説明

有機無機複合薄膜太陽電池

【課題】光電変換効率に優れる有機無機複合薄膜太陽電池、及び、該有機無機複合薄膜太陽電池の製造方法を提供する。
【解決手段】有機P型半導体化合物5中に、無機N型半導体化合物粒子6が存在する光電変換活性層4を有する有機無機複合薄膜太陽電池1であって、有機P型半導体化合物5中に、更に無機P型半導体化合物粒子3が存在しており、無機P型半導体化合物粒子3の含有量が、有機P型半導体化合物5及び無機P型半導体化合物粒子3の合計に対して5〜50重量%である有機無機複合薄膜太陽電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換効率に優れる有機無機複合薄膜太陽電池、及び、該有機無機複合薄膜太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、化石燃料の枯渇問題や地球温暖化問題を背景に、クリーンエネルギー源として近年大変注目されてきており、研究開発が盛んに行なわれるようになってきている。
従来、実用化されてきたのは、単結晶Si、多結晶Si、アモルファスSi等に代表されるシリコン系太陽電池であるが、高価であることや原料Siの不足問題等が表面化するにつれて、次世代太陽電池への要求が高まりつつある。このような背景の中で、有機薄膜太陽電池は、安価で毒性が低く、原材料不足の懸念もないことから、シリコン系太陽電池に次ぐ次世代の太陽電池として大変注目を集めている。
【0003】
有機薄膜太陽電池は、基本的にはN型半導体層とP型半導体層とを積層させた構造となっている。
しかしながら、P型半導体層では、入射光によって光キャリアが生成したとしても、拡散距離が約20nm程度で失活してしまうことから、P型半導体層の中でも、P/N接合界面付近しか光電変換に寄与することができず、充分なエネルギー変換効率を得ることができないという問題があった。
【0004】
これに対して、P型半導体層と、N型半導体層とを複合化した層を用いることが検討されており、例えば、特許文献1には、P型半導体として有機半導体化合物とN型半導体として無機半導体化合物とを共蒸着によって形成した光電変換活性層を用いる有機無機複合薄膜太陽電池が開示されている。
特許文献1では、このように有機半導体化合物と無機半導体化合物とがランダムに複合化された複合化層では、P/N接合界面が層全体に張り巡らされた構造となるため、複合化層全体が光キャリア生成に対して寄与し、大きな光電流が得られるとしている。
しかしながら、特許文献1記載の複合化層は、無機半導体化合物が互いに離散的に存在しており、電子の輸送に必要な無機半導体化合物同士の接続や、電極との接続に乏しく、充分なエネルギー変換効率を得ることができないという問題があった。
【0005】
更に、これとは別に有機半導体化合物中に無機半導体化合物粒子を分散、充填させて、P/N接合界面の確保と電子の輸送に必要な無機半導体化合物同士の接続、及び電極との接続を両立させ、変換効率を向上させる試みもなされている。
例えば、特許文献2には、有機半導体化合物と、平均粒子径が異なる二種類のロッド状の無機半導体化合物結晶を特定の割合で含む混合液をスピンコートにより電極上へ塗布し、光電変換活性層を形成する方法が開示されている。このような方法によると、無機半導体化合物粒子が密に充填された光電変換活性層を形成することができ、エネルギー変換効率が向上する旨が記載されている。加えて、印刷プロセスによって形成することができ、形成コストの大幅削減も期待できるとしている。
しかしながら、特許文献2記載の複合化層を用いても、P/N接合界面における無機半導体化合物粒子中を輸送されている電荷と有機半導体化合物中の正孔との再結合などにより、エネルギー変換効率の飛躍的な向上には繋がらないという問題があった。そのため、更なる最適な複合化層の構造や、有機半導体化合物及び無機半導体化合物の性能改善が必要とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−100793号公報
【特許文献2】特許第4120362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、光電変換効率に優れる有機無機複合薄膜太陽電池、及び、該有機無機複合薄膜太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、有機P型半導体化合物中に、無機N型半導体化合物粒子が存在する光電変換活性層を有する有機無機複合薄膜太陽電池であって、前記有機P型半導体化合物中に、更に無機P型半導体化合物粒子が存在しており、前記無機P型半導体化合物粒子の含有量が、有機P型半導体化合物及び無機P型半導体化合物粒子の合計に対して5〜50重量%である有機無機複合薄膜太陽電池である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、有機P型半導体化合物中に、無機N型半導体化合物粒子が存在する光電変換活性層に、更に所定量の無機P型半導体化合物粒子を存在させることで、太陽光の光電変換波長域を拡大することが可能となり、その結果、変換効率を大幅に向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の有機無機複合薄膜太陽電池は、有機P型半導体化合物中に、無機N型半導体化合物粒子、及び、所定量の無機P型半導体化合物粒子が存在する光電変換活性層を有する。
