説明

時計用文字板

【課題】 形状輪郭がはっきりして厚味感が現れた指標を有する時計用文字板を提供する。
【解決手段】 透過性基板1の上面に第1の金属薄膜3と下面に第2の金属薄膜5を設け、第1の金属薄膜3の一部分に指標形状に剥離した部分3aを設けて、指標形状に剥離した部分3aの領域Aでもって指標7を構成する。指標7は第1の金属薄膜3の剥離した部分3aと露出表面1aを持った透過性基板1と第2の金属薄膜5とで構成し、露出表面1aを持った透過性基板1と第2の金属薄膜5との積層構造にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用文字板に関し、特に、文字板の指標に特徴を持たせた時計用文字板に関する。
【背景技術】
【0002】
ソーラセル付時計用の文字板は、一般に、ソーラセル(太陽電池)を文字板の下面に配設する構造を取ることから、文字板をプラスチック、ガラス、セラミック等で形成して、文字板に光の透過性を持たせている。また、ソーラセルは濃紫色を呈することから外観的に良い感情を与えない。このため、ソーラセルの呈する濃紫色を見えなくするために文字板に色々な工夫を施すことが行われている。その工夫を施した文字板の1つとして、従来技術に下記の特許文献1に開示された技術の文字板を見ることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−240871号公報
【0004】
図8、図9、図10は上記特許文献1に示されてところの時計用文字板の要部断面図を示している。図8において、141はガラス板で、文字板基板にガラス板を用いたものである。122は金属蒸着膜で、模様や時字、マークを示している。115はガラス板141に設けた段差部で、段差Hを設けている。そして、126が段差部の上段面、117が段差部の下段面を指している。この時計用文字板はガラス板141の上面に金属蒸着膜122を設け、部分的に金属蒸着膜122をエッチングにより剥離し、更に、剥離した部分のガラス板141をエッチングにより削り取って10μm(H)の段差部115を作っている。この段差部115を作ることによって金属蒸着膜122で形取られた模様や時字、マークの高さを高くして立体感を出現させたものである。また、段差部115の下段面117は鏡面になっており、この鏡面なる下段面117から光が入射してソーラセルに発電作用を起こさせる構成になっている。また、段差部115の上段面126も鏡面になっており、金属蒸着膜122も鏡面光沢を有している。
【0005】
また、図9に示された文字板は、ガラス板131の上面に金属蒸着膜122を設け、部分的に金属蒸着膜122をエッチングにより剥離し、更に、剥離した部分のガラス板131をエッチングにより削り取って10μm(H)の段差部115を作っている。この段差部115を作ることによって金属蒸着膜122で形取られた模様や時字、マークの高さを高くして立体感を出現させたものである。また、段差部115の下段面127は粗面化した梨地面仕上げになっており、この梨地面なる下段面127から光が入射してソーラセルに発電作用を起こさせると共に、ソーラセルからの反射光を散乱させて濃紫色を目立たないようにした構成になっている。尚、段差部115の上段面126は鏡面になっており、金属蒸着膜122は鏡面光沢を有している。
【0006】
次に、図10に示された文字板は、ガラス板111の上面を梨地エッチング加工を施して梨地面に仕上げ、その上に金属蒸着膜112を設け、そして、部分的に金属蒸着膜112をエッチングにより剥離し、更に、剥離した部分のガラス板111をエッチングにより削り取って段差部115を作っている。また、金属蒸着膜112の上に透明または半透明の塗膜113を設けている。段差部115を作り、更に、金属蒸着膜112の上に透明または半透明の塗膜113を設けることによって金属蒸着膜112と塗膜113で形取られた模様や時字、マークの高さを更に高くして立体感を出現させている。また、金属蒸着膜112と塗膜113で形取られた模様や時字、マークはガラス111の上段面116を梨地面としたことで無光沢の表示面を出現させている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記、図8、図9に示された文字板の模様や指標、マークは、ガラス板上に設けられた金属蒸着膜を部分的にエッチングによって剥離し、更に、その剥離した部分のガラス板の面をエッチングで彫り込んで段差部を設け、段差部の高さと金属蒸着膜との厚みでもって立体感を出現させている。また、図10に示された文字板の模様や指標、マークは、段差部の高さと金属蒸着膜、塗膜との厚みでもって立体感を出現させている。いずれも、少なくとも金属蒸着膜のエッチングによる剥離と、ガラス板のエッチングによる彫り込み施している。
