説明

時計

【課題】 使用者の視線に対する腕時計の傾きに応じて文字盤上の文字を使用者に見やすく表示する。
【解決手段】 時計10は、現在時刻を計時する計時回路部17と、文字盤上に配置され、計時回路部17により計時された時刻を含む文字を表示する液晶表示部13と、時計の傾斜角を検出する傾斜センサ19と、指定された所定の傾斜角を基準角度として、当該基準角度を記憶手段に記憶するとともに、基準角度と傾斜センサ19により検出された傾斜角との間の相対角度に基づいて、液晶表示部13に表示する文字の縦方向の倍率を算出し、算出された倍率に基づく文字サイズの文字を、液晶表示部13に表示させる制御手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字盤上の文字がディジタル表示形態で表示された時計に関する。
【背景技術】
【0002】
アナログ式の腕時計では、文字盤上において外周に沿って、時刻、主として「時分」のうち「時」を示す数字(アラビア数字やローマ数字)や文字が配置され、短針および長針の位置から、使用者は現在の時刻を知ることができる。またディジタル式の腕時計では、文字盤上に液晶パネルが配置され、液晶パネル上に時刻を示す数字や文字が表示されることにより、使用者は現在の時刻を知ることができる。
【0003】
また、ディジタル式の腕時計であり、かつ、表示形態は、短針、長針、文字盤の外周に沿った「時」を表す数字をディジタルで表示するような、アナログ表示形態のディジタル時計も実用化されている(特許文献1)。
【0004】
腕時計の使用者は、手首に装着した腕時計みるために、肘を曲げたり手首を傾けたりするため、使用者の視線に対して、腕時計の文字盤は様々な角度をなすことになる。
【特許文献1】特開平8−15464号公報
【特許文献2】特開2005−114572号公報
【特許文献3】特開2005−114573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえば、特許文献2および特許文献3には、アナログ式の腕時計において、文字盤自体を立体的に形成し、或いは、文字盤の周囲に配置された文字を立体的に形成して、側面方向にも文字等を施すことにより、腕時計が一定の方向に傾けられた場合でも、側面方向の文字が表示され、視認性を向上させるとともにデザインに変化をもたせたような腕時計が提案されている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献2および特許文献3に提案された腕時計では、立体化された文字盤や文字盤上に配置される文字の側面に、文字等が刻まれているものであるため、特定の角度に傾けない限り、当該側面の文字等を視認することはできず、視認性が向上される場合が限定される。
【0007】
本発明は、使用者の視線に対する腕時計の傾きに応じて文字盤上の文字を使用者に見やすく表示することができる時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、現在時刻を計時する計時手段と、
文字盤上に配置され、前記計時手段により計時された時刻を含む文字を表示する表示手段と、を備えた時計において、
当該時計の傾斜角を検出する傾斜検出手段と、
指定された所定の傾斜角を基準角度として、当該基準角度を記憶手段に記憶するとともに、前記基準角度と傾斜検出手段により検出された傾斜角との間の前記時計の縦方向の相対角度に基づいて、前記表示手段に表示する文字の縦方向の倍率を算出し、算出された倍率に基づく文字サイズの文字を、前記表示手段に表示させる制御手段と、を有することを特徴とする時計により達成される。
【0009】
好ましい実施態様においては、前記制御手段が、前記相対角度が所定の範囲内である場合に、前記算出された倍率に基づく文字サイズの文字を、前記表示手段に表示させる。
【0010】
より好ましい実施態様においては、前記制御手段が、前記相対角度が所定の範囲外である場合に、前記文字の表示を停止させる。
【0011】
別の好ましい実施態様においては、前記表示手段が、前記文字盤上の外周に沿って、時を表す文字を表示し、
前記制御手段が、前記算出された文字サイズの文字を表示すべき表示位置を算出する。
【0012】
より好ましい実施態様においては、前記制御手段が、文字盤の上側に位置する文字について、当該文字の上端の位置が、サイズの変更前後で同じになるように表示位置が算出され、文字盤の下側に位置する文字について、当該文字の下端の位置が、サイズの変更前後で同じになるように表示位置が算出され、かつ、文字盤の縦方向中央に位置する文字は、当該文字の縦方向の中心の位置が、サイズ変更前後で同じになるように表示位置が算出されることを特徴とする請求項2に記載の時計。
【0013】
また、好ましい実施態様においては、短針および長針を有し、指針駆動機構により前記短針および長針が駆動される。
