説明

最適化エンドヌクレアーゼおよびその使用

最適化エンドヌクレアーゼ、ならびに最適化エンドヌクレアーゼを用いるポリヌクレオチドの標的化された組込み、標的化された欠失または標的化された突然変異の方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最適化エンドヌクレアーゼ、および最適化エンドヌクレアーゼを用いたポリヌクレオチドの標的組み込み、標的欠失もしくは標的変異の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲノム工学は、ゲノム内で特定の遺伝子配列を挿入する、欠失させる、置換する、もしくは他に操作を行うさまざまな技術を総括する一般的用語であり、治療およびバイオテクノロジーに数多く応用される。あらゆるゲノム工学技術は、多かれ少なかれ、相同組み換えを進めるために、リコンビナーゼ、インテグラーゼ、または所定の部位でDNA二本鎖切断を引き起こすエンドヌクレアーゼを使用する。
【0003】
DNA二本鎖切断を引き起こすために非常に多くの方法が用いられてきたという事実にもかかわらず、ゲノム内の高度に特異的な部位でDNA二本鎖切断を生じさせる有効な手段を開発することは、依然として、遺伝子治療、農業科学技術、および合成生物学における主たる目標である。
【0004】
この目的を達成するための1つのアプローチは、ゲノム内で1カ所にしか存在しないほど大きな配列に特異性を有するヌクレアーゼを使用することである。このような約15から30ヌクレオチドの大きなDNA配列を認識するヌクレアーゼは、そのために「メガヌクレアーゼ」または「ホーミングエンドヌクレアーゼ」と呼ばれ、植物および真菌のゲノムによく見られるグループ1自己スプライシング型イントロンおよびインテインなどの、寄生的DNA要素と結びついていることが多い。メガヌクレアーゼは、通常4つのファミリーに分類される:LAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-Cys boxファミリーおよびHNH ファミリー。これらのファミリーは、構造モチーフに特徴があり、それが触媒活性およびそれらのDNA認識配列の配列に影響を及ぼす。
【0005】
LAGLIDADGファミリーの天然メガヌクレアーゼは、昆虫および哺乳動物細胞培養において、ならびに植物、酵母、もしくはマウスなどの多くの生物においても、部位特異的ゲノム修飾を効果的に促進するために使用されているが、このアプローチはDNA認識配列が保存されている相同遺伝子の改変、または認識配列が導入された操作済みゲノムに限定されている。こうした限定を回避して、DNA二本鎖切断で引き起こされる遺伝子改変の計画的な実施を推進するために、新しいタイプのヌクレアーゼが作製された。
【0006】
ある種の新規ヌクレアーゼは、非特異的ヌクレアーゼと特異性の高いDNA結合ドメインとの人工的な組み合わせで構成される。この戦略の有効性は、改変されたジンクフィンガーDNA結合ドメインとFokI制限酵素の非特異的ヌクレアーゼドメインとの間のキメラ融合を用いて、さまざまな生物で実証されている(たとえばWO03/089452)。このアプローチのバリエーションが、Lippow et al., “Creation of a type IIS restriction endonuclease with a long recognition sequence”, Nucleic Acid Research (2009), Vol.37, No.9, pp. 3061-3073に記載のように、メガヌクレアーゼの不活性バリアントを、FokIのような非特異的ヌクレアーゼと融合させるDNA結合ドメインとして使用することである。
【0007】
もう一つのアプローチは、天然メガヌクレアーゼのDNA結合領域を、ゲノム内に存在する部位に結合するようにカスタマイズするために、天然メガヌクレアーゼを遺伝子操作することであり、それによって新たな特異性を有する遺伝子操作されたメガヌクレアーゼを作製することである(たとえば、WO07093918、WO2008/093249、WO09114321)。しかしながら、DNA切断特異性に関して操作された多くのメガヌクレアーゼは、それらの由来する起源である天然に存在するメガヌクレアーゼと比べて切断活性が低下していた(US2010/0071083)。ほとんどのメガヌクレアーゼは、その最適な結合部位に類似した配列にも作用するが、そのことは、意図しない、または有害でさえあるオフターゲット効果をもたらす可能性がある。たとえば、改変ヌクレアーゼの細胞核への、ひいてはその標的部位への輸送を、デキサメタゾンもしくは類似化合物の添加によって促進または誘導するために、ヌクレアーゼをラットのグルココルチコイド受容体のリガンド結合ドメインと融合させることによって、メガヌクレアーゼによって引き起こされる相同組み換えの効率を高めるいくつかのアプローチがすでになされている(WO2007/135022)という事実にもかかわらず、当技術分野において、高い相同組み換え誘導率、および/またはその結合部位について高い特異性を有し、それによってオフターゲット効果のリスクを抑えるメガヌクレアーゼを開発する必要性はまだ残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第03/089452号パンフレット
【特許文献2】国際公開第07/093918号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2008/093249号パンフレット
【特許文献4】国際公開第09/114321号パンフレット
【特許文献5】米国特許出願第2010/0071083号明細書
【特許文献6】国際公開第2007/135022号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Lippow et al., “Creation of a type IIS restriction endonuclease with a long recognition sequence”, Nucleic Acid Research (2009), Vol.37, No.9, pp. 3061-3073
【発明の概要】
【0010】
本発明は、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼファミリーの最適化型エンドヌクレアーゼ、特に、配列番号1、15、16、17または19により記載されるポリペプチドに対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む最適化エンドヌクレアーゼを提供する。本発明の一実施形態においては、最適化エンドヌクレアーゼは、配列番号1により記載されるI-SceIの野生型もしくは遺伝子操作型、あるいは
a) I-SceI -1、I-SceI -2、I-SceI -3、I-SceI -4、I-SceI -5、I-SceI -6、I-SceI -7、I-SceI -8およびI-SceI -9;
b) S229K、S229A、S229P、S229G、S229E、S229Q、S229D、S229N、S229C、S229Y、S229T、M203K、M203H、M203R、Q77K、Q77H、Q77R、E130K、E130H、E130R、Y199K、Y199HおよびY199R;
c) アミノ酸配列の開始メチオニン後のメチオニン、バリン、グリシン、トレオニン、セリン、アラニン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、アスパラギン、イソロイシンもしくはヒスチジン;または
d) 上記のa)およびb)、a)およびc)、b)およびc)もしくはa)、b)およびc)から選択される1個以上の突然変異の組合せ、
の群より選択される1個以上の突然変異を有する、アミノ酸レベルで少なくとも55%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するその相同体(ホモログ)の1つである。
【0011】
本発明の一実施形態においては、最適化エンドヌクレアーゼは、配列番号2、3または5により記載されるアミノ酸配列を含む。
【0012】
本発明のさらなる実施形態においては、最適化エンドヌクレアーゼは、配列番号1、15、16、17または19により記載されるポリペプチドに対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む遺伝子操作型のエンドヌクレアーゼである。
【0013】
別の実施形態においては、本発明は、配列番号1により記載されるポリペプチドに対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するエンドヌクレアーゼ、またはアミノ酸配列TISSETFLKのアミノ酸のいずれか1個の欠失もしくは突然変異により、アミノ酸配列TISSETFLKが除去された、配列番号1により記載されるポリペプチドに対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する遺伝子操作型のエンドヌクレアーゼを提供する。本発明の別の好ましい実施形態は、配列番号1または2により記載されるポリペプチドに対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、配列番号1のセリンNr 229の突然変異を含むアミノ酸配列を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の最適化エンドヌクレアーゼである。本発明のさらなる実施形態においては、最適化エンドヌクレアーゼを、少なくとも1個の亜鉛フィンガードメイン、または転写活性化因子様(TAL)エフェクターから誘導される少なくとも1個の反復単位、または少なくとも1個の亜鉛フィンガードメインと転写活性化因子様(TAL)エフェクターから誘導される少なくとも1個の反復単位に融合させる。好ましくは、最適化エンドヌクレアーゼは、SecIIIまたはSecIV分泌シグナルを含む。本発明はまた、最適化エンドヌクレアーゼをコードする、ポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドも提供する。好ましくは、このポリヌクレオチドはコドン最適化されているか、または低含量のRNA不安定性の誘因を有するか、または低含量のコドン反復を有するか、または低含量の潜在的(cryptic)スプライス部位を有するか、または低含量の代替的開始コドンを有する、低含量の制限部位を有するか、または低含量のRNA二次構造を有するか、または上記の特徴の任意の組合せを有する。本発明の別の実施形態は、プロモーターおよびターミネーター配列と機能し得る形で組合せた上記の単離されたポリヌクレオチドを含む発現カセットである。本発明の他の実施形態は、最適化エンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、もしくは最適化エンドヌクレアーゼをコードする単離されたポリヌクレオチド、もしくは最適化エンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含むベクター、宿主細胞または非ヒト生物、ならびに上記のエンドヌクレアーゼ、ポリヌクレオチドおよび発現カセットの組合せを含むベクター、宿主細胞または非ヒト生物である。好ましくは、非ヒト生物は植物である。
【0014】
本発明は、相同組換えまたは末端結合事象を誘導するための、好ましくは、切り出した配列の標的化された組込みのための方法における、本明細書に記載のエンドヌクレアーゼの使用方法を提供する。好ましくは、切り出される配列はマーカー遺伝子である。本発明はさらに、下記工程:a) 相同組換えにとってコンピテントな細胞を用意すること、b) 配列Aおよび配列Bに側部に連結された(flanked)最適化エンドヌクレアーゼのDNA認識部位を含むポリヌクレオチドを用意すること、c) 前記細胞中での相同組換えを可能にするために十分に長く、配列Aおよび配列Bと相同である配列A'およびB'を含むポリヌクレオチドを用意すること、ならびにd) 本明細書に記載の最適化エンドヌクレアーゼもしくは本明細書に記載の発現カセットを用意すること、e) 前記細胞中でb)、c)およびd)を混合すること、ならびにf) b)およびc)の組換えポリヌクレオチドを検出すること、またはb)およびc)の組換えポリヌクレオチドを含む細胞を選択するか、もしくは増殖させることを含む、ポリヌクレオチドの相同組換えのための方法を提供する。好ましくは、ポリヌクレオチドの相同組換えのための方法は、相同組換えを誘導し、そこで工程a)のコンピテント細胞に含まれるポリヌクレオチド配列が、工程f)の増殖中の細胞のゲノムから欠失する。本発明のさらなる方法は、下記工程:a) 最適化エンドヌクレアーゼのDNA認識部位を含むポリヌクレオチドを含む細胞を用意すること、b) 工程a)のDNA認識部位を切断することができる請求項1〜7のいずれか一項に記載の最適化エンドヌクレアーゼもしくは請求項10に記載の発現カセットを用意すること、c) 前記細胞中でa)およびb)を混合すること、ならびにd) 突然変異したポリヌクレオチドを検出するか、または突然変異したポリヌクレオチドを含む細胞を選択するか、もしくは増殖させることを含む、標的化された突然変異のための方法である。
【0015】
本発明の別の好ましい実施形態においては、上記方法は、最適化エンドヌクレアーゼとDNA認識部位とを、生物の交配を介して、形質転換を介して、または最適化エンドヌクレアーゼに融合させたSecIIIもしくはSecIVペプチドに媒介される輸送を介して、少なくとも1個の細胞中で混合する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】3つの異なるI-SceI変異体(バリアント)による誘導された組換え後の、β-グルクロニダーゼ活性の回復(青色の苗の割合%)により測定された、相同組換えの頻度の比較を示す。それぞれのI-SceI変異体を、試験構築物を担持する5つの異なる植物系において試験した。それぞれの組合せについて、T2世代の96個の苗をβ-グルクロニダーゼ活性について分析した(配列番号1により記載されるアミノ酸配列を有する「I-SceI」;配列番号3により記載されるアミノ酸配列を有する「I-SceI c-末端改変」;配列番号5により記載されるアミノ酸配列を有する「NLS I-SceI c-末端改変」)。実施例10bも参照されたい。
【図2】異なるI-SceI相同体の配列アラインメントを示し、1は配列番号1であり、2は配列番号15であり、3は配列番号16であり、4は配列番号17であり、5は配列番号18である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、代替的なDNA二本鎖破壊誘導酵素として用いることができる最適化エンドヌクレアーゼを提供する。本発明はまた、これらの最適化エンドヌクレアーゼの使用方法も提供する。
【0018】
最適化エンドヌクレアーゼは、I-Sce-Iの変異体(配列番号1により記載される)およびアミノ酸レベルで少なくとも55%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するI-Sce Iの相同体である。最適化型のI-SceIは、最適化I-SceIとも呼ばれる。
【0019】
I SceIエンドヌクレアーゼの相同体を、他の生物からクローニングするか、またはLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを突然変異させることにより、例えば、所与のLAGLIDADGエンドヌクレアーゼのアミノ酸配列のアミノ酸を置換し、付加するか、もしくは欠失させることにより作製することができる。
【0020】
例えば、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼのアミノ酸配列に核局在化シグナルを付加し、および/または1個以上のアミノ酸を変化させ、および/またはその配列の部分、例えば、N末端の部分もしくはそのC末端の部分を欠失させることができる。
【0021】
他の生物からクローニングすることができるI-SceIの相同体の例を表1に記載する。
【表1】

【0022】
本発明において有用なLAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、藻類、菌類、酵母、原生動物、葉緑体、ミトコンドリア、細菌および古細菌のゲノム中に見出すことができる。LAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、少なくとも1個の保存されたLAGLIDADGモチーフを含む。LAGLIDADGモチーフの名称は、全てのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼ中に出現する特徴的なアミノ酸配列に基づく。用語「LAGLIDADG」は、STANDARD ST.25、すなわち、特許出願のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列表の提示のためのPCIPI Executive Coordination Committeeにより採用された標準物に記載の1文字コードに従うこのアミノ酸配列の頭字語である。
【0023】
しかしながら、LAGLIDADGモチーフは全てのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼ中で完全には保存されておらず(例えば、Chevalierら(2001), Nucleic Acids Res. 29(18): 3757〜3774、またはDalgaardら(1997), Nucleic Acids Res. 25(22): 4626〜4638を参照されたい)、いくつかのLAGLIDADGエンドヌクレアーゼはそのLAGLIDADGモチーフ中にいくつかの1個または数個のアミノ酸変化を含む。ただ1個のLAGLIDADGモチーフを含むLAGLIDADGエンドヌクレアーゼは通常、ホモまたはヘテロダイマーとして働く。2個のLAGLIDADGモチーフを含むLAGLIDADGエンドヌクレアーゼは、モノマーとして働き、通常は偽ダイマー構造を含む。
【0024】
LAGLIDADGエンドヌクレアーゼを、表1に例として記載した生物のポリヌクレオチドから単離するか、または当業界で公知の技術により、例えば、当業者には公知の公共データベース、例えば、Genbank(Benson (2010)), Nucleic Acids Res 38:D46-51)もしくはSwissprot (Boeckmann (2003), Nucleic Acids Res 31:365-70)で利用可能な配列情報を用いてde novo合成することができる。
