説明

曲面周りの防草構造及び防草シート

【課題】 円柱体の周り又は湾曲した構造物の周りの雑草を防止する為の防草シートの提供。
【解決手段】 円柱体の外周面や湾曲した外側面に接する巻き付け部7と地面に接するツバ8を有し、該ツバ8は上ツバ8aと下ツバ8bの2重構造として巻き付け部7の下端から外方向へ延びてL型断面とし、そして上ツバ8a及び下ツバ8bにはスリット9a,9a・・・、9b,9b・・・を介して複数のツバ片13a,13a・・・、13b,13b・・・を設けると共に、上ツバに設けたスリットと下ツバに設けたスリットの位置を1/2ピッチだけズラせている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は円柱などの周りから雑草が生えないように構成した防草構造及び防草シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年ではあらゆる空き地を利用して草花のポット苗や苗木のポット苗を植え、環境緑化を図っている。その一方で植栽後の植物が種々の雑草に被圧される為に、除草対策として防草シートを利用し、雑草を抑止しながら目的の植物を成長させる植栽方法がいたるところで実用化されている。図6はこの防草シートを利用して植栽した場合であるが、地盤(チ)の表面には防草シート(リ)が敷設されてクギ(ヌ)、(ヌ)・・・が所々に打ち込まれて固定され、この防草シート(リ)には切り込み(ル)、(ル)・・・が形成されている。
【0003】
上記切り込み(ル)の形状はT字形、十字形、O形等と成っていて、この切り込み(ル)、(ル)・・・を押し広げて形成される開口から土を掘り上げて形成した穴に客土(オ)を入れ、その上にポット苗(ワ)を植えている。ポット苗(ワ)は切り込み(ル)の開口から防草シート(リ)上に出て成長することになる。個々で、防草シート(リ)は通気性があって雨水を通すことは出来るが、地面からの水分蒸発を抑制し、ポット苗(ワ)の生育には何ら支障はないが、遮光性があって雑草の生育を基本的に防止することが出来る。
【0004】
このように、ほぼ平坦な場所に生える雑草を防止することは可能であるが、地面から起立する柱周辺に生える雑草を防止することは容易でない。特に円筒形又は円柱形をした柱周りには上記防草シートを隙間なく敷設する場合でも、僅かに残った隙間から雑草が生えてしまう。具体的には電柱周りの雑草、道路脇に沿設されるガードの支柱周りの雑草が問題となる。
【0005】
防草シートに関しては従来から色々な技術が開発されて来ている。例えば、特開2009−138486号に係る「防草シート」は、遮光性を有し、耐候性、機械的特性、不透水性に優れ、さらに硬く鋭い雑草の芽の防草シートに対する貫通防止性に優れたものであり、(a)無機質粒子または無機質粒子を含有する合成樹脂を含む表面層、(b)改質アスファルト層、(c)基材層、(d)改質アスファルト層および(e)合成樹脂または無機質粒子を含有する合成樹脂を含む裏面層の少なくとも5層をこの順で積層している。
【0006】
特開2008−17749号に係る「防草シート」は、脂肪族ポリエステルを主たる成分として含んでいるため環境影響が低く、かつ防草シートとして使用するに好適な特性を備えた熱可塑性フィラメント不織布である。すなわち、熱可塑性フィラメント不織布からなる防草シートであって、脂肪族ポリエステルとポリアミドがブレンドされてなる熱可塑性フィラメントを含有している。
【0007】
このように、防草シート自体の構造に関しては色々なものが知られているが、これら防草シートを敷設しても円筒形又は円柱形周りに生える雑草を防止することは出来ない。図5は支柱(イ)と地面(ロ)との境界に防草シート(ハ)、(ニ)を敷設した具体例を示している。(a)は支柱表面(ホ)に防草シート(ハ)の縁(ヘ)を突き合わせた場合であり、しかし、実際には表面(ホ)と縁(ヘ)との間には僅かな隙間が残り、この隙間から雑草が生えてくる。そして、該支柱(イ)が角型断面であるならば、防草シート(ハ)の縁(ヘ)を比較的容易に突き合わせることは出来るが、円形断面の支柱(イ)の場合には縁(ヘ)を滑らかな円弧表面(ホ)に合わせて裁断することは容易でない。
【0008】
一方、図5(b)に示す防草シート(ニ)は縁から垂直に立ち上がった立ち上がり部(ト)を形成している。従って、該立ち上がり部(ト)は支柱(イ)の表面(ホ)に接して隙間は発生し難く、その為に雑草は生え難くなるが、該立ち上がり部(ト)を設ける場合、円形断面の支柱ともなれば該支柱表面(ホ)に合わせて製作することは困難である。
【特許文献1】特開2009−138486号に係る「防草シート」
