説明

有機−無機ハイブリッド材料及びその製造方法、ハイブリッド材料用重合体、並びに電子写真感光体、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法

【課題】電子写真感光体に有用な耐摩耗性、機械強度に優れた電荷輸送機能を有する有機−無機ハイブリッド材料とそのための原料を提供する。これを用いて、耐傷性、耐摩耗性に優れ、かつ長期間に亘って高品質の画像形成が可能な電子写真感光体と、それを使用したプロセスカートリッジ、これを搭載した画像形成装置、及び画像形成方法の提供。
【解決手段】電荷輸送機能を有するポリカーボネート構成単位からなる重合体有機成分に金属アルコキシド基が結合したハイブリッド材料用重合体を合成し、この金属アルコキシド基を有するハイブリッド材料用重合体を加水分解及び重縮合して有機−無機ハイブリッド材料を得る。このハイブリッド材料を表面層に形成して電子写真感光体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種有機電子デバイス、特に電子写真感光体に有用な有機−無機ハイブリッド材料及び該有機−無機ハイブリッド材料の製造方法、ハイブリッド材料用重合体、並びに該有機−無機ハイブリッド材料を用いた電子写真感光体(以下、「感光体」、「静電潜像担持体」、「像担持体」と称することもある)、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、プラスチック系複合材料において、無機成分をナノスケールで有機高分子マトリックス中に分散させた有機−無機ハイブリッド材料が注目され、盛んに研究が行われている。このような有機−無機ハイブリッド材料においては、無機成分の優れた特長を引き出したり、相乗効果的な特性を発現させるべく検討が行われている。そして、電子写真感光体の分野においても、無機材料の特徴を生かした機能化有機−無機ハイブリッド材料が同様に注目されている。
また近年、無機感光体に代って有機感光体(OPC)が、良好な性能や様々な利点を有することから、複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ及びこれらの複合機に多く用いられている。このようにOPCが多用される理由としては、例えば、(1)光吸収波長域の広さ及び吸収量の大きさ等の光学特性、(2)高感度、安定な帯電特性等の電気的特性、(3)材料の選択範囲の広さ、(4)製造の容易さ、(5)低コスト、(6)無毒性、等の性能や利点が挙げられる。
【0003】
このような情勢の中で、画像形成装置の小型化に伴って感光体の小径化が進み、機械の高速化やメンテナンスフリーの要請も加わり、感光体の高耐久化が切望されるようになっている。
しかしながら、前記有機感光体は、表面層が低分子電荷輸送材料と不活性高分子を主成分として構成されているため、一般に柔らかく、電子写真プロセスにおいて繰り返し使用された場合、現像システムやクリーニングシステムによる機械的な負荷により摩耗が発生しやすいという欠点を有している。また、高画質化を達成するため、トナー粒子を小粒径化するのに伴って、クリーニング性を向上させる必要が生じている。その対策として、クリーニングブレードのゴム硬度を高めて当接圧力を上昇させることが避けられず、これによって感光体の摩耗が促進される要因となっている。このような感光体の摩耗は、感度の劣化、帯電性の低下などの電気的特性を劣化させて、画像濃度の低下、地肌汚れ等の異常画像の原因となる。更に、摩耗が局所的に発生した傷は、クリーニング不良によるスジ状汚れ画像をもたらす。そして、現状では感光体の寿命はこの摩耗や傷が律速となり、交換に至っている。
【0004】
上記のように、電子写真方式の画像形成方法においては、その主要部材である有機感光体の耐久性向上、即ち長寿命化の努力が続けられている。これまで有機感光体の寿命は、繰り返し使用による静電的な要因による劣化、感光体面に接触する紙、クリーニングブレード、分離爪などによって引き起こされる表面の傷、感光層の機械的強度に依存した摩耗により左右されてきた。近年、感光体材料の改良により静電的な耐久性は改善されてきているが、機械的強度については表面層のバインダーとして用いられているポリカーボネートを凌ぐ素材が見いだされておらず、未だ有効な技術手段はほとんど提案されていないのが現状である。
したがって、有機感光体の高耐久化においては前述の摩耗量を低減することが不可欠であり、これが当該分野においてもっとも解決が迫られている課題である。
【0005】
そこで、感光層の耐摩耗性を改良する技術としては、例えば、(a)表面層に硬化性バインダーを用いる方法(特許文献1参照)、(b)高分子型電荷輸送物質を用いる方法(特許文献2参照)、(c)表面層に無機フィラーを分散させる方法(特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、及び特許文献9参照)などが提案されている。
【0006】
しかし、前記(a)の硬化性バインダーを用いたものは、電荷輸送物質との相溶性が悪いこと、あるいは重合開始剤、未反応残基などの不純物によって残留電位が上昇し、画像濃度低下が発生し易い傾向がある。また、前記(b)の高分子型電荷輸送物質を用いたもの、及び前記(c)の無機フィラーを分散させたものは、ある程度の耐摩耗性向上が可能であるものの、有機感光体に求められる耐久性を十二分に満足させるまでには至っていない。また、前記(c)の無機フィラーを分散させたものは、無機フィラーとバインダーの間に直接的な結合を有していないので、無機フィラー表面に存在するトラップにより残留電位が上昇し、画像濃度低下が発生し易い傾向にあり、更に無機フィラーの光散乱が避けられないので、高画質の実現も困難である。したがって、上記(a)、(b)、及び(c)の技術では、有機感光体に求められる電気的な耐久性、機械的な耐久性をも含めた総合的な耐久性について十分満足できるものではない。
【0007】
また、有機感光体の耐久性を向上させるためのアプローチとして感光体の表面層にシリカ粒子を含有せしめて機械的強度を向上させる方法が提案されている(特許文献10、特許文献11、及び特許文献12参照)。また、前記シリカ粒子をシランカップリング剤等で処理してなる疎水性シリカ粒子を感光体の最表面層に含有せしめ、感光体の機械的強度を大きくすると共に、潤滑性を付与することによって高耐久性の感光体を得る方法が提案されている(特許文献13、特許文献14、及び特許文献15参照)。
しかしながら、これらの方法では、シリカ粒子とバインダーとの接着性を持たせるためにシリカ粒子の粒径を一定の大きさ以上に保つ必要があるため、必然的に粒径が大きくなる。粒径が大きくなると表面の粗さが増大し、例えば、クリーニングブレードのエッジ部の損傷によるクリーニング不良が発生し、十分な耐久性が得られなくなるという問題がある。
【0008】
また、耐摩耗性及び耐傷性を改良するため、ポリカーボネート樹脂の存在下で、アルコキシシランなどの加水分解乃至重縮合を行う方法が提案されている(特許文献16参照)。この提案の方法によれば、生成物中のシリカ成分のサイズを小さくすることはできるが、シリカ成分の含有率が少ないため、無機材料の特徴を十分に引き出すまでには至っていない。
【0009】
更に、末端シリル変性ポリカーボネートにより有機−無機ハイブリッド高分子材料を得る方法が提案されている(特許文献17参照)。また、主骨格としてポリカーボネート及び/又はポリアリレート部分を有し、官能基として金属アルコキシド基を有する重合体を、加水分解乃至重縮合することによって、有機−無機ハイブリッド材料を得る方法が提案されている(特許文献18参照)。
しかし、これらの有機−無機ハイブリッド高分子材料を有機感光体に使用する場合には、更に低分子電荷輸送材料を添加する必要があり、このため、有機−無機ハイブリッド材料の特性が損なわれ、有機−無機ハイブリッド材料としての相乗的な特性の発現が乏しいという欠点がある。
【0010】
また、支持体上に少なくとも感光層を有してなり、該感光層の最上層が高分子電荷輸送材料、無機フィラー及びアクリル変性ポリオルガノシロキサン微粒子を含有する電子写真感光体が提案されている(特許文献19、及び特許文献20参照)。これらの提案には、高分子電荷輸送材料として電荷輸送能を有するジオールから合成される芳香族ポリカーボネート樹脂を用いることが記載されている。
このように無機フィラーを分散させたものは、一定の耐摩耗性向上効果はあるが、無機フィラーとバインダーの間に直接的な結合を有していないので、上述したような理由により、画像品質の面において十分満足できる性能を有するものではないのが実情である。
【0011】
【特許文献1】特開昭56−48637号公報
【特許文献2】特開昭64−1728号公報
【特許文献3】特開平4−281461号公報
【特許文献4】特開昭61−132954号公報
【特許文献5】特開平2−240655号公報
【特許文献6】特開平7−261440号公報
【特許文献7】特開平5−306335号公報
【特許文献8】特開平6−32884号公報
【特許文献9】特開平6−282094号公報
【特許文献10】特開昭56−117245号公報
【特許文献11】特開昭63−91666号公報
【特許文献12】特開平1−205171号公報
【特許文献13】特開昭57−176057号公報
【特許文献14】特開昭61−117558号公報
【特許文献15】特開平3−155558号公報
【特許文献16】特開2000−105474号公報
【特許文献17】特開2002−241483号公報
【特許文献18】特開平11−209596号公報
【特許文献19】特許第3368415号公報
【特許文献20】特開2003−98710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、各種有機電子デバイス、特に、電子写真感光体に有用な耐摩耗性、機械強度に優れた電荷輸送機能を有する有機−無機ハイブリッド材料とそれを形成するためのハイブリッド材料用重合体と製造方法を提供すると共に、有機−無機ハイブリッド材料を用いることにより、耐傷性、耐摩耗性に優れ、かつ長期間に亘って高品質の画像形成が可能な電子写真感光体と、それを使用したプロセスカートリッジ、これを搭載した画像形成装置、及び画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、電荷輸送機能を有する構成単位を有する重合体有機成分に結合した金属アルコキシド基を有するハイブリッド用重合体を加水分解乃至重縮合することにより、電荷輸送機能を有する有機−無機ハイブリッド材料が得られ、上記課題が解決されることを知見した。
【0014】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 電荷輸送機能を有する重合体有機成分と、金属アルコキシド化合物とが互いに結合して一体化してなることを特徴とする有機−無機ハイブリッド材料である。
<2> 重合体有機成分が、下記構造式(I)で表される構成単位を含有する前記<1>に記載の有機−無機ハイブリッド材料である。
【化18】

ただし、前記構造式(I)中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかを表す。Arは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。Ar及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。
<3> 構造式(I)で表される構成単位が、下記構造式(II)で表される構成単位である前記<2>に記載の有機−無機ハイブリッド材料である。
【化19】

ただし、前記構造式(II)中、Ar、Ar、及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。R17及びR18は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルキル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかを表す。
<4> 構造式(I)で表される構成単位が、下記構造式(III)で表される構成単位である前記<2>に記載の有機−無機ハイブリッド材料である。
【化20】

ただし、前記構造式(III)中、R17及びR18は、上記と同じ意味を表す。
<5> 重合体有機成分が、下記構造式(IV)で表される構成単位を含有する前記<1>に記載の有機−無機ハイブリッド材料である。
【化21】

ただし、前記構造式(IV)中、Ar、Ar、Ar及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。Arは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。Zは、アリーレン基、及び−Ar10−Za−Ar10−(ただし、Ar10は、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。ZaはO、S、及びアルキレン基のいずれかを表す)のいずれかを表す。R及びR’は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を表す。nは、0又は1を表す。
<6> 構造式(IV)で表される構成単位が、下記構造式(V)で表される構成単位である前記<5>に記載の有機−無機ハイブリッド材料である。
【化22】

ただし、前記構造式(V)中、Ra、Rb、Rc及びRdは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Ar、Z、R、R’及びnは、上記と同じ意味を表す。
<7> 重合体有機成分が、更に、下記構造式(VI)で表される構成単位を含有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の有機−無機ハイブリッド材料である。
【化23】

ただし、前記構造式(VI)中、Xは、脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、芳香族の2価基、これらを連結してできる2価基、下記構造式(VI−1)、及び下記構造式(VI−2)のいずれかを表す。
【化24】

【化25】

ただし、前記構造式(VI−1)及び(VI−2)中、R、R、R、及びRは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。a及びbは、各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは、各々独立して0〜3の整数である。Yは、単結合、炭素数2〜12の直鎖状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、及び下記構造式(VI−3)〜(VI−11)から選ばれるいずれかを表す。
【化26】

ただし、前記構造式中、Z及びZは、それぞれ脂肪族の2価基、及びアリーレン基のいずれかを表す。
【化27】

【化28】

ただし、前記構造式中、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、及びアリール基のいずれかを表し、RとRは、結合して炭素数6〜12の炭素環又は複素環を形成してもよく、また、R及びRは、R及びRと共同で炭素環又は複素環を形成してもよい。R13及びR14は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、単結合及び炭素数1〜4のアルキレン基のいずれかを表す。R15及びR16は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、炭素数1〜5のアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。eは0〜4の整数、fは0〜20の整数、gは0〜2000の整数を表す。
<8> 構造式(I)、(II)、(III)、(IV)及び(V)のいずれかで表される構成単位の組成比をkとし、構造式(VI)で表される構成単位の組成比をjとすると、次式、0<k/(k+j)≦1を満たす前記<1>から<7>のいずれかに記載の有機−無機ハイブリッド材料である。
<9> 重合体有機成分の数平均分子量が、400〜40,000である前記<1>から<8>のいずれかに記載の有機−無機ハイブリッド材料である。
<10> 金属アルコキシド化合物が、下記構造式(VII)で表される前記<1>から<9>のいずれかに記載の有機−無機ハイブリッド材料である。
19M(R”X’) ・・・構造式(VII)
ただし、前記構造式(VII)中、R19は、炭素数1〜5のアルキル基を表す。Aは、炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。Mは、Si、Ti、及びZrのいずれかを表す。R”は、炭素数2〜4のアルキレン基、及びアルキリデン基のいずれかを表す。X’は、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸ハロゲン基及び酸無水物基から選択されるいずれかを表す。pは、0〜3の整数を表す。m及びnは、それぞれ1〜3の整数を表す。
<11> MがSiである前記<10>に記載の有機−無機ハイブリッド材料である。
<12> 下記構造式(I)で表される構成単位を有する重合体と、下記構造式(VII)で表される金属アルコキシド化合物とを反応させてなり、かつ該重合体中に金属アルコキシド基を有することを特徴とするハイブリッド材料用重合体である。
【化29】

ただし、前記構造式(I)中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかを表す。Arは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。Ar及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。
19M(R”X’) ・・・構造式(VII)
ただし、前記構造式(VII)中、R19は、炭素数1〜5のアルキル基を表す。Aは、炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。Mは、Si、Ti、及びZrのいずれかを表す。R”は、炭素数2〜4のアルキレン基、及びアルキリデン基のいずれかを表す。X’は、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸ハロゲン基及び酸無水物基から選択されるいずれかを表す。pは、0〜3の整数を表す。m及びnは、それぞれ1〜3の整数を表す。
<13> 下記構造式(VIII)で表される分子構造を有する前記<12>に記載のハイブリッド材料用重合体である。
【化30】

