説明

有効成分の安定化された農薬粒剤

【課題】除草活性成分であるベンゾイルシクロヘキサンジオン系除草剤および非水溶性固体担体の炭酸カルシウムを用いた農薬粒剤において、除草効果が十分に発揮され、かつ、保存安定性に優れた農薬粒剤に関する技術を提供すること。
【解決手段】上記の農薬粒剤に リグニンスルホン酸塩およびジメチルポリシロキサンを含むことによって長期保管後も除草活性成分の安定性に優れる。また、除草活性成分の効果が十分に発揮されるため、除草効果も高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた除草活性作用を有するベンゾイルシクロヘキサンジオン系除草剤を含有して、該除草活性成分の効果が十分に発揮され、かつ、安定化された農薬粒剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有用作物の生育に対して悪影響を及ぼす病気・害虫・雑草を防除することを目的として、多種の農薬粒剤が開発され使用されている。これらの農薬粒剤を開発するにあたり製剤処方における重要な課題は、農薬活性成分が本来持っている優れた活性効果を粒剤の剤型にしても十分に発揮させ、かつ、農薬活性成分を長期間にわたり安定化させることにある。
【0003】
両者のうち、どちらか一方が欠けても商品としての価値は著しく下がるため、効果向上と農薬活性成分の保存安定化は必須の検討項目となっている。前者の効果については、粒剤を形成するのに必要な副資材の種類によって大きく変動し、後者の保存安定性についても、選択された副資材との相性となるため、副資材の選択には細心の注意を払う必要がある。
【0004】
なお、副資材には、界面活性剤、溶剤、結合剤、安定化剤などの補助剤や固体担体などの増量剤が挙げられる。
【0005】
副資材の中で増量剤として使用される固体担体は、農薬活性成分が固体担体に吸着し、農薬活性成分の本来持っている優れた活性が阻害されやすい傾向にある。固体担体は、硫酸アンモニウム、尿素、乳糖、ブドウ糖など水溶性固体担体とクレー、ベントナイト、タルク、炭酸カルシウムなどの非水溶性固体担体に分けられ、水溶性固体担体を使用する場合は、担体が水溶性であるため、農薬活性成分を吸着することがなく、安定した農薬活性効果を発揮しやすい。ただし、水溶性固体担体は、非水溶性固体担体と比較するとコストが高いため、農薬粒剤にはあまり適さない。
【0006】
また、非水溶性固体担体を使用する場合は、その担体の種類によって農薬活性成分の吸着の割合は大きく異なるが、それらの中でも炭酸カルシウムは吸着の割合が少なく、かつ、安価な固体担体であるため、これまでに多くの農薬粒剤に利用されている。
【0007】
なお、炭酸カルシウムはアルカリ性を示す特殊な固体担体であるため、使用する農薬活性成分がアルカリ性の物質に対して安定性が悪い場合は使用が困難であるが、農薬活性成分の保存安定性を図ることができれば、農薬活性効果およびコスト面でメリットが大きい。
【0008】
そして、除草活性成分であるベンゾイルシクロヘキサンジオン系除草剤を含む農薬粒剤においては、炭酸カルシウムを固体担体として用いる場合、保存安定性に問題が認められていた。
【0009】
一方、リグニンスルホン酸塩の農薬粒剤での役割は、主に農薬活性成分の分散性を向上させて、活性効果を安定的に高める界面活性剤として、従来より農薬粒剤に使用実績がある。これまでにも、非水溶性固体担体の炭酸カルシウムとリグニンスルホン酸塩を含む農薬粒剤については、報告(特許文献1、2、3、4)がなされている。しかしながら、除草活性成分であるベンゾイルシクロヘキサンジオン系除草剤に非水溶性固体担体が炭酸カルシウムからなる農薬粒剤において、除草効果は改善されるものの、保存安定性に改善は認められていなかった。
【0010】
ジメチルポリシロキサンの農薬製剤での使用例として、主に液体製剤である液剤やフロアブル剤に添加することで、製造時や使用時の農薬製剤の泡立ちによる作業性の低下を抑える消泡効果、起泡抑制効果として報告(特許文献5)がなされている。更には、農薬粒剤にジメチルポリシロキサンを使用することで農薬活性成分の溶出制御能を有する徐放性粒剤の報告(特許文献6)もなされているが、ジメチルポリシロキサンが農薬活性成分の保存安定化に寄与することは開示されていない。
【0011】
また、ジメチルポリシロキサンの類似化合物として、ジメチルポリシロキサンの側鎖および末端基をポリオキシアルキレンなどで変性させたシリコーン系界面活性剤は、水面浮遊性農薬固形製剤における効果向上剤や水面拡展剤としての報告(特許文献7、8)がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭53−15425号公報
【特許文献2】特開2000−143403号公報
【特許文献3】特開2003−306403号公報
