説明

時間差方位探知装置

【課題】方位のアンビギュイティを発生させず、高精度に方位探知する時間差方位探知装置を得る。
【解決手段】認定範囲設定部315は、アンテナ11a,11c間の距離L、第1の信号処理部2によるパルス到来方位θ、電波伝搬速度C、および方位誤差算出部314による方位誤差Δθに基づいて、アンテナ11a,11cのパルス到来時刻の時間差τcが同一のパルス信号に関するパルス到来時刻の時間差であると認められる認定範囲μを設定する。時間差決定部316は、時間差検出部311によるパルス到来時刻の時間差τcのうちの認定範囲設定部315による認定範囲μを満たすパルス到来時刻の時間差τcを決定する。第2の方位算出部32は、認定範囲μを満たすパルス到来時刻の時間差τcと、アンテナ11a,11c間の距離L、および電波伝搬速度Cに基づいて高精度で方位のアンビギュイティを発生しないパルス到来方位θを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置等のパルス発生源から到来する電波を2つ以上のアンテナにより受信し、パルス到来時刻の時間差からパルス発生源の方位を探知する時間差方位探知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の時間差方位探知装置として、所定の距離を隔てて2つの受信系を配置し、信号処理部により、2つの受信系から受信されるパルス信号のパルス到来時刻に基づいてパルス到来方位を探知するものがある。
【0003】
2つの受信系には、パルス信号を受信するアンテナと、アンテナにより受信されるパルス信号毎にパルス到来時刻を求めるパルス検出部とを備え、信号処理部には、2つの受信系によるパルス到来時刻の時間差を求める時間差算出部と、時間差算出部によるパルス到来時刻の時間差、2つの受信系のアンテナ間の距離、およびパルス信号の電波伝搬速度に基づいてパルス到来方位を求める方位算出部とを備える。
【0004】
このような従来の時間差方位探知装置を開示した公知文献として、下記特許文献1がある。この時間差方位探知装置では、各受信系による一連のパルス信号に関する複数のパルス到来時刻について、受信系毎の統計処理を行うことにより、装置規模を大きくすることなく、時間差方位探知の精度を向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−215225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、時間差方位探知の精度を向上させる方法として、一つは上記特許文献1のように、2つのアンテナにより受信する到来信号の時間差を正確に算出する方法と、もう一つは受信する2つのアンテナの距離を大きくする方法とがある。
【0007】
図7は時間差方位探知において、2つのアンテナ11a,11b間の距離dの変化によるパルス到来時刻の時間差τの変化を示した図である。
この図7に示すように、同じ方向から到来したパルス信号であっても、2つのアンテナ11a,11b間の距離dが大きい場合は、2つのアンテナ11a,11bにより探知されるパルス到来時刻の時間差τが大きくなる。この時間差τに含まれる誤差成分は、アンテナ11a,11b間の距離dには依存しないため、誤差成分に対する時間差τが増えることになり、方位探知の精度は向上することになる。
【0008】
このように、2つのアンテナ11a,11b間の距離を大きくすればするほど、方位探知の精度は向上する。しかし、図8に示すとおり、到来するパルス信号のパルス繰返周期(PRI:Pulse Repetition Interval)が、2つのアンテナ11a,11bにより受信されるパルス到来時刻の時間差τよりも小さい場合には、本来の同一のパルス信号間の時間差τではなく、一つ以上前のパルスとの誤算出時間差τerrorを算出してしまい、探知された方位にアンビギュイティ(多義的曖昧さ)が発生する。
なお、到来するパルス信号のパルス繰返周期を大きくして、方位のアンビギュイティの発生を抑える方法も考えられるが、この場合、方位探知の応答性が低下する。
【0009】
従来の時間差方位探知装置は、以上のように構成されているので、到来するパルス信号のパルス繰返周期が、2つのアンテナ11a,11bにより受信されるパルス到来時刻の時間差τよりも小さい場合には、探知された方位にアンビギュイティが発生し、逆に、到来するパルス信号のパルス繰返周期を大きくして、方位のアンビギュイティの発生を抑える場合には、方位探知の応答性が低下する課題があった。
