有機ポリマーモノリスから構成される分離媒体、これを用いた逆相液体クロマトグラフィー用カラム、及びそれらの製造方法
【課題】逆相分離特性に優れた長鎖アシル基を導入した有機ポリマーモノリス分離媒体を提供する。
【解決手段】分離媒体は、炭素数8〜24のアシル基を有する有機ポリマーモノリスで構成される。前記有機ポリマーモノリスは、下記式1、式2、及び式3から選ばれる少なくとも1つの基を有するのが好ましく、アシル基の炭素数の平均は、例えば、16〜20である。
−C(OR1)−C(OH)− …(1)
−C(OR1)−C(OR2)− …(2)
−C(OR1)−C(A)− …(3)
(式中、R1及びR2は、同一の又は互いに異なる、炭素数8〜24のアシル基を示す。Aは、アンモニア残基又は一級アミン残基を示す)
【解決手段】分離媒体は、炭素数8〜24のアシル基を有する有機ポリマーモノリスで構成される。前記有機ポリマーモノリスは、下記式1、式2、及び式3から選ばれる少なくとも1つの基を有するのが好ましく、アシル基の炭素数の平均は、例えば、16〜20である。
−C(OR1)−C(OH)− …(1)
−C(OR1)−C(OR2)− …(2)
−C(OR1)−C(A)− …(3)
(式中、R1及びR2は、同一の又は互いに異なる、炭素数8〜24のアシル基を示す。Aは、アンモニア残基又は一級アミン残基を示す)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆相液体クロマトグラフィーに有用な分離媒体、カラムなどに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィーに、近年、モノリス型の分離媒体が使用されている。モノリスは多孔質連続構造体の一種であり、その流路サイズおよび骨格サイズを制御することで分離能の向上と分析時間の短縮の両立が可能となる。
【0003】
モノリス型の分離媒体としては、シリカ系のもの(特許文献1;非特許文献1、2)と有機ポリマー系のもの(特許文献2〜4;非特許文献3〜6)がある。良好な分解能が得られやすい逆相の液体クロマトグラフィーに利用できるシリカ系モノリスカラムの例としては、オクタデシルシリル基(ODS基)を導入したChromolith(Merck社)が挙げられる。しかし本カラムはシリカ粒子カラムと同じ欠点を持ち、例えばpH2以下またはpH9以上の条件で使うと性能が低下しやすい。それに対して、有機ポリマーモノリスは、その合成に利用できるモノマーの種類や重合方法が多様であるため、化学的安定性(例えばpH1〜13での使用可能性)を容易に向上できる。しかし特に低分子化合物の分離能がシリカ系モノリスよりも劣る。
【0004】
逆相での分離特性を向上させるために、有機ポリマーモノリスに長い炭素原子鎖を持つ官能基を導入した例としては非特許文献5がある。本文献では、メタクリル酸長鎖アルキルエステルモノマーをエチレンジメタクリレートやジビニルベンゼンなどの架橋剤の存在下で重合させることで、ワンステップで有機ポリマーモノリスに長鎖アルキル基を導入している。しかし、この方法では、特徴の異なる分離特性を持った分離媒体を複数タイプ作ろうとした場合、C18、C8、C4、フェニル、シアノプロピルなどの導入官能基に応じて異なるモノマーを使用しなければならない。本文献にも記載されている様に、モノマー種を変えると、モノリス構造を形成しうるゲル化条件は変化する。多岐に渡る条件パラメータを検討して使用モノマーごとに適切なゲル化条件を見つけ出すのは作業負担が過大となる。
【0005】
これに対し、最適条件で作製されたモノリスに、所望の分離特性を示す各種官能基を後から導入することができれば、モノリス構造体の作製条件の最適化をモノマーごとに繰り返す必要がなく、産業上有利である。また、理論段数などの分離能の一部は原料となるモノリスの構造、すなわち作製条件に依存するところが大きく、上記方法では原料のモノリスの優れた点を受け継ぎつつ、各種分離特性(逆相分離特性、イオン交換能など)を改善できる。
【0006】
反応活性の高いエポキシ基を有する有機ポリマーモノリスは、様々な分離特性の官能基を導入するのに適している。
各種官能基を導入したモノリスを作製するための様々な研究が行われており(特許文献1、3、非特許文献5など)、例えばBIA SEPARATION社からは、イオン交換基、疎水基、プロテインAを修飾したCIM(BIA SEPARATION社登録商標)モノリス製品が市販されている。しかしながら、優れた逆相分離特性を与える長鎖アシル基をエポキシ系ポリマーモノリスに導入した例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3317749号公報
【特許文献2】国際公開第93/07945号パンフレット(特表平7−501140号公報)
【特許文献3】国際公開第2007/083348号パンフレット
【特許文献4】特開2006−15333号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】H.Minakuchi他、“Anal.Chem.”、1996年、第68巻、p.3498
【非特許文献2】F.Svec他、“Ind.Eng.Chem.Res.”、1999年、第38巻、p.34
【非特許文献3】H.Zou他、“J.Chromatogr.A”、2002年、第954巻、p.5
【非特許文献4】P.Coufal他、“J.Chromatogr.A”、2002年、第946巻、p.99
【非特許文献5】梅村知也他、“分析化学”、2008年、第57巻、p.517
【非特許文献6】B.Mayr他、“Anal.Chem.”、2001年、第73巻、p.4071
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の様に、逆相分離特性に優れた長鎖アシル基を導入した有機ポリマーモノリスの作製例がない理由の一つとして、長い炭素鎖を持つアシル化剤の特性およびモノリスの構造に起因する製造上の問題点が挙げられる。一般的に、長鎖アシル基の導入には脂肪酸ハライドが使用されるが、塩基触媒を併用した場合、塩類などの有機溶媒には溶けにくい析出物を生じやすいことが知られている。有機系ポリマー粒子にアシル基を導入する場合には、バッチ式でアシル化反応を実施するために析出物が生じても問題とならない。しかし、モノリスの場合、溶液化した反応試剤をモノリスに通液してアシル化反応を実施するのが一般的であるため、こうした析出物はカラム閉塞やそれに伴う送液圧力の著しい上昇を引き起こし、モノリス構造が崩壊する。モノリス構造が崩壊すると分離能が著しく低下するため、こうした析出物は致命的である。すなわち、有機ポリマーモノリスに長鎖アシル基を導入する上で、こうした析出物の生成を抑制することが重要である。一方、特許文献4には、塩化ブタノイルを2wt%のピリジン溶液とした後、グリセリンジメタクリレート系ポリマーモノリスに通液して炭素数4のアシル基を導入した例が記載されている。しかし、炭素数が4より大きいアシル基を導入した例は記載されていない。本発明者らは、特許文献4の反応条件を参照し、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートとビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンの付加重合体から構成されるエポキシ系ポリマーモノリスの粒状化物の長鎖アシル化を試みた。この検討では、アシル化剤をとして炭素数18のステアリン酸クロライドを用い、特許文献4記載の条件で、或いは更に苛酷な条件(ステアリン酸クロライドの10wt/vol%ピリジン溶液の使用;反応温度60℃、反応時間3時間)でアシル化を実施してみたところ、いずれの場合もアシル化反応はほとんど進行しなかった。従来の技術では、有機ポリマーモノリスに、逆相分離特性に優れた長鎖アシル基を導入することは困難である。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、逆相分離特性に優れた長鎖アシル基を導入した有機ポリマーモノリス分離媒体、およびその利用技術を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、エポキシ基、或いは水酸基を有する有機ポリマーモノリスに、長鎖アシル基を導入するのに有用な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、析出物を生じさせることなく、有機ポリマーモノリスに長鎖アシル基(例えば、炭素数8〜24程度のアシル基)を導入できる技術について鋭意検討した結果、含窒素複素環化合物と非プロトン性極性溶媒とを併用してアシル化剤を溶解することで初めて、析出物の抑制と高いアシル基導入効率を両立でき、逆相分離特性に優れた分離媒体およびカラムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを包含する。
【0013】
本発明の一つは、炭素数8〜24のアシル基を有する有機ポリマーモノリスで構成される分離媒体である。前記有機ポリマーモノリスは、下記式1、式2、又は式3で表される基を有するのが好ましく、アシル基の炭素数の平均は、例えば、16〜20である。
−C(OR1)−C(OH)− …(1)
−C(OR1)−C(OR2)− …(2)
−C(OR1)−C(A)− …(3)
(式中、R1及びR2は、同一の又は互いに異なる、炭素数8〜24のアシル基を示す。Aは、アンモニア残基又は一級アミン残基を示す)
また前記有機ポリマーモノリスは、2官能性以上のエポキシ化合物(特にトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート)と2官能性以上のアミン化合物(特にビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン)の付加重合体であるのが好ましい。
