説明

更年期ステージ判定具

【課題】 尿や血液などの体液を被験試料とすることで、更年期であるか否か、または更年期である場合にどの段階にあるのかどうかを知ることができる、携帯可能な更年期ステージ判定具を提供する。
【解決手段】毛細管現象によって被験試料を移送できる吸液片を備え、当該吸液片が、
(4a)被験試料を吸収採取する試料採取部、
(4b)標識-抗卵胞刺激ホルモン(FSH)抗体を担持したFSH反応部、及び標識-抗黄体形成ホルモン(LH)抗体を担持したLH反応部、
(4c-1) 非標識-抗FSH抗体を固定したFSHテスト結果表示部、及び非標識-抗「抗FSH抗体」抗体を固定した1以上のFSHコントロール表示部を、各々間隔をおいて備えたFSH判定部、
(4c-2) 非標識-抗LH抗体を固定したLH テスト結果表示部、及び非標識-抗「抗LH抗体」抗体を固定した1以上のLH コントロール表示部を、各々間隔をおいて備えたLH判定部、並びに、
(4d)移動してきた被験試料の残液を吸収する液吸収部
を備えることを特徴とする、更年期ステージ判定具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は更年期ステージ判定具に関する。より詳細には、本発明は、尿や血液といった体液を被験試料として、女性の更年期のステージを簡便に判定することができる携帯可能な更年期ステージ判定具に関する。当該更年期ステージ判定具によれば、女性が病院に行くことなく自ら必要に応じて、更年期であるか否か、または更年期のどの段階にあるかどうかを、簡便に判定することができる。
【背景技術】
【0002】
女性のからだの一生は、卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲン=卵胞ホルモン)の量から、「小児期」、「思春期」、「成熟期」、「更年期」及び「老年期」の5つの時期に分けることができる。「更年期」は、卵巣の内分泌機能が徐々に衰退し排卵の回数が徐々に減少する40歳前後から始まり、それ以降、月経が徐々に停止して、機能が老化して「老年期」へと移行していく。一般に「更年期」は閉経前後の数年〜10年ほどの期間であり、国際的に公認されている更年期の年齢は41〜60歳である。
【0003】
更年期には、卵巣の内分泌機能が衰退し消えていくことから、内分泌の失調と自律神経の乱れが生じ、動悸やほてり、頭痛や吐き気、知覚過敏、抑鬱や気力減退、いらいらといった心身の不調(不定愁訴)が生じる。かかる不調は「更年期障害」と呼ばれ、重症の場合はホルモン療法などの治療が必要であるが、通常は日常生活の中で克服することができる人もいる。例えば、更年期における精神面での不安定さは、更年期に生じる不定愁訴が更年期における正常な生理機能に基づくものであって病気ではないことを認識することによって解消することが可能である。このため、30代後半以降の女性が、更年期であるか否か、または更年期のどの段階であるかどうかを自ら知ることができれば、更年期であることの自覚のもとでホルモンバランスに合わせて生活リズム等を調整することができ、その結果、長期にわたる更年期を上手に快適に過ごすことが可能となる。
【0004】
こうした点から、更年期であるか否かを簡単に検査する方法・器具として、女性が自分で試験紙に尿をかけて試験紙に現れる結果を見て自己判断する方法(例えば、特許文献1)が提案されており、米国では、家庭で使用できるテストキットとして「Estroven(商標)−Menopause Monitor−、Amerifit Nutorition, Inc.」が販売されている(http://www.estrovenmonitor.com)。しかしながら、更年期の各ステージを判定する方法及び器具については知られていない。
【特許文献1】米国特許出願(US 2004/0063219 A1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、被験者自らが自分の尿や血液などの体液を被験試料とすることで、更年期であるか否か、また更年期のどの段階にあるのかどうかを知ることができる、携帯可能な更年期ステージ判定具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題の解決にあたり、更年期におけるホルモンの変動に注目して種々検討していたところ、血液や尿中に分泌される、卵胞刺激ホルモン(follicle stimulating hormone:本発明では単に「FSH」ともいう)と黄体形成ホルモン(luteinizing hormone:本発明では単に「LH」ともいう)が更年期の各ステージにおいて種々異なることを知見した。本発明者らは、この知見から、これらホルモンの分泌量の変動を判別して検出、表示することのできる判定部を備えた測定具によれば、上記目的を達成できるものと着想し、更に検討を重ねた結果、下記の2タイプの更年期ステージ判定具を完成するに至った。
【0007】
1つは、被験試料に含まれるFSHまたはLHのいずれか少なくとも1方の量を検出して更年期ステージを判定する器具であって、判定部にテスト結果表示部に加えて少なくとも2つのコントロール表示部を有することを特徴とする更年期ステージ判定具(タイプ1)である。もう一つは、反応部にFSH及びLHに対する少なくとも2つの反応部、判定部にFSH及びLHに対する少なくとも2つの判定部を含み、被験試料に含まれるFSHとLHの2つの量を同時に検出して更年期ステージを判定する、更年期ステージ判定具(タイプ2)である。
<タイプ1>
タイプ1の更年期ステージ判定具は具体的には、下記の形態を有する:
1−1.毛細管現象によって被験試料を移送できる材料で構成された吸液片を備えた更年期ステージ判定具であって、当該吸液片が
(1a)被験試料を吸収採取する試料採取部、
(1b)卵胞刺激ホルモン(FSH)と特異的に反応する標識-抗FSH抗体を担持したFSH反応部、
(1c)下記に示す、FSHテスト結果表示部、及び抗体固定量が異なる少なくとも2つのFSHコントロール表示部を、各々間隔をおいて備えたFSH判定部、
(1) 卵胞刺激ホルモン(FSH)と特異的に反応する非標識-抗FSH抗体を固定したFSHテスト結果表示部、
(2) 抗FSH抗体と特異的に反応する非標識-抗「抗FSH抗体」抗体を固定したFSHコントロール表示部、及び
(1d)上記試料採取部、FSH反応部及びFSH判定部を移動してきた被験試料の残液を吸収する液吸収部
を備えることを特徴とする、更年期ステージ判定具。
【0008】
上記の如く、卵胞刺激ホルモン(FSH)を被験成分とし、判定部に異なる濃度の非標識-抗「抗FSH抗体」抗体を固定した少なくとも2つのFSHコントロール表示部を備えた更年期ステージ判定具によれば、被験者について少なくとも3つ(A期、B〜D期、及びE期)のどの更年期ステージにあるかを判別して検出することができる。なお、本発明でいう更年期ステージの各ステージの定義は、後述する。
【0009】
1−2.毛細管現象によって被験試料を移送できる材料で構成された吸液片を備えた更年期ステージ判定具であって、当該吸液片が
(2a)被験試料を吸収採取する試料採取部、
(2b)黄体形成ホルモン(LH)と特異的に反応する標識-抗LH抗体を担持したLH反応部、
(2c)下記に示す、LHテスト結果表示部、及び抗体固定量が異なる少なくとも2つのLHコントロール表示部を、各々間隔をおいて備えたLH判定部、
(1) 黄体形成ホルモン(LH)と特異的に反応する非標識-抗LH抗体を固定したLHテスト結果表示部、
(2) 抗LH抗体と特異的に反応する非標識-抗「抗LH抗体」抗体を固定したLHコントロール表示部、及び
(2d)上記試料採取部、LH反応部及びLH判定部を移動してきた被験試料の残液を吸収する液吸収部
を備えることを特徴とする、更年期ステージ判定具。
【0010】
上記の如く、黄体形成ホルモン(LH)を被験成分とし、判定部に異なる濃度の非標識-抗「抗LH抗体」抗体を固定した少なくとも2つのLHコントロール表示部を備えた更年期ステージ判定具によれば、被験者について少なくとも3つ(A〜B期、C〜D期、及びE期)のどの更年期ステージにあるかを判別して検出することができる。
【0011】
また、タイプ1の更年期ステージ判定具には、下記に示す、被験試料中のFSH及びLHの両方を同時に検出できる更年期ステージ判定具も含まれる(これは同時に後述するタイプ2の更年期ステージ判定具とも言える)。
【0012】
1−3.毛細管現象によって被験試料を移送できる材料で構成された吸液片を備えた更年期ステージ判定具であって、当該吸液片が、
(3a)被験試料を吸収採取する試料採取部、
(3b) 卵胞刺激ホルモン(FSH)と特異的に反応する標識-抗FSH抗体を担持したFSH反応部、及び黄体形成ホルモン(LH)と特異的に反応する標識-抗LH抗体を担持したLH反応部を含む、反応部、
(3c)下記のFSH判定部及びLH判定部を含む判定部:
(3c-1) FSH判定部:下記のFSHテスト結果表示部、及び抗体固定量が異なる少なくとも2つのFSHコントロール表示部を各々間隔をおいて備える:
(i) 卵胞刺激ホルモン(FSH)と特異的に反応する非標識-抗FSH抗体を固定したFSHテスト結果表示部、
