説明

有機感光体および画像形成装置

【課題】濃度ムラおよび黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生を抑制する有機感光体および画像形成装置の提供。
【解決手段】導電性支持体上に中間層、電荷発生層および電荷輸送層を有する有機感光体において、中間層には金属酸化物粒子が含有されており、金属酸化物粒子が特定構造のチタンキレート化合物または一般式(2)に示すシランカップリング剤〔R7は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはアセチル基、R8は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、R9は水素原子またはメチル基を示す。pは、1〜3の整数。〕により表面処理されたものであり、電荷発生層には電荷発生物質として、特定構造の縮合多環系化合物が含有されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機感光体およびこの有機感光体を具えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンタなどの画像形成装置には、より一層の高画質化が要請されている。
このような要請に対し、露光光源として短波長の半導体レーザーや発光ダイオードなどを用いることが検討されている。
【0003】
商業印刷業界においては、例えばパンフレット作製のようにコート紙を用いて多数部印刷する機会が増加してきたことに伴い、普通紙を用いて印刷する場合には目立たなかったページ内またはページ間での濃度ムラが顕在化するようになった。
このように、露光光源として短波長の半導体レーザーや発光ダイオードなどを用いる場合であっても、濃度ムラの発生を十分に抑制することが要請されている。
【0004】
濃度ムラを改善する方法としては、感光体を構成する中間層の電子輸送性を高めることが考えられる。
ここで、複写機やプリンタなどの画像形成装置に用いられる感光体としては、有機系光導電性材料を主成分として含む有機感光層を有する有機感光体が広く用いられている。このような有機感光体としては、例えば、電荷発生物質と電荷輸送物質とを含む単層構造の有機感光層を有するものや、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とが積層されてなる積層構造の有機感光層を有するものが知られている。これらの中でも、積層構造の有機感光層を有する有機感光体、なかでも感光体表面を負に帯電させる負帯電型の有機感光体は、電子写真特性や耐久性に優れ、設計の自由度が高いことなどから、広く実用化されている。
【0005】
負帯電型の積層構造を有する有機感光体は、通常、導電性支持体上に、中間層と、電荷発生層上に電荷輸送層が形成されてなる有機感光層とが積層されている。
このような有機感光体においては、その表面が例えば負に帯電された後、露光されると、電荷発生層において電荷が発生し、このうち負電荷(電子)は中間層を経て導電性支持体へ移動し、一方、正孔(ホール)は電荷輸送層を経て有機感光体表面へ移動し、当該表面の負電荷を打ち消して静電潜像が形成される。そのため、中間層には、電子輸送性を有すること(電荷発生層で発生した電子を速やかに導電性支持体へ移動させること)および正孔ブロッキング性を有すること(導電性支持体から有機感光層への正孔の注入を抑制すること)が求められている。
【0006】
しかしながら、単に中間層の電子輸送性を高めるのみでは、導電性支持体から有機感光層への正孔の注入を十分に抑制することができない、すなわち十分な正孔ブロッキング性が得られず、また、電荷発生層に含有される電荷発生物質として高感度のものを用いた場合においては、熱的励起により発生したキャリアのリークが生じ、これにより、有機感光体の表面電位が部分的に低下し、黒ポチやカブリなどの画像欠陥が発生するという問題がある。
【0007】
一方、黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生を抑制する方法としては、例えば、特許文献1および2には、中間層に含有される金属酸化物粒子に対しアミノシランカップリング剤などの表面処理剤を用いて表面処理をすることが提案されている。
しかしながら、上記の方法によっては、正孔ブロッキング性が高くなって画像欠陥の発生を抑制することはできるものの電子輸送性が低下し、ページ内またはページ間での濃度ムラの発生を抑制することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−15184号公報
【特許文献2】特開2007−57820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、露光光源として短波長の半導体レーザーや発光ダイオードなどを用いる場合であっても、形成される画像における濃度ムラの発生が抑制されると共に、黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生が抑制される有機感光体および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の有機感光体は、導電性支持体上に中間層を有し、この中間層上に有機感光層が積層されてなる有機感光体において、
中間層には、金属酸化物粒子が含有されており、この金属酸化物粒子が、下記一般式(1)で表わされるチタンキレート化合物または下記一般式(2)で表わされるシランカップリング剤により表面処理されたものであり、
有機感光層には、電荷発生物質として、下記一般式(3)で表わされる縮合多環系化合物が含有されていることを特徴とする。
【0011】
【化1】

【0012】
〔一般式(1)中、R1 は、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基を示し、Lは、下記式(a)で表わされるβ−ケトエステル、下記式(b)で表わされるβ−ジケトンおよび炭素数3〜10のアルキレングリコールからなる群より選ばれるキレート化剤に由来する配位子を示す。mは1〜3の整数である。mが2または3の整数である場合においては、2つ以上のR1 は、互いに同一のものであっても異なるものであってもよく、また、2つのR1 は互いに連結していてもよい。また、mが1または2の整数である場合においては、2つ以上のLは、互いに同一のものであっても異なるものであってもよい。〕
【0013】
【化2】

【0014】
〔式(a)中、R2 およびR3 は、それぞれ独立に、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基を示す。〕
【0015】
【化3】

【0016】
〔式(b)中、R4 〜R6 は、それぞれ独立に、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基を示す。〕
【0017】
【化4】

【0018】
〔一般式(2)中、R7 は、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはアセチル基を示し、R8 は、炭素数1〜5の2価の脂肪族炭化水素基を示し、R9 は、水素原子またはメチル基を示す。pは、1〜3の整数である。pが2または3の整数である場合においては、2つ以上のR7 は、互いに同一のものであっても異なるものであってもよい。〕
【0019】
【化5】

