説明

有機光電変換素子およびその製造方法

【課題】有機光電変換素子のあらたな製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、陽極を形成し、前記陽極上に活性層を形成し、前記活性層上に、塗布法によって陰極を形成する有機光電変換素子の製造方法に関する。
また本発明は、前記活性層の形成後、かつ前記陰極の形成前に、電子輸送性材料を含む塗布液を活性層上に塗布成膜することによって機能層を形成する、有機光電変換素子の製造方法に関する。
また本発明は、前記電子輸送性材料が、粒子状の酸化亜鉛である有機光電変換素子に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光電変換素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機太陽電池や光センサーなどに用いられる有機光電変換素子は、一対の電極(陽極および陰極)と、電極間に設けられる活性層とから構成されており、これら電極や活性層などを順次所定の順序で積層することにより作製される。
【0003】
陽極や活性層などは、真空蒸着法や塗布法などの所定の薄膜の形成方法によって形成される。なお塗布法は、真空蒸着法とは異なり、真空雰囲気を導入することなく薄膜を形成することができる。そのため塗布法は、薄膜の形成工程を簡易にし、製造コストを低減することが可能な薄膜の形成方法のひとつと考えられている。そこで塗布法によって陽極や活性層を形成する有機光電変換素子の製造方法が検討されている。
【0004】
たとえば金属薄膜から成る陰極上に活性層を塗布形成し、さらにこの活性層上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)を含む溶液を塗布成膜して陽極を形成する有機光電変換素子の製造方法が知られている(たとえば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Thin Solid Films、2005、491号、p.298−300
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の非特許文献1には、有機光電変換素子の製造方法のひとつとして、陰極上に活性層、陽極を順次塗布形成するものが開示されているが、有機光電変換素子を形成するさいの設計の自由度を向上させるために、上記非特許文献1とは異なる有機光電変換素子の製造方法が模索されている。したがって本発明の目的は、有機光電変換素子のあらたな製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、陽極を形成し、前記陽極上に活性層を形成し、前記活性層上に、塗布法によって陰極を形成する有機光電変換素子の製造方法に関する。
【0008】
また本発明は、前記活性層の形成後、かつ前記陰極の形成前に、電子輸送性材料を含む塗布液を活性層上に塗布成膜することによって機能層を形成する、有機光電変換素子の製造方法に関する。
【0009】
また本発明は、前記電子輸送性材料が、粒子状の酸化亜鉛である有機光電変換素子の製造方法に関する。
【0010】
また本発明は、前記電子輸送性材料を含む塗布液が、アルカリ金属の錯体、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の錯体、およびアルカリ土類金属の塩からなる群から選ばれた少なくとも1種を含有する有機光電変換素子の製造方法に関する。
【0011】
また本発明は、前記活性層の形成を塗布法によりおこなう、有機光電変換素子の製造方法に関する。
【0012】
また本発明は、前記陰極が、ポリチオフェン及び/又はポリチオフェンの誘導体を含む、有機光電変換素子の製造方法に関する。
【0013】
また本発明は、前記陰極が、ポリアニリン及び/又はポリアニリンの誘導体を含む、有機光電変換素子の製造方法に関する。
【0014】
また本発明は、前記陰極が、導電性物質のナノ粒子、または導電性物質のナノファイバーを含む、有機光電変換素子の製造方法に関する。
【0015】
また本発明は、活性層がフラーレン類及び/又はフラーレン類の誘導体と、共役高分子化合物とを含む有機光電変換素子の製造方法に関する。
【0016】
また本発明は、支持基板上に、陽極、活性層、および陰極がこの順で積層された構成の有機光電変換素子であって、陰極が塗布法により形成されてなる、有機光電変換素子に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば有機光電変換素子のあらたな製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
<1>有機光電変換素子の構成
本発明の有機光電変換素子は、支持基板上に、陽極、活性層、および陰極がこの順で積層された構成の有機光電変換素子であって、陰極が塗布法により形成されてなる。
【0020】
陽極および陰極のうちの少なくとも一方は、透明又は半透明の電極によって構成される。透明又は半透明の電極から入射した光は、活性層中において、後述の電子受容性化合物及び/又は電子供与性化合物に吸収され、それによって電子と正孔とが結合した励起子が生成される。この励起子が活性層中を移動し、電子受容性化合物と電子供与性化合物とが隣接するヘテロ接合界面に達すると、界面でのそれぞれのHOMOエネルギー及びLUMOエネルギーの違いにより電子と正孔とが分離し、独立して移動することのできる電荷(電子と正孔)が発生する。発生した電荷は、それぞれ電極へ移動することにより外部へ電気エネルギー(電流)として取り出される。
【0021】
(支持基板)
本発明の有機光電変換素子は、通常、支持基板上に形成される。支持基板には、有機光電変換素子を作製する際に化学的に変化しないものが好適に用いられる。支持基板としては、例えば、ガラス基板、プラスチック基板、高分子フィルム、シリコン板等が挙げられる。透明又は不透明な陽極から光を取り込む形態の有機光電変換素子の場合、支持基板には光透過性の高い基板が好適に用いられる。また不透明な基板上に有機光電変換素子を作製する場合には、陽極側から光を取り込むことができないため、陰極が透明又は半透明な電極から構成される。このような電極を用いることにより、たとえ不透明な支持基板を用いたとしても、支持基板側に設けられる陽極とは反対側の陰極から光を取り込むことができる。
【0022】
(陽極)
陽極には、導電性の金属酸化物膜、金属薄膜、および有機物を含む導電膜等が用いられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、銅、アルミニウム、ポリアニリン及びその誘導体、並びにポリチオフェン及びその誘導体等の薄膜が用いられる。これらのなかでも陽極には、ITO、IZO、酸化スズの薄膜が好適に用いられる。なお陽極から光を取り入れる構成の有機光電変換素子では、たとえば上述の陽極を構成する薄膜の膜厚を、光が透過する程度の厚さにした透明又は半透明な電極が陽極として用いられる。
【0023】
(活性層)
活性層は、単層の形態または複数の層が積層された形態をとりうる。単層構成の活性層は、電子受容性化合物及び電子供与性化合物を含有する層から構成される。
【0024】
また複数の層が積層された構成の活性層は、たとえば電子供与性化合物を含有する第一の活性層と、電子受容性化合物を含有する第二の活性層とを積層した積層体から構成される。なおこの場合、第一の活性層が、第二の活性層に対して陽極寄りに配置される。
【0025】
また、有機光電変換素子は、中間層を介して複数の活性層が積層された構成であっても構わない。このような場合は、マルチ接合型素子(タンデム型素子)となる。なおこの場合、各活性層は、電子受容性化合物及び電子供与性化合物を含有する単層型であっても構わないし、電子供与性化合物を含有する第一の活性層と、電子受容性化合物を含有する第二の活性層とを積層した積層体から構成された積層型であっても構わない。
【0026】
中間層は、単層の形態または複数の層が積層された形態をとりうる。中間層はいわゆる電荷注入層や電荷輸送層によって構成される。中間層には、たとえば後述の電子輸送性材料を含む機能層を用いることができる。
【0027】
活性層は塗布法により形成されることが好ましい。また活性層は、高分子化合物を含むことが好ましく、高分子化合物を一種単独で含んでいても二種以上を組み合わせて含んでいてもよい。また、活性層の電荷輸送性を高めるために、前記活性層中に電子供与性化合物及び/又は電子受容性化合物を混合してもよい。
【0028】
有機光電変換素子に用いられる電子受容性化合物は、そのHOMOエネルギーが電子供与性化合物のHOMOエネルギーよりも高く、かつ、そのLUMOエネルギーが電子供与性化合物のLUMOエネルギーよりも高い化合物から成る。
【0029】
前記電子供与性化合物は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。低分子の電子供与性化合物としては、フタロシアニン、金属フタロシアニン、ポルフィリン、金属ポルフィリン、オリゴチオフェン、テトラセン、ペンタセン、ルブレン等が挙げられる。
【0030】
高分子の電子供与性化合物としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等が挙げられる。
【0031】
前記電子受容性化合物は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。低分子の電子受容性化合物としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、C60等のフラーレン類及びその誘導体、バソクプロイン等のフェナントレン誘導体等が挙げられる。高分子の電子受容性化合物としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等が挙げられる。これらのなかでも、とりわけフラーレン類及びその誘導体が好ましい。
【0032】
フラーレン類としては、C60、C70、カーボンナノチューブ、及びその誘導体が挙げられる。C60フラーレンの誘導体の具体的構造としては、以下のようなものが挙げられる。