【0010】
本発明は、以上のような課題を解消するためになされたもので、パルス繰返周期を大きくして方位探知の応答性を低下させることなく、方位のアンビギュイティを発生させず、高精度に方位探知する時間差方位探知装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明における時間差方位探知装置は、遠距離に配置された2つの受信系によるパルス到来時刻の時間差を求める時間差検出部と、第1の信号処理部による第1のパルス到来方位に基づいてその第1のパルス到来方位に含まれる方位誤差を求める方位誤差算出部と、方位誤差算出部による方位誤差に基づいて遠距離に配置された2つの受信系によるパルス到来時刻の時間差が同一のパルス信号に関するパルス到来時刻の時間差であると認められる認定範囲を求める認定範囲設定部と、時間差検出部により求められたパルス到来時刻の時間差のうちの認定範囲設定部により求められた認定範囲を満たすパルス到来時刻の時間差を求める時間差決定部と、時間差決定部によるパルス到来時刻の時間差、遠距離に配置された2つの受信系のアンテナ間の距離、およびパルス信号の電波伝搬速度に基づいて第2のパルス到来方位を求める方位算出部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、遠距離に配置された2つの受信系から最終的なパルス到来方位を求めるものなので、高精度に方位探知することができる。
また、到来パルスのパルス繰返周期がパルス到来時刻の時間差よりも小さい場合であっても、同一のパルス信号に関するパルス到来時刻の時間差によりパルス到来方位を求めることができる。よって、パルス繰返周期を大きくして方位探知の応答性を低下させることなく、さらに、方位のアンビギュイティを発生させず、高精度に方位探知することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1による時間差方位探知装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第2の時間差算出部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】近距離アンテナによる方位誤差参照表を示す説明図である。
【図4】3つのアンテナが一連のパルス信号を受信している例を示す説明図である。
【図5】近距離に配置された2つのアンテナのパルス到来時刻の時間差により測定したパルス到来方位に含まれる方位誤差と、その方位誤差に基づいて求められる認定範囲を示す説明図である。
【図6】この発明の実施の形態2による時間差方位探知装置の構成を示すブロック図である。
【図7】2つのアンテナ間の距離の変化によるパルス到来時刻の時間差の変化を示す説明図である。
【図8】アンビギュイティの発生原理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による時間差方位探知装置の構成を示すブロック図である。この時間差方位探知装置は、3つの受信系1A〜1Cと、第1の信号処理部2と、第2の信号処理部3とから構成される。
【0015】
受信系1Aにおいてアンテナ11aは、一連のパルス信号を受信し、パルス検出部12aは、アンテナ11aにより受信されるパルス信号毎にパルス到来時刻(TOA:Time Of Arrival)を付加して記録するものである。
【0016】
また、受信系1Bも同様に、アンテナ11bは、一連のパルス信号を受信し、パルス検出部12bは、アンテナ11bにより受信されるパルス信号毎にパルス到来時刻を付加して記録するものである。
【0017】
さらに、受信系1Cも同様に、アンテナ11cは、一連のパルス信号を受信し、パルス検出部12cは、アンテナ11cにより受信されるパルス信号毎にパルス到来時刻を付加して記録するものである。
【0018】
ただし、後述する図4に示されるように、アンテナ11a〜11cは、同一直線上に配置され、同一のパルス発生源から到来する一連のパルス信号をそれぞれ受信するものである。
【0019】
また、アンテナ11a,11bは、方位のアンビギュイティが発生しない程度の小さい距離dを隔てて配置され、アンテナ11a,11cは、方位探知の精度を向上させるために、大きい距離Lを隔てて配置される。