【0020】
〔一般式(3)中、nは1〜6の整数である。〕
【0021】
本発明の有機感光体においては、前記有機感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層上に、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層が形成されてなるものであることが好ましい。
【0022】
本発明の画像形成装置は、上記の有機感光体と、
前記有機感光体の表面に電位を付与する帯電手段と、
前記帯電手段により帯電された有機感光体表面を露光することにより静電潜像を形成する露光手段とを有し、
前記露光手段が、露光光源として発振波長が350〜500nmの半導体レーザーまたは発光ダイオードを備えるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の有機感光体によれば、中間層に含有される金属酸化物粒子が、一般式(1)で表わされるチタンキレート化合物または一般式(2)で表わされるシランカップリング剤(以下、「特定の表面処理剤」ともいう。)により表面処理されたものであり、また、有機感光層には、電荷発生物質として一般式(3)で表わされる縮合多環系化合物が含有されていることにより、露光光源として短波長の半導体レーザーや発光ダイオードなどを用いる場合であっても、形成される画像における濃度ムラの発生が抑制されると共に、黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生が抑制される。
【0024】
本発明の画像形成装置によれば、上記の有機感光体を有することにより、露光光源として短波長の半導体レーザーや発光ダイオードなどを用いても、形成される画像における濃度ムラの発生が抑制されると共に、黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の有機感光体の層構成の一例を示す説明用断面図である。
【図2】本発明の画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図である。
【図3】実施例において用いられるチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について詳細に説明する。
<有機感光体>
本発明の有機感光体は、負帯電型の有機感光体であり、導電性支持体上に中間層を有し、この中間層上に有機感光層が積層されてなるものである。
本発明においては、有機感光層は、露光によって電荷を発生させる機能と、発生させた電荷(正孔)を感光体表面に輸送する機能とを有する。このような有機感光層は、電荷発生機能と、電荷輸送機能とを同一の層で行う単層構造を有していてもよく、電荷発生機能と電荷輸送機能とを異なる層で行う積層構造を有していてもよいが、繰り返し使用による残留電位の増加を抑制するためには、電荷発生機能を有する電荷発生層と電荷輸送機能を有する電荷輸送層との積層構造を有することが好ましい。
【0027】
本発明の有機感光体の層構成は、特に限定されるものではないが、具体的な例としては、下記(1)および(2)の層構成が挙げられる。
(1)導電性支持体上に、中間層を有し、この中間層上に、電荷発生層および電荷輸送層がこの順に積層された積層構造の有機感光層が積層され、前記電荷輸送層が最表面層となる層構成。
(2)導電性支持体上に、中間層を有し、この中間層上に、電荷発生物質および電荷輸送物質を含む単層構造の有機感光層が積層され、前記有機感光層(単層)が最表面層となる層構成。
なお、本発明の有機感光体は、有機感光層上に保護層が形成されていてもよい。
【0028】
本発明において、有機感光体とは、電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能および電荷輸送機能の少なくとも一方の機能が有機化合物により発揮されて構成されるものをいい、公知の有機電荷発生物質または有機電荷輸送物質から構成される感光層を有する感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能とが高分子錯体により構成される感光層を有する感光体など公知の有機感光体全てを含むものをいう。
【0029】
以下、本発明の有機感光体が上記(1)の層構成である場合について具体的に説明する。
【0030】
図1は、本発明の有機感光体の層構成の一例を示す説明用断面図である。
この有機感光体10は、導電性支持体12上に、中間層14を介して電荷発生層16および電荷輸送層18がこの順に積層されてなる有機感光層17が形成されている。
【0031】
この有機感光体10においては、当該有機感光体10の表面が負に帯電された後、露光されると、電荷発生層16において電荷が発生する。電荷発生層16で発生した電荷のうち、負電荷(電子)は中間層14を経て導電性支持体12に移動し、正孔は電荷輸送層18を経て有機感光体10表面に移動して有機感光体10表面の負電荷を打ち消すことにより、有機感光体10表面に静電潜像が形成される。
【0032】
本発明においては、中間層14に含まれる金属酸化物粒子が、特定の表面処理剤で表面処理されたものであり、有機感光層17には、電荷発生物質として一般式(3)で表わされる縮合多環系化合物が含有されていることにより、露光光源として短波長の半導体レーザーや発光ダイオードなどを用いる場合であっても、形成される画像における濃度ムラの発生が抑制されると共に、黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生が抑制される。
【0033】
〔導電性支持体〕
本発明の有機感光体を構成する導電性支持体としては、円筒状、またはシート状のものであって、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛、ステンレスなどの金属をドラム状またはシート状に成形したもの、アルミニウムや銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウムおよび酸化スズなどをプラスチックフィルムに蒸着したもの、導電性物質を単独またはバインダー樹脂と共に塗布して導電層を設けた金属、プラスチックフィルムおよび紙などが挙げられる。
【0034】
導電性支持体の表面は、露光により発生する干渉縞(モアレ)を抑制するために、封孔されたアルマイト処理(陽極酸化処理)が施されていてもよい。アルマイト処理は、通常、クロム酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行うことができるが、硫酸浴中で行うことが好ましい。硫酸浴中でのアルマイト処理は、硫酸濃度100〜200g/l、アルミニウムイオン濃度1〜10g/l、液温20℃、印加電圧約20Vの条件で行うことが好ましい。アルマイト処理被膜の平均膜厚は、通常、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
【0035】
〔中間層〕
本発明の有機感光体を構成する中間層は、金属酸化物粒子とバインダー樹脂(以下、「中間層用バインダー樹脂」ともいう。)とが含有されてなるものである。
この中間層に含有される金属酸化物粒子は、上記一般式(1)で表わされるチタンキレート化合物または上記一般式(2)で表わされるシランカップリング剤により表面処理されたもの、すなわち、原料としての金属酸化物粒子(以下、「未処理金属酸化物粒子」ともいう。)の表面が、特定の表面処理剤により処理されることにより、当該特定の表面処理剤による被膜が付着されたものである。
本発明においては、特定の表面処理剤を用いることにより、未処理金属酸化物粒子の表面に均一な被膜を付着することができ、これにより、電子輸送性を損なわないので濃度ムラの発生を抑制すると共に、正孔ブロッキング性を確保して有機感光体の表面電位が部分的に低下することを抑制し、濃度ムラの発生と黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生とを抑制することができると考えられる。
【0036】
中間層には、金属酸化物粒子および中間層用バインダー樹脂と共に、分散助剤、酸化防止剤、レベリング剤などの他の成分が含有されていてもよい。
【0037】
(金属酸化物粒子)
未処理金属酸化物粒子としては、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化錫、酸化チタン、シリカ、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウム等の金属酸化物粒子が例示されるが、中でも、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、シリカ等の粒子が好ましい。これらの中でも、酸化チタン粒子が特に好ましい。
酸化チタン粒子は、アナタース型、ルチル型、アモルファス型などいずれの結晶型のものであってもよいが、中間層における分散性を高めるためには、ルチル型のものであることが好ましい。
【0038】
未処理金属酸化物粒子は、樹枝状、針状、粒状などいずれの形状のものであってもよいが、中間層における分散性を高めるためには、粒状のものであることが好ましい。
【0039】
未処理金属酸化物粒子は、数平均一次粒子径が10〜400nmであることが好ましく、より好ましくは10〜200nm、さらに好ましくは10〜50nm、特に好ましくは10〜40nmである。
未処理金属酸化物粒子の数平均一次粒子径が過小である場合においては、耐リーク性が悪化するおそれがある。一方、未処理金属酸化物粒子の数平均一次粒子径が過大である場合においては、電子輸送性が低下し、濃度ムラの発生を十分に抑制することができないおそれがある。
【0040】
未処理金属酸化物粒子の数平均一次粒子径は、以下のようにして求めることができる。
即ち、未処理金属酸化物粒子のTEM(透過型電子顕微鏡)画像を倍率100000倍で観察し、100個の粒子を一次粒子としてランダムに選択する。これらの一次粒子のフェレ方向平均径を画像解析により測定し、それらの平均値を「数平均一次粒子径」として求めることができる。
【0041】
(特定の表面処理剤)
一般式(1)においては、R1 は、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基を示す。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ターシャリーブチル基などが挙げられ、好ましくはイソプロピル基、エチル基、ヘキシル基、オクチル基などである。一般式(1)においては、mは1〜3の整数であるが、mが2または3の整数である場合においては、2つ以上のR1 は、互いに同一のものであっても異なるものであってもよい。また、mが2または3の整数である場合においては、2つのR1 は互いに連結していてもよい。例えば、mが2の場合において、2つのOR1 は、お互いに連結して、アルキレンジオキシ基(例えば、プロパンジオキシ基)を構成してもよい。
【0042】
一般式(1)においては、Lは、キレート化剤に由来する配位子を示す。このキレート化剤は、式(a)で表わされるβ−ケトエステル、式(b)で表わされるβ−ジケトンおよび炭素数3〜10のアルキレングリコールからなる群より選ばれるものである。mが1または2の整数である場合においては、2つ以上のLは、互いに同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0043】
式(a)においては、R2 およびR3 は、それぞれ独立に、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基を示す。具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヘキシル基、オクチル基などが挙げられる。
式(a)で表わされるβ−ケトエステルとしては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチルなどが挙げられる。
【0044】
式(b)においては、R4 〜R6 は、それぞれ独立に、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基を示す。式(b)におけるR4 〜R6 は、式(a)におけるR2 およびR3 と同様に定義される。
式(b)で表わされるβ−ジケトンとしては、例えば、アセチルアセトン、2,4−ヘプタンジオンエチルアセチルアセトン、ジエチルアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、テノイルトリフルオロアセトン、1,3−シクロヘキサンジオンなどが挙げられる。
【0045】
炭素原子数3〜10のアルキレングリコールとしては、例えば、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオールなどが挙げられる。
【0046】
一般式(1)においては、mは、1〜3の整数である。一般式(1)におけるOR1 基が少ないことが好ましく、mは2以下の整数であることが好ましい。
【0047】
一般式(1)で表わされるチタンキレート化合物としては、例えば、ジイソプロポキシチタニウムビス(メチルアセトアセテート)、イソプロポキシチタニウムトリ(メチルアセトアセテート)、トリブトキシチタニウムアセチルアセトネート、ジブトキシチタニウムビス(エチルアセトアセトネート)、ジオクチロキシチタニウムビス(オクチレングリコレート)、ジイソプロポキシチタニウムビス(エチルアセトアセテート)、プロパンジオキシチタニウムビス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。一般式(1)で表わされるチタンキレート化合物の市販例としては、TC−200((株)マツモト交商製)、TC−100((株)マツモト交商製)、TC−750((株)マツモト交商製)、T−60((株)日本曹達製)などが挙げられる。
【0048】
一般式(2)においては、R7 は、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはアセチル基を示す。炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。一般式(2)においては、pは、1〜3の整数であるが、pが2または3の整数である場合においては、2つ以上のR7 は、互いに同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0049】
一般式(2)においては、R8 は、炭素数1〜5の2価の脂肪族炭化水素基を示す。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基などが挙げられる。
【0050】
一般式(2)においては、R9 は、水素原子またはメチル基を示す。
【0051】
一般式(2)で表わされるシランカップリング剤としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシブチルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0052】
未処理金属酸化物粒子に対する特定の表面処理剤の付着量は、中間層の電子輸送性を損なわないためには、未処理金属酸化物粒子に対して20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。カブリを抑制するためには、特定の表面処理剤の付着量は、未処理金属酸化物粒子に対して2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。
【0053】
特定の表面処理剤の付着量は、表面処理された金属酸化物粒子の強熱減量試験における、表面処理された金属酸化物粒子の質量の減少量から求めることができる。強熱減量試験は、例えば電気マッフル炉で700〜800℃で加熱する条件で行うことができる。
【0054】
特定の表面処理剤による表面処理方法としては、特に限定されず、湿式処理または乾式処理を採用することができる。
湿式処理による表面処理方法としては、具体的には、未処理金属酸化物粒子と特定の表面処理剤とを溶媒に分散させた溶液を、所定の温度で混合・撹拌し、その後、溶媒を除去し、アニール処理することにより表面処理された金属酸化物粒子が得られる。
混合・撹拌時の温度は、30〜150℃程度であることが好ましく、混合・撹拌時間は、0.5〜10時間であることが好ましい。アニール処理温度は、例えば120〜220℃とすることができる。
【0055】
以上のような表面処理方法においては、特定の表面処理剤の処理量(仕込み量)は、未処理金属酸化物粒子100質量部に対して2〜20質量部とすることが好ましく、5〜15質量部とすることがより好ましい。
特定の表面処理剤の処理量が過少である場合においては、未処理金属酸化物粒子に対して十分な表面処理が行われず、中間層の正孔ブロッキング性が低下することにより、黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生を十分に抑制することができないおそれがある。一方、特定の表面処理剤の処理量が過多である場合においては、表面処理剤同士が反応し、未処理金属酸化物粒子の表面に均一な薄膜の処理層が形成されないことにより、リークが発生しやすくなる。
【0056】
本発明において、金属酸化物粒子は、未処理金属酸化物粒子の表面が、特定の表面処理剤による被膜により完全に覆われているものであることが好ましい。
また、金属酸化物粒子は、未処理金属酸化物粒子の表面が直接、特定の表面処理剤によって表面処理されることにより、当該特定の表面処理剤による被膜が直接、未処理金属酸化物粒子表面に付着されていれば、さらに他の表面処理剤によって表面処理されたものであってもよい。すなわち、金属酸化物粒子は、複数の表面処理剤によって表面処理されることにより、当該複数の表面処理剤による被膜が積層された構成とされていてもよく、この複数の被膜のうち最下層(未処理金属酸化物粒子の表面に接触する膜)が、特定の表面処理剤によるものであればよい。
【0057】
他の処理剤の好ましい例には、無機系化合物、反応性有機ケイ素化合物(一般式(2)で表わされるシランカップリング剤以外のもの)などが挙げられる。
無機系化合物としては、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニアやそれらの水和物などが挙げられる。
反応性有機ケイ素化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、n‐ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等のアルコキシシラン;およびメチルハイドロジェンポリシロキサンなどが挙げられる。
【0058】
本発明においては、反応性有機ケイ素化合物で表面処理することにより、金属酸化物粒子の分散性を効果的に高めることができる。
【0059】
他の処理剤による金属酸化物粒子の表面処理は、公知の方法により行うことができる。
例えば、反応性有機ケイ素化合物による表面処理は、反応性有機ケイ素化合物を水または有機溶媒に分散させた溶液に、金属酸化物粒子を添加して混合・撹拌し、得られた溶液をろ過および乾燥などすることにより行うことができる。
【0060】
(中間層用バインダー樹脂)
中間層用バインダー樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。中でも、電荷発生層を形成するための塗布液を塗布する際に、中間層が溶解することを抑制する観点などから、ポリアミド樹脂が好ましく、メトキシメチロール化ポリアミドなどのアルコール可溶性ポリアミドがより好ましい。
【0061】
中間層において、特定の表面処理剤で表面処理された金属酸化物粒子の体積(M)と、中間層用バインダー樹脂の体積(B)との体積比(M/B)は、0.45〜1.2であることが好ましく、0.6〜1.1であることがより好ましい。
体積比(M/B)が0.45未満である場合においては、中間層の電子輸送性が低下することにより、濃度ムラの発生を十分に抑制することができないおそれがある。一方、体積比(M/B)が1.2を超える場合においては、中間層の正孔ブロッキング性が低下することにより、黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生を十分に抑制することができないおそれがある。
【0062】
体積比(M/B)は、TGA(熱量計測定装置)により、以下の方法で測定することができる。
(1)金属酸化物粒子の比重を、真比重計(マイクロピクノメータ,エステック社製)を用いて測定する。また、中間層用バインダー樹脂の比重は、成型片とした状態の重量を測定した後、当該成型片を、体積既知の水中に入れて排除体積を測定することで求められる。
(2)一方、測定試料として、金属酸化物粒子と中間層用バインダー樹脂との混合物を準備する。次いで、アルミサンプルパンに測定試料5mgを秤量し、示差熱重量同時測定装置「TG/DTA6200」(セイコーインスツルメンツ株式会社製)を使用して、窒素ガス雰囲気下(導入量150〜200ml/min)、昇温温度20℃/minにて加熱重量減少曲線で減少量を測定する。1段目の加熱重量減少量から中間層用バインダー樹脂の重量が求められ、その時点での残留重量から、金属酸化物粒子重量が求められる。
(3)そして、金属酸化物粒子および中間層用バインダー樹脂の、(1)で得られた比重と、(2)で得られた重量とから、金属酸化物粒子と中間層用バインダー樹脂の体積をそれぞれ算出する。それにより、体積比(M/B)を算出する。
【0063】
中間層の膜厚は、0.5〜15μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。
中間層の膜厚が過小である場合においては、導電性支持体表面全体を被覆することができず、導電性支持体からの正孔の注入を十分にブロックすることができないことにより、黒ポチやカブリなど画像欠陥の発生を十分に抑制することができないおそれがある。一方、中間層の膜厚が過大である場合においては、電気的抵抗が増大するため、十分な電子輸送性が得られないことにより、濃度ムラの発生を十分に抑制することができないおそれがある。
【0064】
〔有機感光層〕
(電荷発生層)
本発明の有機感光体を構成する有機感光層における電荷発生層は、露光により電荷を発生させる機能を有し、電荷発生物質およびバインダー樹脂(以下、「電荷発生層用バインダー樹脂」ともいう。)よりなるものである。
【0065】
(電荷発生物質)
本発明においては、電荷発生物質としては、上記一般式(3)で表わされる縮合多環系化合物が用いられる。この一般式(3)で表わされる縮合多環系化合物は、ピランスロン系顔料とされ、短波長、例えば波長350〜500nmの露光光に対して十分な感度を有するものである。
また、この一般式(3)で表わされる縮合多環系化合物は、電荷発生層の層厚変化に対する感度変動の程度も小さく、本発明の効果をより効果的に発揮することができる。これは、一般式(3)で表わされる縮合多環系化合物の吸光度が高く、かつ、キャリア移動性が高いからと考えられる。
【0066】
一般式(3)においては、nは1〜6の整数であり、これらBrの置換位置は、下記式(c)のR10〜R23のいずれかの位置に置換することができる。
【0067】
【化6】