【特許文献4】特開2008−69091号公報
【特許文献5】特開昭58−124702号公報
【特許文献6】特開2006−241058号公報
【特許文献7】特開昭64−25702号公報
【特許文献8】特開平8−99804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
除草活性成分であるベンゾイルシクロヘキサンジオン系除草剤および非水溶性固体担体の炭酸カルシウムを用いた農薬粒剤において、除草効果が十分に発揮され、かつ、保存安定性に優れた農薬粒剤に関する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、これらの課題を解決するべく鋭意研究した。その結果、(a)除草活性成分としてベンゾイルシクロヘキサンジオン系除草剤、および(b)非水溶性固体担体が炭酸カルシウムからなる農薬粒剤において、c)リグニンスルホン酸塩、および(d)ジメチルポリシロキサンの両成分を含有することで前記した課題を解決し得ることを見出し、本発明の農薬粒剤を得るに至った。
【発明の効果】
【0015】
本発明の除草活性成分としてベンゾイルシクロヘキサンジオン系除草剤、および非水溶性固体担体が炭酸カルシウムからなる農薬粒剤は、リグニンスルホン酸塩およびジメチルポリシロキサンを含むことによって長期保管後も除草剤活性成分の安定性に優れた効果を得ることができる。また、除草活性成分の効果が十分に発揮されるため、除草効果も高い。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書における「除草効果」とは、除草活性成分のベンゾイルシクロヘキサンジオン系除草剤が除草活性を示す雑草に対して、該除草活性成分、および非水溶性固体担体として炭酸カルシウムを含有した農薬粒剤を散布した場合、除草活性成分の本来持っている効力が十分に発揮できることをいう。
以下、本発明の農薬粒剤について具体的に説明する。
【0017】
<構成成分>
(a)除草活性成分のベンゾイルシクロヘキサンジオン系除草剤について
本発明における除草活性成分のベンゾイルシクロヘキサンジオン系除草剤の例として、2−[(2’,4’−ジクロロ−3’−(メチルチオメチルオキシ)ベンゾイル]−1,3−シクロヘキサンジオン(特開平10−59929号公報に記載の化合物)、2−[(2’,4’−ジブロモ−3’−(メチルチオメチルオキシ)ベンゾイル]−1,3−シクロヘキサンジオン(特開平10−59929号公報に記載の化合物)、2−(2−クロロ−4−メチルベンゾイル)シクロシクロヘキサン−1,3−ジオン(一般名:sulcotrione)、2−(4−メシル−2−ニトロベンゾイル)シクロシクロヘキサン−1,3−ジオン(一般名:mesotrione)、2−{2−クロロ−4−メシル−3−[(テトラヒドロフラン−2−イルメトキシ)メチル]ベンゾイル}シクロヘキサン−1,3−ジオン(一般名:tefuryltrione)、などが挙げられる。
これらの除草活性成分を1種類または2種類以上併用できる。
除草活性成分の製剤中への添加量は特に限定されないが、製剤100重量部中に通常0.1〜30重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0018】
(b)非水溶性固体担体の炭酸カルシウムについて
炭酸カルシウムは、その製造方法によって重質炭酸カルシウムと軽質炭酸カルシウムに分別される。重質炭酸カルシウムは、自然界より産出する石灰石、チョーク(白亜)を機械的に粉砕することによって製造される。また、軽質炭酸カルシウムは沈降炭酸カルシウムとも呼ばれ、石灰石を焼成して得られる生石灰を水中に投入して得られる石灰乳と炭酸ガスを反応させる炭酸ガス化合法によって製造される場合と、塩化カルシウムとゾーダ石灰を反応させる炭酸塩溶液化合法によって製造される場合がある。なお、本発明における炭酸カルシウムはいずれも使用することができる。
また、本発明における固体担体の炭酸カルシウムの粒子径については特に限定されないが、固体担体の粒子径が大きくなると、農薬粒剤の硬度を保持するのが難しく、粉化しやすくなるため、平均粒子径は50μm以下の範囲が好ましい。
炭酸カルシウムの添加量は、製剤100重量部中に通常60〜98.9重量部、好ましくは70〜98.9重量部である。
【0019】
(c)リグニンスルホン酸塩について
本発明におけるリグニンスルホン酸塩は、(a)除草活性成分であるベンゾイルシクロヘキサンジオン系除草剤、(b)非水溶性固体担体の炭酸カルシウムで構成される農薬粒剤における除草活性成分の分散性向上剤としての役割を果たしている。
本発明におけるリグニンスルホン酸塩とは、木材の主要成分であるリグニンをスルホン化することによって得られる水溶性高分子である。また、塩の部分については、特に限定されないが、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム塩などが挙げられ、これらのうち、カルシウム塩が特に好ましい。