【0008】
ところで、ガラス板のエッチングは10μmの深さに施している。10μmの深さにまでエッチングを施すと、深さ方向のみならず両側の側面方向のエッチングも施されて模様や指標、マークの形状が崩れ、形状が精度良く出ないと云う問題が起きる。
【0009】
また、2回に渡るエッチングを施すことから製造コストのアップもきたす。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、時字やマークなどの指標の形状を精度良く形成すると共に、指標に厚味感を出現させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための手段として、本発明の請求項1に記載の時計用文字板は、透過性基板の上面に形成した第1の金属薄膜を指標形状に剥離した部分と、該剥離した部分の下方にあって透過性基板の下面に形成した第2の金属薄膜とで構成した指標部を有することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項2に記載の時計用文字板は、透過性基板の上面に積層した下層の透過性金属薄膜と上層の第1の金属薄膜とのうち、前記上層の第1の金属薄膜を指標形状に剥離した部分と、該剥離した部分の下方にあって透過性基板の下面に形成した第2の金属薄膜とで構成した指標部を有することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の請求項3に記載の時計用文字板は、透過性基板の上面に形成した金属薄膜を指標形状に剥離した部分で構成した指標部を有することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項4に記載の時計用文字板は、透過性基板の上面に積層した下層の透過性金属薄膜と上層の金属薄膜とのうち、前記上層の金属薄膜を指標形状に剥離した部分で構成した指標部を有することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の請求項5に記載の時計用文字板は、前記の透過性金属薄膜がハーフミラー仕上げになっていることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の請求項6に記載の時計用文字板は、前記の第2の金属薄膜がハーフミラー仕上げになっていることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の請求項7に記載の時計用文字板は、前記の指標形状に剥離した部分を透過性基板の凸部面に設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、本発明の請求項1に記載の時計用文字板は、指標部は、透過性基板上面の第1の金属薄膜が剥離されたことによって露出した透過性基板とその下面に形成した第2の金属薄膜との積層構造を取ることから、指標部は透過性基板が見え、且つ、第2の金属薄膜が見える。透過性基板は0.3〜0.5mmの厚味を持っていることから指標に厚味を感じさせる。そして、第2の金属薄膜からの反射光によって指標が浮き上がったように見えてくる。また、影なども現れて厚味を顕著に感じさせる。第1の金属薄膜は真空蒸着方法などで形成した数10Å〜数1000Åの非常に薄い金属膜である。また、この第1の金属薄膜の剥離はフォトマスク、フォトレジスト方法で紫外線の平行光線を照射して行う。第1の金属薄膜が非常に薄いことにより剥離形状は精度良く指標形状に仕上がる。このことにより、精度の良い指標形状が得られる。
【0019】
また、本発明の請求項2に記載の時計用文字板は、指標部は、第1の金属薄膜が剥離されたことによって露出した透過性金属薄膜と透過性基板と第2の金属薄膜との積層構造を取る。透過性金属薄膜と透過性基板の作用により透過性基板の厚みが視認されるようになり、指標に厚味を感じさせると共に透過性金属薄膜による薄っすらと金属色の色づいた指標が得られる。また、第2の金属薄膜からの反射光によって指標が浮き上がったように見えてくる。また、精度の良い指標形状が得られる。また、第1の金属薄膜の材質を変えることにより各種の金属色の色合いで装飾された文字板を得ることができる。