【0014】
別の好ましい実施態様においては、時分が数字によりディジタル表示される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、使用者の視線に対する腕時計の傾きに応じて文字盤上の文字を使用者に見やすく表示することができる時計を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる腕時計の回路の内部構成を示すブロックダイヤグラムである。図1に示すように、腕時計10は、CPU11、操作部12、液晶表示部13、ドライバ14、ROM15、RAM16、計時回路部17、発振回路部18、傾斜センサ19、指針駆動機構20および指針部21を備える。本実施の形態にかかる腕時計10は、後述するように、文字盤上、外周に沿って表示される数字や文字はディジタル表示形態であり、かつ、アナログの指針式の時計である。なお、本実施の形態においては、文字盤上には数字が表示されるが、文字盤上上で表示されるものは数字に限られず、文字もありえる。以下、本明細書においては、文字盤上に表示されるものは、文字および数字を含め「文字」と称する。
【0017】
CPU11は、所定のタイミングで、或いは、操作部12から入力された操作信号に応じてROM15に格納されたプログラムを読み出して、RAM16に書き込み、当該プログラムに基づいて、時計を構成する各部への指示やデータの転送などを実行する。具体的には、たとえば、傾斜センサ19から取得された傾斜データに基づいて、液晶表示部13に表示すべき文字のサイズや当該文字の配置位置などを算出する。
【0018】
操作部12は、時計の各種機能の実行を指示するためのスイッチ(図示せず)を含み、スイッチが操作されると、対応する操作信号をCPU11に出力する。液晶表示部13は、時計の文字盤上に配置された液晶パネル30を含み、ドライバ14を介してCPU11から送られたデータに基づいて、液晶パネル30上に時刻を示す数字を含む文字を表示する。
【0019】
ROM15は、時計を動作させ、また、所定の機能を実現するためのシステムプログラムやアプリケーションプロググラム、データなどを記憶する。RAM16は、CPU11の作業領域として用いられ、ROM15から読み出されたプログラムやデータ、CPU11にて処理されたデータなどを一時的に記憶する。
【0020】
計時回路部17は、発振回路部18から与えられたクロック信号に基づいて、現在時刻を計時する。傾斜センサ19は、たとえば、複数の電極の静電容量の変化を検出することで傾斜方向および傾斜角を得る。傾斜センサ19は、任意の構造のものを採用することができる。たとえば、ジャイロおよび加速度センサを有するものであっても良い。
【0021】
指針駆動機構20は、歯車等を有し、計時回路部17の信号に基づいて、歯車を回転させ、長針および短針を有する指針部21を駆動する。
【0022】
図2は、本実施の形態にかかる腕時計10の文字盤の略平面図である。図2に示すように、文字盤22においては、機械式の長針23および短針24が配置される。長針23および短針24は、指針駆動機構20により駆動される。また、文字盤22には液晶パネル30が設けられる。液晶パネル30によって、文字盤22の外周に沿って、文字(符号31〜34参照)が表示できる。図2の例では、短針の12時、3時、6時および9時を示す位置に、それぞれ数字「12」、「3」、「6」および「9」が表示される。無論、このような表示態様に限定されるものではなく、1時から12時までの各時を表示するような表示態様としても良い。また、液晶パネル30上に曜日や年月日などの他の文字が表示できるように構成しても良い。
【0023】
腕時計10の文字盤22に正対するように使用者が文字盤22を見る場合、つまり、文字盤22の面と使用者の視線とが直交する場合には、文字盤22上の文字は、図4(a)に示すように見ることができる。しかしながら、文字盤22が傾けられ、その面と使用者の視線とが直角以外の角度になると、傾きが大きくなるのにしたがって、使用者が視認する文字盤22上の文字は、図4(b)に示すように小さくなる。本実施の形態では、腕時計10(文字盤22)が傾けられた場合であっても、使用者が文字盤22上の文字を視認しやすいような処理を施す。
【0024】
図3は、本実施の形態にかかる腕時計10において実行される処理を示すフローチャートである。図3に示すように、腕時計10のCPU11は、使用者からの基準角度設定の指示を受け付けたか否かを判断する(ステップ301)。使用者による操作部12の所定の操作により、ステップ301でYesと判断される。
【0025】