【0068】
しかしながら、Brの置換位置を正確に特定する手段は、確立されておらず、置換位置の正確な特定は困難である。
【0069】
また、一般式(3)で表わされる縮合多環系化合物は、置換Brの数、nが複数の混合体として得られ、これら混合体を電荷発生層の電荷発生物質として使用することが好ましい。
【0070】
本発明においては、電荷発生層には、電荷発生物質として、一般式(3)で表わされる縮合多環系化合物の他に、他の電荷発生物質が含有されていてもよい。他の電荷発生物質としては、例えば、下記式(CGM−A)〜式(CGM−H)などが挙げられる。この場合、電荷発生物質としては、一般式(3)で表わされる縮合多環系化合物が、電荷発生物質中50質量%以上の割合で含まれていることが好ましい。
【0071】
【化7】

【0072】
(電荷発生層用バインダー樹脂)
電荷発生層用バインダー樹脂は、特に制限されないが、例えば、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、フェノキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ブチラール樹脂や塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体などが好ましい。
【0073】
電荷発生物質の含有量は、電荷発生層用バインダー樹脂100質量部に対して100〜500質量部であることが好ましく、100〜300質量部であることがより好ましい。
電荷発生物質の含有量が過少である場合においては、露光により十分な電荷を発生させることができず、有機感光層(電荷発生層)の感度が低下するおそれがある。一方、電荷発生物質の含有量が過多である場合においては、有機感光層(電荷発生層)の感度が過剰に高くなることにより、繰り返し使用に伴う残留電位の増加が生じやすい。
【0074】
電荷発生層の層厚は、0.01〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜3μmである。
【0075】
(電荷輸送層)
本発明の有機感光体を構成する有機感光層における電荷輸送層は、電荷発生層において発生された電荷(正孔)を輸送する機能を有し、電荷輸送物質およびバインダー樹脂(以下、「電荷輸送層用バインダー樹脂」ともいう。)よりなるものである。
【0076】
(電荷輸送物質)
電荷輸送物質としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などが挙げられる。
【0077】
(電荷輸送層用バインダー樹脂)
電荷輸送層用バインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよい。具体的には、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、(メタ)アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。なかでも、吸水率が低く、電荷輸送物質を良好に分散させることができることから、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0078】
電荷輸送層は、必要に応じて他の添加剤をさらに含んでもよい。そのような添加剤の例には、例えば酸化防止剤などが挙げられる。
【0079】
電荷輸送物質の含有量は、電荷輸送層用バインダー樹脂100質量部に対して10〜200質量部であることが好ましく、20〜100質量部であることがより好ましい。
電荷輸送物質の含有量が過少である場合においては、電荷輸送性が十分ではないため、電荷発生層で発生した電荷を有機感光体表面まで十分に輸送できないことおそれがある。一方、電荷輸送物質の含有量が過多である場合においては、繰り返し使用に伴う残留電位の増加が顕著となりやすい。
【0080】
電荷輸送層の膜厚は、特に制限されないが、10〜40μm程度とすることができる。
【0081】
〔保護層〕
本発明の有機感光体において、保護層が形成される場合においては、当該保護層は、無機粒子およびバインダー樹脂(以下、「保護層用バインダー樹脂」という。)よりなるものであり、必要に応じて酸化防止剤や滑剤などが含有されていてもよい。
【0082】
保護層に含まれる無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタン酸ストロンチウム、
酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ、酸化ジルコニウム等の粒子を好ましく用いることができる。特に表面を疎水化した疎水性シリカや疎水性アルミナ、疎水性ジルコニア、微粉末焼結シリカなどが好ましい。
【0083】
無機粒子は、数平均一次粒子径が1〜300nmであることが好ましく、5〜100nmが特に好ましい。
無機粒子の数平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに300個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によりフェレ径の数平均径として測定値を算出して得られた値とされる。
【0084】
保護層用バインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよい。例えば、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0085】
保護層に含有される滑剤としては、例えば、樹脂微粉末(例えば、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂等)、金属酸化物微粉末(例えば、酸化チタン、酸化アルミ、酸化スズ等)、固体潤滑剤(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等)、シリコーンオイル(例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、アルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル等)、フッ素系樹脂粉体(例えば、四フッ化エチレン樹脂粉体、三フッ化塩化エチレン樹脂粉体、六フッ化エチレンプロピレン樹脂粉体、フッ化ビニル樹脂粉体、フッ化ビニリデン樹脂粉体、フッ化二塩化エチレン樹脂粉体及びそれらの共重合体等)、ポリオレフィン系樹脂粉体(例えば、ポリエチレン樹脂粉体、ポリプロピレン樹脂粉体、ポリブテン樹脂粉体、ポリヘキセン樹脂粉体などのホモポリマー樹脂粉体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体などのコポリマー樹脂粉体、これらとヘキセンなどの三元共重合体、更にこれらの熱変成物のようなポリオレフィン系樹脂粉体等)などが挙げられる。
【0086】
上記滑剤として用いられる樹脂の分子量や粉体の粒径は、適宜選択される。樹脂の粒径は、特に0.1μm〜10μmであることが好ましい。これらの滑剤を均一に分散するため、分散剤を保護層用バインダー樹脂にさらに添加してもよい。
【0087】
〔有機感光体の製造方法〕
本発明の有機感光体は、下記工程により製造することができる。
(1)中間層を形成する工程
中間層の形成工程においては、中間層用バインダー樹脂を溶媒に溶解した溶液中に特定の表面処理剤により表面処理された金属酸化物粒子を添加して中間層形成用塗布液を調製し、この中間層形成用塗布液を導電性支持体に例えば浸漬塗布法により塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することにより中間層が形成される。
【0088】
中間層を形成するために用いられる溶媒としては、例えば、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノールなどの炭素数2〜4のアルコール類が、ポリアミド樹脂の溶解性と塗布性の観点から、特に好ましい。また、保存性、金属酸化物粒子の分散性を向上するために、前記溶媒と併用することのできる助溶媒としては、例えば、メタノール、ベンジルアルコール、トルエン、メチレンクロライド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0089】
(2−1)有機感光層を構成する電荷発生層を形成する工程
電荷発生層の形成工程においては、電荷発生層用バインダー樹脂を溶媒で溶解した溶液中に分散機を用いて電荷発生物質を分散して電荷発生層形成用塗布液を調製し、この電荷発生層形成用塗布液を中間層上に例えば浸漬塗布法により塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することにより電荷発生層が形成される。
【0090】
電荷発生層を形成するために用いられる溶媒としては、ケトン系溶媒が好ましい。例えば、2−ブタノン、シクロヘキサン、アセトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。また、これら溶媒にエステル系溶媒またはエーテル系溶媒を混合して用いてもよい。例えば、酢酸エチル、酢酸t−ブチルなど、または、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどが挙げられる。
【0091】
電荷発生物質の分散手段としては、特に限定されないが、例えば、超音波分散機、ボールミル、サンドグラインダーおよびホモミキサーなどの分散機が挙げられる。
【0092】
(2−2)有機感光層を構成する電荷輸送層を形成する工程
電荷輸送層の形成工程においては、電荷輸送層用バインダー樹脂と電荷輸送物質を溶媒で溶解して電荷輸送層形成用塗布液を調製し、この電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層上に例えば浸漬塗布法により塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥することにより電荷輸送層が形成される。
【0093】
電荷輸送層を形成するために用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジン、ジエチルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0094】
本発明の有機感光体を製造するための各種塗布液の塗布方法は、浸漬塗布法の他にも、スライドホッパー型塗布装置を用いた塗布方法、スプレー塗布等の塗布方法を採用することができる。スライドホッパー型塗布装置を用いた塗布方法については、例えば特開昭58−189061号公報などに詳細に記載されている。
【0095】
以上のように、本発明の有機感光体によれば、中間層に含有される金属酸化物粒子が特定の表面処理剤により表面処理されたものであり、また、電荷発生層には、電荷発生物質として一般式(3)で表わされる縮合多環系化合物が含有されていることにより、露光光源として短波長の半導体レーザーや発光ダイオードなどを用いる場合であっても、形成される画像における濃度ムラの発生が抑制されると共に、黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生が抑制される。
【0096】
〔画像形成装置〕
本発明の画像形成装置は、本発明の有機感光体と、有機感光体の表面に電位を付与する帯電手段と、この帯電手段により帯電された有機感光体表面を露光することにより静電潜像を形成する露光手段とを有し、この露光手段が、露光光源として発振波長が350〜500nmの半導体レーザーまたは発光ダイオードを備えるものである。
【0097】
本発明の画像形成装置においては、有機感光体上に静電潜像を形成するに際し、発振波長が350〜500nmの半導体レーザーまたは発光ダイオードを露光光源として用いる。この露光光源を用いて、書込みの主査方向の露光ドット径を10〜100μmに絞り込み、有機感光体上にデジタル露光を行うことにより、600dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)から2400dpi、あるいはそれ以上の高解像度の電子写真画像をうることができる。
露光ドット径とは露光ビームの強度がピーク強度の1/e2 以上の領域の主走査方向にそった露光ビームの長さ(Ld:長さが最大位置で測定する)をいう。
用いられる露光ビームとしては、半導体レーザーを用いた走査光学系およびLEDの固体スキャナー等が挙げられ、光強度分布についてもガウス分布及びローレンツ分布などがあるがそれぞれのピーク強度の1/e2 以上の領域を本発明に係る露光ドット径とする。
【0098】
図2は、本発明の画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図である。
この画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット130と、給紙搬送手段150と、定着手段170とを有する。画像形成装置100の本体の上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0099】
画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkは、鉛直方向に並べて配置されている。画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkは、第1の像担持体である本発明に係る有機感光体111Y、111M、111C、111Bkと、その周囲に有機感光体の回転方向に順次配置された、帯電手段113Y、113M、113C、113Bkと、露光手段115Y、115M、115C、115Bkと、現像手段117Y、117M、117C、117Bkと、クリーニング手段119Y、119M、119C、119Bkと、を有する。そして、有機感光体111Y、111M、111C、111Bk上に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(Bk)のトナー画像をそれぞれ形成できるようになっている。画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkは、有機感光体111Y、111M、111C、111Bkに形成するトナー画像の色が異なる以外は同様に構成されるため、以下、画像形成ユニット110Yの例で説明する。