【0020】
また、本発明の請求項3に記載の時計用文字板は、指標部は、金属薄膜が剥離されたことによって露出した透過性基板で成り立つ。透過性基板の厚みが視認されるようになり、指標に厚味を感じさせる。
【0021】
また、本発明の請求項4に記載の時計用文字板は、指標部は、上層の金属薄膜が剥離されたことによって露出した下層の透過性金属薄膜と透過性基板との積層構造を取る。透過性金属薄膜と透過性基板の作用により透過性基板の厚みが視認されるようになり、指標に厚味を感じさせると共に透過性金属薄膜による薄っすらと金属色の色づいた指標が得られる。また、上層の金属薄膜の材質を変えることにより各種の金属色の色合いで装飾された文字板を得ることができる。
【0022】
また、本発明の請求項2及び請求項4の時計用文字板において、下層の透過性金属薄膜をハーフミラー仕上げにすることによって、指標に光沢性が現れて指標が目立って視認できると共に金属感が現れてくる。
【0023】
また、本発明の請求項1及び請求項2の時計用文字板において、第2の金属薄膜をハーフミラー仕上げにすることによって、指標の浮き上がりさが顕著に視認されるようになる。また、光も透過することからソーラセルへの影響も発生しない。
【0024】
また、本発明の時計用文字板は、指標部は透過性基板に設けた凸部面に設ける。指標が凸部の出っ張った分だけ更に厚く形成されることから、更なる厚味のある指標が得られる。また、文字板の表面側に指標が突出することから指標に立体感が表れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。本発明の時計用文字板は、透過性基板と、この透過性基板上面に形成した第1の金属薄膜と、透過性基板の下面に形成した第2の金属薄膜とで構成する。透過性基板は、透明なポリカーボネイトなどのプラスチック材や透明なガラスなどを用いるが、僅かに色付いた透過率の高いものでも使用できる。また、上面側に各種の模様などを施したものでも良い。この透過性基板は0.3〜0.5mmの範囲の厚みのものを使用する。第1の金属薄膜は、Al、Ag、Cr、Auなどの金属材料でもって真空蒸着方法、スパッタリング方法などで形成した数10Å〜数1000Å厚みのものである。ソーラセル用の文字板に仕上げる場合は透過性を持たせるために数10μmと非常に薄く形成する。第2の金属薄膜は、第1の金属薄膜と同様に、Al、Ag、Cr、Auなどの金属材料でもって真空蒸着方法、スパッタリング方法などで形成した数10Å〜数1000Å厚みのものである。ソーラセル用の文字板に仕上げる場合は透過性を持たせるために数10Åと非常に薄く形成する。
【0026】
時字やマークなどの指標部は、第1の金属薄膜を指標形状に剥離した部分で指標部を構成する。第1の金属薄膜を指標形状に剥離すると、指標形状をなして透過性基板が露出する。この露出した透過性基板とその下面に設けられている第2の金属薄膜との積層した構造でもって指標を構成する。このようにすると、透過性基板の露出形状が指標形状をなして指標がはっきりと視認される。また、その露出した部分から透過性基板と第2の金属薄膜とが見えることから、指標に透過性基板の厚みが加わって厚味を帯びて視認され、且つ、第2の金属薄膜からの反射光によって指標が浮き上がったように視認される。
【0027】
第1の金属薄膜を指標形状に剥離する方法は、フォトマスク、フォトレジスト方法で行う。その際の紫外線照射は平行光線を照射して行う。このことにより、指標形状でのレジスト膜の剥離は精度の良い指標形状での剥離ができる。そして更に、エッチング液での第1の金属薄膜の剥離は、金属薄膜が非常に薄いことによって精度の高い指標形状での剥離ができる。これにより、指標形状が崩れることなく形状精度の良い指標の形状が得られる。
【0028】
以上のことによって、形状精度の良い指標で、且つ、厚味を帯びて文字板から浮き上がった感じを与える指標を持った時計用文字板が得られる。以下、実施例をもって更なる詳細を説明する。
【実施例1】
【0029】
