合時系列を構成する。
【0080】
具体的には、結合時系列生成部105は、部分状態時系列の中から日時に関する情報を削除し、各状態にタグIDを付与した図13の1番目に示すような状態結合時系列を生成する。図13は、このようにして結合時系列生成部105によって生成される状態結合時系列の一例を示している。
【0081】
これに対して、図12の部分状態時系列が、処理対象とする部分状態時系列のすべてとして与えられており、5番目の部分状態時系列が結合対象となっているとする。この場合、上述のように、図12の10番目の部分状態時系列が結合対象となる。結合時系列生成部105は、まず、結合することが判定された最終位置の状態を結合する。次に、結合時系列生成部105は、各部分状態時系列の最終位置の状態の前の状態を比較する。この例では、前の状態が「店内」で一致しているため、結合時系列生成部105は、この状態をさらに結合する。続いて、結合時系列生成部105は、「店内」の前の状態をさらに比較する。この場合は「試着室」および「棚2」で一致しないため、結合時系列生成部105は、結合しない状態を並べる順序を決定するため、各状態に付随する日時を比較する。この例では、「試着室」に対応づけられた日時「04/03 14:35」が、「棚2」に対応づけられた日時「04/02 11:25」の後に発生しているので、「棚2」の状態を「試着室」の状態の前に挿入する。
【0082】
10番目の部分状態時系列に関しては、「棚2」の状態が最初の状態となる。したがって、結合時系列生成部105は、最終的に各状態に対応する日時情報を削除し、対応するタグIDを状態に付与した図13の5番目に示したような状態結合時系列を生成する。
【0083】
状態結合時系列の他の例として、図12の9番目の部分状態時系列と部分状態時系列d1とを結合する場合を説明する。この2つの部分状態時系列では、中間に位置する「試着室」で図6の2番目の結合ルールが成立している。このため、結合時系列生成部105は、最初に状態「試着室」を結合する。次に、結合時系列生成部105は、この状態を基準として、その前の状態を結合する。この例では、前の状態は「店内」で一致しているため、結合時系列生成部105は、状態「店内」を結合する。さらに、その前の状態「棚2」も一致するため、結合時系列生成部105は、この状態も結合する。同様に、基準とした状態「試着室」の後の状態を順次結合する。例えば、状態「試着室」の後の状態は、順に「店内」および「棚2」で一致しているため、結合時系列生成部105は、これらの状態を結合する。これにより、結合時系列生成部105は、最終的に、「(r2:棚2, r4:棚2) → (r2:店内, r4:店内) → (r2:試着室, r4:試着室) → (r2:店内, r4:店内) → (r2:棚2, r4:棚2)」という状態結合時系列を生成する。
【0084】
ステップS824で状態結合時系列を生成した後、結合時系列生成部105は、結合できない部分状態時系列として保存した部分状態時系列を、次の処理対象とする部分状態時系列の集合として設定する(ステップS825)。
【0085】
例えば、図6のような結合ルールおよび図12のようなが部分状態時系列が与えられており、図12の1番目の部分状態時系列が、ステップS818で抽出された部分状態時系列として与えられているとする。この場合、1番目の部分状態時系列では、図6の結合ルールに合致する他の部分状態時系列が存在しないため、1番目の部分状態時系列を除いたすべての部分状態時系列が、部分状態時系列の集合として設定される。
【0086】
次に、結合時系列生成部105は、処理対象とする部分状態時系列の集合が存在するか否かを判断する(ステップS826)。処理対象とする部分状態時系列の集合が存在する場合は(ステップS826:YES)、この部分状態時系列の集合から新たに部分状態時系列を取得して処理を繰り返す(ステップS818)。
【0087】
処理対象とする部分状態時系列の集合が存在しない場合(ステップS826:NO)、属性値時系列生成部106が、生成された状態結合時系列から属性値時系列を生成する属性値時系列生成処理(ステップS827〜ステップS831)を実行する。
【0088】
例えば、図12の最後の部分状態時系列を処理した後であれば、処理対象とする部分状態時系列が存在しないため、属性値時系列生成処理が実行される。
【0089】
なお、図13は、図12のような部分状態時系列から結合時系列生成部105によって生成された状態結合時系列の一例を示している。
【0090】
属性値時系列生成処理では、まず、属性値時系列生成部106が、生成された状態結合時系列から未処理の状態結合時系列を取得する(ステップS827)。次に、属性値時系列生成部106が、取得した状態結合時系列から未処理のタグIDを取得する(ステップS828)。
