説明

有害齧歯類を退治するための殺鼠用化合物、これを含む組成物およびその使用

本発明の目的は、式(I)
【化1】


の殺鼠剤用化合物、およびその異性体で、特に、鏡像異性体、ジアステレオマー、互変異性体またはあらゆる比率の異性体混合物(式中、R1は、Hまたは(II)
【化2】


または(III)
【化3】


を表し、X=H、OH、Cl、Br、FまたはNOであり、R2は、(IV)
【化4】


または(V)
【化5】


または(VI)
【化6】


を表し、X=H、OH、CI、Br、FまたはNOであり、R3は、OまたはSまたは(VII)
【化7】


を表し、X=H、OH、Cl、Br、FまたはNOである)。本発明は、このような化合物を配合した組成物および有害齧歯類を退治するためのその使用にも焦点を当てている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺鼠剤、すなわち特定の齧歯類を殺生する特性を有する製品の分野に関する。
【0002】
本発明は、特に、殺鼠効果を有する新規分子、およびこの分子を配合した組成物に焦点を当てている。本発明は、有害齧歯類を退治するためのこの分子および組成物の使用にも係る。
【背景技術】
【0003】
ラットまたはネズミなどの特定の有害動物がもたらす被害は昔から知られており、その存在に関連するリスクは深刻である。
【0004】
特に、電気設備にもたらされる可能性のある物質的被害のほか、有害齧歯類は、とりわけ重大な衛生災害となる。直接または寄生虫を介して、有害齧歯類は、破傷風、ストレプトバチルス症、パスツレラ症、レプトスピラ症、サルモネラ症、出血熱、あるいはペストなど、人間および家畜に伝染する多くの病気の原因となっている。
【0005】
そのため、長年にわたり様々な駆除方式が開発されてきた。例えば機械的な罠、接着剤あるいは超音波に基づく物理的方式、およびとりわけ撃退剤、不妊剤または殺鼠剤などの化学的方式である。物理的方式の使用が発達しているとしても、とりわけ大量発生した場合の有効性という理由から、齧歯類の個体群制御は、大半が殺鼠剤を使用する退治方法を介して実施されるのが常である。
【0006】
殺鼠剤は、抗凝固系、抗痙攣系、心毒系または高カルシウム血症系など、極めて様々な化学系に属する。現在使用されている殺鼠剤の多くは抗凝固剤であり、特に、クマクロル、クマテトラリル、ジフェナコウムまたはブロジファクム、ジフェチアロンまたはブロマジオロンなどのヒドロキシ−4−クマリンまたはワルファリン由来の抗凝固剤、およびクロロファシノン、ジファシノンなどのインダンジオン−1,3由来の抗凝固剤である。
【0007】
抗凝固剤の代謝は、経口吸収が良好で実質的に肝臓に供給されることが特徴である。そのため、これらの製品は極めて有効である。これらの製品は、急性貧血による動物の死に至るまで数日間蓄積されることによって作用し、苦痛はなく、仲間が製品に警戒心を起こすこともない。
【0008】
しかしながら、現存する殺鼠用抗凝固剤は、残留性が高く、これを摂取した齧歯類の死体内に長期間残留する。したがって、これは対象を選別しない毒性製品であるため、齧歯類の捕食種、特に猛禽類および野生または飼育されている小哺乳類自体が、死体に蓄積されたこれらの抗凝固剤で中毒するおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そのため、標的ではない動物相を二次中毒から防護した上で、齧歯類を有効に退治することができる製品が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これに応えるため、本発明は、少なくとも既存の抗凝固剤と同等に有効だが、肝臓での蓄積期間が二次中毒を引き起こすほど長くはない、殺鼠作用を有する新規な化合物を提供する。
【0011】
特に、本発明は、式(I):
【0012】
【化1】

