説明

時間最適アーム動作を生成する装置

【課題】シングル及びマルチアームロボットマニピュレータの単純及び合成移動に対して、追跡容易、即ち連続する加速度プロファイルを有する時間最適軌道の信頼性を呈し且つ効率の良い生成を行うシステムを提供すること。
【解決手段】ポイント(2及び3)間のシングルアームロボットに対する直線に沿う移動用の形状の汎用軌道を想定する。時間最適軌道は、所定の制約を犯さずに可能となる最短時間内で所定路に沿った選択されたエンドエフェクタの移動であり、位置、速度、加速度プロファイルのセットであり、特別な場合が最適中止軌道であり、これは、最短時間内で、移動するアームを完全休止状態に持っていく。システムは、各移動の軌道を互いに直交する成分に分解し、次に所定時間毎にこれらの成分を重畳することによって、単純移動を単一軌道に合成する行程も含む。この合成によって、円滑な搬送路に沿ったノンストップ移動が生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットマニピュレータに関し、特に、シングルアーム、デュアルアーム、マルチアームロボットマニピュレータの単純移動及び複合、即ち合成移動に対して、制約を受けた時間最適軌道の信頼性を有し且つ効率の良い生成をなす装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シングルアーム、デュアルアーム、及びマルチアーム、すなわちシングルエンドエフェクタ、デュアルエンドエフェクタ、及びマルチエンドエフェクタ、ロボットマニピュレータは、従来の周知の実施例において様々なタイプの搬送装置の中で使用されている。かかる実施例を含む代表的な搬送装置の例は、アメリカ特許第4,730,976号、第5,180,276号,第5,404,894号、第5,431,529号、第5,647,724号、第5,655,060号、第5,765,983号、及びアメリカ特許出願第09/163,844号に開示されている。アメリカ特許出願第09/163,844号の出願人は、本願と同一である。また、上記特許及び出願の内容は全て本明細書に取り込まれているものとする。
【0003】
基板搬送装置と共に使用される実施例において、搬送アームには、半導体ウエハやフラットパネルディスプレイ等の基板を、プロセスに適した軌道を介して搬送するためにエンドエフェクタが装着されている。基板は、大抵、基板とエンドエフェクタとの間の摩擦力によって保持される。この力は、用途によっては真空または静電気留め具によって補強されたりする。故に、基板での慣性力が、基板をエンドエフェクタに固定する保持力を超えた場合に、基板は摺動するので、搬送時間は、この保持力の大きさによって制限される。さらに、制限速度やジャークなどのさらなる制約条件が、安全な動作や軌道追跡理由のために要求される。従って、基板を摺動させずに且つ所定の制約条件を犯さずに搬送軌道を計算する効率の良いシステムは、最大基板スループットレベルのために必要とされる。既存の取り組みにおいて、例えばアメリカ特許第5,655,060号を参照すると、後方軌道(移動の終了位置から後方)と前方軌道(移動の開始位置から前方)とは、繰り返し計算されて合成される。しかしながら、周知のマルチアームロボットマニピュレータを用いて反復軌道生成を行うために利用可能な方法の現在の状態は、典型的な取り組みや他の実施例において、問題をはらんでいる。例えば、これらの方法の中で、反復計算に対する信頼性のある解の存在は保証されず、計算は、特に中止機能において、計算そのものが厳しく、時間を要し、また遅延につながる。最適とは言い難い加速度プロファイル及び不完全な軌道プロファイルは、加速度追跡の障害及びスループット損失を引き起こす。軌道は、出発及び到着位置の僅かな変化に対して大きく変化する。大きなメモリが、軌道の位置を記憶するために必要となり、様々な設定が様々なアームや速度に対して要求される。
【0004】
基板搬送装置で既存の軌道生成によって生じる多数の代表的な不都合を、図1乃至図10の加速度対時間のグラフに示し、不都合を円によって示す。特に、図1乃至図6は、アームの半径方向の伸長を示し、図7乃至図10は、回転移動を示す。加速度プロファイルの円滑さは、円によって示される曲線部分によって遮られる。
【0005】
既存の取り組みの別の不都合は、アメリカ特許第5,655,060号に記載され、各移動は、単純移動を単一の軌道に合成して単一の円滑な搬送路を生成する設備の無い状態で、連続して実施されなければならない。連続実施は、各移動の間に停止を必要とし、全体の移動時間を増加させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、当該分野において、マニピュレータのマルチアームの動作を制御する追跡容易、即ち連続した加速度プロファイルを有する時間最適軌道を信頼性を有しつつ且つ効率良く計算できる、マルチアームロボットマニピュレータにおける軌道生成を行うことに対して需要が存在する。合成して円滑なノンストップ搬送路を生成できる単純移動用の軌道を生成する取り組み、及びこの合成を行う方法に対する需要も存在する。
【0007】
故に、本発明の目的は、速度、加速度、ジャークの制約を受けて、直線に沿った伸長及び収縮移動、又は円弧に追従する回転移動などの、マルチアームロボットマニピュレータの単純移動を制御する、追跡容易、即ち連続した加速度プロファイルを有する時間最適軌道の信頼性を有し且つ効率の良い生成をなすための方法及び装置を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、アームに装着されて基板を搬送するエンドエフェクタの速度、加速度、ジャークの制約を伴い、直線に沿った伸長及び収縮移動や、円弧を追従する回転移動などを含む、基板搬送装置におけるマルチアームロボットマニピュレータの動作を制御するために、円滑な加速度プロファイルを有する時間最適軌道の信頼性を呈し且つ効率の良い生成をなすためのシステムを提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、速度、加速度、ジャークの制約を受けて、直線に沿った伸長及び収縮移動や、円弧に追従する回転移動を含む、マルチアームロボットマニピュレータの単純移動及び合成移動用の時間最適軌道の信頼性を呈し且つ効率の良い生成をなすためのシステムを提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、マルチアームロボットマニピュレータの単純移動用の軌道を生成し、これらの移動を合成して円滑なノンストップ搬送路を形成するシステム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、速度、加速度、ジャークの制約を受けて、場合によってはジャーク速度の制約を受けて、直線に沿った伸長及び収縮移動や、円弧に追従する回転移動を含む、マルチアームロボットマニピュレータの単純移動及び合成移動用の追跡容易、即ち連続する加速度プロファイルを有する時間最適軌道の信頼性を呈し且つ効率の良い生成をなす方法及び装置を提供することを目的とする。時間最適軌道は、所定の制約を犯さずに可能な最短時間内で所定路に沿った選択されたエンドエフェクタの移動を記述する位置、速度、加速度プロファイルのセットになることが分かる。特に、本発明は、所定のカテゴリの移動に対する制約条件の全ての組み合わせをカバーする基本軌道形状のセットを最初に特定する。尚、所定のカテゴリの移動とは、例えば、直線や円弧に沿った移動である。次に、本発明は、基本形状を、単一の制約が有効となるセグメントに分解し、次に、セグメントでの時間最適路を判別するものである。結果として、時間最適軌道の唯一の構成が、1組の所定軌道形状に基づいて生成される。
【0012】
本発明は、各移動の軌道を互いに直交する成分に分解し、次の所定間隔毎に分解した成分を重畳することによって、単純移動を単一の軌道に合成することも含む。これによって、円滑な搬送路に沿ったノンストップ移動が生成される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来の加速度プロファイル、加速度対時間のグラフを示し、基板搬送装置での既存の軌道生成と共に生じる円内の代表的な不都合を示し、特に、加速度制約が有効の(少なくとも1つのエンドエフェクタがロードされる)場合のアームの半径方向の伸長を示す。
【図2】従来の加速度プロファイル、加速度対時間のグラフを示し、基板搬送装置での既存の軌道生成と共に生じる円内の代表的な不都合を示し、特に、加速度制約が有効の(少なくとも1つのエンドエフェクタがロードされる)場合のアームの半径方向の伸長を示す。
【図3】従来の加速度プロファイル、加速度対時間のグラフを示し、基板搬送装置での既存の軌道生成と共に生じる円内の代表的な不都合を示し、特に、加速度制約が有効の(少なくとも1つのエンドエフェクタがロードされる)場合のアームの半径方向の伸長を示す。
