説明

有害物質含有廃液処理方法

【課題】
被処理液体中に固形物を含む有害物質含有液中の有害物質を効率良く処理できる方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
固形物を含む有害物質含有廃液を表面において蒸発する伝熱管を複数備えた伝熱処理装置において、前記伝熱管はチャンバ内に収容されており、前記チャンバの内部に貯留される液状の被処理流体を循環される循環ラインを備え、前記循環ラインは、前記伝熱管の表面に液状の被処理流体を供給する供給部と、過酸化水素水を導入する導入部を備え、前記過酸化水素水を注入した前記被処理流体を前記伝熱管表面に供給し、被処理流体を過酸化水素水とともに蒸発させるようにした固形物を含む有害物質含有廃液中の有害物質を処理する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空伝熱処理装置に関し、より詳しくは、有機物を含む被処理流体を真空状態で、表面において蒸発又は凝縮させる伝熱管を備えた真空伝熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の伝熱処理装置として特許文献1に記載された伝熱処理装置がある。この装置は有機物を含む被処理流体を表面において蒸発又は凝縮させる伝熱管を備えた伝熱処理装置であって、伝熱管表面に光触媒膜が形成されており、装置の外壁部分に備えられた窓部より、外部から紫外線を照射し、被処理流体中の有機物を処理するものである。
【0003】
特許文献2は、有機物を含む被処理流体を表面において蒸発又は凝縮させる伝熱管を複数備えた伝熱処理装置であって、伝熱管表面に光触媒膜が形成され、複数の伝熱管からなる管束の一部に透明の管が配されており、透明の管から伝熱管表面に紫外線が照射できる構成されているものである。
【0004】
特許文献3は、遠心薄膜乾燥機を利用して被処理液を薄膜状にして気液界面の接触面積を増やし、熱を加え、オゾンガスまたは過酸化水素と被処理液を接触させ、被処理液内のCOD成分を分解するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−337537号公報
【特許文献2】特開2007−232302号公報
【特許文献3】特開2007−309873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、光を蒸発装置又は凝縮装置に窓を取り付
け、外部から光を照射しなければならないため、光が届く範囲にしか伝熱管を設置できな
かった。このため、蒸発装置又は凝縮装置は幅を大きくすることができず、処理量を増やそうとすれば装置高さが高くなるため、装置の製作費が高価になるという問題があった。また、固形物が被処理液に含まれている場合、固形物が窓に付着し、光を伝熱管に届けるためには、頻繁に窓を掃除しなければならないという問題があった。
【0007】
特許文献2に記載の装置では、蒸発装置又は凝縮装置の内部の管束の一部に透明な管を設置し、紫外線を照射可能にしたものであるが、固形物が被処理液に含まれる場合、透明な管の表面に固形物が付着するため、頻繁に透明な管の表面を清掃しなければならないという問題があった。
【0008】
特許文献3に記載の装置では、装置の上部から被処理液を流下させてオゾン又は過酸化水素と接触させるため、被処理液中の有害成分が多くなると処理できないという問題があった。また、被処理液中に固形物が含まれている場合、伝熱表面に固形物が付着し、被処理液が均一に薄膜状にならないため、有害物の処理能力が大幅に低下するという問題があった。
【0009】
上述したように、有害物を含む液を処理する伝熱装置において、被処理液中に固形物を含む場合の処理の問題点は何ら解消されていない。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑み、被処理液体中に固形物を含む有害物質含有液中の有害物質を効率良く処理できる方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するため、有害物質含有廃液を表面において蒸発する伝熱管を複数備えた伝熱処理装置であって、固形物を含む有害物質含有廃液を表面において蒸発する伝熱管を複数備えた伝熱処理装置において、前記伝熱管はチャンバ内に収容されており、前記チャンバの内部に貯留される液状の被処理流体を循環される循環ラインを備え、前記循環ラインは、前記伝熱管の表面に液状の被処理流体を供給する供給部と、過酸化水素水を導入する導入部を備え、前記過酸化水素水を注入した前記被処理流体を前記伝熱管表面に供給し、被処理流体を過酸化水素水とともに蒸発させるようにした固形物を含む有害物質含有廃液中の有害物質を処理する処理方法である。