【0013】
を満たす化合物、およびその異性体で、特に、鏡像異性体、ジアステレオマー、互変異性体またはあらゆる比率の異性体混合物に焦点を当てており、
式中、
− R1は、Hまたは
【0014】
【化2】

【0015】
または
【0016】
【化3】

【0017】
を表し、
− R2は、
【0018】
【化4】

【0019】
または
【0020】
【化5】

【0021】
または
【0022】
【化6】

【0023】
を表し、
− R3は、OまたはSまたは
【0024】
【化7】

【0025】
を表し、
X=H、OH、Cl、Br、FまたはNOであり、
Xは、R1、R2またはR3で異なっていてもよいし、同じでもよい。
【0026】
本発明は、4−ヒドロキシ−クマリンから式(I)の化合物を生成する方法にも焦点を当てている。
【0027】
本発明のもう1つの目的は、式(I)を満たす少なくとも1つの化合物を含む殺鼠用組成物に関する。これらの組成物は、粉末形態、ブロック形態、ゲル形態、ペースト形態、含浸させた穀物形態、あるいは液体形態であることが好ましい。
【0028】
最後に、本発明は、齧歯類の個体群を制御するための式(I)の化合物、またはこの化合物を含有する組成物の使用にも焦点を当てている。
【0029】
有利には、本発明による分子は、すべての齧歯類に対する現実的な殺鼠効果と、肝臓へのごくわずかな残留性とを両立させる。この分子の使用により、二次中毒のリスクを大幅に軽減した上で、齧歯類を有効に退治することができる。
【0030】
その他の特徴および利点は、本発明に関する以下の詳細説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0031】
よって、第1の態様によれば、本発明は、下記式(I)を満たす化合物に関する:
【0032】
【化8】

【0033】
(式中、
−R1は、Hまたは
【0034】
【化9】

【0035】
または
【0036】
【化10】

【0037】
を表し、
X=H、OH、Cl、Br、FまたはNOであり、
−R2は、
【0038】
【化11】

【0039】
または
【0040】
【化12】

【0041】
または
【0042】
【化13】

【0043】
を表し、
X=H、OH、Cl、Br、FまたはNOであり、
R3は、OまたはSまたは
【0044】
【化14】

【0045】
を表し、
X=H、OH、Cl、Br、FまたはNOである)。
【0046】
本発明は、式(I)のこの化合物の異性体で、特に、鏡像異性体、ジアステレオマー、互変異性体またはあらゆる比率の異性体混合物に焦点を当てている。
【0047】
この式(I)を満たす化合物およびその異性体は、殺鼠作用を有する。
【0048】
R3は、酸素Oを表すことが好ましい。
【0049】
好適かつ特に適合した一変形例によれば、本発明は、式(I)を満たす特定の化合物に焦点を当てており、
式中、
− R1は、Hを表し、
− R3は、Oを表し、
− R2は、
【0050】
【化15】

【0051】
を表す。
【0052】
この特定の化合物は、次式(II)で表される:
【0053】
【化16】

【0054】
もう1つの変形例によれば、本発明による化合物は、式(I)
(式中、
− R1は、
【0055】
【化17】

【0056】
を表し、
− R2は、
【0057】
【化18】

【0058】
を表し、
− R3はOを表す)を満たす。
【0059】
この特定の化合物は、次式(III):
【0060】
【化19】

【0061】
で表される。
【0062】
本発明による化合物は、式(I)
(式中、
− R1は、
【0063】
【化20】

【0064】
を表し
− R2は、
【0065】
【化21】

【0066】
を表し、
− R3はOを表す)も満たすことができる。
【0067】
この特定の化合物は、次式(IV):
【0068】
【化22】

【0069】
で表される。
【0070】
もう1つの実施形態によれば、本発明による化合物は、式(I)
(式中、
− R1は、Hを表し、
− R3は、Oを表し、
− R2は、
【0071】
【化23】

