説明

有機アンチモン化合物、その製造方法及びこれを用いたセンサー

【課題】新規な有機アンチモン化合物、その製造方法及びこれを用いたセンサーを提供する。
【解決手段】アンチモン上に酸素原子が結合した、5,6,7,12−テトラヒドロジベンゾ[c,f][1,5]アザスチボシン骨格を持つ化合物は、二酸化炭素固定化剤、二酸化炭素固定化触媒、二酸化炭素センサーとしての利用が期待される。該化合物は、対応するアンチモン水酸化物又はオキシドとアルコールの反応により製造することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素固定化用材料などとして有用な新規な有機アンチモン化合物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
5,6,7,12−テトラヒドロジベンゾ[c,f][1,5]アザスチボシン骨格を持つ有機アンチモン化合物はアンチモン上にハロゲン原子や有機基が結合したもの(非特許文献1−3参照)は知られている。また、アンチモンと同じ15族元素であるビスマスに関しては類似構造を持つ化合物が知られている(特許文献1)。しかし、5,6,7,12−テトラヒドロジベンゾ[c,f][1,5]アザスチボシン骨格を持つ有機アンチモン化合物でアンチモン上に酸素原子が結合したものは知られていない。
【0003】
【特許文献1】特願2006-025236
【非特許文献1】Tetrahedron Lett.29 p5401(1988)
【非特許文献2】Tetrahedron Lett.30 p4841(1989)
【非特許文献3】Tetrahedron Lett.44 p8589(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、例えば二酸化炭素固定化剤、二酸化炭素固定化用触媒、二酸化炭素センサーなどへの利用が期待される、新規な有機アンチモン化合物およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、アンチモン化合物の合成法およびその反応性について鋭意研究を重ねた結果、ある種の環状有機骨格および脱離基を有するアンチモン化合物と金属水酸化物あるいは金属アルコキシドとを反応させることにより、環状有機骨格を有するアンチモン水酸化物、アンチモンオキシドおよびアンチモンアルコキシドが得られることを見出し、また、該アンチモン水酸化物またはアンチモンオキシドとアルコール類との反応により該アンチモンアルコキシドが得られることを見出した。さらに、これらのアンチモン化合物と二酸化炭素が容易に反応することを見出し、これらの事実に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、一般式(I)
【化5】

(式中、Rは炭素数1−20のアルキル基(該アルキル基は1位以外の部位が炭素数1−10のアルコキシ基で置換されていてもよい)、炭素数1−10のシクロアルキル基、アリール基(該アリール基は炭素数1−10のアルキル基、炭素数1−10のアルコキシ基、塩素原子、フッ素原子で任意に置換されていてもよい)、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、を意味し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1−20のアルキル基、炭素数1−20のアルコキシ基を意味する)で表されるアンチモン水酸化物および、
一般式(II)
【化6】

(式中、R〜Rは、それぞれ前項と同じ意味を示す)で表されるアンチモンオキシドおよび、
一般式(III)
【化7】

(式中、R〜Rは、それぞれ前項と同じ意味を示し、Rは炭素数1−20のアルキル基(該アルキル基は1位以外の部位が、フッ素原子、アミノ基(該アミノ基は炭素数1−10のアルキル基、フェニル基、ベンジル基で任意に置換されていてもよい)、炭素数1−10のアルコキシ基、炭素数1−10のアルキルチオ基、フェニルチオ基で任意に置換されていてもよい)、炭素数1−20のシクロアルキル基、アリール基(該アリール基は炭素数1−20のアルキル基、炭素数1−20のアルコキシ基、炭素数1−10のパーフルオロアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アミノ基(該アミノ基は炭素数1−10のアルキル基、フェニル基、ベンジル基で任意に置換されていてもよい)、アセチル基、ベンゾイル基、炭素数1−20のアルコキシカルボニル基、炭素数1−20のアルキルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