【0033】
活性層が、フラーレン類及び/又はフラーレン類の誘導体からなる電子受容性化合物と、電子供与性化合物とを含有する構成では、フラーレン類及びフラーレン類の誘導体の割合が、電子供与性化合物100重量部に対して、10〜1000重量部であることが好ましく、50〜500重量部であることがより好ましい。また有機光電変換素子としては、前述の単層構成の活性層を備えることが好ましく、ヘテロ接合界面を多く含むという観点からは、フラーレン類及び/又はフラーレン類の誘導体からなる電子受容性化合物と、電子供与性化合物とを含有する単層構成の活性層を備えることがより好ましい。
【0034】
中でも活性層は、共役高分子化合物と、フラーレン類及び/又はフラーレン類の誘導体とを含むことが好ましい。活性層に用いられる共役高分子化合物としては、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等があげられる。
【0035】
活性層の膜厚は、通常、1nm〜100μmであり、好ましくは2nm〜1000nmであり、より好ましくは5nm〜500nmであり、さらに好ましくは20nm〜200nmである。
【0036】
(機能層)
有機光電変換素子は、電極間に活性層に限らす所定の機能層を備えることがある。このような機能層として、電子輸送性材料を含む機能層を、活性層と陰極との間に設けることが好ましい。
【0037】
機能層は、塗布法により形成することが好ましく、たとえば電子輸送性材料と溶媒とを含む塗布液を、当該機能層が設けられる層の表面上に塗布することにより形成することが好ましい。なお本発明において、塗布液は、エマルション(乳濁液)、サスペンション(懸濁液)等の分散液も含む。
【0038】
電子輸送性材料としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム、ITO(インジウムスズ酸化物)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)が挙げられ、これらの中でも、酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛またはアルミニウムドープ酸化亜鉛が好ましい。なお機能層を形成するさいには、粒子状の酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛またはアルミニウムドープ酸化亜鉛を含む塗布液を成膜して、当該機能層を形成することが好ましい。このような電子輸送材料としては、いわゆる酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛またはアルミニウムドープ酸化亜鉛のナノ粒子を用いることが好ましく、酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛またはアルミニウムドープ酸化亜鉛のナノ粒子のみからなる電子輸送性材料を用いて、機能層を形成することがより好ましい。なお酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛またはアルミニウムドープ酸化亜鉛の球相当の平均粒子径は、1nm〜1000nmが好ましく、10nm〜100nmが好ましい。平均粒子径はレーザー光散乱法や、X線回折法によって測定される。
【0039】
陰極と活性層との間に、電子輸送性材料を含む機能層を設けることによって、陰極の剥離を防ぐとともに、活性層から陰極への電子注入効率を高めることができる。なお機能層は、活性層に接して設けることが好ましく、さらには陰極にも接して設けられることが好ましい。このように電子輸送性材料を含む機能層を設けることによって、陰極の剥離を防ぐとともに、活性層から陰極への電子注入効率をさらに高めることができる。このような機能層を設けることによって、信頼性が高く、光電変換効率の高い有機光電変換素子を実現することができる。
【0040】
電子輸送性材料を含む機能層は、いわゆる電子輸送層及び/又は電子注入層として機能する。このような機能層を設けることによって、陰極への電子の注入効率を高めたり、活性層からの正孔の注入を防いだり、電子の輸送能を高めたり、陰極を塗布法で形成する際に用いられる塗布液による侵食から活性層を保護したり、活性層の劣化を抑制したりすることができる。
【0041】
また電子輸送性材料を含む機能層は、陰極を塗布形成する際に用いられる塗布液に対して濡れ性が高い材料によって構成されることが好ましい。具体的には電子輸送性材料を含む機能層は、陰極を塗布形成する際に用いられる塗布液に対する活性層の濡れ性よりも、当該塗布液に対する濡れ性が高い方が好ましい。このような機能層上に陰極を塗布形成することにより、陰極を形成する際に、塗布液が機能層の表面上に良好に濡れ広がり、膜厚が均一な陰極を形成することができる。
【0042】
また電子輸送性材料を含む塗布液は、アルカリ金属の錯体、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の錯体、およびアルカリ土類金属の塩からなる群から選ばれた少なくとも1種(以下、「アルカリ金属、アルカリ土類金属の錯体または塩」ということがある。)を含むことが好ましい。このような塗布液を用いることにより、アルカリ金属、アルカリ土類金属の錯体または塩を含む機能層を形成することができる。アルカリ金属、アルカリ土類金属の錯体または塩を含有することで、さらに電子注入効率を高めることができる。
【0043】
アルカリ金属、アルカリ土類金属の錯体または塩は、上記塗布液の溶媒に可溶であることが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムがあげられる。アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、があげられる。錯体としては、β-ジケトン錯体、塩としては、アルコキシド、フェノキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、水酸化物があげられる。
【0044】
アルカリ金属、アルカリ土類金属の錯体または塩の具体例としては、ナトリウムアセチルアセトナト、セシウムアセチルアセトナト、カルシウムビスアセチルアセトナト、バリウムビスアセチルアセトナト、ナトリウムメトキシド、ナトリウムフェノキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-五酸化物、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸セシウム、酢酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム等があげられる。
【0045】
これらのなかでも、ナトリウムアセチルアセトナト、セシウムアセチルアセトナト、酢酸セシウムが好ましい。
【0046】
また電子輸送性材料を含む塗布液において、粒子状の電子輸送性材料を100重量部とすると、アルカリ金属、アルカリ土類金属の錯体または塩の合計重量は1〜1000であり、5〜500が好ましい。
【0047】
(陰極)
陰極は、単層の形態または複数の層が積層された形態をとりうる。本実施形態では陰極は塗布法により形成される。陰極を塗布法により形成する際に用いられる塗布液は、陰極の構成材料と溶媒とを含む。陰極は導電性を示す高分子化合物を含むことが好ましく、実質的に導電性を示す高分子化合物から成ることが好ましい。陰極の構成材料としては、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体等の有機材料が挙げられる。
【0048】
陰極は、ポリチオフェン及び/又はポリチオフェンの誘導体を含んで構成されることが好ましく、実質的にポリチオフェン及び/又はポリチオフェンの誘導体から成ることが好ましい。また陰極は、ポリアニリン及び/又はポリアニリンの誘導体を含んで構成されることが好ましく、ポリアニリン及び/又はポリアニリンの誘導体から成ることが好ましい。
【0049】
ポリチオフェン及びその誘導体の具体例としては、以下に示す複数の構造式のうちの1つ以上を繰り返し単位として含む化合物が挙げられる。

(式中、nは、1以上の整数を表す。)
【0050】
ポリピロール及びその誘導体の具体例としては、以下に示す複数の構造式のうちの1つ以上を繰り返し単位として含む化合物が挙げられる。