(ii)抗FSH抗体と特異的に反応する非標識-抗「抗FSH抗体」抗体を固定したFSHコントロール表示部、及び
(3c-2) LH判定部:下記のLHテスト結果表示部、及び抗体固定量が異なる少なくとも2つのLH コントロール表示部を各々間隔をおいて備える:
(i) 黄体形成ホルモン(LH)と特異的に反応する非標識-抗LH 抗体を固定したLH テスト結果表示部、
(ii)抗LH 抗体と特異的に反応する非標識-抗「抗LH抗体」抗体を固定したLH コントロール表示部、
並びに
(3d) 上記試料採取部、反応部及び判定部を移動してきた被験試料の残液を吸収する液吸収部
を備えることを特徴とする、更年期ステージ判定具。
【0013】
上記の如く卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の2つを被験成分とし、且つ被験成分FSHに対する判定部に、FSHテスト結果表示部に加えて異なる濃度の非標識-抗「抗FSH抗体」抗体を固定した少なくとも2つのFSHコントロール表示部を、また、被験成分LHに対する判定部に、LHテスト結果表示部に加えて異なる濃度の非標識-抗「抗LH抗体」抗体を固定した少なくとも2つのLHコントロール表示部を、それぞれ備えた更年期ステージ判定具によれば、被験者について少なくとも4つ(A期、B期、C〜D期、及びE期)のどの更年期ステージにあるかを判別して検出することができる。
【0014】
<タイプ2>
タイプ2の更年期ステージ判定具は具体的には、下記の形態を有する:
2−1.毛細管現象によって被験試料を移送できる材料で構成された吸液片を備えた更年期ステージ判定具であって、当該吸液片が
(4a)被験試料を吸収採取する試料採取部、
(4b)卵胞刺激ホルモン(FSH)と特異的に反応する標識-抗FSH抗体を担持したFSH反応部、及び黄体形成ホルモン(LH)と特異的に反応する標識-抗LH抗体を担持したLH反応部、
(4c-1)下記に示すFSHテスト結果表示部及びFSHコントロール表示部を、各々間隔をおいて備えたFSH判定部:
(1-1) 卵胞刺激ホルモン(FSH)と特異的に反応する非標識-抗FSH抗体を固定したFSHテスト結果表示部、
(1-2) 抗FSH抗体と特異的に反応する非標識-抗「抗FSH抗体」抗体を固定したFSHコントロール表示部、及び
(4c-2)下記に示すLH テスト結果表示部及びLH コントロール表示部を、各々間隔をおいて備えたLH判定部:
(2-1) 黄体形成ホルモン(LH)と特異的に反応する非標識-抗LH抗体を固定したLH テスト結果表示部、
(2-2) 抗LH 抗体と特異的に反応する非標識-抗「抗LH抗体」抗体を固定したLH コントロール表示部、及び
(4d)上記試料採取部、FSH反応部、LH反応部、FSH判定部及びLH判定部を移動してきた被験試料の残液を吸収する液吸収部
を備えることを特徴とする、更年期ステージ判定具。
【0015】
上記の如く、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の2つを被験成分とし、両者を同時に検出できるように設計された更年期ステージ判定具によれば、被験者について少なくとも3つ(A期、B期、及びC〜E期)のどの更年期ステージにあるかを判別して検出することができる。
【0016】
また、上記タイプ2の更年期ステージ判定具には、下記に示すように、FSH判定部にFSHテスト結果表示部に加えて、濃度の異なる非標識-抗「抗FSH抗体」抗体を固定した少なくとも2つのFSHコントロール表示部を、また、LH判定部にLHテスト結果表示部に加えて、濃度の異なる非標識-抗「抗LH抗体」抗体を固定した少なくとも2つのLHコントロール表示部を備えた更年期ステージ判定具も含まれる(これは同時に、前述するタイプ1の更年期ステージ判定具とも言える)。
【0017】
2−2.毛細管現象によって被験試料を移送できる材料で構成された吸液片を備えた更年期ステージ判定具であって、当該吸液片が
(5a)被験試料を吸収採取する試料採取部、
(5b)卵胞刺激ホルモン(FSH)と特異的に反応する標識-抗FSH抗体を担持したFSH反応部、及び黄体形成ホルモン(LH)と特異的に反応する標識-抗LH抗体を担持したLH反応部、
(5c-1)下記に示す、FSHテスト結果表示部、及び抗体固定量が異なる少なくとも2つのFSHコントロール表示部を、各々間隔をおいて備えたFSH判定部:
(1-1) 卵胞刺激ホルモン(FSH)と特異的に反応する非標識-抗FSH抗体を固定したFSHテスト結果表示部、
(1-2) 抗FSH抗体と特異的に反応する非標識-抗「抗FSH抗体」抗体を固定したFSHコントロール表示部、及び
(5c-2)下記に示す、LH テスト結果表示部、及び抗体固定量の異なる少なくとも2つのLH コントロール表示部を、各々間隔をおいて備えたLH判定部:
(2-1) 黄体形成ホルモン(LH)と特異的に反応する非標識-抗LH抗体を固定したLH テスト結果表示部、
(2-2)抗LH 抗体と特異的に反応する非標識-抗「抗LH抗体」抗体を固定したLH コントロール表示部、及び
(5d)上記試料採取部、FSH反応部、LH反応部、FSH判定部及びLH判定部を移動してきた被験試料の残液を吸収する液吸収部
を備えることを特徴とする、更年期ステージ判定具。
【0018】
上記の如く、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の2つを被験成分とし、且つ各判定部に、異なる濃度の非標識-抗「抗FSH抗体」抗体を固定した少なくとも2つのFSHコントロール表示部、及び異なる濃度の非標識-抗「抗LH抗体」抗体を固定した少なくとも2つのLHコントロール表示部を備えた更年期ステージ判定具によれば、被験者について少なくとも4つ(A期、B期、C〜D期、及びE期)のどの更年期ステージにあるかを判別して検出することができる。
【0019】
なお、本発明がいう「更年期ステージ」とは、カナダ国の内分泌学者であるPrior JCが提唱する閉経期(perimenopause)のステージを意味する(Prior JC, Endo Rev., 19, 397-428, (1998))。Prior JCは、上記文献の中で、閉経期(perimenopause)を「内分泌学的、生物学的、または臨床上の閉経の兆候が見られる閉経前の期間と閉経後の少なくとも1年間を含む期間」として定義し、下記表1に示すA期からE期の5ステージに分類している。
【0020】
【表1】

【0021】
本発明の「更年期ステージ」は、このPrior JCが提唱する定義に従って、更年期の5ステージ(A期、B期、C期、D期及びE期)を意味する。
【0022】
なお、日本産婦人科学会では、「更年期」を「生殖期(性成熟期)と非生殖期(老年期)の間の移行期をいい、卵巣機能が減退し始め、消失するまでの時期」と定義し、一般的には閉経の前後5年間をさすとしている。ここでは、Prior JCでいうE期(閉経後の少なくとも1年間)を閉経後5年間とするものの、両者は本質的に相違するものではない。
【0023】
本発明の更年期ステージ判定具(タイプ1、2)は、被験者の尿や血液などの生体試料を接触させることによって、被験者自らが、上記更年期のどのステージ(A期、B期、C期、D期及びE期)にあるかが、目視によって容易に判定できるように構成されてなる。
【0024】
本発明の更年期ステージ判定具は、毛細管作用またはクロマトグラフィー作用(本発明ではこれらを総して「毛細管現象」という)によって、被験試料を移送できる材料からなる吸液片を備える。該吸液片は、シート状の細片(以下、「シート状細片」という)とすることができ、該シート状細片は、1枚のシートにより、或いは、複数枚のシートを重ね合わせるかまたは連結して、形成することができる。或いは、吸液片は、細長い棒状の細片とする等、液の吸収及び毛細管現象による移送が可能な種々の形態とすることができる。なお、本発明の更年期ステージ判定具は、さらに上記の吸液片を支持する支持体を備えるものであってもよい。
【0025】
なお、この吸液片のための材料としては、溶媒(水、尿その他の体液等)、被験成分(卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH))、被験成分に対する抗体(例えば、標識された抗FSH抗体、標識された抗LH 抗体)、及び被験成分を含む複合体(例えば、標識された抗FSH抗体とFSHとの複合体、標識された抗LH抗体とLHとの複合体)が浸透可能な多孔構造又は毛細管構造を有し、被験成分を含む被験試料を適用(採取)した場合に、被験試料が、途中で上記抗体や複合体を含みながらも、多孔構造又は毛細管構造内を移動(展開)し得る材料であればよく特に制限されない。例えば、各種炉紙、クロマトグラフィー用紙などのシート、各種のフェルト、織布や不織布などの布、ガラス繊維などが挙げられる。これらのうちより好ましくは有機多孔質体である。なお、有機多孔質体の例としては、セルロースなどの天然繊維、セルロースアセテートなどの半合成繊維やニトロセルロースなどのセルロース誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステルなどの合成繊維などで形成された繊維集合体、多孔質ポリプロピレン、多孔質ポリスチレン、多孔質ポリメタクリル酸メチル、多孔質ナイロン、多孔質ポリスルフォン、多孔質フッ素樹脂、親水性基が導入されたフッ化ポリビニリデン等の多孔質合成樹脂などを挙げることができる。好ましくはセルロースなどの天然繊維、またはセルロースアセテートなどの半合成繊維やニトロセルロースなどのセルロース誘導体である。