【0011】
本発明の有機無機複合薄膜太陽電池の一例を図1に示す。
有機無機複合薄膜太陽電池1は、陰極2、光電変換活性層4、ホール輸送層7、透明電極8、ガラス基板9とからなり、光電変換活性層4は、有機P型半導体化合物5中に、無機N型半導体化合物粒子6が存在する構造となっている。更に、有機P型半導体化合物5中には、無機P型半導体化合物粒子3が存在している。
本発明の有機無機複合薄膜太陽電池1では、光電変換活性層4に、無機N型半導体化合物粒子6に加えて、無機P型半導体化合物粒子3が存在することで、有機P型半導体化合物での光キャリア生成に加え、無機N型半導体化合物粒子による光キャリア生成も得ることが出来る。これにより、太陽光の光電変換波長域を拡大することが可能となり、その結果、有機無機複合薄膜太陽電池10の変換効率を大幅に向上できる。
【0012】
上記光電変換活性層中の有機P型半導体化合物は、電子供与体としての役割を有する。
上記有機半導体化合物としては、例えば、フタロシアニン系顔料、インジゴ、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、メロシアニン化合物、シアニン化合物、スクアリウム化合物、また有機電子写真感光体に用いられる電荷移動剤、電気伝導性有機電荷移動錯体、導電性高分子等が挙げられる。
【0013】
上記フタロシアニン系顔料としては、中心金属がCu、Zn、Co、Ni、Pb、Pt、Fe、Mg等の2価のもの、無金属フタロシアニン、アルミニウムクロロフタロシアニン、インジウムクロロフタロシアニン、ガリウムクロロフタロシアニン等のハロゲン原子が配位した3価金属のフタロシアニン、その他バアナジルフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等の酸素が配位したフタロシアニン等があるが、特にこれに限定されるものではない。
【0014】
上記電荷移動剤としては、ヒドラジン化合物、ピラゾリン化合物、トリフェニルメタン化合物、トリフェニルアミン化合物等があるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0015】
上記電気伝導性有機電荷移動錯体としては、テトラチオフルバレン、テトラフェニルテトラチオフラバレン等があるが特にこれに限定されるものではない。
【0016】
上記導電性高分子としては、例えば、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリフルオレン等が挙げられる。なかでも、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリパラフェニレンビニレン誘導体等のように、有機溶媒に可溶なものが好ましい。
【0017】
上記無機N型半導体化合物粒子は、平均粒子径の好ましい下限が1nm、好ましい上限が50nmである。上記無機N型半導体化合物粒子の平均粒子径が1nm未満であると、分散状態を制御するのが困難となり、凝集体となりやすいためP/N接合界面の表面積が少なくなることで光キャリアの失活が起こりやすくなる。上記無機N型半導体化合物粒子の平均粒子径が50nmを超えると、P/N接合界面の表面積が少なくなることで光キャリアの失活が起こりやすくなる。上記無機N型半導体化合物粒子の平均粒子径の更に好ましい下限は2nm、更に好ましい上限は25nmである。
【0018】
上記無機N型半導体化合物粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム、酸化バナジウムなど公知の半導体の一種または二種以上を用いることができる。なかでも、酸化亜鉛が好ましい。
【0019】
上記有機P型半導体化合物全体に対する上記無機N型半導体化合物粒子の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は25vol%、好ましい上限は75vol%である。上記無機N型半導体化合物粒子の含有量が25vol%未満であると、電荷の輸送に必要な無機N型半導体化合物粒子同士の接続や、電極との接続に乏しく、充分なエネルギー変換効率を得ることができないことがあり、75vol%を超えると、光キャリア生成量が少なく充分なエネルギー変換効率を得ることができないことがある。
【0020】
上記無機N型半導体化合物粒子を製造する方法としては、例えば、酸化亜鉛からなる無機N型半導体化合物粒子を製造する場合は、有機溶剤に亜鉛金属塩を添加した後、湯浴中で攪拌しながら、アルカリ化合物を添加、撹拌することにより、無機N型半導体化合物粒子分散液を得る方法等を用いることができる。
なお、上記方法を用いる場合は、湯浴の温度を変更することにより、平均粒子径/平均結晶子径の範囲を調整することができる。
また、上記無機N型半導体化合物粒子を製造する方法として、噴霧火炎熱分解法、CVD法、PVD法、粉砕法等の乾式法や、マイクロエマルション法、水熱反応法、ゾルゲル法等の湿式法等が適用可能である。
【0021】
上記有機P型半導体化合物中には、更に無機P型半導体化合物粒子が存在している。上記光吸収層中の無機P型半導体化合物粒子は、有機P型半導体化合物とは異なる吸収波長域を有しているため光電変換活性層の光吸収波長域増大及び拡大としての役割を有する。