【0025】
LAGLIDADGエンドヌクレアーゼの収集物を、タンパク質ファミリーに関するPFAMデータベース中に見出すことができる。PFAMデータベース受託番号PF00961はLAGLIDADG 1タンパク質ファミリーを記載しており、それは約800個のタンパク質配列を含む。PFAMデータベース受託番号PF03161はLAGLIDADG 2タンパク質ファミリーのメンバーを記載しており、それは約150個のタンパク質配列を含む。LAGLIDADGエンドヌクレアーゼの代替的な収集物を、Inter-Proデータベースに、例えば、InterPro受託番号IPR004860に見出すことができる。
【0026】
LAGLIDADGエンドヌクレアーゼの相同体を作製する別の方法は、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼのアミノ酸配列を突然変異させて、そのDNA結合親和性、そのダイマー形成親和性を改変するか、またはそのDNA認識配列を変化させることである。タンパク質構造の決定ならびにLAGLIDADGエンドヌクレアーゼの相同体の配列アラインメントにより、そのDNA結合親和性、その酵素活性に影響するか、またはそのDNA認識配列を変化させるために変化させることができるアミノ酸に関する合理的な選択が可能になる。
【0027】
本明細書で用いられる用語「DNA結合親和性」は、参照DNA分子(例えば、DNA認識配列もしくは任意の配列)と非共有結合するメガヌクレアーゼまたはLAGLIDADGエンドヌクレアーゼの性質を意味する。結合親和性は、解離定数KDにより測定する(例えば、WT DNA認識配列に関するI-SceIのKDは、約0.1 nMである)。本明細書で用いられるように、メガヌクレアーゼは、参照DNA認識配列に対する組換えメガヌクレアーゼのKDが参照メガヌクレアーゼまたはLAGLIDADGエンドヌクレアーゼと比較して統計的に有意な(p<0.05)量で増加または減少する場合、「変化した」結合親和性を有する。
【0028】
本明細書で用いられる用語「酵素活性」とは、メガヌクレアーゼ、例えば、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼが特定のDNA認識配列を切断する速度を指す。そのような活性は、二本鎖DNAのホスホジエステル結合の加水分解を含む測定可能な酵素反応である。特定のDNA基質に対して作用するメガヌクレアーゼの活性は、その特定のDNA基質に対するメガヌクレアーゼの親和性またはアビディティーにより影響され、次いで、DNAとの配列特異的相互作用と非配列特異的相互作用の両方により影響される。
【0029】
ヌクレアーゼを、そのエンドヌクレアーゼ活性を破壊することなく、そのアミノ酸配列の50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1個のアミノ酸を欠失させることによりさらに最適化することができる。例えば、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼのアミノ酸配列の一部を欠失させる場合、上記のLAGLIDADGエンドヌクレアーゼモチーフを保持することが重要である。
【0030】
PEST配列またはKEN-ボックス、D-ボックスおよびA-ボックスなどの他の脱安定化モチーフを欠失させるのが好ましい。これらのモチーフを、PEST配列への単一のアミノ酸交換の導入、例えば、正に荷電したアミノ酸(アルギニン、ヒスチジンおよびリジン)の導入により破壊することもできる。
【0031】
LAGLIDADGエンドヌクレアーゼのDNA結合親和性を改変するか、またはそのDNA認識部位を変化させるために突然変異されたLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを、遺伝子操作されたエンドヌクレアーゼと呼ぶ。I-SceIならびにアミノ酸レベルで少なくとも55%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するI-SceIの相同体を、他のLAGLIDADGエンドヌクレアーゼのように遺伝子操作して、そのDNA結合親和性、その酵素活性を変化させるか、またはそのDNA認識配列を変化させることができる。遺伝子操作型のI-SceIおよびアミノ酸レベルで少なくとも55%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するI-SceIの相同体。
【0032】
従って、本発明の一実施形態においては、最適化エンドヌクレアーゼは、遺伝子操作型のI-SceIまたはアミノ酸レベルで少なくとも55%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有し、それが天然に存在するままの対応するLAGLIDADGエンドヌクレアーゼを意味するその非遺伝子操作形態と比較した場合、変化したDNA結合親和性、変化した酵素活性、または変化したDNA認識配列を有するI-SceIの相同体である。
【0033】
本発明の別の実施形態においては、最適化エンドヌクレアーゼは、配列番号1により記載されるI-SceIの変異体またはそれらが天然に存在するようなアミノ酸レベルで少なくとも55%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するその相同体である。
【0034】
天然には存在しないが、突然変異A36G、L40M、L40V、I41S、I41N、L43A、H91AおよびI123Lのうちの少なくとも1個を有し、I-SceIのDNA結合親和性に対してほとんど効果がないか、またはそのDNA認識配列を変化させるであろう相同体も、配列番号1により記載されるI-SceIまたはそれが天然に存在するようなアミノ酸レベルで少なくとも55%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有する対応する相同体と比較した場合に、それらがそのDNA結合親和性、その酵素活性、もしくはそのDNA認識配列を変化させる他の突然変異を含まない限り、天然に存在する相同体であると考えられるであろう。
【0035】
DNA結合親和性が増加したか、または減少した遺伝子操作型のI-SceIは、例えば、参照により本明細書に含まれるものとするWO 07/047859およびWO 09/076292に開示されている。
【0036】
特に明記しない限り、すべての変異体は、それぞれのエンドヌクレアーゼの野生型アミノ酸配列のアミノ酸番号にしたがって命名され、たとえば、I-SceIの変異体L19は、配列番号1に記載の野生型I-SceIアミノ酸配列の19位のロイシンのアミノ酸が交換されている。I-SceIのL19H変異体は、野生型I-SceIアミノ酸配列19位のアミノ酸ロイシンがヒスチジンで置換されている。
【0037】
たとえば、I-SceIのDNA結合親和性は、(a) D201、L19、L80、L92、Y151、Y188、I191、Y199もしくはY222 のH, N, Q, S, T, K もしくはR による置換;または(b) N15、N17、S81、H84、N94、N120、T156、N157、S159、N163、Q165、S166、N194もしくはS202のKもしくはRによる置換、からなる一群から選択される置換に相当する、少なくとも1つの改変によって、増加させることができる。
【0038】
I-SceIのDNA結合親和性は、(a) K20, K23, K63, K122, K148, K153, K190, K193, K195もしくはK223のH, N, Q, S, T, D もしくはE による置換;または(b) L19、L80、L92、Y151、Y188、I191、Y199、Y222、N15、N17、S81、H84、N94、N120、T156、N157、S159、N163、Q165、S166、N194もしくはS202のDもしくはEによる置換、からなる一群から選択される置換に相当する、少なくとも1つの変異によって、減少させることができる。
【0039】
変化したDNA認識配列を有する、I-SceI, I-CreI, I-MsoIおよびI-CeuIの遺伝子操作された型は、たとえば、WO07/047859およびWO09/076292に記載されている。
【0040】
たとえば、I-SceIの重要なDNA認識部位は次の配列を有する(配列番号12で表される):
センス 5'- T T A C C C T G T T A T C C C T A G -3’
塩基位置: 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
アンチセンス 3'- A A T G G G A C A A T A G G G A T C -5'
I-SceIの次の変異は、4位でのCの優先をAに変える:K50。
【0041】
I-SceIの次の変異は、4位でのCの優先を維持する:K50、CE57。
【0042】
I-SceIの次の変異は、4位でのCの優先をGに変える:E50、R57、K57。
【0043】
I-SceIの次の変異は、4位でのCの優先をTに変える:K57、M57、Q50。
【0044】
I-SceIの次の変異は、5位でのCの優先をAに変える:K48、Q102。
【0045】
I-SceIの次の変異は、5位でのCの優先を維持する:R48、K48、E102、E59。
【0046】
I-SceIの次の変異は、5位でのCの優先をGに変える:E48、K102、R102。
【0047】
I-SceIの次の変異は、5位でのCの優先をTに変える:Q48、C102、L102、V102。
【0048】
I-SceIの次の変異は、6位でのCの優先をAに変える:K59。
【0049】
I-SceIの次の変異は、6位でのCの優先を維持する:R59、K59。
【0050】
I-SceIの次の変異は、6位でのCの優先をGに変える:K84、E59。
【0051】
I-SceIの次の変異は、6位でのCの優先をTに変える:Q59、Y46。
【0052】
I-SceIの次の変異は、7位でのTの優先をAに変える:C46、L46、V46。
【0053】
I-SceIの次の変異は、7位でのTの優先をCに変える:R46、K46、E86。
【0054】
I-SceIの次の変異は、7位でのTの優先をGに変える:K86、R86、E46。
【0055】
I-SceIの次の変異は、7位でのTの優先を維持する:K68、C86、L86、Q46*。
【0056】
I-SceIの次の変異は、8位でのGの優先をAに変える:K61、S61、V61、A61、L61。
【0057】
I-SceIの次の変異は、8位でのGの優先をCに変える:E88、R61、H61。
【0058】
I-SceIの次の変異は、8位でのGの優先を維持する:E61、R88、K88。
【0059】
I-SceIの次の変異は、8位でのGの優先をTに変える:K88、Q61、H61。
【0060】
I-SceIの次の変異は、9位でのTの優先をAに変える:T98、C98、V98、L9B。
【0061】
I-SceIの次の変異は、9位でのTの優先をCに変える:R98、K98。
【0062】
I-SceIの次の変異は、9位でのTの優先をGに変える:E98、D98。
【0063】
I-SceIの次の変異は、9位でのTの優先を維持する:Q98。
【0064】
I-SceIの次の変異は、10位でのTの優先をAに変える:V96、C96、A96。
【0065】
I-SceIの次の変異は、10位でのTの優先をCに変える:K96、R96。
【0066】
I-SceIの次の変異は、10位でのTの優先をGに変える:D96、E96。
【0067】
I-SceIの次の変異は、10位でのTの優先を維持する:Q96。
【0068】
I-SceIの次の変異は、11位でのAの優先を維持する:C90、L90。
【0069】
I-SceIの次の変異は、11位でのAの優先をCに変える:K90、R90。
【0070】
I-SceIの次の変異は、11位でのAの優先をGに変える:E90。
【0071】
I-SceIの次の変異は、11位でのAの優先をTに変える:Q90。
【0072】
I-SceIの次の変異は、12位でのTの優先をAに変える:Q193。
【0073】
I-SceIの次の変異は、12位でのTの優先をCに変える:E165、E193、D193。
【0074】
I-SceIの次の変異は、12位でのTの優先をGに変える:K165、R165。
【0075】
I-SceIの次の変異は、12位でのTの優先を維持する:C165、L165、C193、V193、A193、T193、S193。
【0076】
I-SceIの次の変異は、13位でのCの優先をAに変える:C193、L193。
【0077】
I-SceIの次の変異は、13位でのCの優先を維持する:K193、R193、D192。
【0078】
I-SceIの次の変異は、13位でのCの優先をGに変える:E193、D193、K163、R192。
【0079】
I-SceIの次の変異は、13位でのCの優先をTに変える:Q193、C163、L163。
【0080】
I-SceIの次の変異は、14位でのCの優先をAに変える:L192、C192。
【0081】
I-SceIの次の変異は、14位でのCの優先を維持する:E161、R192、K192。
【0082】
I-SceIの次の変異は、14位でのCの優先をGに変える:K147、K161、R161、R197、D192、E192。
【0083】
I-SceIの次の変異は、14位でのCの優先をTに変える:K161、Q192。
【0084】
I-SceIの次の変異は、15位でのCの優先を維持する:E151。
【0085】
I-SceIの次の変異は、15位でのCの優先をGに変える:K151。
【0086】
I-SceIの次の変異は、15位でのCの優先をTに変える:C151、L151、K151。
【0087】
I-SceIの次の変異は、17位でのAの優先を維持する:N152、S152、C150、L150
、V150、T150。
【0088】
I-SceIの次の変異は、17位でのAの優先をCに変える:K152、K150。
【0089】
I-SceIの次の変異は、17位でのAの優先をGに変える:N152、S152、D152、D150、E150。
【0090】
I-SceIの次の変異は、17位でのAの優先をTに変える:Q152、Q150。
【0091】
I-SceIの次の変異は、18位でのGの優先をAに変える:K155、C155。
【0092】
I-SceIの次の変異は、18位でのGの優先をCに変える:R155、K155。
【0093】
I-SceIの次の変異は、18位でのGの優先を維持する:E155。
【0094】
I-SceIの次の変異は、18位でのGの優先をTに変える:H155、Y155。
【0095】
いくつかの変異の組み合わせは、効果を強める可能性がある。1つの例が、三重変異体W149G、D150CおよびN152Kであって、これはI-SceIの17位でのAに対する優先性がGに変化したものである。
【0096】
酵素活性を保存するために、I-SceIまたはアミノ酸レベルで少なくとも55%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するその相同体の突然変異I38S、I38N、G39D、G39R、L40Q、L42R、D44E、D44G、D44H、D44S、A45E、A45D、Y46D、I47R、I47N、D144E、D145E、D145NおよびG146Eを避けるべきである。
【0097】
I-SceIまたはアミノ酸レベルで少なくとも55%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するその相同体の酵素活性、DNA結合親和性、DNA認識配列を変化させる突然変異を組合わせて、遺伝子操作されたエンドヌクレアーゼ、例えば、I-SceIに基づき、配列番号1により記載されるI-SceIと比較した場合、変化したDNA結合親和性および/または変化したDNA認識配列を有する遺伝子操作されたエンドヌクレアーゼを作製することができる。
【0098】
I-SceIの合理的遺伝子操作の他に、分子進化を用いることにより、I-SceIまたはアミノ酸レベルで少なくとも55%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するその相同体の酵素活性、DNA結合親和性、DNA認識配列を変化させることもできる。例えば、候補エンドヌクレアーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドを、DNAシャッフリングプロトコルを用いて調節することができる。DNAシャッフリングは、関連遺伝子プールの無作為断片化、次いで、ポリメラーゼ連鎖反応様プロセスによる該断片の集合化により実施される、再帰的組換えおよび突然変異のプロセスである。例えば、Stemmer (1994) Proc Natl Acad Sci USA 91:10747-10751; Stemmer (1994) Nature 370:389-391; ならびに米国特許第5,605,793号、米国特許第5,837,458号、米国特許第5,830,721号および米国特許第5,811,238号を参照されたい。遺伝子操作されたエンドヌクレアーゼを、所与のエンドヌクレアーゼの結晶構造のさらなる知識に基づく合理的設計を用いることにより作製することもできる。例えば、Fajardo-Sanchezら、Computer design of obligate heterodimer meganucleases allows efficient cutting of custom DNA sequences, Nucleic Acids Research, 2008, Vol. 36, No. 7 2163-2173を参照されたい。
【0099】
遺伝子操作されたエンドヌクレアーゼのいくつかの例、ならびにその対応するDNA認識部位は当業界で公知であり、例えば、参照により本明細書に含まれるものとするWO 2005/105989、WO 2007/034262、WO 2007/047859、WO 2007/093918、WO 2008/093249、WO 2008/102198、WO 2008/152524、WO 2009/001159、WO 2009/059195、WO 2009/076292、WO 2009/114321、またはWO 2009/134714、WO 10/001189に開示されている。