【0091】
次に、属性値時系列生成部106は、取得したタグIDに対応する属性値を属性値記憶部125から取得し、状態結合時系列から取り出したタグIDを取得した属性値に変換することにより、属性値時系列を生成する(ステップS829)。
【0092】
例えば、図7に示すような属性値が属性値記憶部125に格納されているとする。また、図13の1番目の状態結合時系列から、タグID=r1が取り出されているとする。このとき、タグIDのすべての属性値を連結した属性値によってタグIDを変換する場合、属性値時系列生成部106は、タグID=r1を「スカート1/黒」のように変換する。同様に、図13の6番目の状態結合時系列からタグID=r2が取り出されている場合、属性値時系列生成部106は、タグID=r2を「ジャケット1/黒」に変換する。
【0093】
次に、属性値時系列生成部106は、未処理のタグIDが存在するか否かを判断する(ステップS830)。例えば、図13の1番目の状態結合時系列が取り出されているとする。この状態結合時系列からタグID=r1を取得して処理した後であれば、他のタグIDは存在しないため、属性値時系列生成部106は、未処理のタグIDが存在しないと判断する。
【0094】
未処理のタグIDが存在する場合(ステップS830:YES)、属性値時系列生成部106は、次の未処理のタグIDを取得して処理を繰り返す(ステップS828)。未処理のタグIDが存在しない場合(ステップS830:NO)、属性値時系列生成部106は、さらに、未処理の状態結合時系列が存在するか否かを判断する(ステップS831)。
【0095】
未処理の状態結合時系列が存在する場合(ステップS831:YES)、属性値時系列生成部106は、次の未処理の状態結合時系列を取得して処理を繰り返す(ステップS827)。未処理の状態結合時系列が存在しない場合(ステップS831:NO)、出力部107が、生成された属性値時系列を記憶部等に出力し(ステップS832)、データ生成処理を終了する。
【0096】
なお、図14は、図13のような状態結合時系列から属性値時系列生成部106によって生成された属性値時系列の一例を示す図である。
【0097】
このように、第1の実施の形態にかかるデータ生成装置では、収集されたタグIDデータから、時系列パターンの分析に利用可能な属性値時系列を生成することができる。また、第1の実施の形態にかかるデータ生成装置では、結合ルールを用いることにより複数のRFIDタグに関する複数の部分状態時系列を結合することができる。これにより、特定の商品に対応する複数の要因間の関係を分析することができる。
【0098】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態のデータ生成装置によって生成された属性値時系列に対しては、時系列データの中から特徴的な時系列パターンを発見する時系列データの分析法を適用することが可能となる。そこで、第2の実施の形態では、属性値時系列を分析する機能を備えたデータ生成装置の例について説明する。
【0099】
図15は、第2の実施の形態にかかるデータ生成装置1500の構成を示すブロック図である。図15に示すように、データ生成装置1500は、第1の実施の形態のデータ生成装置100に、時系列パターン抽出部1508と、時系列パターン記憶部1526とを追加した構成となっている。その他の構成および機能は、第1の実施の形態にかかるデータ生成装置100の構成を表すブロック図である図2と同様であるので、同一符号を付し、ここでの説明は省略する。
【0100】
時系列パターン抽出部1508は、属性値および状態のセットからなるデータを一つのアイテムとみなすことにより、属性値時系列を一つの時系列データとみなし、この時系列データから特徴的なアイテム集合の系列である時系列パターンを抽出する。
【0101】
例えば、時系列パターン抽出部1508は、「スカート1/黒:倉庫」、を一つのアイテムとみなすことにより、図14の1番目の属性値時系列を時系列データとみなすことができる。
【0102】
時系列パターン抽出部1508は、例えば、「櫻井茂明、北原洋一、折原良平:特徴的な時系列パターンを発見するための新指標の提案、日本データベース学会Letters, 5, 1, 8, 153-157(2006).」(以下、参考文献という)に記載の方法に従い、以下の(1)式によって定義される時系列パターンの評価値である系列興味度の値が指定した閾値以上となるすべての時系列パターンを抽出する。
【数1】

【0103】
ただし、sを時系列パターン、sを時系列パターンsの部分時系列パターン、f(s)を時系列パターンを含む時系列データの個数を計算する関数、Nを時系列データの個数、α(≧0)は系列興味度パラメータとする。