【0026】
吸液片の大きさは、特に制限されないが、携帯性という観点から、幅(短辺の長さ)が2〜30mm程度、好ましくは5〜15mm程度の範囲にあり、長さ(長辺の長さ)が5〜200mm、好ましくは10〜150mmの範囲にある大きさであることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係る更年期ステージ判定具を、タイプ別(タイプ1、2)に添付図面を参照しつつ説明する。
【0028】
(1)タイプ1:更年期ステージ判定具
図1にタイプ1の更年期ステージ判定具の一態様を示す。図1は、タイプ1の更年期ステージ判定具(以下、単に「更年期ステージ判定具」ともいう)を斜め上からみた図である。以下、図1を利用して更年期ステージ判定具を説明する。
【0029】
更年期ステージ判定具において、吸液片は、被験試料を採取する試料採取部(A)、反応部(B)、判定部(C)、並びに上記試料採取部、反応部、及び判定部を移動してきた被験試料の残液を吸収する液吸収部(D)を備える。この例では、吸液片は、複数のシートにより形成されたシート状細片とされているが、シート状細片は同一材料からなる一枚のシートからなるものであってもよいし、また同一または異なる材質からなる複数枚のシートで全体として一つのシートを形成してなるものであってもよい。なお、シート全体が複数枚のシートからなるものであってもよいし、部分的に複数枚のシートから形成される部分を有するものであってもよい。
【0030】
図示の例では、支持体10の上に、シート状細片20が接着されている。このシート状細片20は、長手方向の一端側から他端側に順に、試料採取部(A)を形成するシート21、判定部(C)を形成するシート22、液吸収部(D)を形成するシート23を備えており、シート21及び23の端部が、シート22の端部と重なることで、液の移動を可能にしている。また、シート21におけるシート22に近い部分の下には、反応部(B)を形成するシート24が接着されている。
【0031】
試料採取部(A)は、測定対象とする被験試料を吸収採取する部分(被験試料供給部)である。被験試料としては、本発明が測定対象とする被験成分〔卵胞刺激ホルモン(FSH)または黄体形成ホルモン(LH)のいずれか一方、好ましくは両方〕を含む体液であれば特に制限されず、尿、血液(血清、血漿)、汗、唾液等を挙げることができる。取得の容易性から好ましくは尿である。当該試料採取部(A)は、図1に例示するように、基本的にシート状細片の端部(始端部)に位置する。このため、容器にいれた被験試料に、試料採取部が位置するシート状細片の端部を浸けて被験試料を採取することも可能である。或いは、被験試料が尿である場合は、排尿時に尿を直接試料採取部に接触させて採取することもできる。
【0032】
試料採取部(A)は、シート状細片に採用される材料の中でも、被験試料(尿などの体液)を速やかに吸収できるように親水性且つ吸水性の材料から構成されることが好ましい。かかる材料としては、濾紙、各種の繊維〔綿、パルプ、麻、絹、羊毛、及び亜麻等の天然繊維;レーヨン、ポリノジック、キュプラ、及びリヨセル等の再生繊維;アセテートなどの半合成繊維;ポリアミド(ナイロン)、ビニロン(ポリビニルアルコール)、ポリエステル、アクリル(ポリアクリロニトリルなど)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、及びポリウレタン等の合成繊維;ガラス繊維〕からなるスポンジ、フェルト、不織布、織布、漉紙などを例示することができる。好ましくはポリエステル、ポリプロピレン、レーヨン、ガラス繊維からなるスポンジ、不織布、織布、漉紙などを挙げることができる。
【0033】
反応部(B)は、前述のように試料採取部(A)の終端部に、当該試料採取部(A)と一部を重ねたシート24に形成されている。当該反応部(B)は、測定する対象である被験成分(FSH、LH)と特異的に反応し結合する抗体を脱離可能な状態で含む。
【0034】
具体的には、卵胞刺激ホルモン(FSH)を被験成分(検出対象)とする更年期ステージ判定具(以下、これを単に「更年期ステージ判定具(FSH)」と称する。)は、シート24に、FSHと抗原−抗体反応により特異的に結合する抗FSH抗体を脱離可能な状態で含む。また黄体形成ホルモン(LH) を被験成分(検出対象)とする更年期ステージ判定具(以下、これを単に「更年期ステージ判定具(LH)」と称する。)は、シート24に、LHと抗原−抗体反応により特異的に結合する抗LH抗体を脱離可能な状態で含む。
【0035】
ここで抗FSH抗体は、FSHと特異的に結合し、他の蛋白質と交差性のないものであることが望ましい。かかる抗FSH抗体は、抗ヒト卵胞刺激ホルモン抗体(マウス)等として、例えばBiogenesis LTD.などから商業的に入手可能である。抗LH抗体もまた、LHと特異的に結合し、他の蛋白質と交差性のないものであることが望ましい。かかる抗LH抗体もまた、抗ヒト黄体形成ホルモン抗体(マウス)等として、例えばBiogenesis LTD.などから商業的に入手可能である。
【0036】
なお、これらの抗体(抗FSH抗体、抗LH抗体)は、任意の標識剤で標識された状態で使用される。ここで使用される標識剤としては、金や銀、或いはセレンのような金属又は無機粒子;フルオレセインやローダミンのような蛍光標識剤;赤血球、ラテックス粒子、着色又は有色ラテックス粒子のような色素標識剤;βーガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼのような酵素標識剤;或いはそれらの混合体を挙げることができる。好ましくは、金からなる無機粒子である。標識剤での標識方法は周知であり、使用する標識剤の種類に応じて定法に従って行うことができる。
【0037】
反応部(B)は、シート状細片に採用される材料の中でも、標識-抗FSH抗体または標識-抗LH抗体を脱離可能な状態で含み、試料採取部(A)から移動してきた被験試料中の被験成分(FSHまたはLH)と反応して形成される抗原-抗体複合体(FSHと標識-抗FSH抗体との複合体、LHと標識-抗LH抗体との複合体)を、被験試料の判定部(C)への移動に伴って、図中、矢印pで示す方向に移動させることができる性質を備えた、親水性且つ吸水性の材料から構成されることが好ましい。
【0038】
かかる材料としては、濾紙、各種の繊維〔綿、パルプ、麻、絹、羊毛、及び亜麻等の天然繊維;レーヨン、ポリノジック、キュプラ、及びリヨセル等の再生繊維;アセテートなどの半合成繊維;ポリアミド(ナイロン)、ビニロン(ポリビニルアルコール)、ポリエステル、アクリル(ポリアクリロニトリルなど)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、及びポリウレタン等の合成繊維;ガラス繊維〕からなるスポンジ、フェルト、不織布、織布、漉紙などを例示することができる。好ましくはポリエステル、ポリプロピレン、レーヨン、ガラス繊維からなるスポンジ、不織布、織布、漉紙などを挙げることができる。
【0039】
なお、反応部(B)に、標識-抗FSH抗体または標識-抗LH抗体を脱離可能な状態で担持させる方法としては、制限されないが、標識-抗FSH抗体または標識-抗LH抗体を含む溶液を反応部(B)に含浸または付着させる方法を例示することができる。また、反応部(B)には、被験試料中に含まれる被験成分(FSHまたはLH)を抗体に漏れなく結合させるために、上記の標識-抗FSH抗体または標識-抗LH抗体を過量に担持させておくことが好ましい。
【0040】
判定部(C)は、上記試料採取部(A)から反応部(B)を通って移動してきた被験試料をさらに液吸収部(D)まで移送する部分であって、その移送領域上に、移送する被験試料中に含まれる特定成分を捕捉して、その捕捉結果を表示する部分〔テスト結果表示部(C0)〕を含む。このテスト結果表示部(C0)に示される結果に基づいて、更年期ステージの判別が可能となることから、当該表示部(C0)を含む領域を「判定部(C)」と称する。
【0041】
本発明の更年期ステージ判定具は、かかる判定部(C)において、テスト結果表示部(C0)に加えて、抗体固定量の異なる少なくとも2つのコントロール表示部(C1)及び(C2)を備えることを特徴とする。なお、かかるテスト結果表示部(C0)、及び少なくとも2つのコントロール表示部(C1)及び(C2)は、それぞれ順次間隔をおいて配置される。
【0042】