以下、本発明の指標を有する時計用文字板の実施例を図1〜図7を用いて説明する。ここで、先に図の説明をする。図1は本発明の実施例1における時計用文字板の要部断面図を示している。また、図2は図1における時計用文字板の指標を目で見た状態を説明する説明図、図3は図1における時計用文字板の指標を形成する工程の一部を示す工程図である。また、図4は本発明の実施例2における時計用文字板の要部断面図、図5は本発明の実施例3における時計用文字板の要部断面図、図6は本発明の実施例4における時計用文字板の要部断面図、図7は本発明の実施例5における時計用文字板の要部断面図を示している。尚以降、時計用文字板を文字板と称して説明する。
【実施例2】
【0030】
実施例1における文字板は、図1に示すように、透過性基板1の上面に第1の金属薄膜3と透過性基板1の下面に第2の金属薄膜5を形成している。そして、一部分に第1の金属薄膜3を剥離した部分3aを設けていて、この剥離した部分3aの領域(図1の中で一点鎖線で示したAの領域)を時字やマークなどの指標の指標部Aとしている。そして、指標部Aでもって指標7を形取っている。従って、指標部Aは、即ち、指標7は第1の金属薄膜3の剥離部分3aと透過性基板1と第2の金属薄膜5とから構成されていて、露出表面1aのある透過性基板1と第2の金属薄膜5の積層構造を取っている。
【0031】
ここで、透過性基板1は透明なプラスチック材やガラス材などを用いることができるが、本実施例1においては、透明なポリカーボネイト樹脂を用いて0.3mm〜0.5mmの範囲の厚みに形成している。尚、透過性基板1は必ずしも透明でなくとも良く、色付けされたものでも透過率が高いものであれば良い。透過性基板1の上面に設ける第1の金属薄膜3はAl、Ni、Cr、Ag、Auなどの金属の薄膜で、数10Å〜数1000Åの厚みに形成する。この厚みは文字板の仕様によって変えるようにする。例えば、ソーラセル用の文字板とするならば40Å〜80Åの範囲に形成する。40Å〜80Åの厚みでは70〜50%の透過率が得られる。透過率を必要としない場合は300Å〜400Å以上の厚みに形成すれば良い。この第1の金属薄膜3は真空蒸着法、スパッタリング法などの公知の方法で形成する。本実施例1においては、Au金属での500Å厚みの蒸着膜を形成している。次に、この第1の金属薄膜3は、所定の位置で部分的に時字やマークなどの指標の形状に剥離して、剥離した部分3aを設ける。
【0032】
この剥離の方法は図3を用いて説明する。最初に、図3(a)において、透過性基板1の上面に形成した第1の金属薄膜3の上面にレジスト膜8を5〜10μmの厚みで形成する。そして、時字やマークなどの指標の形状を形成した露光フィルム9を載置して紫外線照射を行う。紫外線照射は平行光線の下で行う。平行光線を使用すると露光フィルムに形成した指標形状の寸法通りに露光ができることから、後述説明するレジスト膜の溶解剥離形状も指標形状通りの形状が得られる。この紫外線照射によって、光が当たった部分のレジスト膜8は硬化し、光が当たらなかった指標の形状部分はレジスト膜8が乳剤の柔らかい状態のままで残る。次に、図3(b)において、柔らかい状態のレジスト膜8を溶剤で溶かして除去し、レジスト膜8の剥離部分8aを作る。この剥離部分8aの形状は指標の形状で形成されるが、レジスト膜8が薄いことにより精度の良い指標形状が得られる。次に、図3(c)において、レジスト膜8の剥離部分8aの所の第1の金属薄膜3をエッチング液にてエッチングして剥離する。そして、第1の金属薄膜3の剥離した部分3aを得る。この剥離した部分3aの形状は指標の形状で形成されるが、第1の金属薄膜3が非常に薄いことにより、エッチングにより両横側に削り取られることがなく精度の良い指標形状が得られる。次に、図(d)において、第1の金属薄膜3上のレジスト膜8を剥離する。以上の工程を経ることによって透過性基板1の第1の金属薄膜3に指標形状に剥離した部分3aを設けることができる。そして、剥離した部分3aの指標形状は形状崩れなどのない輪郭のはっきりした精度の良い形状が得られる。
【0033】
透過性基板1の下面に設ける第2の金属薄膜5はAl、Ni、Cr、Ag、Auなどの金属の薄膜で、数10Å〜数1000Åの厚みに形成する。この厚みは文字板の仕様によって変えるようにする。例えば、ソーラセル用の文字板とするならば40Å〜80Åの範囲に形成する。40Å〜80Åの厚みでは70〜50%の透過率が得られるので、第1の金属薄膜3と重なり合ってもソーラセルの発電に支障のない透過率を得ることができる。透過率を必要としない場合は300Å〜400Å以上の厚みに形成すれば良い。この第2の金属薄膜3は真空蒸着法、スパッタリング法などの公知の方法で形成する。本実施例1においては、反射率の高いAg金属での500Å厚みの蒸着膜を形成している。