【0100】
有機感光体111Yは、本発明に係る有機感光体であって、当該有機感光体を構成する中間層には、特定の表面処理剤により表面処理された金属酸化物粒子が含有されており、有機感光層には、電荷発生物質として上記一般式(3)で表わされる縮合多環系化合物が含有されているものである。
【0101】
帯電手段113Yは、有機感光体111Yに対して一様な電位を与える手段である。
本実施の形態においては、帯電手段113Yとしてコロナ放電型の帯電器が好ましく用いられる。
【0102】
露光手段115Yは、帯電手段113Yによって一様な電位を与えられた有機感光体111Y上に、画像信号(イエローの画像信号)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する機能を有する。露光手段115Yは、有機感光体111Yの軸方向にアレイ状に発光素子が配列されたLEDと結像素子とから構成されるもの、あるいはレーザー光学系などでありうる。
【0103】
露光光源は、発振波長が350〜500nmの半導体レーザーまたは発光ダイオードであり、このような露光光源を用いて、書込みの主査方向の露光ドット径を10〜100μmに絞り込み、感光体上にデジタル露光を行うことで、600dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)〜2400dpiあるいはそれ以上の高解像度の電子写真画像を形成しうる。
【0104】
現像手段117Yは、有機感光体111Yにトナーを供給し、有機感光体111Yの表面に形成された静電潜像を現像可能に構成されている。クリーニング手段119Yは、有機感光体111Yの表面に圧接するローラや、ブレードを有しうる。
【0105】
無端ベルト状中間転写体ユニット130は、有機感光体111Y、111M、111C、111Bkと当接可能に設けられている。無端ベルト状中間転写体ユニット130は、第2の像担持体である無端ベルト状中間転写体131と、当該無端ベルト状中間転写体131と当接して配置された一次転写ローラ133Y、133M、133C、133Bkと、当該無端ベルト状中間転写体131のクリーニング手段135と、を有する。
【0106】
無端ベルト状中間転写体131は、複数のローラ137A、137B、137C、137Dにより巻回され、回動可能に支持されている。
【0107】
この画像形成装置100において、有機感光体111Y、現像手段117Y、およびクリーニング手段119Y等は、一体的に結合され、装置本体に着脱自在に構成されたプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)であってもよい。あるいは、帯電手段113Y、露光手段115Y、現像手段117Y、一次転写ローラ133Yおよびクリーニング手段119Yからなる群から選ばれる一以上の部材と、有機感光体111Yとを一体的に構成したプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)としてもよい。
【0108】
プロセスカートリッジ200は、筐体201と、それに収容された有機感光体111Y、帯電手段113Y、現像手段117Yおよびクリーニング手段119Yと、無端ベルト状中間転写体ユニット130と、を有する。また、装置本体には、プロセスカートリッジ200を装置本体内にガイドする手段として支持レール203L、203Rが設けられている。それにより、プロセスカートリッジ200を装置本体に着脱可能となっている。これらのプロセスカートリッジ200は、装置本体に着脱自在に構成された単一の画像形成ユニットとなりうる。
【0109】
給紙搬送手段150は、給紙カセット211内の転写材Pを、複数の中間ローラ213A、213B、213C、213Dおよびレジストローラ215を経て、二次転写ローラ217に搬送可能に設けられている。
【0110】
定着手段170は、二次転写ローラ217により転写されたカラー画像を定着処理する。排紙ローラ219は、定着処理された転写材Pを挟持して、画像形成装置外部に設けられた排紙トレイ221上に載置可能に設けられている。
【0111】
このように構成された画像形成装置100では、画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkにより画像を形成する。具体的には、帯電手段113Y、113M、113C、113Bkにより有機感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面にコロナ放電して負に帯電させる。次いで、露光手段115Y、115M、115C、115Bkで、有機感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面を画像信号に基づいて露光し、静電潜像を形成する。次いで、現像手段117Y、117M、117C、117Bkで、有機感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面にトナーを付与し、現像する。
【0112】
次いで、一次転写ローラ(一次転写手段)133Y、133M、133C、133Bkを、回動する無端ベルト状中間転写体131と当接させる。それにより、有機感光体111Y、111M、111C、111Bk上にそれぞれ形成した各色の画像を、回動する無端ベルト状中間転写体131上に逐次転写させて、カラー画像を転写する(一次転写する)。画像形成処理中、一次転写ローラ133Bkは、常時、有機感光体111Bkに当接する。一方、他の一次転写ローラ133Y、133M、133Cは、カラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する有機感光体111Y、111M、111Cに当接する。
【0113】
そして、一次転写ローラ133Y、133M、133C、133Bkと無端ベルト状中間転写体131とを分離させた後、有機感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面に残留するトナーを、クリーニング手段119Y、119M、119C、119Bkで除去する。そして、次回の画像形成に備えて、必要に応じて有機感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面を除電手段(不図示)によって除電した後、帯電手段113Y、113M、113C、113Bkにより負に帯電させる。
【0114】
一方、給紙カセット211内に収容された転写材P(例えば普通紙、透明シート等の最終画像を担持する支持体)を、給紙搬送手段150で給紙し、複数の中間ローラ213A、213B、213C、213D、レジストローラ215を経て二次転写ローラ(二次転写手段)217に搬送する。そして、二次転写ローラ217を回動する無端ベルト状中間転写体131と当接させて、転写材P上にカラー画像を一括して転写する(二次転写する)。二次転写ローラ217は、転写材P上に二次転写を行うときのみ、無端ベルト状中間転写体131と当接する。その後、カラー画像が一括転写された転写材Pを、無端ベルト状中間転写体131の曲率が高い部位で分離する。
【0115】
このようにしてカラー画像が一括して転写された転写材Pを、定着手段170で定着処理した後、排紙ローラ219で挟持して装置外の排紙トレイ221上に載置する。また、カラー画像が一括転写された転写材Pを無端ベルト状中間転写体131から分離した後、クリーニング手段135で無端ベルト状中間転写体131上の残留トナーを除去する。
【0116】
前述したように、本実施の形態の画像形成装置100に含まれる有機感光体111Y、111M、111C、111Bkとして、本発明の有機感光体が用いられることにより、露光光源として短波長の半導体レーザーや発光ダイオードなどを用いても、形成される画像における濃度ムラの発生が抑制されると共に、黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生が抑制される。
【実施例】
【0117】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0118】
<電荷発生物質の合成例1>
8,16−ピランスレンジオン:5.0g、ヨウ素:0.25gをクロロ硫酸:50gに溶解し、臭素3.0gを滴下した。50℃にて3時間加熱撹拌し、室温まで冷却後、氷500gにあけた。濾過、水洗した後乾燥し、顔料粗品6.8gを得た。顔料粗品5.0gをパイレックス(登録商標)ガラスチューブに入れ、このチューブを、チューブの長さに沿って約440℃〜約20℃の温度勾配(1mの長さで、約440℃〜約20℃の温度勾配をつけた)を生ずる炉の内側に置いた。ガラスチューブ内を約1×10-2Paに減圧し、精製すべき顔料粗品が置かれた位置を約440℃に加熱した。生成した蒸気をチューブの低温側に移動、凝縮させ、約300〜380℃の間の領域に凝縮した昇華物(CGM−1)2.4gを得た。
この昇華物(CGM−1)のマススペクトル測定の結果、一般式(3)におけるn=1〜3の混合物であり、n=1/n=2/n=3のピーク強度比は11/59/30であった。この昇華物(CGM−1)を電荷発生物質〔CGM−1〕とする。
【0119】
<電荷発生物質の合成例2>
8,16−ピランスレンジオン:5.0g、ヨウ素:0.25gをクロロ硫酸:50gに溶解し、臭素5.9gを滴下した。70℃にて5時間加熱撹拌し、室温まで冷却後氷500gにあけた。濾過、水洗した後乾燥し、顔料粗品8.5gを得た。顔料粗品5.0gをパイレックス(登録商標)ガラスチューブに入れ、このチューブを、チューブの長さに沿って約460℃〜約20℃の温度勾配(1mの長さで、約460℃〜約20℃の温度勾配をつけた)を生ずる炉の内側に置いた。ガラスチューブ内を約1×10-2Paに減圧し、精製すべき顔料粗品が置かれた位置を約460℃に加熱した。生成した蒸気をチューブの低温側に移動、凝縮させ、約300〜400℃の間の領域に凝縮した昇華物(CGM−2)3.3gを得た。
この昇華物(CGM−2)のマススペクトル測定の結果、一般式(3)におけるn=3〜5の混合物であり、n=3/n=4/n=5のピーク強度比は16/67/17であった。この昇華物(CGM−2)を電荷発生物質〔CGM−2〕とする。
【0120】
<電荷発生物質の合成例3>
8,16−ピランスレンジオン:5.0g、ヨウ素:0.25gをクロロ硫酸:50gに溶解し、臭素5.9gを滴下した。75℃にて6時間加熱撹拌し、室温まで冷却後氷500gにあけた。濾過、水洗した後乾燥し、顔料粗品8.7gを得た。顔料粗品5.0gをパイレックス(登録商標)ガラスチューブに入れ、このチューブを、チューブの長さに沿って約480℃〜約20℃の温度勾配(1mの長さで、約480℃〜約20℃の温度勾配をつけた)を生ずる炉の内側に置いた。ガラスチューブ内を約1×10-2Paに減圧し、精製すべき顔料粗品が置かれた位置を約480℃に加熱した。生成した蒸気をチューブの低温側に移動、凝縮させ、約300〜420℃の間の領域に凝縮した昇華物(CGM−3)3.0gを得た。
この昇華物(CGM−3)のマススペクトル測定の結果、一般式(3)におけるn=3〜6の混合物であり、n=3/n=4/n=5/n=6のピーク強度比は17/51/27/5であった。この昇華物(CGM−3)を電荷発生物質〔CGM−3〕とする。
【0121】
〔有機感光体の製造例1〕
以下の手順により、導電性支持体上に、中間層、電荷発生層、電荷輸送層を順次形成してなる積層構造を有する有機感光体〔1〕を作製した。
【0122】
(1)導電性支持体の作製
長さ362±0.2mmのアルミニウム合金製素管をNC施盤に装着し、ダイヤモンド焼結バイトにて、外径59.95±0.04mm、表面のRzjis が1.2±0.2μmになるように切削加工を行い、導電性支持体〔1〕を作製した。
【0123】
(2)金属酸化物粒子の作製
数平均一次粒子径15nmのルチル型酸化チタン粒子100質量部をトルエン500質量部と撹拌混合し、一般式(1)で表わされるチタンキレート化合物としてチタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)「TC−200」((株)マツモト交商社製)5.5質量部を添加し、2時間撹拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、一般式(1)で表わされるチタンキレート化合物で表面処理された金属酸化物粒子〔1〕を得た。
【0124】
(3)中間層の形成
バインダー樹脂としての下記式(N−1)で表わされるポリアミド樹脂1.7質量部を、エタノール/n−プロピルアルコール/テトラヒドロフラン(体積比;60/20/20)の混合溶媒20質量部に加えて、撹拌混合した。この溶液に、金属酸化物粒子〔1〕を4.0質量部添加し、ビーズミルにより、ミル滞留時間3時間として分散させた。そして、この溶液を一昼夜静置した後、ろ過することにより、中間層形成用塗布液〔1〕を調製した。ろ過は、ろ過フィルタとして、公称濾過精度が5μmの「リジメッシュフィルタ」(日本ポール社製)を用いて、50kPaの圧力下で行った。このようにして得られた中間層形成用塗布液〔1〕を、導電性支持体〔1〕を洗浄した後の外周に浸漬塗布法で塗布して塗膜を形成し、この塗膜を120℃で30分間乾燥して層厚2μmの中間層〔1〕を形成した。得られた中間層〔1〕において、金属酸化物粒子〔1〕とバインダー樹脂との体積比(M/B)は1であった。
【0125】
【化8】