テスト結果表示部(C0)には、被験成分(FSH、LH)と特異的に反応する非標識の抗体〔更年期ステージ判定具(FSH):非標識の抗FSH抗体、更年期ステージ判定具(LH):非標識の抗LH抗体〕が過量に固定されている。このため、上記反応部(B)での抗原−抗体反応によって標識-抗体と結合した被験成分が、このテスト結果表示部(C0)に捕捉され、その捕捉量に応じた強さで、標識剤に起因する発色を呈する。具体的には、更年期ステージ判定具(FSH)については、その反応部(B)での抗原−抗体反応によって標識-抗FSH抗体と結合したFSH(標識-抗FSH抗体とFSHとの複合体)が、非標識-抗FSH抗体を固定したテスト結果表示部(C0)に捕捉され、その捕捉量に応じた強さで、標識剤に起因する発色を呈する。また更年期ステージ判定具(LH)については、その反応部での抗原−抗体反応によって標識-抗LH抗体と結合したLH(標識-抗LH抗体とLHとの複合体)が、非標識-抗LH抗体を固定したテスト結果表示部(C0)に捕捉され、その捕捉量に応じた強さで、標識剤に起因する発色を呈する。
【0043】
テスト結果表示部(C0)に固定する抗体の量は、制限されないが、例えば血液を被験試料とする「更年期ステージ判定具(1)(FSH)」の場合、そのテスト結果表示部に固定する非標識-抗FSH抗体の量としては、例えば血液中に存在する200mIU/mL以上のFSHと結合することのできる量を挙げることができる。また血液を被験試料とする「更年期ステージ判定具(1)(LH)」の場合、そのテスト結果表示部に固定する非標識-抗LH抗体の量としては、例えば例えば血液中に存在する200mIU/mL以上のLHと結合することのできる量を挙げることができる。なお、尿を被験試料とする場合、上記各値の約2〜10%を目やすとして設定することができる。
【0044】
コントロール表示部(C1)及び(C2)には、上記反応部(B)に含有させた標識-抗体と特異的に反応する非標識-抗体(第二抗体)が所定量、固定されている。本発明の更年期ステージ判定具は判定部(C)領域の少なくとも2箇所に上記のコントロール表示部を有する。より具体的には、被験試料の移動方向(図中、pの方向)に、テスト結果表示部(C0)と間隔をおいて、第一番目のコントロール表示部(C1)、次いで同様に間隔をおいて、第二番目のコントロール表示部(C2)、・・・・及び第n番目のコントロール表示部(Cn)の順で配置される。各コントロール表示部には、被験試料中に含まれる標識-抗体と特異的に反応する非標識-抗体(第二抗体)が、各々異なる量で固定されている。制限はされないが、第一番目のコントロール表示部(C1)には低濃度の第二抗体が固定化され、第二番目、・・・、及び第n番目となるに従って高濃度の第二抗体が固定化されることが好ましい。
【0045】
上記各コントロール表示部には、反応部から脱離して被験試料中に放出された標識-抗体が捕捉され、各コントロール表示部に固定された第二抗体の量に応じた強さで、標識-抗体の標識剤に起因する発色を呈する。
【0046】
具体的には、更年期ステージ判定具(FSH)の各コントロール表示部には、標識-抗FSH抗体と特異的に反応する非標識の抗「抗FSH抗体」抗体(第二抗体)が所定量固定されており、更年期ステージ判定具(LH)の各コントロール表示部には、標識-抗LH抗体と特異的に反応する非標識の抗「抗LH抗体」抗体(第二抗体)が所定量固定されている。
【0047】
ここで抗「抗FSH抗体」抗体は、抗FSH抗体と特異的に結合し、他の蛋白質と交差性のないものであることが望ましい。かかる抗「抗FSH抗体」抗体は、例えば抗FSH抗体(例えば、Biogenesis LTD.から入手)を材料として定法に従って調製することができる。また抗「抗LH抗体」抗体も、抗LH抗体と特異的に結合し、他の蛋白質と交差性のないものであることが望ましい。かかる抗「抗LH抗体」抗体は、例えば抗LH抗体(例えば、Biogenesis LTD.から入手)を材料として定法に従って調製することができる。
【0048】
例えば、血液を被験試料とする「更年期ステージ判定具1(FSH)」の場合、コントロール表示部(C1)として、被験試料中の濃度が0 mIU/mL〜50 mIU/mL、好ましくは15mIU/mL〜30mIU/mLの範囲にあるFSHと結合する量の抗FSH抗体を、定量的に検出できるように抗「抗FSH抗体」抗体(第二抗体)を固定したコントロール表示部(C1)と、被験試料中の濃度が25 mIU/mL〜200 mIU/mL、好ましくは40 mIU/mL〜100 mIU/mLの範囲にあるFSHと結合する量の抗FSH抗体を、定量的に検出できるように抗「抗FSH抗体」抗体(第二抗体)を固定したコントロール表示部(C2)を少なくとも含むことが好ましい。
【0049】
また例えば、血液を被験試料とする「更年期ステージ判定具1(LH)」の場合、コントロール表示部(C1)として、被験試料中の濃度が0 mIU/mL〜30 mIU/mL、好ましくは5mIU/mL〜20mIU/mLの範囲にあるLH と結合する量の抗LH 抗体を、定量的に検出できるように抗「抗LH 抗体」抗体(第二抗体)を固定したコントロール表示部(C1)と、被験試料中の濃度が15 mIU/mL〜200 mIU/mL、好ましくは20 mIU/mL〜100 mIU/mLの範囲にあるLHと結合する量の抗LH抗体を、定量的に検出できるように抗「抗LH抗体」抗体(第二抗体)を固定したコントロール表示部(C2)を少なくとも含むことが好ましい。
【0050】
更年期ステージの判別は、判定部(C)における、上記少なくとも2つのコントロール表示部(C1)及び(C2)における発色の強さ(濃さ)と、前記テスト結果表示部(C0)における発色の強さ(濃さ)とを比較することによって行うことができる。
【0051】
判定部(C)は、シート状細片に採用される材料の中でも、種々の成分を含む被験試料を、液吸収部(D)に毛細管現象によって移動させることができ、テスト結果表示部(C0)に上記の非標識-抗体を、またコントロール表示部(C1)及び(C2)に上記の非標識-第二抗体を安定に固定化できる性質を備えた、親水性且つ吸水性の材料から構成されることが好ましい。
【0052】
かかる材料としては、濾紙、各種の繊維〔綿、パルプ、麻、絹、羊毛、及び亜麻等の天然繊維;レーヨン、ポリノジック、キュプラ、及びリヨセル等の再生繊維;アセテートなどの半合成繊維;ポリアミド(ナイロン)、ビニロン(ポリビニルアルコール)、ポリエステル、アクリル(ポリアクリロニトリルなど)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、及びポリウレタン等の合成繊維;ガラス繊維〕からなるスポンジ、フェルト、不織布、織布、漉紙などを例示することができる。好ましくはセルロースやニトロセルロース等からなるスポンジ、不織布、織布、漉紙などを挙げることができる。
【0053】
液吸収部(D)は、上記試料採取部(A)から反応部(B)、及び判定部(C)(テスト結果表示部(C0)、コントロール表示部(C1)及び(C2))を通って、矢印pの方向に移動してきた被験試料の残液を吸収する部分である。
【0054】
液吸収部(D)は、シート状細片に採用される材料の中でも、親水性及び吸収性に優れていることが好ましいが、より好適には、吸収した液を離水しない性質を備えた材料または弾力性のある材料から構成されることが望ましい。かかる材料として、具体的には、脱脂綿や親水性繊維の不織布などを挙げることができ、脱脂綿と不織布との積層体も使用することができる。
【0055】
以上、卵胞刺激ホルモン(FSH)または黄体形成ホルモン(LH)のいずれか一方を測定対象の被験成分とする更年期ステージ判定具〔更年期ステージ判定具(FSH)、更年期ステージ判定具(LH)〕について説明した。
【0056】
しかし、更年期ステージ判定具は、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の両方を測定対象の被験成分とするものであってもよい(以下、これを「更年期ステージ判定具(FSH/LH)」と称する。)。かかる更年期ステージ判定具(FSH/LH)は、試料採取部(A)と液吸収部(D)の間に位置する「反応部(B)」として、卵胞刺激ホルモン(FSH)と特異的に反応する標識-抗FSH抗体を担持したFSH反応部(b)と、黄体形成ホルモン(LH)と特異的に反応する標識-抗LH抗体を担持したLH反応部(b’)を備え、また各反応部に続いて位置する「判定部(C)」として、
(i)下記に示す、FSHテスト結果表示部、及び抗体固定量が異なる少なくとも2つのFSHコントロール表示部を、各々間隔をおいて備えたFSH判定部(c)、
(1) FSHと特異的に反応する非標識-抗FSH抗体を固定したFSHテスト結果表示部(c0)、
(2) 抗FSH抗体と特異的に反応する非標識-抗「抗FSH抗体」抗体を固定したFSHコントロール表示部(c1)及び(c2)、並びに
(ii)下記に示す、LHテスト結果表示部、及び抗体固定量が異なる少なくとも2つのLHコントロール表示部を、各々間隔をおいて備えたLH判定部(c’)、
(1) LHと特異的に反応する非標識-抗LH抗体を固定したLHテスト結果表示部(c0’)、
(2) 抗LH抗体と特異的に反応する非標識-抗「抗LH抗体」抗体を固定したLHコントロール表示部(c1’)及び(c2’)。
【0057】