ステップ301でYesと判断された場合には、CPU11は、動作モードを、角度初期化モードとして、傾斜センサ19から現在の腕時計10の傾斜角を取得し、当該傾斜角を基準角度としてRAM16に格納する(ステップ302)。次いで、CPU11は、動作モードを表示モードとして、文字盤22上に文字を表示する。CPU11は、傾斜センサ19から現在の傾斜角を取得し、当該傾斜角と基準角度との間の差、つまり、相対角度が所定の視認範囲であるか否かを判断する(ステップ304)。
【0026】
図5は、本実施の形態にかかる視認範囲を説明する図である。図5に示す時計10の位置が基準角度設定の際の位置であり、時計10の文字盤22の平面(符号502参照)が、相対角度「0」の基準角度であり、使用者の視線(符号501参照)と直交する。本実施の形態にかかる視認範囲は、時計10を使用者からみて手前側に+α度傾けた状態から、向こう側に−β度傾けたまでの「−β<相対角度<α」に相当する。αとβの値は同じであっても良いし異なっても良い。たとえば、α=β=60度とすれば、視認範囲は、「−60度<相対角度<60度」の120度となる。
【0027】
ステップ304でYesと判断された場合には、CPU12は、算出した相対角度に基づいて、表示すべき文字の倍率を算出し、倍率に基づいて表示すべき文字の文字サイズを算出する(ステップ305)。図6は、本実施の形態にかかる文字サイズの算出を説明する図である。図6(a)に示すように、使用者の視線(符号600)と文字盤の面(符号601)とが直交する場合には、高さhの文字(符号611参照)は、そのまま高さhで使用者に視認される。その一方、腕時計10が傾けられて、文字盤の面(符号602)が、基準角度を規定している面(符号601)からθをなす場合を考える。この場合、使用者が視線600で文字(符号612)を見る場合には、文字(符号612)の高さh’は、
h’=hcosθ
となる。そこで、本実施の形態においては、腕時計10が傾斜したにもかかわらず、使用者が視線600で文字を見たときにも、当該文字の大きさが、使用者の視線(符号600)と文字盤の面(符号601)とが直交するときの大きさと同じになるように、図6(b)に示す文字(符号622)の高さh”は、以下のように算出される。
【0028】
h”=h/cosθ
この場合に、使用者が視線600で文字(符号622)を見る場合にも、その高さはhとなる。
【0029】
CPU12は、算出された文字サイズで拡大された文字のそれぞれの配置位置を算出する(ステップ306)。本実施の形態においては、文字盤の上側に位置する文字(数字「12」)は、当該文字の上端の位置が、拡大前後で同じになるように配置位置が算出される。また、文字盤の下側に位置する文字(数字「6」)は、当該文字の下端の位置が、拡大前後で同じになるように配置位置が算出される。また、文字盤の縦方向中央に位置する文字(数字「3」および数字「9」)は、当該文字の縦方向の中心の位置が、拡大前後で同じになるように配置位置が算出される。
【0030】
CPU12は、ステップ305で算出されたサイズで、かつ、ステップ306で算出された配置位置で、それぞれの文字を表示させる(ステップ307)。図7(a)は、使用者の視線と文字盤の面とが直交する場合に、使用者に視認される文字盤の例を示す図であり、図7(b)は、文字盤が傾けられた場合に、使用者により視認される文字盤の例を示す図である。図7(b)に示すように、文字盤30が傾斜することにより、文字盤30の形状は、図7(a)に示す文字盤と比較してひずんだものとなるが、文字盤上に表示される数字(符号71〜74参照)は、図7(a)に示すもの(符号31〜34参照)と略同じサイズとなる。また、文字の位置が調整されているため、文字が途切れたりすることなく、使用者に視認される。
【0031】
なお、ステップ304でNoと判断された場合には、CPU11は、液晶表示部13による文字の表示自体を停止しても良い。これは、視認範囲を超えて腕時計が傾けられた場合には、使用者には文字の視認が不可能となる可能性が高いからである。これにより、無駄な電力の消費を防止することもできる。
【0032】
本実施の形態によれば、基準角度からの傾斜角が視認範囲内であれば、文字サイズが傾斜に応じた拡大され、かつ、文字の配置位置が調整されて、文字盤上に表示される。したがって、使用者の腕の向きや、顔の位置にかかわらず、使用者は、所定の大きさの文字を視認することが可能となる。
【0033】
特に、基準角度からの傾斜角が所定の範囲(視認範囲内)であれば文字サイズを変更することで、視認できない場合の無駄な処理を防止することができる。また、視認範囲を超えて腕時計が傾けられた場合には、使用者には文字の視認が不可能と考えて、文字の表示自体を停止することで、無駄な電力の消費を防ぐことができる。
【0034】