【0034】
第1の金属薄膜3に指標形状の剥離部分3aを設けることによって、指標部A、即ち指標7を構成するところの透過性基板1の露出表面1aが現れる。次に、この露出表面1aを持った透過性基板1の働きを図2を用いて説明する。図2において、傾斜角を持って指標7の露出表面1aに入射した入射光P1(P1は露出表面1aの一方の端U1を透過する光)、P2(P2は露出表面1aの他方の端U2を透過する光)は厚みのある透過性基板1を透過して第2の金属薄膜5のB2、B4の所で反射する。一方、目には露出表面1aを介して露出表面1aの両端U1、U2と第2の金属薄膜5のB1−B3の領域が見える。ここで、露出表面1aの両端U1、U2と金属薄膜5のB1、B3との間に透過性基板1の厚みの分だけ距離差があるのでU1、U2とB1、B3とに遠近差が現れて、厚味を持った指標7として視認される。また、目に見える第2の金属薄膜5のB1−B3の領域の中で、B1〜B2の領域は光が当たらない所なので少し暗っぽくなった影Baが現れる。この影Baが見えることによって更に厚味を確実なものとして感じ取らせる。また、この影Baと第2の金属薄膜5の濃い金属色の作用により指標7が浮き上がっているが如く目に感じ取らせる。
【0035】
以上のような構成を取った指標7を文字板に設けることにより、輪郭がはっきりして形状精度の良い、そして、厚味を感じさせる指標を持った文字板が得られる。また、本実施例1においては、第1の金属薄膜をAu蒸着膜で形成し、第2の金属薄膜をAg蒸着膜で形成した。指標にはAg金属色が現れて第1の金属薄膜とのコントラストも高まり、更に一層目立った指標として視認できるようになる。
【実施例3】
【0036】
次に、本発明の実施例2を図4を用いて説明する。図4に示すように、実施例2の文字板20は、透過性基板11の上面に透過性金属薄膜13と第1の金属薄膜14とが積層して形成され、透過性基板11の下面に第2の金属薄膜15を形成している。そして、上面の一部分に第1の金属薄膜14を指標形状に剥離した部分14aを設けていて、この剥離した部分14aの領域(図4の中で一点鎖線で示したAの領域)を時字やマークなどの指標の指標部Aとしている。そして、指標部Aでもって指標17を形取っている。従って、指標部Aは、即ち、指標17は第1の金属薄膜14の剥離した部分14aと透過性金属薄膜13と透過性基板11と第2の金属薄膜15とから構成されていて、露出表面13aのある透過性金属薄膜13と透過性基板11と第2の金属薄膜15との積層構造を取っている。また、この文字板20は、透過性基板11の一部分に段部11cを持っており、その段部11cの底面に凹凸のある梨地模様11bを設けている。従って、その上に設けた透過性金属薄膜13、及び更にその上に設けた第1の金属薄膜14にも梨地模様が現れている。
【0037】
実施例2における文字板20はソーラセル用の文字板仕様に仕上げてあり、光の透過性を持っている。透過性基板11は、前述の実施例1と同様に、透明なポリカーボネイト樹脂で0.3mm〜0.5mmの厚みに形成している。そして、上面の一部分に段部11cを持ち、その段部11cの底面に凹凸のある梨地模様11bを設けてある。また、梨地模様11bのない上面11aは平滑な光沢面になっている。また、透過性基板11の下面11dも平滑な光沢面になっている。透過性基板11の上面に積層した2層の金属薄膜の内、下層の透過性金属薄膜13は30Å〜40Å厚みの非常に薄いAgの蒸着膜でもって形成している。また、上層に設けた第1の金属薄膜14は30Å〜40Å厚みの非常に薄いAu蒸着膜でもって形成している。下層の透過性金属薄膜13と上層の第1の金属薄膜14とでもって積層した金属膜の厚みは60Å〜80Å位の厚みになっており、50%〜60%の光透過率が得られている。また、上層の30Å〜40Å厚みのAu蒸着膜はほんの僅かな色付き程度であるが下層のAg蒸着膜の影響によりAu金属色がはっきり視認される色付きとなっている。Au蒸着膜で形成した第1の金属薄膜14は、一部分に剥離した部分14aを持っているが、この剥離は、前述の実施例1と同じような工程を経て剥離を行う。透過性基板11の下面に形成した第2の金属薄膜15は40Å〜50Å厚みのAg蒸着膜で形成している。この第2の金属薄膜15は僅かなAg金属色の色付きを持っており、透過性基板11の光沢下面の影響を受けて見る角度によって鏡面に見えるハーフミラーの作用が現れる。そして、全体の透過率としては25%〜35%の透過率を得てソーラセルの発電に支障を及ぼさない透過率になっている。