ただし、前記構造式(VIII)中、Ar、Ar、Ar、R、R”、M、A、R19、p及びmは、上記と同じ意味を表す。Eは、−NH−、又は−O−を表す。Lは、括弧内の繰り返し単位の繰り返し数を表す。
<14> 下記構造式(IX)で表される分子構造を有する前記<12>に記載のハイブリッド材料用重合体である。
【化31】

ただし、前記構造式(IX)中、Ar、Ar、Ar、R、R”、M、A、R19、p及びmは、上記と同じ意味を表す。Eは、−NH−、又は−O−を表す。Lは、括弧内の繰り返し単位の繰り返し数を表す。
<15> 下記構造式(IV)で表される構成単位を有する重合体と、下記構造式(VII)で表される金属アルコキシド化合物とを反応させてなり、かつ該重合体中に金属アルコキシド基を有することを特徴とするハイブリッド材料用重合体である。
【化32】

ただし、前記構造式(IV)中、Ar、Ar、Ar及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。Arは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。Zは、アリーレン基、及び−Ar10−Za−Ar10−(ただし、Ar10は、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。ZaはO、S、及びアルキレン基のいずれかを表す)のいずれかを表す。R及びR’は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を表す。nは、0又は1を表す。
19M(R”X’) ・・・構造式(VII)
ただし、前記構造式(VII)中、R19は、炭素数1〜5のアルキル基を表す。Aは、炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。Mは、Si、Ti、及びZrのいずれかを表す。R”は、炭素数2〜4のアルキレン基、及びアルキリデン基のいずれかを表す。X’は、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸ハロゲン基及び酸無水物基から選択されるいずれかを表す。pは、0〜3の整数を表す。m及びnは、1〜3の整数を表す。
<16> 下記構造式(X)で表される分子構造を有する前記<15>に記載のハイブリッド材料用重合体である。
【化33】


ただし、前記構造式(X)中、R19、A,M、R”、Ar、Ar、Ar,Ar、Ar、n、及びpは、上記と同じ意味を表す。Eは、−NH−、又は−O−を表す。Lは、括弧内の繰り返し単位の繰り返し数を表す。
<17> 下記構造式(XI)で表される分子構造を有する前記<15>に記載のハイブリッド材料用重合体である。
【化34】

ただし、前記構造式(XI)中、R19、A,M、R”、Ar、Ar、Ar,Ar、Ar、Z、X、n、及びpは、上記と同じ意味を表す。Eは、−NH−、又は−O−を表す。Lは、括弧内の繰り返し単位の繰り返し数を表す。
<18> Mが、Siである前記<12>から<17>のいずれかに記載のハイブリッド材料用重合体である。
<19> 前記<12>から<18>のいずれかに記載のハイブリッド材料用重合体における金属アルコキシド基を加水分解乃至重縮合することを特徴とする有機−無機ハイブリッド材料の製造方法である。
<20> 表面層が、前記<1>から<11>のいずれかに記載の有機−無機ハイブリッド材料を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
<21> 支持体と、該支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、及び表面層をこの順に有する積層構造である前記<20>に記載の電子写真感光体である。
<22> 支持体上に前記<12>から<18>のいずれかに記載のハイブリッド材料用重合体を含有する層を設けた後、該ハイブリッド材料用重合体を加水分解乃至重縮合させて有機−無機ハイブリッド材料を含有する表面層を形成する表面層形成工程を少なくとも含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法である。
<23> 前記<20>から<21>のいずれかに記載の電子写真感光体と、更に帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段から選択される少なくとも一つの手段とを有してなり、画像形成装置本体に着脱可能であることを特徴とするプロセスカートリッジである。
<24> 前記<20>から<21>のいずれかに記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有することを特徴とする画像形成装置である。
<25> 前記<20>から<21>のいずれかに記載の電子写真感光体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも含むことを特徴とする画像形成方法である。
【0015】
本発明の有機−無機ハイブリッド材料は、電荷輸送機能を有する重合体有機成分と、金属アルコキシド化合物とが互いに結合して一体化してなる。本発明の有機−無機ハイブリッド材料を用いることにより、従来の電子写真感光体の高耐久化を阻害する要因となっていた機械的耐久のレベルを、大幅に向上することができ、耐傷性、耐摩耗性に優れ、かつ、長期間の使用においても終始高濃度、高画質の画像が安定して得られる電子写真感光体が提供できる。
以上のような構成の本発明の電子写真感光体を用いることにより、長期間にわたり高画質化を実現できる画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、前記構成単位を有する重合体有機成分に結合した金属アルコキシド基を有するハイブリッド材料用重合体を加水分解及び重縮合することにより、有機−無機成分が有する特長が発揮され、耐摩耗性、機械強度、剛性、更に耐熱性、表面硬度、耐候性、耐薬品性、耐汚染性等の特性に優れた電荷輸送機能を有する有機−無機ハイブリッド材料、及び該有機−無機ハイブリッド材料の製造方法、ハイブリッド材料用重合体、並びに該有機−無機ハイブリッド材料を用いた電子写真感光体、該電子写真感光体を搭載し、長期間に亘って高品質の画像形成が可能となるプロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(有機−無機ハイブリッド材料)
本発明の有機−無機ハイブリッド材料は、電荷輸送機能を有する重合体有機成分と、金属アルコキシド化合物とが互いに結合して一体化してなる。
【0018】
−重合体有機成分−
前記重合体有機成分としては、下記構造式(I)及び下記構造式(IV)のいずれかで表される構成単位を含有することが好ましい。
【化35】

ただし、前記構造式(I)中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかを表す。Arは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。Ar及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。
【0019】
【化36】

ただし、前記構造式(IV)中、Ar、Ar、Ar及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。Arは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。Zは、アリーレン基、及び−Ar10−Za−Ar10−(ただし、Ar10は、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。ZaはO、S、及びアルキレン基のいずれかを表す)のいずれかを表す。R及びR’は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を表す。nは、0又は1を表す。
【0020】
<構造式(I)で表される構成単位>
【化37】

【0021】
前記構造式(I)で表されるRのアルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が好ましく、これらのアルキル基は、更に、フッ素原子、シアノ基、フェニル基又はハロゲン原子もしくは炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基で置換されたフェニル基を含有してもよい。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0022】
のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、フルオレニリデンフェニル基、5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテニリデンフェニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフラニル基、カルバゾリル基、ピリジニル基、ピロリジル基、オキサゾリル基等が挙げられる。これらは、上述したアルキル基、上述したアルキル基を有するアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、下記構造式で表されるアミノ基を置換基として有していてもよい。
【化38】

ただし、前記構造式中、R19及びR20は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、Rで定義されるアルキル基、Rで定義されるアリール基を表し、R19とR20が共同で環を形成したり、アリール基上の炭素原子と共同で環を形成してもよい。このような具体例としては、ピペリジノ基、モルホリノ基、ユロリジル基等が挙げられる。
【0023】
Arのアリール基としては、下記構造式(XII)で表される基、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、ジオキサゾール、インドール、イソインドール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソキサジン、カルバゾール、フェノキサジン等のアミン構造を有する複素環基から誘導される1価基が挙げられる。これらは、Rで定義されたアルキル基、アリール基、及びフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を置換基として有していてもよい。
【化39】

ただし、前記構造式(XII)中、R21及びR22は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アシル基、アルキル基、アリール基を表す。Ar11は、アリーレン基を表す。hは1〜3の整数を表す。
【0024】
前記構造式(XII)におけるR21及びR22のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
21及びR22のアルキル基は、Rで定義されたアルキル基と同様である。
21及びR22のアリール基は、Rで定義されたアリール基に加えて、下記構造式(XIII)で表される基などが挙げられる。
【化40】

ただし、前記構造式(XIII)中、Bは、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、及び下記構造式で表される2価基から選択されるいずれかを表す。R23は、水素原子、Rで定義されたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、Rで定義されたアリール基、アミノ基、ニトロ基、及びシアノ基のいずれかを表す。
【化41】

ただし、前記式中、R24は、水素原子、Rで定義されたアルキル基、及びRで定義されたアリール基のいずれかを表す。iは1〜12の整数、jは1〜3の整数を表す。
【0025】
前記構造式(XIII)におけるR23のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
23のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
23のアミノ基としては、Rのアリール基の置換基として定義されたアミノ基を表す。
【0026】
前記構造式(XII)におけるAr10のアリーレン基としては、Rで定義されたアリール基から誘導される2価基を挙げることができる。
【0027】
前記構造式(I)におけるAr及びArはアリーレン基を表し、Rで定義されたアリール基から誘導される2価基を挙げることができる。
以上、構造式(I)の構成単位について説明したが、同一の記号については他の構造式中でも同じ定義である。
【0028】
前記構造式(I)で表される構成単位としては、下記構造式(II)で表される構成単位、及び下記構造式(III)で表される構成単位のいずれかが好ましい。
【化42】

ただし、前記構造式(II)中、Ar、Ar、及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。R17及びR18は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルキル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかを表す。
【0029】
【化43】

ただし、前記構造式(III)中、R17及びR18は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルキル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかを表す。
【0030】
前記構造式(II)及び(III)におけるR17及びR18としては、前記構造式(XII)のR21及びR22と同様のものを用いることができる。
【0031】
<構造式(IV)で表される構成単位>
【化44】

【0032】
前記構造式(IV)におけるArは、アリール基を表し、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、フルオレニリデンフェニル基、5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテニリデンフェニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフラニル基、カルバゾリル基、ピリジニル基、ピロリジル基、オキサゾリル基等が挙げられる。これらはアルキル基又はこのアルキル基を有するアルコキシ基、及びフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、下記構造式で表されるアミノ基を置換基として有していてもよい。
【化45】

ただし、前記構造式中、R19及びR20は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、Rで定義されるアルキル基、Rで定義されるアリール基を表し、R19とR20が共同で環を形成したり、アリール基上の炭素原子と共同で環を形成してもよい。このような具体例としては、ピペリジノ基、モルホリノ基、ユロリジル基等が挙げられる。
前記アルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖又は分岐のアルキル基であり、これらのアルキル基は更にフッ素原子、シアノ基、フェニル基又はハロゲン原子もしくは炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基で置換されたフェニル基を含有していてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基等が挙げられる。
【0033】
前記構造式(IV)におけるAr、Ar、Ar、及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アリーレン基を表し、上記Arで示したアリール基から誘導される二価基である。
前記アリーレン基としては、例えば、フェニレン、ナフチレン、ビフェニリレン、ターフェニリレン、ピレン−1,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、9,9−ジメチルフルオレン−2,7−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、フラン−2,5−ジイル、N−エチルカルバゾール−3,6−ジイル等が挙げられこれらはアルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子を置換基として有してもよい。
【0034】
前記構造式(IV)におけるZは、アリーレン基、及び−Ar10−Za−Ar10−(ただし、Ar10は、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。ZaはO、S、及びアルキレン基のいずれかを表す)のいずれかを表す。
ZにおけるAr10としては、フェニレン、ナフチレン、ビフェニリレン、ターフェニリレン等が挙げられ、これらはアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を置換基として有してもよい。
【0035】
前記構造式(IV)におけるR及びR’は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を表す。
nは、0又は1を表す。
【0036】
前記構造式(IV)で表される構成単位としては、下記構造式(V)で表される構成単位が好ましい。
【化46】

ただし、前記構造式(V)中、Ra、Rb、Rc及びRdは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アルキル基を表す。Ar、Z、R、R’及びnは、上記定義と同一である。
【0037】
前記構造式(V)におけるRa、Rb、Rc及びRdは、炭素数1〜5の直鎖又は分岐のアルキル基であり、これらのアルキル基は更にフッ素原子、シアノ基、フェニル基又はハロゲン原子もしくは炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基で置換されたフェニル基を含有していてもよい。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基等が挙げられる。
【0038】
前記重合体有機成分は、上記構造式(I)及び上記構造式(IV)のいずれかで表される構成単位以外にも、更に、下記構造式(VI)で表される構成単位を含有することが好ましい。
【化47】

ただし、前記構造式(VI)中、Xは、脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、芳香族の2価基、これらを連結してできる2価基、下記構造式(VI−1)、及び下記構造式(VI−2)のいずれかを表す。
【化48】

【化49】

ただし、前記構造式(VI−1)及び(VI−2)中、R、R、R、及びRは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。a及びbは、各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは、各々独立して0〜3の整数である。Yは、単結合、炭素数2〜12の直鎖状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、及び下記構造式(VI−3)〜(VI−11)から選ばれるいずれかを表す。
【化50】