【0012】
また、前記伝熱管表面で蒸発した蒸気を凝縮装置に導き、凝縮された凝縮水を、前記循環ラインの前記過酸化水素水導入部の手前に導入するようにして、上記目的を達成するようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の処理方法によれば、固形物を含む有害物質含有廃液中の有害物を効率よく処理でき、従来、処理が困難とされてきたフェノール類も処理が可能である。また、処理廃液を循環して処理が可能になるように構成されているので、処理装置が非常にコンパクトになり、装置の製作費、設置費用などが安価となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明の実施方法を示した説明図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る固形物を含む有害物質含有廃液中の有害物質を処理する処理方法のフローである。処理システムは、有害物質含有廃液を表面において蒸発する伝熱管を複数備えた伝熱処理装置1と、チャンバ2内に収容されている伝熱管3と、チャンバの内部に貯留される液状の被処理流体を循環する循環ライン4とで構成され、循環ラインの途中に設けられた過酸化水素水導入部5から過酸化水素水が導入するようになっており、循環ラインからチャンバ上部に運ばれた過酸化水素水を加えられた被処理水とは、チャンバ上部からスプレーノズル6により内部の伝熱管表面にシャワリングされる。このシャワリング効果により、伝熱管表面に付着しようとする固形物は物理的にそぎ落とされ、伝熱管表面に付着することがないようにされている。
【0017】
被処理液はチャンバ2に設けられた被処理液導入部7からチャンバ内に導入され、複数の伝熱管表面にシャワリングされ、シャワリングの時に伝熱管表面にて熱交換され、伝熱管表面にて蒸発する。蒸発時の熱エネルギーにより、被処理液に含有されている有害物が混入されている過酸化水素水との相乗効果により、分解処理される。
【0018】
伝熱処理装置1は、チャンバ2の内部に水平にのびる伝熱管3が設けられており、伝熱管3は上下方向に所定の間隔で複数配置されて伝熱管列を構成しており、この伝熱管列が水平方向に所定の間隔で複数設けられている。チャンバ2の内部空間は真空ポンプ(図示せず)により減圧調整されている。
【0019】
チャンバ2の両側には蒸気室8a、8bが設けられており、各伝熱管3の両端がそれぞれ蒸気室8a、8bに接続されている。一方の蒸気室8aの下部に水蒸気などの加熱媒体を導入する加熱媒体導入部9を備え、他方の蒸気室8bの上部に加熱媒体を排出する加熱媒体排出部10を備えている。他方の蒸気室8aの下部には、液化した加熱媒体を排出するドレンライン排出部11を備えている。このように構成された伝熱処理装置1において、各伝熱管3はチタン製の管を用いている。各伝熱管3表面で蒸発した蒸気は蒸気排出部11より凝縮器(図示せず)に導かれ、凝縮器で凝縮された凝縮水は凝縮水導入部12より、チャンバ2内に導入される。
【0020】
次に、以上の構成を備えた固形物を含む有害物質含有廃液中の有害物質を処理する処理方法の作動について説明する。まず、洗浄廃液などのように固形物と有機物を含有する被処理液をチャンバ2内に貯留し、真空ポンプ(図示せず)を作動させ、チャンバ2内を減圧する。次に、循環ポンプ12を作動させ、加熱媒体導入部9に高温蒸気を供給する。次に、過酸化水素水導入部5より一定量の過酸化水素水を循環ライン4に供給する。過酸化水素水は定量ポンプ(図示せず)により、一定量、循環ライン4に供給される。
【0021】
加熱媒体導入部9に供給された高温蒸気は、一方の蒸気室8aから一群の伝熱管3を通過して他方の蒸気室8bで折り返し、一方の蒸気室8aに戻る。このようにして、全ての伝熱管3の表面を加熱し、循環ラインによりシャワリングされた被処理液と熱交換して凝縮し、加熱媒体排出部13から排出される。