シート状切片上におけるFSH反応部(b)とLH反応部(b’)との位置関係、FSH判定部(c)とLH判定部(c’)との位置関係については、被験試料中のFSH及びLHの量が測定でき、本発明の目的が達成できる態様であれば、特に制限されない。例えば、一例として、図2に示すように、間隙(スリット)等によってFSH判定部(c)とLH判定部(c’)とが分断された状態で判定部(C)を備える態様を挙げることができる。
【0058】
本発明の更年期ステージ判定具は、基本的に上記構成を備えたシート状細片からなるが、上記シート状細片に加えて、さらに支持体10を備えることもできる。かかる支持体10は、上記シート状細片を保持し得る材質及び形態を備えるものであれば特に制限されない。例えば、シート状細片の裏面(下層面)に積層して用いられるシート状の支持体であっても、またシート状細片を収納するハウジング形態の支持体であってもよい。
【0059】
シート状の支持体としては、例えば各種プラスチック製のシート(プラスチックシート)、硬質紙、アルミ製等の金属(合金を含む)製シート、例えば異質又は同質の複数の紙を張り合わせ(貼り合わせ)た複層紙、プラスチックシートと紙とを張り合わせ(貼り合わせ)たもの、紙と金属製シートを張り合わせ(貼り合わせ)たもの、プラスチックシートと紙と金属製シートを張り合わせ(貼り合わせ)たもの、紙に防水用等のコーティングを施したものなどを挙げることができる。好ましくは防水機能を有するものである。
【0060】
ハウジング形態の支持体は、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリル酸ポリマーなど、不透湿性の材料からなるものが好ましい。ハウジングには、少なくとも、内部に収納される上記シート状細片の試料採取部(A)に対応して「採液窓」、判定部(C)のテスト結果表示部(C0)に対応して「判定表示窓」、及びコントロール表示部〔少なくともコントロール表示部(C1)及び(C2)〕に対応して「コントロール表示窓」が形成されていることが望ましい。なお、「判定表示窓」と「コントロール表示窓」は、個々に形成されていてもよいが、一つの窓として形成されていてもよい。
【0061】
前述するシート状細片中を備える本発明の更年期ステージ判定具は、その使用に際して、まず試料採取部(A)に被験試料を含浸させる。そうすると、試料採取部(A)に吸収された被験試料がシート状細片中を毛細管現象により浸透し、まず標識-抗体〔更年期ステージ判定具(FSH):標識-抗FSH抗体、更年期ステージ判定具(LH):標識-抗LH抗体〕が脱離可能なように担持されている反応部(B)に至る。ここで、被験試料中の被験成分(FSH、LH)が上記標識-抗体と抗原−抗体反応により特異的に結合する〔更年期ステージ判定具1(FSH)については、FSHと標識-抗FSH抗体とが結合し、更年期ステージ判定具1(LH)については、LHと標識-抗LH抗体とが結合する。〕。次いで、被験試料は、「被験成分と特異的に結合した標識-抗体」(更年期ステージ判定具(FSH):FSHと標識-抗FSH抗体との複合体、更年期ステージ判定具(LH):LHと標識-抗LH抗体との複合体)と、「被験成分と結合しなかった余剰の標識-抗体」(更年期ステージ判定具(FSH):標識-抗FSH抗体、更年期ステージ判定具(LH):標識-抗LH抗体)を伴いながら、判定部(C)のテスト結果表示部(C0)に至る。テスト結果表示部(C0)には被験成分と特異的に結合する非標識-抗体(更年期ステージ判定具(FSH):非標識-抗FSH抗体、更年期ステージ判定具(LH):非標識-抗LH抗体)が安定に固定されているので、ここに被験試料中の「被験成分と特異的に結合した標識-抗体」が捕捉され集積される。その結果、テスト結果表示部(C0)は、捕捉された標識-抗体の標識剤に基づいて被験試料中の被験成分の量に応じた強度で発色する。これにより、被験試料中の被験成分の有無や量的割合が検知できる。
【0062】
次に被験試料は、「被験成分と結合しなかった余剰の標識-抗体」を伴いながら、判定部(C)のコントロール表示部(C1)及び(C2)に至る。コントロール表示部(C1)及び(C2)には標識-抗体と特異的に結合する第二抗体〔更年期ステージ判定具(FSH):非標識-抗「抗FSH抗体」抗体、更年期ステージ判定具(LH):非標識-抗「抗LH抗体」抗体〕が一定の量で安定に固定されているので、ここに被験試料中の上記の余剰の標識-抗体が捕捉され集積される。その結果、コントロール表示部(C1)及び(C2)は、それぞれコントロール表示部(C1)及び(C2)に固定化された第二抗体の量(または、第二抗体と結合した標識-抗体の量)に応じた強度で発色する。ここで、固定化する第二抗体の量を予め決めておけば、捕捉される標識-抗体の量と発色の強度(濃さ)との関係を知ることができる。そして、この関係は、コントロール表示部(C1)及び(C2)に各々異なる量の第二抗体を固定することによってより明確になる。なお、図2に示す更年期ステージ判定具(FSH/LH)
は、本発明の一態様として2つのコントロール表示部を有するものであるが、これに限定されず、3つ以上のコントロール表示部を設けることができる。すなわち、少なくとも2つのコントロール表示部で呈示された発色の強度(濃さ)と、上記テスト結果表示部で呈示された発色の強度(濃さ)を対比することによって、被験試料中に含まれる被験成分の量がどの範囲にあるかを知ることが可能となる。
【0063】
この関係を、被験試料として血液を用いた場合を例として表2に示す。表に示す「<」は、判定具の表示部(C)の各ライン〔テスト結果表示部(C0)、コントロール表示部(C1)及び(C2)〕の濃さの程度(順番)を示す。
【0064】
【表2】

【0065】
例えば、血液中の卵胞刺激ホルモン(FSH)濃度は、更年期ステージのA期に15mIU/mL以下、B期に15〜30mIU/mL、C期に15〜30mIU/mL、D期に15〜30mIU/mL、E期に30mIU/mL以上であることが知られている。従って、コントロール表示部(C1)に、例えば25mIU/mLのFSHと結合する量の抗FSH抗体を定量的に検出できるように抗「抗FSH抗体」抗体(第二抗体)を固定し、コントロール表示部(C2)に、例えば50mIU/mLのFSHと結合する量の抗FSH抗体を定量的に検出できるように抗「抗FSH抗体」抗体(第二抗体)を固定してなる判定部(C)を有する更年期ステージ判定具1(FSH)(被験試料:血液)によれば、被験者がどの更年期ステージ(A期、B〜D期、E期)にあるかを判定することができる。
【0066】
また、血液中の黄体形成ホルモン(LH)濃度は、更年期ステージのA期に25mIU/mL以下、B期に25mIU/mL以下、C期に25〜50mIU/mL、D期に25〜50mIU/mL、E期に50mIU/mL以上であることが知られている。従って、コントロール表示部(C1)に、例えば15mIU/mLのLHと結合する量の抗LH抗体を定量的に検出できるように抗「抗LH抗体」抗体(第二抗体)を固定し、コントロール表示部(C2)に、30mIU/mLのLHと結合する量の抗LH抗体を定量的に検出できるように抗「抗LH抗体」抗体(第二抗体)を固定してなる判定部(C)を有する更年期ステージ判定具1(LH)(被験試料:血液)によれば、被験者がどの更年期ステージ(A〜B期、C〜D期、E期)にあるかを判定することができる。
【0067】
さらに、例えば25mIU/mLのFSHと結合する量の抗FSH抗体を定量的に検出できるように抗「抗FSH抗体」抗体(第二抗体)を固定したコントロール表示部(c1)と、15mIU/mLのLHと結合する量の抗LH抗体を定量的に検出できるように抗「抗LH抗体」抗体(第二抗体)を固定したコントロール表示部(c1')、並びに50mIU/mLのFSHと結合する量の抗FSH抗体を定量的に検出できるように抗「抗FSH抗体」抗体(第二抗体)を固定したコントロール表示部(c2)と、30mIU/mLのLHと結合する量の抗LH抗体を定量的に検出できるように抗「抗LH抗体」抗体(第二抗体)を固定したコントロール表示部(c2')を備えた判定部(C)を有する更年期ステージ判定具(FSH/LH)(被験試料:血液)によれば、被験者がどの更年期ステージ(A期、B期、C〜D期、E期)にあるかを判定することができる。
【0068】
なお、尿を被験試料とする場合、上記各値の約2〜10%を目やすとして設定することができる(新生理科学大系(第14巻)神経内分泌学(1989)、122頁、(株)医学書院発行)。
【0069】
(2)タイプ2:更年期ステージ判定具
図2にタイプ2の更年期ステージ判定具の一態様を示す。
【0070】
図示の更年期ステージ判定具は、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の2つを被験成分とし、両者を同時に検出できるように設計されてなる。更年期ステージ判定具は、試料採取部(A)、反応部(B)、テスト結果表示部(C0)とコントロール表示部(Cn:nは正数)を含む判定部(C)、及び液吸収部(D)を備えるシート状細片30を備えている。この更年期ステージ判定具も、更年期ステージ判定具と同様に、シート状細片を支持するための支持体10を備えている。
