説明

書画シート付き書画表記物及び貼着用書画表記物並びに貼着用書画シート

【目的】書画を記載した紙や布などの書画シートと書画表記物(色紙、短冊、掛軸など)とを剥離自在に固定することにより、書画の書き損じや書画の交換が容易にできる。
【構成】色紙(書画表記物)1の表記部1aに、熱接着性と熱剥離性とを兼備した接着剤を一様に塗着して薄層2を設け、貼着用色紙(貼着用書画表記物)3を形成する(a)(b)。貼着用色紙3の薄層2に、書画を記載した書画シート4を載置し、加熱押圧すれば、書画シート付き色紙5を形成できる(c)。書画シート4の表面4aを再加熱し、書画シート4を貼着用色紙3の反対側へ引張れば、書画シート4を貼着用色紙3から容易に剥すことができる。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、書画を表記する色紙、短冊、掛軸、額、ポスター用台紙、はがきなどの書画表記物に関する、書画シート付きの書画表記物、書画シート付きの書画表記物の構成に係る貼着用書画表記物及び貼着用書画シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、書画表記物、例えば色紙、短冊等は厚紙からなり表記部に、文字、絵等の書画を直接に表記していた。また、例えば、掛軸では表記部に直接表記するか、または掛軸の表記部に、文字、絵等の書画を表記した書画シート(通常は、和紙製や布製)を接着剤などで固定して使用していた。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
前記従来の色紙、短冊では、誤記した場合や書画が不要になった場合には色紙、短冊を廃棄していた。また、掛軸でも、不要になった場合には掛軸と書画シートとは分離できないので、結局、掛軸そのものを廃棄していた。従って、再使用できる色紙、短冊、掛軸そのものも破棄しなければならないので、資源の無駄を生じる問題点があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
然るにこの考案は、書画表記物の表記部と書画シートとを熱接着性と熱剥離性とを兼備した接着剤層を介装したので、また書画表記物の表記部に熱接着性と熱剥離性とを兼備した接着剤を装着したので、あるいは書画シートの一面に熱接着性と熱剥離性とを兼備した接着剤を装着したので、前記問題点を解決した。
【0005】
即ちこの考案は、色紙、短冊、掛軸などの書画表記物において、前記書画表記物の表記部に、所定の書画シートを、熱接着性と熱剥離性とを兼備した接着剤を介して、層着したことを特徴とする書画シート付き書画表記物である。また、色紙、短冊、掛軸などの書画表記物において、前記書画表記物の表記部に、所定の書画シートを、熱接着性と熱剥離性とを兼備した接着剤を介して装着してなり、該該接着剤層は、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂の水性分散体にエチレンαオレフィン共重合の水性分散体を加え、更に可塑剤を含まない酢酸ビニル樹脂のエマルジョンを加えた混合溶液を塗布して乾燥して形成したことを特徴とする書画シート付き書画表記物である。
【0006】
また、色紙、短冊、掛軸などの書画表記物において、前記書画表記物の表記部に加熱接着性と加熱剥離性とを兼備した接着剤を層着したことを特徴とする貼着用書画表記物である。また、色紙、短冊、掛軸などの書画表記物において、前記書画表記物の表記部に熱接着性と熱剥離性とを兼備した接着剤層を形成してなり、該接着剤層は、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂の水性分散体にエチレンαオレフィン共重合の水性分散体を加え、更に可塑剤を含まない酢酸ビニル樹脂のエマルジョンを加えた混合溶液を塗布して乾燥して形成したことを特徴とする貼着用書画表記物である。
【0007】
また、色紙、短冊、掛軸などの書画表記物の表記部に貼着して使用する書画シートにおいて、シート体の一面に熱接着性と熱剥離性とを兼備した接着剤を層着したことを特徴とする貼着用書画シートである。更に、色紙、短冊、掛軸などの書画表記物の表記部に貼着して使用する書画シートにおいて、シート体の一面に熱接着性と熱剥離性とを兼備した接着剤を層着し、該シート体の他面に印刷し、又は該他面を印刷可能に形成し、前記接着剤層は、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂の水性分散体にエチレンαオレフィン共重合の水性分散体を加え、更に可塑剤を含まない酢酸ビニル樹脂のエマルジョンを加えた混合溶液を塗布して乾燥して形成したことを特徴とする貼着用書画シートである。
【0008】
前記における書画表記物とは、書画を表記する色紙、短冊、掛軸、額、ポスター用台紙、はがきなどを指す。
【0009】
【作用】
この考案の書画シート付き書画表記物は、書画シートと書画表記物の表記部とに熱接着性と熱剥離性とを兼備した接着剤層を介装したので、書画表記物と書画を記載した書画シート剥離又は再接着を容易にすることができる。