【0014】
本発明の他の一つは、前記分離媒体が充填されている逆相液体クロマトグラフィー用カラムである。このカラムの内径は、例えば、0.1mm以上2mm以下である。
本発明のその他の一つは、前記カラムを備えた逆相液体クロマトグラフである。
【0015】
本発明のさらに他の一つは、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートとビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンの付加重合体から構成される有機ポリマーモノリスの未反応エポキシ基を水和した有機ポリマーモノリスである。この有機ポリマーモノリスには、炭素数8〜24のアシル基を化学結合させることができる。
【0016】
本発明の別の一つは、炭素数8〜24のアシル化剤(脂肪酸ハライドなど)と含窒素複素環化合物(ピリジンなど)と非プロトン性極性溶媒(N,N−ジメチルホルムアミドなど)を含む混合物を溶液にした後、水酸基を有する有機ポリマーモノリスに通液して前記アシル基を化学結合させることを特徴とする分離媒体の製造方法である。前記水酸基を有する有機ポリマーモノリスは、予め、過塩素酸溶液で洗浄することが推奨される。
【0017】
本発明のさらに別の一つは、カラムの製造方法である。この製造方法では、水酸基を有する有機ポリマーモノリスをカラム容器の内壁に存在する官能基との化学結合を介して前記カラム容器内に固定する以外は、上述の分離媒体の製造方法と同様である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の分離媒体、逆相液体クロマトグラフィー用カラム、又は逆相液体クロマトグラフによれば、有機ポリマーモノリスに長鎖アシル基が導入されているため、逆相分離特性を良好にできる。
本発明の有機ポリマーモノリスは、未反応のエポキシ基が水和されているため、本発明の分離媒体乃至カラムの有用な原料乃至中間体として使用できる。
本発明の分離媒体の製造方法又はカラムの製造方法によれば、炭素数8〜24のアシル化剤と含窒素複素環化合物と非プロトン性極性溶媒を含む混合物を溶液にしてから水酸基を有する有機ポリマーモノリスに通液している為、産業上有用なエポキシ系ポリマーモノリス或いは前記水酸基を有する有機ポリマーモノリスに、逆相分離特性に優れた長鎖アシル基を導入することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、参考例1のエポキシ系ポリマーモノリス粒状化物の赤外吸収スペクトルである。
【図2】図2は、参考例2のジオール体の赤外吸収スペクトルである。
【図3】図3は、参考例3のアシル化反応1後の粒状化物の赤外吸収スペクトルである。
【図4】図4は、参考例4のアシル化反応2後の粒状化物の赤外吸収スペクトルである。
【図5】図5は、参考例5のアシル化反応3後の粒状化物の赤外吸収スペクトルである。
【図6】図6は、実施例1のステアロイル基導入モノリスの赤外吸収スペクトルである。
【図7】図7は、実施例1のステアロイル基導入モノリスの走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】図8は、実施例1のステアロイル基導入モノリス充填カラムを用いたアルキルフェノン類の分離結果を示すクロマトグラムである。
【図9】図9は、実施例1で得られるエポキシ系ポリマーモノリス充填カラム又はステアロイル基導入モノリス充填カラムを用いたアルキルフェノン類の分離結果を示すクロマトグラムである。
【図10】図10は、実施例1で得られるポロゲン除去前のエポキシ系ポリマーモノリス充填カラムのブリードをLCMS測定したマススペクトルである。
【図11】図11は、実施例2で得られるポロゲン除去後の4本のエポキシ系ポリマーモノリス充填カラムのブリードをLCMS測定したマススペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の分離媒体は、有機ポリマーモノリスで構成されており、前記有機ポリマーモノリスが長鎖アシル基を有する点に特徴がある。この長鎖アシル基を有する有機ポリマーモノリスを、以下、長鎖アシル化モノリスと称する。長鎖アシル基の炭素数は、8〜24程度、好ましくは14〜22程度、さらに好ましくは16〜19程度、特に好ましくはODSと同じく18である。このような長鎖アシル化モノリスは、逆相分離特性に優れている。また炭素数が異なる複数のアシル基を有していてもよく、この場合、アシル基の平均炭素数は、7〜25、好ましくは13〜23、さらに好ましくは16〜20である。
【0021】
長鎖アシル基の導入の程度は、例えば、赤外吸収スペクトル(IR)により決定できる。すなわちピークベースとピークトップの%Tの差を「ピーク強度」と定義した時、アシル基(2900cm-1付近)のピーク強度S1と水酸基(3300cm-1付近)のピーク強度S2の比(S1/S2)でアシル基の導入の程度を評価できる。前記比(S1/S2)は、例えば、1以上、好ましくは2以上、さらに好ましくは5以上、最も好ましくは7以上である。
【0022】
前記長鎖アシル基は、有機ポリマーモノリスに化学結合しており、その結合形態は逆相分離能に影響を与えないため、特に限定されない。しかし、長鎖アシル基は、後述する好ましい製造方法に対応する化学結合を形成してもよい。この場合、前記長鎖アシル基は、通常、酸素原子又は窒素原子に結合しており、好ましくは酸素原子に結合して長鎖アシルオキシ基を形成する。長鎖アシルオキシ基を形成する場合、有機ポリマーモノリスは、例えば、下記式1、式2、及び式3から選ばれる少なくとも1つの基を有する。
−C(OR1)−C(OH)− …(1)
−C(OR1)−C(OR2)− …(2)
−C(OR1)−C(A)− …(3)
(式中、R1及びR2は、同一の又は互いに異なる、長鎖アシル基を示す。Aは、アンモニア残基又は一級アミン残基を示す。なお基Aにおいて、窒素原子に結合する水素原子は、R1又はR2で置換されていてもよい)
【0023】
上記長鎖アシル化モノリスは、好ましくはモノリス構造を有する有機ポリマーを合成した後、アシル化反応によって長鎖アシル基を導入(以下、後導入という)することによって製造される。アシル基を後導入することにより、有機ポリマーモノリスの合成段階では、モノマー種をアシル基に応じて変更する必要がなく、ゲル化条件もアシル基に応じて変更する必要がないため、ゲル化条件の設定が容易になる。
【0024】
前記モノリス構造を有する有機ポリマーとしては、アシル化剤と反応しうる官能基を有するものであれば利用できる(以下、アシル化剤と反応しうる官能基を反応性官能基といい、これを有する有機ポリマーモノリスを反応性モノリスという)。反応性官能基としては、水酸基、アミノ基など、好ましくは水酸基が例示できる。
【0025】
前記水酸基やアミノ基を有機ポリマーモノリスに導入する方法は特に限定されず、水酸基、アミノ基、又はこれらの前駆体となる基を有するモノマーを重合してモノリス構造を有する有機ポリマーを合成すればよい。好ましい有機ポリマーモノリスは、前記前駆体となる基としてエポキシ基を有するエポキシ系ポリマーモノリスである。エポキシ基は、水和によって水酸基(ジオール)になり、アンモニアまたは一級アミンを付加することによって水酸基とアミノ基になる。エポキシ系ポリマーモノリスを水和する場合、モノリスの形態に応じて適切な処理方法が選択できる。例えばエポキシ系ポリマーモノリスは、後述する様に、カラムに充填乃至固定されているのが好ましい。この場合、このエポキシ系ポリマーモノリスが充填乃至固定されたカラムに希酸を通液すればよい。通液には、ポンプやシリンジなどを利用できる(以下、カラムに液体を通液する場合において同様)。希酸としては希塩酸、希硫酸など一般的なものが使用できるが、腐食性の少ない希硫酸が扱いやすい。希硫酸の濃度は、例えば、0.02〜0.2mol/L程度が適しており、0.1mol/L硫酸を用いた場合、50℃、3時間程度で水和は完結する。
【0026】
前記エポキシ系ポリマーモノリスは、公知の製造方法によって得ることができ、例えば、エポキシ系モノマーを重合してもよいが、2官能性以上のエポキシ化合物と2官能性以上のアミン化合物を付加重合するのが好ましく、3官能性のエポキシ化合物(特にトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート)と2官能性のアミン化合物(特にビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン)を付加重合するのがより好ましい。これらの付加重合方法は、例えば、特許文献3(国際公開第2007/083348号パンフレット)に詳述されている。2官能性以上のエポキシ化合物と2官能性以上のアミン化合物を付加重合すると、得られるエポキシ系ポリマーモノリス自体が分離特性に優れる様になる。しかもこのエポキシ系ポリマーモノリスは、未反応のエポキシ基を多く有しており、水和或いはアンモニアまたは一級アミンの付加など(特に水和)によって反応性官能基(特に水酸基(ジオール))に変換でき、多くの長鎖アシル基を導入できる。なお前記2官能性以上のエポキシ化合物及び/又は2官能性以上のアミン化合物は、光学活性体であってもよい。
【0027】
3官能性エポキシ化合物と2官能性アミン化合物の割合(前者/後者;質量比)は、モノリスの形成が可能である限り特に制限されないが、例えば、90/10〜70/30程度、好ましくは85/15〜75/25程度、さらに好ましくは83/17〜78/22程度である。
【0028】