【0071】
このシート状細片30は、全体的構成としては、前述する更年期ステージ判定具のシート状細片と同様である。但し、更年期ステージ判定具のシート状細片は、間に間隙34を形成するように相互に平行に並ぶ2枚のシート3233を備え、これらのシートに2つの反応部(B)及び判定部(C)が形成されている。また、シート状細片は、長手方向の一端側から他端側に順に、試料採取部(A)を形成するシート31、判定部(C)を形成するシート32及び33、液吸収部(D)を形成するシート35を備えており、シート31及び35の端部が、シート32及び33の各々の端部に重なることで液の移動を可能にしている。シート32及び33におけるシート31に近い部分に、反応部(B)が形成されている。
【0072】
すなわち、更年期ステージ判定具は、FSHとLHの2つを被験成分として同時に検出するために、反応部(B)として、標識-抗FSH抗体を担持したFSH反応部(b)、及び標識-抗LH抗体を担持したLH反応部(b')を備えている。また判定部(C)として、非標識-抗FSH抗体を固定したFSHテスト結果表示部(c0)、及び異なる濃度の非標識-抗「抗FSH抗体」抗体を固定したFSHコントロール表示部(c1)及び(c2)を、各々間隔をおいて備えたFSH判定部(c):並びに非標識-抗LH抗体を固定したLH テスト結果表示部(c0')、及び異なる濃度の非標識-抗「抗LH抗体」抗体を固定したLHコントロール表示部(c1')及び(c2')を、各々間隔をおいて備えたLH判定部(c')を備える。
【0073】
このように、図2では、間隙(スリット)によってFSH反応部(b)とLH反応部(b')、及びFSH判定部(c)とLH判定部(c')が分断された更年期ステージ判定具を例示する。但し、FSH反応部(b)、LH反応部(b')、FSH判定部(c)及びLH判定部(c')をそれぞれどのように配置するかは、これに限定されない。
【0074】
更年期ステージ判定具も、更年期ステージ判定具と同様な原理により、被験試料中の被験成分(FSH、LH)の量を知ることができ、これによって被験者がどの更年期ステージにあるかを判定することができる。なお、図2は、コントロール表示部が各被験成分(FSH、LH)の判定用にそれぞれ2箇所〔FSHコントロール表示部(c1)及び(c2)、LHコントロール表示部(c1')及び(c2')〕に設けられてなる更年期ステージ判定具を例示するが、更年期ステージ判定具はコントロール表示部を各被験成分(FSH、LH)の判定用にそれぞれ1つ有するものであってもよい。これらの判定原理及びコントロール表示部の設け方については、前述の通りである。
【0075】
例えば、血液中の卵胞刺激ホルモン(FSH)濃度は、前述するように、更年期ステージのA期に15mIU/mL以下、B期に15〜30mIU/mL、C期に15〜30mIU/mL、D期に15〜30mIU/mL、E期に30mIU/mL以上であること、血液中の黄体形成ホルモン(LH)濃度は、それぞれ更年期ステージのA期に25mIU/mL以下(FSH)、、B期に25mIU/mL以下、C期に25〜50mIU/mL、D期に25〜50mIU/mL、E期に50mIU/mL以上であることが知られている。
【0076】
従って、各判定部に各々1つのコントロール表示部を備える更年期ステージ判定具2の場合、FSH判定部(c)のFSHコントロール表示部(c1)に、例えば25mIU/mLのFSHと結合する量の抗FSH抗体を定量的に検出できるように抗「抗FSH抗体」抗体(第二抗体)を固定し、LH判定部(c')のLHコントロール表示部(c1')に、例えば15mIU/mLのLHと結合する量の抗LH抗体を定量的に検出できるように抗「抗LH抗体」抗体(第二抗体)を固定してなる更年期ステージ判定具(被験試料:血液)によれば、被験者がどの更年期ステージ(A期、B期、C〜E期)にあるかを判定することができる。また、FSH判定部(c)のFSHコントロール表示部(c1)に、例えば50mIU/mLのFSHと結合する量の抗FSH抗体を定量的に検出できるように抗「抗FSH抗体」抗体(第二抗体)を固定し、LH判定部(c')のLHコントロール表示部(c1')に、例えば15mIU/mLのLHと結合する量の抗LH抗体を定量的に検出できるように抗「抗LH抗体」抗体(第二抗体)を固定してなる更年期ステージ判定具(被験試料:血液)によれば、被験者がどの更年期ステージ(A〜B期、C〜D期、E期)にあるかを判定することができる。さらにまた、FSH判定部(c)のFSHコントロール表示部(c1)に、例えば25mIU/mLのFSHと結合する量の抗FSH抗体を定量的に検出できるように抗「抗FSH抗体」抗体(第二抗体)を固定し、LH判定部(c')のLHコントロール表示部(c1')に、例えば30mIU/mLのLHと結合する量の抗LH抗体を定量的に検出できるように抗「抗LH抗体」抗体(第二抗体)を固定してなる更年期ステージ判定具(被験試料:血液)によれば、被験者がどの更年期ステージ(A期、B〜D期、E期)にあるかを判定することができる。さらにFSH判定部(c)のFSHコントロール表示部(c1)に、例えば50mIU/mLのFSHと結合する量の抗FSH抗体を定量的に検出できるように抗「抗FSH抗体」抗体(第二抗体)を固定し、LH判定部(c')のLHコントロール表示部(c1')に、例えば30mIU/mLのLHと結合する量の抗LH抗体を定量的に検出できるように抗「抗LH抗体」抗体(第二抗体)を固定してなる更年期ステージ判定具(被験試料:血液)によれば、被験者がどの更年期ステージ(A〜D期、E期)にあるかを判定することができる。
【0077】
前述するように、更年期ステージ判定具は、タイプ1と同様に、各判定部〔FSH判定部(c)、LH判定部(c')〕に各々少なくとも2つのコントロール表示部〔FSHコントロール表示部(c1)及び(c2))、LHコントロール表示部(c1')及び(c2')〕を備えることもできる。かかる更年期ステージ判定具(被験試料:血液)の場合、FSHコントロール表示部(c)として、例えば25mIU/mLのFSHと結合する量の抗FSH抗体を定量的に検出できるように抗「抗FSH抗体」抗体(第二抗体)を固定したFSHコントロール表示部(c1)と、50mIU/mLのFSHと結合する量の抗FSH抗体を定量的に検出できるように抗「抗FSH抗体」抗体(第二抗体)を固定したFSHコントロール表示部(c2)、並びにLHコントロール表示部(c')として、例えば15mIU/mLのLHと結合する量の抗LH抗体を定量的に検出できるように抗「抗LH抗体」抗体(第二抗体)を固定したLHコントロール表示部(c1')と、30mIU/mLのLHと結合する量の抗LH抗体を定量的に検出できるように抗「抗LH抗体」抗体(第二抗体)を固定したLHコントロール表示部(c2')を備えた更年期ステージ判定具(被験試料:血液)によれば、被験者がどの更年期ステージ(A期、B期、C〜D期、E期)にあるかを判定することができる。
【0078】
更年期ステージ判定具は、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の両者を同時に検出できるように、2つの反応部〔(b)と(b')〕及び判定部〔(c)と(c')〕を備えている。かかる更年期ステージ判定具には、下記の形態の判定具が含まれる。
【0079】
図3は、幅の異なる2枚のシート4142からなるシート状細片40を、支持体10の上に接着した更年期ステージ判定具を示している(図では、これらを分解した状態で示す)。
【0080】
このシート状細片40は、支持体10とほぼ同じ幅のシート41上に、該シート41のほぼ半分の幅のシート42を重ねて接着したものである。シート41及び42には、一端側から他端側へ、試料採取部(A)、反応部(B)、判定部(C)、及び液吸収部(D)が形成され、この方向(図中、矢印pで示す)への液の移動を可能にしている。
【0081】
この例では、幅広のシート41に、標識-抗FSH抗体を担持したFSH反応部(b)、非標識-抗FSH抗体を固定したFSHテスト結果表示部(c0)、及び非標識-抗「抗FSH抗体」抗体を固定したFSHコントロール表示部(c1)及び(c2)が形成されている。そして、幅狭のシート42に、標識-抗LH抗体を担持したLH反応部(b')、非標識-抗LH抗体を固定したLH テスト結果表示部(c0')、非標識-抗「抗LH抗体」抗体を固定したLH コントロール表示部(c1')及び(c2')が形成されている。なお、上記に代えて、幅広のシート41に、LH反応部(b')、LH テスト結果表示部(c0')、LH コントロール表示部(c1')及び(c2')を、幅狭のシート42に、FSH反応部(b)、FSHテスト結果表示部(c0)、及びFSHコントロール表示部(c1)及び(c2)を形成してもよい。試料採取部(A)及び液吸収部(D)は、シート4142の長手方向の一端部及び他端部によって形成されている。
【0082】