【特許文献2】特開2008−17749号に係る「防草シート」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、防草シートは平坦な地面に敷設されて雑草を防止することは出来る。しかし、地面から円柱又は円筒形の支柱が起立している場合、従来の防草シート敷設するだけでは、支柱周りに隙間が出来るために、該隙間に生える雑草を防止することは出来ない。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、色々な外径の円柱でも対応可能とした曲面周りの雑草を防止する防草構造及び防草シートを提供する。又、対象は支柱周りに限定するものではなく、湾曲した構造物周りの雑草防止も対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る防草構造は円柱の周りに、又は湾曲した構造物の周りにシートを巻き付け、円柱表面又は構造物表面と地面の境界域を隙間なく被覆することが出来る構造としている。ところで、上記シートは細長い帯状を成しているが、円形支柱表面又は湾曲構造物表面に巻き付けた状態では、縦断面がL型に成るように巻き付き部とツバを有し、該巻き付き部は支柱の全外周面に接し、ツバは円柱周りの地面に接することが出来る。同じく、巻き付き部は湾曲構造物表面に接し、ツバは湾曲構造物周りの地面に接することが出来る。
【0011】
ところで、防草シートのツバには所定の間隔で複数のスリットが設けられ、しかも2枚のシート(上ツバと下ツバ)が重なり合った2重構造と成っている。そして、上記スリットの位置は上ツバと下ツバとで互いに違っている。すなわち、スリットの位置は1/2ピッチだけズレた位置に設けられている。防草シートが円形支柱又は湾曲した構造物に巻き付けられる場合、ツバに設けたスリットは開口することが出来る。すなわち、ツバを有しているが、該ツバにはスリットを設けることで円形支柱周り、又は湾曲構造物周りに取付けることが出来る。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る防草構造は防草シートを円形支柱又は湾曲した構造物の表面に巻き付けることで、地面との境界領域を隙間なく被覆することが出来る。すなわち、巻き付け部は円形支柱又は湾曲構造物の表面に接し、ツバは地面に接することが出来ために、地面との境界域を隙間なく被覆することが出来、雑草の発生が防止される。ここで、地面に接するツバは上ツバと下ツバの2重構造とし、上下ツバにはスリットが形成されることで円形支柱又は湾曲構造物に沿って敷設される。そして、上ツバと下ツバに形成されるスリットは1/2ピッチだけズレた位置に設けることで、スリットが開口して曲面に沿って敷設されても、地面が表面化することはない。その為に光は遮断され、雑草が生えることはない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】円柱体の外周面に防草シートを取付けた防草構造を示す実施例。
【図2】防草シートを構成する帯状シート。
【図3】本発明に係る防草シートの実施例。
【図4】円柱体の外周面に防草シートを巻き付けた部分拡大図。
【図5】従来の防草構造を示す具体例。
【図6】従来の防草シートを敷設してポット苗を植えた場合。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は円柱体の下端外周に防草シートを沿設した実施例を示している。鉄塔1が設置され、該鉄塔1の支柱2の下端がコンクリート製の円柱体3に埋着されて支持されている。鉄塔1には4本の支柱2,2・・・が設けられ、そして円柱体3は地下深く埋設され、各支柱2,2・・・は円柱体3,3・・・に支持されて強固に固定され、その為に鉄塔1は安定して起立することが出来る。
【0015】
同図の4は防草シートを表し、防草シート4は円柱体3の下端外周面5に巻き付いて取付けられている。円柱体3は一定曲率半径の外周面5を有し、上記防草シート4は外周面5と地面6に接した状態で取付けられている。ここで、防草シート4の取り付け方法は特に限定せず、例えば外周面5に接着剤を介して固着する場合、又は外周面5にピンを打ち込んで固定することも出来る。さらにはバンドで締付ける場合もある。
【0016】
上記防草シート4は巻き付け部7とツバ8を有し、巻き付け部7とツバ8は垂直を成していて、その縦断面はL型をしている。本発明の防草シート4は一定幅の帯状を成し、ほぼ長手方向に延びる中立軸にて2つ折りすると共にL型に折り曲げることで、上記巻き付け部7とツバ8に区分され、該巻き付け部7は円柱体3の外周面5に巻き付き、ツバ8は地面6に接することが出来る。
【0017】
図2は本発明に係る防草シート4を構成ずる帯状シート15を示す実施例である。この帯状シート15は一定幅を有した細長い帯状を成し、そして両側には複数のスリット9a,9a・・・,9b,9b・・・が等間隔Pで切込まれている。しかも、両側スリット9a,9bの位置は1/2ピッチズレて設けられており、各スリット9a,9a・・・、9b,9b・・・間にはツバ片10a,10a・・・、10b,10b・・・が形成されている。すなわち、ツバ8はスリット9,9・・・を切込むことで複数のツバ片10,10・・・と成っている。
【0018】
ところで、図2に示す帯状シート15は2つ折りされ、しかもスリット9a,9a・・・、9b,9b・・・が切込まれた先端位置11a,11bにて折り曲げられ、L型断面と成すことが出来る。図3はL型断面をした防草シート4を示しており、巻き付け部7とツバ8から成っている。巻き付け部7とツバ8は切込まれたスリット9a,9a・・・、9b,9b・・・の先端にて折り曲げられている為に、このL型断面の防草シート4は湾曲して円柱体3の外周面5に巻き付くことが出来る。