【0072】
を表す)も満たすことができる。
【0073】
この特定の化合物は、次式(V):
【0074】
【化24】

【0075】
で表される。
【0076】
本発明による化合物は、分枝し、多少なりとも置換された可能性を持つ脂肪族側鎖を4−ヒドロキシクマリンにグラフトすることで得られる。
【0077】
よって、本発明による式(I)の化合物を得る方法は、以下のように表すことができる:
【0078】
【化25】

【0079】
(式中、
− R1は、Hまたは
【0080】
【化26】

【0081】
または
【0082】
【化27】

【0083】
を表し、
− R2は、
【0084】
【化28】

【0085】
または
【0086】
【化29】

【0087】
または
【0088】
【化30】

【0089】
を表し、
− R3は、OまたはSまたは
【0090】
【化31】

【0091】
を表し、
Xは、H、OH、Cl、Br、FまたはNOを表し、XはR1、R2またはR3で異なっていてもよいし、同じでもよい)。
【0092】
脂肪族鎖のグラフトは、適合したあらゆるグラフト方法によって実現できる。特に、臭素化誘導体を用いたマイケル付加反応によって実現できる。
【0093】
例として、式(II)の特定の化合物は、
− フィトールおよび臭化炭素から臭化フィチルを合成する工程、および
− エタノールのアルカリ媒体中で、4−ヒドロキシ−クマリンおよび臭化フィチルから3−フィチル−4−ヒドロキシ−クマリンを合成する工程
を実施することで得ることができる。
【0094】
フィトールおよび臭化炭素からの臭化フィチルの合成は、第一級アルコールのハロゲン化反応であり、この反応は、ジクロロメタン媒体中にトリフェニルホスフィンおよび四臭化炭素を2時間置いた状態で、室温で起こる。合成された臭化フィチルは、NaHCO溶液、HOおよび塩水で連続的に洗浄することによって精製する。得られた粗生成物を濃縮し、その状態で使用する。
【0095】
4−ヒドロキシ−クマリンおよび臭化フィチルからの3−フィチル−4−ヒドロキシ−クマリンの合成は、C−アルキル化反応であり、この反応は、3位にクマリン環を有する炭素に対するアルキルハロゲン化物の攻撃に相当する。この反応は、アルカリ媒体中で行い、3位の炭素がもたらす電荷を強力に分散するのに寄与するフェノラートイオンを第一段階で形成できるようにする。第二段階で、臭化フィチルは、エタノール媒体中で反応する。次に、反応媒体を、対象物を選択して抽出する液滴抽出を連続して行うことにより精製する。このように、式(II)の化合物から2つの異性体(シスおよびトランス)が得られる。
【0096】
本発明による式(I)の化合物、特に、式(II)、(III)、(IV)または(V)の特定の化合物およびその異性体は、低濃度であっても強い殺鼠効果を有する。
【0097】
これらの化合物は、有害齧歯類を退治するための組成物に配合することができる。
【0098】
よって、本発明は、少なくとも1つの式(I)の化合物を有効原料として含有する殺鼠用組成物も目的とする。
【0099】
好ましくは、本発明は、式(I)を満たす化合物を0.001〜50重量%、さらに好ましくは0.001〜20重量%含む殺鼠用組成物に焦点を当てている。
【0100】
本発明による組成物は、有害齧歯類の退治に適合したあらゆる形態を取ることができる。本組成物は、とりわけ、濃縮液形態、粉末形態、穀物形態、ゲル形態、ペースト形態、またはペレット形態もしくはブロック形態などの押出成形した餌の形態を取ることができる。
【0101】
式(I)の化合物のほか、本発明による組成物は、以下の複数の賦形剤を含む:殺鼠用化合物を含むマトリクスを構成する1つまたは複数の賦形剤、および技術的または生物学的役割を果たす1つまたは複数の賦形剤。
【0102】
マトリクスに使用する賦形剤は、とりわけ、鉱物油、デキストリンなどの糖質、粘土などの鉱物原料、グリコール、およびDMSO、水、穀物原材料(大麦、小麦、トウモロコシまたは米など)、パラフィンなどの結合剤など、その他の有機溶媒のなかから選択できる。
【0103】