【0100】
最適化ヌクレアーゼを作製するための突然変異および変化を、遺伝子操作されたエンドヌクレアーゼを作製するのに用いられる突然変異と組合わせることができる。例えば、I-SceIの相同体は本明細書に記載の最適化ヌクレアーゼであってよいが、そのDNA結合親和性を変化させ、および/またはそのDNA認識配列を変化させるのに用いられる突然変異を含んでもよい。
【0101】
I-SceIまたはアミノ酸レベルで少なくとも55%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するその相同体のアミノ酸配列、ならびにI-SceIまたはアミノ酸レベルで少なくとも55%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するその相同体をコードするポリヌクレオチドを、I-SceIまたはアミノ酸レベルで少なくとも55%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するその相同体を発現させることを目的として、生物のコドン使用に前記ポリヌクレオチド配列を適合させることにより、または、代替的開始コドンを欠失させることにより、またはエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド配列から潜在的(cryptic)ポリアデニル化シグナルを欠失させることにより、改良することができる。
【0102】
最適化ヌクレアーゼを作製するのに用いられる突然変異:
最適化型のI-SceIまたはアミノ酸レベルで少なくとも55%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するその相同体などの最適化ヌクレアーゼは、対応するLAGLIDADGエンドヌクレアーゼのアミノ酸配列を変化させてタンパク質安定性を増強することにより、最適化することができる。従って、最適化ヌクレアーゼは、非最適化ヌクレアーゼのアミノ酸配列と比較して、
a) PEST配列、
b) KENボックス、
c) Aボックス、
d) Dボックス、
を含まないか、もしくは減少した数のそれを有するか、または
e) N末端則に従って安定性について最適化されたN末端を含む、
f) 第2のN末端アミノ酸としてグリシンを含む、もしくは、
g) a)、b)、c)、d)、e)およびf)の任意の組合せを含む。
【0103】
PEST配列は、約12アミノ酸長の配列であり、少なくとも1つのプロリン、1つのアスパラギン酸もしくはグルタミン酸、および少なくとも1つのセリンまたはスレオニンを含有する。PEST配列はたとえば、Rechsteiner M, Rogers SW. “PEST sequences and regulation by proteolysis.” Trends Biochem. Sci. 1996; 21(7), 267から271ページに記載されている。
KENボックスのアミノ酸コンセンサス配列は、KENXXX(N/D)である
Aボックスのアミノ酸コンセンサス配列は、AQRXLXXSXXXQRVLである
Dボックスのアミノ酸コンセンサス配列は、RXXLである。
【0104】
ヌクレアーゼを分解に対して安定化するための他の方法は、それぞれのエンドヌクレアーゼのN末端のアミノ酸配列を、N末端則にしたがって最適化することである。真核生物における発現に最適化されたヌクレアーゼは、メチオニン、バリン、グリシン、スレオニン、セリン、アラニンもしくはシステインを、アミノ酸配列の開始メチオニンの後に含有する。原核生物における発現に最適化されたヌクレアーゼは、アミノ酸配列の開始メチオニンの後に、メチオニン、バリン、グリシン、スレオニン、セリン、アラニン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、アスパラギン、イソロイシンもしくはヒスチジンを含有する。
【0105】
ヌクレアーゼは、そのエンドヌクレアーゼ活性を損なうことなく、そのアミノ酸配列のうち50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、もしくは1アミノ酸を欠失させることによって、さらに最適化することができる。たとえば、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼのアミノ酸配列の一部を欠失させる場合、上記のLAGLIDADGエンドヌクレアーゼモチーフを保持していることが重要である。
【0106】
ヌクレアーゼを最適化するもう一つの方法は、核局在化シグナル、たとえば配列番号4で表される核局在化シグナルを、ヌクレアーゼのアミノ酸配列に加えることである。
【0107】
最適化されたヌクレアーゼは、上記の方法および特徴を組み合わせて含んでいてもよく、たとえば、核局在化シグナルを含み、2番目のN-末端アミノ酸としてグリシンを含有してもよく、もしくはC末端に欠失を含んでいてもよく、またはこうした特徴を組み合わせて含んでいてもよい。たとえば、上記の方法および特徴を組み合わせて有する、最適化されたヌクレアーゼは、たとえば配列番号2、3、および5に記載される。
【0108】
最適化されたヌクレアーゼは、配列:HVCLLYDQWVLSPPH、LAYWFMDDGGK、KTIPNNLVENYLTPMSLAYWFMDDGGK、KPIIYIDSMSYLIFYNLIK、KLPNTISSETFLKもしくはTISSETFLKで表されるアミノ酸配列を含有しない、
または、配列:HVCLLYDQWVLSPPH、LAYWFMDDGGK、KPIIYIDSMSYLIFYNLIK、KLPNTISSETFLKもしくはTISSETFLKで表されるアミノ酸配列を含有しない、
または、配列:HVCLLYDQWVLSPPH、LAYWFMDDGGK、KLPNTISSETFLKもしくはTISSETFLKで表されるアミノ酸配列を含有しない、
または、配列:LAYWFMDDGGK、KLPNTISSETFLKもしくはTISSETFLKで表されるアミノ酸配列を含有しない、
または、配列:KLPNTISSETFLKもしくはTISSETFLKで表されるアミノ酸配列を含有しない。
【0109】
ある実施形態において、最適化されたヌクレアーゼは、野生型I-SceI、またはアミノ酸レベルで少なくとも55%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%配列同一性を有し、かつC末端にアミノ酸配列TISSETFLKを有するそのホモログのC末端で、アミノ酸配列TISSETFLKが欠失または変異している、I-SceI、またはアミノ酸レベルで少なくとも55%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%配列同一性を有するそのホモログである。
【0110】
アミノ酸配列TISSETFLKは、野生型I-SceI、またはアミノ酸レベルで少なくとも55%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%配列同一性を有し、かつC末端にアミノ酸配列TISSETFLKを有するそのホモログの、C末端の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、もしくは9アミノ酸を欠失または変異させることによって、欠失または変異させることができる。
【表2】

【0111】
本発明のある実施形態において、I-SceIの最適化されたヌクレアーゼまたは最適化されたバージョンおよびアミノ酸レベルで少なくとも55%, 58%, 60%, 70%, 80%, 85%, 90%, 92%, 93%, 94%, 95%, 96%, 97%, 98%または99%配列同一性を有するそのホモログは、次の突然変異:L74K, Y75H, Q77K, E130K, T134H, Y199H, M203K, Y205Hの少なくとも1つを有する。
【0112】
同様に好ましいのは、配列番号1に記載の野生型I-SceIのアミノ酸配列の229位のセリンをLys、Ala、Pro、Gly、Glu、GIn、Asp、Asn、Cys、TyrまたはThrに変異させることである。それによって、I-SceI変異体S229K、S229A、S229P、S229G、S229E、S229Q、S229D、S229N、S229C、S229Y、またはS229Tが作製される。野生型I-SceIのアミノ酸番号229は配列番号2においてアミノ酸番号230である。
【0113】
本発明のもう1つの実施形態において、配列番号1に記載の野生型I-SceIのアミノ酸配列の202位のアミノ酸であるメチオニン(配列番号2を基準とすればアミノ酸203)をLys、HisまたはArgに変異させる。それによって、I-SceI変異体M202K、M202H、およびM202Rが作製される。
【0114】
あるいはたま、アミノ酸配列TISSETFLKを突然変異させることができ、例えばアミノ酸配列TIKSETFLKまたはAIANQAFLKに突然変異させることができる。
【0115】
好ましい最適化型I-SceIは、欠失体I-SceI -1, I-SceI -2, I-SceI -3, I-SceI -4, I-SceI -5, I-SceI -6, I-SceI -7, I-SceI -8, I-SceI -9ならびに変異体S229KおよびS229Aであり、より好ましいのは、欠失体I-SceI -1, I-SceI -2, I-SceI -3, I-SceI -4, I-SceI -5, I-SceI -6および変異体S229Kである。最も好ましいのは欠失変異体I-SceI -5 (SEQ ID O 30)および変異体S229Kである。
【0116】
たとえば、I-SceI -1の欠失とS229Aの変異とを組み合わせることによって、上記の欠失および変異を組み合わせることも可能であり、それによってC末端にアミノ酸配列TIASETFLが作製される。
【0117】
さらに好ましい最適化型I-SceIは、欠失体I-SceI -1, I-SceI -2, I-SceI -3, I-SceI -4, I-SceI -5, I-SceI -6, I-SceI -7, I-SceI -8, I-SceI -9または変異体S229KおよびS229Aを、変異M202Kと組み合わせたものである。
【0118】
さらに好ましいのは欠失体I-SceI -1, I-SceI -2, I-SceI -3, I-SceI -4, I-SceI -5, I-SceI -6または変異体S229Kを変異M202Kと組み合わせたものである。
【0119】
本発明の別の実施形態において、配列番号1に記載の野生型I-SceIのアミノ酸配列の76位のアミノ酸であるグルタミン、129位のグルタミン酸, または198位のチロシン(配列番号2を基準とすればアミノ酸77, 130および199)をLys, HisまたはArgに変異させる。これにより、I-SceI変異体Q76K, Q76H, Q76R, E129K, E129H, E129R, Y198K, Y198HおよびY198R を作製する。
【0120】
上記の欠失および変異は、アミノ酸レベルで少なくとも55%、58%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%配列同一性を有し、かつC末端にアミノ酸配列TISSETFLKを有する、I-SceIのホモログにも適用することができる。
【0121】
したがって、本発明のある実施形態において、最適化されたエンドヌクレアーゼは、最適化型のI-SceI、またはアミノ酸レベルで少なくとも55%, 58%, 60%, 70%, 80%, 85%, 90%, 92%, 93%, 94%, 95%, 96%, 97%, 98%または99%配列同一性を有するそのホモログの1つであって、I-SceI -1, I-SceI -2, I-SceI -3, I-SceI -4, I-SceI -5, I-SceI -6, I-SceI -7, I-SceI -8, I-SceI -9, S229K, S229A, S229P, S229G, S229E, S229Q, S229D, S229N, S229C, S229Y, S229T, M202K, M202H, M202R, Q76K, Q76H, Q76R, E129K, E129H, E129R, Y198K, Y198H およびY198Rからなる一群から選択される、1つもしくは複数の変異または欠失を有するものであり、ここでのアミノ酸番号は配列番号1に記載のアミノ酸配列を基準とする。
【0122】
本発明の他の実施形態において、最適化されたエンドヌクレアーゼは、最適化型のI-SceI、またはアミノ酸レベルで少なくとも55%, 58%, 60%, 70%, 80%, 85%, 90%, 92%, 93%, 94%, 95%, 96%, 97%, 98%または99%配列同一性を有するそのホモログの1つであって、I-SceI -1, I-SceI -2, I-SceI -3, I-SceI -4, I-SceI -5, I-SceI -6, S229KおよびM202Kからなる一群から選択される、1つもしくは複数の変異または欠失を有するものであるが、このアミノ酸番号は配列番号1に記載のアミノ酸配列を基準とする。
【0123】
特に好ましい、最適化されたエンドヌクレアーゼは、配列番号1に記載のI-SceIの野生型もしくは遺伝子操作型、またはアミノ酸レベルで少なくとも55%, 58%, 60%, 70%, 80%, 85%, 90%, 92%, 93%, 94%, 95%, 96%, 97%, 98%または99%配列同一性を有するそのホモログの1つであって、下記の一群から選択される1つもしくは複数の変異を有するものである:
a) I-SceI -1, I-SceI -2, I-SceI -3, I-SceI -4, I-SceI -5, I-SceI -6, I-SceI -7, I-SceI -8およびI-SceI -9;
b) S229K, S229A, S229P, S229G, S229E, S229Q, S229D, S229N, S229C, S229Y, S229T, M203K, M203H, M203R, Q77K, Q77H, Q77R, E130K, E130H, E130R, Y199K, Y199HおよびY199R;
c) アミノ酸配列の開始メチオニンの後のメチオニン、バリン、グリシン、スレオニン、セリン、アラニン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、アスパラギン、イソロイシン、もしくはヒスチジン;または
d) 上記a)およびb)、a)およびc)、b)およびc)、またはa)、b)およびc)から選択される1つもしくは複数の変異の組み合わせ。
【0124】
最適化エンドヌクレアーゼは、好ましくは、核局在化配列(NLS)との融合タンパク質として発現される。このNLS配列は、核の中への輸送の促進を可能にし、組み換え系の効率を高める。さまざまなNLS配列が当業者に知られており、特にJicks GR and Raikhel NV (1995) Annu. Rev. Cell Biol. 11:155-188に記載されている。植物に好ましいのは、たとえば、SV40ラージ抗原のNLS配列である。実例はWO 03/060133に記載されている。NLSは、エンドヌクレアーゼおよび/またはDNA結合ドメインに対して異種であってもよいが、エンドヌクレアーゼおよび/またはDNA結合ドメインに天然の状態で含まれていてもよい。
【0125】
本発明の別の実施形態は、最適化エンドヌクレアーゼと異種DNA結合ドメインとを含む翻訳融合物である。最適化エンドヌクレアーゼは、上記の突然変異を含み、上記のさらなる突然変異、例えば、遺伝子操作されたエンドヌクレアーゼを作製するのに用いられる突然変異を含んでも、または含まなくてもよい。
【0126】
好ましい異種DNA結合ドメインは、亜鉛フィンガーまたは転写活性化因子様(TAL)エフェクターから誘導される反復単位(TALリピートとも呼ばれる)である。
【0127】
従って、本発明の一実施形態においては、最適化エンドヌクレアーゼを、少なくとも1個の亜鉛フィンガードメイン、または転写活性化因子様(TAL)エフェクターから誘導される少なくとも1個の反復単位、または少なくとも1個の亜鉛フィンガードメインおよび転写活性化因子様(TAL)エフェクターから誘導される少なくとも1個の反復単位に融合させる。
【0128】
これらの融合物は、最適化エンドヌクレアーゼに対してN末端もしくはC末端にあるか、またはN末端およびC末端にあってよい。
【0129】
例えば、少なくとも1個の亜鉛フィンガードメインを最適化エンドヌクレアーゼのN末端に、および少なくとも1個の亜鉛フィンガードメインを最適化エンドヌクレアーゼのC末端に融合させるか、または少なくとも1個の亜鉛フィンガードメインを最適化エンドヌクレアーゼのN末端に、および転写活性化因子様(TAL)エフェクターから誘導される少なくとも1個の反復単位を最適化エンドヌクレアーゼのC末端に融合させることができる。あるいは、少なくとも1個の亜鉛フィンガードメインと転写活性化因子(TAL)様エフェクターから誘導される少なくとも1個の反復単位の組合せを、最適化エンドヌクレアーゼのNもしくはC末端に、またはNおよびC末端に融合させることもできる。基本的には、これらの要素の全ての順列が可能である。
【0130】
亜鉛フィンガードメインは、各フィンガードメイン中の単一の亜鉛原子に四面体配位する保存されたシステインおよびヒスチジン残基を有する。特に、多くのZFPは、一般的配列:
-Cys-(X)2-4-Cys-(X)12-His-(X)3-5-His-
(式中、Xは任意のアミノ酸を表す)
のフィンガー成分(C2H2 ZFP)を特徴とする。この最も広く表されるクラスの亜鉛フィンガードメインは、特定の間隔で2個のシステインと2個のヒスチジンを含む。それぞれのフィンガードメインの折畳まれた構造は、逆平行βターン、フィンガーチップ領域および短い両親媒性α-10へリックスを含む。金属配位リガンドは亜鉛イオンに結合し、zif268型亜鉛フィンガーの場合、短い両親媒性α-へリックスはDNAの主溝中に結合する。さらに、亜鉛フィンガーの構造は、特定の保存された疎水性アミノ酸残基(例えば、第1の保存されたCysの直前の残基およびフィンガーのへリックス部分の位置+4にある残基)により、ならびに保存されたシステインおよびヒスチジン残基を介する亜鉛配位15により安定化される。塩基接触位置に直接隣接する残基を「支持する」または「強化する」直接塩基接触を作る位置、およびDNAのリン酸主鎖と接触することができる位置に変化を有する標準的なC2H2 ZFPが記載されている。例えば、米国特許第6,007,988号; 第6,013,453号; 第6,140,081号; 第6,866,997号; 第6,746,838号; 第6,140,081号; 第6,610,512号; 第7,101,972号; 第6,453,242号; 第6,785,613号; 第7,013,219号; PCT WO 98/53059; Chooら(2000) Curro Opin. Struct. BioI. 10:411-416; Segalら(2000) Curro Opin. Chern. BioI. 4:34-39を参照されたい。