シート4142は、前述の例示された材料で構成することができ、両者を同じ材料とすることも、異なる材料とすることも可能である。これらのシートを接着する接着剤あるいは粘着剤としては、アクリル酸アルキル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレンプロピレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体、非晶性ポリプロピレン樹脂、非晶性プロピレン・エチレン共重合体、非晶性プロピレン・エチレン・ブテン共重合体、非晶性プロピレン・ブテン共重合体等を例示することができる。
【0083】
このシート状細片40は、2枚のシート4142で構成することにより、試料採取部(a)で採取された被験試料は、主として各シートに沿って移動するので、標識−抗「FSH」抗体と結合した被験成分(FSH)と標識−抗「LH」抗体と結合した被験成分(LH)とが、2枚のシート間で混じり合う量は少なく、判定上の問題は生じない。特に、2枚のシート間の接着層は、そのような混合の問題を生じ難くする。
【0084】
図4は、中央部にスリットを形成した1枚のシート51からなるシート状細片50を、支持体10の上に接着した更年期ステージ判定具を示している(図では、これらを分解した状態で示す)。
【0085】
このシート51は、支持体10とほぼ同じ幅を有し中央部に該シートの長手方向に延びるスリット54を形成したものである。シート51には、一端側から他端側へ、試料採取部(A)、反応部(B)、判定部(C)、及び液吸収部(D)が形成され、この方向(図中、矢印pで示す)への液の移動を可能にしている。
【0086】
この例では、スリット54で隔てられたシート51の一方の側片52に、標識-抗FSH抗体を担持したFSH反応部(b)、非標識-抗FSH抗体を固定したFSHテスト結果表示部(c0)、及び非標識-抗「抗FSH抗体」抗体を固定したFSHコントロール表示部(c1)及び(c2)が形成されている。そして、他方の側片53に、標識-抗LH抗体を担持したLH反応部(b')、非標識-抗LH抗体を固定したLH テスト結果表示部(c0')、非標識-抗「抗LH抗体」抗体を固定したLH コントロール表示部(c1')及び(c2')が形成されている。試料採取部(A)及び液吸収部(D)は、シート51におけるスリット54が形成されていない、長手方向の一端部55及び他端部56によって形成されている。
【0087】
シート51は、前に例示された材料で構成することができる。このシート状細片50は、1枚のシートにスリット54を設けるという簡単な構成ことにより、試料採取部(A)で採取された被験試料が、標識抗体(標識−抗「FSH」抗体、標識−抗「LH」抗体)や他の抗体と結合した後に混じり合うのを避けることができるという利点がある。
【0088】
図5は、タイプ1の更年期ステージ判定具を例にとって示したものである。この更年期ステージ判定具は、支持体10の上にシート状細片60が接着されている。このシート状細片60は、前述の例と同様に、長手方向の一端側から他端側に順に、試料採取部(A)、反応部(B)、判定部(C)、及び液吸収部(D)を備えている。この例では、図5(a)に示すように、試料採取部(A)は他の部分より幅方向に広くなっており、使用前は図5(b)に示すように、幅方向の広がり部分は両側から中央部へ折り畳まれている。シート状細片60のシートは、前述の例示された材料で構成することができる。
【0089】
図5に示した更年期ステージ判定具は、使用前は試料採取部(A)が折り畳まれて全体がコンパクトとなっているので、携帯や搬送が便利である。そして、使用時には、試料採取部(A)を幅方向に展開することにより、広い面積で試料を簡便且つ確実に受けることができ、特に尿を被験試料とする場合、排尿時の試料採取に有利である。なお、この幅の広い試料採取部(A)は、タイプ2の更年期ステージ判定具(例えば、図2〜4の例)にも適用することができる。
【0090】
図6は、シート状細片20をケース内に収納したタイプ1の更年期ステージ判定具の例を示す。この更年期ステージ判定具は、図1に示したシート状細片20を細長いケース70に納め、先端部を出し入れ自在にしたものである。ケース70は、長手方向の一端に開口部を有した本体71と、該開口部にヒンジ固定された蓋72とを備えている。ケースの他端部には、長手方向に延びる溝76が形成され、該溝を摺動するボタン77が嵌められている。ボタン77の内端部は、シート状細片20の端部に固着されている。したがって、ボタン77をケースの端部寄りに移動すれば、シート状細片20をケース70内に引き込み、反対側へ移動させれば、図示のようにシート状細片20の先端部をケース70から露出させることができる。ケース70には、シート状細片20の先端部を押し出したときに、テスト結果表示部(C0)及びコントロール表示部(C1)及び(C2)に対応する位置に、窓737475が設けられている。望ましくは、これらの窓は、透明プラスチック板等により覆われている。
【0091】
この更年期ステージ判定具は、使用前はシート状細片20をケース70内に引き込み蓋72を綴じて携帯又は搬送され、使用時には、蓋72を開き、ボタン77をスライドさせてシート状細片20の先端部(試料採取部(A))を露出させる。この状態で試料を先端部に接触させればよい。使用後は、シート状細片20を引き込んで蓋72を閉じる。このように、この更年期ステージ判定具は、操作が簡単であり、携帯又は搬送時には、試料採取前後ともシート状細片を清潔に保つことができる。
【0092】
図7は、シート状細片をケース内に収納したタイプ2の更年期ステージ判定具の例を示す。この更年期ステージ判定具は、図2に示したシート状細片30を細長いケース80に納めたものである。ケース80は、長手方向の一端に開口部を有するケース本体81と、該開口部に着脱可能に嵌められたキャップ82とを備えている。キャップ82を外せば、図示のようにシート状細片30の先端部をケース本体81から露出させることができる。ケース本体81には、被験成分FSHに対するFSHテスト結果表示部(c0)及びFSHコントロール表示部(c1)及び(c2)に対応する位置に、窓8384及び85が設けられ、被験成分LHに対するLHテスト結果表示部(c0')及びコントロール表示部(c1')及び(c2')に対応する位置に、窓83’84’及び85’が設けられている。望ましくは、これらの窓は、透明プラスチック板等により覆われている。また、これら複数の窓は少なくとも1部のものを、ケース本体81の長手方向又は幅方向につながったものとすることもできる。各被験成分についてコントロール表示部が1つだけ設けられる場合は、図6に示すように、これに対応した窓のみが設けられる。
【0093】
この更年期ステージ判定具は、使用前はシート状細片30をケース本体81内に納めキャップ82を閉じた状態で携帯又は搬送され、使用時には、キャップ82を外してシート状細片30の先端部(試料採取部(A))を露出させる。そして、この状態で試料を先端部に接触させればよい。使用後は、キャップ82をケース本体81に被せてシート状細片30を覆う。このように、この更年期ステージ判定具も、操作が簡単であり、携帯又は搬送時には、試料採取前後ともシート状細片を清潔に保つことができる。
【0094】
更年期ステージ判定具及びは、吸液片として前述したシート状細片の形態に代えて種々の形態のものを用いることができる。図8〜図10は、吸液片として棒状物を使用した例を示している。
【0095】
図8は、吸液片として、円柱形態の棒状細片90を備えた更年期ステージ判定具を示している。この更年期ステージ判定具は、棒状細片90の長手方向の一端側から他端側に順に、試料採取部(A)、反応部(B)、判定部(C)、及び液吸収部(D)を備えている。
【0096】
図9は、吸液片として、円柱形態の棒状部分102の両端部にシート状部分101及び103を配置した更年期ステージ判定具を示している。これらの部分の接合は、接着剤、熱融着、糸や針金等によって行なうことができ、部分間の液移送性を保つように行なわれる。この更年期ステージ判定具は、シート状部分101を試料採取部(A)、棒状部分102を反応部(B)及び判定部(C)、シート状部分103を液吸収部(D)として備えている。そして、これらからなる吸液片を支持体10に接着等により固定している。
【0097】
図10は、吸液片として、角柱形態の棒状部分112を用い、両端部にシート状部分111及び113を配置した更年期ステージ判定具を示している。これらの部分の接合も、接着剤、熱融着、糸や針金等によって行なうことができ、部分間の液移送性を保つように行なわれる。この更年期ステージ判定具は、シート状部分111を試料採取部(A)、2本の棒状部分112の一方を、FSHのための反応部(b)及び判定部(c)〔FSHテスト結果表示部(c0)及びFSHコントロール表示部(c1)及び(c2)〕、他方をLHのための反応部(B)及び判定部(c')〔LHテスト結果表示部(c0')及びLHコントロール表示部(c1')及び(c2')〕、シート状部分113を液吸収部(D)として備えている。そして、これらからなる吸液片を支持体10に接着等によりしている。これら棒状材料を使用した吸液片を用いれば、幅が小さく、コンパクトな更年期ステージ判定具を得ることができる。特に、タイプ2の更年期ステージ判定具にとって有利である。これらの更年期ステージ判定具も、図6及び図7に示したようなケースに収納した形態をとることもできる。また、判定部の色の視認を容易にするために、ケースに設ける窓を凸レンズ状とすることもできる。