なお、このようにして製造されたものが使用できることはもちろんのこと、サンエキスP201(商品名:日本製紙ケミカル株式会社製)、サンエキスP252(商品名:日本製紙ケミカル株式会社製)、REAX 85A(商品名:MeadWestvaco社製)など、工業的に生産販売されているものも使用できる。
これらリグニンスルホン酸塩は1種類または2種類以上併用できる。
リグニンスルホン酸塩の添加量は、製剤100重量部中に通常0.5〜10重量部、好ましくは1〜7重量部である。
【0020】
(d)ジメチルポリシロキサンについて
本発明におけるジメチルポリシロキサンは、(a)除草活性成分であるベンゾイルシクロヘキサンジオン系除草剤、(b)非水溶性固体担体の炭酸カルシウム、c)リグニンスルホン酸塩で構成される農薬粒剤における除草活性成分の保存安定性の改善の役割を果たしている。
本発明におけるジメチルポリシロキサンとは、金属ケイ素を原料に主に直接合成法で作られるシランに対して加水分解重合したポリマーを変性して得られる。
なお、このようにして製造されたものが使用できることはもちろんのこと、SAG−10(商品名:東レ・ダウコーニング株式会社製)などの工業的に生産販売されているものも使用できる。
ジメチルポリシロキサンの添加量は、製剤100重量部中に0.001重量部以上で保存安定性の改善が認められる。
【0021】
(e)その他成分について
本発明の農薬粒剤は、(a)除草活性成分としてベンゾイルシクロヘキサンジオン系除草剤、(b)非水溶性固体担体が炭酸カルシウム、(c)リグニンスルホン酸塩、(d)ジメチルポリシロキサンを必須とし、これらの成分以外に本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、その他の農薬活性成分、界面活性剤、溶剤、固体担体、結合剤などを添加することができる。
【0022】
その他の農薬活性成分の例としては、除草活性成分として、フェノキシ酸系、カーバメート系、酸アミド系、尿素系、スルホニル尿素系、ピリミジルオキシ安息香酸系、トリアジン系、ダイアジン系、ダイアゾール系、ビピリジリウム系、ジニトロアニリン系、芳香族カルボン酸系、脂肪酸系、アミノ酸系など、殺菌活性成分として、銅化合物、有機硫黄、有機リン系、メラニン生合成阻害、ベンゾイミダゾール系、ジカルボキシイミド系、酸アミド系、ステロール生合成阻害、メトキシアクリレート系、アニリノピリミジン系、抗生物質など、殺虫活性成分として、有機リン系、カーバメート系、ピレステロイド系、ネライストキシン系、ネオニコチノイド系などが例として挙げられる。そして、これらの農薬活性成分は、1種類または2種類以上を併用しても何ら問題ない。
【0023】
また、本発明においては、農薬活性成分のほかに、植物成長調整成分などを添加してもかまわない。
なお、上記農薬活性成分の具体例は、それぞれ単剤、2種以上の混合剤ともに「農薬ハンドブック2005年版」(社団法人日本植物防疫協会発行)に記載(p.2−111、274−472、475−674参照)されている。
【0024】
界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤および両性界面活性剤などがあげられる。
このような非イオン界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキレート、ポリオキシエチレンフェニルエーテルポリマー、ポリオキシエチレンアルキレンアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、などがあげられる。
また、陰イオン界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルフォスフェート、アルキルアリールスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルサルフェート、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルサルフェート、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩などがあげられる。
また、陽イオン界面活性剤および両性界面活性剤の例としては、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アミンオキサイドなどがあげられる。
なお、本発明に用いられる界面活性剤としては、これらの例示に限られるものではなく、これらから選ばれる一種または二種以上を併用しても何ら問題はない。
【0025】