【0131】
さらに、改変された亜鉛配位残基を有する亜鉛フィンガーを含む亜鉛フィンガータンパク質も記載されている(例えば、米国特許出願第25 20030108880号、第20060246567号および第20060246588号を参照されたい;これらの開示は参照により本明細書に組入れられるものとする)。
【0132】
用語「転写活性化因子様(TAL)エフェクターから誘導される反復単位」、「反復単位」および「TALリピート」は互換的に用いられ、そのようなアミノ酸が、以下のような認識:C/Gの認識にはHD;A/Tの認識にはNI;T/Aの認識にはNG;C/GもしくはA/TもしくはT/AもしくはG/Cの認識にはNS;G/CもしくはA/Tの認識にはNN;T/Aの認識にはIG;C/Gの認識にはN;C/GもしくはT/Aの認識にはHG;T/Aの認識にはH;およびG/Cの認識にはNKを付与する標的DNA配列中の塩基対の認識を決定する反復単位のアミノ酸配列の位置12および13に2個のアミノ酸を含む、TALエフェクターに由来する反復ドメイン、またはその人工型のモジュラー部分を記載するのに用いられる(アミノ酸H、D、I、G、S、Kは一文字コードで記載され、A、T、C、Gは該アミノ酸により認識されるDNA塩基対を指す)。
【0133】
当業者であれば、反復ドメイン中で用いられる反復単位の数を、日常的な実験により確認することができる。一般的には、少なくとも1.5個の反復単位が最小であると考えられるが、典型的には、少なくとも約8個の反復単位を用いることもできる。反復単位は、完全な反復単位である必要はなく、半分のサイズの反復単位を用いることができる。本発明の異種DNA結合ドメインは、例えば、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5、27、27.5、28、28.5、29、29.5、30、30.5、31、31.5、32、32.5、33、33.5、34、34.5、35、35.5、36、36.5、37、37.5、38、38.5、39、39.5、40、40.5、41、41.5、42、42.5、43、43.5、44、44.5、46、46.5、47、47.5、48、48.5、49、49.5、50、50.5個以上の反復単位を含んでもよい。
【0134】
34個のアミノ酸を含む反復の典型的なコンセンサス配列(一文字コードで)を以下に示す:
LTPEQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAHG (配列番号19)。
【0135】
35個のアミノ酸を含む反復単位のさらなるコンセンサス配列(一文字コードで)は以下の通りである:
LTPEQVVAIASNGGGKQALETVQRLLPVLCQAPHD (配列番号20)。
【0136】
本発明の一実施形態において用いることができる反復単位は、上記のコンセンサス配列と少なくとも35%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の同一性を有する。
【0137】
亜鉛フィンガードメインならびにTALリピートを突然変異させて、任意の所与のポリヌクレオチド配列に結合させることができる。好適な突然変異を選択するための方法は、参照により本明細書に含まれるものとするWO0027878、WO03062455、WO08076290、WO08076290、WO9945132およびWO2010/079430に開示されている。
【0138】
従って、最適化エンドヌクレアーゼのDNA認識配列の近くにあるポリヌクレオチド配列を選択し、亜鉛フィンガードメインまたはTALリピートを突然変異させて、これらの近隣のポリヌクレオチド配列に結合させることができる。次いで、これらの亜鉛フィンガードメインまたはTALリピートを、すぐ近くにDNA認識配列を有する対応する最適化エンドヌクレアーゼとの翻訳融合物のために用いることができる。
【0139】
また、最適化エンドヌクレアーゼのDNA認識配列に類似するが、最適化エンドヌクレアーゼにより十分に認識されないか、または切断されないポリヌクレオチド配列を選択することもできる。非最適DNA認識部位をより効率的に認識し、切断するであろうこの非最適DNA認識部位の近くにあるポリヌクレオチド配列に結合する少なくとも1個の亜鉛フィンガーまたはTALリピートと最適化エンドヌクレアーゼとの翻訳融合物を作製することができる。
【0140】
最適化されたLAGLIDADGヌクレアーゼと、TALリピートおよび亜鉛フィンガードメインの組合せとの融合物を作製することができる。TALエフェクターはATに富む領域を認識することができるため、これは、好ましくはGCに富む領域に結合する亜鉛フィンガードメインの制約を相殺することができる。
【0141】
TALリピートおよび亜鉛フィンガードメインを用いて、最適化されたLAGLIDADGヌクレアーゼとのN末端もしくはC末端またはN末端およびC末端融合物を作製し、ここで数個のTALリピートおよび/または亜鉛フィンガードメインならびにこれらの組合せを最適化されたLAGLIDADGヌクレアーゼのN末端またはC末端に融合することができる。
【0142】
そのような融合物の例示的構造は、
N-末端-I-SceI- TALリピート(x)-C-末端
N-末端- TALリピート(x) I-SceI- -C-末端
N-末端- TALリピート(x) I-SceI- TALリピート-C-末端
N-末端-I-SceI- 亜鉛フィンガードメイン(x)-C-末端
N-末端- 亜鉛フィンガードメイン(x) I-SceI- -C-末端
N-末端- 亜鉛フィンガードメイン(x) I-SceI- 亜鉛フィンガードメイン(x) -C-末端
N-末端- TALリピート(x)-I-SceI- 亜鉛フィンガードメイン(x)-C-末端
N-末端- 亜鉛フィンガードメイン(x) I-SceI- TALリピート-C-末端
N-末端- TALリピート(x)-I-SceI- 亜鉛フィンガードメイン(x)-C-末端
N-末端- 亜鉛フィンガードメイン(x) I-SceI- TALリピート-C-末端
N-末端- 亜鉛フィンガードメイン(x)-TALリピート(x)-I-SceI- 亜鉛フィンガードメイン(x)-C-末端
N-末端- 亜鉛フィンガードメイン(x) I-SceI- TALリピート(x) -亜鉛フィンガードメイン(x)-C-末端、
(式中、(x)は1個または数個のTALリピートもしくは亜鉛フィンガードメインを意味する)
である。
【0143】
好ましい実施形態においては、最適化エンドヌクレアーゼをコードする配列を、イントロン配列の挿入により改変する。これは原核宿主生物中での機能的酵素の発現を阻害し、それによってクローニングおよび形質転換手順(例えば、大腸菌またはアグロバクテリウムに基づく)を容易にする。真核生物、例えば、植物においては、植物はイントロンを認識し、「スプライス」除去することができるため、機能的酵素の発現が実現される。好ましくは、上記の最適化エンドヌクレアーゼ中にイントロンを挿入する。
【0144】
別の好ましい実施形態においては、最適化エンドヌクレアーゼのアミノ酸配列を、最適化エンドヌクレアーゼのNまたはC末端にSec IV分泌シグナルを付加することにより改変することができる。
【0145】
好ましい実施形態においては、SecIV分泌シグナルは、アグロバクテリウムのVirタンパク質中に含まれるSecIV分泌シグナルである。そのようなSec IV分泌シグナルの例ならびにこれらを適用する方法は、WO 01/89283、Vergunstら、Positive charge is an important feature of the C-terminal transport signal of the VirB/D4-translocated proteins of Agrobacterium, PNAS 2005, 102, 03, pages 832〜837に開示されている。
【0146】
RecA/VirE2融合タンパク質を記載するWO01/38504の説明に記載されたものと同様の方法で、Virタンパク質の断片またはさらには完全なVirタンパク質、例えば、完全なVirE2タンパク質を最適化エンドヌクレアーゼに付加することにより、Sec IV分泌シグナルを付加することもできる。
【0147】
別の好ましい実施形態においては、最適化エンドヌクレアーゼのアミノ酸配列を、最適化エンドヌクレアーゼのNまたはC末端にSec III分泌シグナルを付加することにより改変することができる。好適なSecIII分泌シグナルは、例えば、WO 00/02996に開示されている。Sec III分泌シグナルを付加する場合、機能的III型分泌系の一部もしくは完全な機能的III型分泌系をコードする組換え構築物をも含んでもよい細胞中で最適化エンドヌクレアーゼを発現させて、そのような細胞中で機能的III型分泌系の一部もしくは完全な機能的III型分泌系を過剰発現させるか、または補完することが有利であり得る。
【0148】
機能的III型分泌系の一部または完全な機能的III型分泌系をコードする組換え構築物は、例えば、WO 00/02996に開示されている。
【0149】
SecIV分泌シグナルを最適化エンドヌクレアーゼに付加し、最適化エンドヌクレアーゼを、例えば、アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)またはアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)中で発現させることを目的とする場合、最適化エンドヌクレアーゼをコードするDNA配列を、発現する生物のコドン使用に適合させることが有利である。好ましくは、最適化エンドヌクレアーゼは、発現する生物のゲノム中にDNA認識配列を有さないか、または数個のみのDNA認識配列を有する。最適化エンドヌクレアーゼが、アグロバクテリウムゲノム中にDNA認識配列を有さないか、またはあまり好ましくないDNA認識配列を有する場合、それがさらに非常に有利である。最適化エンドヌクレアーゼを原核生物中で発現させることを目的とする場合、最適化エンドヌクレアーゼをコードする配列は、イントロンを有してはならない。
【0150】
ポリヌクレオチド:
本発明は、上記最適化エンドヌクレアーゼをコードする単離されたポリヌクレオチドも含む。
【0151】
このような単離されたポリヌクレオチドの例は、配列番号3, 5で表されるアミノ酸配列、または配列番号2, 3, 5で表されるアミノ酸配列のいずれか1つに対して、少なくとも70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%のアミノ酸配列類似性を有し、好ましくは少なくとも70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする単離されたポリヌクレオチドである。
【0152】
好ましくは、単離されたポリヌクレオチドは、特定の宿主生物における発現に最適化されたコドン使用頻度を有し、またはRNA不安定性モチーフの含有率が低く、またはコドンリピートの含有率が低く、または潜在的スプライス部位の含有率が低く、または代替的開始コドンの含有率が低く、または制限部位の含有率が低く、またはRNA二次構造の含有率が低く、またはこれらの特徴を任意の組み合わせで有している。
【0153】
単離されたポリヌクレオチドのコドン使用頻度は、たとえば、植物での発現に最適化することができるが、好ましくは、イネ、トウモロコシ、コムギ、ナタネ、サトウキビ、ヒマワリ、テンサイ、ジャガイモ、タバコからなる一群から選択される植物における発現に最適化することができる。
【0154】
好ましくは、単離されたポリヌクレオチドは、特定の宿主生物における最適化エンドヌクレアーゼ発現用の機能的な発現カセットを形成するのに適した、プロモーター配列および転写終結配列と組み合わせて用いられる。
【0155】
適当なプロモーターはたとえば、構成的プロモーター、熱もしくは病原体誘導性プロモーター、または種子、花粉、花もしくは果実に特異的なプロモーターである。
【0156】
当業者にはそうした特徴を有する多くのプロモーターが知られている。
【0157】
たとえば、植物においていくつかの構成的プロモーターが知られている。それらのほとんどはウイルスもしくは細菌起源に由来するものであって、たとえばAgrobacterium tumefaciens由来のノパリンシンターゼ(nos)プロモーター(Shaw et al. (1984) Nucleic Acids Res. 12 (20) : 7831-7846)、マンノピンシンターゼ(mas)プロモーター(Co-mai et al. (1990) Plant Mol Biol 15(3):373-381)、もしくはオクトピンシンターゼ(ocs)プロモーター(Leisner and Gelvin (1988) Proc Natl Acad Sci USA 85 (5) :2553-2557)、またはカリフラワーモザイクウイルス由来のCaMV35Sプロモーター(US 5,352, 605)などである。後者は、植物における導入遺伝子の構成的発現に、もっとも多用された(Odell et al. (1985) Nature 313:810-812; Battraw and Hall (1990) Plant Mol Biol 15:527-538; Benfey et al. (1990) EMBO J 9(69):1677-1684; US 5,612,472)。しかしながら、このCaMV 35Sプロモーターは、異なる植物種のみならず、異なる植物組織においても、可変性を示す(Atanassova et al. (1998) Plant Mol Biol 37:275-85; Battraw and Hall (1990) Plant Mol Biol 15:527-538; Holtorf et al. (1995) Plant Mol Biol 29:637-646 ; Jefferson et al. (1987) EMBO J 6 :3901-3907)。さらに不利なのは、35Sプロモーターの転写制御活性が野生型CaMVウイルスで妨げられることである(Al-Kaff et al. (2000) Nature Biotechnology 18 :995-99)。構成的発現のためのもう1つのウイルスプロモーターはサトウキビ桿菌状ウイルス(Sugarcane bacilliform badnavirus)(ScBV)プロモーターである(Schenk et al. (1999) Plant Mol Biol 39 (6) :1221-1230)。
【0158】
植物の構成的プロモーターはいくつか報告されており、例としてシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のユビキチンプロモーター(Callis et al. (1990) J Biol Chem 265:12486- 12493; Holtorf S et al. (1995) Plant Mol Biol 29:637-747)があるが、これは、また一方で、選択マーカーの発現を制御できないと報告されており(WO03102198)、あるいは2つのトウモロコシユビキチンプロモーター(Ubi-1およびUbi-2; US 5,510,474; US 6,020, 190; US 6,054574)が挙げられるが、これは構成的発現プロファイルの他に、熱ショック誘導を示す(Christensen et al. (1992) Plant. Mol. Biol. 18(4):675-689)。安定して形質転換されたシロイヌナズナ属植物に基づく、CaMV 35S、オオムギのチオニンプロモーター、およびシロイヌナズナのユビキチンプロモーターの特異性および発現レベルの比較は、CaMV 35Sプロモーターについては高い発現率を示すが、チオニンプロモーターはほとんどの系統で不活性であり、シロイヌナズナのubi1プロモーターは中程度の発現活性しかもたらさなかった(Holtorf et al. (1995) Plant Mol Biol 29 (4):637-6469)。
【0159】
ベクター:
上記ポリヌクレオチドは、形質転換、トランスフェクション、クローニングもしくは過剰発現に適したDNAベクターに含まれていてもよい。
【0160】
一例として、上記ポリヌクレオチドは、非ヒト生物もしくは細胞の形質転換に適したベクターに含まれるが。この非ヒト生物は植物もしくは植物細胞であることが好ましい。
【0161】
本発明のベクターは通常、さらに機能性エレメントを含んでおり、この機能性エレメントとしては下記を挙げることができるが、それらに限定されるべきではない:
i) たとえば大腸菌(E. coli)において、本発明の発現カセットもしくはベクターの複製を保証する、複製開始点。例として挙げられるのは、ORI(DNA複製開始点)、pBR322 ori、またはP15A oriである。(Sam-brook et al.: Molecular Cloning. A Laboratory Manual, 2nd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)。
ii) 1つもしくは複数の核酸配列の挿入が可能であって、その挿入を促進する、多重クローニング部位(MCS)。
iii) 宿主生物のゲノム内への相同組み換えもしくは挿入を可能にする配列。
iv)植物ゲノム内への移動および組み込みのために、植物細胞内でアグロバクテリウムを介した伝達を可能にする、たとえば、T-DNAのライトボーダーもしくはレフトボーダーまたはvir領域といった、ボーダー配列などのエレメント。
【0162】
マーカー配列:
「マーカー配列」という用語は、広義では、形質転換された細胞、組織、または生物(たとえば、植物)の検出、同定、または選択を容易にする、すべてのヌクレオチド配列(および/またはそれから翻訳されたポリペプチド配列)を含むものと理解されるべきである。「形質転換された植物材料の選択を可能にする配列」、「選択マーカー」または「選択マーカー遺伝子」または「選択マーカータンパク質」または「マーカー」という表現は、基本的に同じ意味を持つ。
