説明

有機感光体、画像形成方法及び画像形成装置

【課題】本発明の目的は、発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの像露光光源で形成された有機感光体上の静電潜像を高細密に形成し、該高細密に形成された静電潜像を忠実にトナー像として再現し、印刷分野に適した高細密の電子写真画像を形成できる有機感光体、画像形成方法、画像形成装置を提供することである。
【解決手段】導電性支持体上に感光層を有する有機感光体において、該感光層が下記一般式(1)の電荷輸送物質を含有することを特徴とする有機感光体。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成に用いる有機感光体、画像形成方法及び画像形成装置に関し、更に詳しくは、複写機やプリンターの分野で用いられる電子写真方式の画像形成に用いる有機感光体、画像形成方法及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷分野やカラー印刷の分野において、電子写真方式の複写機やプリンタを使用される機会が増加している。該印刷分野やカラー印刷の分野においては、高画質のデジタルのモノクロ画像或いはカラー画像を求める傾向が強い。このような要求に対し、露光光源として短波長のレーザ光を用い、高精細のデジタル画像を形成することが提案されている(特許文献1)。しかしながら、該短波長レーザ光を用い、露光のドット径を絞り、電子写真感光体上に細密の静電潜像を形成しても、最終的に得られる電子写真画像は、十分な高画質を達成し得ていないのが現状である。
【0003】
その原因は、電子写真感光体の感光特性や現像剤のトナーの帯電特性等が細密なドット潜像の形成やトナー画像の形成に必要な特性を十分に備えていないことによる。
【0004】
即ち、電子写真感光体としては、従来の長波長レーザ用に開発された有機感光体(以後、単に感光体とも云う)では、感度特性が劣り、短波長レーザ光を用いて露光のドット径を絞った像露光を行なうと、ドット潜像が明瞭に形成されず、ドット画像の再現性が劣化しやすい。この原因は、電荷発生層のみならず、電荷輸送層にもあり、それぞれの層の物質や添加剤の短波長レーザに対する劣化要因を洗い出し、除去することが必要である。
【0005】
電荷輸送層での劣化要因としては、従来の有機感光体用に開発された電荷輸送物質は、300〜500nmの短波長光を吸収しやすく、その結果感度低下や残留電位の上昇等の電子写真特性の劣化を促進しやすい。
【0006】
このような課題に対して、ベンジシン系化合物が短波長レーザとの組み合わせで、高画質が得られることが報告されているが(特許文献2)、しかしながら、これらベンジシン化合物は帯電器等で発生するオゾンやNOx等の活性ガスで、劣化しやすく、その結果、画像ボケが発生し、ドット再現性も劣化しやすい。
【特許文献1】特開2000−250239号公報
【特許文献2】特開2000−147874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされた。本発明の目的は、発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの像露光を用いて有機感光体上に高密度の静電潜像を形成し、感度や残留電位の特性、或いは、ドット再現性や画像ボケの劣化等が改善された有機感光体を提供することであり、該有機感光体を用いた画像形成方法、画像形成装置を提供することである。又、本発明の目的は、発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの像露光を用いて有機感光体上に高密度の静電潜像を形成し、感度や残留電位の特性、或いは、ドット再現性や画像ボケの劣化等が改善された高画質のカラー画像を形成できる有機感光体を提供することであり、該有機感光体を用いた画像形成方法及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
我々は上記問題点について検討を重ねた結果、本発明の課題は、発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの像露光を用いて有機感光体上に高密度の静電潜像を形成し、感度や残留電位の特性、或いは、ドット再現性や画像ボケの劣化等が改善された電子写真画像を形成するためには、短波長のレーザ光等に対し、吸収が小さく且つ比較的分子量が大きく、ポリカーボネート等とのバインダーと相溶性が良好な化合物を有機感光体の電荷輸送物質として用いることが有効であることを見出し、本発明を完成した。即ち、短波長レーザ光の露光光で発生しやすい上記課題に対しては、下記に記すような複素環芳香族基を有するベンジジン化合物を電荷輸送物質として用いた有機感光体が効果的であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は以下のような構成の有機感光体を用いることにより達成される。
(1)導電性支持体上に感光層を有する有機感光体において、該感光層が下記一般式(1)の電荷輸送物質を含有することを特徴とする有機感光体。
【0010】
【化1】

【0011】
[一般式(1)中、A〜Dは置換又は無置換のフェニル基を表し、XはO又はSを示し、nは1又は2を示す。]
(2)前記A〜Dの置換基がアルキル基又はアルコキシ基であることを特徴とする前記1に記載の有機感光体。
(3)前記感光層が電荷発生物質を含有する電荷発生層及び電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を有することを特徴とする前記1又は2に記載の有機感光体。
(4)前記電荷輸送層が数平均一次粒径(Dp)で3〜100nmの無機微粒子を含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の有機感光体。
(5)前記電荷輸送層が複数の電荷輸送層から構成され、且つ最上層の電荷輸送層が前記一般式(1)の電荷輸送物質及び無機微粒子を含有することを特徴とする前記3又は4に記載の有機感光体。
(6)前記電荷発生物質が多環キノン化合物であることを特徴とする前記3〜5のいずれか1項に記載の有機感光体。
(7)前記電荷発生物質がペリレン系化合物であることを特徴とする前記3〜6のいずれか1項に記載の有機感光体。
(8)前記導電性支持体と電荷発生層の間にN型半導性粒子を含有する中間層を有することを特徴とする前記3〜7のいずれか1項に記載の有機感光体。
(9)前記N型半導性粒子が酸化チタンであることを特徴とする前記8に記載の有機感光体。
(10)前記酸化チタンがルチル形酸化チタン顔料又はアナターゼ形酸化チタン顔料であることを特徴とする前記9に記載の有機感光体。
(11)前記中間層にポリアミド樹脂のバインダーを含有することを特徴とする前記8〜10のいずれか1項に記載の有機感光体。
(12)前記ポリアミド樹脂が融解熱0〜40J/gで、且つ吸水率5質量%以下のポリアミド樹脂であることを特徴とする前記11に記載の有機感光体。
(13)有機感光体上に発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの書込み光源を用いて静電潜像を形成する露光工程を有し、該静電潜像をトナー像に顕像化する現像工程を有する画像形成方法において、前記有機感光体が導電性支持体上に感光層を有し、該感光層が下記一般式(1)の電荷輸送物質を含有することを特徴とする画像形成方法。
【0012】
【化2】

【0013】
[一般式(1)中、A〜Dは置換又は無置換のフェニル基を表し、XはO又はSを示し、nは1又は2を示す。]
(14)有機感光体上に発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの書込み光源を用いて静電潜像を形成する露光手段を有し、該静電潜像をトナー像に顕像化する現像手段を有する画像形成装置において、前記有機感光体が導電性支持体上に感光層を有し、該感光層が下記一般式(1)の電荷輸送物質を含有することを特徴とする画像形成装置。
【0014】
【化3】

【0015】
[一般式(1)中、A〜Dは置換又は無置換のフェニル基を表し、XはO又はSを示し、nは1又は2を示す。]
【発明の効果】
【0016】
本発明の有機感光体、画像形成方法及び画像形成装置を用いることにより、高細密のドット画像を形成することができ、ドット再現性が改善され、画像ボケを改善でき、高画質の電子写真画像を形成することができる。又、カラー画像の作製においても、ドット再現性が良好で、色再現性が優れたカラー画像を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の有機感光体について、詳細に説明する。
【0018】
本発明の有機感光体は、導電性支持体上に感光層を有する有機感光体であり、該感光層が前記一般式(1)の電荷輸送物質を含有することを特徴とする。
【0019】
前記一般式(1)の電荷輸送物質は、波長が350〜500nmの露光光源に対し、単位露光量に対する電位減衰値が大きく、小径のドット潜像をシャープに形成することができ、且つドット再現性が改善され、画像ボケの劣化を改善した電子写真画像を形成することができる。
【0020】
即ち、ベンジジン構造を有する化合物にO或いはS原子を含有した複素環芳香族基を導入することにより、オゾンやNOx等の活性ガスによる画像ボケを防止でき、且つ短波長レーザを用いても高感度で、ドット再現性が良好な有機感光体を作製することができる。
【0021】
上記一般式(1)の化合物の具体例を下記に例示する。
【0022】
【化4】