、で任意に置換されていてもよい)で表されるアンチモン化合物、およびそれらの製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば、二酸化炭素固定化材料、二酸化炭素センサーなどに利用可能な、新規な有機アンチモン水酸化物、有機アンチモンオキシド、有機アンチモンアルコキシドが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明における一般式(I)で示される有機アンチモン水酸化物において、Rは炭素数1−20のアルキル基(該アルキル基は1位以外の部位が炭素数1−10のアルコキシ基で置換されていてもよい)、炭素数1−10のシクロアルキル基、アリール基(該アリール基は炭素数1−10のアルキル基、炭素数1−10のアルコキシ基、塩素原子、フッ素原子で任意に置換されていてもよい)、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基であって、例えば、メチル、エチル、プロピル、t-ブチル、ヘキシル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、などのアルキル基や2−エトキシエチル、3−エトキシプロピルなどのアルコキシ置換アルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル基、フェニル、4−ブチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、4−メトキシフェニル、3,4−ジメトキシフェニル、4−ブトキシフェニル、4−クロロフェニル、4−フルオロフェニルなどのアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基などが挙げられる。また、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1−20のアルキル基、または炭素数1−20のアルコキシ基であって、例えば、水素原子やメチル、エチル、プロピル、t-ブチル、オクチル、ドデシル、ヘキサデシルなどのアルキル基やメトキシ、エトキシ、イロプロポキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、ドデシルオキシなどのアルコキシ基が挙げられる。
また、一般式(II)で示される有機アンチモン化合物においては、R〜Rは、前項と同じ意味を持つ。
次に、一般式(III)で示される有機アンチモンアルコキシドにおいて、R〜Rは、前項と同じ意味を持ち、Rは炭素数1−20のアルキル基(該アルキル基は1位以外の部位が、フッ素原子、アミノ基(該アミノ基は炭素数1−10のアルキル基、フェニル基、ベンジル基で任意に置換されていてもよい)、炭素数1−10のアルコキシ基、炭素数1−10のアルキルチオ基、フェニルチオ基で任意に置換されていてもよい)、炭素数1−20のシクロアルキル基、アリール基(該アリール基は炭素数1−20のアルキル基、炭素数1−20のアルコキシ基、炭素数1−10のパーフルオロアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アミノ基(該アミノ基は炭素数1−10のアルキル基、フェニル基、ベンジル基で任意に置換されていてもよい)、アセチル基、ベンゾイル基、炭素数1−20のアルコキシカルボニル基、炭素数1−20のアルキルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、で任意に置換されていてもよい)であって、例えば、メチル、エチル、プロピル、t-ブチル、オクチル、ドデシル、ヘキサデシルなどのアルキル基、2,2,3,3,3−ペンタフロオロプロピル、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピルなどのフッ素置換アルキル基、2−アミノエチル、2−(ジメチルアミノ)エチル、2−(ジフェニルアミノ)エチル、2−(ジベンジルアミノ)エチル、3−アミノプロピル、5−アミノ−2,2−ジメチルペンチルなどのアミノ置換アルキル基、2−メトキシエチル、2,2−ジメトキシエチル、3−ブトキシプロピルなどのアルコキシ置換アルキル基、2−エチルチオエチル、3−メチルチオプロピルなどのアルキルチオ置換アルキル基、2−フェニルチオエチルなどのフェニルチオ置換アルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシルなどのシクロアルキル基、フェニル、4−t−ブチルフェニル、4−ドデシルフェニル、4−ブトキシフェニル、3,5−ジメトキシフェニル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル、ペンタフルオロフェニル、4−クロロフェニル、4−ブロモフェニル、4−ヨードフェニル、4−アミノフェニル、4−ジメチルアミノフェニル、4−ジフェニルアミノフェニル、4−ジベンジルアミノフェニル、4−アセチルフェニル、4−ベンゾイルフェニル、4−メトキシカルボニルフェニル、2−エトキシカルボニルフェニル、4−メチルチオフェニル、4−フェニルチオフェニル、4−シアノフェニル、4−ニトロフェニル、2,4−ジニトロフェニル、2,4,6−トリニトロフェニル、1−ナフチル、2−ナフチルなどのアリール基が挙げられる。