ただし、Z及びZは、脂肪族の2価基、又はアリーレン基を表す。
【化51】

【化52】

ただし、前記構造式中、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、及びアリール基のいずれかを表し、RとRは、結合して炭素数6〜12の炭素環又は複素環を形成してもよく、また、R及びRは、R及びRと共同で炭素環又は複素環を形成してもよい。R13及びR14は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、単結合及び炭素数1〜4のアルキレン基のいずれかを表す。R15及びR16は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、炭素数1〜5のアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。eは0〜4の整数、fは0〜20の整数、gは0〜2000の整数を表す。
【0039】
前記構造式(I)及び(IV)のいずれかで表される構成単位を有する重合体有機成分と金属酸化物からなる成分が互いに結合されて一体化した有機−無機ハイブリッド材料に係るものであり、このハイブリッド材料は、ハイブリッド材料用重合体の金属アルコキシド基、即ち、前記構造式(I)、又は(IV)で表される構成単位からなる重合体有機成分に結合した金属アルコキシド基を加水分解及び重縮合することにより得られる。
【0040】
前記ハイブリッド材料用重合体は、少なくとも電荷輸送機能を有するポリカーボネート構造を含む重合体有機成分と、この重合体有機成分中の官能基と反応性を有する官能基を持った金属アルコキシド化合物を反応させて結合させることによって得られる。
前記構造式(I)、(II)、(III)、(IV)、及び(V)のいずれかで表される構成単位(重合体有機成分)の組成比をkとし、前記構造式(VI)で表される構成単位(重合体有機成分)の組成比をjとすると、全組成比(k+j)に対するkの割合が、0<k/(k+j)≦1であることが好ましく、0.3<k/(k+j)≦1がより好ましい。前記k/(k+j)が0.3以下であると、電荷輸送成分の含有率が少なくなるので、得られたハイブリッド材料が充分な電気特性を満足できないことがある。
【0041】
また、前記重合体有機成分の数平均分子量は、400〜40,000が好ましく、1000〜10,000がより好ましい。前記数平均分子量が400未満であると、得られたハイブリッド材料は重合体の特性が欠如してしまうことがあり、40,000を超えると、重合体有機成分に結合した金属アルコキシド基が少なくなり、得られたハイブリッド材料は無機材料の特性を十分に引き出すことができないことがある。
【0042】
前記電荷輸送性構成単位を有する重合体有機成分は、分子内に少なくとも1個、好ましくは2個以上の官能基を有することが好ましい。このような官能基としては、金属アルコキシドの官能基と反応し得るものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、アルケニル基、アルキニル基、酸ハロゲン基、酸エステル基、ホルミル基、ハロゲン基、エポキシ基、イソシアネート基等が挙げられる。これらの中でも、水酸基、アミノ基、カルボキシル基のような活性水素を有する官能基が好ましく、水酸基が特に好ましい。
【0043】
前記電荷輸送機能を有するポリカーボネート構造を含む重合体有機成分は、従来から公知のビスフェノール類と炭酸誘導体との反応により得ることができる。例えば、ジオールとビスアリールカーボネートとのエステル交換法や、ホスゲン等のハロゲン化カルボニル化合物との溶液又は界面重合法、あるいはジオールから誘導されるビスクロロホルメート等のクロロホルメートを用いる方法等により製造することができる。
【0044】
前記ハロゲン化カルボニル化合物を用いる方法の場合、ハロゲン化カルボニル化合物として、ホスゲンの代りにホスゲンの2量体であるトリクロロメチルクロロホルメートやホスゲンの3量体であるビス(トリクロロメチル)カーボネートも有用であり、塩素以外のハロゲンから誘導されるハロゲン化カルボニル化合物、例えば、臭化カルボニル、ヨウ化カルボニルも有用である。これら公知の製造方法については、例えば、ポリカーボネート樹脂ハンドブック(編者;本間信一、発行;日刊工業新聞社)等に記載されている。
【0045】
上記公知方法により電荷輸送機能を有するポリカーボネート構造を含む重合体有機成分(以下、「ポリカーボネート樹脂」と略称することがある)を製造する場合、下記構造式(1)、(2)、及び(3)で表される電荷輸送能を有するジオールの1種以上、又は下記構造式(4)及び(5)で表される電荷輸送能を有するジオールの1種以上と、併用して下記構造式(6)で表されるジオールを使用し、機械的特性等の改良された共重合体とすることができる。
【0046】
【化53】

ただし、前記構造式(1)中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかを表す。Arは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。Ar及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。
【0047】
【化54】

ただし、前記構造式(2)中、Ar、Ar、及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アリーレン基を表す。R17及びR18は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アシル基、アルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。
【0048】
【化55】

ただし、前記構造式(3)中、R17及びR18は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アシル基、アルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。
【0049】
【化56】

ただし、前記構造式(4)中、Ar、Ar、Ar及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アリーレン基、Ar7はアリール基、Zはアリーレン基、又は−Ar10−Za−Ar10−(ただし、Ar10はアリーレン基、ZaはO、S又はアルキレン基を表す)を表す。R及びR’は直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を表す。nは0又は1を表す。
【化57】

ただし、前記構造式(5)中、Ra、Rb、Rc及びRdは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アルキル基を表す。Arはアリーレン基を表す。Z、R、R’及びnは、上記構造式(4)と同様である。
【0050】
【化58】

ただし、前記構造式(6)中、Xは、脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、芳香族の2価基、これらを連結してできる2価基、下記構造式(7)、及び下記構造式(8)のいずれかを表す。
【化59】

ただし、前記構造式(7)及び(8)中、R、R、R、及びRは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。a及びbは、各々独立して0〜4の整数である。c及びdは、各々独立して0〜3の整数である。Yは、単結合、炭素原子数2〜12の直鎖状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、及び下記式(3)〜(11)のいずれかを表す。
【0051】
【化60】

【0052】
ただし、前記式中、Z及びZは、脂肪族の2価基又はアリーレン基を表す。R、R、R、R、R10、R11、及びR12は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、及びアリール基のいずれかを表し、RとRは結合して炭素数6〜12の炭素環又は複素環を形成してもよく、また、RとRはR及びRと共同で炭素環又は複素環を形成してもよく、R13及びR14は、単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R15及びR16は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、炭素数1〜5のアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。eは0〜4の整数、fは0〜20の整数、gは0〜2000の整数を表す。
【0053】
前記構造式(6)におけるXが、脂肪族の二価基、環状脂肪族の二価基である場合のジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、キシリレンジオール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,4−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシブチル)ベンゼン、1,4−ビス(5−ヒドロキシペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(6−ヒドロキシヘキシル)ベンゼン、イソホロンジオール等が挙げられる。
また、Xが芳香族の二価基である場合としては、前記構造式(4)のArにおいて定義されたアリール基から誘導される二価基を挙げることができる。
【0054】
また、前記構造式(7)におけるYとして、一つ以上の炭素数1〜10のアルキレン基と一つ以上の酸素原子及び硫黄原子から構成される二価基の具体例としては、OCHCHO、OCHCHOCHCHO、OCHCHOCHCHOCHCHO、OCHCHCHO、OCHCHCHCHO、OCHCHCHCHCHCHO、OCHCHCHCHCHCHCHCHO、CHO、CHCHO、CHEtOCHEtO、CHCHO、SCHOCHS、CHOCH、OCHOCHO、SCHCHOCHOCHCHS、OCHCHCHOCHCHCHO、SCHS、SCHCHS、SCHCHCHS、SCHCHCHCHS、SCHCHCHCHCHCHS、SCHCHSCHCHS、SCHCHOCHCHOCHCHS等が挙げられる。
また、炭素原子数2〜12の分岐状のアルキレン基に修飾する置換基としてはアリール基、又はハロゲン原子が挙げられる。
これらの中で、アルキル基、アリール基はいずれも本明細書中で定義されたアルキル基、アリール基と同様である。また、Z及びZが脂肪族の二価基である場合としてはXが脂肪族の二価基、環状脂肪族の二価基である場合のジオールからヒドロキシ基を除いた二価基を挙げることができる。また、Z及びZがアリーレン基である場合としては本発明中で定義されたアリール基から誘導される二価基を挙げることができる。
【0055】
前記構造式(6)におけるXが、芳香族の二価基である場合の好ましいジオールの具体例としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジメチルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ぺンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルぺンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)へキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)へプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)へキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロぺンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ケトン、3,3,3’,3’−テトラメチル−6,6’−ジヒドロキシスピロ(ビス)インダン、3,3’,4,4’−テトラヒドロ−4,4,4’,4’−テトラメチル−2,2’−スピロビス(2H−1−べンゾピラン)−7,7’−ジオール、トランス−2,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブテン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)キサンテン、1,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,6−へキサンジオン、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−キシレン、2,6−ジヒドロキシジベンゾ−p−ジオキシン、2,6−ジヒドロキシチアントレン、2,7−ジヒドロキシフェノキサチイン、9,10−ジメチル−2,7−ジヒドロキシフェナジン、3,6−ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6−ジヒドロキシジベンゾチオフェン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,4−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシピレン、ハイドロキノン、レゾルシン、4−ヒドロキシフェニル−4−ヒドロキシベンゾエート、エチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、ジエチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、トリエチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、p−フェニレン−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、1,6−ビス(4−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−1H,1H,6H,6H−パーフルオロヘキサン、1,4−ビス(4−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−1H,1H,4H,4H−パーフルオロブタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラメチルジシロキサン、フェノール変性シリコーンオイル、などが挙げられる。
【0056】
以上構造式(1)及び(4)について説明したが同一の記号については他の構造式中でも同じ定義である。
【0057】
上記構造式(1)、(2)、及び(3)で表される電荷輸送能を有するジオールの1種以上と、又は上記構造式(4)、及び(5)で表される電荷輸送能を有するジオールの1種以上と、併用して上記記構造式(6)で表されるジオールとの割合は所望の特性により広い範囲から選択することができる。
【0058】
また、適当な重合操作を選択することによって、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、ランダム交互共重合体、ランダムブロック共重合体等の各種共重合体を得ることができる。
例えば、上記構造式(1)、(2)、及び(3)で表される電荷輸送能を有するジオールと、又は記構造式(4)及び(5)で表される電荷輸送能を有するジオールと、上記構造式(6)で表されるジオールとを、初めから均一に混合して、ホスゲンと縮合反応を行えば、上記構造式(1)、(2)、及び(3)で表される構成単位と、又は記構造式(4)及び(5)で表される構成単位と、上記構造式(6)で表される構成単位とからなるランダム共重合体が得られる。
更に、反応の途中で、幾種類かのジオールを加えることにより、ランダムブロック共重合体が得られる。
また、上記構造式(6)で表されるジオールから誘導されるビスクロロホルメートと、前記構造式(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)で表される電荷輸送能を有するジオールとの縮合反応を行えば、下記構造式(9)、(10)、(11)、(12)、又は(13)で表される繰り返し単位からなる交互共重合体が得られる。
【0059】
【化61】

ただし、前記構造式(9)中、R、Ar、Ar、Ar、及びXは、上記と同じ意味を表す。nは重合度を表し、2〜5,000の整数を示す。
【0060】
【化62】

ただし、前記構造式(10)中、Ar、Ar、Ar、R17、R18、及びXは、上記と同じ意味を表す。nは重合度を表し、2〜5,000の整数を示す。
【0061】
【化63】

ただし、前記構造式(11)中、R1718、及びXは、上記と同じ意味を表す。nは重合度を表し、2〜5,000の整数を示す。
【化64】

ただし、前記構造式(12)中、Ar、Ar、Ar、及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アリーレン基を表す。Arはアリール基を表す。Zはアリーレン基、又は−Ar10−Za−Ar10−(ただし、Ar10はアリーレン基を表す。ZaはO、S又はアルキレン基を表す)を表す。R及びR’は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、、直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を表す。nは0又は1を表す。n’は重合度を表し、2〜5,000の整数を示す。
【0062】
【化65】