よく用いられるその他の賦形剤は、例えば、砂糖または香料、保存料、あるいは子供や家畜が偶発的に消費するリスクを軽減するための苦味剤など、齧歯類の喫食性および誘引性を高める添加剤である。
【0104】
本発明による組成物は、式(I)の有効化合物を担体の材料に完全かつ均質に混合することにより製造できる。作製がこのように簡易であるのは、とりわけ所望する殺鼠効果を得るのに必要な有効化合物の量が少ないために可能なことである。
【0105】
有効原料と賦形剤との混合は、とりわけ対流、分散および/または剪断により適合されたあらゆる方法で実施できる。この混合は、この場合、混合物の冷却または加熱が可能な二重槽で実施できる。
【0106】
押出成形した餌の形態にするための、本発明に適合した組成物の一例は、以下の化合物を含む:
− 好ましくは組成物の40〜70重量%を占める、穀物原材料(小麦、大麦、トウモロコシ、米)、
− 好ましくは組成物の15〜40重量%を占める、パラフィンタイプまたは水の結合剤、
− 好ましくは組成物の0.001〜50重量%を占める、式(I)の化合物、
− 安息香酸デナトニウムタイプの苦味剤、
− 有機酸と、アスコルビン酸、プロピオン酸またはソルビン酸カリウムなど、この有機酸の塩とからなる群のうちの1つまたは複数の保存料、および
− 着色料であって、好ましくは緑PG7の着色料。
【0107】
連続的方法で押出成形される担体の製造は、
− 対流による混合機を用いて材料を混合する工程と、
− 直径30mm〜100mm、55°C〜95°Cの単軸押出成形機または二軸押出成形機を用いて押出成形する工程と、
− 成形工程と、
− 5〜100gの餌の塊を切断する工程と、
− 30分間の送風または2〜10時間の対流乾燥により冷却する温度処理によって安定化させる工程と、
− 調整工程と
を含む。
【0108】
式(I)の化合物および本発明による組成物は、有害齧歯類を退治するのに使用できる。
【0109】
式(I)の化合物を含む殺鼠用組成物は、齧歯類の攻撃から保護すべき領域に、予防措置または直接処理に適用できる。本組成物は、場合によっては、使用上の安全を守るために、齧歯類の退治に適合した餌箱内に挿入または固定してもよい。
【0110】
有利には、本発明による式(I)の化合物は、殺鼠効果が極めて高く、少なくとも既存の抗凝固剤による殺鼠剤と同等の効力があるとともに、肝臓への残留性が極めて低い。実際、本発明による化合物は、極めて限られた時間しか肝臓に蓄積されない。
【0111】
よって、本化合物の使用により、二次中毒の標的ではない動物相を防護した上で、齧歯類を有効に退治することができる。
【0112】
本化合物は、とりわけ家庭環境、農村環境、業務環境、都市環境、公共の飲食業または接客業の場所、あるいは農産物加工業において、ラット、ネズミ、ノネズミ、ドブネズミおよび/またはその他のあらゆる有害齧歯類を退治するために使用できる。
【0113】
使用する化合物の用量は、標的とする齧歯類によって異なる。対象とする齧歯類に応じて0.5mg〜100mgが好ましい。
【0114】
次に、本発明を、一例および請求項に記載した効果を示す試験結果を用いて説明する。
【実施例】
【0115】
特定の式(I)の化合物、(II)の化合物を得る方法の例
本方法は、次の2工程を実施することからなる:フィトールおよび四臭化炭素から臭化フィチルを合成する工程、およびエタノールのアルカリ媒体中で4−ヒドロキシ−クマリンおよび臭化フィチルから、式(II)、3−フィチル−4−ヒドロキシ−クマリンを合成する工程。
【0116】
a.臭化フィチルの合成
臭化フィチルは、以下の工程を実施することにより得ることができる:
− すり合わせ丸底フラスコに、フィトール(10mM)およびトリフェニルホスフィンを含有するジクロロメタンを注入する(フィトールを完全に消費するには20〜30%超が必要)。
【0117】
− 磁気攪拌する。
【0118】
− 1回で四臭化炭素を添加する。得られた溶液は透明で、やや明るい黄色になる。
【0119】
− 室温で2時間反応させる。
【0120】
次に、反応媒体の精製を液滴抽出によって行う:
− NaHCO飽和溶液を50ml添加する。
【0121】
− 水相を攪拌し、除去する。
【0122】
− 蒸留水で有機相を洗浄する。
【0123】
− 水相を攪拌し、除去する。
【0124】
− 有機相を窒素流下で乾燥蒸発させる。
【0125】
− ヘキサンまたはシクロ−ヘキサンを用いて乾燥残渣を取り出す。
【0126】
− ヘキサン相をワットマンフィルタで濾過する。
【0127】
− ヘキサンまたはシクロ−ヘキサンを用いて沈殿物を洗浄する。そして、
− ヘキサンまたはシクロ−ヘキサンを乾燥蒸発させる。
【0128】
オレンジ色の油状の残渣が得られる。
【0129】
b.3−フィチル−4−ヒドロキシ−クマリンの合成
3−フィチル−4−ヒドロキシ−クマリンは、以下の工程を実施することにより得られる:
− フラスコに、4−ヒドロキシクマリン(10mM)、1MのNaOHから得た4mMの溶液(4mM)、および10MのNaOHから得た10mMの溶液を注入して完全に可溶化し、やや明るい黄色の溶液を得る。
【0130】
− クマリンからフェノラートを形成できるように、70°Cで30分間磁気攪拌する。
【0131】
− 臭化フィチル(7.3mM)を添加した後、エタノールを添加する。
【0132】
− 70°Cで2時間磁気攪拌すると、反応媒体は徐々に濃い赤色に変色する。
【0133】
反応媒体の精製は、液滴抽出により行う(この操作では、すべての液相を高速液体クロマトグラフィーにかける)。
【0134】
− pH14の媒体が得られるまで、媒体に1Mのソーダを添加する。
【0135】
− トルエンで洗浄し、デカンテーションし、アルカリ相との油状の界面を回収する。
【0136】
− 1MのNaOH溶液でトルエン相を抽出し、これを除去する。
【0137】
− 赤色のアルカリ相を合わせ、酢酸エチルを用いて抽出する。
【0138】
− アルカリ水相を除去し、HCl溶液で酢酸エチル相を洗浄する。
【0139】
− 酸性の水相を除去し、蒸留水で酢酸エチル相を洗浄する。
【0140】
− 水相を除去し、無水硫酸ナトリウムで酢酸エチルを濾過する。
【0141】
− 酢酸エチルで硫酸ナトリウムを洗浄する。
【0142】
− 窒素流下で酢酸エチルを半乾燥蒸発させる。
【0143】
最終生成物は、オレンジがかった黄色い油状である。得られた分子は、式(II)を満たす。
【0144】
式(II)の生成物の有効性およびラットへの残留性に対する評価
本発明による化合物の殺鼠効果および残留性を、ブロマジオロンという対照殺鼠剤と比較してテストしたところ、ブロマジオロンは、齧歯類の退治に現在使用されている第2世代のあらゆる抗凝固剤のうち、最も残留性が低かった。
【0145】
この試験には、前述の方法を実施して得られた式(II)の化合物を使用した。
【0146】
操作プロトコルは以下の通りである。
【0147】
式(II)の化合物に対し5匹のラットを3組、ブロマジオロンに対し4匹のラットを2組使用した。
【0148】
式(II)の化合物の場合:
ラット1kg当たり10mgの用量を3回、0時間後、24時間後および48時間後に腹腔内に順次投与した。
【0149】
1組のラットを使用し、本発明による式(II)の化合物を3回投与したことにより起きた死亡率を調査した。
【0150】
1組のラットを使用し、初期注射後24時間から120時間までの凝固時間を調査した。実際、凝固時間は第1のパラメータであり、このパラメータは、抗凝固剤の作用を受けて変動し、無限になる傾向がある。
【0151】
1組のラットを使用し、72時間後、96時間後および120時間後に式(II)の化合物が肝臓に残留する残渣量を測定した。
【0152】
ブロマジオロンの場合:
2mg/kg/日の用量を4日間投与した。
【0153】
1組のラットを使用し、120時間後に起きた死亡率を算出した。
【0154】
120時間後の肝臓内のブロマジオロン残渣量を測定した。
【0155】
1組のラットを使用し、初回注射後24時間から120時間までの凝固時間を調査した。
【0156】
結果
得られた結果を以下に示す。
【0157】
【表1】