【0163】
マーカーには、選択可能なマーカーおよびスクリーニング可能なマーカーがある(が、これらに限定されない)。選択可能なマーカーは、細胞もしくは生物に、結果として増殖もしくは生存能力の相違をもたらす表現型を与える。選択可能なマーカーは、選択物質(たとえば除草剤もしくは抗生物質もしくはプロドラッグ)と相互作用して、この表現型を生じさせることができる。スクリーニング可能なマーカーは、細胞もしくは生物に、簡単に検出できる表現型、好ましくは、色もしくは染色などの、目で見て検出できる表現型を与える。スクリーニング可能なマーカーは、スクリーニング物質(たとえば色素)と相互作用して、この表現型を生じさせることができる。
【0164】
選択可能なマーカー(または選択可能なマーカー配列)には下記のものがあるがこれらに限定されない:
a) ネガティブ選択マーカー、これは1つもしくは複数の毒物(植物の場合、植物に有害な物質)、たとえば抗生物質、除草剤、もしくは他の殺生物剤に対する抵抗性を与えるものである、
b) 対抗選択マーカー、これは(たとえば、毒性のない化合物を有毒な化合物に変換することによって)特定の化合物に対する感受性を与えるものである、ならびに
c) ポジティブ選択マーカー、これは(たとえば、オーキシン、ジベレリン、サイトカイニン、アブシジン酸およびエチレンなどの植物ホルモンの生産をもたらす、サイトカイニンもしくはホルモン生合成の重要成分の発現によって;Ebinuma H et al. (2000) Proc Natl Acad Sci USA 94:2117-2121)増殖優位性を与えるものである。
【0165】
ネガティブ選択マーカーを使用する場合、前記ネガティブ選択マーカーを含有する細胞もしくは植物だけが選択される。対抗選択マーカーを使用する場合、前記対抗選択マーカーを持たない細胞もしくは植物だけが選択される。対抗選択マーカーを用いて、ゲノムからの、(前記の対抗選択マーカーを含む)配列の除去の成功を検証することができる。スクリーニング可能なマーカー配列には、レポーター遺伝子(たとえば、ルシフェラーゼ、グルクロニダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)など)があるがこれに限定されない。好ましいマーカー配列には次のものがあるがこれらに限定されない。
【0166】
i) ネガティブ選択マーカー
通例、ネガティブ選択マーカーは、形質転換に成功した細胞を選択するのに有用である。ネガティブ選択マーカーは、本発明のDNA構築物を用いて導入されているが、殺生物剤もしくは植物に有害な物質(たとえば、ホスフィノトリシン、グリホサートもしくはブロモキシニルなどの除草剤)、2-デオキシグルコース-6-リン酸(WO 98/45456)などの代謝阻害剤、または抗生物質、たとえば、テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン、G418、ネオマイシン、ブレオマイシンもしくはハイグロマイシンに対する抵抗性を、形質転換に成功した細胞に、与えることができる。ネガティブ選択マーカーは、形質転換されない細胞から形質転換された細胞を選択することを可能にする(McCormick et al. (1986) Plant Cell Reports 5:81-84)。本発明のベクター中のネガティブ選択マーカーを、2つ以上の生物において抵抗性を与えるために使用することができる。たとえば、本発明のベクターは、細菌(大腸菌もしくはアグロバクテリウム(Agrobacterium))および植物での増幅のための選択マーカーを含有することができる。大腸菌のための択可能なマーカーの例としては、抗生物質、すなわちアンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシン、エリスロマイシンに対する耐性を特定する遺伝子、または他のタイプの選択可能な酵素活性、たとえばガラクトシダーゼを与える遺伝子、またはラクトースオペロンがある。哺乳動物細胞に使用するのに適した、選択可能なマーカーとしては、たとえば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(DHFR)、チミジンキナーゼ遺伝子(TK)、または薬剤耐性を与える原核細胞遺伝子、gpt(キサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ)、これはミコフェノール酸を用いて選択することができる; neo(ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ)、これはG418、ハイグロマイシン、もしくはピューロマイシンを用いて選択することができる;ならびにDHFR(ジヒドロ葉酸還元酵素)、これはメトトレキサートを用いて選択することができる((Mulligan & Berg (1981) Proc Natl Acad Sci USA 78:2072; Southern & Berg (1982) J Mol Appl Genet 1: 327)):が挙げられる。植物細胞のための選択マーカーは、殺生物剤もしくは抗生物質、たとえば、カナマイシン、G418、ブレオマイシン、ハイグロマイシン、もしくはクロラムフェニコールに対する耐性、または除草剤抵抗性、たとえばクロルスルフロンもしくはバスタに対する抵抗性を与えることが多い。
【0167】
特に好ましいネガティブ選択マーカーは、除草剤抵抗性を与えるものである。ネガティブ選択マーカーの例としては下記のものがある。
【0168】
- ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(PAT)をコードするDNA配列、この酵素はグルタミン合成酵素阻害剤であるホスフィノトリシン(PPT)の遊離アミノ基をアセチル化することでPPTを無毒化する(de Block et al. (1987) EMBO J 6:2513-2518)(ビアラホス抵抗性遺伝子barとしても言及されている;EP 242236)。
【0169】
- 5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素遺伝子(EPSP合成酵素遺伝子)、これはグリホサート(N-(ホスホノメチル)グリシン)に対する抵抗性を与える。
【0170】
- gox遺伝子、これはグリホサート分解酵素であるグリホサートオキシドレダクターゼをコードする。
【0171】
- deh遺伝子(ダラポンを不活化する脱ハロゲン酵素をコードする)。
【0172】
- アセト乳酸合成酵素、これはスルホニル尿素およびイミダゾリノンに対する耐性を与える。
【0173】
- bxn遺伝子、これはブロモキシニルを分解するニトリラーゼ酵素をコードする。
【0174】
- カナマイシン、またはG418耐性遺伝子(NPTII)。NPTII遺伝子はリン酸化反応により、カナマイシン、ネオマイシン、G418およびパロモマイシンの阻害作用を低下させるネオマイシンホスホトランスフェラーゼをコードする(Beck et al (1982) Gene 19: 327)。
【0175】
- DOGR1遺伝子。DOGR1遺伝子は、酵母Saccharomyces cerevisiaeから単離された(EP 0 807 836)。これは、2-DOGに対する抵抗性を与える2-デオキシグルコース-6-リン酸ホスファターゼをコードする(Randez-Gil et al. (1995) Yeast 11:1233-1240)。
【0176】
- hyg遺伝子、これは酵素、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼをコードしており、抗生物質ハイグロマイシンに対する耐性を与える(Gritz and Davies (1983) Gene 25: 179)。
【0177】
- 特に好ましいのは、たとえばD-アラニンおよびD-セリンなどのD-アミノ酸による有毒作用に対する耐性を与えるネガティブ選択マーカーである(WO 03/060133; Erikson 2004)。これに関連して、ネガティブ選択マーカーとして特に好ましいのは、酵母Rhodotorula gracilis (Rhodosporidium toruloides)由来daol遺伝子(EC: 1.4. 3.3 : GenBank Acc.-No.: U60066)および大腸菌遺伝子dsdA(D-セリンデヒドラターゼ(D-セリンデアミナーゼ)、EC: 4.3. 1.18; GenBank Acc.-No.: J01603)である。
【0178】
ii) ポジティブ選択マーカー
ポジティブ選択マーカーには、サイトカイニン生合成の重要な酵素として、形質転換された植物の再生を促進することができる、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens) (菌株:PO22; Genbank Acc.-No.: AB025109)由来のイソペンテニルトランスフェラーゼのような増殖刺激選択マーカー(たとえば、サイトカイニンを含まない培地上で選択)があるがこれらに限定されない。対応する選択方法が記載されている(Ebinuma H et al. (2000) Proc Natl Acad Sci USA 94:2117-2121; Ebinuma H et al. (2000) Selection of Marker-free transgenic plants using the oncogenes (ipt, rol A, B, C) of Agrobacterium as selectable markers, In Molecular Biology of Woody Plants. Kluwer Academic Publishers)。形質転換されないものと比べて形質転換された植物に増殖優位性を与える、他のポジティブ選択マーカーは、たとえば、EP-A 0 601 092に記載されている。増殖刺激選択マーカーにはβグルクロニダーゼ(たとえばサイトカイニングルクロニドと組み合わせ)、マンノース-6-リン酸イソメラーゼ(マンノースと組み合わせ)、UDP-ガラクトース-4-エピメラーゼ(たとえばガラクトースと組み合わせ)を含めることができる(がそれに限定すべきではない)。マンノースと組み合わせたマンノース-6-リン酸イソメラーゼが特に好ましい。
【0179】
iii) 対抗選択マーカー
対抗選択マーカーは、正しく欠失させた配列による生物の選択を可能にする(Koprek T et al. (1999) Plant J 19(6):719-726)。チミジンキナーゼ(TK)およびジフテリア毒素A断片(DT-A)、シトシンデアミナーゼをコードするcodA遺伝子(Gleve AP et al. (1999) Plant Mol Biol 40(2):223-35; Pereat RI et al. (1993) Plant Mol Biol 23(4):793-799; Stougaard J (1993) Plant J 3:755-761)、シトクロムP450遺伝子(Koprek et al. (1999) Plant J 16:719-726)、ハロアルカン脱ハロゲン酵素をコードする遺伝子(Naested H (1999) Plant J 18:571-576)、iaaH遺伝子(Sundaresan V et al. (1995) Genes & Development 9:1797-1810)、tms2遺伝子(Fedoroff NV & Smith DL (1993) Plant J 3:273- 289)、およびD-アミノ酸の変換により有毒作用を引き起こすD-アミノ酸オキシダーゼ(WO 03/ 060133)。
【0180】
好ましい実施形態において、除去カセットは、これらをまだ含有している植物から正しく切り取られた配列を有する植物細胞もしくは植物を区別することができる、少なくとも1つの前記対抗選択マーカーを含む。より好ましい実施形態において、本発明の除去カセットは、二重機能マーカー、すなわち選抜法で用いられる基質に応じて、ネガティブ選択マーカーとしても対抗選択マーカーとしても使用することができるマーカーを含有する。二重機能マーカーはたとえば、酵母Rhodotorula gracilis由来のdaol遺伝子(EC: 1.4. 3.3 : GenBank Acc.-No.: U60066)であるが、これはD-アラニンおよびD-セリンなどのD-アミノ酸とともにネガティブ選択マーカーとして、ならびにD-イソロイシンおよびD-バリンなどのD-アミノ酸とともに対抗選択マーカーとして使用することができる(欧州特許出願第04006358.8号を参照されたい)。
【0181】
iv) スクリーニング可能なマーカー(レポーター遺伝子)
スクリーニング可能なマーカー(レポーター遺伝子など)は、簡単に数値化できる、もしくは検出できるタンパク質をコードしており、これは、内色素もしくは酵素活性によって、形質転換効率、または発現の位置もしくはタイミングを確実に評価する。特に好ましいのは、次のようなレポータータンパク質をコードする遺伝子である(Schenborn E, Groskreutz D. (1999) Mol Biotechnol 13(1):29-44も参照されたい):
- 「緑色蛍光タンパク質」(GFP)(Chui WL et al. (1996) Curr Biol 6:325-330; Lef-fel SM et al. (1997) Biotechniques 23(5):912-8; Sheen et al. (1995) Plant J 8(5):777-784; Haseloff et al. (1997) Proc Natl Acad Sci USA 94(6):2122-2127; Reichel et al. (1996) Proc Natl Acad Sci USA 93(12):5888-5893; Tian et al. (1997) Plant Cell Rep 16:267-271; WO 97/41228)、
- クロラムフェニコールトランスフェラーゼ、
- ルシフェラーゼ(Millar et al. (1992) Plant Mol Biol Rep 10:324-414; Ow et al. (1986) Science 234:856-859)、これは生物発光の検出により選択が可能となる、
- βガラクトシダーゼ、これはさまざまな発色基質が利用できる酵素をコードする、
- βグルクロニダーゼ(GUS)(Jefferson et al. (1987) EMBO J 6:3901-3907)またはuidA遺伝子、これはさまざまな発色基質に対する酵素をコードする、
- R遺伝子座遺伝子産物:植物組織においてアントシアニン色素(赤色着色)の生成を制御し、そうすることで追加の補助剤もしくは発色基質を加えることなく、プロモーター活性の直接的な分析を可能にするタンパク質(Dellaporta et al. (1988) In: Chromosome Structure and Function: Impact of New Concepts, 18th Stadler Genetics Symposium, 11:263-282)、
- βラクタマーゼ(Sutcliffe (1978) Proc Natl Acad Sci USA 75:3737-3741)、さまざまな発色基質(たとえばPADAC、発色性セファロスポリン)に対する酵素、
- xylE遺伝子産物(Zukowsky et al. (1983) Proc Natl Acad Sci USA 80:1101-1105)、発色するカテコール類を変換することができるカテコールジオキシゲナーゼ、
- αアミラーゼ(Ikuta et al. (1990) Bio/technol. 8:241-242)、
- チロシナーゼ(Katz et al.(1983) J Gene Microbiol 129:2703-2714)、チロシンを酸化してDOPAおよびドーパキノンを与える酵素であって、これらは次にメラニンを形成し、これは容易に検出できる、
- エクオリン(Prasher et al.(1985) Biochem Biophys Res Commun 126(3):1259-1268)、これはカルシウム感受性生物発光検出に使用できる。
【0182】
標的生物
形質転換または最適化エンドヌクレアーゼの導入に適した任意の生物を標的生物として使用することができる。これには、原核生物、真核生物、および古細菌が含まれ、特にヒトまたは動物細胞、動物、植物、真菌もしくは酵母が含まれるが、好ましくは植物、真菌または酵母である。
【0183】
ある実施形態において標的生物は植物である。
【0184】
「植物」という用語には、植物全体、苗条栄養器官/構造(たとえば、葉、茎および塊茎)、根、花および花器官/構造(たとえば、苞葉、萼片、花弁、雄蘂、心皮、葯、および胚珠)、種子(胚、内胚乳、および種皮など)、および果実(成熟した子房)、植物組織(たとえば、維管束組織、基本組織など)、および細胞(たとえば、孔辺細胞、卵細胞、トリコームなど)、ならびにそれらの後代が含まれる。本発明の方法に使用することができる植物の種類は概して、形質転換法を受け入れられる高等植物および下等植物の分類ほど広範であって、被子植物(単子葉および双子葉植物)、裸子植物、シダ類、および多細胞藻類などがある。それには、異数体、倍数体、2倍体、半数体、および半接合体などのさまざまな倍数性レベルの植物が含まれる。
【0185】
植物界の高等および下等植物のあらゆる属および種が本発明の範囲に含まれる。さらに、成熟植物体、種子、苗条および幼苗、および部分、種苗(たとえば、種子および果実)、ならびに培養物、たとえば、それらに由来する細胞培養物が含まれる。
【0186】
下記の植物の科に属する植物および植物材料が好ましい:ヒユ科(Amaranthaceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、ナデシコ科(Caryophyllaceae)、アカザ科(Chenopodiaceae)、キク科(Compositae)、ウリ科(Cucurbitaceae)、シソ科(Labiatae)、マメ科(Leguminosae)、マメ亜科(Papilionoideae)、ユリ科(Liliaceae)、アマ科(Linaceae)、アオイ科(Malvaceae)、バラ科(Rosaceae)、ユキノシタ科(Saxifragaceae)、ゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)、ナス科(Solanaceae)、ツルナ科(Tetragoniaceae)。