【0009】
次に、本件請求項4に係る発明の製造方法における一方の原料は、前記一般式(IV)で表される脱離基を有するアンチモン化合物であって、R〜Rは、前項と同じ意味を持ち、Xは脱離基であり、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0010】
また、本件請求項4に係る発明の製造方法におけるもう一方の原料は、一般式(V)M(OH)nで表され、Mは金属を示し、nはその金属の価数であり、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属(その際、nは1である)やマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属(その際、nは2である)が挙げられる。
次に、本件請求項5に係る発明の製造方法における一方の原料は本件請求項4に係る発明と同じ一般式(IV)で示されるアンチモン化合物であり、もう一方の原料は一般式(VI)
M(OR)n (VI)
で示される化合物であり、Rは一般式(III)と同じ意味を示し、M、nは一般式(V)と同じ意味である。
また、本件請求項6に係る発明の製造方法における一方の原料は一般式(I)で示されるアンチモン化合物であり、もう一方の原料は一般式(VII)
OH (VII)
で示される化合物であり、Rは一般式(III)と同じ意味である。
また、本件請求項7に係る発明の製造方法における一方の原料は一般式(II)で示されるアンチモン化合物であり、もう一方の原料は一般式(VII)で示される化合物である。
本件請求項4に係る発明の製造方法において、2つの原料の混合比は反応の経済性を考えると1:1であることが好ましいが、一方の原料を過剰に用いることもでき、一般式(IV)と一般式(V)で示される原料の比は1:2〜2:1の間で実施できる。反応温度は、−100℃から+150℃の間で実施できるが、経済性や反応の選択性を考慮すると−30℃から80℃の間で行うのが好ましい。本反応は、必ずしも溶媒を必要としないが、反応の効率を考えると溶媒を使用して実施することが好ましい。一般式(IV)で示されるアンチモン化合物は有機溶媒に溶解して用いるのが好ましく、一般式(V)で示される水酸化物は水溶液として用いるのが好ましい。有機溶媒としては、エーテル系、塩素化炭化水素系、芳香族炭化水素系、アルコール系、脂肪族炭化水素系などが挙げられるが、エーテル系、塩素化炭化水素系、芳香族炭化水素系が好ましく、具体的にはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、トルエン、キシレン等が例示される。
【0011】
本件請求項5に係る発明の製造方法において、2つの原料の混合比は反応の経済性を考えると1:1であることが好ましいが、一方の原料を過剰に用いることもでき、一般式(IV)と一般式(VI)で示される原料の比は1:2〜2:1の間で実施できる。反応温度は、−100℃から+150℃の間で実施できるが、経済性や反応の選択性を考慮すると−30℃から80℃の間で行うのが好ましい。本反応は、必ずしも溶媒を必要としないが、溶媒を使用して実施することもできる。用いることのできる溶媒としては、エーテル系、塩素化炭化水素系、芳香族炭化水素系、アルコール系、脂肪族炭化水素系などが挙げられるが、エーテル系、塩素化炭化水素系、芳香族炭化水素系が好ましく、具体的にはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、トルエン、キシレン等が例示される。また、アルコール系溶媒を用いる際には、一般式(VI)で示される一方の原料と同一の有機基Rを持つアルコールを用いることができる(例示すると、一般式(VI)で示される一方の原料がNaOCHの場合、メタノール(CHOH)を溶媒として用いることができる)。