ただし、前記構造式(13)中、Ra、Rb、Rc及びRdは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アルキル基を表す。Arはアリーレン基を表す。Z、R、R’及びnは、上記構造式(4)と同じ意味を表わす。n’は重合度を表し、2〜5,000の整数を示す。
【0063】
この場合、逆に上記構造式(1)、(2)、(3)、(4)、又は(5)で表される電荷輸送能を有するジオールから誘導されるビスクロロホルメートと、上記構造式(6)で表されるジオールとの縮合反応によっても同様に、上記構造式(9)、(10)、(11)、(12)、又は(13)で表される繰り返し単位からなる交互共重合体が得られる。
また、これらビスクロロホルメートとジオールとの縮合反応の際、ビスクロロホルメート及びジオールを複数使用することによりランダム交互共重合体が得られる。
【0064】
また、ハロゲン化カルボニル化合物や、クロロホルメートを用い、界面重合法を適用する場合には、ジオールのアルカリ水溶液と、水に対して実質的に不溶性で、かつポリカーボネート樹脂を溶解する溶液との2相間で炭酸誘導体及び触媒の存在下で反応が行われる。この際、高速撹拌や乳化物質の添加によって反応触媒を乳化させて行うことによって短時間で分子量分布の狭いポリカーボネート樹脂を得ることができる。
【0065】
上記アルカリ水溶液に用いる塩基としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化や炭酸塩が用いられ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩が使用できる。これらの塩基は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。好ましい塩基は、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。また、使用される水は蒸留水、イオン交換水が好ましい。
【0066】
前記ポリカーボネート樹脂を溶解する溶液として用いられる有機溶媒は、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素、又は、それらの混合物が挙げられる。更に、これら溶媒にトルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素を混合した有機溶媒でもよい。有機溶媒は、好ましくは、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族ハロゲン化炭化水素であり、より好ましくは、ジクロロメタン又はクロロベンゼンである。
【0067】
前記ポリカーボネート樹脂の製造時に使用されるポリカーボネート生成触媒としては、例えば、3級アミン、4級アンモニウム塩、3級ホスフィン、4級ホスホニウム塩、含窒素複素環化合物及びその塩、イミノエーテル及びその塩、アミド基を有する化合物がある。このようなポリカーボネート生成触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−テトラメチレンジアミン、4−ピロリジノピリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−エチルピペリジン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、フェニルトリエチルアンモニウムクロライド、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルブチルホスフィン、テトラ(ヒドロキシメチル)ホスホニウムクロライド、ベンジルトリエチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、4−メチルピリジン、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、3−メチルピリダジン、4,6−ジメチルピリミジン、1−シクロヘキシル−3,5−ジメチルピラゾール、2,3,5,6−テトラメチルピラジン等が挙げられる。
【0068】
前記ポリカーボネート生成触媒は、好ましくは、3級アミンであり、より好ましくは、総炭素数3〜30の3級アミンであり、特に好ましくは、トリエチルアミンである。これらのポリカーボネート生成触媒は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。これらの触媒は、ホスゲンやビスクロロホルメート体等の炭酸誘導体を反応系に加える前、及び/又は、加えた後に添加することができる。
【0069】
また、アルカリ水溶液中でのジオールの酸化を防ぐためにハイドロサルファイト等の酸化防止剤を加えてもよい。反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分間〜5時間であり、反応中のpHは通常10以上に保つことが好ましい。
【0070】
一方、溶液重合法を適用する場合には、ジオールを溶媒に溶解し、脱酸剤を添加し、これにビスクロロホルメート、又はホスゲンの多量体を添加することによりポリカーボネート樹脂が得られる。
この場合の脱酸剤としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンのような3級アミン、ピリジンが使用される。
また、反応に使用される溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素及びテトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル系の溶媒及びピリジンが好ましい。反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分間〜5時間である。
【0071】
また、エステル交換法によってもポリカーボネート樹脂が製造できる。この場合、不活性ガスの存在下にジオールとビスアリルカーボネートを混合し、通常、減圧下、120〜350℃で反応させる。段階的に減圧度を変化させ、最終的には1mmHg以下にして生成するフェノール類を系外に留去させる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
また、必要に応じて酸化防止剤を添加してもよい。ビスアリルカーボネートとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられる。
【0072】
上記各種方法によって得られる分子内に少なくとも1個、好ましくは2個以上の官能基を有するポリカーボネート樹脂からなる重合体有機成分と、重合体有機成分中の官能基と反応性を有する官能基を持った金属アルコキシドを反応させ結合させることによって、重合体有機成分に結合した金属アルコキシド基を有するハイブリッド材料用重合体が得られる。
【0073】
<金属アルコキシド化合物>
前記金属アルコキシドとしては、下記構造式(b)で示される化合物を挙げることができる。
AoM ・・・構造式(b)
ただし、前記構造式(b)中、Aoは、炭素数1〜8が好ましく、特に1〜4のアルコキシ基が好ましい。Mは、Si、Ti、Zr、Fe、Cu、Sn、B、Al、Ge、Ce、Taなどが挙げられ、Si、Ti、Zrが特に好ましい。
【0074】
前記構造式(b)で表される金属アルコキシド化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;テトラプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシスズ、テトライソプロポキシスズ、トリイソプロポキシアルミニウム等の金属アルコキシド類が挙げられる。
前記金属アルコキシド化合物は、1種類だけでもよく、2種類以上を併用してもよい。また、1分子内に2種類以上の金属元素が含まれているような金属アルコキシドや1分子内に2個以上の繰り返し単位を有するオリゴマータイプの金属アルコキシドを用いてもよい。
【0075】
また、前記金属アルコキシド化合物としては、下記構造式(VII)で表される化合物が好適である。
19M(R”X’) ・・・構造式(VII)
ただし、前記構造式(VII)中、R19は、炭素数1〜5のアルキル基を表す。Aは、炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。Mは、Si、Ti、及びZrのいずれかを表す。R”は、炭素数2〜4のアルキレン基及びアルキリデン基のいずれかを表す。X’は、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸ハロゲン基及び酸無水物基から選択されるいずれかを表す。pは、0〜3の整数を表す。m及びnは、1〜3の整数を表す。
【0076】
前記金属元素がSi、Ti及びZrからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。特に、金属元素がSiであることが好適である。即ち、このような金属を選択した場合に、前記本発明におけるハイブリッド材料用重合体の合成が容易であり、得られる重合体の化学的な安定性もある。又はイブリッド材料用重合体は、適当な反応性(温度、時間等)を有し、例えば、容易に重合体を加水分解、重縮合(ゾル−ゲル反応)させることによって有機−無機ハイブリッド材料が得られ、硬化した重合体の電気的、機械的、物理的等の特性を有機電子デバイス、特に電子写真感光体に有用なものとすることができる。また、金属アルコキシドの原料を下記例のように広く選択することができ、目的に応じて使い分けすることもできる。
【0077】
上記構造式(VII)で表される金属アルコキシドとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、モノイソシアネートトリアルコキシメタル類、モノイソシアネートジアルコキシメタル類、モノイソシアネートモノアルコキシメタル類、ジイソシアネートアルコキシメタル類、トリイソシアネートアルコキシメタル類、エポキシ基を官能基とする金属アルコキシド類、エポキシ基を官能基とするアルキルアルコキシシラン類、酸ハロゲン化物を官能基とする金属アルコキシド、あるいはアミノ基やメルカプト基を官能基とするアルコキシシラン類等が挙げられる。
【0078】
前記モノイソシアネートトリアルコキシメタル類としては、例えば、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、2−イソシアネートエチルトリエトキシシラン、2−イソシアネートエチルトリプロポキシジルコニウム、2−イソシアネートエチルトリブトキシスズなどが挙げられる。
【0079】
前記モノイソシアネートジアルコキシメタル類としては、例えば、3−イソシアネートプロピルエチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルエチルジイソプロポキシチタン、2−イソシアネートエチルエチルジプロポキシジルコニウム、2−イソシアネートエチルメチルジブトキシスズ、イソシアネートメチルジメトキシアルミニウム等が挙げられる。
【0080】
前記モノイソシアネートモノアルコキシメタル類としては、例えば、3−イソシアネートプロピルジエチルエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルジメチルイソプロポキシチタン、2−イソシアネートエチルジエチルプロポキシジルコニウム、2−イソシアネートエチルジメチルブトキシスズ、イソシアネートメチルメチルメトキシアルミニウム等が挙げられる。
【0081】
前記ジイソシアネートアルコキシメタル類としては、例えば、ジ(3−イソシアネートプロピル)ジエトキシシラン、ジ(3−イソシアネートプロピル)メチルイソプロポキシチタン等が挙げられる。
前記トリイソシアネートアルコキシメタル類としては、例えば、エトキシシラントリイソシアネート等が挙げられる。
【0082】
前記エポキシ基を官能基とする金属アルコキシドとしては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシチタン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロポキシチタン、γ−グリシドキシプロピルジメチルイソプロポキシチタン、3,4−エポキシブチルトリプロポキシジルコニウム、3,4−エポキシブチルメチルジプロポキシジルコニウム、3,4−エポキシブチルジメチルプロポキシジルコニウム、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシスズ等が挙げられる。
【0083】
前記アルコキシ基を官能基とするアルキルアルコキシシラン類としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリイソプロピルイソプロポキシシラン等が挙げられる。
【0084】
前記酸無水物化物を官能基とする金属アルコキシドとしては、例えば、3−(トリエトキシシリル)−2−メチルプロピルコハク酸無水物等が挙げられる。
前記酸ハロゲン化物を官能基とする金属アルコキシドとしては、例えば、2−(4−クロロスルフォニルフェニル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0085】
その他、アミノ基やメルカプト基を官能基とするアルコキシシラン類として、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0086】
前記電荷輸送機能を有する構成単位を含んだ本発明におけるハイブリッド材料用重合体は、分子内に少なくとも1個、好ましくは2個以上の官能基を有するポリカーボネート樹脂からなる重合体有機成分と、重合体有機成分中の官能基と反応性を有する官能基を持った金属アルコキシドを反応させて得られる。なお、反応に際しては、触媒を使用することもできる。重合体有機成分と金属アルコキシドとの反応の具体例を以下に説明する。
【0087】
水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基等の活性水素を有する官能基を持つポリカーボネート樹脂からなる重合体と、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基等の官能基を持った金属アルコキシドとを溶剤中で、好ましくは不活性ガス雰囲気下で反応させる。用いる溶剤は重合体と金属アルコキシドを共に良く溶解させるものであればよい。
【0088】
一般には、重合体溶液中へ金属アルコキシド溶液あるいは金属アルコキシドをそのまま徐々に添加した後、室温下あるいはゆるやかに加温しながら反応させる。重合体中の官能基に対する金属アルコキシド中の官能基量は1/10〜10/1当量比とすることが望ましい。
反応終了後は、反応液をそのまま用いて、以降に示す次ステップのゾル−ゲル反応へ移ってもよいし、反応液を濃縮するか、あるいは多量の貧溶媒へ投入して反応生成物を析出させ、洗浄、精製、乾燥等の処理を行った後、これを用いてゾル−ゲル反応を行ってもよい。
【0089】
本発明における重合体有機成分に結合した金属アルコキシド基を有するハイブリッド材料用重合体をゾル−ゲル反応によって加水分解、重縮合させる製造方法により、電荷輸送機能を有する有機−無機ハイブリッド材料が得られる。なお、この生成物は調製直後の反応液に溶解した状態、もしくは単離された状態のいずれでも構わない。
ゾル−ゲル法による加水分解、重縮合とは、分子内に金属アルコキシド基を有するハイブリッド材料用重合体を水と反応させることにより、アルコキシ基を水酸基に変換(ヒドロキシ金属基:例えば、−Si(OH))し、この水酸基を同時進行的に脱水反応あるいは隣接した分子と脱アルコール反応により重縮合させて無機的な共有結合、即ち、酸化金属結合を生じせしめ、三次元的に架橋させる反応を指す。
【0090】
加水分解反応に用いられる水の供給源としては、用いられるハイブリッド材料用重合体中の全てのアルコキシ基を水酸基に変換するために必要な量を別途に添加してもよいし、反応系中に含まれる水分を利用したり、大気中の水分を吸湿させて行ってもよい。
加水分解・重縮合の反応条件としては、室温〜100℃で0.5〜24時間程度が望ましい。また、その際、塩酸、硫酸、酢酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の酸性触媒や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリエチルアミン、ピペリジン等の塩基性触媒を用いてもよい。更に、縮合反応を進め、架橋をより強固なものとしたい場合には、その後50〜400℃で5分〜48時間程度、熱処理を行うことが好ましい。なお、得られた反応液はそのまま、後述する感光体の塗工液として使用することができる。
【0091】
上記のように、ハイブリッド材料用重合体を加水分解及び重縮合することにより得られる有機成分と、無機成分とが一体的に結合した有機−無機ハイブリッド材料は、三次元的に架橋させられると共に、有機と無機とが有する特徴がそれぞれ発現し、耐摩耗性、機械強度、剛性、表面硬度、耐熱性など優れた性質が発揮される。
【0092】
以上、本発明における電荷輸送機能を有する有機−無機ハイブリッド材料(以下、「電荷輸送性有機−無機ハイブリッド材料」と略称する)について説明してきたが、支持体上に形成された感光層の表面層が主としてこの有機−無機ハイブリッド材料を用いて構成された電子写真感光体の実施形態について以下に説明する。
【0093】
本発明の電子写真感光体の製造方法は、支持体上に本発明の前記ハイブリッド材料用重合体を含有する層を設けた後、該ハイブリッド材料用重合体を加水分解乃至重縮合させて有機−無機ハイブリッド材料を含有する表面層を形成する表面層形成工程を少なくとも含んでなり、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
前記表面層は、上述の重合体有機成分に結合した金属アルコキシド基を有するハイブリッド材料用重合体を含む塗工液を、支持体上に塗布し、金属アルコキシド基を加水分解及び重縮合し硬化させることによって形成される。なお、感光体の層構成と形成方法については後述する。
【0094】
前記塗工液は、必要に応じて溶媒により希釈して塗布される。この場合に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル等のエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系などが挙げられる。
【0095】
これらの溶媒は、単独又は2種以上を混合して用いてもよい。溶媒による希釈率は、組成物の溶解性、塗工法、目的とする厚みにより変化し、適宜選択される。塗布操作は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行うことができる。
【0096】
上記各種塗布操作により塗工液を塗布後、ゾル−ゲル法により架橋反応させて、電荷輸送性有機−無機ハイブリッド材料による表面層を形成するものであるが、条件としては、50〜250℃で5分〜24時間程度、加熱処理を行うのが好ましい。50℃未満では反応速度が遅く、完全に反応が終了しない。250℃より高温では反応が不均一に進行し、表面層中に大きな歪みが発生する傾向がある。硬化反応を均一に進めるために、100℃未満の比較的低温で加熱後、更に100℃以上に加温し反応を完結させる方法も有効である。例えば、アルミニウムシリンダー等の支持体上に、下引き層、電荷発生層、上記電荷輸送層を順次積層した感光体上に、上記調製した塗工液をスプレー等により塗布する。その後、比較的低温で短時間乾燥し(25〜80℃、1〜10分間)、更に100〜160℃、10〜60分間加熱して硬化させて、本発明の感光体を得ることができる。
なお、金属アルコキシド基が結合した電荷輸送機能を有する重合体を含む塗工液を塗布する前に、酸性触媒を少量加えることにより、室温〜100℃において0.5〜24時間程度の条件で加水分解反応を促進することができ、より架橋しやすくすることができる。
【0097】
前記ハイブリッド材料用重合体を加水分解及び重縮合することにより、耐摩耗性や耐傷性などの機械強度に優れ、更に耐熱性、表面硬度、耐候性、耐薬品性、耐汚染性等の良好な感光体表面層が形成される。本発明における感光体表面層の厚みは、後述するように感光体の層構造によって異なる。
【0098】
(電子写真感光体)
本発明の電子写真感光体は、表面層が、本発明の前記有機−無機ハイブリッド材料を含有してなり、更に必要に応じてその他の構成を有してなる。
【0099】
前記電子写真感光体は、支持体上に少なくとも感光層を有してなり、感光層全体が表面層であってもよく、また、感光層上に表面層を有していてもよい。
また、前記感光層が電荷発生機能を有する電荷発生層と、電荷輸送物機能を有する電荷輸送層とからなる場合には、電荷輸送層全体が表面層であってもよく、また、電荷輸送層上に表面層を有していてもよい。
【0100】
ここで、図1A及び図1Bは、本発明の単層構造の電子写真感光体の層構成の一例を示す概略断面図である。
図1A及び図1Bでは、支持体1上には、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する単層構造の感光層2が設けられている。3及び3’は電荷発生機能と電荷輸送機能を有する層である。
図1Aは、有機−無機ハイブリッド材料により形成される表面層4が感光層2全体の場合を示しており、図1Bは、有機−無機ハイブリッド材料により形成される表面層4が感光層2の表面部分である場合を示している。
【0101】
図2A及び図2Bは、本発明の積層構造の電子写真感光体の層構成の一例を示す概略断面図である。
図2A及び図2Bにおいて、支持体1上には、電荷発生機能を有する電荷発生層5と、電荷輸送物機能を有する電荷輸送層7あるいは7’とが積層された積層構造の感光層6が設けられている。
図2Aは、有機−無機ハイブリッド材料により形成される表面層が電荷輸送層7全体の場合を示しており、図2Bは、有機−無機ハイブリッド材料により形成される表面層8が電荷輸送層7’の表面部分である場合を示している。
【0102】
−支持体−
前記支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、あるいは酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を蒸着又はスパッタリングによりフィルム状もしくは円筒状のプラスチックや紙に被覆したもの、もしくはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、例えば、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも支持体として用いることができる。
【0103】
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の支持体として用いることができる。
使用される導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、あるいはアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、もしくは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。
また、同時に用いられる結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂、又は光硬化性樹脂が挙げられる。
上記導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより導電性層を設けることができる。
【0104】
更に、適当な円筒基体上に、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に予め前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブを用いて導電性層を設けてなるものも、本発明の支持体として良好に用いることができる。
【0105】
<感光層>
前記感光層は、積層構造でも単層構造でもよい。積層構造の場合には、前記図2A及び図2Bに示したように、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生層と電荷輸送機能を有する電荷輸送層とから構成される。また、前記図1A及び図1Bに示したように、単層構造の場合には、感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層から構成される。以下、積層構造の感光層及び単層構造の感光層についてそれぞれ説明する。
【0106】
〔感光層が積層構成の場合〕
−電荷発生層−
前記電荷発生層は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を併用することもできる。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
【0107】
前記無機系材料としては、結晶セレン、アモルファス−セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス−シリコン等が挙げられる。アモルファス−シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたもの、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
【0108】
前記有機系材料としては、特に制限はなく、公知の材料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系顔料、多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン系顔料、ナフトキノン系顔料、シアニン系顔料、アゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0109】
前記電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0110】
また、前記電荷発生層のバインダー樹脂として、上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、アリールアミン骨格、ベンジジン骨格、ヒドラゾン骨格、カルバゾール骨格、スチルベン骨格、ピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料、あるいはポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることができる。
【0111】
前記電荷輸送性高分子材料における前者の具体的な例としては、例えば、特開平01−001728号公報、特開平01−009964号公報、特開平01−013061号公報、特開平01−019049号公報、特開平01−241559号公報、特開平04−011627号公報、特開平04−175337号公報、特開平04−183719号公報、特開平04−225014号公報、特開平04−230767号公報、特開平04−320420号公報、特開平05−232727号公報、特開平05−310904号公報、特開平06−234836号公報、特開平06−234837号公報、特開平06−234838号公報、特開平06−234839号公報、特開平06−234840号公報、特開平06−234841号公報、特開平06−239049号公報、特開平06−236050号公報、特開平06−236051号公報、特開平06−295077号公報、特開平07−056374号公報、特開平08−176293号公報、特開平08−208820号公報、特開平08−211640号公報、特開平08−253568号公報、特開平08−269183号公報、特開平09−062019号公報、特開平09−043883号公報、特開平09−71642号公報、特開平09−87376号公報、特開平09−104746号公報、特開平09−110974号公報、特開平09−110976号公報、特開平09−157378号公報、特開平09−221544号公報、特開平09−227669号公報、特開平09−235367号公報、特開平09−241369号公報、特開平09−268226号公報、特開平09−272735号公報、特開平09−302084号公報、特開平09−302085号公報、特開平09−328539号公報等に記載の電荷輸送性高分子材料が挙げられる。
また、後者のポリシラン骨格を有する高分子材料の具体例としては、例えば、特開昭63−285552号公報、特開平05−19497号公報、特開平05−70595号公報、特開平10−73944号公報等に記載のポリシリレン重合体などが例示される。
【0112】
また、電荷発生層には低分子電荷輸送物質を含有させることができる。電荷発生層に併用できる低分子電荷輸送物質には、電子輸送物質と正孔輸送物質がある。
【0113】
−電子輸送物質−
前記電子輸送物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0114】
−正孔輸送物質−
正孔輸送物質としては、以下に表される電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。正孔輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、あるいは他の正孔輸送物質として公知の材料が挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0115】
前記電荷発生層を形成する方法としては、大別して、真空薄膜作製法と、溶液(例えば、分散系)を用いたキャスティング法とが挙げられる。
前記真空薄膜作製法としては、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、前記無機系材料、あるいは有機系材料が良好に形成できる。
また、キャスティング法の場合には、前記無機系もしくは有機系電荷発生物質を、必要に応じてバインダー樹脂と共に、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒に、ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等を用いて分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、電荷発生層を形成することができる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行うことができる。
前記電荷発生層の厚みは、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜2μmがより好ましい。
【0116】
−電荷輸送層−
前記電荷輸送層は、いわゆる電荷輸送機能を有する層であり、本発明の電荷輸送機能を有する構成単位からなる有機−無機ハイブリッド材料により形成された表面層は、電荷輸送層として有用に用いられる。
前記有機−無機ハイブリッド材料により形成される表面層が電荷輸送層全体の場合、電荷発生層上に、前述の本発明における重合体有機成分に結合した金属アルコキシド基を有するハイブリッド材料用重合体を含有する塗工液を塗布し、必要に応じて乾燥後、加熱によりゾル−ゲル反応(架橋反応)を行わせることによって有機−無機ハイブリッド材料の表面層が形成される。
前記表面層の厚みは、10〜30μmが好ましく、10〜25μmがより好ましい。前記厚みが10μm未満であると、充分な帯電電位が維持できないことがあり、30μmを超えると、硬化時の体積収縮により下層との剥離が生じやすくなることがある。
【0117】
また、有機−無機ハイブリッド材料により形成される表面層が電荷輸送層の表面部分で、電荷輸送層が積層構造である場合、電荷輸送層における積層構造の下層部分は電荷輸送機能を有する電荷輸送物質と結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより、まず、第一の電荷輸送層を形成し、この第一の電荷輸送層上に、本発明における重合体有機成分に結合した金属アルコキシド基を有するハイブリッド材料用重合体を含有する塗工液を塗布し、必要に応じて乾燥後、加熱によりゾル−ゲル反応(架橋反応)を行わせることによって有機−無機ハイブリッド材料からなる表面層(第二の電荷輸送層)が形成される。
【0118】
上記下層部分に用いられる電荷輸送物質としては、前記電荷発生層で記載した電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質を用いることができる。前述したように高分子電荷輸送物質を用いることによって、表面層塗工時の下層の溶解性を低減できるため、とりわけ有用である。
前記結着樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
前記電荷輸送物質の量は、結着樹脂100質量部に対し、20〜300質量部が好ましく、40〜150質量部がより好ましい。但し、高分子電荷輸送物質を用いる場合は、単独でも結着樹脂との併用も可能である。
【0119】
上記積層構造における電荷輸送層の下層部分の塗工に用いられる溶媒としては、前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。また、電荷輸送層の下層部分の形成には電荷発生層と同様な塗工法が可能である。また、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
【0120】
上記電荷輸送層の下層部分に併用できる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、前記可塑剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対し0〜30質量部が好ましい。
【0121】
また、前記電荷輸送層の下層部分に併用できるレベリング剤としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100質量部に対し0〜1質量部が好ましい。
前記電荷輸送層の下層部分の厚みは、5〜40μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
【0122】
なお、電荷輸送層における積層構造の下層部分(第一の電荷輸送層)上に形成される、本発明のハイブリッド材料用重合体から形成される表面層の厚みは、1〜20μmが好ましく、2〜10μmがより好ましい。前記厚みが1μm未満であると、厚みムラによって耐久性がバラツキ、20μmを超えると、電荷輸送層全体の厚みが厚くなり電荷の拡散から画像の再現性が低下する。
【0123】
<単層構造の感光層>
単層構造の感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層構成であり、本発明の電荷輸送機能を有する構成単位からなる有機−無機ハイブリッド材料は、単層構造の感光層として有用に用いられる。
前記電荷発生層のキャスティング形成方法において説明したように、電荷発生物質と、本発明の重合体有機成分に結合した金属アルコキシド基を有するハイブリッド材料用重合体を共に含む塗工液を調製し、この溶液を導電支持体上に塗布し、必要に応じて乾燥後、加熱させることにより有機−無機ハイブリッド材料を含む表面層が形成される。
なお、電荷発生物質は、予め溶媒と共に分散しておき、これをハイブリッド材料用重合体を含む表面層用塗工液に加えて調製してもよい。前記表面層の厚みは、10〜30μmが好ましく、10〜25μmがより好ましい。前記厚みが10μm未満であると、十分な帯電電位が維持できないことがあり、30μmを超えると、硬化時の体積収縮により導電性基体又は下引き層との剥離が生じやすくなることがある。
【0124】
また、本発明の有機−無機ハイブリッド材料により形成される表面層が単層構造の感光層の表面部分である場合、単層構造の感光層における下層部分は、電荷発生機能を有する電荷発生物質と電荷輸送機能を有する電荷輸送物質と結着樹脂を適当な溶媒に溶解、もしくは分散し、これを塗布、乾燥することによって形成することができる。また、必要により可塑剤やレベリング剤等を添加することもできる。ここで、電荷発生物質の分散方法、電荷発生物質、電荷輸送物質、可塑剤、レベリング剤等は、前記電荷発生層、電荷輸送層において既に説明したものと同様なものが使用できる。
前記結着樹脂としては、先に電荷輸送層の項で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。また、先に挙げた高分子電荷輸送物質も使用可能であり、表面層への下層感光層組成物の混入を低減できる点で有用である。前記感光層の下層部分の厚みは、5〜30μmが好ましく、10〜25μmがより好ましい。
【0125】
上記単層構造の感光層表面部分に本発明の有機−無機ハイブリッド材料を形成するには、前記同様に本発明の重合体有機成分に結合した金属アルコキシド基を有するハイブリッド材料用重合体を含有する塗工液を塗布し、必要に応じて乾燥後、加熱により硬化(架橋)すればよい。
前記表面層の厚みは、1〜20μmが好ましく、2〜10μmがより好ましい。前記厚みが1μm未満であると、厚みムラによって耐久性のバラツキが生じることがある。
また、単層構造の感光層中に含有される電荷発生物質は、感光層全量に対し1〜30質量%が好ましく、感光層の下層部分に含有される結着樹脂は、全量の20〜80質量%が好ましく、電荷輸送物質は10〜70質量部が好ましい。
【0126】
本発明における電子写真感光体において、有機−無機ハイブリッド材料から構成される表面層が感光層の表面部分となる場合、表面層への下層成分混入を抑制する目的、あるいは下層との接着性を改善する目的で中間層を設けることができる。この中間層により、例えば、下部感光層の組成物が最表面層中に混入して硬化反応を阻害するのを防止したり、あるいは表面層に凹凸が発生したりするのを防止することができる。あるいは、下層の感光層と表面層の接着性を向上させることも可能である。