【0126】
(4)電荷発生層の形成
下記成分を混合し、サンドミルにて15時間分散して電荷発生層形成用塗布液〔1〕を調製した。そして、この電荷発生層形成用塗布液〔1〕を浸漬塗布法で中間層〔1〕の上に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥して層厚0.5μmの電荷発生層〔1〕を形成した。
電荷発生物質:電荷発生物質〔CGM−2〕 3質量部
バインダー樹脂:塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂(82:6:12(モル%)) 1質量部
溶媒:2−ブタノン/シクロヘキサノン(体積比;4/1) 70質量部
【0127】
(5)電荷輸送層の形成
下記成分を混合して電荷輸送層形成用塗布液〔1〕を調製した。この電荷輸送層形成用塗布液〔1〕を、前述と同様の浸漬塗布法により電荷発生層〔1〕上に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥して層厚20μmの電荷輸送層〔1〕を形成した。
電荷輸送物質:下記式(CTM−1)で表わされる化合物 225質量部
バインダー樹脂:ポリカーボネート「Z300」(三菱ガス化学社製) 300質量部
酸化防止剤:「Irganox1010」(日本チバガイギー社製) 6質量部
溶媒:テトラヒドロフラン/トルエン混合液(体積比;3/1) 2000質量部
滑剤:シリコーンオイル「KF−54」(信越化学工業(株)製) 1質量部
【0128】
【化9】