本件請求項6に係る発明の製造方法において、2つの原料の混合比は反応の経済性を考えると1:1であることが好ましいが、一方の原料を過剰に用いることもでき、一般式(I)と一般式(VII)で示される原料の比は2:1〜1:1000の間で実施できるが、好ましくは1.5:1〜1:50の間であり、より好ましくは1:1〜1:5の間である。反応温度は、−100℃から+150℃の間で実施できるが、経済性や反応の選択性を考慮すると0℃から100℃の間で行うのが好ましい。本反応は、必ずしも溶媒を必要としないが、溶媒を使用して実施することもできる。用いることのできる溶媒としては、エーテル系、塩素化炭化水素系、芳香族炭化水素系、脂肪族炭化水素系などが挙げられるが、エーテル系、塩素化炭化水素系、芳香族炭化水素系が好ましく、具体的にはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、トルエン、キシレン等が例示される。
【0012】
本件請求項7に係る発明の製造方法において、一般式(II)で示される原料と一般式(VII)で示されるもう一方の原料の混合比は反応の経済性を考えると1:2であることが好ましいが、一方の原料を過剰に用いることもでき、一般式(II)と一般式(VII)で示される原料の比は1:1〜1:1000の間で実施できるが、好ましくは1:1.5〜1:100の間であり、より好ましくは1:2〜1:10の間である。反応温度は、−100℃から+150℃の間で実施できるが、経済性や反応の選択性を考慮すると0℃から100℃の間で行うのが好ましい。本反応は、必ずしも溶媒を必要としないが、溶媒を使用して実施することもできる。用いることのできる溶媒としては、エーテル系、塩素化炭化水素系、芳香族炭化水素系、脂肪族炭化水素系などが挙げられるが、エーテル系、塩素化炭化水素系、芳香族炭化水素系が好ましく、具体的にはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、トルエン、キシレン等が例示される。
反応生成混合物から所望の目的生成物を分離するには、再結晶、溶媒抽出、昇華、カラムクロマトグラフィーなどの通常の分離精製方法を適用することにより容易に達成される。 以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。

【実施例1】
【0013】
6−t−ブチル−12−ヒドロキシ−5,6,7,12−テトラヒドロジベンゾ[c,f][1,5]アザスチボシンの合成
6−t−ブチル−12−クロロ−5,6,7,12−テトラヒドロジベンゾ[c,f][1,5]アザスチボシン600mg(1.47mmol)のジクロロメタン溶液(25mL)に窒素雰囲気下水酸化ナトリウム水溶液(1.0M、15mL、15mmol)を加え、室温で19時間撹拌した。有機層を分離した後、水で洗浄・無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去することにより表題化合物を白色固体として得た(400mg、70%)。NMR分析により、生成物の純度は約88%であり、ビス(6−t−ブチル−5,6,7,12−テトラヒドロジベンゾ[c,f][1,5]アザスチボシン)オキシドが約12%混ざっていることが分かった。
1H NMR (CDCl3, 499.1 MHz):δ 1.28(9H, s), 3.83(2H, d, J=15.2), 4.25(2H, d, J=15.2), 7.07(2H, d, J=8.0), 7.19(2H, t, J=7.6), 7.30(2H, t, J=7.6), 7.94(2H, d, J=8.0). 13C NMR (CDCl3, 125.4 MHz): δ26.94, 56.15, 58.79,125.00, 127.85, 128.30, 132.74, 143.11, 145.54.

【実施例2】
【0014】
ビス(6−t−ブチル−5,6,7,12−テトラヒドロジベンゾ[c,f][1,5]アザスチボシン)オキシドの合成
6−t−ブチル−12−クロロ−5,6,7,12−テトラヒドロジベンゾ[c,f][1,5]アザスチボシン1.65g(4.04mmol)のジクロロメタン溶液(40mL)に窒素雰囲気下水酸化ナトリウム水溶液(1.0M、40mL、40mmol)を加え、室温で20時間撹拌した。有機層を分離し、水50mLで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下、溶媒を留去し得られた粗生成物をテトラヒドロフラン/ヘプタン混合溶媒で再結晶することにより表題化合物を無色結晶として得た(1.30g、83%)。
元素分析: 計算値(C36H42N2OSb2)C, 56.72; H, 5.55; N, 3.68. 実測値 C, 57.02; H, 5.62; N, 3.56.