【0038】
以上の構成を取った指標17は、第1の金属薄膜14を剥離した部分14aの形状でもって指標17の形状を形成するが、第1の金属薄膜14の厚さが非常に薄いことによって、フォトマスク・フォトエッチング法で形成した指標17の形状は輪郭がはっきりと現れて、しかも形状の精度が非常に良いものが得られる。また、透過性基板11の厚みの影響や発生する影の影響を受けて厚味のある指標が視認される。更に、第2の金属薄膜15によって生じるハーフミラー化の作用によって指標17が浮き上がって視認される。
【0039】
また、本実施例2の文字板20には、上述した指標の特徴の他にAu金属色に色付いた文字板の中にAg金属鏡面の現れる指標が視認されて高級感も現れてくる。また、梨地模様での装飾感も現れると共に梨地模様により光散乱が起き、ソーラセルの濃紫色を和らげる効果を発揮する。尚、本実施例2においては、指標17を構成するところの透過性基板11の上面11aは平滑な光沢面に仕上げている。しかし、この上面11aは梨地模様が施された面であっても、また、梨地以外の凹凸が施された面であっても良いものである。指標17を構成する面に凹凸が施されていても指標の形状輪郭ははっきり現れる。
【実施例4】
【0040】
次に、本発明の実施例3に係る文字板を図5を用いて説明する。図5に示す実施例3の文字板30はソーラセル用の文字板仕様に仕上げている。図5に示すように、文字板30は、透過性基板21の上面に透過性金属薄膜23と金属薄膜24とが積層して形成されている。そして、上層に形成した金属薄膜24の一部分に、金属薄膜24を指標形状に剥離した部分24aを設けていて、この剥離した部分24aの領域(図5の中で一点鎖線で示したAの領域)を時字やマークなどの指標の指標部Aとしている。そして、指標部Aでもって指標27を形取っている。従って、指標部Aは、即ち、指標27は金属薄膜24の剥離した部分24aと透過性金属薄膜23と透過性基板21とから構成されていて、露出表面23aを持つ透過性金属薄膜23と透過性基板21との積層構造を取っている。また、この文字板20は、透過性基板21の一部分に段部21cを持っており、その段部21cの底面に凹凸のある梨地模様21bを設けている。従って、その上に設けた透過性金属薄膜23、及び更にその上に設けた金属薄膜24にも梨地模様が現れている。
【0041】
ここで、透過性基板21は、前述の実施例1と同様に、透明なポリカーボネイト樹脂を用いて0.3mm〜0.5mmの厚みに形成している。そして、上面の一部分に段部21cを持ち、その段部21cの底面に凹凸のある梨地模様21bを設けてある。また、梨地模様21bのない上面21aは平滑な光沢面になっている。これら段部21cの形成、梨地模様21bの形成、光沢面の形成は射出成型金型から転写して形成する。透過性基板21の上面に積層した2層の金属薄膜の内、下層の透過性金属薄膜23は40Å〜60Å厚みの非常に薄いAgの蒸着膜でもって形成している。また、上層に設けた金属薄膜24は30Å〜40Å厚みの非常に薄いAu蒸着膜でもって形成している。下層の透過性金属薄膜23と上層の金属薄膜24とでもって積層した金属膜の厚みは70Å〜100Å位の厚みになっており、30%〜50%の光透過率が得られている。また、上層の30Å〜40Å厚みのAu蒸着膜はほんの僅かな色付き程度であるが下層のAg蒸着膜の影響によりAu金属色がはっきり視認される色付きとなっている。Au蒸着膜で形成した金属薄膜24は、一部分に指標形状に剥離した部分24aを持っているが、この剥離は、前述の実施例1で述べたフォトマスク・フォトレジスト方法での工程と同じ工程を経て形成する。
【0042】
上記の構成を取った指標27は、透過性基板21の光沢面上に僅かに厚手に形成した透過性金属薄膜23によって、透過性金属薄膜23がミラー(鏡面)としての作用が現れる。そして、指標27に鏡面光沢が現れて、指標の形状も輪郭がはっきりと現れる。また、形状の精度も非常に良いものが得られる。
【0043】
本実施例3の文字板はソーラセル用の文字板仕様に仕上げたものであるが、文字板30の下面に金属などの反射板を配設することによってソーラセル以外の一般の文字板として使用することができる。文字板30の下面に反射板を配設すると、指標部Aにおいては反射板からの反射光が現れることから指標27に厚味感、立体感などが現れてくる。
【実施例5】
【0044】