【0023】
【化5】

【0024】
【化6】

【0025】
【化7】

【0026】
【化8】

【0027】
【化9】

【0028】
【化10】

【0029】
【化11】

【0030】
【化12】

【0031】
【化13】

【0032】
【化14】

【0033】
【化15】

【0034】
以下に、本発明に係わる一般式(1)の電荷輸送物質の合成例を記載する。
合成例
【0035】
【化16】

【0036】
J.Am.Chem.Soc.,Vol.116,No.19,1994,8784〜8792に記載されている上記方法にて、2,5−ビス(3−アミノフェニル)フラン((a)ルートを経由した合成)及び2,5−ビス(3−アミノフェニル)チオフェン((b)ルートを経由した合成)の合成を行った。
【0037】
CTM−1の合成を次の方法にて行った。
【0038】
200mlの4頭コルベンに冷却管、200℃温度計、N2フロー導入管、マグネチックスターラーを付け、密閉系にする。まず反応系を70℃に加熱し減圧して窒素置換を行う。反応系の温度を50℃まで下げN2フロー下で酢酸パラジウム;0.43gを添加、トリ−t−ブチルフォスフィン;1.53gを添加して、赤褐色均一系になるまで50℃にて撹拌する(約30min.)。これに脱水キシレン140mlを加える。N2フロー下で2,5−ビス(3−アミノフェニル)フラン;5g及びブロモベンゼン;11gを加え、更にKO−t−Bu;11gを加える。これを還流し、5時間反応する。反応終了後、水/THF/珪藻土を加え、ろ過した後、水洗、分液乾燥後、濃縮。アセトンにて再結晶を行いを目的物(CTM−1)を得た。
【0039】
CTM−9の合成を次の方法にて行った。
【0040】
CTM−1の合成で、2,5−ビス(3−アミノフェニル)フランの代わりに2,5−ビス(3−アミノフェニル)チオフェンを用いた他は同様にして、目的物(CTM−9)を得た。
【0041】
【化17】

【0042】
J.Am.Chem.Soc.,Vol.116,No.19,1994,8784〜8792に記載されている上記方法にて、2,5−ビス(4−アミノフェニル)フラン((c)ルートを経由した合成)及び2,5−ビス(4−アミノフェニル)チオフェン((d)ルートを経由した合成)の合成を行った。
【0043】
CTM−17の合成を次の方法にて行った。
【0044】
CTM−1の合成で、2,5−ビス(3−アミノフェニル)フランの代わりに2,5−ビス(4−アミノフェニル)フランを用いた他は同様にして、目的物(CTM−17)を得た。
【0045】
CTM−25の合成を次の方法にて行った。
【0046】
CTM−1の合成で、2,5−ビス(3−アミノフェニル)フランの代わりに2,5−ビス(4−アミノフェニル)チオフェンを用いた他は同様にして、目的物(CTM−25)を得た。
【0047】
【化18】

【0048】
Macromolecules1998,31,4777〜4781に記載されている上記方法にて、5,5’−ビス(4−アミノフェニル)−2,2’−ビフリル((e)ルートを経由した合成)及び5,5’−ビス(4−アミノフェニル)−2,2’−ビチオフェン((f)ルートを経由した合成)の合成を行った。
【0049】
CTM−33の合成を次の方法にて行った。
【0050】
CTM−1の合成で、2,5−ビス(3−アミノフェニル)フランの代わりに5,5’−ビス(4−アミノフェニル)−2,2’−ビフリルを用いた他は同様にして、目的物(CTM−33)を得た。
【0051】
CTM−41の合成を次の方法にて行った。
【0052】
CTM−1の合成で、2,5−ビス(3−アミノフェニル)フランの代わりに5,5’−ビス(4−アミノフェニル)−2,2’−ビチオフェンを用いた他は同様にして、目的物(CTM−41)を得た。
【0053】
前記一般式(1)の電荷輸送物質の分子量は、500〜800の範囲の電荷輸送物質が好ましい。分子量が500未満では、電荷輸送層のバインダーの可塑剤として作用し、電荷輸送層の弾性を低下せしめて、表面層の傷を発生させやすい。又、弾性率の低下等で、膜物性の劣化を発生する為、電荷輸送層中の電荷輸送物質の含有量が制限され、その結果、感度低下を発生し、画像濃度が低下しやすい。一方、分子量が800より大ききと、溶媒溶解性が低下し、析出して、画像濃度の低下、ドット再現性の劣化を起こしやすい。
【0054】
本発明に係わる有機感光体は、前記一般式(1)の電荷輸送物質を含有する有機感光体であるが、これらの電荷輸送物質を含有する有機感光体の構成について以下に記載する。
【0055】
本発明において、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機感光体を全て含有する。
【0056】
本発明の有機感光体の構成は、前記一般式(1)の電荷輸送物質を含有する限り特に制限されるものではなく、例えば、以下に示すような構成が挙げられる;
1)導電性支持体上に感光層として電荷発生層および電荷輸送層を順次積層した構成;
2)導電性支持体上に感光層として電荷発生層、第1電荷輸送層および第2電荷輸送層を順次積層した構成;
3)導電性支持体上に感光層として電荷輸送材料と電荷発生材料とを含む単層を形成した構成;
4)導電性支持体上に感光層として電荷輸送層および電荷発生層を順次積層した構成;
5)上記1)〜5)の感光体の感光層上にさらに表面保護層を形成した構成。
【0057】
感光体が上記いずれの構成を有する場合であってもよい。感光体の表面層とは、感光体が空気界面と接触する層であり、導電性支持体上に単層式の感光層のみが形成されている場合は当該感光層が表面層であり、導電性支持体上に単層式または積層式感光層と表面保護層とが積層されている場合は表面保護層が最表面層である。本発明では上記2)の構成が最も好ましく用いられる。尚、本発明の感光体はいずれの構成を有する場合であっても、導電性支持体上、感光層の形成に先だって、下引層(中間層)が形成されていてもよい。
【0058】
電荷輸送層とは、光露光により電荷発生層で発生した電荷キャリアを有機感光体の表面に輸送する機能を有する層を意味し、該電荷輸送機能の具体的な検出は、電荷発生層と電荷輸送層を導電性支持体上に積層し、光導伝性を検知することにより確認することができる。
【0059】
次に、有機感光体の層構成を上記2)の構成を中心にして記載する。
【0060】
導電性支持体
感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状、円筒状のどちらを用いても良いが、画像形成装置をコンパクトに設計するためには円筒状導電性支持体の方が好ましい。
【0061】
円筒状導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真直度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0062】
導電性の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。本発明の導電性支持体としては、アルミニウム支持体が最も好ましい。該アルミニウム支持体は、主成分のアルミニウム以外にマンガン、亜鉛、マグネシウム等の成分が混合したものも用いられる。
【0063】
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、中間層を設けることが好ましい。
【0064】
本発明に用いられる中間層にはN型半導性粒子を含有することが好ましい。該N型半導性粒子とは、主たる電荷キャリアが電子である粒子を意味する。すなわち、主たる電荷キャリアが電子であることから、該N型半導性粒子を絶縁性バインダーに含有させた中間層は、基体からのホール注入を効率的にブロックし、また、感光層からの電子に対してはブロッキング性が少ない性質を有する。
【0065】
N型半導性粒子としては、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)が好ましく、特に酸化チタンが特に好ましく用いられる。
【0066】
N型半導性粒子は数平均一次粒径が3.0〜200nmの範囲の微粒子を用いる。特に、5nm〜100nmが好ましい。数平均一次粒径とは、微粒子を透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によってフェレ方向平均径としての測定値である。数平均一次粒径が3.0nm未満のN型半導性粒子は中間層バインダー中での均一な分散ができにくく、凝集粒子を形成しやすく、該凝集粒子が電荷トラップとなって残電上昇が発生しやすい。一方、数平均一次粒径が200nmより大きいN型半導性粒子は中間層の表面に大きな凹凸を作りやすく、これらの大きな凹凸を通してドット画像が劣化しやすい。又、数平均一次粒径が200nmより大きいN型半導性粒子は分散液中で沈澱しやすく、凝集物が発生しやすく、その結果、ドット画像が劣化しやすい。
【0067】
前記酸化チタン粒子は、結晶形としては、アナターゼ形、ルチル形、ブルッカイト形及びアモルファス形等があるが、中でもルチル形酸化チタン顔料又はアナターゼ形酸化チタン顔料は、中間層を通過する電荷の整流性を高め、即ち、電子の移動性を高め、帯電電位を安定させ、残留電位の増大を防止すると共に、ドット画像の劣化を防止することができ、本発明のN型半導性粒子として最も好ましい。
【0068】
N型半導性粒子はメチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体で表面処理されたものが好ましい。該メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体の分子量は1000〜20000のものが表面処理効果が高く、その結果、N型半導性粒子の整流性を高め、このN型半導性粒子を含有する中間層を用いることにより、黒ポチ発生が防止され、又、良好なドット画像の再現性に効果がある。
【0069】
メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体とは−(HSi(CH3)O)−の構造単位とこれ以外の構造単位(他のシロキサン単位のこと)の共重合体が好ましい。他のシロキサン単位としては、ジメチルシロキサン単位、メチルエチルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位及びジエチルシロキサン単位等が好ましく、特にジメチルシロキサンが好ましい。共重合体中のメチルハイドロジェンシロキサン単位の割合は10〜99モル%、好ましくは20〜90モル%である。
【0070】
メチルハイドロジェンシロキサン共重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれでもよいがランダム共重合体及びブロック共重合体が好ましい。又、共重合成分としてはメチルハイドロジェンシロキサン以外に、一成分でも二成分以上でもよい。
【0071】
本発明に用いられる中間層を形成するために作製する中間層塗布液は前記表面処理酸化チタン等のN型半導性粒子の他にバインダー樹脂、分散溶媒等から構成される。
【0072】
N型半導性粒子の中間層中での比率は、中間層のバインダー樹脂との体積比(バインダー樹脂の体積を1とすると)で1.0〜2.0倍が好ましい。中間層中でこのような高密度で本発明のN型半導性粒子を用いることにより、中間層の整流性が高まり、膜厚を厚くしても残留電位の上昇やドット画像の劣化を効果的に防止でき、良好な有機感光体を形成することができる。又、このような中間層はバインダー樹脂100体積部に対し、N型半導性粒子を100〜200体積部を用いることが好ましい。
【0073】
一方、これらの粒子を分散し、中間層の層構造を形成するバインダー樹脂としては、粒子の良好な分散性を得る為にポリアミド樹脂が好ましいが、特に以下に示すポリアミド樹脂が好ましい。
【0074】
中間層のバインダー樹脂としてはアルコール可溶性ポリアミド樹脂が好ましい。有機感光体の中間層のバインダー樹脂としては、中間層を均一な膜厚で形成するために、溶媒溶解性の優れた樹脂が必要とされている。このようなアルコール可溶性のポリアミド樹脂としては、前記した6−ナイロン等のアミド結合間の炭素鎖の少ない化学構造から構成される共重合ポリアミド樹脂やメトキシメチル化ポリアミド樹脂が知られているが、これらのポリアミド樹脂以外にも、下記のような化学構造を有するポリアミド樹脂が好ましく用いられる。
【0075】
【化19】