(式中、nは、1以上の整数を表す。)
【0051】
ポリアニリン及びその誘導体の具体例としては、以下に示す複数の構造式のうちの1つ以上を繰り返し単位として含む化合物が挙げられる。

(式中、nは、1以上の整数を表す。)
【0052】
上記陰極の構成材料のなかでも、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)とポリ(4−スチレンスルホン酸)(PSS)からなるPEDOT/PSSは、高い光電変換効率を示す点から、陰極の構成材料として好適に用いられる。
【0053】
なお陰極は、上記有機材料を含む塗布液に限らずに、導電性物質のナノ粒子、導電性物質のナノワイヤ、または導電性物質のナノチューブを含む、エマルション(乳濁液)やサスペンション(懸濁液)、金属ペーストなどの分散液、溶融状態の低融点金属等を用いて塗布法により形成してもよい。導電性物質としては、金、銀、等の金属、ITO(インジウムスズ酸化物)等の酸化物、カーボンナノチューブ等が挙げられる。なお陰極は、導電性物質のナノ粒子または名のファイバーのみから構成されていてもよいが、陰極は、特表2010−525526号に示されるように、導電性物質のナノ粒子またはナノファイバーが、導電性ポリマーなどの所定の媒体中に分散して配置された構成を有していてもよい。
【0054】
また有機光電変換素子としては、前述した素子構成に限らず、陽極と陰極との間に付加的な層をさらに設けてもよい。付加的な層としては、例えば、ホールを輸送する正孔輸送層、電子を輸送する電子輸送層、バッファ層等が挙げられる。例えば正孔輸送層は陽極と活性層との間に設けられ、電子輸送層は活性層と機能層との間に設けられ、バッファ層は例えば陰極と機能層の間などに設けられる。バッファ層を設けることによって、表面の平坦化や、電荷注入を促進することができる。
【0055】
前記付加的な層としてのホール輸送層または電子輸送層に用いられる材料としては、それぞれ前述した電子供与性化合物、電子受容性化合物を用いることができる。付加的な層としてのバッファ層に用いられる材料としては、フッ化リチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物、酸化物等を用いることができる。また、酸化チタン等の無機半導体の微粒子を用いて電荷輸送層を形成することもできる。例えば電子輸送層が成膜される下地層上にチタニア溶液を塗布法により成膜し、さらに乾燥することによって電子輸送層を形成することができる。
【0056】
<2>有機光電変換素子の製造方法
本発明の有機光電変換素子の製造方法では、陽極を形成し、前記陽極上に活性層を形成し、前記活性層上に、塗布法によって陰極を形成する。
【0057】
<陽極形成工程>
陽極は、例としてあげた陽極の材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等によって前述した支持基板上に成膜することで形成される。またポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機材料を含む塗布液、金属インク、金属ペースト、溶融状態の低融点金属等を用いて、塗布法によって陽極を形成してもよい。
【0058】
<活性層形成工程>
活性層の形成方法はとくに限定されないが、製造工程の簡易化の観点からは塗布法によって形成することが好ましい。活性層は例えば前述した活性層の構成材料と溶媒とを含む塗布液を用いる塗布法により形成することができ、例えば共役高分子化合物およびフラーレン類及び/又はフラーレン類の誘導体と、溶媒とを含む塗布液を用いる塗布法により形成することができる。
【0059】
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、s−ブチルベゼン、t−ブチルベンゼン等の炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類系溶媒等が挙げられる。
また本発明に用いられる塗布液は、2種類以上の溶媒を含んでいてもよく、上記で例示した溶媒を2種類以上含んでいてもよい。
【0060】
前記活性層の構成材料を含む塗布液を塗布する方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を挙げることができ、これらのなかでもスピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法が好ましい。
【0061】
<機能層形成工程>
前述したように、活性層と陰極との間には、電子輸送性材料を含む機能層を形成することが好ましい。すなわち前記活性層の形成後、かつ前記陰極の形成前に、上述した電子輸送性材料を含む塗布液を活性層上に塗布成膜することによって機能層を形成することが好ましい。
【0062】
電子輸送性材料を含む機能層が活性層に接して設けられる場合には、前記塗布液を活性層の表面上に塗布することによって機能層が形成される。なお機能層を形成するさいには、塗布液が塗布される層(活性層など)に与える損傷が少ない塗布液を用いることが好ましく、具体的には塗布液が塗布される層(活性層など)を溶解し難い塗布液を用いることが好ましい。例えば陰極を成膜する際に用いられる塗布液を活性層上に塗布した場合に、この塗布液が活性層に与える損傷よりも活性層に与える損傷の小さい塗布液を用いて機能層を形成することが好ましく、具体的には陰極を成膜する際に用いられる塗布液よりも、活性層を溶解し難い塗布液を用いて機能層を形成することが好ましい。
【0063】
機能層を塗布形成する際に用いる塗布液は、溶媒と、前述した電子輸送性材料とを含む。前記塗布液の溶媒としては、水、アルコール、ケトン等があげられ、アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブトキシエタノール、メトキシブタノール等があげられ、、ケトンの具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン及びこれらの2種以上の混合物等があげられる。また本発明に用いられる塗布液は、2種類以上の溶媒を含んでいてもよく、上記で例示した溶媒を2種類以上含んでいてもよい。
【0064】
<陰極形成工程>
陰極は、活性層または機能層などの表面上に塗布法により形成される。具体的には溶媒と、前述した陰極の構成材料とを含む塗布液を活性層または機能層などの表面上に塗布することによって陰極が形成される。陰極を形成する際に用いる塗布液の溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、s−ブチルベゼン、t−ブチルベンゼン等の炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類系溶媒、水、アルコール等があげられる。アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブトキシエタノール、メトキシブタノール等があげられる。また本発明に用いられる塗布液は、2種類以上の溶媒を含んでいてもよく、上記で例示した溶媒を2種類以上含んでいてもよい。
【0065】
なお活性層や機能層に損傷を与えるような塗布液を用いて陰極を形成する場合には、たとえば陰極を二層構成とし、一層目の薄膜を、活性層や機能層に損傷を与えないような塗布液を用いて形成し、つぎに、二層目の薄膜を、活性層や機能層に損傷を与えうる塗布液を用いて形成してもよい。このように二層構成の陰極とすることにより、たとえ活性層や機能層に損傷を与えうる塗布液を用いて二層目の薄膜を形成したとしても、一層目の薄膜が保護層として機能するため、活性層や機能層に損傷を与えることを抑制することができる。たとえば、酸化亜鉛からなる機能層は、酸性の溶液によって損傷を受けやすいため、酸化亜鉛からなる機能層上に陰極を形成する場合には、中性の塗布液を用いて一層目の薄膜を形成し、つづいて酸性の溶液を用いて二層目の薄膜を形成することによって二層構成の陰極を形成してもよい。
【0066】
本発明の有機光電変換素子は、透明又は半透明の電極に太陽光等の光を照射することにより、電極間に光起電力が発生し、有機薄膜太陽電池として動作させることができる。
また有機薄膜太陽電池を複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュールとして用いることもできる。
【0067】
また、本発明の有機光電変換素子は、電極間に電圧を印加した状態で、透明又は半透明の電極に光を照射することにより、光電流が流れ、有機光センサーとして動作させることができる。有機光センサーを複数集積することにより有機イメージセンサーとして用いることもできる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
以下の実施例において、重合体の分子量として、GPCラボラトリー製GPC(PL−GPC2000)を用いてポリスチレン換算の数平均分子量を求めた。重合体の濃度が約1重量%となるようにo−ジクロロベンゼンに重合体を溶解させた。GPCの移動相にはo−ジクロロベンゼンを用い、測定温度140℃で、1mL/分の流速で流した。カラムは、PLGEL 10μm MIXED−B(PLラボラトリー製)を3本直列で繋げた。
【0070】
合成例1
(重合体1の合成)