【図4】従来の加速度プロファイル、加速度対時間のグラフを示し、基板搬送装置での既存の軌道生成と共に生じる円内の代表的な不都合を示し、特に、加速度制約が有効の(少なくとも1つのエンドエフェクタがロードされる)場合のアームの半径方向の伸長を示す。
【図5】従来の加速度プロファイル、加速度対時間のグラフを示し、基板搬送装置での既存の軌道生成と共に生じる円内の代表的な欠点を示し、特に、加速度制約が非活動の(エンドエフェクタがアンロードされる)場合の半径方向の伸長を示す。
【図6】従来の加速度プロファイル、加速度対時間のグラフを示し、基板搬送装置での既存の軌道生成と共に生じる円内の代表的な欠点を示し、特に、加速度制約が非活動の(エンドエフェクタがアンロードされる)場合の半径方向の伸長を示す。
【図7】従来の加速度プロファイル、加速度対時間のグラフを示し、基板搬送装置での既存の軌道生成と共に生じる円内の代表的な欠点を示し、加速度制約が有効の(少なくとも1つのエンドエフェクタがロードされた)場合の回転動作を示す。
【図8】従来の加速度プロファイル、加速度対時間のグラフを示し、基板搬送装置での既存の軌道生成と共に生じる円内の代表的な欠点を示し、特に、加速度制約が有効の(少なくとも1つのエンドエフェクタがロードされた)場合の回転動作を示す。
【図9】従来の加速度プロファイル、加速度対時間のグラフを示し、基板搬送装置での既存の軌道生成と共に生じる円内の代表的な欠点を示し、特に、加速度制約が有効の(少なくとも1つのエンドエフェクタがロードされた)場合の回転動作を示す。
【図10】従来の加速度プロファイル、加速度対時間のグラフを示し、基板搬送装置での既存の軌道生成と共に生じる円内の代表的な欠点を示し、特に、加速度制約が非活動の(エンドエフェクタがアンロードされる)場合の回転動作を示す。
【図11】シングルアームロボットの移動用の典型的な時間最適形状を示す加速度プロファイルを示し、特に、直線に沿う移動用の汎用軌道形状を示す。
【図12】シングルアームロボットの移動用の典型的な時間最適形状を示す加速度プロファイルを示し、図11の汎用形状から導かれる形状を含み、且ついわゆる軌道ノード、すなわち軌道をセグメントに分割するポイント、を示す番号を伴う直線に沿った動作用の基本軌道形状を示す。
【図13】シングルアームロボットの移動用の典型的な時間最適形状を示す加速度プロファイルを示し、図11の汎用形状から導かれる形状を含み、且ついわゆる軌道ノード、すなわち軌道をセグメントに分割するポイント、を示す番号を伴う直線に沿った動作用の基本軌道形状を示す。
【図14】シングルアームロボットの移動用の典型的な時間最適形状を示す加速度プロファイルを示し、図11の汎用形状から導かれる形状を含み、且ついわゆる軌道ノード、すなわち軌道をセグメントに分割するポイント、を示す番号を伴う直線に沿った動作用の基本軌道形状を示す。
【図15】シングルアームロボットの移動用の典型的な時間最適形状を示す加速度プロファイルを示し、図11の汎用形状から導かれる形状を含み、且ついわゆる軌道ノード、すなわち軌道をセグメントに分割するポイント、を示す番号を伴う直線に沿った動作用の基本軌道形状を示す。
【図16】シングルアームロボットの移動用の典型的な時間最適形状を示す加速度プロファイルを示し、図11の汎用形状から導かれる形状を含み、且ついわゆる軌道ノード、すなわち軌道をセグメントに分割するポイント、を示す番号を伴う直線に沿った動作用の基本軌道形状を示す。
【図17】シングルアームロボットの移動用の典型的な時間最適形状を示す加速度プロファイルを示し、図11の汎用形状から導かれる形状を含み、且ついわゆる軌道ノード、すなわち軌道をセグメントに分割するポイント、を示す番号を伴う直線に沿った動作用の基本軌道形状を示す。
【図18】シングルアームロボットの移動用の典型的な時間最適形状を示す加速度プロファイルを示し、図11の汎用形状から導かれる形状を含み、且ついわゆる軌道ノード、すなわち軌道をセグメントに分割するポイント、を示す番号を伴う直線に沿った動作用の基本軌道形状を示す。
【図19】シングルアームロボットの移動用の典型的な時間最適形状を示す加速度プロファイルを示し、図11の汎用形状から導かれる形状を含み、且ついわゆる軌道ノード、すなわち軌道をセグメントに分割するポイント、を示す番号を伴う直線に沿った動作用の基本軌道形状を示す。
【図20】中止軌道用の図12乃至図19の軌道形状に対応する軌道形状の概要を示す。
【図21】中止軌道用の図12乃至図19の軌道形状に対応する軌道形状の概要を示す。
【図22】中止軌道用の図12乃至図19の軌道形状に対応する軌道形状の概要を示す。
【図23】中止軌道用の図12乃至図19の軌道形状に対応する軌道形状の概要を示す。
【図24】中止軌道用の図12乃至図19の軌道形状に対応する軌道形状の概要を示す。
【図25】中止軌道用の図12乃至図19の軌道形状に対応する軌道形状の概要を示す。
【図26】本発明により、円弧に沿ったシングルアームロボット及びマルチアームロボットの移動用の汎用時間最適軌道形状の加速度プロファイルを示す。
【図27】図26に示す汎用形から導出される基本軌道形状の完全セットを示す。
【図28】図26に示す汎用形から導出される基本軌道形状の完全セットを示す。
【図29】図26に示す汎用形から導出される基本軌道形状の完全セットを示す。
【図30】図26に示す汎用形から導出される基本軌道形状の完全セットを示す。
【図31】図26に示す汎用形から導出される基本軌道形状の完全セットを示す。
【図32】図26に示す汎用形から導出される基本軌道形状の完全セットを示す。
【図33】中止軌道用に対応する形状を示す。
【図34】中止軌道用に対応する形状を示す。
【図35】本発明による各アームの制約が同一でないデュアルアームカエル足ロボットの半径方向移動用の代表的な時間最適軌道の形状を示し、特に汎用軌道形状を示す。
【図36】本発明による各アームの制約が同一でないデュアルアームカエル足ロボットの半径方向移動用の代表的な時間最適軌道の形状を示し、特に、いわゆる軌道ノードを示す番号を伴う図35の汎用形状から導出される基本軌道形状を含む。
【図37】本発明による各アームの制約が同一でないデュアルアームカエル足ロボットの半径方向移動用の代表的な時間最適軌道の形状を示し、特に、いわゆる軌道ノードを示す番号を伴う図35の汎用形状から導出される基本軌道形状を含む。
【図38】本発明による各アームの制約が同一でないデュアルアームカエル足ロボットの半径方向移動用の代表的な時間最適軌道の形状を示し、特に、いわゆる軌道ノードを示す番号を伴う図35の汎用形状から導出される基本軌道形状を含む。
【図39】本発明による各アームの制約が同一でないデュアルアームカエル足ロボットの半径方向移動用の代表的な時間最適軌道の形状を示し、特に、いわゆる軌道ノードを示す番号を伴う図35の汎用形状から導出される基本軌道形状を含む。
【図40】本発明による各アームの制約が同一でないデュアルアームカエル足ロボットの半径方向移動用の代表的な時間最適軌道の形状を示し、特に、いわゆる軌道ノードを示す番号を伴う図35の汎用形状から導出される基本軌道形状を含む。
【図41】本発明による各アームの制約が同一でないデュアルアームカエル足ロボットの半径方向移動用の代表的な時間最適軌道の形状を示し、特に、いわゆる軌道ノードを示す番号を伴う図35の汎用形状から導出される基本軌道形状を含む。
【図42】本発明による各アームの制約が同一でないデュアルアームカエル足ロボットの半径方向移動用の代表的な時間最適軌道の形状を示し、特に、いわゆる軌道ノードを示す番号を伴う図35の汎用形状から導出される基本軌道形状を含む。
【図43】本発明による各アームの制約が同一でないデュアルアームカエル足ロボットの半径方向移動用の代表的な時間最適軌道の形状を示し、特に、いわゆる軌道ノードを示す番号を伴う図35の汎用形状から導出される基本軌道形状を含む。
【図44】本発明による各アームの制約が同一でないデュアルアームカエル足ロボットの半径方向移動用の代表的な時間最適軌道の形状を示し、特に、いわゆる軌道ノードを示す番号を伴う図35の汎用形状から導出される基本軌道形状を含む。
【図45】本発明による各アームの制約が同一でないデュアルアームカエル足ロボットの半径方向移動用の代表的な時間最適軌道の形状を示し、特に、いわゆる軌道ノードを示す番号を伴う図35の汎用形状から導出される基本軌道形状を含む。
【図46】本発明による各アームの制約が同一でないデュアルアームカエル足ロボットの半径方向移動用の代表的な時間最適軌道の形状を示し、特に、いわゆる軌道ノードを示す番号を伴う図35の汎用形状から導出される基本軌道形状を含む。
【図47】本発明による各アームの制約が同一でないデュアルアームカエル足ロボットの半径方向移動用の代表的な時間最適軌道の形状を示し、特に、いわゆる軌道ノードを示す番号を伴う図35の汎用形状から導出される基本軌道形状を含む。
【図48】本発明による各アームの制約が同一でないデュアルアームカエル足ロボットの半径方向移動用の代表的な時間最適軌道の形状を示し、特に、中止軌道用に対応する形状を示す。