固体担体の例として、非水溶性固体担体では、クレー、タルク、ベントナイト、ジークライト、セリサイト、酸性白土、珪石、ケイソウ土、ゼオライト、カオリン、二酸化珪素など、水溶性固体担体では、塩化カルシウム、塩化カリウム、硫酸アンモニウム、グルコース、フルクトース、マルトース、シュークロース、ラクトースなどの単糖類、二糖類、多糖類などがあげられる。これらの固体担体は、これらの例示に限られるものではなく、1種または2種以上を併用しても何ら問題ない。
【0026】
溶剤としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオレイル、アジピン酸ジイソデシル、フタル酸ジエチルヘキシル、フタル酸ジデシル、トリメット酸2−エチルヘキシル、トリメット酸トリデシルなどの多塩基酸アルコールエステル、2−エチルヘキサン酸セチル、ヤシ脂肪酸セチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、オレイン酸メチル、オレイン酸オクチルなどの脂肪酸アルコールエステル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエートなどの多価アルコール脂肪酸エステル、オクチルアルコール、ラウリルアルコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールなどの高級アルコール、メチルジグリコール、メチルトリグリコール、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテルなどのグリコールエーテル、1,2−ジメチル−4−エチル−ベンゼン、メチルナフタレン、1−フェニル−1−キシリルエタン、1−キシリル−1−(3−α−メチルベンジルフェニル)エタンなどの芳香族炭化水素、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、流動パラフィンなどのパラフィン系炭化水素、大豆油、ヤシ油、ナタネ油、キリ油、ヒマシ油、綿実油などの植物油が挙げられる。これらの溶剤は、これらの例示に限られるものではなく、1種または2種以上を併用しても何ら問題ない。
【0027】
結合剤の例としては、ポリビニルアルコール、デンプン、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロースなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
<農薬粒剤の製造方法>
農薬粒剤の製造方法としては、(a)除草活性成分としてベンゾイルシクロヘキサジオン系除草剤、(b)非水溶性固体担体が炭酸カルシウム、(c)リグニンスルホン酸塩、(d)ジメチルポリシロキサン、およびこれらの成分以外に本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、その他の農薬活性成分、界面活性剤、溶剤、固体担体、結合剤など添加、混合した粉体へ適量の水分を混練り後、押し出し造粒機にて造粒する。造粒された湿粒は、整粒、乾燥、篩分の工程を経て粒剤を得られる。また、混合した粉体は、転動造粒機や流動層造粒にて加水もしくは結合剤を含む水溶液を添加して造粒することもできる。
本発明の農薬粒剤は、重量、大きさ、形状については特に制限はなく、目的を達成しうる範囲内で適宜変更して実施できる。
【実施例】
【0029】
次に、実施例で本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、部とあるのは、すべて重量部を示す。
【0030】
〔実施例1〕
2−[(2’,4’−ジクロロ−3’−(メチルチオメチルオキシ)ベンゾイル]−1,3−シクロヘキサンジオン1.0部、炭酸カルシウム93.99部、リグニンスルホン酸カルシウム3.0部、ジメチルポリシロキサン0.01部、デキストリン2.0部をハンマーミル(不二パウダル株式会社製)で混合後、この混合物100部に対し、水8.0部を添加し、双腕ニーダー(不二パウダル株式会社製)で混練混合する。次に、1.2mm径のスクリーンを付けた押出し造粒機(日本薬業株式会社製)で造粒し、さらに流動層乾燥機(不二パウダル株式会社製)で乾燥した後、目開き1.7mmと0.85mmの篩を用いて篩別して、本発明の農薬粒剤を得た。
【0031】
〔実施例2〕
2−[(2’,4’−ジクロロ−3’−(メチルチオメチルオキシ)ベンゾイル]−1,3−シクロヘキサンジオン1.0部、炭酸カルシウム93.999部、リグニンスルホン酸カルシウム3.0部、ジメチルポリシロキサン0.001部、デキストリン2.0部を実施例1に準じて製造して、本発明の農薬粒剤を得た。
【0032】
〔実施例3〕