【0071】
内部の気体をアルゴン置換した2L四つ口フラスコに、上記化合物A(7.928g、16.72mmol)、上記化合物B(13.00g、17.60mmol)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:aliquat336、Aldrich製、CH3N[(CH2)7CH3]3Cl、density 0.884g/ml,25℃、trademark of Henkel Corporation)(4.979g)、およびトルエン405mlを入れ、撹拌しながら系内を30分間アルゴンバブリングした。ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(0.02g)を加え、105℃に昇温、撹拌しながら2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液42.2mlを滴下した。滴下終了後5時間反応させ、フェニルボロン酸(2.6g)とトルエン1.8mlを加えて105℃で16時間撹拌した。トルエン700mlおよび7.5%ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物水溶液200mlを加えて85℃で3時間撹拌した。水層を除去後、60℃のイオン交換水300mlで2回、60℃の3%酢酸300mlで1回、さらに60℃のイオン交換水300mlで3回洗浄した。有機層をセライト、アルミナ、シリカを充填したカラムに通し、熱トルエン800mlでカラムを洗浄した。溶液を700mlまで濃縮した後、2Lのメタノールに注加、再沈殿させた。重合体をろ過して回収し、500mlのメタノール、アセトン、メタノールで洗浄した。50℃で一晩真空乾燥することにより、下記式:

【0072】
で表される繰返し単位を有するペンタチエニル−フルオレンコポリマー(以下、「重合体1」という)を12.21g得た。重合体1のポリスチレン換算の数平均分子量は5.4×104、重量平均分子量は1.1×105であった。
【0073】
合成例2
(重合体2の合成)

200mlのセパラブルフラスコに、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:aliquat336(登録商標)、Aldrich製、CH3N[(CH2)7CH3]3Cl、density 0.884g/ml、25℃)を0.65g、化合物(C)を1.5779g、化合物(E)を1.1454g入れ、フラスコ内の気体を窒素で置換した。フラスコに、アルゴンバブリングしたトルエンを35ml加え、撹拌溶解後、さらに40分アルゴンバブリングした。フラスコを加熱するバスの温度を85℃まで昇温後、反応液に、酢酸パラジウム1.6mg、トリスo−メトキシフェニルフォスフィンを6.7mg加え、つづいてバスの温度を105℃まで昇温しながら、17.5重量%の炭酸ナトリウム水溶液9.5mlを6分かけて滴下した。滴下後、バスの温度を105℃に保った状態で1.7時間攪拌し、その後、反応液を室温まで冷却した。
【0074】
次に、当該反応液に、化合物(C)を1.0877g、化合物(D)を0.9399g加え、さらに、アルゴンバブリングしたトルエンを15ml加え、撹拌溶解後、さらに30分アルゴンバブリングした。反応液に、酢酸パラジウムを1.3mg、トリスo−メトキシフェニルフォスフィンを4.7mg加え、つづいてバスの温度を105℃まで昇温しながら、17.5重量%の炭酸ナトリウム水溶液6.8mlを5分かけて滴下した。滴下後、バスの温度を105℃に保った状態で3時間攪拌した。撹拌後、反応液に、アルゴンバブリングしたトルエンを50ml、酢酸パラジウムを2.3mg、トリスo−メトキシフェニルフォスフィンを8.8mg、フェニルホウ酸を0.305g加え、バスの温度を105℃に保った状態で8時間攪拌した。次に、反応液の水層を除去した後、ナトリウムN,N−ジエチルジチオカルバメート3.1gを30mlの水に溶解した水溶液を加え、バスの温度を85℃に保った状態で2時間攪拌した。つづいて、反応液にトルエン250mlを加えて反応液を分液し、有機層を65mlの水で2回、65mlの3重量%酢酸水で2回、65mlの水で2回洗浄した。洗浄後の有機層にトルエン150mlを加えて希釈し、2500mlのメタノールに滴下し、高分子化合物を再沈殿させた。高分子化合物をろ過し、減圧乾燥後、500mlのトルエンに溶解させた。得られたトルエン溶液を、シリカゲル−アルミナカラムに通し、得られたトルエン溶液を3000mlのメタノールに滴下し、高分子化合物を再沈殿させた。高分子化合物をろ過し、減圧乾燥後、3.00gの重合体2を得た。得られた重合体2のポリスチレン換算の重量平均分子量は、257,000であり、数平均分子量は87,000であった。
【0075】
重合体2は、
下記式で表されるブロック共重合体である。

【0076】
合成例3
(化合物1の合成)

フラスコ内の気体をアルゴンで置換した1000mLの4つ口フラスコに、3−ブロモチオフェンを13.0g(80.0mmol)、ジエチルエーテルを80mL入れて均一な溶液とした。該溶液を−78℃に保ったまま、2.6Mのn−ブチルリチウム(n−BuLi)のヘキサン溶液を31mL(80.6mmol)滴下した。−78℃で2時間反応させた後、8.96gの3−チオフェンアルデヒド(80.0mmol)を20mLのジエチルエーテルに溶解させた溶液を反応液に滴下した。滴下後、反応液を−78℃で30分攪拌し、さらに室温(25℃)で30分攪拌した。反応液を再度−78℃に冷却し、2.6Mのn−BuLiのヘキサン溶液62mL(161mmol)を15分かけて滴下した。滴下後、反応液を−25℃で2時間攪拌し、さらに室温(25℃)で1時間攪拌した。その後、反応液を−25℃に冷却し、60gのヨウ素(236mmol)を1000mLのジエチルエーテルに溶解させた溶液を30分かけて滴下した。滴下後、反応液を室温(25℃)で2時間攪拌し、1規定のチオ硫酸ナトリウム水溶液50mLを加えて反応を停止させた。反応液にジエチルエーテルを加え、反応生成物を含む有機層を抽出した後、硫酸マグネシウムで反応生成物を含む有機層を乾燥し、有機層をろ過後、ろ液を濃縮して35gの粗生成物を得た。クロロホルムを用いて粗生成物を再結晶することにより精製し、化合物1を28g得た。
【0077】
合成例4
(化合物2の合成)

300mLの4つ口フラスコに、ビスヨードチエニルメタノール(化合物1)を10g(22.3mmol)、塩化メチレンを150mL加えて均一な溶液とした。該溶液にクロロクロム酸ピリジニウムを7.50g(34.8mmol)加え、室温(25℃)で10時間攪拌した。反応液をろ過して不溶物を除去後、ろ液を濃縮し、化合物2を10.0g(22.4mmol)得た。
【0078】
合成例5
(化合物3の合成)

フラスコ内の気体をアルゴンで置換した300mLフラスコに、化合物2を10.0g(22.3mmol)、銅粉末を6.0g(94.5mmol)、脱水N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと呼称することもある)を120mL加えて、120℃で4時間攪拌した。反応後、フラスコを室温(25℃)まで冷却し、反応液をシリカゲルカラムに通して不溶成分を除去した。その後、反応液に水500mLを加え、さらにクロロホルムを加え、反応生成物を含む有機層を抽出した。クロロホルム溶液である有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、有機層をろ過し、ろ液を濃縮して粗製物を得た。粗製物を展開液がクロロホルムであるシリカゲルカラムで精製し、化合物3を3.26g得た。
【0079】
合成例6
(化合物4の合成)