さらに、受信系1Bのパルス検出部12bおよび受信系1Cのパルス検出部12cは、受信系1Aのパルス検出部12aと時刻同期が取られている。
【0020】
第1の信号処理部2は、受信系1A,1Bにより受信されるパルス信号毎のパルス到来時刻に基づいて、方位誤差が含まれ低精度であるが、方位のアンビギュイティが発生しないパルス到来方位を求めるものである。
【0021】
第1の信号処理部2において第1の時間差算出部21は、受信系1A,1Bによるパルス信号毎に記録されたパルス到来時刻の時間差を算出するものである。
また、第1の方位算出部22は、パルス到来時刻の時間差と、受信系1A,1Bのアンテナ11a,11b間の距離、およびパルス信号の電波伝搬速度に基づいてパルス到来方位を算出するものである。
【0022】
第2の信号処理部3は、受信系1A,1Cによるパルス信号毎のパルス到来時刻と、第1の信号処理部2による、方位誤差が含まれ低精度であるが、方位のアンビギュイティが発生しないパルス到来方位とに基づいて、高精度で方位のアンビギュイティが発生しないパルス到来方位を求めるものである。
【0023】
第2の信号処理部3において第2の時間差算出部31は、受信系1A,1Cによるパルス信号毎に記録されたパルス到来時刻の時間差を算出するものである。また、算出されたパルス到来時刻の時間差のうち、同一のパルス信号に関するパルス到来時刻の時間差のみが認定されるように、認定範囲を求めるものである。この認定範囲は、第1の信号処理部2によるパルス到来方位に基づいて、そのパルス到来方位に含まれる方位誤差を求め、その方位誤差から求めるものである。
また、第2の方位算出部32は、認定範囲を満たすパルス到来時刻の時間差と、受信系1A,1Cのアンテナ11a,11c間の距離、およびパルス信号の電波伝搬速度に基づいてパルス到来方位を算出するものである。
【0024】
図2は第2の時間差算出部の詳細な構成を示すブロック図である。この第2の時間差算出部31は、時間差検出部311と、パルス周波数算出部312と、方位誤差参照表記憶部313と、方位誤差算出部314と、認定範囲設定部315と、時間差決定部316とから構成される。
【0025】
時間差検出部311は、受信系1A,1Cによるパルス到来時刻の時間差を算出するものである。また、パルス周波数算出部312は、受信系1Aによるパルス到来時刻に基づいてパルス周波数を算出するものである。
【0026】
方位誤差参照表記憶部313は、パルス周波数およびパルス到来方位に応じた方位誤差からなる方位誤差参照表を予め記憶したものである。なお、図3は近距離アンテナによる方位誤差参照表を示す説明図である。また、方位誤差算出部314は、パルス周波数算出部312によるパルス周波数、および第1の信号処理部2によるパルス到来方位に基づいて、方位誤差参照表記憶部313に記憶された方位誤差参照表から方位誤差を抽出するものである。
【0027】
認定範囲設定部315は、受信系1A,1Cのアンテナ11a,11c間の距離、第1の信号処理部2によるパルス到来方位、パルス信号の電波伝搬速度、および方位誤差算出部314による方位誤差に基づいて認定範囲を設定するものである。また、時間差決定部316は、時間差検出部311によるパルス到来時刻の時間差のうちの認定範囲設定部315による認定範囲を満たすパルス到来時刻の時間差を決定するものである。
【0028】
なお、図1および図2に示した各構成のうちのアンテナ11a〜11cを除く構成については、マイコン等を実装している半導体回路基板等のハードウエアにより機能を実現するようにしても良い。また、処理内容が記述されているプログラムをコンピュータのメモリに格納し、コンピュータのCPUがメモリに格納されているプログラムを実行する等のソフトウエアにより機能を実現するようにしても良い。
【0029】
次に動作について説明する。
まず、図4および図5に基づいて、この実施の形態1における時間差方位探知装置の原理について説明する。
図4は3つのアンテナ11a〜11cが一連のパルス信号を受信している例を示したものである。
【0030】
まず、アンテナ間の距離が小さい、アンテナ11a,11b間のパルス到来時刻の時間差τbによりパルス到来方位θを求める。パルスの電波伝搬速度をCとすれば、時間差τbは、

と求められる。
【0031】
しかし、この場合、アンテナ間の距離dが小さいため、パルス到来時刻の時間差τbの測定精度が良くなく、方位探知の精度も良くない。しかし、探知された方位にはアンビギュイティが発生しない。