【0187】
一年生、多年生、単子葉および双子葉植物が、トランスジェニック植物の作製に好ましい宿主生物である。さらに、組み換え系、すなわち本発明の方法を使用することは、すべての観賞植物、有用樹木もしくは鑑賞樹、花、切り花、低木、もしくは芝生において有利である。前記植物には、コケ植物、たとえば苔綱(苔類)および蘚綱(蘚類);シダ植物、たとえばシダ類、トクサ類、およびヒカゲノカズラ; 裸子植物、たとえば針葉樹、ソテツ、イチョウ、およびグネツム科(Gnetaceae);藻類、たとえば緑藻綱(Chlorophyceae)、褐藻綱(Phaeophpyceae)、紅藻網(Rhodophyceae)、藍藻綱(Myxophyceae)、黄緑藻綱(Xanthophyceae)、珪藻綱(Bacillariophyceae)(珪藻)、およびユーグレナ藻綱(Euglenophyceae)を含めることができるが、それらに限定されるべきではない。
【0188】
本発明の目的にかなう植物は、バラなどのバラ科(Rosaceae)、シャクナゲおよびツツジなどのツツジ科(Ericaceae)、ポインセチアおよびクロトンなどのトウダイグサ科(Euphorbiaceae)、ナデシコなどのナデシコ科(Caryophyllaceae)、ペチュニアなどのナス科(Solanaceae)、アフリカスミレなどのイワタバコ科(Gesneriaceae)、ホウセンカなどのツリフネソウ科(Balsaminaceae)、ランなどのラン科(Orchidaceae)、グラジオラス、アヤメ、フリージア、およびクロッカスなどのアヤメ科(Iridaceae)、マリーゴールドなどのキク科(Compositae)、ゼラニウムなどのフウロソウ科(Geraniaceae)、ドラセナなどのユリ科(Liliaceae)、イチジクなどのクワ科(Moraceae)、フィロデンドロンなどのサトイモ科(Araceae)に加えて他にも多数ある。
【0189】
本発明のトランスジェニック植物はさらに、具体的には、双子葉の作物の中から、たとえば、マメ科(Leguminosae)、エンドウ、アルファルファ、およびダイズなど;ナス科(Solanaceae)、タバコおよびその他多数;セリ科(Umbelliferae)、とくに、ニンジン属(Daucus)、なかでもとくにニンジン(D. carota)およびオランダミツバ属(Apium)、なかでもとくにセロリ(A. graveolens L. var dulce)、ならびにその他多数;ナス科(Solanaceae)、とくにトマト属(Lycopersicon)、なかでもとくにトマト(L. esculentum)、およびナス属(Solanum)、なかでもとくにジャガイモ(S. tuberosum)およびナス(S. melongena)、ならびにその他多数;さらにはトウガラシ属(Capsicum)、なかでもとくにトウガラシ(C. annuum)およびその他多数;マメ科(Leguminosae)、とくにダイズ属(Glycine)、なかでもとくにダイズ(G. max)およびその他多数;アブラナ科(Cruciferae)、とくにアブラナ属(Brassica)、なかでもとくにセイヨウアブラナ(B. napus)、アブラナ在来種(カブ)(B. campestris) 、キャベツ(栽培品種Tastie)(B. oleracea cv Tastie)、カリフラワー(栽培品種Snowball)(B. oleracea cv Snowball)、およびブロッコリー(栽培品種Emperor)(B. oleracea cv Emperor);ならびにシロイヌナズナ属(Arabidopsis)、なかでもとくにシロイヌナズナ(A. thaliana)およびその他多数;キク科(Compositae)、とくにアキノノゲシ属(Lactuca)、なかでもとくにレタス(L. sativa)およびその他多数;から選択される。
【0190】
本発明のトランスジェニック植物は、とくに単子葉の作物の中から、たとえば、コムギ、オオムギ、モロコシおよびキビ、ライムギ、ライコムギ、トウモロコシ、イネ、またはオートムギなどの穀類、およびサトウキビから選択される。特に好ましいのは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、タバコ(Nicotiana tabacum)、アブラナ、ダイズ、トウモロコシ、コムギ、アマニ、ジャガイモ、およびマンジュギクである。
【0191】
さらに、本発明の目的にかなう植物は、光合成作用を有する他の生物、たとえば、藻類もしくはラン藻、および蘚類である。好ましい藻類は、緑藻類、たとえばHaematococcus属、フェオダクチラム(Phaeodactylum tricornatum)、ボルボックス(Volvox)属またはドナリエラ(Dunaliella)属の藻類である。
【0192】
ヒトもしくは動物が摂取することができる本発明の遺伝子組み換え植物は、たとえばそのまま、またはその後加工して、食物または飼料としても使用することができる。
【0193】
ポリヌクレオチド構築物の構築
典型的には、非ヒト生物もしくは細胞、たとえば植物もしくは植物細胞に導入されるべきポリヌクレオチド構築物(たとえば発現カセットのための)は、導入遺伝子発現法を用いて調製される。組み換え発現法は、組み換え核酸の構築およびトランスフェクト細胞での遺伝子発現を含んでいる。こうした目的を達成する分子クローニング技術は当技術分野で知られている。組み換え核酸の構築に適した、さまざまなクローニングおよびin vitro増幅法は、当業者によく知られている。多くのクローニングの実習を通じて、当業者に十分指示することができる、上記の技術および教示の例は、Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology, Vol.152, Academic Press, hic., San Diego, CA (Berger) ; Current Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubel et al., eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Publish-ing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., (1998 Supplement), T. Maniatis, E.F. Fritsch and J. Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1989), T.J. Silhavy, M.L. Berman and L.W. Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1984)に見いだされる。本発明で使用されるDNA構築物は、当業者によく知られた組み換え、およびクローニング技術を用いて、前記配列内で、DNA構築物の前記必須成分を結合することによって作製されることが好ましい。
【0194】
ポリヌクレオチド構築物の構築は、概して、細菌において複製可能なベクターを使用する必要がある。細菌からプラスミドを精製するための数多くのキットが市販されている。単離精製されたプラスミドをその後さらに操作して、他のプラスミドを作製し、細胞にトランスフェクトするために使用してもよく、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)もしくはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)に導入して植物に感染させ、植物を形質転換することもできる。アグロバクテリウムが形質転換の手段である場合、シャトルベクターが構築される。
【0195】
構築物を標的細胞に導入するための方法
本発明で使用されるDNA構築物は、このDNA構築物が挿入されているベクターを用いて、細胞内に有利に導入することができる。ベクターの例は、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス、レトロウイルス、またはアグロバクテリアとすることができる。有利な実施形態において、発現カセットは、プラスミドベクターを用いて導入される。好ましいベクターは、発現カセットを宿主ゲノム内に安定して組み込むことができるベクターである。
【0196】
DNA構築物は、形質転換と呼ばれる手順である、当業者に知られているいくつかの手段のいずれかによって、標的植物細胞および/または生物に導入することができる(Keown et al. (1990) Meth Enzymol 185:527-537も参照されたい)。たとえば、DNA構築物は、さまざまな従来技術によって、培養下でも、植物器官においても、細胞に導入することができる。たとえば、DNA構築物は、DNA微粒子銃などの衝撃法を用いて直接、植物細胞に導入することができるが、細胞のエレクトロポレーションおよびマイクロインジェクションなどの技術を用いて導入することもできる。粒子を介した形質転換法(「微粒子銃」としても知られる)は、たとえば、Klein et al. (1987) Nature 327:70-73; Vasil V et al. (1993) BiolTechnol 11:1553-1558; およびBecker D et al. (1994) Plant J 5:299-307に記載されている。これらの方法は、核酸を、小ビーズもしくは微粒子のマトリックス内部か表面上に有する微小粒子による、細胞の貫通を伴うものである。微粒子銃PDS-1000 Gene Gun (Biorad, Hercules, CA) は、DNAコーティングした金またはタングステン微小担体を標的細胞に向かって加速するためにヘリウムガスを使用する。このプロセスは、植物を含めた生物の広範な組織および細胞に適用できる。他の形質転換法も当業者に知られている。
【0197】
マイクロインジェクション法は、当技術分野で知られており、科学文献および特許文献に十分記載されている。また、細胞は、化学的に、たとえばポリエチレングリコールを用いて、透過性にすることができるので、DNAは拡散によって細胞に入ることができる。DNAはまた、ミニ細胞、細胞、リソソームまたはリポソームなどの他のDNA含有ユニットとのプロトプラスト融合によって導入することもできる。ポリエチレングリコール(PEG)沈殿を用いたDNA構築物の導入は、Paszkowski et al. (1984) EMBO J 3:2717に記載されている。リポソームに基づく遺伝子デリバリーは、たとえば、WO 93/24640; Mannino and Gould-Fogerite (1988) BioTechniques 6(7):682-691; US 5,279,833; WO 91/06309; およびFelgner et al. (1987) Proc Natl Acad Sci USA 84:7413-7414)に記載されている。
【0198】
DNAを導入するもう1つの適当な方法はエレクトロポレーションであって、この場合細胞は、電気的パルスによって可逆的に透過性となる。エレクトロポレーション法は、Fromm et al. (1985) Proc Natl Acad Sci USA 82:5824に記載されている。植物プロトプラストの、PEGによる形質転換およびエレクトロポレーションは、Lazzeri P (1995) Methods Mol Biol 49:95-106で検討されている。挙げることができる好ましい一般法は、リン酸カルシウムによるトランスフェクション、DEAEデキストランによるトランスフェクション、カチオン性脂質によるトランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、および感染である。このような方法は当業者に知られており、たとえば、Davis et al., Basic Methods In Molecular Biology (1986)に記載されている。植物および細胞培養のための遺伝子導入法の総説については、Fisk et al. (1993) Scientia Horticulturae 55:5-36およびPotrykus (1990) CIBA Found Symp 154:198を参照されたい。
【0199】
単子葉植物および双子葉植物のいずれにおいても異種遺伝子を導入し発現させるための方法が知られている。たとえば、US 5,633,446, US 5,317,096, US 5,689,052, US 5,159,135, およびUS 5,679,558; Weising et al. (1988) Ann. Rev. Genet. 22: 421-477を参照されたい。単子葉植物の形質転換は、詳細には、エレクトロポレーション(たとえば、Shimamoto et al. (1992) Nature 338:274-276);微粒子銃(たとえば、EP-A1 270,356);およびアグロバクテリウム(たとえば、Bytebier et al. (1987) Proc Natl Acad Sci USA 84:5345-5349)などの、さまざまな技術を用いることができる。
【0200】
植物において、当業者によく知られている、植物組織もしくは植物細胞から植物を形質転換して再生させる方法は、一過性形質転換または安定な形質転換のために利用される。適当な方法は特に、ポリエチレングリコールによるDNA取り込みを用いたプロトプラスト形質転換、遺伝子銃などの微粒子銃による方法(「粒子衝撃」法)、エレクトロポレーション、乾燥した胚のDNA含有溶液中でのインキュベーション、超音波処理およびマイクロインジェクション、ならびに組織もしくは胚へのマイクロもしくはマクロインジェクションによる無傷の細胞もしくは組織の形質転換、組織エレクトロポレーション、または種子の真空浸潤法である。植物細胞へのDNAのインジェクションもしくはエレクトロポレーションの場合、使用するプラスミドは何ら特別な要件に合致する必要はない。pUC系のプラスミドのような単純なプラスミドを使用することができる。形質転換された細胞から完全な植物体を再生させるつもりならば、プラスミド上に追加の選択可能なマーカー遺伝子が存在することが役立つ。
【0201】
このような「直接的な」形質転換法に加えて、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)を用いた細菌の感染によっても形質転換を行うことができる。これらの菌株は、プラスミド(TiまたはRiプラスミド)を含有する。このプラスミドのT-DNA(転移DNA)と呼ばれる部分は、アグロバクテリウムの感染後、植物に移動し、植物細胞のゲノムに組み込まれる。
【0202】
アグロバクテリウムによる植物の形質転換のために、本発明のDNA構築物を、適当なT-DNAフランキング領域と組み合わせて、従来のアグロバクテリウム・ツメファシエンス宿主ベクターに導入することができる。細胞に細菌が感染したとき、A.ツメファシエンス宿主の毒性機能が、植物細胞DNAへの導入遺伝子および隣接するマーカー遺伝子(もしあれば)の挿入を指示する。アグロバクテリウム・ツメファシエンスによる形質転換法は、科学文献に十分記載されている。たとえば、Horsch et al. (1984) Science 233:496-498, Fraley et al. (1983) Proc Natl Acad Sci USA 80:4803-4807, Hooykaas (1989) Plant Mol Biol 13:327-336, Horsch RB (1986) Proc Natl Acad Sci USA 83(8):2571-2575), Bevans et al. (1983) Nature 304:184-187, Bechtold et al. (1993) Comptes Rendus De L’Academie Des Sciences Serie III-Sciences De La Vie-Life Sciences 316:1194-1199, Valvekens et al. (1988) Proc Natl Acad Sci USA 85:5536-5540を参照されたい。
【0203】
本発明のDNA構築物は、特定のプラスミド、シャトルベクターもしくは中間ベクター、またはバイナリーベクターに組み込まれることが好ましい。たとえば、TiもしくはRiプラスミドを形質転換に使用するつもりならば、TiもしくはRiプラスミドT-DNAの、少なくともライトボーダーであるが、ほとんどの場合ライトボーダーおよびレフトボーダーは、発現カセットと結合し、フランキング領域として導入される。バイナリーベクターを使用することが好ましい。バイナリーベクターは、大腸菌とアグロバクテリウムの両方で複製する能力を有する。通例、バイナリーベクターは選択マーカー遺伝子、および右もしくは左側のT-DNAフランキング配列に隣接するリンカーもしくはポリリンカーを含有する。バイナリーベクターは、直接アグロバクテリウムに入れて形質転換することができる(Holsters et al. (1978) Mol Gen Genet 163:181-187)。選択マーカー遺伝子は、形質転換されたアグロバクテリウムの選択を可能にするが、たとえば、nptII遺伝子であって、これはカナマイシン耐性を付与する。アグロバクテリウムはこの場合宿主生物の役割を果たしているが、これは当然vir領域を有するプラスミドを含有すべきである。vir領域はT-DNAを植物細胞に移すために必要である。こうして形質転換されたアグロバクテリウムは、植物細胞を形質転換するために使用することができる。
【0204】
アグロバクテリウム・ツメファシエンスの多くの菌株は、遺伝物質 - たとえば、本発明のDNA構築物 - を移行させる能力を有しており、その菌株はたとえば、菌株EHA101(pEHA101)(Hood EE et al. (1996) J Bacteriol 168(3):1291-1301)、EHA105(pEHA105)(Hood et al. 1993, Transgenic Research 2, 208-218)、LBA4404(pAL4404)(Hoekema et al. (1983) Nature 303:179-181)、C58C1(pMP90)(Koncz and Schell (1986) Mol Gen Genet 204,383-396)およびC58C1(pGV2260)(De-blaere et al. (1985) Nucl Acids Res. 13, 4777-4788)などである。