上述したエポキシ系ポリマーモノリス、反応性モノリスなどは好ましくはカラムに充填乃至固定されているのが好ましい。これらがカラムに充填乃至固定されていると、アシル化することによって分離媒体を充填したカラムを直接製造することができる。モノリスをカラム容器に固定する方法は特に限定されず、例えば、(方法1)別容器中で作製されたモノリスを熱収縮チューブなどで包んだ後、カラム容器に充填し固定してもよいが、(方法2)前記方法1でカラム容器を使用すればモノリス作製時に、直接、モノリス充填カラムを作製できる。前記カラムとしてキャピラリーカラム又はセミミクロカラムを選択する場合、後者の方法2が実施しやすい。なおキャピラリーカラム又はセミミクロカラムの内径は、例えば、0.1mm以上2mm以下、好ましくは0.5mm以上1.6mm以下、さらに好ましくは0.7mm以上1.5mm以下である。
【0029】
後者の方法2の場合、非特許文献6(Anal.Chem. 2001年、第73巻、p.4071)に記載されているように、原料モノマーの官能基と化学結合しうる官能基(以下、モノマー連結基という)をカラム容器の内壁に導入しておき、重合(ゲル化)するときに、内壁とモノリスとを化学結合させて固定するのが好ましい。このモノマー連結基の導入方法は特に限定されないが、例えば、カラムの内壁をシランカップリング剤で処理することでモノマー連結基を導入できる。シランカップリング剤の種類は、原料モノマーに応じて適宜選択でき、例えばエポキシ系モノマーを使用してモノリスを合成する場合には、エポキシ系又はアミノ系のシランカップリング剤を使用すればよい。
【0030】
以上の反応性モノリスに長鎖アシル基を導入する場合、上述した様に、アシル化剤が使用される。アシル化剤としては、導入するアシル基と同じ炭素数の酸ハライド、酸無水物などが挙げられる。長鎖アシル基を反応性よく導入するためには、脂肪酸ハライド(脂肪酸ブロマイド、脂肪酸クロライドなど)が好ましい。アシル化剤は、単一の化合物であってもよいが、市販の脂肪酸ハライドと同様に炭素数が異なる複数の化合物の混合物であってもよい。
【0031】
ところで前記アシル化反応では、含窒素複素環化合物と非プロトン性極性溶媒とで前記アシル化剤を溶解することが重要である。このようにして得られた溶液で反応性モノリスを処理すると、反応中に析出物が生じるのを防止できる。析出物が生じると、モノリスの孔が閉塞してアシル化反応が停止するのに対して、析出物を防止することによって長鎖アシル基を十分に導入することができる。
【0032】
前記含窒素複素環化合物は、アシル化反応で塩基として作用する。塩基としてトリエチルアミンのような非環式3級アミンを用いた場合には、析出物を抑制することができないのに対して、含窒素複素環化合物を用いれば、非プロトン性極性溶媒と組み合わせることで、析出物を抑制できる。含窒素複素環化合物としては、例えば、ピリジン、ピコリン、3,5−ジエチルピリジン、キノリンなど、好ましくはピリジンが挙げられる。これら含窒素複素環化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0033】
非プロトン性極性有機溶媒も、前記アシル化反応で重要な役割を果たす。上述したように、含窒素複素環化合物(塩基)と溶媒を兼ねてピリジンを使用してステアリン酸クロライドなどの長鎖脂肪酸ハライドを溶解しても、非プロトン性極性有機溶媒を使用しない場合には、アシル化はほとんど進行しない。長鎖アシル基の導入には、塩基として含窒素複素環化合物を使用するだけでなく、溶媒として非プロトン性極性溶媒を併用することが必要である。含窒素複素環化合物と非プロトン性極性溶媒を併用することで、塩類の析出を抑制しつつ反応性モノリスをアシル化でき、かつ長鎖アシル基の導入効率を高めることができる。非プロトン性溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなど、好ましくはDMFが例示できる。これら非プロトン性極性溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0034】
含窒素複素環化合物と非プロトン性極性溶媒の組合せ及び量は、アシル化剤を容易に溶解でき、かつアシル化反応時に析出物を生じない範囲で選択又は設定できる。例えば、80℃以下、好ましくは10〜70℃程度、さらに好ましくは20〜60℃程度の温度でアシル化剤を溶解可能な範囲で選択又は設定できる。
アシル化剤、含窒素複素環化合物、及び非プロトン性極性溶媒の最も好ましい組み合わせは、長鎖脂肪酸ハライド、ピリジン、DMFである。
【0035】
含窒素複素環化合物と非プロトン性極性溶媒の総容量も、上述したようにアシル化剤を容易に溶解でき、かつアシル化反応時に析出物を生じない範囲で選択するのが好ましく、アシル化剤1質量部に相当する容量(ただしアシル化剤の比重を1と仮定する)に対して、例えば、10倍以上、好ましくは10〜17倍程度、さらに好ましくは14〜16倍程度である。
【0036】
含窒素複素環化合物と非プロトン性極性溶媒の容量比(前者/後者)も上述した特性を達成できる範囲で選択するのが好ましく、例えば、1/27〜2/1(即ち3.7/96.3〜66.7/33.3)、好ましくは4/96〜60/40、さらに好ましくは5/95〜55/45である。
【0037】
アシル化反応の温度は、析出物の抑制面、反応性面からみて60℃以上(例えば、60〜150℃程度)が好ましく、80℃以上(例えば、80〜120℃程度)であってもよい。ただし、アシル基の導入率が低くても良いならばこの限りではない。反応温度の上限は使用する設備や容器の材質によって異なるが、100℃以下が扱いやすい。
上記アシル化反応では、本発明の目的を阻害しない範囲で、他の溶媒や添加剤を併用しても差し支えない。
【0038】
前記アシル化剤の溶液による処理では、反応性モノリスの形態に応じて適切な処理方法を選択できる。例えば、前記反応性モノリスは、上述した様に、カラムに充填乃至固定されているのが好ましい。この場合、アシル化剤と含窒素複素環化合物と非プロトン性極性溶媒を含む溶液状の混合物を、反応性モノリスを充填乃至固定したカラムに通液すればよい。
【0039】
ところで長鎖アシル化モノリスの製造原料となるエポキシ系モノリス又は反応性モノリス中には、通常、侠雑物が残留する。特許文献3(国際公開第2007/083348号パンフレット)の有機ポリマーモノリス(本発明のエポキシ系モノリス又は反応性モノリスに相当)を利用する場合、モノリス構造を形成するゲル化過程において使用されるポロゲン(ポリエチレングリコール)が、モノリス骨格に残留することがある。このような夾雑物は、少ないほど好ましい。例えば、本発明のモノリス分離媒体(長鎖アシル化モノリス)又はそれを充填したカラムを、LC/MSのような高感度を要求される質量分析に使用する場合、前記夾雑物が少ないほど、良好な測定結果が得られる。
【0040】
上記ポロゲンを除去する場合、反応性モノリスとアシル化剤とを反応させる前に、過塩素酸溶液でモノリス(エポキシ系モノリス、反応性モノリスなど。好ましくは水酸基を有する反応性モノリス)を洗浄すればよい。この過塩素酸溶液としては、過塩素酸水溶液とアルコール(特にメタノール)の混合液が好ましい。過塩素酸水溶液の濃度は、例えば、0.01〜1mol/L、好ましくは0.05〜0.5mol/L、さらに好ましくは0.1〜0.2mol/Lである。過塩素酸水溶液とアルコールの容量比(前者/後者)は、例えば、5/95〜60/40、好ましくは10/90〜50/50、さらに好ましくは20/80〜40/60である。洗浄温度は特に限定されないが、例えば、30〜80℃程度、好ましくは40〜70℃程度、さらに好ましくは50〜65℃程度、特に好ましくは60℃である。
【0041】
エポキシ系モノリス、反応性モノリスなどは、上述した様に、カラムに充填乃至固定されているのが好ましい。この場合、カラムに前記過塩素酸溶液を通液すればよい。洗浄時の流速は、例えば、0.1〜5mm/sec(特に1〜2mm/sec)であり、洗浄時間(送液時間)は、例えば、1〜10時間(特に5時間)である。なお洗浄温度を調節する場合、カラムを恒温槽に入れればよい。
【0042】
過塩素酸溶液で洗浄した後は、HPLC移動相を水、アルコール(特にメタノール)の順に交換して、カラム内の移動相を置換することが推奨される。HPLC移動相の交換する時の流速は、過塩素酸溶液洗浄時と同様であればよく、各移動相の交換時間(送液時間)は、例えば、10分〜2時間(特に30分)である。
【0043】
上述したような製造方法によって初めて有機ポリマーモノリスに長鎖アシル基を後導入できる。長鎖アシル基を有する有機ポリマーモノリス(長鎖アシル化モノリス)は、逆相分離特性に優れているため、良好な分離媒体として使用できる。従ってこの分離媒体(長鎖アシル化モノリス)を充填したカラムは、特に逆相モードの液体クロマトグラフィーに好適に使用できる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0045】
参考例1(ポリマーモノリスの作製と粒状化)
エポキシ化合物として光学活性体であるSSS体のトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート(TEPIC−S:日産化学社の商品名)、アミン化合物としてビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ポロゲンとして分子量が200のポリエチレングリコール(PEG200:ナカライテスク社の商品名)を使用した。特許文献3(国際公開第2007/83348号パンフレット)に記載の方法に従って、前記化合物の混合物をサンプル管中でゲル化してエポキシ系ポリマーモノリスを作製した。得られたモノリスを砕いて粒状化し、メタノール、塩化メチレンで洗浄した後、乾燥した。
【0046】
参考例2(エポキシ基のジオール化反応)
参考例1で得られた粒状化モノリス1.6gに濃度0.1mol/Lの硫酸48mLを加え、50℃で3時間攪拌した。粒状物をろ過し、水、メタノール、塩化メチレンで洗浄した後、乾燥し、ジオール体を得た。
【0047】
参考例3(アシル化反応1)