【0032】
次に、アンテナ間の距離が大きい、アンテナ11a,11c間のパルス到来時刻の時間差τcによりパルス到来方位θを求める。時間差τcは、

と求められる。
【0033】
この場合、アンテナ間の距離Lが大きいため、パルス到来時刻の時間差τcの測定精度が良く、方位探知の精度も良い。しかし、探知された方位にアンビギュイティが発生する。
【0034】
そこで、まず、アンテナ間の距離が小さい、アンテナ11a,11b間のパルス到来時刻の時間差τbによりパルス到来方位θを求める。ここで求められるパルス到来方位θは、方位誤差が含まれ低精度であるが、方位のアンビギュイティが発生しないものである。
【0035】
図5はアンテナ11a,11b間のパルス到来時刻の時間差τbによるパルス到来方位θに含まれる方位誤差Δθを示している。
ここで、方位誤差Δθは、パルス周波数fおよびパルス到来方位θによって変化するものである。
【0036】
この実施の形態1では、時間差方位探知装置の製造後に、試験および運用を行い、パルス周波数f毎およびパルス到来方位θ毎に方位誤差Δθを測定し、予めパラメータとして記録しておく。
【0037】
図3はその方位誤差参照表を示したものである。この方位誤差参照表では、受信されるパルス周波数fと、2つのアンテナ11a,11bのパルス到来時刻の時間差τbにより測定したパルス到来方位θとに基づいて、方位誤差Δθを抽出可能にされている。
【0038】
図5に戻って、この方位誤差Δθから、アンテナ11cに到来するアンテナ11a,11c間のパルス到来時刻の時間差τcに影響する時間誤差Δτcは、

である。
【0039】
よって、この時間誤差Δτcに基づいて、アンテナ11a,11c間のパルス到来時刻の時間差τcが同一のパルス信号に関するパルス到来時刻の時間差であると認められる認定範囲μは、

と求められる。
【0040】
したがって、アンテナ11a,11c間のパルス到来時刻の時間差τcが、上記式(6)の認定範囲μを満たすとき、同一のパルス信号に関するパルス到来時刻の時間差であると認められることから、この式(6)の認定範囲μを満たす時間差τcを用いてパルス到来方位θを求めれば、方位のアンビギュイティを発生させず、高精度に方位探知することができる。
【0041】
次に、図1および図2に基づいて、この実施の形態1における時間差方位探知装置の具体的な動作について説明する。
図1において、受信系1A〜1Cのアンテナ11a〜11cは、図4に示されるように、同一のパルス発生源から到来する一連のパルス信号をそれぞれ受信する。受信系1A〜1Cのパルス検出部12a〜12cは、アンテナ11a〜11cにより受信されるパルス信号毎にパルス到来時刻TOAa〜TOAcを付加して記録する。
【0042】
第1の信号処理部2において第1の時間差算出部21は、受信系1A,1Bによるパルス到来時刻TOAa,TOAbの時間差τbを算出する。また、第1の方位算出部22は、上記式(2)により、パルス到来時刻の時間差τbと、受信系1A,1Bのアンテナ11a,11b間の距離d、およびパルス信号の電波伝搬速度Cに基づいて、方位誤差が含まれ低精度であるが、方位のアンビギュイティが発生しないパルス到来方位θを算出する。
【0043】
図2において、第2の時間差算出部31の時間差検出部311は、受信系1A,1Cによるパルス到来時刻TOAa,TOAcの時間差τcを算出する。また、パルス周波数算出部312は、受信系1Aによるパルス到来時刻TOAaに基づいてパルス周波数fを算出する。さらに、方位誤差算出部314は、パルス周波数算出部312によるパルス周波数f、および第1の信号処理部2によるパルス到来方位θに基づいて、方位誤差参照表記憶部313に記憶された、図3に示される方位誤差参照表からパルス到来方位θに含まれる方位誤差Δθを抽出する。
【0044】
認定範囲設定部315は、上記式(6)に、受信系1A,1Cのアンテナ11a,11c間の距離L、第1の信号処理部2によるパルス到来方位θ、パルス信号の電波伝搬速度C、および方位誤差算出部314による方位誤差Δθを適用し、2つのアンテナ11a,11cのパルス到来時刻の時間差τcが同一のパルス信号に関するパルス到来時刻の時間差であると認められる認定範囲μを設定する。
【0045】
また、時間差決定部316は、時間差検出部311によるパルス到来時刻の時間差τcのうちの認定範囲設定部315による認定範囲μを満たすパルス到来時刻の時間差τcを決定する。