2−[(2’,4’−ジクロロ−3’−(メチルチオメチルオキシ)ベンゾイル]−1,3−シクロヘキサンジオン1.0部、炭酸カルシウム90.99部、リグニンスルホン酸カルシウム3.0部、ジメチルポリシロキサン0.01部、デキストリン2.0部、β―ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム3.0を実施例1に準じて製造して、本発明の農薬粒剤を得た。
【0033】
〔実施例4〕
2−[(2’,4’−ジクロロ−3’−(メチルチオメチルオキシ)ベンゾイル]−1,3−シクロヘキサンジオン1.0部、炭酸カルシウム90.99部、リグニンスルホン酸カルシウム3.0部、ジメチルポリシロキサン0.01部、デキストリン2.0部、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル3.0部を実施例1に準じて製造して、本発明の農薬粒剤を得た。
【0034】
〔実施例5〕
2−[(2’,4’−ジブロモ−3’−(メチルチオメチルオキシ)ベンゾイル]−1,3−シクロヘキンサジオン1.0部、炭酸カルシウム92.95部、リグニンスルホン酸ナトリウム6.0部、ジメチルポリシロキサン0.05部を実施例1に準じて製造して、本発明の農薬粒剤を得た。
【0035】
〔実施例6〕
メソトリオン1.0部、炭酸カルシウム92.99部、リグニンスルホン酸マグネシウム2.0部、ジメチルポリシロキサン0.01部、ラウリル硫酸ナトリウム2.0部、デキストリン2.0部を実施例1に準じて製造して、本発明の農薬粒剤を得た。
【0036】
〔実施例7〕
テフリルトリオン1.5部、炭酸カルシウム93.48部、リグニンスルホン酸ナトリウム5.0部、ジメチルポリシロキサン0.02部を実施例1に準じて製造して、本発明の農薬粒剤を得た。
【0037】
〔実施例8〕
2−[(2’,4’−ジクロロ−3’−(メチルチオメチルオキシ)ベンゾイル]−1,3−シクロヘキサンジオン1.0部、炭酸カルシウム89.99部、リグニンスルホン酸ナトリウム2.0部、ジメチルポリシロキサン0.01部、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマースチリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム5.0部、カルボキシメチルセルロースナトリウム2.0部を実施例1に準じて製造して、本発明の農薬粒剤を得た。
【0038】
〔実施例9〕
メソトリオン1.0部、炭酸カルシウム83.98部、リグニンスルホン酸ナトリウム5.0部、ジメチルポリシロキサン0.02部、イソブチレンと無水マレイン酸共重合物ナトリウム5.0部、デキストリン5.0部を実施例1に準じて製造して、本発明の農薬粒剤を得た。
【0039】
〔実施例10〕
テフリルトリオン1.5部、炭酸カルシウム62.89部、ベントナイト30部、リグニンスルホン酸カルシウム3.0部、ジメチルポリシロキサン0.01部、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム0.5部、ポリカルボン酸ナトリウム1.0部、トリポリリン酸ナトリウム1.0部、プロベナゾール0.1部を実施例1に準じて製造して、本発明の農薬粒剤を得た。
【0040】
〔比較例1〕
2−[(2’,4’−ジクロロ−3’−(メチルチオメチルオキシ)ベンゾイル]−1,3−シクロヘキサンジオン1.0部、炭酸カルシウム97.0部、デキストリン2.0部を実施例1に準じて製造して、農薬粒剤を得た。
【0041】
〔比較例2〕
2−[(2’,4’−ジクロロ−3’−(メチルチオメチルオキシ)ベンゾイル]−1,3−シクロヘキサンジオン1.0部、炭酸カルシウム94.0部、リグニンスルホン酸カルシウム3.0部、デキストリン2.0部を実施例1に準じて製造して、農薬粒剤を得た。
【0042】
〔比較例3〕
2−[(2’,4’−ジクロロ−3’−(メチルチオメチルオキシ)ベンゾイル]−1,3−シクロヘキサンジオン1.0部、炭酸カルシウム96.99部、ジメチルポリシロキサン0.01部、デキストリン2.0部を実施例1に準じて製造して、農薬粒剤を得た。
【0043】
〔比較例4〕
2−[(2’,4’−ジクロロ−3’−(メチルチオメチルオキシ)ベンゾイル]−1,3−シクロヘキサンジオン1.0部、炭酸カルシウム93.99部、リグニンスルホン酸カルシウム3.0部、ポリオキシアルキレンシリコーン0.01部、デキストリン2.0部を実施例1に準じて製造して、農薬粒剤を得た。
【0044】
〔比較例5〕
2−[(2’,4’−ジクロロ−3’−(メチルチオメチルオキシ)ベンゾイル]−1,3−シクロヘキサンジオン1.0部、炭酸カルシウム94.0部、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム3.0部、デキストリン2.0部を実施例1に準じて製造して、農薬粒剤を得た。
【0045】
〔比較例6〕