メカニカルスターラーを備え、フラスコ内の気体をアルゴンで置換した300mL4つ口フラスコに、化合物3を3.85g(20.0mmol)、クロロホルムを50mL、トリフルオロ酢酸を50mL入れて均一な溶液とした。該溶液に過ホウ酸ナトリウム1水和物を5.99g(60mmol)加え、室温(25℃)で45分間攪拌した。その後、反応液に水200mLを加え、さらにクロロホルムを加え、反応生成物を含む有機層を抽出した。クロロホルム溶液である有機層をシリカゲルカラムに通し、エバポレーターでろ液の溶媒を留去した。メタノールを用いて残渣を再結晶し、化合物4を534mg得た。
【0080】
H NMR in CDCl(ppm):7.64(d、1H)、7.43(d、1H)、7.27(d、1H)、7.10(d、1H)
【0081】
合成例7
(化合物5の合成)

フラスコ内の気体をアルゴンで置換した100mL四つ口フラスコに、化合物4を1.00g(4.80mmol)と脱水THFを30ml入れて均一な溶液とした。フラスコを−20℃に保ちながら、反応液に1Mの3,7−ジメチルオクチルマグネシウムブロミドのエーテル溶液を12.7mL加えた。その後、30分かけて温度を−5℃まで上げ、そのままの温度で反応液を30分攪拌した。その後、10分かけて温度を0℃に上げ、そのままの温度で反応液を1.5時間攪拌した。その後、反応液に水を加えて反応を停止し、さらに酢酸エチルを加え、反応生成物を含む有機層を抽出した。酢酸エチル溶液である有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、有機層をろ過後、酢酸エチル溶液をシリカゲルカラムに通し、ろ液の溶媒を留去し、化合物5を1.50g得た。
【0082】
H NMR in CDCl(ppm):8.42(b、1H)、7.25(d、1H)、7.20(d、1H)、6.99(d、1H)、6.76(d、1H)、2.73(b、1H)、1.90(m、4H)、1.58‐1.02(b、20H)、0.92(s、6H)、0.88(s、12H)
【0083】
合成例8
(化合物6の合成)

フラスコ内の気体をアルゴンで置換した200mLフラスコに、化合物5を1.50g、トルエンを30mL入れて均一な溶液とした。該溶液にp−トルエンスルホン酸ナトリウム1水和物を100mg入れ、100℃で1.5時間攪拌を行った。反応液を室温(25℃)まで冷却後、水50mLを加え、さらにトルエンを加えて反応生成物を含む有機層を抽出した。トルエン溶液である有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、有機層をろ過後、溶媒を留去した。得られた粗生成物を、展開溶媒がヘキサンであるシリカゲルカラムで生成し、化合物6を1.33g得た。ここまでの操作を複数回行った。
【0084】
H NMR in CDCl(ppm):6.98(d、1H)、6.93(d、1H)、6.68(d、1H)、6.59(d、1H)、1.89(m、4H)、1.58‐1.00(b、20H)、0.87(s、6H)、0.86(s、12H)
【0085】
合成例9
(化合物7の合成)

フラスコ内の気体をアルゴンで置換した200mLフラスコに、化合物6を2.16g(4.55mmol)、脱水THFを100mL入れて均一な溶液とした。該溶液を−78℃に保ち、該溶液に2.6Mのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液4.37mL(11.4mmol)を10分かけて滴下した。滴下後、反応液を−78℃で30分攪拌し、次いで、室温(25℃)で2時間攪拌した。その後、フラスコを−78℃に冷却し、反応液にトリブチルスズクロリドを4.07g(12.5mmol)加えた。添加後、反応液を−78℃で30分攪拌し、次いで、室温(25℃)で3時間攪拌した。その後、反応液に水200mlを加えて反応を停止し、酢酸エチルを加えて反応生成物を含む有機層を抽出した。酢酸エチル溶液である有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、有機層をろ過後、ろ液をエバポレーターで濃縮し、溶媒を留去した。得られたオイル状の物質を展開溶媒がヘキサンであるシリカゲルカラムで精製した。シリカゲルカラムのシリカゲルには、あらかじめ5重量(wt)%のトリエチルアミンを含むヘキサンに5分間浸し、その後、ヘキサンで濯いだシリカゲルを用いた。精製後、化合物7を3.52g(3.34mmol)得た。
【0086】
合成例10
(化合物9の合成)

500mlフラスコに、4,5−ジフルオロ−1,2−ジアミノベンゼン(東京化成工業製)を10.2g(70.8mmol)、ピリジンを150mL入れて均一溶液とした。フラスコを0℃に保ったまま、フラスコ内に塩化チオニル16.0g(134mmol)を滴下した。滴下後、フラスコを25℃に温めて、6時間反応を行った。その後、水250mlを加え、クロロホルムで反応生成物を抽出した。クロロホルム溶液である有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液をエバポレーターで濃縮して析出した固体を再結晶で精製した。再結晶の溶媒には、メタノールを用いた。精製後、化合物9を10.5g(61.0mmol)得た。
【0087】
合成例11
(化合物10の合成)

100mLフラスコに、化合物9を2.00g(11.6mmol)、鉄粉0.20g(3.58mmol)をいれ、フラスコを90℃に加熱した。このフラスコに臭素31g(194mmol)を1時間かけて滴下した。滴下後、90℃で38時間攪拌した。その後、フラスコを室温(25℃)まで冷却し、クロロホルム100mLを入れて希釈した。得られた溶液を、5wt%の亜硫酸ナトリウム水溶液300mLに注ぎ込み、1時間攪拌した。得られた混合液の有機層を分液ロートで分離し、水層をクロロホルムで3回抽出した。得られた抽出液を先ほど分離した有機層と合わせて硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、ろ液をエバポレーターで濃縮し、溶媒を留去した。得られた黄色の固体を、55℃に熱したメタノール90mLに溶解させ、その後、25℃まで冷却した。析出した結晶をろ過回収し、その後、室温(25℃)で減圧乾燥して化合物10を1.50g得た。
【0088】
19F NMR(CDCl、ppm):−118.9(s、2F)
【0089】
合成例12
(重合体3の合成)