【図49】本発明による各アームの制約が同一でないデュアルアームカエル足ロボットの半径方向移動用の代表的な時間最適軌道の形状を示し、特に、中止軌道用に対応する形状を示す。
【図50a】合成された軌道を示し、ポイント「0」から「1」までと、ポイント「1」から「2」までとの2つの直線セグメントからなる典型的な連続した移動用のパスを示す。
【図50b】合成された軌道を示し、ポイント「0」から「1」までの直線と、「1」から「2」までの円弧とに沿った典型的な連続した移動を示す。
【図51a】ポイント「0」から「1」までとポイント「1」から「2」までとの2つの直線セグメントに従う丸い基板を示す2つの直線移動を合成する典型的な軌道を示し、順次実行させた例である。
【図51b】ポイント「0」から「1」までとポイント「1」から「2」までとの2つの直線セグメントに従う丸い基板を示す2つの直線移動を合成する典型的な軌道を示し、複合移動を示し、基板の中心は、実際にはポイント1を通過せず、示された円滑パスに従うものである。
【図52a】直線、すなわちポイント「0」から「1」までと、「2」から「3」までのセグメントに沿う2つの移動と、円弧、すなわちポイント「1」から「2」までのセグメントに沿った移動とを合成する典型的な軌道を示し、各セグメントを追従する円形基板を示し、移動を連続させた場合であり、従来例による移動路を表す。
【図52b】直線、すなわちポイント「0」から「1」までと、「2」から「3」までのセグメントに沿う2つの移動と、円弧、すなわちポイント「1」から「2」までのセグメントに沿った移動とを合成する典型的な軌道を示し、各セグメントを追従する丸い基板を示し、複合移動の場合を示し、本発明による複合移動を受ける円形基板用の最適搬送路を示す。
【図53】加速度プロファイル、加速度対時間のグラフを示し、本発明による加速度プロファイルと、従来の反復法により得られた加速度プロファイルとの比較を示し、特に、加速度制約が有効の(エンドエフェクタがロードされた)場合の半径方向の伸長を伴うシングルアームロボット用の事例を示す。
【図54】加速度プロファイル、加速度対時間のグラフを示し、本発明による加速度プロファイルと、従来の反復法により得られた加速度プロファイルとの比較を示し、特に、一方のエンドエフェクタAの加速度制約が有効であり(ロードされ)、且つ他方のエンドエフェクタBの加速度制約が非活動の(アンロードされる)ときの半径方向伸長のデュアルアームカエル足ロボット用の事例を示す。
【図55】加速度プロファイル、加速度対時間のグラフを示し、本発明による加速度プロファイルと、従来の反復法により得られた加速度プロファイルとの比較を示し、特に、一方のエンドエフェクタAの加速度制約が非活動であり(アンロードされる)、且つ他方のエンドエフェクタBでの加速度制約が有効の(ロードされた)場合の、半径方向に伸長するデュアルアームカエル足ロボット用の事例を示す。
【図56】加速度プロファイル、加速度対時間のグラフを示し、本発明による加速度プロファイルと、従来の反復法により得られた加速度プロファイルとの比較を示し、特に、エンドエフェクタA,Bでの半径方向伸長及び加速度制約が有効でない(アンロードされる)場合の半径方向に伸長するデュアルアームカエル足ロボット用の事例を示す。
【図57】加速度プロファイル、加速度対時間のグラフを示し、本発明による加速度プロファイルと、従来の反復法により得られた加速度プロファイルとの比較を示し、特に、加速度制約が有効の場合(少なくとも1つのエンドエフェクタがロードされる)の回転移動用の事例を示す。
【図58】加速度プロファイル、加速度対時間のグラフを示し、本発明による加速度プロファイルと、従来の反復法により得られた加速度プロファイルとの比較を示し、特に、加速度制約が非活動の(エンドエフェクタがアンロードされる)回転移動用の事例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の特徴を、添付図面を参照して、以下に説明する。
【0015】
本発明は、搬送装置でのマルチアームロボットマニピュレータの動作を制御して、単純移動及び複合移動による搬送アーム動作の間、追跡容易、即ち連続した加速プロファイルを有する時間最適軌道を信頼性を呈し且つ効率良く生成する方法及び装置を含む。時間最適軌道は、所定の制約を犯さずに可能な最短時間で所定パスに沿って選択されたアームの動作を描写する、位置、速度、加速度プロファイルのセットとして理解される。そして、特別な場合が最適中止軌道であれば、移動アームは最短時間のうちに完全休止状態になる。本発明の目的は、例えばアメリカ特許第5,655,060号に記されるように、既存のアプローチの他の不都合と同様に、円によって囲まれた曲線部分によって図1乃至図10の従来の加速度プロファイルに示すように、基板及び他の搬送装置にて既存の軌道生成の典型的な不都合により発生する中断を克服することである。本発明は、速度、加速度、及びジャークの制約を伴う、直線に沿った伸長及び収縮移動や、円弧に沿う回転動作などのアーム動作を、円滑にするために使用される。後方軌道(移動の終了位置から後方)及び前方軌道(移動の開始位置から前方)が繰り返し計算されて合成される既存のアプローチとは対照的に、単純移動及び複合移動用の時間最適軌道の信頼性を呈し且つ効率の良い生成は、以下の工程によって行われる。あるカテゴリの移動、すなわち直線に沿った移動や円弧に沿った移動に対する制約の起こり得る組み合わせの全てをカバーする基本軌道形状のセットを特定する工程と、単一の制約が有効となるセグメントに基本形状を分解する工程と、セグメントにおける時間最適パスを判別する工程とである。次に、所望の軌道が、適当なセグメントを軌道のパスに組み立てることによって生成される。このように、本発明は、あらかじめ定義された軌道形状のセットに基づいて時間最適軌道の構成を生成し、合成を経て複合移動用の軌道を計算する方法を提供するために使用される。
【0016】
特に、マルチアームロボットマニピュレータの単純な移動用の軌道を、平滑なパスに沿ったノンストップ複合移動へと信頼性を呈しつつ効率良く合成することは、本発明によって行われる。本発明の方法は、各単純移動用の軌道を独立な成分、例えば直交成分に分解し、所定時間間隔毎に各単純移動の軌道の独立成分を重畳し、重畳成分を、円滑パスに沿ったノンストップ移動を行う軌道へと合成するものである。
【0017】
本発明の実施を、図11乃至図58に図示する。以下の記載のために、上記にて提案されるように、本発明においては、「シングルアームロボット」は、1つのエンドエフェクタを備えたロボットマニピュレータを指し、「デュアルアームロボット」は、2つのエンドエフェクタを備えたロボットマニピュレータを指し、「マルチアームロボット」は、複数のエンドエフェクタを備えたロボットマニピュレータを指す。シングルアームロボット及びデュアルアームロボットの両構成は、本発明に引用例として援用されているアメリカ特許第5,765,983号、4,730,976号の各々に開示されているような、周知の2リンクタイプ、又はカエル足構造のものである。さらに、本発明に引用例として援用されているアメリカ特許第5,180,276号、5,647,724号に開示された、「BiSymmetrik(左右相称)」及び「Leapfrog(蛙跳び)」アーム構成にも言及している。尚、「BiSymmetrik」及び「Leapfrog」は、本発明の譲渡人であるブルックス オートメーション インコーポレイテッドの商標である。
【0018】
一般に、制約条件のセットは、ロボットの各エンドエフェクタ毎に異なると考えられる。多くの場合、制約条件のセットは、最大許容速度、加速度、ジャーク、ジャーク速度を含み、これらは、エンドエフェクタの中心点に作用する。移動の基本カテゴリの例が提示される。即ち、シングルアームロボット用の直線に沿った移動(図11乃至図25)、シングルアームロボット用の円弧に沿った移動(図26乃至図34)、特定の制約条件(図11乃至図25)及びその他の制約条件(図35乃至図49)を有するデュアルアームカエル足ロボット用の半径方向の移動、デュアルアームロボット用の回転移動(図26乃至図34)であり、各図において、軌道は、デュアルアームロボットのアーム(エンドエフェクタ)の1つから生じている。更に、上記単純移動に加えて、単純移動の単一軌道への合成も記載されている(図50乃至図52)。
【0019】
4つのカテゴリの各々に対する基本軌道形状は、全制約が有効となる場合に相当する汎用形の簡単な型として見なされる。基本軌道形状の各々は、関連した1組の条件を有し、この条件が、ある形状が特定の移動に対して使用できるか否かを判別する。例えば、選択された基本軌道形状に関連する1組の条件は、以下のようになる。
例1:図12の形状、即ち直線移動用の最も複雑な形状に対して満たすべき条件は、(t1 > t0) 及び (t3 > t2) 及び (t6 > t5)であり、即ち、セグメント0−1,2−3,5−6が存在する。
例2:図19の形状、即ち直線移動に対して最も単純な形状に対して満たすべき条件は、
【0020】
【数1】