【0127】
前記中間層には、一般にバインダー樹脂を主成分として用いる。これら樹脂としては、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。中間層の形成法としては、前述のような一般に用いられる塗工法が採用される。なお、前記中間層の厚みは0.05〜2μm程度が適当である。
【0128】
また、本発明における電子写真感光体において、支持体と感光層との間に下引き層を設けることができる。一般的に下引き層は樹脂を主成分として構成される。このことから、下引き層上に感光層が溶剤を用いて塗布形成されることを考慮すると、下引き層に用いる樹脂は、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。
【0129】
このような樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。
また、前記下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等のために、例えば、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
【0130】
前記下引き層は、前述の感光層のように、適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に、前記下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。前記下引き層としては、Alを陽極酸化によって設けたもの、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物や、SiO、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作成法により設けたもの等も良好に使用できる。その他、下引き層用として公知の材料を用いることができる。
前記下引き層の厚みは、0〜5μmが好ましい。
【0131】
また、本発明の電子写真感光体においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、表面層、感光層、電荷発生層、電荷輸送層、中間層、下引き層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。
【0132】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、などが挙げられる。
前記フェノール系化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類などが挙げられる。
前記パラフェニレンジアミン類としては、例えば、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
前記ハイドロキノン類としては、例えば、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなどが挙げられる。
前記有機硫黄化合物類としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなどが挙げられる。
前記有機燐化合物類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなどが挙げられる。
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
前記酸化防止剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、添加する層の総質量に対して0.01〜10質量%が好ましい。
【0133】
(画像形成方法及び画像形成装置)
本発明の画像形成装置は、電子写真感光体と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。
本発明の画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程と、転写工程と、定着工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程、制御工程等を含む。
本発明の画像形成方法は、本発明の画像形成装置により好適に実施することができ、前記静電潜像形成工程は前記静電潜像形成手段により行うことができ、前記現像工程は前記現像手段により行うことができ、前記転写工程は前記転写手段により行うことができ、前記定着工程は前記定着手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
【0134】
−静電潜像形成工程及び静電潜像形成手段−
前記静電潜像形成工程は、電子写真感光体上に静電潜像を形成する工程である。
前記電子写真感光体(感光体)としては、その材質、形状、構造、大きさ、等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、その形状としてはドラム状が好適に挙げられ、その材質としては、例えばアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体、などが挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点でアモルファスシリコン等が好ましい。
前記静電潜像の形成は、例えば、前記電子写真感光体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、前記静電潜像形成手段により行うことができる。前記静電潜像形成手段は、例えば、前記電子写真感光体の表面を一様に帯電させる帯電器と、前記電子写真感光体の表面を像様に露光する露光器とを少なくとも備える。
前記帯電は、例えば、前記帯電器を用いて前記電子写真感光体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
前記帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器、などが挙げられる。
前記露光は、例えば、前記露光器を用いて前記電子写真感光体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
前記露光器としては、前記帯電器により帯電された前記電子写真感光体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、などの各種露光器が挙げられる。
なお、本発明においては、前記電子写真感光体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0135】
−現像工程及び現像手段−
前記現像工程は、前記静電潜像を、本発明の前記現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程である。
前記可視像の形成は、例えば、前記静電潜像を本発明の前記現像剤を用いて現像することにより行うことができ、前記現像手段により行うことができる。
前記現像手段は、例えば、本発明の前記現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、本発明の前記現像剤を収容し、前記静電潜像に該現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられ、本発明の前記現像剤入り容器を備えた現像器などがより好ましい。
前記現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、前記現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、などが好適に挙げられる。
前記現像器内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記電子写真感光体(感光体)近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該電子写真感光体(感光体)の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該電子写真感光体(感光体)の表面に該トナーによる可視像が形成される。
【0136】
−転写工程及び転写手段−
前記転写工程は、前記可視像を記録媒体に転写する工程であるが、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましく、前記トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。
前記転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記電子写真感光体(感光体)を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。前記転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
なお、前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記電子写真感光体(感光体)上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
前記転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。
なお、記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0137】
前記定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着装置を用いて定着させる工程であり、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
前記定着装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。前記加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組み合わせ、などが挙げられる。
前記加熱加圧手段における加熱は、通常、80〜200℃が好ましい。
なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着工程及び定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0138】
前記除電工程は、前記電子写真感光体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。
前記除電手段としては、特に制限はなく、前記電子写真感光体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0139】
前記クリーニング工程は、前記電子写真感光体上に残留する前記トナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、前記電子写真感光体上に残留する前記電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
【0140】
前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程により除去した前記現像剤を前記現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。
前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
前記制御工程は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
【0141】
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0142】
ここで、本発明の画像形成装置により本発明の画像形成方法を実施する一の態様について、図3を参照しながら説明する。
図3は、本発明における画像形成装置の構成例を示す概略模式図である。
図3において、感光体231を平均的に帯電させる手段として、帯電チャージャ233が用いられる。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラー帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。
次に、均一に帯電された感光体231上に静電潜像を形成するために画像露光部235が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光体全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0143】
感光体231上に形成された静電潜像を可視化するため、現像ユニット236が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行うと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
【0144】
次に、感光体231上で可視化されたトナー像を転写体239上に転写するため、転写チャージャ210が用いられる。また、転写をより良好に行うために転写前チャージャ237を用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ、バイアスローラーを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
【0145】
転写体239を感光体231から分離する手段として、分離チャージャ211、分離爪212が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ211としては、前記帯電手段が利用可能である。
【0146】
次いで、転写後、感光体231上に残されたトナーをクリーニングするため、ファーブラシ214、クリーニングブレード215が用いられる。また、クリーニングをより効率的に行うためにクリーニング前チャージャ213を用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。
【0147】
次に、必要に応じて感光体231上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ232、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。
その他、感光体231に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。
【0148】
また、本発明の画像形成装置により本発明の画像形成方法を実施する一の態様について、図5を参照しながら説明する。図5に示す画像形成装置100は、前記静電潜像担持体としての感光体ドラム10(以下、「感光体10」という)と、前記帯電手段としての帯電ローラ20と、前記露光手段としての露光装置30と、前記現像手段としての現像装置40と、中間転写体50と、クリーニングブレードを有する前記クリーニング手段としてのクリーニング装置60と、前記除電手段としての除電ランプ70とを備える。
【0149】
中間転写体50は、無端ベルトであり、その内側に配置されこれを張架する3個のローラ51によって、矢印方向に移動可能に設計されている。3個のローラ51の一部は、中間転写体50へ所定の転写バイアス(一次転写バイアス)を印加可能な転写バイアスローラとしても機能する。中間転写体50には、その近傍にクリーニングブレードを有するクリーニング装置90が配置されており、また、最終転写材としての転写紙95に現像像(トナー像)を転写(二次転写)するための転写バイアスを印加可能な前記転写手段としての転写ローラ80が対向して配置されている。中間転写体50の周囲には、中間転写体50上のトナー像に電荷を付与するためのコロナ帯電器58が、該中間転写体50の回転方向において、感光体10と中間転写体50との接触部と、中間転写体50と転写紙95との接触部との間に配置されている。
現像装置40は、前記現像剤担持体としての現像ベルト41と、現像ベルト41の周囲に併設したブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M及びシアン現像ユニット45Cとから構成されている。なお、ブラック現像ユニット45Kは、現像剤収容部42Kと現像剤供給ローラ43Kと現像ローラ44Kとを備えており、イエロー現像ユニット45Yは、現像剤収容部42Yと現像剤供給ローラ43Yと現像ローラ44Yとを備えており、マゼンタ現像ユニット45Mは、現像剤収容部42Mと現像剤供給ローラ43Mと現像ローラ44Mとを備えており、シアン現像ユニット45Cは、現像剤収容部42Cと現像剤供給ローラ43Cと現像ローラ44Cとを備えている。また、現像ベルト41は、無端ベルトであり、複数のベルトローラに回転可能に張架され、一部が感光体10と接触している。
【0150】
図5に示す画像形成装置100において、例えば、帯電ローラ20が感光体ドラム10を一様に帯電させる。露光装置30が感光ドラム10上に像様に露光を行い、静電潜像を形成する。感光ドラム10上に形成された静電潜像を、現像装置40からトナーを供給して現像して可視像(トナー像)を形成する。該可視像(トナー像)が、ローラ51から印加された電圧により中間転写体50上に転写(一次転写)され、更に転写紙95上に転写(二次転写)される。その結果、転写紙95上には転写像が形成される。なお、感光体10上の残存トナーは、クリーニング装置60により除去され、感光体10における帯電は除電ランプ70により一旦、除去される。
【0151】
本発明の画像形成装置により本発明の画像形成方法を実施する他の態様について、図6を参照しながら説明する。図6に示す画像形成装置100は、図5に示す画像形成装置100において、現像ベルト41を備えてなく、感光体10の周囲に、ブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M及びシアン現像ユニット45Cが直接対向して配置されていること以外は、図5に示す画像形成装置100と同様の構成を有し、同様の作用効果を示す。なお、図6においては、図5におけるものと同じものは同符号で示した。
【0152】
本発明の画像形成装置により本発明の画像形成方法を実施する他の態様について、図7を参照しながら説明する。図7に示すタンデム画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置である。前記タンデム画像形成装置は、複写装置本体150と、給紙テーブル200と、スキャナ300と、原稿自動搬送装置(ADF)400とを備えている。
【0153】
複写装置本体150には、無端ベルト状の中間転写体50が中央部に設けられている。そして、中間転写体50は、支持ローラ14、15及び16に張架され、図7中、時計回りに回転可能とされている。支持ローラ15の近傍には、中間転写体50上の残留トナーを除去するための中間転写体クリーニング装置17が配置されている。支持ローラ14と支持ローラ15とにより張架された中間転写体50には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成手段18が対向して並置されたタンデム型現像器120が配置されている。タンデム型現像器120の近傍には、露光装置21が配置されている。中間転写体50における、タンデム型現像器120が配置された側とは反対側には、二次転写装置22が配置されている。二次転写装置22においては、無端ベルトである二次転写ベルト24が一対のローラ23に張架されており、二次転写ベルト24上を搬送される転写紙と中間転写体50とは互いに接触可能である。二次転写装置22の近傍には定着装置25が配置されている。定着装置25は、無端ベルトである定着ベルト26と、これに押圧されて配置された加圧ローラ27とを備えている。
なお、前記タンデム画像形成装置においては、二次転写装置22及び定着装置25の近傍に、転写紙の両面に画像形成を行うために該転写紙を反転させるためのシート反転装置28が配置されている。
【0154】
次に、前記タンデム画像形成装置を用いたフルカラー画像の形成(カラーコピー)について説明する。即ち、先ず、原稿自動搬送装置(ADF)400の原稿台130上に原稿をセットするか、あるいは原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。
スタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットした時は、原稿が搬送されてコンタクトガラス32上へと移動された後で、一方、コンタクトガラス32上に原稿をセットした時は直ちに、スキャナ300が駆動し、第1走行体33及び第2走行体34が走行する。このとき、第1走行体33により、光源からの光が照射されると共に原稿面からの反射光を第2走行体34におけるミラーで反射し、結像レンズ35を通して読取りセンサ36で受光されてカラー原稿(カラー画像)が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの画像情報とされる。
【0155】
そして、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各画像情報は、前記タンデム画像形成装置における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段及びシアン用画像形成手段)にそれぞれ伝達され、各画像形成手段において、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各トナー画像が形成される。即ち、前記タンデム画像形成装置における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段及びシアン用画像形成手段)は、図8に示すように、それぞれ、感光体10(ブラック用感光体10K、イエロー用感光体10Y、マゼンタ用感光体10M及びシアン用感光体10C)と、該感光体を一様に帯電させる帯電器60と、各カラー画像情報に基づいて各カラー画像対応画像様に前記感光体を露光(図8中、L)し、該感光体上に各カラー画像に対応する静電潜像を形成する露光器と、該静電潜像を各カラートナー(ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナー及びシアントナー)を用いて現像して各カラートナーによるトナー像を形成する現像器61と、該トナー像を中間転写体50上に転写させるための転写帯電器62と、感光体クリーニング装置63と、除電器64とを備えており、それぞれのカラーの画像情報に基づいて各単色の画像(ブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像及びシアン画像)を形成可能である。こうして形成された該ブラック画像、該イエロー画像、該マゼンタ画像及び該シアン画像は、支持ローラ14、15及び16により回転移動される中間転写体50上にそれぞれ、ブラック用感光体10K上に形成されたブラック画像、イエロー用感光体10Y上に形成されたイエロー画像、マゼンタ用感光体10M上に形成されたマゼンタ画像及びシアン用感光体10C上に形成されたシアン画像が、順次転写(一次転写)される。そして、中間転写体50上に前記ブラック画像、前記イエロー画像、マゼンタ画像及びシアン画像が重ね合わされて合成カラー画像(カラー転写像)が形成される。
【0156】
一方、給紙テーブル200においては、給紙ローラ142の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク143に多段に備える給紙カセット144の1つからシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ145で1枚ずつ分離して給紙路146に送出し、搬送ローラ147で搬送して複写機本体150内の給紙路148に導き、レジストローラ49に突き当てて止める。あるいは、給紙ローラ142を回転して手差しトレイ54上のシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ52で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。なお、レジストローラ49は、一般には接地されて使用されるが、シートの紙粉除去のためにバイアスが印加された状態で使用されてもよい。そして、中間転写体50上に合成された合成カラー画像(カラー転写像)にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させ、中間転写体50と二次転写装置22との間にシート(記録紙)を送出させ、二次転写装置22により該合成カラー画像(カラー転写像)を該シート(記録紙)上に転写(二次転写)することにより、該シート(記録紙)上にカラー画像が転写され形成される。なお、画像転写後の中間転写体50上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置17によりクリーニングされる。
【0157】
カラー画像が転写され形成された前記シート(記録紙)は、二次転写装置22により搬送されて、定着装置25へと送出され、定着装置25において、熱と圧力とにより前記合成カラー画像(カラー転写像)が該シート(記録紙)上に定着される。その後、該シート(記録紙)は、切換爪55で切り換えて排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされ、あるいは、切換爪55で切り換えてシート反転装置28により反転されて再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。
【0158】
本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置及び画像形成方法によって、長期間に亘って高品質の画像形成が可能となる。また、装置の小型化も可能である。
【0159】
(プロセスカートリッジ)
また、本発明における上記画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。図4は、本発明における画像形成装置に着脱可能とされたプロセスカートリッジの構成例を示す概略模式図である。
前記プロセスカートリッジは、感光体101を内蔵し、他に、帯電手段102、現像手段104、転写手段108、クリーニング手段107、除電手段(図示せず)から選ばれた少なくとも一つの手段を含んで一体に支持され、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。
【0160】
図4に例示した装置及び画像形成プロセスについて説明する。
図4において、感光体101は、矢印方向に回転しながら、帯電手段102による帯電、露光手段103による露光により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成され、この静電潜像は、現像手段104でトナー現像され、該トナー現像は転写手段108により、転写体105に転写され、プリントアウトされる。像転写後の感光体表面は、クリーニング手段107によりクリーニングされ、更に除電手段(図示せず)により除電されて、再び同じ操作を繰り返す。
【0161】
本発明の前記電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段から選択される少なくとも一つの手段を含んで一体に支持され、画像形成装置本体に着脱可能としたプロセスカートリッジとすることにより、画像形成装置をコンパクトに構成することができるほか、簡単でかつ着実なメンテナンス作業が可能になる。更に部品の交換を容易とし、しかも画像品質の安定化を実現することができる。また、プロセスカートリッジの交換だけで簡単に元の高品位画像に復させることが可能である。
前記プロセスカ−トリッジを画像形成装置に搭載し、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を繰り返し行うことによって、長期間に亘って高品質で安定した画像形成が可能となる。
【0162】
以上の説明から明らかなように、本発明の電子写真感光体は、電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができるものである。
【実施例】
【0163】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定される
ものではない。なお、以下の実施例において、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。
【0164】
(製造例1)
−水酸基を有する電荷輸送性重合体:重合体No.1−
かき混ぜ機、温度計、シリカゲル管、及び滴下ロートを取り付けた200mlの四つ口フラスコ内に、N−{4−[2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル]フェニル}−N,N−ビス(4−トリル)アミン3.87g(0.008モル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン2.74g(0.012モル)、脱水ピリジン2.5ml、及び脱水ジクロロメタン40mlを入れ、窒素ガス気流下、攪拌して溶解させた。水浴により内温を3℃に保って、強く攪拌しながらホスゲンの3量体であるビス(トリクロロメタン)カーボネート1.48g(5.0ミリモル)を脱水ジクロロメタン20mlに溶解させた液を20分間で滴下し、滴下後内温を4℃に保って3時間反応を行った。攪拌停止後、反応液を2%の塩酸水溶液で洗浄し、次いでイオン交換水で洗浄した。得られた溶液を1.5lのメタノール中に滴下して黄色の生成物を析出させ、乾燥して、下記表1に示す重合体の構成単位を含む、水酸基を有する電荷輸送性重合体(重合体No.1)を得た。
得られた重合体No.1の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、ポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量で2,200であった。なお、赤外吸収スペクトルを図9に示す。重合体の構成単位と元素分析の結果を表1に示す。
【0165】
(製造例2)
−水酸基を有する電荷輸送性重合体:重合体No.2−
かき混ぜ機、温度計、シリカゲル管、及び滴下ロートを取り付けた200mlの四つ口フラスコ内に、N−{4−[2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル]フェニル}−N,N−ビス(4−トリル)アミン3.87g(0.008モル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン2.74g(0.012モル)、脱水ピリジン2.5mlそして脱水ジクロロメタン40mlを入れ、窒素ガス気流下で攪拌して溶解させた。水浴により内温を3℃に保って、強く攪拌しながらホスゲンの3量体であるビス(トリクロロメタン)カーボネート1.78g(6.0ミリモル)を脱水ジクロロメタン20mlに溶解させた液を20分間で滴下し、滴下後内温を4℃に保って3時間反応を行った。攪拌停止後、反応液を2%の塩酸水溶液で洗浄し、次いでイオン交換水で洗浄した。得られた溶液を1.5Lのメタノール中に滴下して黄色の生成物を析出させ、乾燥して、下記表1に示す重合体の構成単位を含む、水酸基を有する電荷輸送性重合体(重合体No.2)を得た。
得られた重合体No.2の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、ポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量で3,400であった。なお、重合体の構成単位と元素分析の結果を表1に示す。
【0166】
(製造例3)
−水酸基を有する電荷輸送性重合体:重合体No.3−
かき混ぜ機、温度計、シリカゲル管、及び滴下ロートを取り付けた200mlの四つ口フラスコ内に、N−{4−[2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル]フェニル}−N,N−ビス(4−トリル)アミン9.96g(0.02モル)、脱水ピリジン2.5mL、及び脱水ジクロロメタン40mLを入れ、窒素ガス気流下で攪拌して溶解させた。水浴により内温を3℃に保って、強く攪拌しながらホスゲンの3量体であるビス(トリクロロメタン)カーボネート1.48g(5.0ミリモル)を脱水ジクロロメタン20mlに溶解させた液を20分で滴下し、滴下後内温を4℃に保って3時間反応を行った。攪拌停止後、反応液を2%の塩酸水溶液で洗浄し、次いで、イオン交換水で洗浄した。得られた溶液を1.5lのメタノール中に滴下して黄色の生成物を析出させ、乾燥して、下記表1に示す重合体の構成単位を含む、水酸基を有する電荷輸送性重合体(重合体No.3)を得た。
得られた重合体No.3の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、ポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量で2,500であった。なお、重合体の構成単位と元素分析の結果を表1に示す。
【0167】
(製造例4)
−水酸基を有する電荷輸送性重合体:重合体No.4−
かき混ぜ機、温度計、シリカゲル管、及び滴下ロートを取り付けた200mlの四つ口フラスコ内に、N−{4−[2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル]フェニル}−N,N−ビス(4−トリル)アミン9.96g(0.02モル)、脱水ピリジン2.5ml、そして脱水ジクロロメタン40mlを入れ、窒素ガス気流下で攪拌して溶解させた。水浴により内温を3℃に保って、強く攪拌しながらホスゲンの3量体であるビス(トリクロロメタン)カーボネート1.78g(6.0ミリモル)を脱水ジクロロメタン20mlに溶解させた液を20分で滴下し、滴下後内温を4℃に保って3時間反応を行った。攪拌停止後、反応液を2%の塩酸水溶液で洗浄した。次いで、イオン交換水で洗浄した。得られた溶液を1.5lのメタノール中に滴下して黄色の生成物を析出させ、乾燥して、下記表1に示す重合体の構成単位を含む、水酸基を有する電荷輸送性重合体(重合体No.4)を得た。
得られた重合体No.4の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、ポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量で4,500であった。なお、重合体の構成単位と元素分析の結果を表1に示す。
【0168】
(製造例5)
−水酸基を有する電荷輸送性重合体:重合体No.5−
かき混ぜ機、温度計、シリカゲル管、及び滴下ロートを取り付けた200mlの四つ口フラスコ内に、N,N’−ビス{3−メチル−4[2−(4−ヒドロキシ)フェネチ]}フェニル−4−メチルビフェニル−4’−アミン(特開2002−249472に準じ合成した)12.08g(0.02モル)、脱水ピリジン2.5ml、及び脱水ジクロロメタン40mlを入れ、窒素ガス気流下で攪拌して溶解させた。水浴により内温を3℃に保って、強く攪拌しながらホスゲンの3量体であるビス(トリクロロメタン)カーボネート1.48g(5.0ミリモル)を脱水ジクロロメタン20mlに溶解させた液を20分間で滴下し、滴下後内温を4℃に保って3時間反応を行った。攪拌停止後、反応液を2%の塩酸水溶液で洗浄し、イオン交換水で洗浄した。
得られた溶液を1.5Lのメタノール中に滴下して黄色の生成物を析出させ、乾燥して、下記表1に示す重合体の構成単位を含む、水酸基を有する電荷輸送性重合体(重合体No.5)を得た。
得られた重合体No.5の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、ポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量で3,200であった。なお、重合体の構成単位と元素分析の結果を表1に示す。
【0169】
(製造例6)
−水酸基を有する電荷輸送性重合体:重合体No.6−
かき混ぜ機、温度計、シリカゲル管、及び滴下ロートを取り付けた200mlの四つ口フラスコ内に、N,N’−ビス{3−メチル−4[2−(4−ヒドロキシ)フェネチ]}フェニル−4−メチルビフェニル−4’−アミン(特開2002−249472に準じ合成した)4.83g(0.008モル)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン3.22g(0.012モル)、脱水ピリジン2.5ml、及び脱水ジクロロメタン40mlを入れ、窒素ガス気流下で攪拌して溶解させた。水浴により内温を3℃に保って、強く攪拌しながらホスゲンの3量体であるビス(トリクロロメタン)カーボネート1.48g(5.0ミリモル)を脱水ジクロロメタン20mlに溶解させた液を20分で滴下し、滴下後内温を4℃に保って3時間反応を行った。攪拌停止後、反応液を2%の塩酸水溶液で洗浄し、次いで、イオン交換水で洗浄した。
得られた溶液を1.5lのメタノール中に滴下して黄色の生成物を析出させ、乾燥して、下記表1に示す重合体の構成単位を含む、水酸基を有する電荷輸送性重合体(重合体No.6)を得た。
得られた重合体No.6の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、ポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量で3,000であった。重合体の構成単位と元素分析の結果を表1に示す。
【0170】
【表1】