【0205】
形質転換に使用されるアグロバクテリウム菌株は、その病原性をなくした(disarmed)Tiプラスミドに加えて、導入されるべきT-DNAを有するバイナリープラスミドを含有しており、このプラスミドは通例、形質転換された細胞を選択するための遺伝子、および導入されるべき遺伝子を含有する。2つの遺伝子は、転写および翻訳の開始および終結シグナルを備えていなければならない。バイナリープラスミドは、たとえば、エレクトロポレーションもしくは他の形質転換法によって、アグロバクテリウム菌株に導入することができる(Mozo & Hooykaas (1991) Plant Mol Biol 16:917-918)。植物の外植片とアグロバクテリウム菌株の共培養は、通常、2、3日間行う。
【0206】
さまざまなベクターを使用することができる。原則として、アグロバクテリウムを介した形質転換、言い換えるとアグロバクテリウム感染、に使用することができるベクター、すなわち、T-DNA内に本発明のDNA構築物を含有するベクター、実際に植物ゲノムにT-DNAを安定して組み込むことができるベクターを識別する。さらに、ボーダー配列のないベクターを使用してもよく、これはたとえば、微粒子銃で植物細胞内に入れて形質転換することが可能であって、この場合一過性の発現および安定した発現をいずれももたらすことができる。
【0207】
植物細胞の形質転換のためのT-DNAの使用が研究され、集中的に報告されている(EP-A1 120 516; Hoekema, In: The Binary Plant Vector System, Offset-drukkerij Kanters B. V., Alblasserdam, Chapter V; Fraley et al. (1985) Crit Rev Plant Sci 4:1-45およびAn et al. (1985) EMBO J 4:277-287)。さまざまなバイナリーベクターが知られており、その中には、たとえばpBIN19 (Clontech Laboratories, Inc. USA)のように市販されているものもある。
【0208】
DNAを植物細胞に導入するために、植物外植片をアグロバクテリウム・ツメファシエンスまたはアグロバクテリウム・リゾゲネスとともに共培養する。感染した植物材料(たとえば、葉、根、または茎の切片であるが、植物細胞のプロトプラストもしくは懸濁液も)から出発して、適当な培地を用いて完全な植物体を再生することができるが、この培地は形質転換された細胞を選択するために、たとえば、抗生物質もしくは殺生物剤を含有することができる。得られた植物は、その後、導入されたDNA、この場合は本発明のDNA構築物、の存在についてスクリーニングを行うことができる。DNAが宿主ゲノムに組み込まれたならば、当該の遺伝子型は概して安定であり、当該の挿入は次世代にも認められる。通例、組み込まれた発現カセットは、殺生物剤(たとえば、除草剤)または抗生物質、たとえばカナマイシン、G418、ブレオマイシン、ハイグロマイシンもしくはホスフィノトリシンなどに対する耐性を形質転換された植物に与える、選択マーカーを含有する。選択マーカーは、形質転換された細胞の選択を可能にする(McCormick et al., Plant Cell Reports 5 (1986), 81-84)。得られた植物は、通常のやり方で栽培し、交雑させることができる。ゲノムの組み込みが安定であり、かつ遺伝することを確認するために、2世代以上栽培すべきである。
【0209】
上記の方法は、たとえば、B. Jenes et al., Techniques for Gene Transfer;Transgenic Plants, Vol. 1, Engineering and Utilization edited by SD Kung and R Wu, Academic Press (1993), 128-143、およびPotrykus (1991) Annu Rev Plant Physiol Plant Molec Biol 42:205-225に記載されている。発現されるべき構築物は、好ましくは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス、たとえばpBin19 (Bevan et al. (1984) Nucl Acids Res 12:8711)の形質転換に適したベクターにクローニングされる。
【0210】
本発明のDNA構築物を用いて、基本的に任意の植物に望ましい特徴を与えることができる。当業者は、DNA構築物がトランスジェニック植物に安定に組み込まれ、機能しうると確認されたら、それを雌雄の交雑によって他の植物に導入できると認識するであろう。交雑させる種に応じて、多数の標準的な育種法のうち任意のものを使用することができる。
【0211】
あるいはまた、ヌクレアーゼもしくは最適化エンドヌクレアーゼは、一過性に発現されることがある。キメラエンドヌクレアーゼは、標的細胞に導入されたDNAもしくはRNAとして一過性に発現されることがあり、および/またはタンパク質として送達されることもある。タンパク質としてのデリバリーは、ヌクレアーゼもしくはキメラエンドヌクレアーゼと融合した、細胞膜透過性ペプチドの助けにより、またはSEciVシグナルペプチドとの融合により達成することができるが、これらはデリバリー生物から標的生物の細胞内への分泌、たとえばアグロバクテリウム・リゾゲネスまたはアグロバクテリウム・ツメファシエンスから植物細胞への分泌を仲介するものである。
【0212】
トランスジェニック植物の再生
形質転換された細胞、すなわ宿主細胞のDNAに組み込まれたDNAを含有する細胞は、選択可能なマーカーが導入されたDNAの一部を占めているならば、形質転換されていない細胞から選別することができる。マーカーはたとえば、抗生物質もしくは除草剤に対する耐性を与えることができる任意の遺伝子とすることができる(たとえば上記を参照されたい)。こうしたマーカー遺伝子を発現する形質転換細胞は、形質転換されていない野生型を死滅させる、適当な抗生物質もしくは除草剤の濃度のもとで生存することができる。形質転換された植物細胞が作製されたならば、当業者に公知の方法を用いて、完全な植物体を得ることができる。たとえば、カルス培養を出発材料として使用する。芽および根の形成は、この未だ分化していない細胞生物体において既知の方法で誘導することができる。得られた芽を植えて栽培することができる。
【0213】
上記形質転換法のいずれかによって得られた、形質転換された植物細胞を培養して、形質転換された遺伝子型を有する、したがって望ましい表現型を有する、完全な植物体を再生させることができる。こうした再生技術は、組織培養増殖培地中の特定の植物ホルモンの操作に依存するが、典型的には、望ましいヌクレオチド配列とともに導入された殺生物剤および/または除草剤マーカーに依存する。培養されたプロトプラストからの植物の再生は、Evans et al., Protoplasts Isolation and Culture, Handbook of Plant Cell Culture, pp. 124176, Macmillian Publishing Company, New York (1983); およびBinding, Regeneration of Plants, Plant Protoplasts, pp. 21-73, CRC Press, Boca Raton, (1985)に記載されている。再生は、植物のカルス、外植片、体細胞胚(Dandekar et al. (1989) J Tissue Cult Meth 12:145; McGranahan et al. (1990) Plant Cell Rep 8:512)、器官、またはそれらの一部から得ることができる。こうした再生技術は、Klee et al. (1987) Ann Rev Plant Physiol 38:467-486に全般的に記載されている。
【0214】
他の組み換え促進技術の併用
さらに好ましい実施形態において、形質転換系の効率は、相同組み換えを促進する系の併用によって高められる。こうした系は報告されており、たとえば、RecAなどのタンパク質の発現、またはPARP阻害剤による処理が含まれる。タバコ植物における染色体内相同組み換えは、PARP阻害剤を使用することによって高めることができることが示された(Puchta H et al. (1995) Plant J. 7:203-210)。こうした阻害剤を用いて、配列特異的DNA二本鎖切断の誘導後の、組み換えカセットにおける相同組み換え率、およびそれによる導入遺伝子配列の欠失の有効性を、さらに増加させることができる。さまざまなPARP阻害剤をこの目的に使用することができる。好ましくは、3-アミノベンズアミド、8-ヒドロキシ-2-メチルキナゾリン-4-オン(NU1025)、1,11b-ジヒドロ-(2H)ベンゾピラノ(4,3,2-デ)イソキノリン-3-オン(GPI 6150)、5-アミノイソキノリノン、3,4-ジヒドロ-5-(4-(1-ピペリジニル)ブトキシ)-1(2H)-イソキノリノン、またはWO 00/26192, WO 00/29384, WO 00/32579, WO 00/64878, WO 00/68206, WO 00/67734, WO 01/23386およびWO 01/23390に記載の化合物などの阻害剤が含まれる。
【0215】
さらに、大腸菌RecA遺伝子を発現させることによって、植物において、さまざまな相同組み換え反応の頻度を高めることができた(Reiss B et al. (1996) Proc Natl Acad Sci USA 93(7):3094-3098)。また、そのタンパク質の存在は、相同DSB修復と非正統的DSB修復の比率を、相同修復に有利に変化させる(Reiss B et al. (2000) Proc Natl Acad Sci USA 97(7):3358-3363)。植物における相同組み換えを増加させるための、WO 97/08331に記載の方法に言及することもできる。組み換え系の有効性のいっそうの増加は、RecA遺伝子、または相同組み換えの有効性を高める他の遺伝子の、同時発現によって達成できるかもしれない(Shalev G et al. (1999) Proc Natl Acad Sci USA 96(13):7398-402)。相同組み換えを促進する上記の系は、組み換え構築物を、真核生物のゲノム内に、相同組み換えを用いて部位特異的に導入すべき場合にも、有利に使用することができる。
【0216】
最適化エンドヌクレアーゼを用いた相同組み換えおよび標的変異方法
本発明はポリヌクレオチドの相同組み換え方法を提供するが、その方法は下記を含んでなる:
a. 相同組み換えに適した細胞を提供すること、
b. 両端に配列Aおよび配列Bが配置された組み換えポリヌクレオチドを含んでなる、ポリヌクレオチドを提供すること、
c. 配列Aおよび配列Bに対して相同で、十分長い、配列A'およびB'を含んでなるポリヌクレオチドであって、前記細胞において相同組み換えを可能にする前記ポリヌクレオチドを提供すること、および
d. 最適化エンドヌクレアーゼ、または最適化エンドヌクレアーゼをコードする発現カセットを提供すること、
e. 前記細胞内で、b)、c)、およびd)を組み合わせること、ならびに
f. b)およびc)の組み換えられたポリヌクレオチドを検出すること、またはb)およびc)の組み換えられたポリヌクレオチドを含有する細胞を選択し、または増殖させること。
【0217】
本発明のある実施形態において、ステップe)は、ステップc)で与えられるポリヌクレオチドに含まれるポリヌクレオチドの欠失をもたらす。
【0218】
本発明のある実施形態において、ステップc)で与えられるポリヌクレオチドに含まれる欠失したポリヌクレオチドは、マーカー遺伝子、またはマーカー遺伝子の一部をコードしている。
【0219】
本発明のある実施形態において、ステップb)で与えられるポリヌクレオチドは、少なくとも1つの発現カセットを含有する。
【0220】
本発明のある実施形態において、ステップb)で与えられるポリヌクレオチドは、選択マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子の発現をもたらす、少なくとも1つの発現カセットを含有する。
【0221】
本発明のある実施形態において、ステップb)で与えられるポリヌクレオチドは、選択マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子の発現をもたらす、少なくとも1つの発現カセットを含有し、さらに少なくとも1つのDNA認識部位または少なくとも1つのキメラ認識部位を含有する。
【0222】
本発明の他の実施形態は、ポリヌクレオチドの標的変異のための方法を提供するが、その方法は下記を含んでなる:
a. I-SceI認識部位を含んでなるポリヌクレオチドを含有する細胞を提供すること、
b. ステップa)のキメラ認識部位を切断する能力を有する、最適化エンドヌクレアーゼを提供すること、
c. 前記細胞においてa)およびb)を組み合わせること、ならびに
d. 変異したポリヌクレオチドを検出する、または変異したポリヌクレオチドを含有する増殖細胞を選択すること。
【0223】
本発明は、別の実施形態において、上記のような相同組み換えのための方法、または上記のようなポリヌクレオチドの標的変異のための方法を提供するが、それは下記を含んでなる:
最適化エンドヌクレアーゼとSceI認識部位を、生物の交雑により、細胞の形質転換により、またはキメラエンドヌクレアーゼと融合したSecIVペプチドによって、組み合わせること、ならびにSceI認識部位を含有する細胞を、最適化エンドヌクレアーゼを発現する生物と接触させること、ならびにキメラエンドヌクレアーゼと融合したSecIVペプチドを認識することができるSecIV輸送複合体を発現させること。
【0224】
(実施例)
一般的方法
オリゴヌクレオチドの化学合成は、たとえば、ホスホアミダイト法を用いた既知の方法で、実行することができる(Voet, Voet, 2nd edition, Wiley Press New York, pages 896-897)。本発明の目的のために実行されるクローニングステップ、たとえば、制限酵素切断、アガロースゲル電気泳動、DNA断片の精製、ニトロセルロースおよびナイロン膜への核酸の転写、DNA断片の結合、大腸菌細胞の形質転換、細菌培養、ファージの増殖、および組み換えDNAの配列分析は、Sambrook et al. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press; ISBN 0-87969-309-6により記載されたように行われる。組み換えDNA分子は、Sangerの方法(Sanger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74 (1977), 5463-5467)にしたがって、ALF Expressレーザー蛍光DNAシークエンサー(Pharmacia, Upsala [sic], Sweden)を用いて配列決定した。
【0225】
実施例1
大腸菌での発現ための配列特異的DNAエンドヌクレアーゼ発現カセットを含有する構築物
(実施例1a):基本構築物
この実施例において、大腸菌での形質転換に適した「構築物I」と称される、ベクターの概要を提示する。このベクターの概要は、選択のためのアンピシリン耐性遺伝子、大腸菌のための複製開始点、およびアラビノース誘導性転写調節因子をコードするaraC遺伝子を含んでなる。配列番号7は「NNNNNNNNNN」という配列ストレッチを示す。これはさまざまなタイプの配列特異的DNAエンドヌクレアーゼをコードする遺伝子のためのプレースホルダーとなるよう意図されたものである。さまざまな遺伝子は、アラビノース誘導性pBADプロモーターから発現することができ(Guzman et al., J Bacteriol 177: 4121-4130 (1995))、さまざまなヌクレアーゼ型をコードする遺伝子の配列は、次の実施例で与えられる。
【0226】
コントロール構築物では、プレースホルダーがI-SceI(配列番号8)で置き換えられているが、これはVC-SAH40-4と呼ばれる。
【0227】
実施例2:安定化型のヌクレアーゼをコードする大腸菌プラスミド
様々な脱安定化配列を、I-SceIのアミノ酸配列中で同定することができる。その中で、C末端の弱いPEST配列はアミノ酸残基228〜236を含み、N末端配列はKENモチーフとの類似性を示す(PflegerおよびKirschner, Genes and Dev. 14:655-665 (2000))。N末端則に従えば、I-SceIの第2のアミノ酸残基がタンパク質に対して不安定性を付与する。
【0228】
ヌクレアーゼの安定性に対するこれらの配列の効果を試験するために、N末端に由来するアミノ酸、C末端に由来する9個のアミノ酸またはその両方を欠く、様々な型のI-SceIをPCRにより作製した。これらの構築物を、実施例1aに記載の「構築物1」から発現させた。従って、ヌクレアーゼの型をコードする様々な配列(配列番号2、3、5に示される)により、プレースホルダ(placeholder)を置換した。このプラスミドをVC-SAH43-8 (C末端短縮型I-SceI)およびVC-SAH42-13 (NLS-C末端短縮型I-SceI)、VC-SAH44-32 (N末端短縮型I-SceI、配列番号21)およびVC-SAH45-3 (N-およびC末端短縮型I-Sce、配列番号22)と命名した。
【0229】
N末端則に従えば、これらの構築物は全て、安定化第2アミノ酸残基Gを担持する。タンパク質安定性に対する第2アミノ酸の効果を試験するために、I-SceIの天然の脱安定化残基を含む型も作製する。得られるプラスミドをVC-SAH105およびVC-SAH106と命名した。
【0230】
C末端のさらなる欠失を作製した:
1個のアミノ酸残基をC末端から連続的に除去した。これらの変異体を表3にまとめ、大腸菌中でそれらの活性について試験した。
【0231】
さらに、潜在的なPEST配列がI-SceI中に認められ、単一アミノ酸交換の導入により分析した。これらの変異体を表3にまとめ、大腸菌中でそれらの活性について試験した。
【表3】

【0232】
実施例3:大腸菌中でのDNAエンドヌクレアーゼをコードする構築物とヌクレアーゼ認識配列を担持する構築物との同時形質転換
プラスミドVC-SAH44-32、VC-SAH43-8、VC-SAH42-13、VC-SAH45-3およびVC-SAH40-4(実施例2に記載)を、大腸菌中で標的ベクターVC-SAH6-1または対照ベクターVC-SAH7-1と共に個別に同時形質転換した。VC-SAH105およびVC-SAH106および表3にまとめられたベクターについても同じことを行った。