ステアリン酸クロライド200mgにピリジン2mLを加えて混合し、60℃に加熱して溶解させた。この溶液に参考例2で得られたジオール体40mgを添加し、60℃で3時間攪拌した。反応後、粒状物をろ過し、塩化メチレン、メタノール、水で洗浄した後、乾燥した。
【0048】
参考例4(アシル化反応2)
ステアリン酸クロライド1gにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)10mL、ピリジン550mgを加えて混合し、30℃に加熱して溶解させた。この溶液に参考例2で得られたジオール体100mgを添加し、60℃で3時間攪拌した。反応後、粒状物をろ過し、塩化メチレン、メタノール、水で洗浄した後、乾燥した。
【0049】
参考例5(アシル化反応3)
ステアリン酸クロライド1gにDMF5mL、ピリジン5mLを加えて混合し、30℃に加熱して溶解させた。この溶液に参考例2で得られたジオール体100mgを添加し、100℃で2時間攪拌した。反応後、粒状物をろ過し、塩化メチレン、メタノール、水で洗浄した後、乾燥した。
【0050】
赤外吸収スペクトル
参考例1で得られたエポキシ系ポリマーモノリスの粒状化物、及び参考例2で得られたジオール体の赤外吸収スペクトルを図1、図2に示す。図1及び図2から明らかな様に、ジオール化後は水酸基の吸収が増加した。参考例3〜5(アシル化反応1〜3)によって得られた粒状物の赤外吸収スペクトルを図3〜5に示す。図3(参考例3、DMF不使用)では水酸基の赤外吸収が大きく、アシル化反応の進行を示すステアロイル基の赤外吸収はわずかであり、アシル基(2900cm-1付近)のピーク強度S1と水酸基(3300cm-1付近)のピーク強度S2の比(S1/S2)は、0.9であった。これに対し、図4、図5(参考例4〜5、DMF使用)では水酸基の赤外吸収がほぼ無くなり、ステアロイル基の吸収が大きくなり、ピーク強度比(S1/S2)は、33(参考例4)又は60以上(参考例5)であった。
【0051】
実施例1
(1)ポリマーモノリスの作製
エポキシ化合物として「TEPIC−S」(商品名)、アミン化合物としてBACM、ポロゲンとしてPEG200を使用し、ガラスライニングチューブ(内径1mm×長さ15cm)中、特許文献3に記載の方法に従ってエポキシ系ポリマーモノリスを作製した。ガラスライニングチューブは事前に(3−アミノプロピル)トリエトキシシランで処理したものを使用した。
【0052】
(2)エポキシ基のジオール化反応
上記で製造されたエポキシ系ポリマーモノリス充填カラムに水を通液した。このカラムを50℃に温調しながら濃度0.1mol/Lの硫酸を3時間通液した。さらに水を通液してモノリスを洗浄することで、ジオール体充填カラムを得た。
【0053】
(3)アシル化反応
上記で製造されたジオール体充填カラムに予めDMFとピリジンの混合溶媒を通液した。一方、ステアリン酸クロライド0.67gにDMF10mLとピリジン0.37mLを加えて混合し、加熱して溶解させた。この溶液5mLを、前記ジオール体充填カラムに60℃で3時間かけて通液した。その後DMFとピリジンの混合溶媒を通液してモノリスを洗浄し、移動相を置換することで、ステアロイル基導入モノリス(カラム)を得た。
【0054】
(4)赤外吸収スペクトル
上記ステアロイル基導入モノリスの赤外吸収スペクトルを図6に示す。図6の例でも、図4及び図5の例と同様に、ステアロイル基の吸収が認められる。
【0055】
(5)走査型電子顕微鏡
上記ステアロイル基導入モノリスを充填したカラムを切断し、断面の走査型電子顕微鏡写真を撮影した。得られた写真を図7に示す。図7より明らかな様に、充填物はアシル化反応後もモノリス構造を維持しており、アシル化反応による構造崩壊は認められない。
【0056】
(6)液体クロマトグラフィー分析
上記ステアロイル基導入モノリスを充填したカラムを使用して、炭素数の異なる3つのアルキルフェノン(バレロフェノン、ヘキサノフェノン、ヘプタノフェノン)を下記条件I又はIIで液体クロマトグラフィー分析した。得られたクロマトグラムを図8に示す。炭素数の異なる各アルキルフェノンが分離しており、溶出順は逆相分離特性を示した。
【0057】
また、上記エポキシ系モノリスを充填したカラム、又はステアロイル基導入モノリスを充填したカラムを用い、オクタノフェノンとヘプタノフェノンを下記条件IIIで液体クロマトグラフィー分析した。得られたクロマトグラムを図9に示す。図9から明らかな様に、エポキシ系モノリス充填カラムではオクタノフェノンとヘプタノフェノンを分離できないのに対して、ステアロイル基導入モノリスを充填したカラムでは、これらをよく分離できる。オクタノフェノンの理論段数が1623段(保持時間4.6分)のエポキシ系ポリマーモノリスカラムを使用した場合は、アシル化反応後のカラムでもオクタノフェノンの理論段数は同等の1411段(保持時間4.5分)となった。
【0058】
分析条件
移動相(分析条件I):アセトニトリル/水=50/50(体積比)
移動相(分析条件II):アセトニトリル/水=45/55(体積比)
移動相(分析条件III):アセトニトリル/水=60/40(体積比)
検出波長(分析条件I〜III共通):245nm
カラム温度(分析条件I〜III共通):40℃
流速(分析条件I〜III共通):0.05mL/min
【0059】
実施例2
(1)ポロゲン除去
純水300mLに5mLの60質量%HClO4を加えて濃度約0.15mol/LのHClO4水溶液とし、これをメタノール700mLと混和し、脱気することによって洗浄液を調製した。実施例1と同様にして得られたエポキシ系ポリマーモノリス充填カラムを恒温槽で60℃に加熱しつつ、HPLC送液ポンプを用いて流速1mm/secで前記カラムに洗浄液を5時間通液した。洗浄後、HPLC移動相を水、メタノールの順に切り替え、それぞれ30分間通液してカラム中の移動相を交換した。
【0060】
(2)LCMS
上記実施例1の方法で調製されたエポキシ系ポリマーモノリス充填カラムをHPLCに接続し、移動相(水/アセトニトリル=4/6(体積比))を流速0.5mm/secで送液し、移動相の送液開始から数分間のブリードをLCMS測定(検出:ポジティブESI)した。結果を図10に示す。ブリードにはPEGとみられる44刻みのマススペクトル(m/z=217、261、305、249、292等)が含まれていた。
【0061】
一方、実施例2の方法でポロゲンを除去した4本のエポキシ系ポリマーモノリスを同様にしてLCMS測定した。結果を図11に示す。ブリードのマススペクトル強度は十分に小さくなり、PEGとみられるマススペクトルは消失していた。
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆相液体クロマトグラフィーに有用な分離媒体、カラムなどに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィーに、近年、モノリス型の分離媒体が使用されている。モノリスは多孔質連続構造体の一種であり、その流路サイズおよび骨格サイズを制御することで分離能の向上と分析時間の短縮の両立が可能となる。
【0003】
モノリス型の分離媒体としては、シリカ系のもの(特許文献1;非特許文献1、2)と有機ポリマー系のもの(特許文献2〜4;非特許文献3〜6)がある。良好な分解能が得られやすい逆相の液体クロマトグラフィーに利用できるシリカ系モノリスカラムの例としては、オクタデシルシリル基(ODS基)を導入したChromolith(Merck社)が挙げられる。しかし本カラムはシリカ粒子カラムと同じ欠点を持ち、例えばpH2以下またはpH9以上の条件で使うと性能が低下しやすい。それに対して、有機ポリマーモノリスは、その合成に利用できるモノマーの種類や重合方法が多様であるため、化学的安定性(例えばpH1〜13での使用可能性)を容易に向上できる。しかし特に低分子化合物の分離能がシリカ系モノリスよりも劣る。
【0004】
逆相での分離特性を向上させるために、有機ポリマーモノリスに長い炭素原子鎖を持つ官能基を導入した例としては非特許文献5がある。本文献では、メタクリル酸長鎖アルキルエステルモノマーをエチレンジメタクリレートやジビニルベンゼンなどの架橋剤の存在下で重合させることで、ワンステップで有機ポリマーモノリスに長鎖アルキル基を導入している。しかし、この方法では、特徴の異なる分離特性を持った分離媒体を複数タイプ作ろうとした場合、C18、C8、C4、フェニル、シアノプロピルなどの導入官能基に応じて異なるモノマーを使用しなければならない。本文献にも記載されている様に、モノマー種を変えると、モノリス構造を形成しうるゲル化条件は変化する。多岐に渡る条件パラメータを検討して使用モノマーごとに適切なゲル化条件を見つけ出すのは作業負担が過大となる。
【0005】
これに対し、最適条件で作製されたモノリスに、所望の分離特性を示す各種官能基を後から導入することができれば、モノリス構造体の作製条件の最適化をモノマーごとに繰り返す必要がなく、産業上有利である。また、理論段数などの分離能の一部は原料となるモノリスの構造、すなわち作製条件に依存するところが大きく、上記方法では原料のモノリスの優れた点を受け継ぎつつ、各種分離特性(逆相分離特性、イオン交換能など)を改善できる。
【0006】
反応活性の高いエポキシ基を有する有機ポリマーモノリスは、様々な分離特性の官能基を導入するのに適している。
各種官能基を導入したモノリスを作製するための様々な研究が行われており(特許文献1、3、非特許文献5など)、例えばBIA SEPARATION社からは、イオン交換基、疎水基、プロテインAを修飾したCIM(BIA SEPARATION社登録商標)モノリス製品が市販されている。しかしながら、優れた逆相分離特性を与える長鎖アシル基をエポキシ系ポリマーモノリスに導入した例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3317749号公報
【特許文献2】国際公開第93/07945号パンフレット(特表平7−501140号公報)
【特許文献3】国際公開第2007/083348号パンフレット