【0171】
(実施例1)
−重合体No.1へのアルコキシシリル基の導入−
合成した水酸基を有する電荷輸送性重合体のアルコキシシリル化を次のように行って重合体No.1にアルコキシシリル基を導入した(ハイブリッド材料用重合体No.1)。
まず、水酸基を有する電荷輸送性重合体No.1(3.5g)をクロロホルム25mlに溶解させた。次に、この溶液に3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(IPTES)0.6gを添加し、還流下で10時間加熱した後、室温に冷却した。この反応液をメタノール中に滴下し、反応物を析出させた。析出物を濾別し、メタノールで洗浄した後、減圧乾燥した。
得られた生成物のH−NMRによる測定結果を図10に示す。測定の結果、生成物の両末端にアルコキシシリル基が導入されていることが確認された。また、GPCによる測定の結果、生成物の数平均分子量は2,700であった。
【0172】
(実施例2)
−重合体No.2へのアルコキシシリル基の導入−
合成した水酸基を有する電荷輸送性重合体のアルコキシシリル化を次のように行って重合体No.2にアルコキシシリル基を導入した(ハイブリッド材料用重合体No.2)。
まず、水酸基を有する電荷輸送性重合体No.2(3.5g)をクロロホルム25mlに溶解させた。次に、この溶液に3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(IPTES)0.5gを添加し、還流下で10時間加熱した後、室温に冷却した。この反応液をメタノール中に滴下し、反応物を析出させた。析出物を濾別し、メタノールで洗浄した後、減圧乾燥した。
生成物はH−NMRにより両末端にアルコキシシリル基が導入されていることが確認された。また、GPCによる測定の結果、生成物の数平均分子量は4,000であった。
【0173】
(実施例3)
−重合体No.3へのアルコキシシリル基の導入−
合成した水酸基を有する電荷輸送性重合体のアルコキシシリル化を次のように行って重合体No.3にアルコキシシリル基を導入した(ハイブリッド材料用重合体No.3)。
水酸基を有する電荷輸送性重合体No.3(3.5g)をクロロホルム25mlに溶解させた。次に、この溶液に3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(IPTES)0.6gを添加し、還流下で10時間加熱した後、室温に冷却した。この反応液をメタノール中に滴下し、反応物を析出させた。析出物を濾別し、メタノールで洗浄した後、減圧乾燥した。
生成物はH−NMRにより両末端にアルコキシシリル基が導入されていることが確認された。また、GPCによる測定の結果、生成物の数平均分子量は3,000であった。
【0174】
(実施例4)
−重合体No.4へのアルコキシシリル基の導入−
合成した水酸基を有する電荷輸送性重合体のアルコキシシリル化を次のように行って重合体No.4にアルコキシシリル基を導入した(ハイブリッド材料用重合体No.4)。
まず、水酸基を有する電荷輸送性重合体No.4(3.5g)をクロロホルム25mlに溶解させた。次に、この溶液に3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(IPTES)0.5gを添加し、還流下で10時間加熱した後、室温に冷却した。この反応液をメタノール中に滴下し、反応物を析出させた。析出物を濾別し、メタノールで洗浄した後、減圧乾燥した。
生成物はH−NMRにより両末端にアルコキシシリル基が導入されていることが確認された。また、GPCによる測定の結果、生成物の数平均分子量は5,100であった。
【0175】
(実施例5)
−重合体No.5へのアルコキシシリル基の導入−
合成した水酸基を有する電荷輸送性重合体のアルコキシシリル化を次のように行って重合体No.5にアルコキシシリル基を導入した(ハイブリッド材料用重合体No.5)。
水酸基を有する電荷輸送性重合体No.5(3.5g)をクロロホルム25mlに溶解させた。次に、この溶液に3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(IPTES)0.6gを添加し、還流下で10時間加熱した後、室温に冷却した。この反応液をメタノール中に滴下し、反応物を析出させた。析出物を濾別し、メタノールで洗浄した後、減圧乾燥した。
得られた生成物のH−NMRによる測定結果を図6に示す。測定の結果、生成物の両末端にアルコキシシリル基が導入されていることが確認された。また、GPCによる測定の結果、生成物の数平均分子量は3,700であった。
【0176】
(実施例6)
−重合体No.6へのアルコキシシリル基の導入−
合成した水酸基を有する電荷輸送性重合体のアルコキシシリル化を次のように行って重合体No.6にアルコキシシリル基を導入した(ハイブリッド材料用重合体No.6)。
水酸基を有する電荷輸送性重合体No.6(3.5g)をクロロホルム25mlに溶解させた。次に、この溶液に3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(IPTES)0.5gを添加し、還流下で10時間加熱した後、室温に冷却した。この反応液をメタノール中に滴下し、反応物を析出させた。析出物を濾別し、メタノールで洗浄した後、減圧乾燥した。
得られた生成物のH−NMRによる測定結果を図6に示す。測定の結果、生成物の両末端にアルコキシシリル基が導入されていることが確認された。また、GPCによる測定の結果、生成物の数平均分子量は3,500であった。
【0177】
次に、合成したハイブリッド材料用重合体No.1〜No.6を用いて、それぞれ下記の手順により各構成層を形成して、電子写真感光体を作製した。
【0178】
(実施例7)
外径30mmのアルミニウム(Al)製の支持体の表面に、下記処方により、調製した下引き層用塗工液を用いて浸漬法により塗工し、乾燥後の厚みが3.5μmになるように下引き層を形成した。
【0179】
<下引き層用塗工液>
・アルキッド樹脂(ベッコゾール1307-60-EL、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・6部
・メラミン樹脂(スーパーベッカミンG-821-60、大日本インキ化学工業株式会社製)・・・4部
・酸化チタン(CR−EL、石原産業株式会社製)・・・40部
・メチルエチルケトン・・・50部
【0180】
次に、前記下引き層を形成した支持体を下記処方により調製した電荷発生層塗工液を用いて浸漬塗工した後、加熱乾燥させて、下引き層上に厚み0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0181】
<電荷発生層用塗工液>
・下記構造式(13)で表されるビスアゾ顔料・・・2.5部
【化66】

・ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製)・・・0.5部
・シクロヘキサノン・・・200部
・メチルエチルケトン・・・80部
【0182】
次に、形成された電荷発生層上に、下記処方により調製した電荷輸送層用塗工液を用いて、浸積塗工し、加熱乾燥させて、厚み22μmの電荷輸送層を形成した。
【0183】
<電荷輸送層用塗工液>
・ビスフェールZ型ポリカーボネート・・・10部
・下記構造式で表される電荷輸送物質・・・10部
【化67】

・テトラヒドロフラン・・・80部
・1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液(KF50−100CS、信越化学工業株式会社製)・・・0.2部
【0184】
次に、電荷輸送層上に、下記処方により調製した有機−無機ハイブリッド表面層塗工液を用いて、スプレー塗工し、130℃で30分間加熱処理して、厚み4.0μmの架橋表面層を設け、電子写真感光体を作製した。
【0185】
−有機−無機ハイブリッド表面層塗工液の調製−
実施例1で得られたアルコキシシリル化電荷輸送性重合体(ハイブリッド材料用重合体No.1)2.0部を、テトラヒドロフラン20部に溶解した後、1N−塩酸水0.10部を添加し、室温下、1時間強攪拌して、有機−無機ハイブリッド表面層塗工液を調製した。
【0186】
(実施例8)
実施例7において、有機−無機ハイブリッド表面層塗工液材料(ハイブリッド材料用重合体No.1)を、実施例2で得られたハイブリッド材料用重合体No.2に変えた以外は、実施例7と同じ手順と構成にして電子写真感光体を作製した。なお、架橋表面層の厚みは4.0μmとした。
【0187】
(実施例9)
実施例7において用いた有機−無機ハイブリッド表面層塗工液材料(ハイブリッド材料用重合体No.1)に代えて、実施例3で得られたハイブリッド材料用重合体No.3を用いたこと以外は、実施例7と同じ手順と構成にして電子写真感光体を作製した。なお、架橋表面層の厚みは4.0μmとした。
【0188】
(実施例10)
実施例7において、有機−無機ハイブリッド表面層塗工液材料(ハイブリッド材料用重合体No.1)を、実施例4で得られたハイブリッド材料用重合体No.4に変えた以外は、実施例7と同じ手順と構成にして電子写真感光体を作製した。なお、架橋表面層の厚みは4.0μmとした。
【0189】
(実施例11)
実施例7において、有機−無機ハイブリッド表面層塗工液材料(ハイブリッド材料用重合体No.1)を、実施例5で得られたハイブリッド材料用重合体No.5に変えた以外は、実施例7と同様にして、電子写真感光体を作製した。なお、架橋表面層の厚みは4.0μmとした。
【0190】
(実施例12)
実施例7において、有機−無機ハイブリッド表面層塗工液材料(ハイブリッド材料用重合体No.1)を、実施例6で得られたハイブリッド材料用重合体No.6に変えた以外は、実施例7と同様にして、電子写真感光体を作製した。なお、架橋表面層の厚みは4.0μmとした。
【0191】
(比較例1)
実施例7において、有機−無機ハイブリッド表面層塗工液材料(ハイブリッド材料用重合体No.1)に代えて、特許第3368415号公報に記載された方法を参考として合成した数平均分子量80,000の電荷輸送性重合体(製造例1と同様な構成単位を持つ重合体)5部をテトラヒドロフラン100部に溶解した表面層塗工液を用いた以外は、実施例7と同様にして、電子写真感光体を作製した。なお、表面層の厚みは4.0μmとした。
【0192】
(比較例2)
実施例7において、有機−無機ハイブリッド表面層塗工液材料(ハイブリッド材料用重合体No.1)に代えて、特許第3368415号公報に記載された方法を参考として合成した数平均分子量90,000の電荷輸送性重合体(製造例3と同様な構成単位を持つ重合体)5部をテトラヒドロフラン100部に溶解した表面層塗工液を用いた以外は、実施例7と同様にして、電子写真感光体を作製した。なお、表面層の厚みは4.0μmとした。
【0193】
(比較例3)
実施例7において、有機−無機ハイブリッド表面層塗工液材料(ハイブリッド材料用重合体No.1)に代えて、特開2000−105474号公報に記載された方法を参考として下記組成の溶液を表面層塗工液として用いた以外は、実施例7と同様にして、電子写真感光体を作製した。なお、架橋表面層の厚みは4.0μmとした。
〔溶液の組成〕
・ポリカーボネート(Z300、三菱ガス化学株式会社製)・・・6.6g
・下記構造式で表される電荷輸送性化合物・・・4.2g
【化68】

・テトラエトキシシラン・・・0.33g
・ジクロロメタン・・・30g
【0194】
<評価>
作製した各電子写真感光体について、株式会社リコー製のimagio MF2200改造機(画像露光光源として655nmの半導体レーザーを使用)を用いて、15万枚の実機通紙試験(A4サイズ、NBSリコー製、MyPaper、スタート時帯電電位:−700V)を実施し、摩耗量の測定、機内電位の測定、画像特性(画像濃度、スジ画像)の評価を行った。結果を表2、表3、及び表4に示す。なお、機内電位とは、露光前の感光体の表面電位(暗部電位)と露光後の感光体の表面電位(明部電位)を表す。
なお、画像評価において、画像濃度及びスジ画像の評価基準は下記による。
[画像濃度の評価基準]
○:良好、△:わずかに画像濃度低下、×:画像濃度低い
[スジ画像の評価基準]
○:良好、△:局部的に発生、×:画像全面に発生
【0195】
【表2】