また、本実施の形態においては、文字盤上の外周に沿って、時を表す文字が表示され、その文字の位置に応じて、文字を表示すべき表示位置を適正化して、使用者による視認を容易にしている。特に、文字盤の上側に位置する文字について、当該文字の上端の位置が、サイズの変更前後で同じになるように表示位置が算出され、文字盤の下側に位置する文字について、当該文字の下端の位置が、サイズの変更前後で同じになるように表示位置が算出され、かつ、文字盤の縦方向中央に位置する文字は、当該文字の縦方向の中心の位置が、サイズ変更前後で同じになるように表示位置が算出される。
【0035】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【0036】
前記実施の形態においては、文字盤上の文字は液晶パネルに表示されるディジタル表示形態であり、かつ、短針および長針を有するアナログ指針式であるような時計に本発明を適用しているが、これに限定されるものではない。たとえば、アナログ表示形態ではあるが、文字盤上の文字だけでなく、短針および長針もディジタルで表示するようなディジタル時計、時刻や日時を完全なディジタル表示形態で表示するようなディジタル時計に本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本実施の形態にかかる腕時計の回路の内部構成を示すブロックダイヤグラムである。
【図2】図2は、本実施の形態にかかる腕時計の文字盤の略平面図である。
【図3】図3は、本実施の形態にかかる腕時計において実行される処理を示すフローチャートである。
【図4】図4は、腕時計の使用者により視認される文字盤の状態を説明する図である。
【図5】図5は、本実施の形態にかかる視認範囲を説明する図である。
【図6】図6は、本実施の形態にかかる文字サイズの算出を説明する図である。
【図7】図7は、本実施の形態にしたがって文字のサイズ等が変更された、腕時計の使用者により視認される文字盤の状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0038】
10 腕時計
11 CPU
12 操作部
13 液晶表示部
14 ドライバ
15 ROM
16 RAM
17 計時回路部
18 発振回路部
19 傾斜センサ
20 指針駆動機構
21 指針部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在時刻を計時する計時手段と、
文字盤上に配置され、前記計時手段により計時された時刻を含む文字を表示する表示手段と、を備えた時計において、
当該時計の傾斜角を検出する傾斜検出手段と、
指定された所定の傾斜角を基準角度として、当該基準角度を記憶手段に記憶するとともに、前記基準角度と傾斜検出手段により検出された傾斜角との間の前記時計の縦方向の相対角度に基づいて、前記表示手段に表示する文字の縦方向の倍率を算出し、算出された倍率に基づく文字サイズの文字を、前記表示手段に表示させる制御手段と、を有することを特徴とする時計。
【請求項2】
前記制御手段が、前記相対角度が所定の範囲内である場合に、前記算出された倍率に基づく文字サイズの文字を、前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項1に記載の時計。
【請求項3】
前記制御手段が、前記相対角度が所定の範囲外である場合に、前記文字の表示を停止させることを特徴とする請求項2に記載の時計。
【請求項4】
前記表示手段が、前記文字盤上の外周に沿って、時を表す文字を表示し、
前記制御手段が、前記算出された文字サイズの文字を表示すべき表示位置を算出することを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載の時計。
【請求項5】
前記制御手段が、文字盤の上側に位置する文字について、当該文字の上端の位置が、サイズの変更前後で同じになるように表示位置が算出され、文字盤の下側に位置する文字について、当該文字の下端の位置が、サイズの変更前後で同じになるように表示位置が算出され、かつ、文字盤の縦方向中央に位置する文字は、当該文字の縦方向の中心の位置が、サイズ変更前後で同じになるように表示位置が算出されることを特徴とする請求項4に記載の時計。
【請求項6】
短針および長針を有し、指針駆動機構により前記短針および長針が駆動されることを特徴とする請求項4または5に記載の時計。
【請求項7】
時分が数字によりディジタル表示されることを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載の時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−150668(P2009−150668A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326718(P2007−326718)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】