【0046】
図1において、第2の方位算出部32は、上記式(4)により、認定範囲μを満たすパルス到来時刻の時間差τcと、受信系1A,1Cのアンテナ11a,11c間の距離L、およびパルス信号の電波伝搬速度Cに基づいて、高精度で方位のアンビギュイティを発生しないパルス到来方位θを算出する。
【0047】
以上のように、この実施の形態1によれば、到来パルスのパルス繰返周期がパルス到来時刻の時間差よりも小さい場合であっても、同一のパルス信号に関するパルス到来時刻の時間差によりパルス到来方位を求めることができる。よって、パルス繰返周期を大きくして方位探知の応答性を低下させることなく、さらに、方位のアンビギュイティを発生させず、高精度に方位探知することができる。
【0048】
また、パルス周波数算出部312によるパルス周波数、および第1の信号処理部2によるパルス到来方位に基づいて方位誤差参照表記憶部313に記憶された方位誤差参照表からパルス到来方位に含まれる方位誤差を容易に抽出することができる。
【0049】
さらに、認定範囲設定部315は、上記式(6)に、受信系1A,1Cのアンテナ11a,11c間の距離、およびパルス信号の電波伝搬速度等の規定値、第1の信号処理部2によるパルス到来方位、および方位誤差算出部314による方位誤差を適用するだけで、精度の高い認定範囲を容易に設定することができる。
【0050】
なお、上記実施の形態1では、図4において、3つの受信系1A〜1Cのうちの近距離に配置された2つの受信系を1A,1Bとし、遠距離に配置された2つの受信系を1A,1Cとした。しかし、遠距離に配置された2つの受信系を1B,1Cとしても良い。この場合は、各式におけるLを(L−d)とすれば良い。
【0051】
また、上記実施の形態1では、方位誤差参照表記憶部313に、図3に示されたように、パルス周波数およびパルス到来方位に応じた方位誤差からなる方位誤差参照表を記憶するものとした。しかし、このパルス周波数に代えて、パルス繰返周期およびパルス到来方位に応じた方位誤差からなる方位誤差参照表を記憶するものとしも良い。この場合は、パルス周波数算出部312に代えてパルス繰返周期を算出するパルス繰返周期算出部を設ければ良い。
【0052】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、単一のプラットフォームにおいて時間差方位探知する場合に適用される時間差方位探知装置について説明した。
この実施の形態2では、上記実施の形態1における時間差方位探知装置の各構成手段を、2つの装置に分離し、2つの装置間を無線通信することにより、設置の自由度を高めると共に、遠くに離して設置することによる、さらなる方位探知の高精度化を期待できるものである。
【0053】
図6はこの発明の実施の形態2による時間差方位探知装置の構成を示すブロック図である。上記実施の形態1で説明した時間差方位探知装置を、第1および第2の装置401,402に分離して備える。
【0054】
図6において、第1の装置401に、受信系1A,1Bおよび第1の信号処理部2を備え、第2の装置402に、受信系1Cおよび第2の信号処理部3を備える。
また、第1の装置401には、受信系1Aによるパルス到来時刻TOAa、および第1の信号処理部2によるパルス到来方位θを送信する送信機403を備え、第2の装置402には、送信機403からのパルス到来時刻TOAa、およびパルス到来方位θを受信し、第2の装置402内に供給する受信機404を備える。
【0055】
以上のように、この実施の形態2によれば、第1および第2の装置401,402を、それぞれ自由な個所に設置することができることから、時間差方位探知装置としての設置の自由度を高めることができる。
また、第1および第2の装置401,402間を、例えば、距離Lよりも遠くに離して設置すれば、さらに高精度に方位探知することができる。
なお、この場合も、アンテナ11a〜11cは、同一直線上に配置され、アンテナ11a,11bは、方位のアンビギュイティが発生しない程度の短い距離dを隔てて配置されるものとする。