【0076】
【化20】

【0077】
【化21】

【0078】
上記具体例中の〔〕の外の数字は繰り返し単位構造の比率(モル%)を示す。
【0079】
上記具体例の中でも、N−1〜N−4のポリアミド樹脂が特に好ましい。
【0080】
又、上記ポリアミド樹脂の分子量は数平均分子量で5,000〜80,000が好ましく、10,000〜60,000がより好ましい。数平均分子量が5,000以下だと中間層の膜厚の均一性が劣化し、本発明の効果が十分に発揮されにくい。一方、80,000より大きいと、樹脂の溶媒溶解性が低下しやすく、中間層中に凝集樹脂が発生しやすく、黒ポチの発生やドット画像の劣化を起こしやすい。
【0081】
上記ポリアミド樹脂はその一部が既に市販されており、例えばダイセル・デグサ(株)社製のベスタメルトX1010、X4685等の商品名で販売されて、一般的なポリアミドの合成法で作製することができるが、以下に合成例の一例を挙げる。
【0082】
上記ポリアミド樹脂を溶解し、塗布液を作製する溶媒としては、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール等の炭素数2〜4のアルコール類が好ましく、ポリアミドの溶解性と作製された塗布液の塗布性の点で優れている。これらの溶媒は全溶媒中に30〜100質量%、好ましくは40〜100質量%、更には50〜100質量%が好ましい。前記溶媒と併用し、好ましい効果を得られる助溶媒としては、メタノール、ベンジルアルコール、トルエン、メチレンクロライド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0083】
本発明の中間層の膜厚は0.3〜10μmが好ましい。中間層の膜厚が0.5μm未満では、黒ポチラが発生しやすく、ドット画像の劣化を起こしやすい。10μmを超えると、残留電位の上昇が発生しやすく、ドット画像が劣化しやすい。中間層の膜厚は0.5〜5μmがより好ましい。
【0084】
又、上記中間層は実質的に絶縁層であることが好ましい。ここで絶縁層とは、体積抵抗が1×108以上である。本発明の中間層及び保護層の体積抵抗は1×108〜1015Ω・cmが好ましく、1×109〜1014Ω・cmがより好ましく、更に好ましくは、2×109〜1×1013Ω・cmである。体積抵抗は下記のようにして測定できる。
【0085】
測定条件;JIS:C2318−1975に準ずる。
【0086】
測定器:三菱油化社製Hiresta IP
測定条件:測定プローブ HRS
印加電圧:500V
測定環境:30±2℃、80±5RH%
体積抵抗が1×108未満では中間層の電荷ブロッキング性が低下し、黒ポチの発生が増大し、有機感光体の電位保持性も劣化し、良好な画質が得られない。一方1015Ω・cmより大きいと繰り返し画像形成で残留電位が増大しやすく、良好な画質が得られない。
【0087】
感光層
本発明の感光体の感光層構成は前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。
【0088】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
【0089】
電荷発生層
本発明の有機感光体には、電荷発生物質として350nm〜500nmの波長領域に高感度特性を有する電荷発生物質を用いることが好ましい。このような電荷発生物質としてはアゾ顔料、ペリレン顔料、多感キノン顔料等が好ましく用いられる。又、これらの顔料を併用して用いることができる。本発明に好ましく用いられる顔料化合物を下記に例示する。
【0090】
【化22】