【0196】
【表3】

【0197】
【表4】

【0198】
表2、表3、及び表4の結果から、実施例7〜12に示すように、本発明の電荷輸送機能を有する構成単位からなる有機−無機ハイブリッド材料を用いることにより、15万枚の実機通紙後においても摩耗量、機内電位、画像特性のいずれも良好な値を示し、終始高濃度、高画質の画像が安定して得られた。
一方、比較例1は、無機成分を含有していないため、摩耗量が大きく、5万枚までに表面層が消失したため、その後の評価が不可能となった。比較例2も無機成分を含有していないため、摩耗量が大きく、10万枚までに表面層が消失したため、その後の評価が不可能となった。また、比較例3は、反応性を有しない低分子電荷輸送材料を単にポリカーボネート中に混合して形成した架橋膜であるため、比較例1、比較例2と同様に摩耗量が大きく、低分子電荷輸送材料の析出による画像濃度低下も発生した。5万枚までに露光部電位が大きくなってその後の評価が不可能となった。
上記結果から、本発明の電荷輸送機能を有する構成単位からなる有機−無機ハイブリッド材料によって形成された表面層とすることにより、耐傷性、耐摩耗性に優れ、良好な画像形成が長期間維持できる長寿命で且つ高性能な感光体を提供できることが判明した。また併せて、本発明の感光体を用いた画像形成プロセス、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジが耐久レベルが高く、高品質、高信頼性を有していることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0199】
本発明の有機−無機ハイブリッド材料を用いた電子写真感光体は、電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1A】図1Aは、本発明の単層構造の電子写真感光体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【図1B】図1Bは、本発明の単層構造の電子写真感光体の層構成の他の例を示す概略断面図である。
【図2A】図2Aは、本発明の積層構造の電子写真感光体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【図2B】図2Bは、本発明の積層構造の電子写真感光体の層構成の他の例を示す概略断面図である。
【図3】図3は、本発明における画像形成装置の構成例を示す概略模式図である。
【図4】図4は、本発明における画像形成装置に着脱可能とされたプロセスカートリッジの構成例を示す概略模式図である。
【図5】図5は、本発明の画像形成装置により本発明の画像形成方法を実施する一例を示す概略説明図である。
【図6】図6は、本発明の画像形成装置により本発明の画像形成方法を実施する他の例を示す概略説明図である。
【図7】図7は、本発明の画像形成装置(タンデム型カラー画像形成装置)により本発明の画像形成方法を実施する一例を示す概略説明図である。
【図8】図8は、図7に示す画像形成装置における一部拡大概略説明図である。
【図9】図9は、製造例1の重合体の赤外吸収スペクトル図である。
【図10】図10は、実施例1の重合体のH−NMRスペクトル図である。
【符号の説明】
【0201】
1 支持体
2 感光層
3 電荷発生機能と電荷輸送機能を有する層
3’ 電荷発生機能と電荷輸送機能を有する層
4 表面層(有機−無機ハイブリッド材料)
5 感光層
6 電荷発生層
7 電荷輸送層
7’ 電荷輸送層
8 表面層(有機−無機ハイブリッド材料)
10 感光体(感光体ドラム)
10K ブラック用感光体
10Y イエロー用感光体
10M マゼンタ用感光体
10C シアン用感光体
14 支持ローラ
15 支持ローラ
16 支持ローラ
17 中間転写クリーニング装置
18 画像形成手段
20 帯電ローラ
21 露光装置
22 二次転写装置
23 ローラ
24 二次転写ベルト
25 定着装置
26 定着ベルト
27 加圧ベルト
28 シート反転装置
30 露光装置
32 コンタクトガラス
33 第1走行体
34 第2走行体
35 結像レンズ
36 読取りセンサ
40 現像装置
41 現像ベルト
42K 現像剤収容部
42Y 現像剤収容部
42M 現像剤収容部
42C 現像剤収容部
43K 現像剤供給ローラ
43Y 現像剤供給ローラ
43M 現像剤供給ローラ
43C 現像剤供給ローラ
44K 現像ローラ
44Y 現像ローラ
44M 現像ローラ
44C 現像ローラ
45K ブラック用現像器
45Y イエロー用現像器
45M マゼンタ用現像器
45C シアン用現像器
49 レジストローラ
50 中間転写体
51 ローラ
52 分離ローラ
53 手差し給紙路
54 手差しトレイ
55 切換爪
56 排出ローラ
57 排出トレイ
58 コロナ帯電器
60 クリーニング装置
61 現像器
62 転写帯電器
63 感光体クリーニング装置
64 除電器
70 除電ランプ
80 転写ローラ
90 クリーニング装置
95 転写紙
100 画像形成装置
101 感光体
102 帯電手段
103 露光
104 現像手段
105 記録媒体
107 クリーニング手段
108 転写手段
120 タンデム型現像器
121 加熱ローラ
122 定着ローラ
123 定着ベルト
124 加圧ローラ
125 加熱源
126 クリーニングローラ
127 温度センサ
130 原稿台
142 給紙ローラ
143 ペーパーバンク
144 給紙カセット
145 分離ローラ
146 給紙路
147 搬送ローラ
148 給紙路
150 複写装置本体
200 給紙テーブル
210 転写チャージャ
211 分離チャージャ
212 分離爪
213 クリーニング前チャージャ
214 ファーブラシ
215 クリーニングブレード
231 感光体
232 除電ランプ
233 帯電チャージャ
234 イレーサ
235 画像露光部
236 現像ユニット
237 転写前チャージャ
238 レジストローラ
239 転写紙
241 感光ドラム
242 帯電装置
243 露光
244 現像装置
245 転写体
246 転写装置
247 クリーニングブレード
300 スキャナ
400 原稿自動搬送装置(ADF)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷輸送機能を有する重合体有機成分と、金属アルコキシド化合物とが互いに結合して一体化してなることを特徴とする有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項2】
重合体有機成分が、下記構造式(I)で表される構成単位を含有する請求項1に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【化1】

ただし、前記構造式(I)中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかを表す。Arは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。Ar及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。
【請求項3】
構造式(I)で表される構成単位が、下記構造式(II)で表される構成単位である請求項2に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【化2】

ただし、前記構造式(II)中、Ar、Ar、及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。R17及びR18は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルキル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかを表す。
【請求項4】
構造式(I)で表される構成単位が、下記構造式(III)で表される構成単位である請求項2に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【化3】

ただし、前記構造式(III)中、R17及びR18は、上記と同じ意味を表す。
【請求項5】
重合体有機成分が、下記構造式(IV)で表される構成単位を含有する請求項1に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【化4】

ただし、前記構造式(IV)中、Ar、Ar、Ar及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。Arは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。Zは、アリーレン基、及び−Ar10−Za−Ar10−(ただし、Ar10は、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。ZaはO、S、及びアルキレン基のいずれかを表す)のいずれかを表す。R及びR’は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を表す。nは、0又は1を表す。
【請求項6】
構造式(IV)で表される構成単位が、下記構造式(V)で表される構成単位である請求項5に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【化5】

ただし、前記構造式(V)中、Ra、Rb、Rc及びRdは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Ar、Z、R、R’及びnは、上記と同じ意味を表す。
【請求項7】
重合体有機成分が、更に、下記構造式(VI)で表される構成単位を含有する請求項1から6のいずれかに記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【化6】

ただし、前記構造式(VI)中、Xは、脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、芳香族の2価基、これらを連結してできる2価基、下記構造式(VI−1)、及び下記構造式(VI−2)のいずれかを表す。
【化7】

【化8】

ただし、前記構造式(VI−1)及び(VI−2)中、R、R、R、及びRは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表す。a及びbは、各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは、各々独立して0〜3の整数である。Yは、単結合、炭素数2〜12の直鎖状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、及び下記構造式(VI−3)〜(VI−11)から選ばれるいずれかを表す。
【化9】

ただし、前記構造式中、Z及びZは、それぞれ脂肪族の2価基、及びアリーレン基のいずれかを表す。
【化10】

【化11】

ただし、前記構造式中、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、及びアリール基のいずれかを表し、RとRは、結合して炭素数6〜12の炭素環又は複素環を形成してもよく、また、R及びRは、R及びRと共同で炭素環又は複素環を形成してもよい。R13及びR14は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、単結合及び炭素数1〜4のアルキレン基のいずれかを表す。R15及びR16は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、炭素数1〜5のアルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。eは0〜4の整数、fは0〜20の整数、gは0〜2000の整数を表す。
【請求項8】
構造式(I)、(II)、(III)、(IV)及び(V)のいずれかで表される構成単位の組成比をkとし、構造式(VI)で表される構成単位の組成比をjとすると、次式、0<k/(k+j)≦1を満たす請求項7に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項9】
重合体有機成分の数平均分子量が、400〜40,000である請求項1から8のいずれかに記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項10】
金属アルコキシド化合物が、下記構造式(VII)で表される請求項1から9のいずれかに記載の有機−無機ハイブリッド材料。
19M(R”X’) ・・・構造式(VII)
ただし、前記構造式(VII)中、R19は、炭素数1〜5のアルキル基を表す。Aは、炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。Mは、Si、Ti、及びZrのいずれかを表す。R”は、炭素数2〜4のアルキレン基、及びアルキリデン基のいずれかを表す。X’は、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸ハロゲン基及び酸無水物基から選択されるいずれかを表す。pは、0〜3の整数を表す。m及びnは、それぞれ1〜3の整数を表す。
【請求項11】
Mが、Siである請求項10に記載の有機−無機ハイブリッド材料。
【請求項12】
下記構造式(I)で表される構成単位を有する重合体と、下記構造式(VII)で表される金属アルコキシド化合物とを反応させてなり、かつ該重合体中に金属アルコキシド基を有することを特徴とするハイブリッド材料用重合体。
【化12】

ただし、前記構造式(I)中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、及び置換基を有していてもよいアリール基のいずれかを表す。Arは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。Ar及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。
19M(R”X’) ・・・構造式(VII)
ただし、前記構造式(VII)中、R19は、炭素数1〜5のアルキル基を表す。Aは、炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。Mは、Si、Ti、及びZrのいずれかを表す。R”は、炭素数2〜4のアルキレン基、及びアルキリデン基のいずれかを表す。X’は、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸ハロゲン基及び酸無水物基から選択されるいずれかを表す。pは、0〜3の整数を表す。m及びnは、それぞれ1〜3の整数を表す。
【請求項13】
下記構造式(VIII)で表される分子構造を有する請求項12に記載のハイブリッド材料用重合体。
【化13】

ただし、前記構造式(VIII)中、Ar、Ar、Ar、R、R”、M、A、R19、p及びmは、上記と同じ意味を表す。Eは、−NH−、又は−O−を表す。Lは、括弧内の繰り返し単位の繰り返し数を表す。
【請求項14】
下記構造式(IX)で表される分子構造を有する請求項12に記載のハイブリッド材料用重合体。
【化14】

ただし、前記構造式(IX)中、Ar、Ar、Ar、R、R”、M、A、R19、p及びmは、上記と同じ意味を表す。Eは、−NH−、又は−O−を表す。Lは、括弧内の繰り返し単位の繰り返し数を表す。
【請求項15】
下記構造式(IV)で表される構成単位を有する重合体と、下記構造式(VII)で表される金属アルコキシド化合物とを反応させてなり、かつ該重合体中に金属アルコキシド基を有することを特徴とするハイブリッド材料用重合体。
【化15】

ただし、前記構造式(IV)中、Ar、Ar、Ar及びArは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。Arは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。Zは、アリーレン基、及び−Ar10−Za−Ar10−(ただし、Ar10は、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。ZaはO、S、及びアルキレン基のいずれかを表す)のいずれかを表す。R及びR’は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を表す。nは、0又は1を表す。
19M(R”X’) ・・・構造式(VII)
ただし、前記構造式(VII)中、R19は、炭素数1〜5のアルキル基を表す。Aは、炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。Mは、Si、Ti、及びZrのいずれかを表す。R”は、炭素数2〜4のアルキレン基、及びアルキリデン基のいずれかを表す。X’は、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、酸ハロゲン基及び酸無水物基から選択されるいずれかを表す。pは、0〜3の整数を表す。m及びnは、1〜3の整数を表す。
【請求項16】
下記構造式(X)で表される分子構造を有する請求項15に記載のハイブリッド材料用重合体。
【化16】


ただし、前記構造式(X)中、R19、A,M、R”、Ar、Ar、Ar,Ar、Ar、n、及びpは、上記と同じ意味を表す。Eは、−NH−、又は−O−を表す。Lは、括弧内の繰り返し単位の繰り返し数を表す。
【請求項17】
下記構造式(XI)で表される分子構造を有する請求項15に記載のハイブリッド材料用重合体。
【化17】

ただし、前記構造式(XI)中、R19、A,M、R”、Ar、Ar、Ar,Ar、Ar、Z、X、n、及びpは、上記と同じ意味を表す。Eは、−NH−、又は−O−を表す。Lは、括弧内の繰り返し単位の繰り返し数を表す。
【請求項18】
Mが、Siである請求項12から17のいずれかに記載のハイブリッド材料用重合体。
【請求項19】
請求項12から18のいずれかに記載のハイブリッド材料用重合体における金属アルコキシド基を加水分解乃至重縮合することを特徴とする有機−無機ハイブリッド材料の製造方法。
【請求項20】
表面層が、請求項1から11のいずれかに記載の有機−無機ハイブリッド材料を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【請求項21】
支持体と、該支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、及び表面層をこの順に有する積層構造である請求項20に記載の電子写真感光体。
【請求項22】
支持体上に請求項12から18のいずれかに記載のハイブリッド材料用重合体を含有する層を設けた後、該ハイブリッド材料用重合体を加水分解乃至重縮合させて有機−無機ハイブリッド材料を含有する表面層を形成する表面層形成工程を少なくとも含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【請求項23】
請求項20から21のいずれかに記載の電子写真感光体と、更に帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段から選択される少なくとも一つの手段とを有してなり、画像形成装置本体に着脱可能であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項24】
請求項20から21のいずれかに記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項25】
請求項20から21のいずれかに記載の電子写真感光体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程とを少なくとも含むことを特徴とする画像形成方法。

【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1A】
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【図3】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−161029(P2006−161029A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303250(P2005−303250)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】