1H NMR (CDCl3, 499.1 MHz): δ1.30(9H, s), 3.83(2H, d, J=15.2), 4.28(2H, d, J=15.2), 7.06(2H, dd, J=1.5, 7.5), 7.15(2H, td, J=1.5, 7.3), 7.21(2H, td, J=1.2,7.6), 8.21(2H, dd, J=1.5, 7.5). 13C NMR (CDCl3, 125.4MHz): δ26.93, 55.94, 58.27, 124.84, 127.41, 127.69, 134.11, 145.43, 146.06.
単結晶X線構造解析で得られた構造図を図1に示す(水素原子は省略してある)。
【実施例3】
【0015】
6−t−ブチル−12−メトキシ−5,6,7,12−テトラヒドロジベンゾ[c,f][1,5]アザスチボシンの合成
6−t−ブチル−12−ヒドロキシ−5,6,7,12−テトラヒドロジベンゾ[c,f][1,5]アザスチボシン0.20g(0.51mmol)及びメタノール0.63mLを無水トルエン4mLに溶解し70℃で終夜撹拌した。溶媒を真空下留去後、残った固体をエーテル/ヘキサン混合溶媒で再結晶することにより表題化合物を無色結晶として得た(0.18g、収率87%)。
元素分析: 計算値(C19H24NOSb)C, 56.46; H, 5.99; N, 3.47. 実測値 C, 56.75; H, 5.97; N, 3.35.
1H NMR (CDCl3, 499.1MHz): δ 1.29 (9H, s), 3.81 (2H, d, J = 15.2 Hz), 3.94 (3H, s), 4.24 (2H, d, J = 15.2 Hz), 7.05 (2H, d, J = 7.3 Hz), 7.18 (2H, td, J = 1.2, 7.3 Hz), 7.28 (2H, t, J = 7.3 Hz), 7.88 (2H, dd, J = 1.2, 7.3 Hz). 13C NMR (CDCl3, 125.4MHz): δ 27.05, 55.42 , 56.22, 58.96, 125.12, 127.98, 128.33, 133.47, 142.71, 145.58.
単結晶X線構造解析で得られた構造図を図2に示す(水素原子は省略してある)。
【実施例4】
【0016】
ビス(6−t−ブチル−5,6,7,12−テトラヒドロジベンゾ[c,f][1,5]アザスチボシン)オキシドによる二酸化炭素の固定
ビス(6−t−ブチル−5,6,7,12−テトラヒドロジベンゾ[c,f][1,5]アザスチボシン)オキシド60mg(0.079mmol)を窒素雰囲気下シュレンク型ガラス器具に入れ、無水トルエン5mLを加え、1.5気圧の二酸化炭素雰囲気下5時間室温にて放置したところ少量の結晶が析出した。さらに0℃にて結晶を析出させた後、上澄み液を取り除き結晶を減圧下乾燥させることによりビス(6−t−ブチル−5,6,7,12−テトラヒドロジベンゾ[c,f][1,5]アザスチボシン)カーボナートを無色結晶として得た(50mg、79%)。生成物の構造は、元素分析、NMR解析及びX線構造解析により確認した。
元素分析: 計算値(C37H42N2O3Sb2)C, 55.12; H, 5.25; N, 3.47. 実測値 55.49; H, 5.30; N, 3.33.
1H NMR (CDCl3, 499.1MHz): δ 1.33(9H, s), 3.88(2H, d, J=15.2), 4.32(2H, d, J=15.2), 7.06(2H, d, J=7.3), 7.17(2H, td, J=1.2, 7.3), 7.24(2H, t, J=1.2, 7.3), 8.09(2H, dd, J=1.2, 7.3). 13C NMR (CDCl3, 125.4MHz): δ 26.95, 56.84, 59.65, 124.59, 128.04, 128.30, 142.82, 145.54, 163.67.