フラスコ内の気体をアルゴンで置換した200mLフラスコに、化合物7を500mg(0.475mmol)、化合物10を141mg(0.427mmol)、トルエンを32ml入れて均一溶液とした。得られたトルエン溶液を、アルゴンで30分バブリングした。その後、トルエン溶液に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを6.52mg(0.007mmol)、トリス(2−トルイル)ホスフィンを13.0mg加え、100℃で6時間攪拌した。その後、反応液にフェニルブロミドを500mg加え、さらに5時間攪拌した。その後、フラスコを25℃に冷却し、反応液をメタノール300mLに注いだ。析出したポリマーをろ過して回収し、得られたポリマーを、円筒ろ紙に入れ、ソックスレー抽出器を用いて、メタノール、アセトン及びヘキサンでそれぞれ5時間抽出した。円筒ろ紙内に残ったポリマーを、トルエン100mLに溶解させ、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム2gと水40mLを加え、8時間還流下で攪拌を行った。水層を除去後、有機層を水50mlで2回洗浄し、次いで、3wt%の酢酸水溶液50mLで2回洗浄し、次いで、水50mLで2回洗浄し、次いで、5%フッ化カリウム水溶液50mLで2回洗浄し、次いで、水50mLで2回洗浄し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーをろ過後、乾燥し、得られたポリマーをo−ジクロロベンゼン50mLに再度溶解し、アルミナ/シリカゲルカラムを通した。得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させ、ポリマーをろ過後、乾燥し、精製された重合体185mgを得た。以下、この重合体を重合体3と呼称する。
【0090】
(組成物1の製造)
フラーレン類の誘導体として25重量部の[6,6]−フェニルC71−酪酸メチルエステル(C70PCBM)(アメリカンダイソース社製ADS71BFA)と、電子供与体化合物として5重量部の重合体1と、溶媒として1000重量部のo−ジクロロベンゼンとを混合した。次に、混合した溶液を、孔径1.0μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過して組成物1を調製した。
【0091】
(組成物2の製造)
フラーレン類の誘導体として25重量部の[6,6]−フェニルC71−酪酸メチルエステル(C70PCBM)(アメリカンダイソース社製ADS71BFA)と、電子供与体化合物として2.5重量部の重合体1と、2.5重量部の重合体2、溶媒として1000重量部のo−ジクロロベンゼンとを混合した。次に、混合した溶液を、孔径1.0μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過して組成物2を調製した。
【0092】
(組成物3の製造)
フラーレン類の誘導体として10重量部の[6,6]−フェニルC71−酪酸メチルエステル(C70PCBM)(アメリカンダイソース社製ADS71BFA)と、電子供与体化合物として5重量部の重合体3と、溶媒として1000重量部のo−ジクロロベンゼンとを混合した。次に、混合した溶液を、孔径1.0μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過して組成物3を調製した。
【0093】
実施例1
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
太陽電池の陽極として機能するITO薄膜が形成されたガラス基板を用意した。ITO薄膜はスパッタ法によって形成されたものであり、その厚みは150nmであった。このガラス基板をオゾンUV処理し、ITO薄膜の表面処理を行った。次に、PEDOT:PSS溶液(H.C.スタルク社製、CleviosP VP AI4083)をスピンコートによりITO膜上に塗布し、大気中120℃で10分間加熱することにより、膜厚50nmの正孔注入層を形成した。この正孔注入層上に、前記組成物1をスピンコートにより塗布し、活性層(膜厚約200nm)を形成した。
【0094】
次に、酸化亜鉛ナノ粒子の40重量%エチレングリコールモノn−ブチルエーテル分散液(平均粒子サイズ35nm以下、最大粒子サイズ120nm以下、シグマアルドリッチジャパン社製)を、当該分散液の3倍重量部のエチレングリコールモノn−ブチルエーテルで希釈し、塗布液を調製した。この塗布液を、スピンコートにより活性層上に190nmの膜厚で塗布し、水溶媒に不溶である機能層を形成した。その後、pH=6〜7の中性PEDOT:PSS分散液(H.C.スタルク社製、Clevios PH1000N)をスピンコートにより機能層上に100nmの膜厚で塗布した。さらにポリアニリン溶液(日産化学製 ORMECON NW−F101MEK(メチルエチルケトン溶媒))を塗布した後、真空中で60分間乾燥して、PEDOT:PSSからなる層と、ポリアニリンからなる層とを積層した陰極を形成した。ポリアニリンの膜厚は、約700nmであった。得られた有機薄膜太陽電池の形状は、2mm×2mmの正四角形であった。ソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO-SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)を用いて、得られた有機薄膜太陽電池に一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定することによって光電変換効率を測定した。光電変換効率は1.48%、短絡電流密度は6.39mA/cm2、開放端電圧は0.66V、FF(フィルファクター)は0.35であった。
【0095】
実施例2
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
太陽電池の陽極として機能するITO薄膜が形成されたガラス基板を用意した。ITO薄膜はスパッタ法によって形成されたものであり、その厚みは150nmであった。このガラス基板をオゾンUV処理し、ITO薄膜の表面処理を行った。次に、PEDOT:PSS溶液(H.C.スタルク社製、CleviosP VP AI4083)をスピンコートによりITO膜上に塗布し、大気中120℃で10分間加熱することにより、膜厚50nmの正孔注入層を形成した。この正孔注入層上に、前記組成物2をスピンコートにより塗布し、活性層(膜厚約180nm)を形成した。
【0096】
次に、酸化亜鉛ナノ粒子の45重量%イソプロパノール分散液(HTD−711Z、テイカ社製)を、当該分散液の5倍重量部のイソプロパノールで希釈し、塗布液を調製した。この塗布液を、スピンコートにより活性層上に220nmの膜厚で塗布し、水溶媒に不溶である機能層を形成した。
【0097】
その後、低温焼結性銀インク(バンドー化学製フローメタルSW−1020。粒径20〜40nmの銀ナノ粒子を40重量%含む水溶媒の銀ナノ粒子分散液)をスピンコートにより機能層上に700nmの膜厚で塗布し陰極を形成した。その後、UV硬化性封止材で封止を行った後、120℃で10分間加熱し低温焼結性銀インクの焼結を行った。
【0098】
得られた有機薄膜太陽電池の形状は、4mm×4mmの正四角形であった。ソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO-SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)を用いて、得られた有機薄膜太陽電池に一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定することによって光電変換効率を測定した。光電変換効率は1.57%、短絡電流密度は6.12mA/cm2、開放端電圧は0.76V、FFは0.34であった。
【0099】
実施例3
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
太陽電池の陽極として機能するITO薄膜が形成されたガラス基板を用意した。ITO薄膜はスパッタ法によって形成されたものであり、その厚みは150nmであった。このガラス基板をオゾンUV処理し、ITO薄膜の表面処理を行った。次に、PEDOT:PSS溶液(H.C.スタルク社製、CleviosP VP AI4083)をスピンコートによりITO膜上に塗布し、大気中120℃で10分間加熱することにより、膜厚50nmの正孔注入層を形成した。この正孔注入層上に、前記組成物2をスピンコートにより塗布し、活性層(膜厚約180nm)を形成した。
【0100】
次に、酸化亜鉛ナノ粒子(粒径20nm〜30nm)の45重量%イソプロパノール分散液(HTD−711Z、テイカ社製)を、当該分散液の5倍重量部のイソプロパノールで希釈し、塗布液を調製した。この塗布液を、スピンコートにより活性層上に220nmの膜厚で塗布し、水溶媒に不溶である機能層を形成した。
【0101】
次に、水溶媒のワイヤー状導電体分散液(ClearOhm(登録商標)Ink−N AQ:Cambrios Technologies Corporation社製)をスピンコーターによって塗布し、乾燥させることで、膜厚120nmの導電性ワイヤー層からなる陰極を得た。その後、UV硬化性封止剤で封止することで有機薄膜太陽電池を得た。
【0102】
得られた有機薄膜太陽電池の形状は、4mm×4mmの正四角形であった。ソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO-SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)を用いて、得られた有機薄膜太陽電池に一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定することによって光電変換効率を測定した。光電変換効率は4.77%、短絡電流密度は8.34mA/cm2、開放端電圧は0.86V、FFは0.67であった。
【0103】
実施例4
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