【0091】
【化23】

【0092】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.3μm〜2μmが好ましい。
【0093】
電荷輸送層
前記したように、本発明では電荷輸送層を複数の電荷輸送層から構成し、且つ最上層の電荷輸送層に本発明の無機微粒子を含有させた構成が好ましい。
【0094】
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により前記した無機微粒子の他に酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0095】
電荷輸送物質(CTM)としては、前記一般式(1)の電荷輸送物質が用いられるが、これ以外に、公知の正孔輸送性(P型)の電荷輸送物質(CTM)を併用してもよい。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。
【0096】
電荷輸送層(CTL)に用いられるバインダー樹脂としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂かを問わない。例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位構造のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。これらの中で吸水率が小さく、CTMの分散性、電子写真特性が良好なポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
【0097】
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し50〜200質量部が好ましい。
【0098】
電荷輸送層の合計膜厚は、10〜25μmが好ましい。該合計膜厚が10μm未満では、現像時の潜像電位を十分に獲得しにくく、画像濃度の低下やドット再現性の劣化が発生しやすく、又、25μmを超えると、電荷キャリアの拡散(電荷発生層で発生した電荷キャリアの拡散)が大きくなり、ドット再現性が劣化しやすい。また、表面層となる電荷輸送層の膜厚は1.0〜8.0μmが好ましい。
【0099】
中間層、電荷発生層、電荷輸送層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン等の地球環境に優しい溶媒が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0100】
又、本発明に係わる有機感光体は、感光体を構成する層構成全層の残留溶媒を5000ppm以下に乾燥することが好ましい。更に、3000ppm以下がより好ましい。残留溶媒が多すぎるとNOx等の活性ガスを感光層中に進入させやすく、画像ボケや転写メモリーの発生による画像ムラ等を発生させやすい。
【0101】
残留溶媒量は下記のようにして測定する。
【0102】
感光体の支持体から層構成全層を剥離して、熱分解ガスクロマトグラフィー(GC15A:島津製作所製)及びキューリーポイントパイローライザー(JHP−3S:日本分析工業社製)を用いて感光層中(中間層を含む全層)の残留溶媒量を測定する。
【0103】
又、これらの各層の塗布溶液は塗布工程に入る前に、塗布溶液中の異物や凝集物を除去するために、金属フィルター、メンブランフィルター等で濾過することが好ましい。例えば、日本ポール社製のプリーツタイプ(HDC)、デプスタイプ(プロファイル)、セミデプスタイプ(プロファイルスター)等を塗布液の特性に応じて選択し、濾過をすることが好ましい。
【0104】
次に有機感光体を製造するための塗布加工方法としては、スライドホッパー型塗布装置の他に、浸漬塗布、スプレー塗布等の塗布加工法が用いられる。本発明の表面層の形成には円形スライドホッパー型塗布装置を用いるのが最も好ましい。
【0105】
上記塗布液供給型の塗布装置の中でもスライドホッパー型塗布装置を用いた塗布加方法は、前記した低沸点溶媒を用いた分散液を塗布液として用いる場合に最も適しており、円筒状の感光体の場合は特開昭58−189061号公報等に詳細に記載されている円形スライドホッパー型塗布装置等を用いて塗布することが好ましい。
【0106】
円形スライドホッパー型塗布装置を用いる塗布方法では、スライド面終端と基材は、ある間隙(約2μm〜2mm)を持って配置されているため基材を傷つける事なく、また性質の異なる層を多層形成させる場合においても、既に塗布された層を損傷することなく塗布できる。更に性質が異なり同一溶媒に溶解する層を多層形成させる際にも、浸漬塗布方法と比べて溶媒中に存在する時間がはるかに短いので、下層成分が上層側へ殆ど溶出せず、塗布槽にも溶出することなく塗布できるので、本発明の無機微粒子の分散性を劣化させずに塗布することができる。
【0107】
本発明の有機感光体の表面層には、前記一般式(1)で表される化合物と共に3〜100nmの無機微粒子を含有させることが好ましい。有機感光体の表面に無機微粒子を含有させることにより、耐摩耗特性を改善でき、且つ前記一般式(1)電荷輸送物質を用いることにより、無機微粒子の分散性を劣化させないで表面層に含有させることができるので、短波長レーザに対しても透明性のよい表面層を形成でき、その結果、高細密の電子写真画像を有機感光体上に形成することが出来る。
【0108】
本発明の無機微粒子としては、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等の金属酸化物(遷移金属酸化物も含む)が好ましい。中でもシリカ、酸化チタンが好ましく用いられる。
【0109】
これらの金属酸化物粒子は、表面に存在する水酸基を封鎖して有機感光体の表面層に用いることが知られているが、本発明では、この水酸基の平均的な封鎖レベルをより完全なレベルにするために、無機微粒子の表面処理を改良したものである。
【0110】
金属酸化物粒子は、焼成強化したものが好ましい。例えば、焼成強化していないシリカでは疎水化処理が困難であるため、本発明の複数回表面処理を施すシリカとしては、焼成強化シリカが好ましい。焼成強化シリカでは、充分な強度を持たせるために、通常500℃以上、好ましくは1000℃以上の温度で焼成したものを用いる。焼成時間は、好ましくは5時間以上、更に好ましくは10時間以上である。上述の温度条件でシリカを焼成することによって、シリカ粒子の表面に存在している水酸基、シラノール基等の官能基が分解され、ケイ素酸化物となる。また、この結果シリカ粒子の比表面積が小さくなり、シラン化合物等により疎水化処理した場合に、効果的に表面処理することができる。このようなシリカとしては具体的に、4塩化ケイ素の酸素焔中で高温加水分解により生成されたものが挙げられる。
【0111】
無機微粒子の数平均一次粒径(Dp)が3.0〜100nmの範囲の微粒子を用いる。特に、5nm〜70nmが好ましい。数平均一次粒径(Dp)とは、微粒子を透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によってフェレ方向平均径としての測定値である。数平均一次粒径(Dp)が3.0nm未満の無機微粒子は表面層中での均一な分散ができにくく、凝集粒子を形成しやすく、該凝集粒子が電荷トラップとなって残留電位が増大し、画像濃度の低下やドット再現性の劣化を発生しやすい。一方、数平均一次粒径(Dp)が100nmより大きい無機微粒子は表面層の表面に大きな凹凸を作りやすく、これらの大きな凹凸に活性ガス(オゾンやNOx)が付着しやすく、画像ボケやドット再現性の劣化が発生しやすい。又、数平均一次粒径(Dp)が100nmより大きい無機微粒子は分散液中で沈澱しやすく、凝集物が発生しやすい。
【0112】
本発明において、無機微粒子の表面処理とは、無機微粒子表面を金属酸化物、有機化合物、有機金属化合物、フッ素化合物、反応性有機ケイ素化合物等によって被覆することを示す。無機微粒子表面が金属化合物、有機化合物、有機金属化合物、フッ素化合物、反応性有機ケイ素化合物等によって被覆されていることは、光電子分光法(ESCA)、オージェ電子分光法(Auger)、2次イオン質量分析法(SIMS)や拡散反射FI−IR等の表面分析手法を複合的に用いることにより高精度に確認される。
【0113】
無機微粒子の表面処理は、湿式法で行うことができる。例えば、無機微粒子を水中に分散させて水性スラリーとし、この水性スラリーと、水溶性ケイ酸塩、水溶性のアルミニウム化合物等を混合して行う。前記水溶性のケイ酸塩として、ケイ酸ナトリウムを使用した場合には、硫酸、硝酸、塩酸等の酸で中和することができる。一方、水溶性のアルミニウム化合物として硫酸アルミニウムを用いたときは水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリで中和することができる。反応性有機ケイ素化合物による表面処理では、有機溶剤や水に対して反応性有機ケイ素化合物を溶解または懸濁させた液と無機微粒子を混合し、この液を数分から1時間程度撹拌する。そして場合によっては該液に加熱処理を施した後に、濾過等の工程を経た後乾燥し、表面を有機ケイ素化合物で被覆した無機微粒子を得ることができる。フッ素化合物による表面処理は、有機溶剤や水に対してフッ素原子を有する有機ケイ素化合物等を溶解または懸濁させ、該懸濁液と無機微粒子を混合し、該混合溶液を数分から1時間程度撹拌混合し、場合によっては加熱処理を施した後に、濾過などの工程を経て乾燥し、フッ素化合物で被覆する。本発明の複数回表面処理シリカは、ある層では分散性を向上するための表面処理を施して該粒子を含有する塗布液の安定性を改善し、ある層では、例えば滑り性、表面性向上の為のシリコーンオイル、或いはシリコーン樹脂で処理することにより、滑り性、表面性の向上を行っている。
【0114】
本発明に係わる複数回の表面処理の好ましい例としては、一次処理をハロゲン化シラン類による表面処理を行ない、最終処理をシラザン化合物類の表面処理の表面処理を行なった酸化物粒子が好ましい。
【0115】