単結晶X線構造解析で得られた構造図を図3に示す(水素原子は省略してある)。
【実施例5】
【0017】
6−t−ブチル−12−メトキシ−5,6,7,12−テトラヒドロジベンゾ[c,f][1,5]アザスチボシンによる二酸化炭素の固定
ビス(6−t−ブチル−5,6,7,12−テトラヒドロジベンゾ[c,f][1,5]アザスチボシン)オキシド50mg(0.066mmol)を窒素雰囲気下シュレンク型ガラス器具に入れ、無水メタノール20mLを加え、室温で2日間撹拌することにより、6−t−ブチル−12−メトキシ−5,6,7,12−テトラヒドロジベンゾ[c,f][1,5]アザスチボシンを調製した。一旦溶媒を留去後、無水メタノール5mLを加え、1.5気圧の二酸化炭素雰囲気下で室温、さらに-30℃で放置することにより結晶化させることにより、(6−t−ブチル−5,6,7,12−テトラヒドロジベンゾ[c,f][1,5]アザスチボシン)メチルカーボナートを無色結晶として得た(49mg、83%)。生成物の構造は、元素分析、NMR解析及びX線構造解析により確認した。
元素分析: 計算値(C20H24SbNO3)C, 53.60; H, 5.40; N, 3.13. 実測値 C, 53.54; H, 5.36; N, 2.97.
1H NMR (CDCl3, 499.1MHz): δ 1.35(9H, s), 3.82 (3H, s), 3.95 (2H, d, J=15.5), 4.37(2H, d, J=15.5), 7.09(2H, d, J=7.5), 7.22(2H, td, J=1.2, 7.5), 7.30(2H, t, J=7.0), 7.86 (2H, d, J=7.5). 13C NMR (CDCl3, 125.4MHz): δ 27.11, 56.92, 57.38, 60.38, 124.77, 128.56, 128.86, 134.32, 141.82, 145.35, 159.37.
単結晶X線構造解析で得られた構造図を図4に示す(水素原子は省略してある)。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の有機アンチモン化合物は、新規な有機アンチモン化合物への中間体として有用であるばかりか、二酸化炭素との結合力が優れているところから、二酸化炭素センサとして用いることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例2の化合物の単結晶X線構造解析で得られた構造図
【図2】実施例3の化合物の単結晶X線構造解析で得られた構造図
【図3】実施例4の化合物の単結晶X線構造解析で得られた構造図
【図4】実施例5の化合物の単結晶X線構造解析で得られた構造図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、Rは炭素数1−20のアルキル基(該アルキル基は1位以外の部位が炭素数1−10のアルコキシ基で置換されていてもよい)、炭素数1−10のシクロアルキル基、アリール基(該アリール基は炭素数1−10のアルキル基、炭素数1−10のアルコキシ基、塩素原子、フッ素原子で任意に置換されていてもよい)、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、を意味し、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1−20のアルキル基、炭素数1−20のアルコキシ基を意味する)で表されるアンチモン化合物。
【請求項2】
一般式(II)
【化2】

(式中、R〜Rは、それぞれ前項と同じ意味を示す)で表されるアンチモン化合物。
【請求項3】
一般式(III)
【化3】

(式中、R〜Rは、それぞれ前項と同じ意味を示し、Rは炭素数1−20のアルキル基(該アルキル基は1位以外の部位が、フッ素原子、アミノ基(該アミノ基は炭素数1−10のアルキル基、フェニル基、ベンジル基で任意に置換されていてもよい)、炭素数1−10のアルコキシ基、炭素数1−10のアルキルチオ基、フェニルチオ基で任意に置換されていてもよい)、炭素数1−20のシクロアルキル基、アリール基(該アリール基は炭素数1−20のアルキル基、炭素数1−20のアルコキシ基、炭素数1−10のパーフルオロアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アミノ基(該アミノ基は炭素数1−10のアルキル基、フェニル基、ベンジル基で任意に置換されていてもよい)、アセチル基、ベンゾイル基、炭素数1−20のアルコキシカルボニル基、炭素数1−20のアルキルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、で任意に置換されていてもよい)で表されるアンチモン化合物。