【0056】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意な構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意な構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1A〜1C 受信系、2 第1の信号処理部、3 第2の信号処理部、11a〜11c アンテナ、12a〜12c パルス検出部、21 第1の時間差算出部、22 第1の方位算出部、31 第2の時間差算出部、32 第2の方位算出部、311 時間差検出部、312 パルス周波数算出部、313 方位誤差参照表記憶部、314 方位誤差算出部、315 認定範囲設定部、316 時間差決定部、401 第1の装置、402 第2の装置、403 送信機、404 受信機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の距離を隔ててそれぞれ配置され、同一のパルス発生源から到来する一連のパルス信号をそれぞれ受信する3つの受信系と、
上記3つの受信系のうちの近距離に配置された2つの受信系により受信されるパルス到来時刻に基づいて第1のパルス到来方位を求める第1の信号処理部と、
上記3つの受信系のうちの遠距離に配置された2つの受信系により受信されるパルス到来時刻に基づいて第2のパルス到来方位を求める第2の信号処理部とを備え、
上記3つの受信系は、
パルス信号を受信するアンテナと、
上記アンテナにより受信されるパルス信号毎にパルス到来時刻を求めるパルス検出部とをそれぞれ備え、
上記第2の信号処理部は、
遠距離に配置された2つの受信系によるパルス到来時刻の時間差を求める時間差検出部と、
上記第1の信号処理部による第1のパルス到来方位に基づいてその第1のパルス到来方位に含まれる方位誤差を求める方位誤差算出部と、
上記方位誤差算出部による方位誤差に基づいて遠距離に配置された2つの受信系によるパルス到来時刻の時間差が同一のパルス信号に関するパルス到来時刻の時間差であると認められる認定範囲を求める認定範囲設定部と、
上記時間差検出部により求められたパルス到来時刻の時間差のうちの上記認定範囲設定部により求められた認定範囲を満たすパルス到来時刻の時間差を求める時間差決定部と、
上記時間差決定部によるパルス到来時刻の時間差、遠距離に配置された2つの受信系のアンテナ間の距離、およびパルス信号の電波伝搬速度に基づいて第2のパルス到来方位を求める方位算出部とを備えたことを特徴とする時間差方位探知装置。
【請求項2】
上記近距離に配置された2つの受信系、および上記第1の信号処理部を備えた第1の装置と、
上記遠距離に配置された2つの受信系のうちの上記第1の装置に含まれない一方の受信系、および上記第2の信号処理部を備えた第2の装置と、
上記第1の装置に含まれ、上記遠距離に配置された2つの受信系のうちの他方の受信系によるパルス到来時刻、および上記第1の信号処理部により求められた第1のパルス到来方位を送信する送信機と、
上記送信機からの他方の受信系によるパルス到来時刻、および第1のパルス到来方位を受信し、上記第2の装置に供給する受信機とを備えたことを特徴とする請求項1記載の時間差方位探知装置。
【請求項3】
上記第2の信号処理部は、
受信系によるパルス到来時刻に基づいてパルス周波数を求めるパルス周波数算出部と、
パルス周波数およびパルス到来方位に応じた方位誤差からなる方位誤差参照表を予め記憶した方位誤差参照表記憶部とを備え、
上記方位誤差算出部は、
上記パルス周波数算出部によるパルス周波数、および上記第1の信号処理部による第1のパルス到来方位に基づいて上記方位誤差参照表記憶部に記憶された方位誤差参照表から方位誤差を抽出することを特徴とする請求項1または請求項2記載の時間差方位探知装置。
【請求項4】
上記認定範囲設定部は、
上記遠距離に配置された2つの受信系のアンテナ間の距離、上記第1の信号処理部による第1のパルス到来方位、パルス信号の電波伝搬速度、および上記方位誤差算出部による方位誤差に基づいて認定範囲を求めることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の時間差方位探知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−202698(P2012−202698A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64520(P2011−64520)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)