又、一次処理をシリコーンオイル類による表面処理を行ない、最終処理をシラザン化合物類の表面処理の表面処理を行なった酸化物粒子も好ましい。例えば、ハロゲン化シラン類或いはシリコーンオイル系処理剤によって一次表面処理し、この一次処理粉末を解砕し、さらに解砕粉末をアルキルシラザン系処理剤によって二次表面処理することにより、疎水化度および疎水化度分布を改善した酸化物粒子を得ることができる。
【0116】
ハロゲン化シラン類或いはシリコーンオイル系処理剤による一次表面処理、解砕処理後のアルキルシラザン系処理剤による二次表面処理は乾式処理または湿式処理の何れでも良い。ただし、上記一次表面処理と二次表面処理の順序が異なったり、あるいは最終処理の処理剤のや種類使用量や処理方法などが適切でない場合には、疎水度や疎水化度分布が改善されず、本発明の目的を達成し得ない。特に、最終処理がシラザン化合物類以外の場合は、表面処理が時間の経過と共に、離脱しやすく、疎水化度分布が大きくなりやすい。
【0117】
このような複数回の表面処理を行なうことにより、酸化物粒子の疎水化度及び疎水化度分布を改善することができ、画像濃度の低下や画像ボケ或いはダッシュマークの発生を効果的に防止することができる。
【0118】
又、本発明に係わる表面層の無機微粒子は、疎水化度を76%(vol.%)以上にすることが好ましい。該無機微粒子の疎水化度が76%(vol.%)未満では、無機微粒子の表面に存在する水酸基が多く、電位特性(帯電電位や残留電位等)の湿度依存性が大きく、又、NOx等の活性ガスを表面に吸着しやすく、画像ボケやダッシュマークが発生しやすい。無機微粒子の疎水化度は80%以上がより好ましい。
【0119】
又、本発明に係わる表面層の無機微粒子は、疎水化度分布値が10%(vol.%)以下が好ましい。疎水化度分布値が10%(vol.%)より大きいと、表面に水酸基が多く残存する無機微粒子が含まれ、画像ボケの発生が発生しやすい。
【0120】
尚、本発明の疎水化度(メタノールウェッタビリティ)とはメタノールに対する濡れ性の尺度で示される。即ち、以下のように定義される。
【0121】
疎水化度(メタノールウェッタビリティ)=(a/(a+50))×100
疎水化度の測定方法を以下に記す。
【0122】
内容量200mlのビーカー中に入れた蒸留水50mlに、測定対象の無機微粒子を0.2g秤量し添加する。メタノールを先端が液体中に浸せきされているビュレットから、ゆっくり撹拌した状態で無機微粒子の全体が濡れるまで(全部が沈降するまで)ゆっくり滴下する。この無機微粒子全体を濡らすために必要なメタノールの量をa(ml)とした場合に、上記式により疎水化度が算出される。
【0123】
疎水化度分布値の測定方法
1)測定対象の無機微粒子を0.2g秤量し、遠沈管に入れる。
【0124】
(プロットしたい点数分+1本(全沈用)を用意する)
2)駒込ピペットにて濃度の異なるメタノール溶液を各7ml遠沈管に入れ、しっかりしめる(全沈用は上記疎水化度で決定されたメタノール濃度を用いる)。
【0125】
3)ターブラーミキサー90rpmで30秒間分散する。
【0126】
4)遠心分離器にかける(3500rpm、10分間)。
【0127】
5)沈降容積を読みとり、全沈降容積(全部が沈降した容積)を100%としたときの各沈降容積%を求める。
【0128】
6)上記、各測定値を基に、横軸メタノール濃度(Vol.%)、縦軸沈降容積(Vol.%)のグラフを作製する。
【0129】
上記測定より、疎水化度分布を測定し、疎水化度分布値は次のように定義される。
【0130】
{(沈降容積が100%のメタノールVol.%)
−(沈降容積が10%のメタノールVol.%)}≦25
疎水化度分布曲線を図4に示す。図4の分布曲線では、a点のメタノール濃度が疎水化度を表し、a点のメタノール濃度とb点のメタノール濃度の差;Δ(a−b)が本発明の疎水化度分布値を表す。
【0131】
次に、本発明の一次表面処理或いは二次表面処理に用いる表面処理剤について、記載する。
【0132】
本発明の一次処理に好ましく用いられるシリコーンオイル系処理剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルといったストレートシリコーンオイルやアミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、片末端反応性変性シリコーンオイル、異種官能基変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどの変性シリコーンオイルを用いることができる。また目的に応じて2種以上を混合しても良い。
【0133】
ハロゲン化シラン類としては、ジメチルジクロロシラン、モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシラン等が有る。
【0134】
最終処理の表面処理剤に用いられるシラザン類としては、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、へキサプロピルジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサペンチルジシラザン、ヘキサヘキシルジシラザン、ヘキサシクロヘキシルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザン等が使用できる。
【0135】
上記、シリコーンオイル系処理剤及びハロゲン化シラン類以外に下記に示すアルコキシシラン類、シロキサン類、金属アルコキシド、脂肪酸及びその金属塩等をシラザン類の最後の表面処理の前に、表面処理剤として用いてもよい。
【0136】
アルコキシシラン類としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i−ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等がある。
【0137】
シロキサン類としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサンなどのシロキサンなどがある。
【0138】
金属アルコキシドとしては、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−i−プロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−s−ブトキシアルミニウム、トリ−t−ブトキシアルミニウム、モノ−s−ブトキシジ−i−プロピルアルミニウム、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−s−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−i−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、ジメトキシ錫、ジエトキシ錫、ジ−n−ブトキシ錫、テトラエトキシ錫、テトラ−i−プロポキシ錫、テトラ−n−ブトキシ錫、ジエトキシ亜鉛、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド、マグネシウムイソプロポキシド等が挙げられる。
【0139】
脂肪酸及びその金属塩としては、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸などの長鎖脂肪酸が挙げられ、その金属塩としては亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、リチウム等の金属との塩が挙げられる。
【0140】
これらの処理剤はヘキサン、トルエン、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなど)、アセトン等、場合によっては、水などで希釈して用いると良い。
【0141】
表面処理の具体的な手順;例えば、シリコーンオイルを溶かした溶剤(好ましくは有機酸等でpH4に調整)の中にシリカ粉末を入れて反応させ、その後、溶剤を除去し、解砕処理を施す。その後、シラザン化合物を溶かした溶剤の中に、解砕した処理粉を入れて反応させ、その後、溶剤を除去し、解砕処理を施す。また、次のような方法でも良い。例えば、シリカ粉末を反応槽に入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながらアルコール水を添加し、オルガノポリシロキサン等のシリコーンオイル系処理液を反応槽に導入して表面処理を行い、さらに加熱撹拌して溶剤を除去する。その後、解砕処理を行った後に、窒素雰囲気下、撹拌しながら、アルキルシラザン系処理液を導入して表面処理を行い、さらに加熱撹拌して溶剤を除去した後に冷却する。処理条件はシリカ粉末が上記疎水率、疎水化度および上記分布頻度を有するように調整する。
【0142】
又、これらの処理剤はヘキサン、トルエン、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなど)、アセトン等、場合によっては、水などで希釈して用いることもできる。
【0143】
前記表面層中には無機微粒子の分散性を助けるバインダー樹脂を含有する。該バインダー樹脂としては、ポリカーボネートやポリアリレートが好ましい。これらポリカーボネートやポリアリレートの分子量は10,000〜100,000が好ましい。
【0144】
又、表面層中の無機子の比率は質量比でバインダー樹脂100質量部に対し、少なくとも5質量部以上50質量部以下の量で用いることが好ましい。5質量量部未満では表面層の摩耗が大きく、擦り傷等が発生してハーフトーン画像が荒れやすい。50質量部より多いと表面層が脆弱な膜となり、クラック等が発生しやすい。
【0145】
又、本発明に係わる感光体の表面層には酸化防止剤を含有させることが好ましい。表面層は感光体の帯電時の活性ガス、例えばNOxやオゾン等で酸化されやすく、画像ボケが発生しやすいが、酸化防止剤を共存させることにより、画像ボケの発生を防止することが出来る。該酸化防止剤とは、その代表的なものは有機感光体中ないしは有機感光体表面に存在する自動酸化性物質に対して、光、熱、放電等の条件下で酸素の作用を防止ないし、抑制する性質を有する物質である。代表的には下記の化合物群が挙げられる。
【0146】
【化24】