次に、本発明の実施例4の文字板を図6を用いて説明する。図6に示すように、文字板40は透過性基板31の上面に金属薄膜33を形成したものから成っている。そして、金属薄膜33の一部分に、金属薄膜33を指標形状に剥離した部分33aを設けていて、この剥離した部分33aの領域(図6の中で一点鎖線で示したAの領域)を時字やマークなどの指標の指標部Aとしている。そして、指標部Aでもって指標37を形取っている。従って、指標部Aは、即ち、指標37は金属薄膜33の剥離部分33aと露出表面31aを持った透過性基板31とから構成されている。
【0045】
透過性基板31は、本実施例4においては、透明なポリカーボネイト樹脂を用いて0.3mm〜0.5mmの範囲の厚みに形成している。また、透過性基板31の上面に設けた金属薄膜33はAl、Ni、Cr、Ag、Auなどの金属の薄膜で、数10Å〜数1000Åの厚みに形成する。この厚みは文字板の仕様によって変えるようにする。例えば、ソーラセル用の文字板とするならば100Å位の厚みに形成しても40%近くの透過率が得られる。そして、ソーラセルの発電機能を十分に満足させることができる。透過率を必要としない場合には300Å〜400Å以上の厚みに形成すれば良い。金属薄膜33を剥離した部分33aの形状は時字やマークなどの指標形状を取るが、この剥離は、前述の実施例1で説明したと同じ方法、即ち、フォトマスク・フォトレジスト方法で行う。輪郭のはっきりした精度の良い指標形状が得られる。
【0046】
以上の構成で形成した指標37は輪郭のはっきりした精度の良い指標形状が得られる。尚、図示はしていないが、金属薄膜33の上面に印刷などの方法で装飾模様を施し、装飾の豊かな文字板に仕上げることができる。また、透過性基板31に梨地模様とか他の模様などを施して装飾付け行い、装飾豊かな文字板にすることもできる。
【0047】
本実施例4の文字板はソーラセル用の文字板仕様に仕上げたものであるが、文字板40の下面に金属などの反射板を配設することによってソーラセル以外の一般の文字板として使用することができる。文字板40の下面に反射板を配設すると、指標部Aにおいては反射板からの反射光が現れることから指標37に厚味感、立体感などが現れてくる。
【実施例6】
【0048】
次に、図7を用いて実施例5の文字板を説明する。図7に示すように、本発明の実施例5の文字板50は、透過性基板41の上面に第1の金属薄膜43と透過性基板41の下面に第2の金属薄膜45を形成している。また、透過性基板41は時字やマークなどの指標形状を持った凸部41fが設けられており、凸部41fの平坦上面に第1の金属薄膜43の剥離した部分43aを設けている。従って、剥離した部分43aの形状は指標形状を取っている。そして、この剥離した部分43aの領域(図7の中で一点鎖線で示したAの領域)を指標部Aとしている。そして、指標部Aでもって指標47を形取っている。即ち、透過性基板41に設けた指標形状の凸部41fを上面側に突出させ、この突出した凸部41f上面の第1の金属薄膜43を剥離して凸部41fの上面を露出させ、その露出した露出表面41aの領域を指標部Aとしている。従って、指標部Aは、即ち、指標47は第1の金属薄膜43の剥離部分43aと凸状になって露出表面41aを持つ透過性基板41と第2の金属薄膜45とから構成されていて、凸状になって露出表面41aのある透過性基板41と第2の金属薄膜45の積層構造を取っている。
【0049】
本実施例5の文字板50はソーラセル用の文字板仕様に仕上げている。透過性基板41は透明なポリカーボネイト樹脂を用いて0.3mm〜0.5mmの範囲の厚みに形成している。また、凸部41fは時字やマークなどの指標形状に形成して0.05〜0.3mmの高さに形成している。また、下面41dは平滑な光沢面に仕上げている。透過性基板41の上面に設ける第1の金属薄膜43はAl、Ni、Cr、Ag、Auなどの金属の蒸着薄膜で、40Å〜50Åの厚みに形成している。第1の金属薄膜43の剥離した部分43aの剥離は、前述の実施例1で説明したと同じ方法、即ち、フォトマスク・フォトレジスト方法で行う。輪郭のはっきりした精度の良い指標形状が得られる。透過性基板41の下面に設ける第2の金属薄膜45はAl、Cr、Agなどの白色系色調を呈する金属を使った蒸着膜で、40Å〜50Å位の厚みに形成している。透過性基板41の下面41dを光沢面に仕上げていることもあって第2の金属薄膜45にはハーフミラーの作用が現れる。
【0050】