【請求項4】
一般式(IV)
【化4】

(式中、Xは脱離基を意味し、R〜Rは、それぞれ前項と同じ意味である。)と
一般式(V)
M(OH)n (V)
(式中、Mは金属を意味し、nは金属Mの価数を意味する)で表される化合物とを、反応させることによる一般式(I)および(II)で表されるアンチモン化合物の製造方法。
【請求項5】
一般式(IV)で表されるアンチモン化合物と
一般式(VI)
M(OR)n (VI)
(式中、M、nは前項と同じ意味であり、Rは請求項3と同じ意味である。)で表される化合物とを反応させることによる一般式(III)で表されるアンチモン化合物の製造方法。
【請求項6】
一般式(I)で表されるアンチモン化合物と
一般式(VII)
OH (VII)
(式中、Rは前項と同じ意味を示す)で表される化合物とを反応させることによる一般式(III)で表されるアンチモン化合物の製造方法。
【請求項7】
一般式(II)で表されるアンチモン化合物と一般式(VII)で表される化合物とを反応させることによる一般式(III)で表されるアンチモン化合物の製造方法。
【請求項8】
一般式(IV)においてXがハロゲン原子である請求項4に記載の一般式(I)および(II)で表されるアンチモン化合物の製造方法。
【請求項9】
一般式(IV)においてXがハロゲン原子である請求項5に記載の一般式(III)で表されるアンチモン化合物の製造方法。
【請求項10】
一般式(V)においてMがアルカリ金属またはアルカリ土類金属である請求項4に記載の一般式(I)および(II)で表されるアンチモン化合物の製造方法。
【請求項11】
一般式(VI)においてMがアルカリ金属またはアルカリ土類金属である請求項5に記載の一般式(III)で表されるアンチモン化合物の製造方法。
【請求項12】
一般式(V)においてMがアルカリ金属またはアルカリ土類金属である請求項8に記載の一般式(I)および(II)で表されるアンチモン化合物の製造方法。
【請求項13】
一般式(VI)においてMがアルカリ金属またはアルカリ土類金属である請求項9に記載の一般式(III)で表されるアンチモン化合物の製造方法。
【請求項14】
一般式(IV)においてXがフッ素または塩素原子である請求項4に記載の一般式(I)および(II)で表されるアンチモン化合物の製造方法。
【請求項15】
一般式(IV)においてXがフッ素または塩素原子である請求項5に記載の一般式(III)で表されるアンチモン化合物の製造方法。
【請求項16】
一般式(V)においてMがアルカリ金属である請求項4に記載の一般式(I)および(II)で表されるアンチモン化合物の製造方法。
【請求項17】
一般式(VI)においてMがアルカリ金属である請求項5に記載の一般式(III)で表されるアンチモン化合物の製造方法。
【請求項18】
一般式(V)においてMがアルカリ金属である請求項8に記載の一般式(I)および(II)で表されるアンチモン化合物の製造方法。
【請求項19】
一般式(VI)においてMがアルカリ金属である請求項9に記載の一般式(III)で表されるアンチモン化合物の製造方法。
【請求項20】
一般式(V)においてMがアルカリ金属である請求項14に記載の一般式(I)および(II)で表されるアンチモン化合物の製造方法。
【請求項21】
一般式(VI)においてMがアルカリ金属である請求項15に記載の一般式(III)で表されるアンチモン化合物の製造方法。
【請求項22】
一般式(I)、一般式(II)又は一般式(III)から選ばれる有機アンチモン化合物の一つを、検知部材として用いた二酸化炭素検出センサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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