【0147】
【化25】

【0148】
【化26】

【0149】
【化27】

【0150】
又、本発明に係わる感光体の最上層には、含フッ素樹脂微粒子を含有させた構成が好ましい。再表面層に含フッ素樹脂微粒子を含有させることにより、感光体表面に形成されたトナー画像の記録紙等への転写性が向上し、ドット画像の再現性を向上させる。
【0151】
中間層、電荷発生層、電荷輸送層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0152】
次に、本発明に係わる有機感光体を用いた画像形成装置について説明する。
【0153】
図1に示す画像形成装置1は、デジタル方式による画像形成装置であって、画像読取り部A、画像処理部B、画像形成部C、転写紙搬送手段としての転写紙搬送部Dから構成されている。
【0154】
画像読取り部Aの上部には原稿を自動搬送する自動原稿送り手段が設けられていて、原稿載置台11上に載置された原稿は原稿搬送ローラ12によって1枚宛分離搬送され読み取り位置13aにて画像の読み取りが行われる。原稿読み取りが終了した原稿は原稿搬送ローラ12によって原稿排紙皿14上に排出される。
【0155】
一方、プラテンガラス13上に置かれた場合の原稿の画像は走査光学系を構成する照明ランプ及び第1ミラーから成る第1ミラーユニット15の速度vによる読み取り動作と、V字状に位置した第2ミラー及び第3ミラーから成る第2ミラーユニット16の同方向への速度v/2による移動によって読み取られる。
【0156】
読み取られた画像は、投影レンズ17を通してラインセンサである撮像素子CCDの受光面に結像される。撮像素子CCD上に結像されたライン状の光学像は順次電気信号(輝度信号)に光電変換されたのちA/D変換を行い、画像処理部Bにおいて濃度変換、フィルタ処理などの処理が施された後、画像データは一旦メモリに記憶される。
【0157】
画像形成部Cでは、画像形成ユニットとして、像担持体であるドラム状の感光体21と、その外周に、該感光体21を帯電させる帯電手段(帯電工程)22、帯電した感光体の表面電位を検出する電位検出手段220、現像手段(現像工程)23、転写手段(転写工程)である転写搬送ベルト装置45、前記感光体21のクリーニング装置(クリーニング工程)26及び光除電手段(光徐電工程)としてのPCL(プレチャージランプ)27が各々動作順に配置されている。また、現像手段23の下流側には感光体21上に現像されたパッチ像の反射濃度を測定する反射濃度検出手段222が設けられている。感光体21には、本発明に係わる有機感光体を使用し、図示の時計方向に駆動回転される。
【0158】
回転する感光体21へは帯電手段22による一様帯電がなされた後、像露光手段(像露光工程)30としての露光光学系により画像処理部Bのメモリから呼び出された画像信号に基づいた像露光が行われる。書き込み手段である像露光手段30としての露光光学系は図示しないレーザダイオードを発光光源とし、回転するポリゴンミラー31、fθレンズ34、シリンドリカルレンズ35を経て反射ミラー32により光路が曲げられ主走査がなされるもので、感光体21に対してAoの位置において像露光が行われ、感光体21の回転(副走査)によって静電潜像が形成される。本実施の形態の一例では文字部に対して露光を行い静電潜像を形成する。
【0159】
本発明の画像形成装置においては、感光体上に静電潜像を形成するに際し、発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードを像露光光源として用いる。これらの像露光光源を用いて、書込みの主査方向の露光ドット径を10〜50μmに絞り込み、有機感光体上にデジタル露光を行うことにより、600dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)以上から2500dpiの高解像度の電子写真画像をうることができる。
【0160】
前記露光ドット径とは該露光ビームの強度がピーク強度の1/e2以上の領域の主走査方向にそった露光ビームの長さ(Ld:長さが最大位置で測定する)を云う。
【0161】
用いられる光ビームとしては半導体レーザを用いた走査光学系及びLEDの固体スキャナー等があり、光強度分布についてもガウス分布及びローレンツ分布等があるがそれぞれのピーク強度の1/e2以上の領域を本発明に係わる露光ドット径とする。
【0162】
感光体21上の静電潜像は現像手段23によって反転現像が行われ、感光体21の表面に可視像のトナー像が形成される。本発明の画像形成方法では、該現像手段に用いられる現像剤には重合トナーを用いることが好ましい。形状や粒度分布が均一な重合トナーを本発明に係わる有機感光体と併用することにより、より鮮鋭性が良好な電子写真画像を得ることができる。
【0163】
〈トナー〉
本発明の有機感光体上に形成された静電潜像は現像によりトナー像として顕像化される。現像に用いられるトナーは、粉砕トナーでも、重合トナーでもよいが、本発明に係わるトナーとしては、安定した粒度分布を得られる観点から、重合法で作製できる重合トナーが好ましい。
【0164】
重合トナーとはトナー用バインダーの樹脂の生成とトナー形状がバインダー樹脂の原料モノマーの重合と、必要によりその後の化学的処理により形成されるトナーを意味する。より具体的には懸濁重合、乳化重合等の重合反応と、必要によりその後に行われる粒子同士の融着工程を経て形成されるトナーを意味する。
【0165】
なお、トナーの体積平均粒径、即ち、上記50%体積粒径(Dv50)は2〜9μm、より好ましくは3〜7μmであることが望ましい。この範囲とすることにより、解像度を高くすることができる。さらに上記の範囲と組み合わせることにより、小粒径トナーでありながら、微細な粒径のトナーの存在量を少なくすることができ、長期に亘ってドット画像の再現性が改善され、鮮鋭性の良好な、安定した画像を形成することができる。
【0166】
〈現像剤〉
本発明に係わるトナーは、一成分現像剤でも二成分現像剤として用いてもよい。
【0167】
一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤、あるいはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性一成分現像剤としたものがあげられ、いずれも使用することができる。
【0168】
又、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜80μmのものがよい。
【0169】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0170】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0171】
転写紙搬送部Dでは、画像形成ユニットの下方に異なるサイズの転写紙Pが収納された転写紙収納手段としての給紙ユニット41(A)、41(B)、41(C)が設けられ、また側方には手差し給紙を行う手差し給紙ユニット42が設けられていて、それらの何れかから選択された転写紙Pは案内ローラ43によって搬送路40に沿って給紙され、給紙される転写紙Pの傾きと偏りの修正を行う対の給紙レジストローラ44によって転写紙Pは一時停止を行ったのち再給紙が行われ、搬送路40、転写前ローラ43a、給紙経路46及び進入ガイド板47に案内され、感光体21上のトナー画像が転写位置Boにおいて転写極24及び分離極25によって転写搬送ベルト装置45の転写搬送ベルト454に載置搬送されながら転写紙Pに転写され、該転写紙Pは感光体21面より分離し、転写搬送ベルト装置45により定着手段50に搬送される。
【0172】
定着手段50は定着ローラ51と加圧ローラ52とを有しており、転写紙Pを定着ローラ51と加圧ローラ52との間を通過させることにより、加熱、加圧によってトナーを定着させる。トナー画像の定着を終えた転写紙Pは排紙トレイ64上に排出される。
【0173】
以上は転写紙の片側への画像形成を行う状態を説明したものであるが、両面複写の場合は排紙切換部材170が切り替わり、転写紙案内部177が開放され、転写紙Pは破線矢印の方向に搬送される。
【0174】
更に、搬送機構178により転写紙Pは下方に搬送され、転写紙反転部179によりスイッチバックさせられ、転写紙Pの後端部は先端部となって両面複写用給紙ユニット130内に搬送される。
【0175】
転写紙Pは両面複写用給紙ユニット130に設けられた搬送ガイド131を給紙方向に移動し、給紙ローラ132で転写紙Pを再給紙し、転写紙Pを搬送路40に案内する。
【0176】
再び、上述したように感光体21方向に転写紙Pを搬送し、転写紙Pの裏面にトナー画像を転写し、定着手段50で定着した後、排紙トレイ64に排紙する。
【0177】
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0178】
図2は、本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【0179】
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7と、給紙搬送手段21及び定着手段24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0180】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電工程)2Y、露光手段(露光工程)3Y、現像手段(現像工程)4Y、一次転写手段(一次転写工程)としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成部10Bkは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Bk、帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラ5Bk、クリーニング手段6Bkを有する。
【0181】
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkを中心に、回転する帯電手段2Y、2M、2C、2Bkと、像露光手段3Y、3M、3C、3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C、4Bk、及び、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkをクリーニングするクリーニング手段5Y、5M、5C、5Bkより構成されている。
【0182】
前記画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkにそれぞれ形成するトナー画像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
【0183】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体ドラム1Yの周囲に、帯電手段2Y(以下、単に帯電手段2Y、あるいは、帯電器2Yという)、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Y(以下、単にクリーニング手段5Y、あるいは、クリーニングブレード5Yという)を配置し、感光体ドラム1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体ドラム1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Yを一体化するように設けている。
【0184】
帯電手段2Yは、感光体ドラム1Yに対して一様な電位を与える手段であって、本実施の形態においては、感光体ドラム1Yにコロナ放電型の帯電器2Yが用いられている。
【0185】
像露光手段3Yは、帯電器2Yによって一様な電位を与えられた感光体ドラム1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、感光体ドラム1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子(商品名;セルフォックレンズ)とから構成されるもの、あるいは、レーザ光学系などが用いられる。
【0186】
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)として一体に結合して構成し、この画像形成ユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)を形成し、装置本体に着脱自在の単一画像形成ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0187】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0188】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材(定着された最終画像を担持する支持体:例えば普通紙、透明シート等)としての転写材Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラ5bに搬送され、転写材P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。ここで、中間転写体や転写材等の感光体上に形成されたトナー画像の転写支持体を総称して転写媒体と云う。
【0189】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラ5bにより転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
【0190】
画像形成処理中、一次転写ローラ5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラ5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに当接する。
【0191】
二次転写ローラ5bは、ここを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
【0192】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0193】
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とから成る。
【0194】
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bk、及びクリーニング手段6bとから成る。
【0195】
次に図3は本発明の有機感光体を用いたカラー画像形成装置(少なくとも有機感光体の周辺に帯電手段、露光手段、複数の現像手段、転写手段、クリーニング手段及び中間転写体を有する複写機あるいはレーザビームプリンタ)の構成断面図である。ベルト状の中間転写体70は中程度の抵抗の弾性体を使用している。
【0196】
1は像形成体として繰り返し使用される回転ドラム型の感光体であり、矢示の反時計方向に所定の周速度をもって回転駆動される。
【0197】
感光体1は回転過程で、帯電手段(帯電工程)2により所定の極性・電位に一様に帯電処理され、次いで不図示の像露光手段(像露光工程)3により画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザビームによる走査露光光等による画像露光を受けることにより目的のカラー画像のイエロー(Y)の色成分像(色情報)に対応した静電潜像が形成される。
【0198】
次いで、その静電潜像がイエロー(Y)の現像手段:現像工程(イエロー色現像器)4Yにより第1色であるイエロートナーにより現像される。この時第2〜第4の現像手段(マゼンタ色現像器、シアン色現像器、ブラック色現像器)4M、4C、4Bkの各現像器は作動オフになっていて感光体1には作用せず、上記第1色目のイエロートナー画像は上記第2〜第4の現像器により影響を受けない。
【0199】
中間転写体70はローラ79a、79b、79c、79d、79eで張架されて時計方向に感光体1と同じ周速度をもって回転駆動されている。
【0200】
感光体1上に形成担持された上記第1色目のイエロートナー画像が、感光体1と中間転写体70とのニップ部を通過する過程で、1次転写ローラ5aから中間転写体70に印加される1次転写バイアスにより形成される電界により、中間転写体70の外周面に順次中間転写(1次転写)されていく。
【0201】
中間転写体70に対応する第1色のイエロートナー画像の転写を終えた感光体1の表面は、クリーニング装置6aにより清掃される。
【0202】
以下、同様に第2色のマゼンタトナー画像、第3色のシアントナー画像、第4色のクロ(ブラック)トナー画像が順次中間転写体70上に重ね合わせて転写され、目的のカラー画像に対応した重ね合わせカラートナー画像が形成される。
【0203】
2次転写ローラ5bで、2次転写対向ローラ79bに対応し平行に軸受させて中間転写体70の下面部に離間可能な状態に配設してある。
【0204】
感光体1から中間転写体70への第1〜第4色のトナー画像の順次重畳転写のための1次転写バイアスはトナーとは逆極性で、バイアス電源から印加される。その印加電圧は、例えば+100V〜+2kVの範囲である。
【0205】
感光体1から中間転写体70への第1〜第3色のトナー画像の1次転写工程において、2次転写ローラ5b及び中間転写体クリーニング手段6bは中間転写体70から離間することも可能である。
【0206】
ベルト状の中間転写体70上に転写された重ね合わせカラートナー画像の第2の画像担持体である転写材Pへの転写は、2次転写ローラ5bが中間転写体70のベルトに当接されると共に、対の給紙レジストローラ23から転写紙ガイドを通って、中間転写体70のベルトに2次転写ローラ5bとの当接ニップに所定のタイミングで転写材Pが給送される。2次転写バイアスがバイアス電源から2次転写ローラ5bに印加される。この2次転写バイアスにより中間転写体70から第2の画像担持体である転写材Pへ重ね合わせカラートナー画像が転写(2次転写)される。トナー画像の転写を受けた転写材Pは定着手段24へ導入され加熱定着される。
【0207】
本発明の画像形成装置は電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【実施例】
【0208】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。尚、下記文中「部」とは「質量部」を表す。
【0209】
感光体1の作製
下記の様に感光体1を作製した。
【0210】
中間層
洗浄済み円筒状アルミニウム基体(切削加工により十点表面粗さRz:0.81μmに加工した)上に、下記中間層塗布液を浸漬塗布法で塗布し、120℃30分で乾燥し、乾燥膜厚5μmの中間層を形成した。
【0211】
下記中間層分散液を同じ混合溶媒にて二倍に希釈し、一夜静置後に濾過(フィルター;日本ポール社製リジメッシュフィルター公称濾過精度:5ミクロン、圧力;50kPa)し、中間層塗布液を作製した。
【0212】
(中間層分散液の作製)
バインダー樹脂:(例示ポリアミドN−1) 1部
ルチル形酸化チタン(一次粒径35nm;末端に水酸基を有するジメチルポリシロキサンで表面処理を行ない、疎水化度を33に調製した酸化チタン顔料) 5.6部
エタノール/n−プロピルアルコール/THF(=45/20/30質量比)10部
上記成分を混合し、サンドミル分散機を用い、10時間、バッチ式にて分散して、中間層分散液を作製した。
【0213】
電荷発生層:CGL
電荷発生物質(CGM):例示化合物CGM−2 24部
ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学社製) 12部
2−ブタノン/シクロヘキサノン=4/1(v/v) 300部
上記組成物を混合し、サンドミルを用いて分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を浸漬塗布法で塗布し、前記中間層の上に乾燥膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。
【0214】
電荷輸送層1(CTL1)
電荷輸送物質(例示化合物CTM−2) 225部
ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 300部
酸化防止剤(例示化合物AO−1) 3部
ジクロロメタン 2000部
シリコンオイル(KF−54:信越化学社製) 1部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液1を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、110℃70分の乾燥を行い、乾燥膜厚18.0μmの電荷輸送層1を形成した。
【0215】
電荷輸送層2(CTL2)
無機微粒子:シリカ粒子(一次処理:ジメチルジクロロシラン、二次処理:ヘキサメチルジシラザンで表面処理された平均一次粒径8nmのシリカ:疎水化度76、疎水化度分布値10) 60部
電荷輸送物質(例示化合物CTM−2) 150部
ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 300部
酸化防止剤(例示化合物AO−1) 6部
THF:テトラヒドロフラン 2800部
シリコンオイル(KF−54:信越化学社製) 4部
を混合し、分散・溶解して電荷輸送層塗布液2を調製した。この塗布液を前記電荷輸送層1の上に円形スライドホッパ型塗布機で塗布し、110℃70分の乾燥を行い、乾燥膜厚2.0μmの電荷輸送層2を形成し、感光体1を作製した。感光体1の全層の残留溶媒は3600ppmであった。
【0216】
感光体2〜12の作製
感光体1の作製において、中間層のポリアミド樹脂、電荷発生物質、電荷輸送層1及び2の電荷輸送物質及び電荷輸送層2の無機微粒子の種類を表1のように変化させた以外は感光体1と同様にして感光体2〜12を作製した。但し、感光体10〜12は電荷輸送層2に無機微粒子を含有させないで作製した。又、感光体11及び12に用いたCTMR−1は下記のベンジシン化合物の電荷輸送物質である。
【0217】
【化28】