2−[(2’,4’−ジクロロ−3’−(メチルチオメチルオキシ)ベンゾイル]−1,3−シクロヘキサンジオン1.0部、炭酸カルシウム91.0部、リグニンスルホン酸カルシウム3.0部、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム3.0部、デキストリン2.0部を実施例1に準じて製造して、農薬粒剤を得た。
【0046】
〔比較例7〕
2−[(2’,4’−ジクロロ−3’−(メチルチオメチルオキシ)ベンゾイル]−1,3−シクロヘキサンジオン1.0部、炭酸カルシウム93.99部、ジメチルポリシロキサン0.01部、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム3.0部、デキストリン2.0部を実施例1に準じて製造して、農薬粒剤を得た。
【0047】
〔比較例8〕
2−[(2’,4’−ジクロロ−3’−(メチルチオメチルオキシ)ベンゾイル]−1,3−シクロヘキサンジオン1.0部、炭酸カルシウム94.0部、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル3.0部、デキストリン2.0部を実施例1に準じて製造して、農薬粒剤を得た。
【0048】
〔比較例9〕
2−[(2’,4’−ジクロロ−3’−(メチルチオメチルオキシ)ベンゾイル]−1,3−シクロヘキサンジオン1.0部、炭酸カルシウム91.0部、リグニンスルホン酸カルシウム3.0部、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル3.0部、デキストリン2.0部を実施例1に準じて製造して、農薬粒剤を得た。
【0049】
〔比較例10〕
2−[(2’,4’−ジクロロ−3’−(メチルチオメチルオキシ)ベンゾイル]−1,3−シクロヘキサンジオン1.0部、炭酸カルシウム93.99部、ジメチルポリシロキサン0.01部、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル3.0部、デキストリン2.0部を実施例1に準じて製造して、農薬粒剤を得た。
【0050】
〔比較例11〕
2−[(2’,4’−ジクロロ−3’−(メチルチオメチルオキシ)ベンゾイル]−1,3−シクロヘキサンジオン1.0部、炭酸カルシウム90.0部、リグニンスルホン酸ナトリウム2.0部、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマースチリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム5.0部、カルボキシメチルセルロースナトリウム2.0部を実施例1に準じて製造して、本発明の農薬粒剤を得た。
【0051】
〔比較例12〕
メソトリオン1.0部、炭酸カルシウム93.0部、リグニンスルホン酸ナトリウム2.0部、ラウリル硫酸ナトリウム2.0部、デキストリン2.0部を実施例1に準じて製造して、本発明の農薬粒剤を得た。
【0052】
〔比較例13〕
メソトリオン1.0部、炭酸カルシウム84.0部、リグニンスルホン酸ナトリウム5.0部、イソブチレンと無水マレイン酸共重合物ナトリウム5.0部、デキストリン5.0部を実施例1に準じて製造して、本発明の農薬粒剤を得た。
【0053】
〔比較例14〕
テフリルトリオン1.5部、炭酸カルシウム62.9部、ベントナイト30.0部、リグニンスルホン酸カルシウム3.0部、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム0.5部、ポリカルボン酸ナトリウム1.0部、トリポリリン酸ナトリウム1.0部、プロベナゾール0.1部を実施例1に準じて製造して、本発明の農薬粒剤を得た。
【0054】
<試験方法>
試験例1 保存安定性試験
農薬粒剤に含まれている除草活性成分であるベンゾイルシクロヘキサンジオン系除草剤の製造直後の含有濃度(%)をHPLC法(移動層:メタノール/0.1%リン酸水溶液=60/40(V/V)にて算出する。
次に、その農薬粒剤100gを入れたアルミ袋を40±1℃の恒温機に保管する。保管してから90日後にアルミ袋を取り出し、ベンゾイルシクロヘキサンジオン系除草剤の経時後の含有濃度(%)も同様の分析法によって算出する。
下記式により、製造直後の含有濃度(%)と経時後の含有濃度(%)から経時後のベンゾイルシクロヘキサンジオン系除草剤の保存安定性(%)を算出した。
その試験結果を表1、2に示す。
【0055】
【数1】

【0056】
試験例2 除草試験
1/5000アールの大きさのワグネルポットに水田土壌を充填後、アゼナを種子土壌表層に播種し、湛水深3cmとした。その後の管理は17〜28℃のガラス室内で行い、ワグネルポット内のアゼナの個体数を10体に調整し、アゼナ4.0葉時期に農薬粒剤20mgを散布した。薬剤散布40日後に試験区内に残存するアゼナを抜き取り、その乾燥重量(g)を測定し、下記式にて除草効果(%)を求めた。なお、各試験は3連制で実施し、試験結果の値は平均値で記載する。