【0098】
上記の本発明の更年期ステージ判定具及びには、他に当該更年期ステージ判定具の使用方法や更年期ステージの判定方法について説明した表示手段書面(仕様書)を添付することができ、本発明はかかる更年期ステージ判定具またはと仕様書がセットとなった更年期ステージ判定キットを提供するものである。更年期ステージの判定方法についての説明書には、テスト結果表示部とコントロール部で呈示される発色の強さ(濃さ)がどういう状態になった場合に、どの更年期ステージ(A〜E期)にあると判断できるのかを、具体的に表示するものを例示することができる。この表示手段は、仕様書の形態をなす書面とすることもできるし、図6及び図7に示すケースの面に表されたものとすることもできる。
【0099】
これらの他、タイプ1及びタイプ2の双方の更年期ステージ判定具について、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形態様が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明に係るタイプ1の更年期ステージ判定具の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るタイプ2の更年期ステージ判定具の一実施形態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係るタイプ2の更年期ステージ判定具の他の実施形態を示す斜視図である。
【図4】本発明に係るタイプ2の更年期ステージ判定具のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図5】本発明に係るタイプ1の更年期ステージ判定具の他の実施形態を示す斜視図である。
【図6】本発明に係るタイプ1の更年期ステージ判定具のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図7】本発明に係るタイプ2の更年期ステージ判定具のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図8】本発明に係るタイプ1の更年期ステージ判定具のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図9】本発明に係るタイプ1の更年期ステージ判定具のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図10】本発明に係るタイプ2の更年期ステージ判定具のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0101】
1:タイプ1の更年期ステージ判定具
2:タイプ2の更年期ステージ判定具
10:支持体
20、30、40、50、60:吸液片(シート状細片)
90、102:吸液片(棒状)
112:吸液片(角柱状)
A:試料採取部
B:反応部
C:判定部
D:液吸収部
b: FSH反応部
b': LH反応部
c0: FSHテスト結果表示部
c0': LHテスト結果表示部
c1, c2: FSHコントロール表示部
c1',c2':LH コントロール表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛細管現象によって被験試料を移送できる材料で構成された吸液片を備えた更年期ステージ判定具であって、当該吸液片が
(1a)被験試料を吸収採取する試料採取部、
(1b)卵胞刺激ホルモン(FSH)と特異的に反応する標識-抗FSH抗体を担持したFSH反応部、
(1c)下記に示す、FSHテスト結果表示部、及び抗体固定量が異なる少な
くとも2つのFSHコントロール表示部を、各々間隔をおいて備えたFSH判定部、
(1) FSHと特異的に反応する非標識-抗FSH抗体を固定したFSHテスト結果表示部、
(2) 抗FSH抗体と特異的に反応する非標識-抗「抗FSH抗体」抗体を固定したFSHコントロール表示部、及び
(1d) 上記試料採取部、FSH反応部及びFSH判定部を移動してきた被験試料の残液を吸収する液吸収部
を備えることを特徴とする、更年期ステージ判定具。
【請求項2】
毛細管現象によって被験試料を移送できる材料で構成された吸液片を備えた更年期ステージ判定具であって、当該吸液片が
(2a)被験試料を吸収採取する試料採取部、
(2b)黄体形成ホルモン(LH)と特異的に反応する標識-抗LH抗体を担持したLH反応部、
(2c)下記に示す、LHテスト結果表示部、及び抗体固定量が異なる少なくとも2つのLHコントロール表示部を、各々間隔をおいて備えたLH判定部、
(1) LHと特異的に反応する非標識-抗LH抗体を固定したLHテスト結果表示部、
(2) 抗LH抗体と特異的に反応する非標識-抗「抗LH抗体」抗体を固定したLHコントロール表示部、及び
(2d) 上記試料採取部、LH反応部及びLH判定部を移動してきた被験試料の残液を吸収する液吸収部
を備えることを特徴とする、更年期ステージ判定具。
【請求項3】
毛細管現象によって被験試料を移送できる材料で構成された吸液片を備えた更年期ステージ判定具であって、当該吸液片が、
(3a)被験試料を吸収採取する試料採取部、
(3b) 卵胞刺激ホルモン(FSH)と特異的に反応する標識-抗FSH抗体を担持したFSH反応部、及び黄体形成ホルモン(LH)と特異的に反応する標識-抗LH抗体を担持したLH反応部を含む、反応部、
(3c)下記のFSH判定部及びLH判定部を含む判定部:
(3c-1) FSH判定部:下記のFSHテスト結果表示部、及び抗体固定量が異なる少なくとも2つのFSHコントロール表示部を各々間隔をおいて備える:
(i) FSHと特異的に反応する非標識-抗FSH抗体を固定したFSHテスト結果表示部、
(ii)抗FSH抗体と特異的に反応する非標識-抗「抗FSH抗体」抗体を固定したFSHコントロール表示部、及び
(3c-2) LH判定部:下記のLHテスト結果表示部、及び抗体固定量が異なる少なくとも2つのLH コントロール表示部を各々間隔をおいて備える:
(i) LHと特異的に反応する非標識-抗LH 抗体を固定したLH テスト結果表示部、
(ii)抗LH 抗体と特異的に反応する非標識-抗「抗LH抗体」抗体を固定したLH コントロール表示部、
並びに
(3d) 上記試料採取部、反応部、及び判定部を移動してきた被験試料の残液を吸収する液吸収部
を備えることを特徴とする、更年期ステージ判定具。
【請求項4】
毛細管現象によって被験試料を移送できる材料で構成された吸液片を備えた更年期ステージ判定具であって、当該吸液片が
(4a)被験試料を吸収採取する試料採取部、
(4b)卵胞刺激ホルモン(FSH)と特異的に反応する標識-抗FSH抗体を担持したFSH反応部(b)、及び黄体形成ホルモン(LH)と特異的に反応する標識-抗LH抗体を担持したLH反応部、
(4c-1)下記に示すFSHテスト結果表示部及びFSHコントロール表示部を、各々間隔をおいて備えたFSH判定部:
(1-1) FSHと特異的に反応する非標識-抗FSH抗体を固定したFSHテスト結果表示部、
(1-2) 抗FSH抗体と特異的に反応する非標識-抗「抗FSH抗体」抗体を固定したFSHコントロール表示部、及び
(4c-2)下記に示すLH テスト結果表示部及びLH コントロール表示部を、各々間隔をおいて備えたLH判定部:
(2-1) LHと特異的に反応する非標識-抗LH抗体を固定したLH テスト結果表示部、
(2-2) 抗LH 抗体と特異的に反応する非標識-抗「抗LH抗体」抗体を固定したLH コントロール表示部、及び
(4d)上記試料採取部、FSH反応部、LH反応部、FSH判定部、及びLH判定部を移動してきた被験試料の残液を吸収する液吸収部
を備えることを特徴とする、更年期ステージ判定具。
【請求項5】
上記FSH判定部が、FSHテスト結果表示部と、固定した非標識-抗「抗FSH抗体」抗体の濃度が異なる少なくとも2つのFSHコントロール表示部を備えたものであり、かつLH判定部が、LHテスト結果表示部と、固定した非標識-抗「抗LH抗体」抗体の濃度が異なる少なくとも2つのLH コントロール表示部を備えたものである、請求項4に記載する、更年期ステージ判定具。
【請求項6】
被験試料が女性の尿である請求項1乃至5のいずれかに記載する更年期ステージ判定具。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載する更年期ステージ判定具、並びに当該更年期ステージ判定具の使用方法及び更年期ステージの判定方法を説明した表示手段を含む更年期ステージ判定キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−266764(P2006−266764A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−82840(P2005−82840)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)