【0021】
本発明の方法によって生成された軌道は、多くは時間、位置、速度、加速度、ジャーク、ジャーク速度を含む1組のノードによって完全に定義される。対応する位置、速度、加速度プロファイルは、選択された軌道形状に関連した1組の式を使用してノードから構成される。
【0022】
移動の基本カテゴリに対する汎用(基本)軌道形状、その数学的説明、関連する基本軌道形状の説明を次に説明する。
【0023】
直線に沿うシングルアームロボット移動
最初に、本発明による直線に沿ったシングルアームロボットの移動を検討する。これの移動は、エンドエフェクタの中心点に作用する、最大速度、加速度、ジャーク、ジャーク速度による制約を受ける。典型的な時間最適軌道形状を、図11乃至図19に示す。図11乃至図19において、セグメント名は、以下のパラメータを表す。
a = 加速度 (m/s2
ai = ノードiでの加速度 (m/s2
amax = 最大加速度 (m/s2
d = ジャークの変化率 (m/s4
di = ノードiでのジャークの変化率 (m/s4
dmax = ジャークでの最大変化率 (m/s4
j = ジャーク (m/s3
ji = ノードiでのジャーク (m/s3
jmax = 最大ジャーク (m/s3
s = 位置 (m)
si = ノードiでの位置 (m)
smax = 移動距離 (m)
t = 時間 (s)
ti = ノードiでの時間 (s)
v = 速度 (m/s)
vi = ノードiでの速度 (m/s)
vmax = 最大速度 (m/s)
図11は、以下の12のセグメントから構成される直線ラインに沿う移動用の汎用軌道形状を示す。12のセグメントは、
セグメント0−1: j = +jmax
セグメント1−2: d = −dmax
セグメント2−3: a = +amax
セグメント3−4: d = −dmax
セグメント4−5: j = −jmax
セグメント5−6: v = vmax
セグメント6−7: v = vmax
セグメント7−8: j = −jmax
セグメント8−9: d = +dmax
セグメント9−10: a = −amax
セグメント10−11: d = +dmax
セグメント11−12: j = +jmax
からなる。
【0024】
対応する位置、速度、加速度プロファイルは、以下の式を使用してノード(即ち、ti,si,vi,ai,ji,di)から構成される。
【0025】
【数2】