太陽電池の陽極として機能するITO薄膜が形成されたガラス基板を用意した。ITO薄膜はスパッタ法によって形成されたものであり、その厚みは150nmであった。このガラス基板をオゾンUV処理し、ITO薄膜の表面処理を行った。次に、PEDOT:PSS溶液(H.C.スタルク社製、CleviosP VP AI4083)をスピンコートによりITO膜上に塗布し、大気中120℃で10分間加熱することにより、膜厚50nmの正孔注入層を形成した。この正孔注入層上に、前記組成物2をスピンコートにより塗布し、活性層(膜厚約180nm)を形成した。
【0104】
次に、水溶媒のワイヤー状導電体分散液(ClearOhm(登録商標)Ink−N AQ:Cambrios Technologies Corporation社製)をスピンコーターによって塗布し、乾燥させることで、膜厚120nmの導電性ワイヤー層からなる陰極を得た。その後、UV硬化性封止剤で封止することで有機薄膜太陽電池を得た。
【0105】
得られた有機薄膜太陽電池の形状は、4mm×4mmの正四角形であった。ソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO-SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)を用いて、得られた有機薄膜太陽電池に一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定することによって光電変換効率を測定した。光電変換効率は0.7%、短絡電流密度は5.44mA/cm2、開放端電圧は0.62V、FFは0.20であった。
【0106】
実施例5
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
太陽電池の陽極として機能するITO薄膜が形成されたガラス基板を用意した。ITO薄膜はスパッタ法によって形成されたものであり、その厚みは150nmであった。このガラス基板をオゾンUV処理し、ITO薄膜の表面処理を行った。次に、PEDOT:PSS溶液(H.C.スタルク社製、CleviosP VP AI4083)をスピンコートによりITO膜上に塗布し、大気中120℃で10分間加熱することにより、膜厚50nmの正孔注入層を形成した。この正孔注入層上に、前記組成物2をスピンコートにより塗布し、活性層(膜厚約180nm)を形成した。
【0107】
次に、酸化亜鉛ナノ粒子(粒径20〜30nm)の45重量%イソプロパノール分散液(HTD−711Z、テイカ社製)1重量部と、ナトリウムアセチルアセトナトを1重量%溶解させたイソプロパノール5重量部とを混合し、塗布液を調製した。この塗布液を、スピンコートにより活性層上に210nmの膜厚で塗布し、乾燥させることにより水溶媒に不溶である機能層を形成した。
【0108】
次に、水溶媒のワイヤー状導電体分散液(ClearOhm(登録商標)Ink−N AQ:Cambrios Technologies Corporation社製)をスピンコーターによって塗布し、乾燥させることで、膜厚120nmの導電性ワイヤー層からなる陰極を得た。その後、UV硬化性封止剤で封止することで有機薄膜太陽電池を得た。
【0109】
得られた有機薄膜太陽電池の形状は、2mm×2mmの正四角形であった。ソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO-SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)を用いて、得られた有機薄膜太陽電池に一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定することによって光電変換効率を測定した。光電変換効率は5.66%、短絡電流密度は9.89mA/cm2、開放端電圧は0.90V、FFは0.64であった。
【0110】
実施例6
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
太陽電池の陽極として機能するITO薄膜が形成されたガラス基板を用意した。ITO薄膜はスパッタ法によって形成されたものであり、その厚みは150nmであった。このガラス基板をオゾンUV処理し、ITO薄膜の表面処理を行った。次に、PEDOT:PSS溶液(H.C.スタルク社製、CleviosP VP AI4083)をスピンコートによりITO膜上に塗布し、大気中120℃で10分間加熱することにより、膜厚50nmの正孔注入層を形成した。この正孔注入層上に、前記組成物2をスピンコートにより塗布し、活性層(膜厚約180nm)を形成した。
【0111】
次に、酸化亜鉛ナノ粒子(粒径20〜30nm)の45重量%イソプロパノール分散液(HTD−711Z、テイカ社製)1重量部と、酢酸セシウムを1重量%溶解させたイソプロパノール5重量部とを混合し、塗布液を調製した。この塗布液を、スピンコートにより活性層上に210nmの膜厚で塗布し、乾燥させることにより水溶媒に不溶である機能層を形成した。
【0112】
次に、水溶媒のワイヤー状導電体分散液(ClearOhm(登録商標)Ink−N AQ:Cambrios Technologies Corporation社製)をスピンコーターによって塗布し、乾燥させることで、膜厚120nmの導電性ワイヤー層からなる陰極を得た。その後、UV硬化性封止剤で封止することで有機薄膜太陽電池を得た。
【0113】
得られた有機薄膜太陽電池の形状は、2mm×2mmの正四角形であった。ソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO-SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)を用いて、得られた有機薄膜太陽電池に一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定することによって光電変換効率を測定した。光電変換効率は5.69%、短絡電流密度は10.41mA/cm2、開放端電圧は0.89V、FFは0.62であった。
【0114】
実施例7
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
太陽電池の陽極として機能するITO薄膜が形成されたガラス基板を用意した。ITO薄膜はスパッタ法によって形成されたものであり、その厚みは150nmであった。このガラス基板をオゾンUV処理し、ITO薄膜の表面処理を行った。次に、PEDOT:PSS溶液(H.C.スタルク社製、CleviosP VP AI4083)をスピンコートによりITO膜上に塗布し、大気中120℃で10分間加熱することにより、膜厚50nmの正孔注入層を形成した。この正孔注入層上に、前記組成物2をスピンコートにより塗布し、活性層(膜厚約180nm)を形成した。
【0115】
次に、酸化亜鉛ナノ粒子(粒径20〜30nm)の45重量%イソプロパノール分散液(HTD−711Z、テイカ社製)1重量部と、酢酸セシウムを5重量%溶解させたイソプロパノール5重量部とを混合し、塗布液を調製した。この塗布液を、スピンコートにより活性層上に210nmの膜厚で塗布し、乾燥させることにより水溶媒に不溶である機能層を形成した。
【0116】
次に、水溶媒のワイヤー状導電体分散液(ClearOhm(登録商標)Ink−N AQ:Cambrios Technologies Corporation社製)をスピンコーターによって塗布し、乾燥させることで、膜厚120nmの導電性ワイヤー層からなる陰極を得た。その後、UV硬化性封止剤で封止することで有機薄膜太陽電池を得た。
【0117】
得られた有機薄膜太陽電池の形状は、2mm×2mmの正四角形であった。ソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO-SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)を用いて、得られた有機薄膜太陽電池に一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定することによって光電変換効率を測定した。光電変換効率は5.64%、短絡電流密度は9.63mA/cm2、開放端電圧は0.89V、FFは0.66であった。
【0118】
実施例8
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
太陽電池の陽極として機能するITO薄膜が形成されたガラス基板を用意した。ITO薄膜はスパッタ法によって形成されたものであり、その厚みは150nmであった。このガラス基板をオゾンUV処理し、ITO薄膜の表面処理を行った。次に、PEDOT:PSS溶液(H.C.スタルク社製、CleviosP VP AI4083)をスピンコートによりITO膜上に塗布し、大気中120℃で10分間加熱することにより、膜厚50nmの正孔注入層を形成した。この正孔注入層上に、前記組成物3をスピンコートにより塗布し、活性層(膜厚約100nm)を形成した。
【0119】
次に、酸化亜鉛ナノ粒子の45重量%イソプロパノール分散液(HTD−711Z、テイカ社製)を、当該分散液の5倍重量部のイソプロパノールで希釈し、塗布液を調製した。この塗布液を、スピンコートにより活性層上に220nmの膜厚で塗布し、水溶媒に不溶である機能層を形成した。
【0120】
次に、水溶媒のワイヤー状導電体分散液(ClearOhm(登録商標)Ink−N AQ:Cambrios Technologies Corporation社製)をスピンコーターによって塗布し、乾燥させることで、膜厚120nmの導電性ワイヤー層からなる陰極を得た。その後、UV硬化性封止剤で封止することで有機薄膜太陽電池を得た。
【0121】
得られた有機薄膜太陽電池の形状は、2mm×2mmの正四角形であった。ソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO-SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)を用いて、得られた有機薄膜太陽電池に一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定することによって光電変換効率を測定した。光電変換効率は2.84%、短絡電流密度は7.91mA/cm2、開放端電圧は0.67V、FFは0.54であった。
【0122】
実施例9
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