【特許文献4】特開2006−15333号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】H.Minakuchi他、“Anal.Chem.”、1996年、第68巻、p.3498
【非特許文献2】F.Svec他、“Ind.Eng.Chem.Res.”、1999年、第38巻、p.34
【非特許文献3】H.Zou他、“J.Chromatogr.A”、2002年、第954巻、p.5
【非特許文献4】P.Coufal他、“J.Chromatogr.A”、2002年、第946巻、p.99
【非特許文献5】梅村知也他、“分析化学”、2008年、第57巻、p.517
【非特許文献6】B.Mayr他、“Anal.Chem.”、2001年、第73巻、p.4071
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の様に、逆相分離特性に優れた長鎖アシル基を導入した有機ポリマーモノリスの作製例がない理由の一つとして、長い炭素鎖を持つアシル化剤の特性およびモノリスの構造に起因する製造上の問題点が挙げられる。一般的に、長鎖アシル基の導入には脂肪酸ハライドが使用されるが、塩基触媒を併用した場合、塩類などの有機溶媒には溶けにくい析出物を生じやすいことが知られている。有機系ポリマー粒子にアシル基を導入する場合には、バッチ式でアシル化反応を実施するために析出物が生じても問題とならない。しかし、モノリスの場合、溶液化した反応試剤をモノリスに通液してアシル化反応を実施するのが一般的であるため、こうした析出物はカラム閉塞やそれに伴う送液圧力の著しい上昇を引き起こし、モノリス構造が崩壊する。モノリス構造が崩壊すると分離能が著しく低下するため、こうした析出物は致命的である。すなわち、有機ポリマーモノリスに長鎖アシル基を導入する上で、こうした析出物の生成を抑制することが重要である。一方、特許文献4には、塩化ブタノイルを2wt%のピリジン溶液とした後、グリセリンジメタクリレート系ポリマーモノリスに通液して炭素数4のアシル基を導入した例が記載されている。しかし、炭素数が4より大きいアシル基を導入した例は記載されていない。本発明者らは、特許文献4の反応条件を参照し、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートとビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンの付加重合体から構成されるエポキシ系ポリマーモノリスの粒状化物の長鎖アシル化を試みた。この検討では、アシル化剤をとして炭素数18のステアリン酸クロライドを用い、特許文献4記載の条件で、或いは更に苛酷な条件(ステアリン酸クロライドの10wt/vol%ピリジン溶液の使用;反応温度60℃、反応時間3時間)でアシル化を実施してみたところ、いずれの場合もアシル化反応はほとんど進行しなかった。従来の技術では、有機ポリマーモノリスに、逆相分離特性に優れた長鎖アシル基を導入することは困難である。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、逆相分離特性に優れた長鎖アシル基を導入した有機ポリマーモノリス分離媒体、およびその利用技術を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、エポキシ基、或いは水酸基を有する有機ポリマーモノリスに、長鎖アシル基を導入するのに有用な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、析出物を生じさせることなく、有機ポリマーモノリスに長鎖アシル基(例えば、炭素数8〜24程度のアシル基)を導入できる技術について鋭意検討した結果、含窒素複素環化合物と非プロトン性極性溶媒とを併用してアシル化剤を溶解することで初めて、析出物の抑制と高いアシル基導入効率を両立でき、逆相分離特性に優れた分離媒体およびカラムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを包含する。
【0013】
本発明の一つは、炭素数8〜24のアシル基を有する有機ポリマーモノリスで構成される分離媒体である。前記有機ポリマーモノリスは、下記式1、式2、又は式3で表される基を有するのが好ましく、アシル基の炭素数の平均は、例えば、16〜20である。
−C(OR1)−C(OH)− …(1)
−C(OR1)−C(OR2)− …(2)
−C(OR1)−C(A)− …(3)
(式中、R1及びR2は、同一の又は互いに異なる、炭素数8〜24のアシル基を示す。Aは、アンモニア残基又は一級アミン残基を示す)
また前記有機ポリマーモノリスは、2官能性以上のエポキシ化合物(特にトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート)と2官能性以上のアミン化合物(特にビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン)の付加重合体であるのが好ましい。
【0014】
本発明の他の一つは、前記分離媒体が充填されている逆相液体クロマトグラフィー用カラムである。このカラムの内径は、例えば、0.1mm以上2mm以下である。
本発明のその他の一つは、前記カラムを備えた逆相液体クロマトグラフである。
【0015】
本発明のさらに他の一つは、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートとビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンの付加重合体から構成される有機ポリマーモノリスの未反応エポキシ基を水和した有機ポリマーモノリスである。この有機ポリマーモノリスには、炭素数8〜24のアシル基を化学結合させることができる。
【0016】
本発明の別の一つは、炭素数8〜24のアシル化剤(脂肪酸ハライドなど)と含窒素複素環化合物(ピリジンなど)と非プロトン性極性溶媒(N,N−ジメチルホルムアミドなど)を含む混合物を溶液にした後、水酸基を有する有機ポリマーモノリスに通液して前記アシル基を化学結合させることを特徴とする分離媒体の製造方法である。前記水酸基を有する有機ポリマーモノリスは、予め、過塩素酸溶液で洗浄することが推奨される。
【0017】
本発明のさらに別の一つは、カラムの製造方法である。この製造方法では、水酸基を有する有機ポリマーモノリスをカラム容器の内壁に存在する官能基との化学結合を介して前記カラム容器内に固定する以外は、上述の分離媒体の製造方法と同様である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の分離媒体、逆相液体クロマトグラフィー用カラム、又は逆相液体クロマトグラフによれば、有機ポリマーモノリスに長鎖アシル基が導入されているため、逆相分離特性を良好にできる。
本発明の有機ポリマーモノリスは、未反応のエポキシ基が水和されているため、本発明の分離媒体乃至カラムの有用な原料乃至中間体として使用できる。
本発明の分離媒体の製造方法又はカラムの製造方法によれば、炭素数8〜24のアシル化剤と含窒素複素環化合物と非プロトン性極性溶媒を含む混合物を溶液にしてから水酸基を有する有機ポリマーモノリスに通液している為、産業上有用なエポキシ系ポリマーモノリス或いは前記水酸基を有する有機ポリマーモノリスに、逆相分離特性に優れた長鎖アシル基を導入することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、参考例1のエポキシ系ポリマーモノリス粒状化物の赤外吸収スペクトルである。
【図2】図2は、参考例2のジオール体の赤外吸収スペクトルである。
【図3】図3は、参考例3のアシル化反応1後の粒状化物の赤外吸収スペクトルである。
【図4】図4は、参考例4のアシル化反応2後の粒状化物の赤外吸収スペクトルである。
【図5】図5は、参考例5のアシル化反応3後の粒状化物の赤外吸収スペクトルである。
【図6】図6は、実施例1のステアロイル基導入モノリスの赤外吸収スペクトルである。
【図7】図7は、実施例1のステアロイル基導入モノリスの走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】図8は、実施例1のステアロイル基導入モノリス充填カラムを用いたアルキルフェノン類の分離結果を示すクロマトグラムである。
【図9】図9は、実施例1で得られるエポキシ系ポリマーモノリス充填カラム又はステアロイル基導入モノリス充填カラムを用いたアルキルフェノン類の分離結果を示すクロマトグラムである。
【図10】図10は、実施例1で得られるポロゲン除去前のエポキシ系ポリマーモノリス充填カラムのブリードをLCMS測定したマススペクトルである。
【図11】図11は、実施例2で得られるポロゲン除去後の4本のエポキシ系ポリマーモノリス充填カラムのブリードをLCMS測定したマススペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の分離媒体は、有機ポリマーモノリスで構成されており、前記有機ポリマーモノリスが長鎖アシル基を有する点に特徴がある。この長鎖アシル基を有する有機ポリマーモノリスを、以下、長鎖アシル化モノリスと称する。長鎖アシル基の炭素数は、8〜24程度、好ましくは14〜22程度、さらに好ましくは16〜19程度、特に好ましくはODSと同じく18である。このような長鎖アシル化モノリスは、逆相分離特性に優れている。また炭素数が異なる複数のアシル基を有していてもよく、この場合、アシル基の平均炭素数は、7〜25、好ましくは13〜23、さらに好ましくは16〜20である。
【0021】