【0104】
なお、時系列パターン抽出部1508が、参考文献の方法以外の方法で属性値時系列を分析するように構成してもよい。
【0105】
時系列パターン記憶部1526は、時系列パターン抽出部1508によって抽出された、系列興味度の値が閾値以上となる時系列パターンを記憶する。時系列パターン記憶部1526は、HDD、光ディスク、メモリカード、RAMなどの一般的に利用されているあらゆる記憶媒体により構成することができる。
【0106】
このように、第2の実施の形態にかかるデータ生成装置では、時系列パターン抽出部1508と時系列パターン記憶部1526を備えることにより複数のアイテム間の時系列的な関係性を分析することが可能となる。
【0107】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、属性値時系列生成部106は、属性値記憶部125に格納されているすべての属性値を連結することにより、タグIDの変換を行っているが、属性値の一部のみを連結してタグIDを変換するように構成してもよい。
【0108】
また、上記説明では、属性値記憶部125に格納されている属性値は離散値に限定されていたが、数値を属性値としてもよい。
【0109】
また、結合ルール記憶部124に格納されている結合ルールとして、例えば、レジで同一のレシート内に記載されたタグIDを結合するルールなどのように、日時以外の情報を利用した結合ルールを利用するように構成してもよい。この場合、例えば、同一のレシートに記載されたタグIDであることを示すデータを別途入力し、結合ルールの適用時に参照するように構成する。
【0110】
また、時系列パターン抽出部1508が、属性値の一部の値のみを含む属性値時系列のみを取り出した後で、取り出した属性値時系列を参考文献の方法の入力とするように構成してもよい。
【0111】
次に、第1または第2の実施の形態にかかるデータ生成装置のハードウェア構成について図16を用いて説明する。図16は、第1または第2の実施の形態にかかるデータ生成装置のハードウェア構成を示す説明図である。
【0112】
第1または第2の実施の形態にかかるデータ生成装置は、CPU(Central Processing Unit)51などの制御装置と、ROM(Read Only Memory)52やRAM53などの記憶装置と、ネットワークに接続して通信を行う通信I/F54と、HDD(Hard Disk Drive)、CD(Compact Disc)ドライブ装置などの外部記憶装置と、ディスプレイ装置などの表示装置と、キーボードやマウスなどの入力装置と、各部を接続するバス61を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0113】
第1または第2の実施の形態にかかるデータ生成装置で実行されるデータ生成プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD−R(Compact Disk Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0114】
また、第1または第2の実施の形態にかかるデータ生成装置で実行されるデータ生成プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、第1または第2の実施の形態にかかるデータ生成装置で実行されるデータ生成プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0115】
また、第1または第2の実施の形態のデータ生成プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0116】
第1または第2の実施の形態にかかるデータ生成装置で実行されるデータ生成プログラムは、上述した各部(入力部、イベント時系列生成部、状態時系列生成部、部分時系列生成部、結合時系列生成部、属性値時系列生成部、出力部)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU51(プロセッサ)が上記記憶媒体からデータ生成プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、上述した各部が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0117】
以上のように、本発明にかかる装置および方法は、RFIDタグが付与された商品などの移動経過を表す時系列データを入力して分析に用いるデータを生成する装置および方法に適している。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】データ収集環境の一例を示す図である。