【0026】
図11の汎用形から導出される基本軌道形状の完全セットを、図12乃至図19に示す。図12乃至図19は、図11の汎用形状から導出された形状を含み、いわゆる軌道ノードを示す番号、即ち軌道をセグメントに分割するポイントを有する直線に沿った移動に対する基本軌道形状を示す。中止軌道用の対応する形状の概要を、図20乃至図25に示す。
【0027】
円弧に沿ったシングルアームロボット移動
次に、本発明による円弧に沿ったシングルアームロボットの移動を検討する。この移動は、エンドエフェクタの中心点に作用する、最大速度、加速度、ジャークによる制約を受ける。典型的な時間最適軌道形状を、図26乃至図32に示す。図26乃至図32において、セグメント識別名は、以下のパラメータを示す。即ち、
ac = 遠心加速度 (m/s2
amax = 最大全加速度 (m/s2
at = 接線加速度 (m/s2
ati = ノードiでの接線加速度 (m/s2
atotal = 全(接線+遠心)加速度 (m/s2
jmax = 最大接線ジャーク (m/s3
jt = 接線ジャーク (m/s3
jti = ノードiでの接線ジャーク (m/s3
r = 円弧の半径 (m)
s = 位置 (m)
si = ノードiでの位置 (m)
smax = 移動距離 (m)
v = 速度 (m/s)
vi = ノードiでの速度 (m/s)
vmax = 最大速度 (m/s)
t = 時間 (s)
ti = ノードiでの時間 (s)
図26は、加速度プロファイル、加速度対時間のグラフを示し、円弧に沿った移動用の汎用軌道形状を示す。これは、8つのセグメントからなる。即ち、
セグメント0−1: jt = +jmax
セグメント1−2: atotal = amax
セグメント2−3: jt = −jmax
セグメント3−4: v = vmax
セグメント4−5: v = vmax
セグメント5−6: jt = −jmax
セグメント6−7: atotal = amax
セグメント7−8: jt = +jmax
エンドエフェクタの中心点の全加速度は、その接線方向成分及び遠心方向成分に関して以下のように表すことができる。
【0028】
【数3】