【0129】
〔有機感光体の製造例2〕
有機感光体の製造例1における(2)金属酸化物粒子の作製において、「チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)」を「チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)『TC−100』((株)マツモト交商製)」に変更したことの他は同様にして金属酸化物粒子〔2〕を得、有機感光体の製造例1における(3)中間層の形成において、金属酸化物粒子〔1〕を金属酸化物粒子〔2〕に変更したことの他は同様にして有機感光体〔2〕を作製した。
【0130】
〔有機感光体の製造例3〕
有機感光体の製造例1における(2)金属酸化物粒子の作製において、「チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)」を「チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)『TC−750』((株)マツモト交商製)」に変更したことの他は同様にして金属酸化物粒子〔3〕を得、有機感光体の製造例1における(3)中間層の形成において、金属酸化物粒子〔1〕を金属酸化物粒子〔3〕に変更したことの他は同様にして有機感光体〔3〕を作製した。
【0131】
〔有機感光体の製造例4〕
有機感光体の製造例1における(2)金属酸化物粒子の作製において、「チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)」を「プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)『T−60』((株)日本曹達製)」に変更したことの他は同様にして金属酸化物粒子〔4〕を得、有機感光体の製造例1における(3)中間層の形成において、金属酸化物粒子〔1〕を金属酸化物粒子〔4〕に変更したことの他は同様にして有機感光体〔4〕を作製した。
【0132】
〔有機感光体の製造例5〕
有機感光体の製造例4における(2)金属酸化物粒子の作製において、「数平均一次粒子径15nmのルチル型酸化チタン粒子」を「数平均一次粒子径15nmのアナタース型酸化チタン粒子」に変更したことの他は同様にして金属酸化物粒子〔5〕を得、有機感光体の製造例4における(3)中間層の形成において、金属酸化物粒子〔4〕を金属酸化物粒子〔5〕に変更したことの他は同様にして有機感光体〔5〕を作製した。
【0133】
〔有機感光体の製造例6〕
有機感光体の製造例5における(4)電荷発生層の形成において、電荷発生物質〔CGM−2〕を電荷発生物質〔CGM−1〕に変更したことの他は同様にして有機感光体〔6〕を作製した。
【0134】
〔有機感光体の製造例7〕
有機感光体の製造例5における(4)電荷発生層の形成において、電荷発生物質〔CGM−2〕を電荷発生物質〔CGM−3〕に変更したことの他は同様にして有機感光体〔7〕を作製した。
【0135】
〔有機感光体の製造例8〕
有機感光体の製造例1における(2)金属酸化物粒子の作製において、「チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)」を一般式(2)で表わされるシランカップリング剤として「3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン『KBM−503』(信越化学工業)」に変更したことの他は同様にして金属酸化物粒子〔8〕を得、有機感光体の製造例1における(3)中間層の形成において、エタノール/n−プロピルアルコール/テトラヒドロフラン(体積比;60/20/20)の混合溶媒の添加量を11.5質量部に変更し、金属酸化物粒子〔1〕を金属酸化物粒子〔8〕に変更したことの他は同様にして有機感光体〔8〕を作製した。
【0136】
〔有機感光体の製造例9〕
有機感光体の製造例8における(2)金属酸化物粒子の作製において、「3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン」を「3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン『KBM−5103』(信越化学工業(株)製)」に変更したことの他は同様にして金属酸化物粒子〔9〕を得、有機感光体の製造例8における(3)中間層の形成において、金属酸化物粒子〔8〕を金属酸化物粒子〔9〕に変更したことの他は同様にして有機感光体〔9〕を作製した。
【0137】
〔有機感光体の製造例10〕
有機感光体の製造例8における(2)金属酸化物粒子の作製において、「数平均一次粒子径15nmのルチル型酸化チタン粒子」を「数平均一次粒子径15nmの酸化亜鉛粒子」に変更したことの他は同様にして金属酸化物粒子〔10〕を得、有機感光体の製造例8における(3)中間層の形成において、金属酸化物粒子〔8〕を金属酸化物粒子〔10〕に変更し、その添加量を6.6質量部としたことの他は同様にして有機感光体〔10〕を作製した。
【0138】
〔有機感光体の製造例11〕
有機感光体の製造例1における(2)金属酸化物粒子の作製において、「数平均一次粒子径15nmのルチル型酸化チタン粒子」を「数平均一次粒子径10nmのルチル型酸化チタン粒子」に変更したことの他は同様にして金属酸化物粒子〔11〕を得、有機感光体の製造例1における(3)中間層の形成において、金属酸化物粒子〔1〕を金属酸化物粒子〔11〕に変更したことの他は同様にして有機感光体〔11〕を作製した。
【0139】
〔有機感光体の製造例12〕
有機感光体の製造例1における(2)金属酸化物粒子の作製において、「数平均一次粒子径15nmのルチル型酸化チタン粒子」を「数平均一次粒子径35nmのルチル型酸化チタン粒子」に変更したことの他は同様にして金属酸化物粒子〔12〕を得、有機感光体の製造例1における(3)中間層の形成において、金属酸化物粒子〔1〕を金属酸化物粒子〔12〕に変更し、その添加量を5.1質量部としたことの他は同様にして有機感光体〔12〕を作製した。
【0140】
〔有機感光体の製造例13〕
有機感光体の製造例1における(2)金属酸化物粒子の作製において、「数平均一次粒子径15nmのルチル型酸化チタン粒子」を「数平均一次粒子径50nmのルチル型酸化チタン粒子」に変更したことの他は同様にして金属酸化物粒子〔13〕を得、有機感光体の製造例1における(3)中間層の形成において、金属酸化物粒子〔1〕を金属酸化物粒子〔13〕に変更し、その添加量を5.3質量部としたことの他は同様にして有機感光体〔13〕を作製した。
【0141】
〔有機感光体の製造例14〕
有機感光体の製造例1における(2)金属酸化物粒子の作製において、「数平均一次粒子径15nmのルチル型酸化チタン粒子」を「数平均一次粒子径6nmのルチル型酸化チタン粒子」に変更したことの他は同様にして金属酸化物粒子〔14〕を得、有機感光体の製造例1における(3)中間層の形成において、金属酸化物粒子〔1〕を金属酸化物粒子〔14〕に変更し、その添加量を3.8質量部としたことの他は同様にして有機感光体〔14〕を作製した。
【0142】
〔有機感光体の製造例15〕
有機感光体の製造例1における(2)金属酸化物粒子の作製において、「数平均一次粒子径15nmのルチル型酸化チタン粒子」を「数平均一次粒子径60nmのルチル型酸化チタン粒子」に変更したことの他は同様にして金属酸化物粒子〔15〕を得、有機感光体の製造例1における(3)中間層の形成において、金属酸化物粒子〔1〕を金属酸化物粒子〔15〕に変更し、その添加量を5.4質量部としたことの他は同様にして有機感光体〔15〕を作製した。
【0143】
〔有機感光体の製造例16〕
有機感光体の製造例8における(3)中間層の形成において、エタノール/n−プロピルアルコール/テトラヒドロフラン(体積比;60/20/20)の混合溶媒の添加量を14.4質量部に変更し、金属酸化物粒子〔8〕の添加量を1.7質量部に変更したことの他は同様にして有機感光体〔16〕を作製した。
【0144】
〔有機感光体の製造例17〕
有機感光体の製造例8における(3)中間層の形成において、エタノール/n−プロピルアルコール/テトラヒドロフラン(体積比;60/20/20)の混合溶媒の添加量を21.9質量部に変更し、金属酸化物粒子〔8〕の添加量を4.5質量部に変更したことの他は同様にして有機感光体〔17〕を作製した。
【0145】
〔有機感光体の製造例18〕
有機感光体の製造例8における(3)中間層の形成において、エタノール/n−プロピルアルコール/テトラヒドロフラン(体積比;60/20/20)の混合溶媒の添加量を13.4質量部に変更し、金属酸化物粒子〔8〕の添加量を1.3質量部に変更したことの他は同様にして有機感光体〔18〕を作製した。
【0146】
〔有機感光体の製造例19〕
有機感光体の製造例8における(3)中間層の形成において、エタノール/n−プロピルアルコール/テトラヒドロフラン(体積比;60/20/20)の混合溶媒の添加量を25.9質量部に変更し、金属酸化物粒子〔8〕の添加量を6.0質量部に変更したことの他は同様にして有機感光体〔19〕を作製した。
【0147】
〔有機感光体の製造例20(比較用)〕
有機感光体の製造例1における(4)電荷発生層の形成において、電荷発生物質〔CGM−2〕を下記式(R)で表わされるアゾ系顔料に変更したことの他は同様にして有機感光体〔20〕を作製した。
【0148】
【化10】