長鎖アシル基の導入の程度は、例えば、赤外吸収スペクトル(IR)により決定できる。すなわちピークベースとピークトップの%Tの差を「ピーク強度」と定義した時、アシル基(2900cm-1付近)のピーク強度S1と水酸基(3300cm-1付近)のピーク強度S2の比(S1/S2)でアシル基の導入の程度を評価できる。前記比(S1/S2)は、例えば、1以上、好ましくは2以上、さらに好ましくは5以上、最も好ましくは7以上である。
【0022】
前記長鎖アシル基は、有機ポリマーモノリスに化学結合しており、その結合形態は逆相分離能に影響を与えないため、特に限定されない。しかし、長鎖アシル基は、後述する好ましい製造方法に対応する化学結合を形成してもよい。この場合、前記長鎖アシル基は、通常、酸素原子又は窒素原子に結合しており、好ましくは酸素原子に結合して長鎖アシルオキシ基を形成する。長鎖アシルオキシ基を形成する場合、有機ポリマーモノリスは、例えば、下記式1、式2、及び式3から選ばれる少なくとも1つの基を有する。
−C(OR1)−C(OH)− …(1)
−C(OR1)−C(OR2)− …(2)
−C(OR1)−C(A)− …(3)
(式中、R1及びR2は、同一の又は互いに異なる、長鎖アシル基を示す。Aは、アンモニア残基又は一級アミン残基を示す。なお基Aにおいて、窒素原子に結合する水素原子は、R1又はR2で置換されていてもよい)
【0023】
上記長鎖アシル化モノリスは、好ましくはモノリス構造を有する有機ポリマーを合成した後、アシル化反応によって長鎖アシル基を導入(以下、後導入という)することによって製造される。アシル基を後導入することにより、有機ポリマーモノリスの合成段階では、モノマー種をアシル基に応じて変更する必要がなく、ゲル化条件もアシル基に応じて変更する必要がないため、ゲル化条件の設定が容易になる。
【0024】
前記モノリス構造を有する有機ポリマーとしては、アシル化剤と反応しうる官能基を有するものであれば利用できる(以下、アシル化剤と反応しうる官能基を反応性官能基といい、これを有する有機ポリマーモノリスを反応性モノリスという)。反応性官能基としては、水酸基、アミノ基など、好ましくは水酸基が例示できる。
【0025】
前記水酸基やアミノ基を有機ポリマーモノリスに導入する方法は特に限定されず、水酸基、アミノ基、又はこれらの前駆体となる基を有するモノマーを重合してモノリス構造を有する有機ポリマーを合成すればよい。好ましい有機ポリマーモノリスは、前記前駆体となる基としてエポキシ基を有するエポキシ系ポリマーモノリスである。エポキシ基は、水和によって水酸基(ジオール)になり、アンモニアまたは一級アミンを付加することによって水酸基とアミノ基になる。エポキシ系ポリマーモノリスを水和する場合、モノリスの形態に応じて適切な処理方法が選択できる。例えばエポキシ系ポリマーモノリスは、後述する様に、カラムに充填乃至固定されているのが好ましい。この場合、このエポキシ系ポリマーモノリスが充填乃至固定されたカラムに希酸を通液すればよい。通液には、ポンプやシリンジなどを利用できる(以下、カラムに液体を通液する場合において同様)。希酸としては希塩酸、希硫酸など一般的なものが使用できるが、腐食性の少ない希硫酸が扱いやすい。希硫酸の濃度は、例えば、0.02〜0.2mol/L程度が適しており、0.1mol/L硫酸を用いた場合、50℃、3時間程度で水和は完結する。
【0026】
前記エポキシ系ポリマーモノリスは、公知の製造方法によって得ることができ、例えば、エポキシ系モノマーを重合してもよいが、2官能性以上のエポキシ化合物と2官能性以上のアミン化合物を付加重合するのが好ましく、3官能性のエポキシ化合物(特にトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート)と2官能性のアミン化合物(特にビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン)を付加重合するのがより好ましい。これらの付加重合方法は、例えば、特許文献3(国際公開第2007/083348号パンフレット)に詳述されている。2官能性以上のエポキシ化合物と2官能性以上のアミン化合物を付加重合すると、得られるエポキシ系ポリマーモノリス自体が分離特性に優れる様になる。しかもこのエポキシ系ポリマーモノリスは、未反応のエポキシ基を多く有しており、水和或いはアンモニアまたは一級アミンの付加など(特に水和)によって反応性官能基(特に水酸基(ジオール))に変換でき、多くの長鎖アシル基を導入できる。なお前記2官能性以上のエポキシ化合物及び/又は2官能性以上のアミン化合物は、光学活性体であってもよい。
【0027】
3官能性エポキシ化合物と2官能性アミン化合物の割合(前者/後者;質量比)は、モノリスの形成が可能である限り特に制限されないが、例えば、90/10〜70/30程度、好ましくは85/15〜75/25程度、さらに好ましくは83/17〜78/22程度である。
【0028】
上述したエポキシ系ポリマーモノリス、反応性モノリスなどは好ましくはカラムに充填乃至固定されているのが好ましい。これらがカラムに充填乃至固定されていると、アシル化することによって分離媒体を充填したカラムを直接製造することができる。モノリスをカラム容器に固定する方法は特に限定されず、例えば、(方法1)別容器中で作製されたモノリスを熱収縮チューブなどで包んだ後、カラム容器に充填し固定してもよいが、(方法2)前記方法1でカラム容器を使用すればモノリス作製時に、直接、モノリス充填カラムを作製できる。前記カラムとしてキャピラリーカラム又はセミミクロカラムを選択する場合、後者の方法2が実施しやすい。なおキャピラリーカラム又はセミミクロカラムの内径は、例えば、0.1mm以上2mm以下、好ましくは0.5mm以上1.6mm以下、さらに好ましくは0.7mm以上1.5mm以下である。
【0029】
後者の方法2の場合、非特許文献6(Anal.Chem. 2001年、第73巻、p.4071)に記載されているように、原料モノマーの官能基と化学結合しうる官能基(以下、モノマー連結基という)をカラム容器の内壁に導入しておき、重合(ゲル化)するときに、内壁とモノリスとを化学結合させて固定するのが好ましい。このモノマー連結基の導入方法は特に限定されないが、例えば、カラムの内壁をシランカップリング剤で処理することでモノマー連結基を導入できる。シランカップリング剤の種類は、原料モノマーに応じて適宜選択でき、例えばエポキシ系モノマーを使用してモノリスを合成する場合には、エポキシ系又はアミノ系のシランカップリング剤を使用すればよい。
【0030】
以上の反応性モノリスに長鎖アシル基を導入する場合、上述した様に、アシル化剤が使用される。アシル化剤としては、導入するアシル基と同じ炭素数の酸ハライド、酸無水物などが挙げられる。長鎖アシル基を反応性よく導入するためには、脂肪酸ハライド(脂肪酸ブロマイド、脂肪酸クロライドなど)が好ましい。アシル化剤は、単一の化合物であってもよいが、市販の脂肪酸ハライドと同様に炭素数が異なる複数の化合物の混合物であってもよい。
【0031】
ところで前記アシル化反応では、含窒素複素環化合物と非プロトン性極性溶媒とで前記アシル化剤を溶解することが重要である。このようにして得られた溶液で反応性モノリスを処理すると、反応中に析出物が生じるのを防止できる。析出物が生じると、モノリスの孔が閉塞してアシル化反応が停止するのに対して、析出物を防止することによって長鎖アシル基を十分に導入することができる。
【0032】
前記含窒素複素環化合物は、アシル化反応で塩基として作用する。塩基としてトリエチルアミンのような非環式3級アミンを用いた場合には、析出物を抑制することができないのに対して、含窒素複素環化合物を用いれば、非プロトン性極性溶媒と組み合わせることで、析出物を抑制できる。含窒素複素環化合物としては、例えば、ピリジン、ピコリン、3,5−ジエチルピリジン、キノリンなど、好ましくはピリジンが挙げられる。これら含窒素複素環化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0033】
非プロトン性極性有機溶媒も、前記アシル化反応で重要な役割を果たす。上述したように、含窒素複素環化合物(塩基)と溶媒を兼ねてピリジンを使用してステアリン酸クロライドなどの長鎖脂肪酸ハライドを溶解しても、非プロトン性極性有機溶媒を使用しない場合には、アシル化はほとんど進行しない。長鎖アシル基の導入には、塩基として含窒素複素環化合物を使用するだけでなく、溶媒として非プロトン性極性溶媒を併用することが必要である。含窒素複素環化合物と非プロトン性極性溶媒を併用することで、塩類の析出を抑制しつつ反応性モノリスをアシル化でき、かつ長鎖アシル基の導入効率を高めることができる。非プロトン性溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなど、好ましくはDMFが例示できる。これら非プロトン性極性溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0034】
含窒素複素環化合物と非プロトン性極性溶媒の組合せ及び量は、アシル化剤を容易に溶解でき、かつアシル化反応時に析出物を生じない範囲で選択又は設定できる。例えば、80℃以下、好ましくは10〜70℃程度、さらに好ましくは20〜60℃程度の温度でアシル化剤を溶解可能な範囲で選択又は設定できる。
アシル化剤、含窒素複素環化合物、及び非プロトン性極性溶媒の最も好ましい組み合わせは、長鎖脂肪酸ハライド、ピリジン、DMFである。
【0035】
含窒素複素環化合物と非プロトン性極性溶媒の総容量も、上述したようにアシル化剤を容易に溶解でき、かつアシル化反応時に析出物を生じない範囲で選択するのが好ましく、アシル化剤1質量部に相当する容量(ただしアシル化剤の比重を1と仮定する)に対して、例えば、10倍以上、好ましくは10〜17倍程度、さらに好ましくは14〜16倍程度である。
【0036】
含窒素複素環化合物と非プロトン性極性溶媒の容量比(前者/後者)も上述した特性を達成できる範囲で選択するのが好ましく、例えば、1/27〜2/1(即ち3.7/96.3〜66.7/33.3)、好ましくは4/96〜60/40、さらに好ましくは5/95〜55/45である。