【0019】
ツバ8には複数のスリット9a,9a・・・、9b,9b・・・が切込まれていることで、これらスリット9a,9a・・・、9b,9b・・・は切込み口側が拡大し、二等辺三角形の隙間が形成される。しかし、ツバ8は2重構造をしていると共に、スリット9a,9a・・・とスリット9b,9b・・・の位置は1/2ピッチズレていることで、スリット9a,9a・・・、9b,9b・・・の開口によってツバ8が貫通することはない。
【0020】
図4は円柱体3に巻き付いて防草シート4が湾曲した場合の部分拡大図を示している。該ツバ8は上ツバ8aと下ツバ8bが重なり合った2重構造であり、そして、間に二等辺三角形の隙間12,12・・・を介在して複数のツバ片13a,13a・・・及びツバ片13b,13b・・・が巻き付け部7の下端から外方向へ延びている。しかも、ツバ片13a,13a・・・とツバ片13b,13b・・・は互いに重なり合っていることで隙間12,12・・・は塞がれる。
【0021】
ところで、L型断面をした防草シート4は前記図2に示す帯状シート15の中立軸O−Oを中心に2つ折りし、そして、該中立軸O−Oの両側に位置して各スリット9a,9a・・・、及びスリット9b,9b・・・の先端位置11a,11bにて折り曲げられて図3のように構成される。
【0022】
ところで、図1に示すように防草シート4は円柱体3の外周面5に取付けられ、地面6と円柱体3の境界域を被覆することで隙間がなくなり、この境界域から雑草が生えることは出来なくなる。そして、防草シート4のツバ8は円柱体3の外周域地面を被覆し、この外周域より外側は従来の防草シートが敷設される。図1の円柱体3は鉄塔1を支えることが出来るように大きな外径を有しているが、道路脇に設置されるガードレールの支柱周りの防草対策にも本発明の防草シート4を使用することが出来る。
【0023】
ガードレールの支柱はその外径が鉄塔1を支える円柱体3に比較して小さいが、前記図2に示す帯状シートを適当な長さに切断して使うことが出来る。すなわち、支柱の外周を覆うことが出来る長さに切断し、これを折り曲げて取付けることが可能と成る。又、被覆する対象物は円柱に限らず、滑らかな側面を有す構造物であれば適用出来、凸状側面のみならず、凹状側面を有す構造物であっても取付け出来る。
【0024】
一方、図2に示す帯状シート15を折り曲げてL型断面の防草シート4を作る場合には巻き付け部7も2重構造となるが、巻き付け部7と下ツバ8bを有す帯状シートに、上ツバ8aを下ツバ8bに重ねて縫い付けることも可能である。そして、本発明の防草シート4の材質は特に限定しないが、例えばポリエステルを使用することが出来、その耐久性は高くなる。又、長繊維から成る糸を用いた網組織とする場合、雑草が貫通しないように高密度としなくてはならない。
【符号の説明】
【0025】
1 鉄塔
2 支柱
3 円柱体
4 防草シート
5 外周面
6 地面
7 巻き付け部
8 ツバ
9 スリット
10 ツバ片
11 先端位置
12 隙間
13 ツバ片
15 帯状シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱体の周り又は湾曲した構造物の周りの雑草を防止する為の防草シートにおいて、上記円柱体の外周面や湾曲した外側面に接する巻き付け部と地面に接するツバを有し、該ツバは互いに重なり合う上ツバと下ツバの2重構造として巻き付け部の下端から外方向へ延びてL型断面とし、そして上ツバ及び下ツバにはスリットを介して複数のツバ片を設けると共に、上ツバに設けたスリットと下ツバに設けたスリットの位置を1/2ピッチだけズラせたことを特徴とする防草シート。
【請求項2】
一体幅の帯状シートの両側に複数のスリットを切込んで形成すると共に、各側でのスリットの位置を1/2ピッチズラし、上記帯状シートの中立軸にて2つ折りし、そしてスリット先端位置にて折り曲げてL型断面とした請求項1記載の防草シート。
【請求項3】
円柱体の周り又は湾曲した構造物の周りの雑草を防止する防草構造において、上記円柱体外周面又は湾曲した構造物の側面には地面にも接するようにL型断面の防草シートを取付け、この防草シートは、上記円柱体の外周面や湾曲した外側面に接する巻き付け部と地面に接するツバを有し、該ツバは互いに重なり合う上ツバと下ツバの2重構造として巻き付け部の下端から外方向へ延びてL型断面とし、そして上ツバ及び下ツバにはスリットを介して複数のツバ片を設けると共に、上ツバに設けたスリットと下ツバに設けたスリットの位置を1/2ピッチだけズラせたもので、上記円柱体の外周面又は湾曲した構造物の外側面に巻き付け部が巻き付き、上下ツバの各ツバ片がスリットを介して湾曲した外周面又は外側面に沿って配列したことを特徴とする曲面周りの防草構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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