【0010】
また、この考案の貼着用書画表記物は、書画表記物の表記部に熱接着性と熱剥離性とを兼備した接着剤を層着したので、書画表記物に書画を記載した書画シートを接着又は剥離を容易にすることができる。
【0011】
更に、この考案の貼着用書画シートは、書画シートの一面に熱接着性と熱剥離性とを兼備した接着剤を層着したので、書画シートを書画表記物に接着又は剥離を容易にすることができる。
【0012】
また、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂の水性分散体にエチレンαオレフィン共重合の水性分散体を加え、更に可塑剤を含まない酢酸ビニル樹脂のエマルジョンを加えた混合溶液を塗布して乾燥して、接着剤層を構成した場合には、混合物中に存在する低融点粒子が加熱により溶解して、接着性を発揮する。
【0013】
【実施例1】
図1、図2に基づきこの考案の実施例を説明する。
【0014】
エチレン酢酸ビニール共重合樹脂■(ケシパールV100、三井石油化学株式会社製)の水性分散体(水分60%位)に、熱可塑性樹脂の改質材のエチレンαオレフィン共重合体■(ケシパールA100、三井石油化学株式会社製)の水性分散体(水分60%位)を加え、更に可塑剤を含まない酢酸ビニール樹脂のエマルジョン■(水分40%〜60%)を加えて水溶性の一液溶液を作る。
【0015】
前記各比率は、 ■:■=1:3〜9:1 ■:■=9:1〜1:1 の範囲内で使用することができる。
【0016】
前記において、エチレン酢酸ビニール共重合樹脂は、通常紙類に接着しにくいので、イソプロピルアルコール(メタノール又はエタノール)と水溶性エチレングリコールの混合溶液(例えば1:4〜4:1)を、前記水溶性の溶液に1%〜10%混入し、接着性を改善する。
【0017】
前記接着性を改善した溶液を色紙(書画表記物)1の表記部1aに、一様に塗着し、乾燥させて薄層2を設ければ、この考案の貼着用色紙(貼着用書画表記物)3ができる(図1(a)(b))。尚、未加熱状態では薄層2が接着性を発揮しないので、貼着用色紙3は、該薄層2の表面が粘着性を示さず、取扱い易い。
【0018】
この貼着用色紙3の薄層2に、書画を記載した書画シート4を載置し、書画シート4の表面4aからアイロンなどで加熱押圧すれば、薄層2が接着性を発揮し、書画シート4を貼着用色紙3に容易に接着でき、書画シート付き色紙5を形成できる(図1(c))。前記における書画シートは和紙製が望ましいが、書画シート4の表面側から所定の加熱をして、貼着用色紙3の薄層2が接着性を発揮できれば、他の紙製、布製、樹脂製、写真用印画紙、金属箔等でも可能である。また、書画シートの表面に所定の書画を記載、印刷、感光等できるようになっている。また書画シートの表面に予め所定の書画を記載、印刷、感光等しておくことも可能である。
【0019】
また、アイロンなどで書画シート4の表面4aを再加熱すると共に、書画シート4を貼着用色紙3の反対側へ引張れば、薄層2の接着性が解除され、書画シート4を貼着用色紙3から容易に剥すことができる。
【0020】
前記実施例において、エチレン酢酸ビニール共重合樹脂に、熱可塑性樹脂の改質材のエチレンαオレフィン共重合体を加え、更に可塑剤を含まない酢酸ビニール樹脂のエマルジョン水溶性の一液溶液を使用して接着剤の薄層を形成したが、熱接着性と熱剥離性とを兼備したものであれば、他の接着剤を使用して、薄層2を形成することもできる。また、接着剤として、ポリオレフィン系樹脂からなる感熱タイプの接着性ポリマー(例えば、トーソー株式会社製「メルセン」のグレード:M−5002D)を使用することもできる。
【0021】
また、前記実施例において、書画表記物として、色紙1について説明したが、短冊6の表記部6aに、同様に接着剤の薄層2を設けて、貼着用短冊7を形成することもできる(図2(a))。この場合には、同様に貼着用短冊7の表記部6aに所定形状の書画シート4を加熱圧着して書画シート付き短冊7aを構成する。
【0022】
同様に、掛軸8の表記部8aに、同様に接着剤の薄層2を設けて貼着用掛軸9を形成することもできる(図2(b))。図中、10は掛軸の吊り紐、11は飾り枠を表す。この場合にも、同様に貼着用掛軸9の表記部8aに所定形状の書画シート4を加熱圧着して書画シート付き掛軸9aを構成する。
【0023】
更に、同様の構成で、額、ポスター用パネル、はがきなどの他の書画表記物にも応用できる(図示していない)。
【0024】
【実施例2】
図3に基づきこの考案に他の実施例を説明する。
【0025】
所定形状の和紙からなるシート体13の裏面14aに前記実施例1と同様の熱接着性と熱剥離性とを兼備した接着剤からなる薄層2を形成して、貼着用書画シート15を構成する(図3(a)(b))。前記シート体13の表面14は所定の書画を記載、印刷、感光等できるようになっている。あるいはシート体13の表面14に予め所定の書画を記載、印刷、感光等しておくことも可能である。
【0026】