【0037】
アシル化反応の温度は、析出物の抑制面、反応性面からみて60℃以上(例えば、60〜150℃程度)が好ましく、80℃以上(例えば、80〜120℃程度)であってもよい。ただし、アシル基の導入率が低くても良いならばこの限りではない。反応温度の上限は使用する設備や容器の材質によって異なるが、100℃以下が扱いやすい。
上記アシル化反応では、本発明の目的を阻害しない範囲で、他の溶媒や添加剤を併用しても差し支えない。
【0038】
前記アシル化剤の溶液による処理では、反応性モノリスの形態に応じて適切な処理方法を選択できる。例えば、前記反応性モノリスは、上述した様に、カラムに充填乃至固定されているのが好ましい。この場合、アシル化剤と含窒素複素環化合物と非プロトン性極性溶媒を含む溶液状の混合物を、反応性モノリスを充填乃至固定したカラムに通液すればよい。
【0039】
ところで長鎖アシル化モノリスの製造原料となるエポキシ系モノリス又は反応性モノリス中には、通常、侠雑物が残留する。特許文献3(国際公開第2007/083348号パンフレット)の有機ポリマーモノリス(本発明のエポキシ系モノリス又は反応性モノリスに相当)を利用する場合、モノリス構造を形成するゲル化過程において使用されるポロゲン(ポリエチレングリコール)が、モノリス骨格に残留することがある。このような夾雑物は、少ないほど好ましい。例えば、本発明のモノリス分離媒体(長鎖アシル化モノリス)又はそれを充填したカラムを、LC/MSのような高感度を要求される質量分析に使用する場合、前記夾雑物が少ないほど、良好な測定結果が得られる。
【0040】
上記ポロゲンを除去する場合、反応性モノリスとアシル化剤とを反応させる前に、過塩素酸溶液でモノリス(エポキシ系モノリス、反応性モノリスなど。好ましくは水酸基を有する反応性モノリス)を洗浄すればよい。この過塩素酸溶液としては、過塩素酸水溶液とアルコール(特にメタノール)の混合液が好ましい。過塩素酸水溶液の濃度は、例えば、0.01〜1mol/L、好ましくは0.05〜0.5mol/L、さらに好ましくは0.1〜0.2mol/Lである。過塩素酸水溶液とアルコールの容量比(前者/後者)は、例えば、5/95〜60/40、好ましくは10/90〜50/50、さらに好ましくは20/80〜40/60である。洗浄温度は特に限定されないが、例えば、30〜80℃程度、好ましくは40〜70℃程度、さらに好ましくは50〜65℃程度、特に好ましくは60℃である。
【0041】
エポキシ系モノリス、反応性モノリスなどは、上述した様に、カラムに充填乃至固定されているのが好ましい。この場合、カラムに前記過塩素酸溶液を通液すればよい。洗浄時の流速は、例えば、0.1〜5mm/sec(特に1〜2mm/sec)であり、洗浄時間(送液時間)は、例えば、1〜10時間(特に5時間)である。なお洗浄温度を調節する場合、カラムを恒温槽に入れればよい。
【0042】
過塩素酸溶液で洗浄した後は、HPLC移動相を水、アルコール(特にメタノール)の順に交換して、カラム内の移動相を置換することが推奨される。HPLC移動相の交換する時の流速は、過塩素酸溶液洗浄時と同様であればよく、各移動相の交換時間(送液時間)は、例えば、10分〜2時間(特に30分)である。
【0043】
上述したような製造方法によって初めて有機ポリマーモノリスに長鎖アシル基を後導入できる。長鎖アシル基を有する有機ポリマーモノリス(長鎖アシル化モノリス)は、逆相分離特性に優れているため、良好な分離媒体として使用できる。従ってこの分離媒体(長鎖アシル化モノリス)を充填したカラムは、特に逆相モードの液体クロマトグラフィーに好適に使用できる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0045】
参考例1(ポリマーモノリスの作製と粒状化)
エポキシ化合物として光学活性体であるSSS体のトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート(TEPIC−S:日産化学社の商品名)、アミン化合物としてビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ポロゲンとして分子量が200のポリエチレングリコール(PEG200:ナカライテスク社の商品名)を使用した。特許文献3(国際公開第2007/83348号パンフレット)に記載の方法に従って、前記化合物の混合物をサンプル管中でゲル化してエポキシ系ポリマーモノリスを作製した。得られたモノリスを砕いて粒状化し、メタノール、塩化メチレンで洗浄した後、乾燥した。
【0046】
参考例2(エポキシ基のジオール化反応)
参考例1で得られた粒状化モノリス1.6gに濃度0.1mol/Lの硫酸48mLを加え、50℃で3時間攪拌した。粒状物をろ過し、水、メタノール、塩化メチレンで洗浄した後、乾燥し、ジオール体を得た。
【0047】
参考例3(アシル化反応1)
ステアリン酸クロライド200mgにピリジン2mLを加えて混合し、60℃に加熱して溶解させた。この溶液に参考例2で得られたジオール体40mgを添加し、60℃で3時間攪拌した。反応後、粒状物をろ過し、塩化メチレン、メタノール、水で洗浄した後、乾燥した。
【0048】
参考例4(アシル化反応2)
ステアリン酸クロライド1gにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)10mL、ピリジン550mgを加えて混合し、30℃に加熱して溶解させた。この溶液に参考例2で得られたジオール体100mgを添加し、60℃で3時間攪拌した。反応後、粒状物をろ過し、塩化メチレン、メタノール、水で洗浄した後、乾燥した。
【0049】
参考例5(アシル化反応3)
ステアリン酸クロライド1gにDMF5mL、ピリジン5mLを加えて混合し、30℃に加熱して溶解させた。この溶液に参考例2で得られたジオール体100mgを添加し、100℃で2時間攪拌した。反応後、粒状物をろ過し、塩化メチレン、メタノール、水で洗浄した後、乾燥した。
【0050】
赤外吸収スペクトル
参考例1で得られたエポキシ系ポリマーモノリスの粒状化物、及び参考例2で得られたジオール体の赤外吸収スペクトルを図1、図2に示す。図1及び図2から明らかな様に、ジオール化後は水酸基の吸収が増加した。参考例3〜5(アシル化反応1〜3)によって得られた粒状物の赤外吸収スペクトルを図3〜5に示す。図3(参考例3、DMF不使用)では水酸基の赤外吸収が大きく、アシル化反応の進行を示すステアロイル基の赤外吸収はわずかであり、アシル基(2900cm-1付近)のピーク強度S1と水酸基(3300cm-1付近)のピーク強度S2の比(S1/S2)は、0.9であった。これに対し、図4、図5(参考例4〜5、DMF使用)では水酸基の赤外吸収がほぼ無くなり、ステアロイル基の吸収が大きくなり、ピーク強度比(S1/S2)は、33(参考例4)又は60以上(参考例5)であった。
【0051】
実施例1
(1)ポリマーモノリスの作製
エポキシ化合物として「TEPIC−S」(商品名)、アミン化合物としてBACM、ポロゲンとしてPEG200を使用し、ガラスライニングチューブ(内径1mm×長さ15cm)中、特許文献3に記載の方法に従ってエポキシ系ポリマーモノリスを作製した。ガラスライニングチューブは事前に(3−アミノプロピル)トリエトキシシランで処理したものを使用した。
【0052】
(2)エポキシ基のジオール化反応
上記で製造されたエポキシ系ポリマーモノリス充填カラムに水を通液した。このカラムを50℃に温調しながら濃度0.1mol/Lの硫酸を3時間通液した。さらに水を通液してモノリスを洗浄することで、ジオール体充填カラムを得た。
【0053】
(3)アシル化反応
上記で製造されたジオール体充填カラムに予めDMFとピリジンの混合溶媒を通液した。一方、ステアリン酸クロライド0.67gにDMF10mLとピリジン0.37mLを加えて混合し、加熱して溶解させた。この溶液5mLを、前記ジオール体充填カラムに60℃で3時間かけて通液した。その後DMFとピリジンの混合溶媒を通液してモノリスを洗浄し、移動相を置換することで、ステアロイル基導入モノリス(カラム)を得た。
【0054】
(4)赤外吸収スペクトル
上記ステアロイル基導入モノリスの赤外吸収スペクトルを図6に示す。図6の例でも、図4及び図5の例と同様に、ステアロイル基の吸収が認められる。
【0055】
(5)走査型電子顕微鏡
上記ステアロイル基導入モノリスを充填したカラムを切断し、断面の走査型電子顕微鏡写真を撮影した。得られた写真を図7に示す。図7より明らかな様に、充填物はアシル化反応後もモノリス構造を維持しており、アシル化反応による構造崩壊は認められない。
【0056】
(6)液体クロマトグラフィー分析
上記ステアロイル基導入モノリスを充填したカラムを使用して、炭素数の異なる3つのアルキルフェノン(バレロフェノン、ヘキサノフェノン、ヘプタノフェノン)を下記条件I又はIIで液体クロマトグラフィー分析した。得られたクロマトグラムを図8に示す。炭素数の異なる各アルキルフェノンが分離しており、溶出順は逆相分離特性を示した。
【0057】
また、上記エポキシ系モノリスを充填したカラム、又はステアロイル基導入モノリスを充填したカラムを用い、オクタノフェノンとヘプタノフェノンを下記条件IIIで液体クロマトグラフィー分析した。得られたクロマトグラムを図9に示す。図9から明らかな様に、エポキシ系モノリス充填カラムではオクタノフェノンとヘプタノフェノンを分離できないのに対して、ステアロイル基導入モノリスを充填したカラムでは、これらをよく分離できる。オクタノフェノンの理論段数が1623段(保持時間4.6分)のエポキシ系ポリマーモノリスカラムを使用した場合は、アシル化反応後のカラムでもオクタノフェノンの理論段数は同等の1411段(保持時間4.5分)となった。
【0058】
分析条件
移動相(分析条件I):アセトニトリル/水=50/50(体積比)