【0029】
故に、セグメント1−2、6−7における軌道は、以下の条件に従わなければならない。
【0030】
【数4】

【0031】
式(4.6)は、非線形方程式であり、一般に、解析解(analytical solution)を持たない。しかし、問題はαで示す補助パラメータで解析的に解かれることが示されている。次に、位置、速度、加速度プロファイルは、以下のように計算される。
【0032】
【数5】

【0033】
ただし、si、αiは、それぞれs、αの初期値である。パラメータαは、以下の微分方程式を経て時間tと関係する。
【0034】
【数6】

【0035】
式(4.10)は、解析的には解けないが、その解は、以下の形式の3次多項式を使用して近似できる。
【0036】
【数7】

【0037】
尚、係数C0〜C3は、対象(セグメント1−2、6−7)の時間間隔での初期条件及び最終条件が正確に満足されるように決定され、tiは、初期時間を指す。
位置、速度、加速度プロファイルは、以下の式を使用してノードから計算される。
【0038】
【数8】

【0039】
又は、
【0040】
【数9】

【0041】
図27乃至図32は、図26に示す汎用形から導出される基本軌道形状の完全セットを示す。中止軌道用の対応する形状が、図33及び図34に示されている。
デュアルアームカエル足ロボット半径方向移動
半径方向の移動は、ロボットの中心に関する半径方向における直線移動である。デュアルアームカエル足ロボットの典型的な半径方向移動用の軌道生成を説明する。
【0042】
ロボットの2つのエンドエフェクタを、A及びBとする。
【0043】
エンドエフェクタAは、半径方向移動を行うものと仮定する。この移動は、エンドエフェクタAに作用するジャーク及び最大許容加速度と、エンドエフェクタBの最大許容加速度とによる制約を受ける。一般に、2つの加速度制約は、必ずしも等しいものではない。時間最適軌道形状を、図35乃至図47に示す。図35乃至図47において、セグメント名は、以下のパラメータを示す。
aA = アームAの加速度 (m/s2
aAi = ノードiでのアームAの加速度 (m/s2
aAmax = アームAの最大加速度 (m/s2
aB = アームBの加速度 (m/s2
aBi = ノードiでのアームBの加速度 (m/s2
aBmax = アームBの最大加速度 (m/s2
jA = アームAのジャーク (m/s3
jAi = ノードiでのアームAのジャーク (m/s3
jAmax = アームAの最大ジャーク (m/s3
jB = アームBのジャーク (m/s3
jBi = ノードiでのアームBのジャーク (m/s3
sA = アームAの位置 (m)
sAi = ノードiでのアームAの位置 (m)
sB = アームBの位置 (m)
sBi = ノードiでのアームBの位置 (m)
t = 時間 (s)
ti = ノードiでの時間 (s)
vA = アームAの速度 (m/s)
vAi = ノードiでのアームAの速度 (m/s)
vB = アームBの速度 (m/s)
vBi = ノードiでのアームBの速度 (m/s)
2つの基本的な事例が、加速度限界の値に基づいて識別される。
事例1: aAmax ≦ aBmax
事例2: aAmax > aBmax
エンドエフェクタBの加速度は、デュアルアームカエル足ロボットの周知の構成に対する半径方向移動の間、aAmaxを犯さないので、aAmax ≦ aBmaxの時、加速度限界aBmaxは有効にならない。その結果、上記のシングルアームロボットの直線移動に関しては、同一の軌道形状が事例1において使用される。事例2に対する汎用軌道形状を図35に示す。汎用軌道形状は、以下に示す7つのセグメントからなる。
セグメント0−1: jA = +jAmax
セグメント1−2: aB = −aBmax
セグメント2−3: jA = +jAmax
セグメント3−4: aA = aAlim
セグメント4−5: jA = −jAmax
セグメント5−6: aA = −aAmax
セグメント6−7: jA = +jAmax
最適解からの僅かなずれを犠牲にして、aAlimの値は、max(aB)=aBmaxとなるように選択される。この簡素化により、必要な基本軌道形状の数は、相当に減少される。位置、速度、加速度プロファイルは、以下の式によりノードから計算される。
【0044】
【数10】