【0218】
【表1】

【0219】
表1中、無機微粒子1はシリカ、無機微粒子2はアルミナ、無機微粒子3は酸化チタンを表す。又、無機微粒子の表面処理剤については下記の表面処理剤を用いた表面処理を示す。
【0220】
シラザン;ヘキサメチルジシラザン
シリコーンオイル;メチルハイドロジェンシリコーンオイル
尚、感光体1〜13に用いた無機微粒子の疎水化度及び疎水化度分布値は、無機微粒子の表面処理後20℃60%RH環境下で3日間保存後(NN3日後)に前記した測定法により測定した値である。
【0221】
本発明に用いるトナー及び該トナーを用いた現像剤を作製した。
【0222】
次に、下記のごとくしてトナーを作製した。
【0223】
*トナー1−Bk、トナー1−Y、トナー1−M、トナー1−Cの作製
n−ドデシル硫酸ナトリウム=0.90kgと純水10.0Lを入れ撹拌溶解する。この液に、撹拌下、リーガル330R(キャボット社製カーボンブラック)1.20kgを徐々に加え、ついで、サンドグラインダー(媒体型分散機)を用いて、20時間連続分散した。分散後、大塚電子社製・電気泳動光散乱光度計ELS−800を用いて、上記分散液の粒径を測定した結果、重量平均粒径で122nmであった。また、静置乾燥による質量法で測定した上記分散液の固形分濃度は16.6質量%であった。この分散液を「着色剤分散液1」とする。
【0224】
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.055kgをイオン交換水4.0Lに混合し、室温下撹拌溶解する。これを、アニオン界面活性剤溶液Aとする。
【0225】
ノニルフェニルアルキルエーテル0.014kgをイオン交換水4.0Lに混合し、室温下撹拌溶解する。これを、ノニオン界面活性剤溶液Aとする。
【0226】
過硫酸カリウム=223.8gをイオン交換水12.0Lに混合し、室温下撹拌溶解する。これを、開始剤溶液Aと呼ぶ。
【0227】
温度センサー、冷却管、窒素導入装置を付けた100Lの反応釜に、数平均分子量(Mn)が3500のポリプロピレンエマルジョン3.41kgとアニオン界面活性剤溶液Aとノニオン界面活性剤溶液Aとを入れ、撹拌を開始する。次いで、イオン交換水44.0Lを加える。
【0228】
加熱を開始し、液温度が75℃になったところで、開始剤溶液Aを全量添加する。その後、液温度を75℃±1℃に制御しながら、スチレン14.3kgとアクリル酸n−ブチル2.88kgとメタクリル酸0.8kgとt−ドデシルメルカプタン548gとを投入する。
【0229】
さらに、液温度を80℃±1℃に上げて、6時間加熱撹拌を行った。液温度を40℃以下に冷却し撹拌を停止する。ポールフィルターで濾過し、これをラテックスA1とした。
【0230】
なお、ラテックスA1中の樹脂粒子のガラス転移温度は59℃、軟化点は116℃、分子量分布は、重量平均分子量=1.34万、重量平均粒径は125nmであった。
【0231】
過硫酸カリウム=200.7gをイオン交換水12.0Lに混合し、室温下撹拌溶解する。これを、開始剤溶液Bとする。
【0232】
温度センサー、冷却管、窒素導入装置、櫛形バッフルを付けた100Lの反応釜に、ノニオン界面活性剤溶液Aを入れ、撹拌を開始する。次いで、イオン交換水44.0Lを投入する。
【0233】
加熱を開始し、液温度が70℃になったところで、開始剤溶液Bを添加する。この時、スチレン11.0kgとアクリル酸n−ブチル4.00kgとメタクリル酸1.04kgとt−ドデシルメルカプタン9.02gとをあらかじめ混合した溶液を投入する。
【0234】
その後、液温度を72℃±2℃に制御して、6時間加熱撹拌を行った。さらに、液温度を80℃±2℃に上げて、12時間加熱撹拌を行った。
【0235】
液温度を40℃以下に冷却し撹拌を停止する。ポールフィルターで濾過し、この濾液をラテックスB1とした。
【0236】
なお、ラテックスB1中の樹脂粒子のガラス転移温度は58℃、軟化点は132℃、分子量分布は、重量平均分子量=24.5万、重量平均粒径は110nmであった。
【0237】
塩析剤としての塩化ナトリウム=5.36kgとイオン交換水20.0Lを入れ、撹拌溶解する。これを、塩化ナトリウム溶液Aとする。
【0238】
温度センサー、冷却管、窒素導入装置、櫛形バッフルを付けた100LのSUS反応釜(撹拌翼はアンカー翼)に、上記で作製したラテックスA1=20.0kgとラテックスB1=5.2kgと着色剤分散液1=0.4kgとイオン交換水20.0kgとを入れ撹拌する。ついで、35℃に加温し、塩化ナトリウム溶液Aを添加する。その後、5分間放置した後に、昇温を開始し、液温度85℃まで5分で昇温する(昇温速度=10℃/分)。液温度85℃±2℃にて、6時間加熱撹拌し、塩析/融着させる。その後、30℃以下に冷却し撹拌を停止する。目開き45μmの篩いで濾過し、この濾液を会合液とする。ついで、遠心分離機を使用し、会合液よりウェットケーキ状の非球形状粒子を濾取した。その後、イオン交換水により洗浄した。
【0239】
上記で洗浄を完了したウェットケーキ状の着色粒子を、40℃の温風で乾燥し、着色粒子を得た。更に風力分級機により念入りな分級をして50%体積粒径(Dv50)が4.2μmの着色粒子を得た。さらに、この着色粒子に疎水性シリカ(疎水化度=70、数平均一次粒子径=12nm)を1.0質量%添加し、50%体積粒径(Dv50)が4.2μmの「トナー1−Bk」を得た。
【0240】
トナー1−Bkの製造において、カーボンブラック10部の代わりにC.I.ピグメントイエロー185を8部使用した以外同様にして50%体積粒径(Dv50)が4.8μmの「トナー1−Y」を得た。
【0241】
トナー1−Bkの製造において、カーボンブラック10部の代わりにC.I.ピグメントレッド122を10部使用した以外同様にして50%体積粒径(Dv50)が4.3μmの「トナー1−M」を得た。
【0242】
トナー1−Bkの製造において、カーボンブラック10部の代わりにC.I.ピグメントブルー15:3を5部使用した以外同様にして50%体積粒径(Dv50)が4.9μmの「トナー1−C」を得た。
【0243】
トナーの50%体積粒径(Dv50)の測定は、コールターカウンターTAIIを用いて測定することができる。コールターカウンターTAIIではアパーチャー径=100μmのアパーチャーを用いて2.0〜40μmの範囲における粒径分布を用いて測定されたものを示す。
【0244】
現像剤の作製
上記の各トナー、即ちトナー1−Bk〜トナー1−C(全部で4種のトナー)に、シリコーン樹脂を被覆した50%体積粒径(Dv50)が45μmのフェライトキャリアを混合し、トナー濃度6%の現像剤をそれぞれ調製し、評価に供した。これらの現像剤4種ををトナーに対応してそれぞれ現像剤1−Bk〜現像剤1−Cとする。
【0245】
キャリアの50%体積粒径(Dv50)の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0246】
《評価1》
表2のように感光体及びトナーを組み合わせ、基本的に図2の構成を有する市販のフルカラー複合機8050(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)社製)改造機に搭載し、像露光光源として405nmの短波長レーザ光源を用い、鮮鋭性の評価及び耐久試験を行った。詳しくは、スタート時及び5000枚毎に、文字画像、ハーフトーン画像を計2万枚印刷して評価した。評価項目と評価基準を以下に示す。オリジナル画像に白地部、べた黒部、及びレッド、グリーン、ブルーのソリッド画像部、文字画像部、を有するA4画像を印刷した。
【0247】
評価条件
感光体の線速:220mm/sec
(1)画像評価
ドット再現性
評価スタート時にレーザビームの露光径を変化させ、書き込みの主査方向の露光径(Ld)を13μm、21μm、43μmを用い、ハーフトーン画像を作製して評価した。
【0248】
◎:600dpi、1200dpi及び2400dpiのハーフトーン画像が明瞭に(各ドットが独立して)再現されている(高画質特性が非常に良好)。
【0249】
○:600dpi及び1200dpiのハーフトーン画像が明瞭に再現されているが、2400dpiのハーフトーン画像は明瞭さ(各ドットの独立性)が不十分(高画質特性が良好)。
【0250】
△:600dpiのハーフトーン画像が明瞭に再現されているが、1200及び2400dpiのハーフトーン画像は明瞭さが不十分(高画質特性の再評価が必要)。
【0251】
ランクD:600dpiのハーフトーン画像でも明瞭さ(各ドットの独立性)が不十分(高画質特性が不十分)。
【0252】
画像濃度
評価スタート時に、レーザビームの露光径を変化させ、書き込みの主査方向の露光径を13μm、21μm、43μmを用い、2万枚目の印刷画像について濃度計「RD−918」(マクベス社製)を使用し、画像濃度についてはプリンター用紙の濃度を0.0とした相対濃度で測定した。又、下記の残留電位はスタート時と2万枚目の印刷時の光除電後の表面電位の差から求めた。
【0253】
◎:各露光径の残留電位の上昇が50V未満であり、画像濃度が1.3以上/良好
○:少なくとも1つの露光径で、残留電位の上昇が50V〜120Vであり、画像濃度が1.0以上〜1.3未満/実用上問題ないレベル
×:少なくとも1つの露光径で、残留電位の上昇が121V以上であり、画像濃度が1.0未満/実用上問題あり
(画像ボケ:耐活性ガス性)
上記フルカラー複合機8050改造機を低温低湿(10℃、10%RH)の環境下に設置し、1000枚の連続複写後、20分間停止、その後、ハーフトーン画像を複写し、帯電極直下に発生する画像ボケの発生を観察し、下記の評価基準で評価した。
【0254】
◎:ハーフトーン画像に画像ボケの発生は全く見られない(良好)
○:ハーフトーン画像に濃度差が0.05未満の画像ムラが発生しているが、ハーフトーン画像中で、該濃度差があまり目立たない。(実用上問題ないレベル)
×:ハーフトーン画像に濃度差が0.05以上の画像ボケが発生しており、ハーフトーン画像中で、該濃度差がはっきりしている。(実用上問題あり)
色再現性
上記画像ボケの評価スタート時の1枚目の画像と1000枚の連続複写後、20分間停止後の画像のY、M、C各トナーにおける二次色(レッド、ブルー、グリーン)のソリッド画像部の色を「MacbethColor−Eye7000」により測定し、CMC(2:1)色差式を用いて各ソリッド画像の1枚目の画像と1000枚の連続複写後、20分間停止後の画像の色差を算出した。
【0255】
◎:露光径を13μm、21μm及び43μmの全てのドット画像において色差が3以下(良好)
○:露光径を21μm及び43μmのドット画像において色差が3以下(実用可)
△:露光径43μmのドット画像のみ色差が3以下(要検討)
×:露光径を13μm、21μm及び43μmの全てのドット画像の色差が3より大の場合/実用上問題あり(実用不可)
評価結果を下記の表2に示した。
【0256】
【表2】