【0149】
〔有機感光体の製造例21(比較用)〕
有機感光体の製造例1における(2)金属酸化物粒子の作製において、数平均一次粒子径15nmのルチル型酸化チタン粒子100質量部をケイ酸ナトリウム水溶液に撹拌分散させ、濾過して溶媒を除去した後、100℃以上300℃以下で加熱するシリカ処理(無機シリカ処理)した後、一般式(1)で表わされるチタンキレート化合物としてチタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)「TC‐200」((株)マツモト交商社製)を用いて、有機感光体の製造例1における(2)金属酸化物粒子の作製と同様の表面処理を行ったことの他は同様にして有機感光体〔21〕を作製した。
【0150】
〔有機感光体の製造例22(比較用)〕
有機感光体の製造例1における(4)電荷発生層の形成において、電荷発生物質〔CGM−2〕を「チタンアルコキシド(チタンテトライソプロポキシド)「TA−10」((株)マツモト交商社製)」に変更したことの他は同様にして有機感光体〔22〕を作製した。
【0151】
〔有機感光体の製造例23(比較用)〕
有機感光体の製造例8における(2)金属酸化物粒子の作製において、「3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン」を「N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン「KBM603」(信越化学工業(株)製)」に変更したことの他は同様にして金属酸化物粒子〔23〕を得、有機感光体の製造例8における(3)中間層の形成において、金属酸化物粒子〔8〕を金属酸化物粒子〔23〕に変更したことの他は同様にして有機感光体〔23〕を作製した。
【0152】
【表1】