【0045】
j=0,2,3,4に対し、i=A (4.25)
j=1に対し、i=B (4.26)
図35の汎用形から導出される基本軌道形状の完全セットを、図36乃至図47に示す。中止軌道用の対応する形状を、図48及び図49に示す。
【0046】
デュアルアームロボット回転移動
説明すべき単純移動の最後のカテゴリは、デュアルアームロボット、即ち2つのエンドエフェクタを備えたロボットマニピュレータの回転移動である。ロボットのエンドエフェクタが中心を共通とする円弧に沿って移動するとき、回転移動は実施される。
【0047】
再び、ロボットの2つのエンドエフェクタを、A及びBとする。エンドエフェクタAは、回転移動を行うように命令されるものと仮定する。移動は、エンドエフェクタAに作用するジャーク及び最大許容加速度と、エンドエフェクタBの最大許容加速度とにより拘束される。一般に、2つの加速度制約条件は、互いに等しいものである必要はない。
【0048】
以下の条件を満足する場合、エンドエフェクタBに作用する加速度限界は破られることはないことを示すことができる。
aAmax / rA ≦ aBmax / rB (4.27)
但し、aAmax = アームAの最大加速度 (m/s2
aBmax = アームBの最大加速度 (m/s2
rA = アームAの回転半径 (m)
rB = アームBの回転半径 (m)
その結果、同一の基本軌道形状が、図26乃至図34に関して、上記のように、シングルアームロボットに関して使用できる。式(4.27)の条件を満足しない場合、軌道は、エンドエフェクタBに関連した加速度限界及び半径に基づいて生成すべきである。
【0049】
複合、即ち合成移動に対する軌道
多くの用途において、直線又は円弧などの単純路は、ワークピース限界に直面した場合などに、十分には孤立しておらず、故に、所望のパスが一連の複数の移動として得られ、移動時間全体が増加する。時間損失は、連続して実行される移動各々の間の停止による。これらの停止は、後述する本発明による合成技術によって除去できる。
【0050】
本発明により単純移動を単一の軌道に合成するシステムは、以下の通りである。不可欠な取り組みは、各移動の軌道を、直交又は独立成分に分解して、ある時間間隔に対してこの成分を重畳することである。直交成分への分解は、直交座標系でのx−y軸方向への分解によって得られる。これは、結果として、円滑パスに沿ったノンストップ移動になる。2つの事例を説明のために提示する。即ち、2つの直線移動の合成と、直線移動から円弧路への合成であり、その移動路を、それぞれ図50(a)、(b)に示す。図50は、左側(a)に、2つの直線セグメント、即ちポイント「0」からポイント「1」までとポイント「1」からポイント「2」までとからなる連続移動の例を示し、右側(b)に、連続する、直線に沿った移動及び円弧に沿った移動、即ちポイント「0」から「1」、「1」から「2」までの移動の例を、それぞれ示す。
【0051】
2つの直線移動の合成
制約条件下での最初の連続移動の概略を、図50(a)に示す。これは、パスでの2つの直線セグメント、すなわち、ポイント「0」から「1」までと、ポイント「1」から「2」までとからなる。例えば、上記の所定時間最適軌道形状に基づいて生成された、2つのセグメント用の軌道が利用可能であると仮定すると、この合成移動用の位置、速度、加速度プロファイルは、以下の式を使用して得られる。
【0052】
【数11】

【0053】
但し、x0,y0 = ポイント0でのx、y座標 (m)
x1,y1 = ポイント1でのx、y座標 (m)
sA,vA,aA = セグメント0−1に対する位置、速度、加速度プロファイル(m)
sB,vB,aB = セグメント1−2に対する位置、速度、加速度プロファイル(m)
tA = セグメント0−1に沿った移動存続期間 (S)
Δ = オーバラップ時間 (s)
2直線移動を合成する代表的な例を図51に示す。図51は、ポイント「0」から「1」までと、ポイント「1」から「2」までとの2つの直線セグメントに続く丸い基板を示す。左側(a)は順に移動する例であり、右側(b)は合成した移動である。
【0054】
直線及び円弧の合成
制約条件下での第2の順次移動の概略を、図50(b)に示す。これは、連続した、ポイント「0」から「1」までの直線に沿った第1の移動と、次の、ポイント「1」から「2」までの円弧に沿った移動とからなる。例えば、上記のように所定の時間最適軌道形状に基づいて生成された、2つのセグメント用の軌道が利用可能であると仮定すると、混合移動用の位置、速度、加速度プロファイルは、以下の式を利用して計算される。
【0055】
【数12】