移動相(分析条件II):アセトニトリル/水=45/55(体積比)
移動相(分析条件III):アセトニトリル/水=60/40(体積比)
検出波長(分析条件I〜III共通):245nm
カラム温度(分析条件I〜III共通):40℃
流速(分析条件I〜III共通):0.05mL/min
【0059】
実施例2
(1)ポロゲン除去
純水300mLに5mLの60質量%HClO4を加えて濃度約0.15mol/LのHClO4水溶液とし、これをメタノール700mLと混和し、脱気することによって洗浄液を調製した。実施例1と同様にして得られたエポキシ系ポリマーモノリス充填カラムを恒温槽で60℃に加熱しつつ、HPLC送液ポンプを用いて流速1mm/secで前記カラムに洗浄液を5時間通液した。洗浄後、HPLC移動相を水、メタノールの順に切り替え、それぞれ30分間通液してカラム中の移動相を交換した。
【0060】
(2)LCMS
上記実施例1の方法で調製されたエポキシ系ポリマーモノリス充填カラムをHPLCに接続し、移動相(水/アセトニトリル=4/6(体積比))を流速0.5mm/secで送液し、移動相の送液開始から数分間のブリードをLCMS測定(検出:ポジティブESI)した。結果を図10に示す。ブリードにはPEGとみられる44刻みのマススペクトル(m/z=217、261、305、249、292等)が含まれていた。
【0061】
一方、実施例2の方法でポロゲンを除去した4本のエポキシ系ポリマーモノリスを同様にしてLCMS測定した。結果を図11に示す。ブリードのマススペクトル強度は十分に小さくなり、PEGとみられるマススペクトルは消失していた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数8〜24のアシル基を有する有機ポリマーモノリスで構成される分離媒体。
【請求項2】
赤外吸収スペクトルにおけるピークベースとピークトップの%Tの差を「ピーク強度」と定義した時、アシル基(2900cm-1付近)のピーク強度S1と水酸基(3300cm-1付近)のピーク強度S2の比(S1/S2)が1以上である請求項1に記載の分離媒体。
【請求項3】
前記有機ポリマーモノリスが下記式1、式2,及び式3から選ばれる少なくとも1つの基を有する請求項1又は2に記載の分離媒体。
−C(OR1)−C(OH)− …(1)
−C(OR1)−C(OR2)− …(2)
−C(OR1)−C(A)− …(3)
(式中、R1及びR2は、同一の又は互いに異なる、炭素数8〜24のアシル基を示す。Aは、アンモニア残基又は一級アミン残基を示す)
【請求項4】
前記有機ポリマーモノリスが、2官能性以上のエポキシ化合物と2官能性以上のアミン化合物の付加重合体である請求項1〜3のいずれかに記載の分離媒体。
【請求項5】
前記エポキシ化合物がトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートである請求項4に記載の分離媒体。
【請求項6】
前記アミン化合物がビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンである請求項4又は5に記載の分離媒体。
【請求項7】
前記アシル基の炭素数の平均が16〜20である請求項1〜6のいずれかに記載の分離媒体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の分離媒体が充填されている逆相液体クロマトグラフィー用カラム。
【請求項9】
内径が0.1mm以上2mm以下である請求項8に記載の逆相液体クロマトグラフィー用カラム。
【請求項10】
請求項8または9に記載のカラムを備えた逆相液体クロマトグラフ。
【請求項11】
トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートとビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンの付加重合体から構成される有機ポリマーモノリスの未反応エポキシ基を水和した有機ポリマーモノリス。
【請求項12】
請求項11の有機ポリマーモノリスに炭素数8〜24のアシル基が化学結合している有機ポリマーモノリス。
【請求項13】
炭素数8〜24のアシル化剤と含窒素複素環化合物と非プロトン性極性溶媒を含む混合物を溶液にした後、水酸基を有する有機ポリマーモノリスに通液して前記アシル基を化学結合させることを特徴とする分離媒体の製造方法。
【請求項14】
前記水酸基を有する有機ポリマーモノリスが、過塩素酸溶液で洗浄したものである請求項13に記載の分離媒体の製造方法。
【請求項15】
前記アシル化剤が脂肪酸ハライド、前記含窒素複素環化合物がピリジン、前記非プロトン性極性溶媒がN,N−ジメチルホルムアミドである請求項13又は14に記載の分離媒体の製造方法。
【請求項16】
水酸基を有する有機ポリマーモノリスをカラム容器の内壁に存在する官能基との化学結合を介して前記カラム容器内に固定し、炭素数8〜24のアシル化剤と含窒素複素環化合物と非プロトン性極性溶媒を含む溶液状の混合物を該カラム容器中に通液して前記アシル基を化学結合させることを特徴とするカラムの製造方法。
【請求項17】
前記水酸基を有する有機ポリマーモノリスが、過塩素酸溶液で洗浄したものであることを特徴とする請求項16に記載のカラムの製造方法。
【請求項18】
前記アシル化剤が脂肪酸ハライド、前記含窒素複素環化合物がピリジン、前記非プロトン性極性溶媒がN,N−ジメチルホルムアミドである請求項16又は17に記載のカラムの製造方法。
【請求項1】
炭素数8〜24のアシル基を有する有機ポリマーモノリスで構成される分離媒体。
【請求項2】
赤外吸収スペクトルにおけるピークベースとピークトップの%Tの差を「ピーク強度」と定義した時、アシル基(2900cm-1付近)のピーク強度S1と水酸基(3300cm-1付近)のピーク強度S2の比(S1/S2)が1以上である請求項1に記載の分離媒体。
【請求項3】
前記有機ポリマーモノリスが下記式1、式2,及び式3から選ばれる少なくとも1つの基を有する請求項1又は2に記載の分離媒体。
−C(OR1)−C(OH)− …(1)
−C(OR1)−C(OR2)− …(2)
−C(OR1)−C(A)− …(3)
(式中、R1及びR2は、同一の又は互いに異なる、炭素数8〜24のアシル基を示す。Aは、アンモニア残基又は一級アミン残基を示す)
【請求項4】
前記有機ポリマーモノリスが、2官能性以上のエポキシ化合物と2官能性以上のアミン化合物の付加重合体である請求項1〜3のいずれかに記載の分離媒体。
【請求項5】
前記エポキシ化合物がトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートである請求項4に記載の分離媒体。
【請求項6】
前記アミン化合物がビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンである請求項4又は5に記載の分離媒体。
【請求項7】
前記アシル基の炭素数の平均が16〜20である請求項1〜6のいずれかに記載の分離媒体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の分離媒体が充填されている逆相液体クロマトグラフィー用カラム。
【請求項9】
内径が0.1mm以上2mm以下である請求項8に記載の逆相液体クロマトグラフィー用カラム。
【請求項10】
請求項8または9に記載のカラムを備えた逆相液体クロマトグラフ。
【請求項11】
トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートとビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンの付加重合体から構成される有機ポリマーモノリスの未反応エポキシ基を水和した有機ポリマーモノリス。
【請求項12】
請求項11の有機ポリマーモノリスに炭素数8〜24のアシル基が化学結合している有機ポリマーモノリス。
【請求項13】
炭素数8〜24のアシル化剤と含窒素複素環化合物と非プロトン性極性溶媒を含む混合物を溶液にした後、水酸基を有する有機ポリマーモノリスに通液して前記アシル基を化学結合させることを特徴とする分離媒体の製造方法。
【請求項14】
前記水酸基を有する有機ポリマーモノリスが、過塩素酸溶液で洗浄したものである請求項13に記載の分離媒体の製造方法。
【請求項15】
前記アシル化剤が脂肪酸ハライド、前記含窒素複素環化合物がピリジン、前記非プロトン性極性溶媒がN,N−ジメチルホルムアミドである請求項13又は14に記載の分離媒体の製造方法。
【請求項16】
水酸基を有する有機ポリマーモノリスをカラム容器の内壁に存在する官能基との化学結合を介して前記カラム容器内に固定し、炭素数8〜24のアシル化剤と含窒素複素環化合物と非プロトン性極性溶媒を含む溶液状の混合物を該カラム容器中に通液して前記アシル基を化学結合させることを特徴とするカラムの製造方法。
【請求項17】
前記水酸基を有する有機ポリマーモノリスが、過塩素酸溶液で洗浄したものであることを特徴とする請求項16に記載のカラムの製造方法。
【請求項18】
前記アシル化剤が脂肪酸ハライド、前記含窒素複素環化合物がピリジン、前記非プロトン性極性溶媒がN,N−ジメチルホルムアミドである請求項16又は17に記載のカラムの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図7】
【公開番号】特開2011−252723(P2011−252723A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125092(P2010−125092)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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