太陽電池の陽極として機能するITO薄膜が形成されたガラス基板を用意した。ITO薄膜はスパッタ法によって形成されたものであり、その厚みは150nmであった。このガラス基板をオゾンUV処理し、ITO薄膜の表面処理を行った。次に、PEDOT:PSS溶液(H.C.スタルク社製、CleviosP VP AI4083)をスピンコートによりITO膜上に塗布し、大気中120℃で10分間加熱することにより、膜厚50nmの正孔注入層を形成した。この正孔注入層上に、前記組成物3をスピンコートにより塗布し、活性層(膜厚約100nm)を形成した。
【0123】
次に、酸化亜鉛ナノ粒子(粒径20〜30nm)の45重量%イソプロパノール分散液(HTD−711Z、テイカ社製)1重量部と、ナトリウムアセチルアセトナトを1重量%溶解させたイソプロパノール5重量部とを混合し、塗布液を調製した。この塗布液を、スピンコートにより活性層上に210nmの膜厚で塗布し、乾燥させることにより水溶媒に不溶である機能層を形成した。
【0124】
次に、水溶媒のワイヤー状導電体分散液(ClearOhm(登録商標)Ink−N AQ:Cambrios Technologies Corporation社製)をスピンコーターによって塗布し、乾燥させることで、膜厚120nmの導電性ワイヤー層からなる陰極を得た。その後、UV硬化性封止剤で封止することで有機薄膜太陽電池を得た。
【0125】
得られた有機薄膜太陽電池の形状は、2mm×2mmの正四角形であった。ソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO-SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)を用いて、得られた有機薄膜太陽電池に一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定することによって光電変換効率を測定した。光電変換効率は3.20%、短絡電流密度は8.40mA/cm2、開放端電圧は0.67V、FFは0.57であった。
【0126】
(組成物4の製造)
フラーレン類の誘導体として10重量部の[6,6]−フェニルC61−酪酸メチルエステル(C60PCBM)(フロンティアカーボン製E100)と、電子供与体化合物として5重量部の重合体3と、溶媒として1000重量部のo−ジクロロベンゼンとを混合した。次に、混合した溶液を、孔径1.0μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過して組成物4を調製した。
【0127】
実施例10
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
太陽電池の陽極として機能するITO薄膜が形成されたガラス基板を用意した。ITO薄膜はスパッタ法によって形成されたものであり、その厚みは150nmであった。このガラス基板をオゾンUV処理し、ITO薄膜の表面処理を行った。次に、PEDOT:PSS溶液(H.C.スタルク社製、CleviosP VP AI4083)をスピンコートによりITO膜上に塗布し、大気中120℃で10分間加熱することにより、膜厚50nmの正孔注入層を形成した。この正孔注入層上に、前記組成物2をスピンコートにより塗布し、活性層1(膜厚約190nm)を形成した。
【0128】
次に、酸化亜鉛ナノ粒子(粒径20nm〜30nm)の45重量%イソプロパノール分散液(HTD−711Z、テイカ社製)を、当該分散液の5倍重量部のイソプロパノールで希釈し、塗布液を調製した。この塗布液を、スピンコートにより活性層上に220nmの膜厚で塗布し、水溶媒に不溶である機能層1を形成した。
【0129】
その後、pH=6〜7の中性PEDOT:PSS分散液(H.C.スタルク社製、Clevios PH1000N)をさらに1倍重量部の超純水で希釈した塗布液をスピンコートにより電子輸送層として機能する機能層1上に30nmの膜厚で塗布し、正孔輸送層を得た。
【0130】
その後、前記組成物4を、スピンコートにより正孔輸送層上に110nmの膜厚で塗布し、有機薄膜太陽電池の活性層2を得た。
【0131】
次に、酸化亜鉛ナノ粒子(粒径20nm〜30nm)の45重量%イソプロパノール分散液(HTD−711Z、テイカ社製)を、当該分散液の5倍重量部のイソプロパノールで希釈し、塗布液を調製した。この塗布液を、スピンコートにより活性層2上に220nmの膜厚で塗布し、水溶媒に不溶である機能層2を形成した。
【0132】
次に、水溶媒のワイヤー状導電体分散液(ClearOhm(登録商標)Ink−N AQ:Cambrios Technologies Corporation社製)をスピンコーターによって塗布し、乾燥させることで、膜厚120nmの導電性ワイヤー層からなる陰極を得た。その後、UV硬化性封止剤で封止することで直列タンデム型の有機薄膜太陽電池を得た。
【0133】
得られた有機薄膜太陽電池の形状は、2mm×2mmの正四角形であった。ソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO-SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)を用いて、得られた有機薄膜太陽電池に一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定することによって光電変換効率を測定した。光電変換効率は5.77%、短絡電流密度は7.78mA/cm2、開放端電圧は1.36V、FFは0.55であった。
【0134】
実施例11
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
太陽電池の陽極として機能するITO薄膜が形成されたガラス基板を用意した。ITO薄膜はスパッタ法によって形成されたものであり、その厚みは150nmであった。このガラス基板をオゾンUV処理し、ITO薄膜の表面処理を行った。次に、PEDOT:PSS溶液(H.C.スタルク社製、CleviosP VP AI4083)をスピンコートによりITO膜上に塗布し、大気中120℃で10分間加熱することにより、膜厚50nmの正孔注入層を形成した。この正孔注入層上に、前記組成物2をスピンコートにより塗布し、活性層1(膜厚約230nm)を形成した。
次に、ガリウムドープ酸化亜鉛ナノ粒子(粒径20nm〜40nm)の20重量%メチルエチルケトン分散液(パゼットGK、ハクスイテック社製)を、スピンコートにより活性層1上に220nmの膜厚で塗布し、水溶媒に不溶である機能層を形成した。
次に、水溶媒のワイヤー状導電体分散液(ClearOhm(登録商標)Ink−N AQ:Cambrios Technologies Corporation社製)をスピンコーターによって塗布し、乾燥させることで、膜厚120nmの導電性ワイヤー層からなる陰極を得た。その後、UV硬化性封止剤で封止することで直列タンデム型の有機薄膜太陽電池を得た。
得られた有機薄膜太陽電池の形状は、1.8mm×1.8mmの正四角形であった。ソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO-SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)を用いて、得られた有機薄膜太陽電池に一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定することによって光電変換効率を測定した。光電変換効率は5.43%、短絡電流密度は9.76mA/cm2、開放端電圧は0.80V、FF(フィルファクター)は0.69であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極を形成し、前記陽極上に活性層を形成し、前記活性層上に、塗布法によって陰極を形成する有機光電変換素子の製造方法。
【請求項2】
前記活性層の形成後、かつ前記陰極の形成前に、電子輸送性材料を含む塗布液を活性層上に塗布成膜することによって機能層を形成する、請求項1記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項3】
前記電子輸送性材料が、粒子状の酸化亜鉛である請求項2に記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項4】
前記電子輸送性材料を含む塗布液が、アルカリ金属の錯体、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の錯体、およびアルカリ土類金属の塩からなる群から選ばれた少なくとも1種を含有する請求項2または3に記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項5】
前記活性層の形成を塗布法によりおこなう、請求項1〜4のいずれかに記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項6】
前記陰極が、ポリチオフェン及び/又はポリチオフェンの誘導体を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項7】
前記陰極が、ポリアニリン及び/又はポリアニリンの誘導体を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項8】
前記陰極が、導電性物質のナノ粒子、導電性物質のナノワイヤ、または導電性物質のナノチューブを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項9】
活性層がフラーレン類及び/又はフラーレン類の誘導体と、共役高分子化合物とを含む請求項1〜8のいずれか1つに記載の有機光電変換素子の製造方法。
【請求項10】
支持基板上に、陽極、活性層、および陰極がこの順で積層された構成の有機光電変換素子であって、陰極が塗布法により形成されてなる、有機光電変換素子。

【公開番号】特開2013−33906(P2013−33906A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−58386(P2012−58386)
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度独立行政法人新エネルギ産業技術総合開発機構「太陽エネルギー技術研究開発 太陽光発電システム次世代高性能技術の開発 有機薄膜太陽電池モジユールの創製に関する研究開発(高分子系有機薄膜太陽電池モジュールの研究開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】