所定の色紙1の表記部1aに前記貼着用書画シート15の裏面14aの薄層2側を載置し、貼着用書画シート15の表面14側からアイロンなどで加熱押圧すれば、薄層2が接着性を発揮し、貼着用書画シート15を色紙3に容易に接着でき、実施例1と同様の書画シート付き色紙5を形成できる(図3(c))。また、書画シート付き色紙5の貼着用書画シート15の表面14側から再加熱して、貼着用書画シート15を色紙5から剥がすことができる。
【0027】
前記実施例において、シート体13は和紙製が望ましいが、表面14側から所定の加熱をして薄層2が接着性を発揮できれば、他の紙製、布製、樹脂製、写真用印画紙、金属箔等でも可能である。
【0028】
また、貼着用書画シート15は、同様の構成で、短冊、掛軸、額、ポスター用パネル、はがきなどの他の書画表記物にも使用できる(図示していない)。
【0029】
【考案の効果】
熱接着性と熱剥離性とを兼備した接着剤層を介装した書画シート付き書画表記物としたので、また書画を表記する書画シートを貼着用書画表記物に着脱自在に固定できるので、あるいは貼着用書画シートを書画表記物に着脱自在に固定できるので、書画を書き損じた場合や書画が不要になった場合でも書画シートのみを取り外して廃棄でき、書画表記物は再利用できるので資源の無駄を省くことができる効果がある。また、別途製造した書画シート又は貼着用書画シートを、書画貼着用書画表記物又は書画表記物に、夫々容易に貼着できるので、書画シート付き書画表記物の大量生産ができると共に、書画表記物に書画を直接印刷等する場合に比べ、書画シートに印刷できるので変化に富んだ書画付き書画表記物を製造することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)はこの考案の実施例の一部を破切した貼着用色紙の平面図、(b)は使用状態の一部を省略した拡大縦断面図、(c)は書画シート付き色紙の一部を省略した拡大縦断面図である。
【図2】他の実施例の一部を破切した平面図で、(a)は書画シート付き短冊、(b)は書画シート付き掛軸を夫々表す。
【図3】(a)はこの考案の実施例の一部を破切した貼着用書画シートの裏面図、(b)は使用状態の一部を省略した拡大縦断面図、(c)は書画シート付き色紙の一部を省略した拡大縦断面図である。
【符号の説明】
1 色紙
1a 表記部
2 薄層
3 貼着用色紙
5 書画シート付き色紙
6 短冊
6a 表記部
7 貼着用短冊
7a 書画シート付き短冊
8 掛軸
8a 表記部
9 貼着用掛軸
9a 書画シート付き掛軸
13 シート体
15 貼着用書画シート

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】色紙、短冊、掛軸などの書画表記物において、前記書画表記物の表記部に、所定の書画シートを、熱接着性と熱剥離性とを兼備した接着剤を介して、層着したことを特徴とする書画シート付き書画表記物。
【請求項2】色紙、短冊、掛軸などの書画表記物において、前記書画表記物の表記部に、所定の書画シートを、熱接着性と熱剥離性とを兼備した接着剤を介して装着してなり、該該接着剤層は、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂の水性分散体にエチレンαオレフィン共重合の水性分散体を加え、更に可塑剤を含まない酢酸ビニル樹脂のエマルジョンを加えた混合溶液を塗布して乾燥して形成したことを特徴とする書画シート付き書画表記物。
【請求項3】色紙、短冊、掛軸などの書画表記物において、前記書画表記物の表記部に加熱接着性と加熱剥離性とを兼備した接着剤を層着したことを特徴とする貼着用書画表記物。
【請求項4】色紙、短冊、掛軸などの書画表記物において、前記書画表記物の表記部に熱接着性と熱剥離性とを兼備した接着剤層を形成してなり、該接着剤層は、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂の水性分散体にエチレンαオレフィン共重合の水性分散体を加え、更に可塑剤を含まない酢酸ビニル樹脂のエマルジョンを加えた混合溶液を塗布して乾燥して形成したことを特徴とする貼着用書画表記物。
【請求項5】色紙、短冊、掛軸などの書画表記物の表記部に貼着して使用する書画シートにおいて、シート体の一面に熱接着性と熱剥離性とを兼備した接着剤を層着したことを特徴とする貼着用書画シート。
【請求項6】色紙、短冊、掛軸などの書画表記物の表記部に貼着して使用する書画シートにおいて、シート体の一面に熱接着性と熱剥離性とを兼備した接着剤を層着し、該シート体の他面に印刷し、又は該他面を印刷可能に形成し、前記接着剤層は、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂の水性分散体にエチレンαオレフィン共重合の水性分散体を加え、更に可塑剤を含まない酢酸ビニル樹脂のエマルジョンを加えた混合溶液を塗布して乾燥して形成したことを特徴とする貼着用書画シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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