以上の構成を取った指標47には、凸部41fの露出表面41aから透過性基板41が視認できることから透過性基板41の厚みを感じ取ることができ厚味感のある指標が得られる。更に、第2の金属薄膜45のハーフミラー作用によって指標47に浮き上がり感が現れる。更に、指標47が突出した凸部41fに設けられていることによって指標47に厚みのある立体感が現れる。また、指標に光沢感なども現れて文字板50に高級感を感じさせる。また、指標47の形状も輪郭のはっきりした精度の良い指標形状が得られる。尚、図示はしていないが、透過性基板41に梨地模様、サークル模様、格子模様などの各種模様を設けることによって装飾性に富んだ文字板に仕立てることができる。また、第1の金属薄膜43上に印刷などの方法で着色模様を形成して装飾性を高めることができる。
【0051】
尚、本実施例5の文字板50は光透過性を持たせてソーラセル用の文字板仕様に仕上げた。第1の金属薄膜43や第2の金属薄膜45の金属膜を光が透過しない程度に厚く形成すると金属文字板仕様として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施例1における時計用文字板の要部断面図である。
【図2】図1における時計用文字板の指標を目で見た状態を説明する説明図である。
【図3】図1における時計用文字板の指標を形成する工程の一部を示す工程図である。
【図4】本発明の実施例2における時計用文字板の要部断面図である。
【図5】本発明の実施例3における時計用文字板の要部断面図である。
【図6】本発明の実施例4における時計用文字板の要部断面図である。
【図7】本発明の実施例5における時計用文字板の要部断面図である。
【図8】従来技術において、特許文献1に示されたところの時計用文字板要部断面図である。
【図9】特許文献1に示されてところの他の構成を示す時計用文字板の要部断面図である。
【図10】特許文献1に示されてところの他の構成を示す時計用文字板の要部断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1、11、21、31、41、 透過性基板
1a、13a、31a、41a 露出表面
3、14、43 第1の金属薄膜
3a、14a、24a、33a、43a 剥離した部分
5、15、45 第2の金属薄膜
7、17、27、37、47 指標
8 レジスト膜
9 露光フィルム
10、20、30、40、50 時計用文字板
13、23、 透過性金属薄膜
24、33 金属薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過性基板の上面に形成した第1の金属薄膜を指標形状に剥離した部分と、該剥離した部分の下方にあって透過性基板の下面に形成した第2の金属薄膜とで構成した指標部を有することを特徴とする時計用文字板。
【請求項2】
透過性基板の上面に積層した下層の透過性金属薄膜と上層の第1の金属薄膜とのうち、前記上層の第1の金属薄膜を指標形状に剥離した部分と、該剥離した部分の下方にあって透過性基板の下面に形成した第2の金属薄膜とで構成した指標部を有することを特徴とする時計用文字板。
【請求項3】
透過性基板の上面に形成した金属薄膜を指標形状に剥離した部分で構成した指標部を有することを特徴とする時計用文字板。
【請求項4】
透過性基板の上面に積層した下層の透過性金属薄膜と上層の金属薄膜とのうち、前記上層の金属薄膜を指標形状に剥離した部分で構成した指標部を有することを特徴とする時計用文字板。
【請求項5】
前記下層の透過性金属薄膜はハーフミラー仕上げになっていることを特徴とする請求項2又は4に記載の時計用文字板。
【請求項6】
前記第2の金属薄膜はハーフミラー仕上げになっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の時計用文字板。
【請求項7】
前記指標形状に剥離した部分は透過性基板の凸部面に設けたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の時計用文字板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−119039(P2006−119039A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308408(P2004−308408)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)