【0056】
但し、
【0057】
【数13】

【0058】
更に、x0,y0 = ポイント0でのx、y座標(m)
x1,y1 = ポイント1でのx、y座標(m)
xc,yc = 円弧の中心のx、y座標(m)
sA,vA,aA = セグメント0−1の位置(m),速度(m/s),加速度プロファイル(m/s2
sB,vB,aB = セグメント1−2の位置(m),速度(m/s),加速度プロファイル(m/s2
tA = セグメント0−1に沿った移動の持続期間(s)
Δ = オーバラップ時間(s)
直線に沿った2つの移動、即ち、ポイント「0」から「1」までとポイント「2」から「3」までとのセグメントと、円弧に沿った移動、即ちポイント「1」から「2」までのセグメントとの合成を、図52に示す。図52は、各セグメントに続く丸い基板を示し、左側(a)は順次の事例を示し、右側は複合移動を示す。左側(a)の事例は、従来例によるパスを示し、右側(b)は、本発明による複合移動が行われた円形基板用の最適搬送路を示す。
【0059】
既存の取り組みと本発明とのさらなる比較を、図53乃至図58にて、代表的な移動のセットに対して示す。所定の時間最適軌道形状に基づいた本発明の取り組みは、欠陥が無く且つ追跡が容易のプロファイルを提供する。更に、既存の取り組みにおいて、角度に関するジャークの制約が、アームを駆動するモータに作用し、故に、エンドエフェクタの中心での最大ジャークは一定ではなく、その変化はアームの力学に依存する。対照的に、本発明では、ジャークの制約は、エンドエフェクタの中心に直接作用する。この変化は、図53乃至図56において見られるように、移動時間の改善につながる。
【0060】
本発明は、結果として、理想の加速度プロファイルになるので、アームの寸法の適宜の組み合わせ、速度、出発・到着位置に対する信頼性、あらゆるタイプの欠点の除去等の、従来のシステムを超える効果を提供する。さらに、生成された軌道は、デュアルアームカエル足ロボットのある半径方向の移動に対して時間最適、または最適に次ぐ状態になり、直線移動用のエンドエフェクタの中心に作用する一定ジャーク限界により移動時間が短縮される。本発明は、円滑な加速度プロファイルの直線移動用の追跡容易な軌道を提供し、且つ、効率が良く、大抵は、既存の反復法よりも数百倍早くなる。高速の計算能力により、中止時間及び移動距離の短縮が保証される。本発明は、最大12の軌道ノードが保存された想定される移動用のカテゴリに対するメモリに対する要求を緩め、アーム及び速度が異なる毎に異なる軌道生成器の設定変更を除去する。本発明は、2リンク及びカエル足構成、特に「BiSymmetric(左右相称)」及び「Leapfrog(蛙跳び)」アーム構成を含む、搬送装置の全アームに対して適用可能であり、合成搬送路による複合移動を支援する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットマニピュレータのアーム動作について追跡容易な連続加速度プロファイルを有する時間最適軌道を信頼性高く且つ効率良く生成して、搬送路に沿った時間最適アーム動作を生成する装置であって、
前記装置は、
一組の基本軌道形状を予め設定する手段を含み、前記一組の基本軌道形状は、搬送路に沿った所定の種類のアーム動作に対する制約条件の起こりうる全ての組み合わせを含んでおり、
前記装置は更に、
基本軌道形状の各々に付随する一組の条件を判断する手段を含み、基本軌道形状の各々に付随する前記一組の条件は、前記基本軌道形状が特定のアーム動作に対して使用できるか否かを判断し、
前記装置は更に、
前記一組の基本軌道形状の各基本軌道形状を複数のセグメントに分解する手段を含み、前記セグメントの各々は単一の制約条件で制約を受け、
前記装置は更に、
前記各基本軌道形状の複数のセグメントの各々に対して前記時間最適軌道の解を求める手段と、
所定時間内における前記時間最適軌道の解を合成して複数の時間最適軌道形状を形成する手段と、
前記一組の条件を判断する手段から得られる判断結果に基づいて前記アーム動作に使用できる1つの時間最適軌道形状を所定時間内における前記複数の時間最適軌道形状から選択することによって、前記搬送路に沿った時間最適アーム動作を生成する手段と、
を含むことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ロボットマニピュレータはシングルアームロボットを含み、前記搬送路は直線であり、前記制約条件は、最大速度、最大加速度、最大ジャーク及び最大ジャーク変化率を含むことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記ロボットマニピュレータはシングルアームロボットを含み、前記搬送路は円弧であり、前記制約条件は、最大速度、全加速度及び接線方向ジャークを含むことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記ロボットマニピュレータは、エンドエフェクタA及びエンドエフェクタBを備えているデュアルアームロボットを含み、前記搬送路は半径方向移動を含み、前記制約条件は、エンドエフェクタAの最大速度、最大加速度、最大ジャーク及び最大ジャーク変化率、エンドエフェクタBでの最大加速度を含むことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記ロボットマニピュレータは、エンドエフェクタA及びエンドエフェクタBを備えているデュアルアームロボットを含み、前記搬送路は半径方向移動を含み、前記制約条件は、エンドエフェクタAの最大ジャーク及び最大加速度と、エンドエフェクタBでの最大加速度とを含むことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記ロボットマニピュレータはデュアルアームロボットを含み、前記搬送路は回転移動を含み、前記制約条件は、最大速度、全加速度及び接線方向ジャークを含むことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記搬送路は直線及び円弧を含むことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記ロボットマニピュレータはエンドエフェクタを含み、前記制約条件は、前記エンドエフェクタの中心に与えられる最大速度、最大加速度、最大ジャーク及び最大ジャーク変化率を含むことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記ロボットマニピュレータはエンドエフェクタを備えており、前記搬送路に沿ったアーム動作の所定のカテゴリに対する制約条件の起こりうる全ての組み合わせをカバーする基本軌道形状のセットを予め設定する手段は、
前記ロボットマニピュレータが搬送路に沿って開始ポイントから最終ポイントまでの設定距離を移動するのに必要な時間を最小にする手段と、
エンドエフェクタと当該エンドエフェクタの上に支持される基板との間の保持力を越える加速度を回避する手段と、
を含むことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項10】
前記装置は、前記複数のセグメントを合成された経路に沿ったノンストップ合成軌道に信頼性を有しかつ効率良く合成するよう構成されており、前記セグメントの各々は独立した軌道成分を形成し、
前記装置は、
前記独立した軌道成分を所定期間毎に重畳する手段と、
前記重畳させた軌道成分を、合成された経路に沿ったノンストップ移動のための合成軌道に合成する手段と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項11】
前記独立した軌道成分は直交座標系のx、y軸方向成分によって示されることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記独立した軌道成分は直線及び円弧を含むことを特徴とする請求項10記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50a】
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【図50b】
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【図51a】
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【図51b】
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【図52a】
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【図52b】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【公開番号】特開2012−232410(P2012−232410A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−172529(P2012−172529)
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【分割の表示】特願2001−500199(P2001−500199)の分割
【原出願日】平成12年5月15日(2000.5.15)
【出願人】(398029692)ブルックス オートメーション インコーポレイテッド (81)
【Fターム(参考)】