【0153】
〔実施例1〜19および比較例1〜4〕
得られた有機感光体〔1〕〜〔23〕の耐刷前後(1枚目と10万枚目プリント後)の表面電位および画質(濃度ムラ、カブリ)を以下のようにして評価した。評価結果を表2に示す。
【0154】
〔表面電位の評価〕
得られた有機感光体〔1〕〜〔23〕のそれぞれの表面の、温度10℃、湿度15%RH下における初期(0秒後)の電位と30秒後の電位との差(電位変動ΔVi)を、電気特性測定装置により測定した。表面電位変動の測定は、有機感光体を130rpmで回転させながら、グリッド電圧−800V、露光量0.5μJ/cm2 の条件で、帯電と露光を繰り返して行った。ΔViの評価は、以下の基準に基づいて行った。
A:耐刷前後とも20V以下
B:耐刷前は20V以下、耐刷後は20V超30V以下
C:耐刷前は20V超30V以下、または、耐刷前は30V以下かつ耐刷後は30V超
D:耐刷前から30V超
【0155】
〔画質の評価〕
画像形成装置「bizhub PRO C6501」(コニカミノルタビジネステクノジーズ社製)を用い、温度30℃、湿度80%RH下で下記画質の評価を行った。
【0156】
(1)濃度ムラ
有機感光体〔1〕〜〔23〕をそれぞれブラック(BK)の画像形成ユニットに搭載した。そして、転写電流20μA〜100μAまで変化させて、図3で示されるチャートを出力した。転写材「PODグロスコート(A3サイズ、100g/m2 )」(王子製紙(株)製)を用いて、当該転写材上に形成した画像を目視観察した。画像の濃度ムラは、以下の基準で評価した。
A:転写電流60μA以上でも、濃度ムラが全くみられない
B:転写電流60μA以上でわずかに濃度ムラがみられるが、実用上問題ないレベル
C:転写電流40〜50μAでわずかに濃度ムラがみられるが、実用上問題ないレベル(ただし、高画質の画像を形成する際には問題となるレベル)
D:転写電流40μA未満でも濃度ムラが明確にみられ、実用上問題となるレベル
【0157】
(2)黒ポチ・カブリ(官能評価)
有機感光体〔1〕〜〔23〕をそれぞれブラック(BK)の画像形成ユニットに搭載した。画像が形成されていない転写材「PODグロスコート(A3サイズ、100g/m2 )」(王子製紙(株)製)を準備し、この転写材をブラックの位置まで搬送し、グリッド電圧−800V、現像バイアス−650Vの条件で、白ベタ画像および黄色ベタ画像を形成した。そして、得られた転写材上の黒ポチ・カブリの有無を評価した。
・黒ポチ
A:黒ポチなし
B:拡大すると僅かに黒ポチが見られるが、実使用上問題ないレベル
C:目視で僅かに黒ポチが見られ、高精細の要求には耐えられない
D:目視で黒ポチが見られ、実用上問題がある
・カブリ
A:カブリなし
B:拡大すると僅かにカブリがみられるが、実用上問題ないレベル
C:目視で僅かにカブリがみられ、実用上問題となるレベル
D:カブリが目立つ
【0158】
【表2】

【0159】
以上の結果により、本発明の有機感光体を用いた実施例1〜19は、表面電位、濃度ムラ、黒ポチおよびカブリのいずれもが満足することが確認された。一方、比較例1〜4は、電位、濃度ムラ、黒ポチおよびカブリのいずれかで所定の結果が得られなかった。
【符号の説明】
【0160】
10 有機感光体
12 導電性支持体
14 中間層
16 電荷発生層
17 有機感光層
18 電荷輸送層
100 画像形成装置
110Y、110M、110C、110Bk 画像形成ユニット
111Y、111M、111C、111Bk 有機感光体
113Y、113M、113C、113Bk 帯電手段
115Y、115M、115C、115Bk 露光手段
117Y、117M、117C、117Bk 現像手段
119Y、119M、119C、119Bk クリーニング手段
130 無端ベルト状中間転写体ユニット
131 無端ベルト状中間転写体
133Y、133M、133C、133Bk 一次転写ローラ(転写手段)
135 クリーニング手段
137A、137B、137C、137D ローラ
150 給紙搬送手段
170 定着手段
200 プロセスカートリッジ
201 筐体
203R、203L 支持レール
211 給紙カセット
213A、213B、213C、213D 中間ローラ
215 レジストローラ
217 二次転写ローラ(転写手段)
219 排紙ローラ
221 排紙トレイ
P 転写材
SC 原稿画像読み取り装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に中間層を有し、この中間層上に有機感光層が積層されてなる有機感光体において、
中間層には、金属酸化物粒子が含有されており、この金属酸化物粒子が、下記一般式(1)で表わされるチタンキレート化合物または下記一般式(2)で表わされるシランカップリング剤により表面処理されたものであり、
有機感光層には、電荷発生物質として、下記一般式(3)で表わされる縮合多環系化合物が含有されていることを特徴とする有機感光体。
【化1】


〔一般式(1)中、R1 は、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基を示し、Lは、下記式(a)で表わされるβ−ケトエステル、下記式(b)で表わされるβ−ジケトンおよび炭素数3〜10のアルキレングリコールからなる群より選ばれるキレート化剤に由来する配位子を示す。mは1〜3の整数である。mが2または3の整数である場合においては、2つ以上のR1 は、互いに同一のものであっても異なるものであってもよく、また、2つのR1 は互いに連結していてもよい。また、mが1または2の整数である場合においては、2つ以上のLは、互いに同一のものであっても異なるものであってもよい。〕
【化2】


〔式(a)中、R2 およびR3 は、それぞれ独立に、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基を示す。〕
【化3】


〔式(b)中、R4 〜R6 は、それぞれ独立に、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基を示す。〕
【化4】


〔一般式(2)中、R7 は、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはアセチル基を示し、R8 は、炭素数1〜5の2価の脂肪族炭化水素基を示し、R9 は、水素原子またはメチル基を示す。pは、1〜3の整数である。pが2または3の整数である場合においては、2つ以上のR7 は、互いに同一のものであっても異なるものであってもよい。〕
【化5】


〔一般式(3)中、nは1〜6の整数である。〕
【請求項2】
前記有機感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層上に、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層が形成されてなるものであることを特徴とする請求項1に記載の有機感光体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の有機感光体と、
前記有機感光体の表面に電位を付与する帯電手段と、
前記帯電手段により帯電された有機感光体表面を露光することにより静電潜像を形成する露光手段とを有し、
前記露光手段が、露光光源として発振波長が350〜500nmの半導体レーザーまたは発光ダイオードを備えるものであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−109019(P2013−109019A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251578(P2011−251578)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】