【0158】
これらの結果から、まず、対照殺鼠剤と同じく、本発明による化合物の注射により、処理したラットを100%死亡させられることがわかる。
【0159】
このほか、初回注射後120時間の凝固時間は、ブロマジオロンに対しては無限のままだが、本発明による化合物に対しては120秒に短縮されている。これはつまり、式(II)の化合物の代謝が迅速ということを示し、これはブロマジオロンには見られなかった現象である。
【0160】
さらに、本発明による化合物の残渣量は、初回注射後72時間から120時間までの間に急速に減少し、ラットの肝臓への残留性は低いことがわかる。比較すると、式(II)の化合物を30mg投与したのに対しブロマジオロンはわずか8mgであったが、初回注射後120時間のブロマジオロンで得られた結果から、11倍以上の残渣があることがわかる。
【0161】
よって、これらの結果は、本発明による化合物が齧歯類の体内での代謝が迅速であることを明らかにし、この標的に対する高い有効性を比較対照するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

を満たす化合物、およびその異性体で、特に、鏡像異性体、ジアステレオマー、互変異性体またはあらゆる比率の異性体混合物
(式中、
− R1は、Hまたは
【化2】

または
【化3】

を表し、
X=H、OH、Cl、Br、FまたはNOであり、
− R2は、
【化4】

または
【化5】

または
【化6】

を表し、
X=H、OH、Cl、Br、FまたはNOであり、
− R3は、OまたはSまたは
【化7】

を表し、
X=H、OH、Cl、Br、FまたはNOである)。
【請求項2】
次式(II):
【化8】

を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
次式(III):
【化9】

を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
次式(IV):
【化10】

を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
次式(V):
【化11】

を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の少なくとも1つの化合物を含むことを特徴する、殺鼠剤用組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の式を満たす化合物を0.001〜50重量%含むことを特徴とする、請求項6に記載の殺鼠剤用組成物。
【請求項8】
濃縮液形態、粉末形態、穀物形態、ゲル形態、ペースト形態、またはペレット形態もしくはブロック形態などの押出成形した餌の形態を取ることを特徴とする、請求項6または7に記載の殺鼠剤用組成物。
【請求項9】
有害齧歯類を退治するための、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の化合物または請求項6〜8のうちいずれか一項に記載の殺鼠剤用組成物の使用。
【請求項10】
家庭環境、農村環境、業務環境、都市環境、公共の飲食業または接客業の場所、あるいは農産物加工業において、ラット、ネズミ、ノネズミ、ドブネズミおよび/またはその他のあらゆる有害齧歯類を退治するための、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の化合物または請求項6〜8のうちいずれか一項に記載の殺鼠剤用組成物の使用

【公表番号】特表2013−519712(P2013−519712A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553374(P2012−553374)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【国際出願番号】PCT/FR2011/050326
【国際公開番号】WO2011/101591
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(512199128)
【Fターム(参考)】