【0233】
実施例4:大腸菌中でのエンドヌクレアーゼ活性の証明
実施例2に記載のI-SceIの型をその活性について試験した。
【0234】
一方はヌクレアーゼをコードし、他方はそのヌクレアーゼの標的部位を担持する2個のプラスミドの組合せを担持する同時形質転換体を、アンピシリン、カナマイシンおよびグルコースを含むLB中で一晩増殖させて、pBADプロモーターを抑制させた。培養物を1:100に希釈し、それらがOD600=0.5に到達するまで増殖させた。アラビノースを3〜4時間添加することによりヌクレアーゼの発現を誘導した。pBADプロモーターは用量依存的であると記載されており(Guzman, 1995)、従って培養物を様々なアリコートに分割し、0.2%〜0.0002%で変化する濃度のアラビノースでタンパク質発現を誘導した。5μlの各アリコートを、アンピシリンおよびカナマイシンを補給したLB固形培地上に塗布した。プレートを37℃で一晩インキュベートし、細胞増殖を半定量的に分析した。活性ヌクレアーゼ融合物は、標的部位を担持する構築物を切断した。これはカナマイシン耐性の喪失をもたらした。従って、同時形質転換体がカナマイシンを含有する培地上で増殖する能力を失ったことに起因して、融合タンパク質の活性が観察された。
【0235】
結果:
VC-SAH43-8(C末端短縮型I-SceI)およびVC-SAH42-13(NLS-C末端短縮型I-SceI)は非常に活性が高く、それらは誘導因子であるアラビノースの非存在下でも標的部位を切断した。これらの同時形質転換体の細胞増殖は、pBADプロモーターをさらに抑制するグルコースの存在下でのみ観察された。VC-SAH43-8およびVC-SAH42-13の場合と同様、pBADプロモーターからの基本的発現に起因して産生された少量のI-SceIタンパク質でも、標的プラスミドを切断するのに十分であった。
【0236】
結果を単純化し、表4にまとめる。++および+は、非常に強い増殖および強い増殖を表し、対応する標的部位に対する発現されたヌクレアーゼの活性がないか、またはほとんどないことを示す。-および--は、減少した増殖または増殖がないことを表し、対応する標的部位に対するヌクレアーゼの活性が高いか、または非常に高いことを示す。
【表4】

【0237】
実施例5:サッカロミセス・セレビシエの形質転換
サッカロミセス・セレビシエ細胞を10 mlのYEPS中で一晩増殖させた後、1:10に希釈する。次いで、この培養物を、OD600=0.5に到達するまで増殖させる。細胞をペレット化し、15 mlの滅菌水中に2回再懸濁し、再度ペレット化し、1 mlの滅菌水中に再懸濁する。この細胞懸濁液を100μlに分注し、再度ペレット化する。氷上で、240μlの50%PEG4000、36μlの1M LiAc、20μlのサケ精子DNA(5 mg/ml)(100℃で5分間、次いで氷上で10分間)を入れ、64μlの水中の6μgのプラスミドを添加する。この懸濁液を42℃で45分間インキュベートし、30秒間氷上に置く。細胞をペレット化し、500μlの水中に再懸濁し、そのうち200μlを、メチオニンを含まない選択培地上に塗布する。プレートを30℃で3〜4日間インキュベートする。1個のコロニーをさらなる分析のために選択することができる。
【0238】
実施例6:サッカロミセス・セレビシエ中での発現のための安定化型ヌクレアーゼを担持する構築物
実施例2に記載の配列を、メチオニンの存在下では抑制され、メチオニンの非存在下では活性であるMET25プロモーターの制御下でベクターpGBT9-3H/B(Tirodeら、1997, J Biol Chem 272: 22995-22999)中にクローニングする。
【0239】
実施例7:サッカロミセス・セレビシエ中でのエンドヌクレアーゼ安定性の証明
メチオニンを含まない培地上で形質転換体を増殖させることにより、タンパク質発現を誘導する。様々な形質転換体の全タンパク質抽出物を作製し、ウェスタンブロット分析によりI-SceIの存在量および量について試験する。シクロヘキシミドおよびMG132を用いてパルスチェイス実験を行って、様々な型のin vivoでの半減期を決定する。
【0240】
実施例8:シロイヌナズナ(A. thaliana)中での発現のための安定化型ヌクレアーゼをコードする構築物
実施例8a:ヌクレアーゼを発現する植物と対応する標的部位を含むT-DNAを担持する植物とを交配することによるエンドヌクレアーゼ活性の証明のための構築物
表4中の活性を示す全ての構築物は、試験にとって有益であり、以下の実施例はC末端短縮型のI-SceIに集中するであろう。「構築物IV」(配列番号13)のプレースホルダを、第2のアミノ酸残基として安定化Gと組合わせて、または組合わせずに、およびNLSと組合わせて、または組合わせずに、C末端短縮型のI-SceIをコードする様々な配列により置換した様々なプラスミドを作製した。最も好ましいのは、構築物VC-SAH151-2、VC-SAH152-6、VC-SAH153-6、VC-SAH154-1、VC-SAH155-1、VC-SAH156-3によりコードされるヌクレアーゼ変異体である。
【0241】
実施例8b:対応する標的部位を含むT-DNAを既に担持する植物中でこれらの構築物を形質転換することによるエンドヌクレアーゼ活性の証明のための構築物
本実施例では、本発明者らは植物の形質転換にとって好適な「構築物VI」(VC-SCB697)と命名したバイナリーベクターの一般的概略を提示する。このバイナリーベクターの一般的概略は、植物ゲノム中に組込まれた場合、カナマイシン上での選択を可能にする、nos-プロモーター::nptll::nos-ターミネーターカセットを有するT-DNAを含む。配列番号23(VC-SCB697)は、「NNNNNNNNNN」の配列ストレッチを示す。これは、I-SceIの型をコードする遺伝子のためのプレースホルダであることを意味する。
【0242】
プレースホルダを、C末端短縮型I-SceI:VC-SAH124-3 (NLS-I-SceI C末端短縮型、G) (配列番号5)、VC-SAH125-2 (I-SceI C末端短縮型、G)、(配列番号3)、VC-SAH122-7 (I-SceI、G) (配列番号2)およびVC-SAH123-3 (NLS-I-SceI、G)からなる様々な構築物により置換した様々なプラスミドを作製した。実施例2を参照されたい(対照として、第2のアミノ酸残基としての安定化Gを含まないI-SceIを用いた:VC-SCB697-3)。表4中で活性を示す全ての構築物は試験にとって有益であり、最も好ましいのは、構築物VC-SAH151-2、VC-SAH152-6、VC-SAH153-6、VC-SAH154-1、VC-SAH155-1、VC-SAH156-3によりコードされるヌクレアーゼ変異体である。
【0243】
第2のアミノ酸残基としての安定化Gを含まない同一のプラスミドを作製した。
【0244】
実施例9:シロイヌナズナ中での安定化型ヌクレアーゼをコードする構築物の形質転換
実施例8bに記載のプラスミドを、VC-SCB583-40(配列番号24)のT-DNAを担持するシロイヌナズナ系中で形質転換した。
【0245】
実施例8aに記載の構築物を野生型植物中で形質転換する。
【0246】
実施例10:安定化ヌクレアーゼの活性のモニタリング
実施例10a:交配による
様々な型のI-SceIの活性を、配列特異的DNAエンドヌクレアーゼを発現する系と、認識配列を含む構築物を担持する系とを交配することによりモニターした。認識配列は、部分的uidA (GUS)遺伝子(「GU」と呼ばれる)と別の部分的uidA遺伝子(「US」と呼ばれる)により囲まれている。GUS遺伝子の部分的に重複する半分(GUおよびUS)は非機能的であるが、標的部位上でのI-SceI活性の結果として、機能的GUS遺伝子は相同的染色体内組換え(ICHR)によって修復されるであろう。組織化学的GUS染色により、これをモニターすることができる(Jeffersonら(1987) EMBO J 6:3901-3907)。
【0247】
I-SceI活性を可視化するために、実施例9aに記載のプラスミドのT-DNAを担持するシロイヌナズナのトランスジェニック系列を、構築物VC-SCB734-4のT-DNAを担持するシロイヌナズナの系列と交配する。交配種のF1種子を収穫する。この種子を表面滅菌し、対応する抗生物質および/または除草剤を補給した培地A上で成長させる。3〜4齢の苗を収穫し、組織化学的GUS染色に用いる。青色の領域の量は、交配種中でICHRが起こった組織/組織の一部、従ってI-SceI活性の指示因子である。
【0248】
実施例10b:スーパートランスフォーメーションによる
認識配列を含む構築物を担持する系列を、様々な型の安定化I-SceIを含む発現カセットを担持するプラスミドで形質転換することにより、様々な型のI-SceIの活性をモニターした。認識配列は、部分的uidA (GUS)遺伝子(「GU」と呼ばれる)と別の部分的uidA遺伝子(「US」と呼ばれる)とにより囲まれている。GUS遺伝子の部分的に重複する半分(GUおよびUS)は非機能的であるが、標的部位上でのI-SceI活性の結果として、機能的GUS遺伝子は相同的染色体内組換え(ICHR)により修復されるであろう。組織化学的GUS染色によりこれをモニターすることができる(Jeffersonら(1987) EMBO J 6:3901-3907)。
【0249】
I-SceI活性を可視化するために、構築物pCB583-40のT-DNAを担持するシロイヌナズナのトランスジェニック系列を、実施例8bに記載のプラスミドで形質転換した。F1種子を収穫し、表面滅菌し、対応する抗生物質および/または除草剤を補給した培地A上で成長させた。F1植物をヌクレアーゼ構築物の単一コピー組込みについて分析し、自家受粉させた。F2植物を、選択圧を用いずに培地A上で成長させた。ヌクレアーゼをコードするT-DNAは、dsRedもコードしている。隔離に起因して、dsRedを含まない、従って、ヌクレアーゼを含まない植物を、UV光の下で選択した。4枚の葉を有する苗を収穫し、組織化学的GUS染色に用いた。青色の苗は、前の世代で起こった相同組換え事象を表す。それぞれの構築物について、3〜5個の独立した系列を分析し、最大96個の苗を染色した。青色の苗の数はI-SceI活性の指示因子である。
【0250】
結果:
まとめると、I-SceI、I-SceI+GおよびNLS-I-SceI+Gは30%〜41%の青色の植物をもたらした。その一方、VC-SAH124-3およびVC-SAH125-2によりコードされるC末端短縮型の発現は、約60%の青色の苗をもたらした。
【0251】
陽性のGUSシグナルはI-SceI活性に起因するICHR事象を表す。ヌクレアーゼは、ICHRによっては修復されないが、非正統的組換えによって修復される切断物も産生することができる。この事象は、I-SceI認識配列の破壊および非機能的GUS遺伝子をもたらすであろう。このアッセイにおいて得られる白色の苗をさらに分析するために、GUS遺伝子の半分(GUおよびUS)を増幅するPCR反応を実施した。アンプリコンをI-SceI消化にかけて、標的配列の存在または非存在を検出した。標的部位の非存在は前の世代におけるI-SceI活性を表す。まとめると、C末端短縮型I-SceI変異体により、無傷のI-SceI部位を含む88個の試験したT2植物のうちの1個が得られた。対照的に、構築物VC-SCB697-3によりコードされるI-SceIにより、切断されないI-SceI部位を依然として担持する48個の試験した植物のうちの14個が得られた。
【0252】
VC-SAH124-3およびVC-SAH125-2によりコードされるC末端短縮型は、ほとんど全ての個体がI-SceI活性の結果を示すT2世代を生じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、15、16、17または19により記載されるポリペプチドに対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む最適化されたエンドヌクレアーゼ。
【請求項2】
配列番号2、3または5により記載されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の最適化エンドヌクレアーゼ。
【請求項3】
遺伝子操作されたエンドヌクレアーゼである、請求項1に記載の最適化エンドヌクレアーゼ。
【請求項4】
配列番号1または2により記載されるポリペプチドに対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列TISSETFLKを含まない、請求項1、2または3に記載の最適化エンドヌクレアーゼ。
【請求項5】
配列番号1または2により記載されるポリペプチドに対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、配列番号1のセリンNr 229の突然変異を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の最適化エンドヌクレアーゼ。
【請求項6】
少なくとも1個の亜鉛フィンガードメイン、または転写活性化因子様(TAL)エフェクターから誘導される少なくとも1個の反復単位、または少なくとも1個の亜鉛フィンガードメインと転写活性化因子様(TAL)エフェクターから誘導される少なくとも1個の反復単位に融合された、請求項1〜5のいずれか一項に記載の最適化エンドヌクレアーゼ。
【請求項7】
SecIIIまたはSecIV分泌シグナルをさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の最適化エンドヌクレアーゼ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の最適化エンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項9】
単離されたポリヌクレオチドの配列が、
a. コドン最適化されている、
b. 低含量のRNA不安定性の誘因を有する、
c. 低含量のコドン反復を有する、
d. 低含量の潜在的スプライス部位を有する、
e. 低含量の代替的開始コドンを有する、
f. 低含量の制限部位を有する、
g. 低含量のRNA二次構造を有する、
h. a)、b)、c)、d)、e)、f)またはg)の任意の組合せを有する、
請求項7に記載のヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項10】
プロモーターおよびターミネーター配列と機能し得る形で組合わせた、請求項8または9に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む発現カセット。
【請求項11】
a. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の最適化エンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、または
b. 請求項8もしくは9に記載の単離されたポリヌクレオチド、または
c. 請求項10に記載の発現カセット、または
d. a)、b)、およびc)の任意の組合せ、
を含む、ベクター、宿主細胞または非ヒト生物。
【請求項12】
非ヒト生物が植物である、請求項11に記載の非ヒト生物。
【請求項13】
a. 相同組換えにとってコンピテントな細胞を用意すること、
b. 配列Aおよび配列Bにより側部に連結された最適化エンドヌクレアーゼのDNA認識部位を含むポリヌクレオチドを用意すること、
c. 前記細胞中での相同組換えを可能にするために十分に長く、配列Aおよび配列Bと相同である配列A'およびB'を含むポリヌクレオチドを用意すること、ならびに
d. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の最適化エンドヌクレアーゼもしくは請求項10に記載の発現カセットを用意すること、
e. 前記細胞中でb)、c)およびd)を混合すること、ならびに
f. b)およびc)の組換えポリヌクレオチドを検出すること、またはb)およびc)の組換えポリヌクレオチドを含む細胞を選択するか、もしくは増殖させること、
を含む、ポリヌクレオチドの相同組換え方法。
【請求項14】
相同組換えの際に、工程a)のコンピテント細胞中に含まれるポリヌクレオチド配列を、工程f)の増殖中の細胞のゲノムから欠失させる、請求項13に記載のポリヌクレオチドの相同組換えのための方法。
【請求項15】
a. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の最適化エンドヌクレアーゼのDNA認識部位を含むポリヌクレオチドを含む細胞を用意すること、
b. 工程a)のDNA認識部位を切断することができる請求項1〜7のいずれか一項に記載の最適化エンドヌクレアーゼもしくは請求項10に記載の発現カセットを用意すること、
c. 前記細胞中でa)およびb)を混合すること、ならびに
d. 突然変異したポリヌクレオチドを検出するか、または突然変異したポリヌクレオチドを含む細胞を選択するか、もしくは増殖させること、
を含む、ポリヌクレオチドの標的化された突然変異のための方法。
【請求項16】
最適化エンドヌクレアーゼおよびDNA認識部位を、生物の交配を介して、形質転換を介して、または最適化エンドヌクレアーゼに融合させたSecIIIもしくはSecIVペプチドに媒介される輸送を介して、少なくとも1個の細胞中で混合する、請求項12〜14のいずれか一項に記載の相同組換えまたは標的化された突然変異のための方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2013−511977(P2013−511977A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540530(P2012−540530)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際出願番号】PCT/IB2010/055428
【国際公開番号】WO2011/064736
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(512005634)ビーエーエスエフ プラント サイエンス カンパニー ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】