【図2】第1の実施の形態にかかるデータ生成装置の構成を示すブロック図である。
【図3】タグIDデータ記憶部に記憶されたタグIDデータのデータ構造の一例を示す図である。
【図4】状態ルール記憶部に記憶された状態ルールのデータ構造の一例を示す図である。
【図5】分割ルール記憶部に記憶された分割ルールのデータ構造の一例を示す図である。
【図6】結合ルール記憶部に記憶された結合ルールのデータ構造の一例を示す図である。
【図7】属性値記憶部に記憶されたデータのデータ構造の一例を示す図である。
【図8】第1の実施の形態におけるデータ生成処理の全体の流れを示すフローチャートである。
【図9】第1の実施の形態におけるデータ生成処理の全体の流れを示すフローチャートである。
【図10】生成されたイベント時系列の一例を示す図である。
【図11】生成された状態時系列の一例を示す図である。
【図12】生成された部分状態時系列の一例を示す図である。
【図13】生成された状態結合時系列の一例を示す図である。
【図14】生成された属性値時系列の一例を示す図である。
【図15】第2の実施の形態にかかるデータ生成装置の構成を示すブロック図である。
【図16】第1または第2の実施の形態にかかるデータ生成装置のハードウェア構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0119】
10 倉庫
20 店内
31〜37 ゲート
51 CPU
52 ROM
53 RAM
54 通信I/F
61 バス
100 データ生成装置
101 入力部
102 イベント時系列生成部
103 状態時系列生成部
104 部分時系列生成部
105 結合時系列生成部
106 属性値時系列生成部
107 出力部
121 タグIDデータ記憶部
122 状態ルール記憶部
123 分割ルール記憶部
124 結合ルール記憶部
125 属性値記憶部
1500 データ生成装置
1508 時系列パターン抽出部
1526 時系列パターン記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を識別する識別情報と、前記対象物の属性を表す属性情報とを対応づけて記憶する属性記憶部と、
前記識別情報と、前記識別情報の前記対象物に対して発生したイベントと、前記イベントの発生日時とを対応づけた複数の入力データを入力する入力部と、
前記入力データに含まれる前記識別情報ごとに、前記発生日時順に前記イベントを並べた時系列であって、前記識別情報を対応づけたイベント時系列を生成するイベント時系列生成部と、
前記イベント時系列に含まれる前記イベントの発生に伴う前記対象物の状態の遷移を表す時系列であって、前記イベント時系列に対応する前記識別情報を対応づけた状態時系列を生成する状態時系列生成部と、
複数の前記状態を予め定められた順序で並べた状態遷移パターンと一致する複数の前記状態を含む時系列を前記状態時系列から抽出し、抽出した時系列に前記状態時系列に対応する前記識別情報を対応づけた部分状態時系列を生成する部分時系列生成部と、
前記部分状態時系列ごとに、前記部分状態時系列に対応づけられた前記識別情報に対応する前記属性情報を前記属性記憶部から取得し、前記部分状態時系列に含まれる前記状態それぞれに対して、取得した前記属性情報を対応づけた属性時系列を生成する属性時系列生成部と、
を備えたことを特徴とするデータ生成装置。
【請求項2】
前記部分時系列生成部は、予め定められた要因に応じた前記対象物の前記状態の遷移のパターンを定めた前記状態遷移パターンと一致する複数の前記状態を含む時系列を前記状態時系列から抽出し、抽出した時系列に前記状態時系列に対応する前記識別情報を対応づけた前記部分状態時系列を生成すること、
を特徴とする請求項1に記載のデータ生成装置。
【請求項3】
前記部分時系列生成部は、前記状態遷移パターンと一致する複数の前記状態を含む時系列を前記状態時系列から抽出し、抽出した時系列に含まれる前記状態ごとに前記状態時系列に対応する前記識別情報を対応づけた前記部分状態時系列を生成し、
複数の前記部分状態時系列それぞれに含まれる複数の前記状態に関する予め定められた条件を満たす複数の前記部分状態時系列を結合した状態結合時系列を生成する結合時系列生成部をさらに備え、
前記属性時系列生成部は、前記状態結合時系列に含まれる前記状態ごとに、前記状態に対応づけられた前記識別情報に対応する前記属性情報を前記属性記憶部から取得し、前記状態に対して取得した前記属性情報を対応づけた前記属性時系列を生成すること、
を特徴とする請求項1に記載のデータ生成装置。
【請求項4】