【0257】
表2より明らかなように、一般式(1)の電荷輸送物質を用いた有機感光体1〜11は、短波長レーザ露光での小さいドットの再現性が安定しており、画像ボケ、画像濃度及び色再現性も良好でる。一方、比較例1の本発明外のCTMR−1の電荷輸送物質を用いた感光体12は、ドット再現性の劣化が大きく、画像ボケの評価も劣っており、その結果、色再現性も劣化している。
【0258】
《評価2》
評価1で行った評価条件の内、露光器の半導体レーザの発振波長を405nmの短波長レーザから480nmの短波長レーザに変更した以外は、評価1と同じにして、評価した。評価2の評価結果は、ほぼ、評価1の評価結果と同じであった。
【0259】
《評価3》
前記評価2の評価条件で、露光器の半導体レーザを発光ダイオード(発振波長:380nm)に変更した以外は評価2と同様にして評価した。発光ダイオードを像露光光源として用いても、評価結果はほぼ評価2と同様であった。
【図面の簡単な説明】
【0260】
【図1】本発明の画像形成装置の機能が組み込まれた概略図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【図3】本発明の有機感光体を用いたカラー画像形成装置の構成断面図である。
【図4】疎水化度分布曲線の図である。
【符号の説明】
【0261】
10Y、10M、10C、10Bk 画像形成ユニット
1Y、1M、1C、1Bk 感光体
2Y、2M、2C、2Bk 帯電手段
3Y、3M、3C、3Bk 露光手段
4Y、4M、4C、4Bk 現像手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に感光層を有する有機感光体において、該感光層が下記一般式(1)の電荷輸送物質を含有することを特徴とする有機感光体。
【化1】

[一般式(1)中、A〜Dは置換又は無置換のフェニル基を表し、XはO又はSを示し、nは1又は2を示す。]
【請求項2】
前記A〜Dの置換基がアルキル基又はアルコキシ基であることを特徴とする請求項1に記載の有機感光体。
【請求項3】
前記感光層が電荷発生物質を含有する電荷発生層及び電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の有機感光体。
【請求項4】
前記電荷輸送層が数平均一次粒径(Dp)で3〜100nmの無機微粒子を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機感光体。
【請求項5】
前記電荷輸送層が複数の電荷輸送層から構成され、且つ最上層の電荷輸送層が前記一般式(1)の電荷輸送物質及び無機微粒子を含有することを特徴とする請求項3又は4に記載の有機感光体。
【請求項6】
前記電荷発生物質が多環キノン化合物であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の有機感光体。
【請求項7】
前記電荷発生物質がペリレン系化合物であることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の有機感光体。
【請求項8】
前記導電性支持体と電荷発生層の間にN型半導性粒子を含有する中間層を有することを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の有機感光体。
【請求項9】
前記N型半導性粒子が酸化チタンであることを特徴とする請求項8に記載の有機感光体。
【請求項10】
前記酸化チタンがルチル形酸化チタン顔料又はアナターゼ形酸化チタン顔料であることを特徴とする請求項9に記載の有機感光体。
【請求項11】
前記中間層にポリアミド樹脂のバインダーを含有することを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の有機感光体。
【請求項12】
前記ポリアミド樹脂が融解熱0〜40J/gで、且つ吸水率5質量%以下のポリアミド樹脂であることを特徴とする請求項11に記載の有機感光体。
【請求項13】
有機感光体上に発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの書込み光源を用いて静電潜像を形成する露光工程を有し、該静電潜像をトナー像に顕像化する現像工程を有する画像形成方法において、前記有機感光体が導電性支持体上に感光層を有し、該感光層が下記一般式(1)の電荷輸送物質を含有することを特徴とする画像形成方法。
【化2】

[一般式(1)中、A〜Dは置換又は無置換のフェニル基を表し、XはO又はSを示し、nは1又は2を示す。]
【請求項14】
有機感光体上に発振波長が350〜500nmの半導体レーザ又は発光ダイオードの書込み光源を用いて静電潜像を形成する露光手段を有し、該静電潜像をトナー像に顕像化する現像手段を有する画像形成装置において、前記有機感光体が導電性支持体上に感光層を有し、該感光層が下記一般式(1)の電荷輸送物質を含有することを特徴とする画像形成装置。
【化3】

[一般式(1)中、A〜Dは置換又は無置換のフェニル基を表し、XはO又はSを示し、nは1又は2を示す。]

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−233044(P2007−233044A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54657(P2006−54657)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】