【0022】
また、チャンバ2内に貯留された被処理液は、循環ポンプ14により汲み上げられて、過酸化水素水導入部5より導入された一定量の過酸化水素水と循環ライン内で混合されながらノズル7から最上部の伝熱管3にシャワリングされる。そして、伝熱管3の表面に沿って流下し、下方に位置する伝熱管表面に流下しながら伝熱管3の表面で熱交換し、蒸発する。このとき、シャワリングされる循環量は蒸発する量よりもはるかに多くすることにより、伝熱管3表面に付着しようとする固形物を液の流れとともにそぎ落としていく。
【0023】
被処理液は蒸発するため、徐々に濃縮していくが、蒸発した蒸発蒸気は蒸発蒸気出口部11より凝縮器(図示せず)に導入され、凝縮器(図示せず)により凝縮された凝縮水は再度、凝縮水導入部12よりチャンバ2内に導入されるため、濃縮しすぎるということを防ぐようにしており、かつ、蒸発蒸気内に混入した有害物質を再度、処理できるようにしている。
【0024】
被処理液に含まれている有害物質は伝熱管3表面にて加熱、蒸発する際に熱エネルギーを受け、混合されている過酸化水素水との相乗効果により、分解処理される。また、一回の循環では分解処理が不十分な場合は、繰り返し、上記の動作が行われ、分解処理が目的に達するまで行うようにすることができる。
【0025】
表1は有害物質としてメチレンブルー、含有する固形物はSS分として0.1重量%含まれる模擬液を作成して行った実験結果である。過酸化水素水の導入量は被処理液に対して200PPMである。表2は同じ模擬液に対して、注入する過酸化水素水の導入量を10PPMとした場合の実験結果である。
【0026】
表1より、過酸化水素投入後、50分の運転でメチレンブルー濃度は初期の5%程度となり、140分後では2%程度となっており、分解処理率はそれぞれ95%、98%となっている。このように非常に良好な結果が得られている。また、表2から、過酸化水素水の導入量が被処理液に対して10PPMの場合でも、経過時間は長時間必要であるが、有害物の分解は進んでいることがわかる。しかしながら、処理時間が長時間に及ぶことから実用上、過酸化水素水の被処理液に対する導入量は10PPM以上、必要であることがわかった。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明により、従来処理困難とされていたフェノール類を含有している有害廃液についても分解処理ができる。また、被処理液に固形物としてSS分が混ざっていても、前処理が不要で、分解処理ができるので、装置コストを大幅に減ずることができる。


【符号の説明】
【0030】
1 加熱器
2 チャンバ
3 伝熱管
4 循環ライン
5 過酸化水素水導入部
6 ノズル
7 ノズル
8a 蒸気室
8b 蒸気室
9 加熱媒体導入部
10 加熱媒体排出部
11 蒸気排出部
12 凝縮水導入部
13 加熱媒体排出部
14 循環ポンプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形物を含む有害物質含有廃液を表面において蒸発する伝熱管を複数備えた伝熱処理装置において、
前記伝熱管はチャンバ内に収容されており、前記チャンバの内部に貯留される液状の被処理流体を循環される循環ラインを備え、
前記循環ラインは、前記伝熱管の表面に液状の被処理流体を供給する供給部と、過酸化水素水を導入する導入部を備え、
前記過酸化水素水を注入した前記被処理流体を前記伝熱管表面に供給し、被処理流体を過酸化水素水とともに蒸発させることにより、固形物を含む有害物質含有廃液中の有害物質を処理することを特徴とする固形物を含む有害物質含有廃液処理方法。
【請求項2】
前記伝熱管表面で蒸発した蒸気を凝縮装置に導き、凝縮された凝縮水を、前記循環ラインの前記過酸化水素水導入部の手前に導入することを特徴とする請求項1記載の固形物を含む有害物質含有廃液処理方法。
【請求項3】
前記過酸化水素水の導入量は、被処理液に対して10PPMから200PPMであることを特徴とする請求項2記載の固形物を含む有害物質含有廃液処理方法。


【図1】
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