前記結合時系列生成部は、前記部分状態時系列に含まれる状態が一致し、かつ、一致する状態に遷移させた前記イベントの前記発生日時が、時間に関する予め定められた時間条件を満たす複数の前記部分状態時系列を結合した前記状態結合時系列を生成すること、
を特徴とする請求項3に記載のデータ生成装置。
【請求項5】
前記結合時系列生成部は、前記部分状態時系列に含まれる状態が一致し、かつ、一致する状態に遷移させた前記イベントの前記発生日時の差分が予め定められた範囲内である複数の前記部分状態時系列を結合した前記状態結合時系列を生成すること、
を特徴とする請求項4に記載のデータ生成装置。
【請求項6】
前記結合時系列生成部は、前記部分状態時系列に含まれる状態が一致し、かつ、一致する状態に遷移させた前記イベントの前記発生日時から、一致する状態の次の状態に遷移させた前記イベントの前記発生日時までの時間が重複する複数の前記部分状態時系列を結合した前記状態結合時系列を生成すること、
を特徴とする請求項4に記載のデータ生成装置。
【請求項7】
前記結合時系列生成部は、前記部分状態時系列に含まれる状態が一致し、かつ、一致する状態の前記部分状態時系列内での位置が一致し、かつ、一致する状態に遷移させた前記イベントの前記発生日時が前記時間条件を満たす複数の前記部分状態時系列を結合した前記状態結合時系列を生成すること、
を特徴とする請求項4に記載のデータ生成装置。
【請求項8】
前記属性時系列から、前記属性時系列の特徴を表す時系列パターンを抽出する時系列パターン抽出部をさらに備えたこと、
を特徴とする請求項1に記載のデータ生成装置。
【請求項9】
前記属性記憶部は、前記対象物それぞれに付与されたRFID(Radio Frequency Identification)タグを識別するタグIDである前記識別情報と、前記属性情報とを対応づけて記憶し、
前記入力部は、前記タグIDと、前記RFIDタグの通過を検知可能な複数の検知装置のいずれかによって、前記タグIDの前記RFIDタグの通過が検知されたことを表す前記イベントと、検知された日時を表す前記発生日時とを対応づけた複数の前記入力データを入力し、
前記イベント時系列生成部は、前記入力データに含まれる前記タグIDごとに、前記発生日時順に前記イベントを並べた時系列であって、前記タグIDを対応づけた前記イベント時系列を生成し、
前記状態時系列生成部は、前記イベント時系列に含まれる前記イベントの発生に伴う前記対象物の状態の遷移を表す時系列であって、前記イベント時系列に対応する前記タグIDを対応づけた前記状態時系列を生成し、
前期部分時系列生成部は、前記状態遷移パターンと一致する複数の前記状態を含む時系列を前記状態時系列から抽出し、抽出した時系列に前記状態時系列に対応する前記タグIDを対応づけた前記部分状態時系列を生成し、
前記属性時系列生成部は、前記部分状態時系列ごとに、前記部分状態時系列に対応づけられた前記タグIDに対応する前記属性情報を前記属性記憶部から取得し、前記部分状態時系列に含まれる前記状態それぞれに対して、取得した前記属性情報を対応づけた前記属性時系列を生成すること、
を特徴とする請求項1に記載のデータ生成装置。
【請求項10】
入力部が、対象物を識別する識別情報と、前記識別情報の前記対象物に対して発生したイベントと、前記イベントの発生日時とを対応づけた複数の入力データを入力する入力ステップと、
イベント時系列生成部が、前記入力データに含まれる前記識別情報ごとに、前記発生日時順に前記イベントを並べた時系列であって、前記識別情報を対応づけたイベント時系列を生成するイベント時系列生成ステップと、
状態時系列生成部が、前記イベント時系列に含まれる前記イベントの発生に伴う前記対象物の状態の遷移を表す時系列であって、前記イベント時系列に対応する前記識別情報を対応づけた状態時系列を生成する状態時系列生成ステップと、
部分時系列生成部が、複数の前記状態を予め定められた順序で並べた状態遷移パターンと一致する複数の前記状態を含む時系列を前記状態時系列から抽出し、抽出した時系列に前記状態時系列に対応する前記識別情報を対応づけた部分状態時系列を生成する部分時系列生成ステップと、
属性時系列生成部が、前記部分状態時系列ごとに、前記識別情報と前記対象物の属性を表す属性情報とを対応づけて記憶する属性記憶部から前記部分状態時系列に対応づけられた前記識別情報に対応する前記属性情報を取得し、前記部分状態時系列に含まれる前記状態それぞれに対して、取得した前記属性情報を対応づけた属性時系列を生成する属性時系列生成ステップと、
を備えたことを特徴とするデータ生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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