結果は表1、2に示す。
【0057】
【数2】

【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
<表の説明>
表1に記載された結果から明らかなようにベンゾイルシクロヘキサンジオン系除草剤および炭酸カルシウムを含む農薬粒剤において、リグニンスルホン酸塩およびジメチルポリシロキサンを含むことからなる製剤No.1〜10の除草活性成分の長期保存安定性および除草効果はいずれも高い数値を示し、二つの効果は両立されていた。これに対し、表2に記載された比較製剤No.1〜14の保存安定性および除草効果は、両立されておらず、顕著な差が認められた。
【0061】
詳細に検討を行うと製剤No.1,2,5,7と比較製剤No.1の比較から、ベンゾイルシクロヘキサンジオン系除草剤および炭酸カルシウムを含む農薬粒剤において、リグニンスルホン酸塩およびジメチルポリシロキサンを含まない場合、除草効果および保存安定性は劣る結果となった。
【0062】
また、リグニンスルホン酸塩を含有する比較製剤No.2,4,6,9,11〜14の除草効果は高いが、保存安定性が不十分であることがわかる。つまり、高い除草効果はリグニンスルホン酸塩の作用と考えられるが、保存安定性に対してリグニンスルホン酸は効果を有さないことを示している。
【0063】
そして、ジメチルポリシロキサンを含有する比較製剤No.3,7,10のうち、比較製剤No.3は除草効果、保存安定性とも値は低く、比較製剤No.7,10では比較製剤に含まれるリグニンスルホン酸塩以外の界面活性剤の影響のため除草効果は高いが、やはり保存安定性が不十分であることがわかる。つまり、ジメチルポリシロキサンは、単独では除草効果および保存安定性に寄与しないと推測される。
【0064】
これらの結果より、製剤No.1〜10で得られた保存安定性の高い値は、リグニンスルホン酸塩およびジメチルポリシロキサンを含むことによって達成されることを示している。また、比較製剤No.7,10においてリグニンスルホン酸塩以外の界面活性剤およびジメチルポリシロキサンを含んでいるが、保存安定性が改善されていないこと、およびジメチルポリシロキサンと類似の物性をもつポリオキシアルキレンシリコーンとリグニンスルホン酸塩を含む比較製剤No.4において、保存安定性に改善は認められないことから、リグニンスルホン酸塩およびジメチルポリシロキサンの組み合わせが、除草活性成分の安定性に重要であることを示している。
【0065】
更には、比較製剤No.5〜7に含まれるβ−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウムおよび比較製剤No.8〜10に含まれるポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルは、保存安定性の試験結果から、農薬活性成分の分解を助長していると考えられるが、製剤No.3,4においては、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウムおよびポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルをそれぞれ含有しているにもかかわらず、リグニンスルホン酸塩およびジメチルポリシロキサンを含んでいるために、高い保存安定性が認められた。
【0066】
一方、製剤No.1〜10に認められる除草効果の高い値はリグニンスルホン酸塩によってもたらされ、ジメチルポリシロキサンがリグニンスルホン酸塩の作用を阻害しないことを示している。
【0067】
したがって、ベンゾイルシクロヘキサンジオン系除草剤および炭酸カルシウムを含む農薬粒剤において、リグニンスルホン酸塩およびジメチルポリシロキサンを含むことからなることにより、除草活性成分の高い除草効果と保存安定性が保たれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)除草活性成分としてベンゾイルシクロヘキサンジオン系除草剤、(b)非水溶性固体担体が炭酸カルシウム、(c)リグニンスルホン酸塩、(d)ジメチルポリシロキサンを含有してなることを特徴とする農薬粒剤。

【公開番号】特開2010−189299(P2010−189299A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34434(P2009−34434)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000242002)北興化学工業株式会社 (182)
【Fターム(参考)】