上記無機P型半導体化合物粒子としては、例えば、CuIn1−xGaSe(CIGS)等のカルコパイライト系化合物、CuZnSnS(CZTS)等からなるものが挙げられる。
【0022】
上記無機P型半導体化合物粒子の含有量は、有機P型半導体化合物及び無機P型半導体化合物粒子の合計に対して下限が5重量%、上限50重量%である。上記無機P型半導体化合物粒子の含有量が5重量%未満であると光電変換層中における光キャリア生成の寄与度が少なく、顕著な効果は得られない。上記無機P型半導体化合物粒子の含有量が50重量%を超えると、無機N型半導体化合物粒子と直接接合している有機P型半導体化合物の光吸収量が減少するため、有機P型半導体化合物と無機P型半導体化合物粒子間における光キャリアの失活による影響が顕著となる。上記無機P型半導体化合物粒子の含有量のより好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は40重量%である。
【0023】
上記無機P型半導体化合物粒子は、平均粒子径の好ましい下限が1nm、好ましい上限は50nmである。上記無機P型半導体化合物粒子の平均粒子径が1nm未満であると分散状態を制御するのが困難となり、凝集体となりやすいため光電変換活性層中での均一な光キャリア生成が困難となる。上記無機P型半導体化合物粒子の平均粒子径が50nmを超えると、有機P型半導体化合物界面における光散乱が発生し、陰極側近傍の有機P型半導体化合物及び無機P型半導体化合物粒子へ光が届きにくく、光キャリア生成量減少の原因となる。上記無機P型半導体化合物粒子の平均粒子径のより好ましい下限は2nm、より好ましい上限は25nmである。
【0024】
上記無機P型半導体化合物粒子を製造する方法としては、例えば、CZTSからなる無機P型半導体化合物粒子を製造する場合は、有機溶剤に銅、亜鉛、錫の酢酸塩を添加した後、湯浴中で攪拌しながら、硫黄粉末を添加、撹拌することにより、無機P型半導体化合物粒子分散液を得る方法等を用いることができる。
なお、上記方法を用いる場合は、湯浴の温度を変更することにより、平均粒子径の範囲を調整することができる。
また、上記無機P型半導体化合物粒子を製造する方法として、CVD法、PVD法、粉砕法等の乾式法や、マイクロエマルション法等の湿式法等が適用可能である。
【0025】
本発明の有機無機複合薄膜太陽電池における光電変換活性層の厚みの好ましい下限は25nm、好ましい上限は5μmである。上記光電変換活性層の厚みが25nm未満であると、充分な光キャリア発生量を得ることが出来ないことがある。5μmを超えると、陽極側で発生した電荷が陰極に捕集されるまでの距離が長く電荷と正孔が再結合しやすくなることがある。
【0026】
本発明の有機無機複合薄膜太陽電池における光電変換活性層以外の陽極、ホール輸送層、陽極については、従来公知のものを用いることができる。
【0027】
本発明の有機無機複合薄膜太陽電池は、例えば、有機P型半導体化合物、無機N型半導体化合物粒子及び無機P型半導体化合物粒子を含有する光電変換活性層用インクを作製する工程、及び、前記光電変換活性層用インクを塗工、乾燥させて光電変換活性層を形成する工程を有する方法によって製造することができる。このような有機無機複合薄膜太陽電池の製造方法もまた本発明の1つである。
【0028】
上記光電変換活性層用インクには、無機P型半導体化合物粒子、無機N型半導体化合物粒子、有機P型半導体化合物に加えて有機溶剤を含有することが好ましい。
【0029】
上記有機溶剤としては例えば、クロロホルム、クロロベンゼン、オルト−ジクロロベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記有機溶剤の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は75重量%、好ましい上限は99重量%である。上記有機溶剤の含有量が75重量%未満であると、インクの粘度が高くなりすぎることがある。上記有機溶剤の含有量が99重量%を超えると、充分な厚みの光電変換活性層や光吸収層が得られないことがある。
【0031】
なお、光電変換活性層用インクを光吸収層上に塗工、乾燥させ、光電変換活性層を形成する工程における塗工方法、乾燥方法については、従来公知の方法を用いることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、光電変換効率に優れる有機無機複合薄膜太陽電池、及び、該有機無機複合薄膜太陽電池の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の有機無機複合薄膜太陽電池の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0035】
(実施例1)
(無機P型半導体化合物粒子の作製)
酢酸銅1.0重量部と酢酸亜鉛0.5重量部と酢酸スズ0.7重量部とをオレイルアミン100重量部に溶解し、攪拌しながら硫黄粉末0.4重量部をオレイルアミン50重量部に溶解した液を滴下し、その後250℃で1時間加熱攪拌を続けることにより、複合硫化物(CZTS)ナノ粒子分散液を得た。次いで、CZTSナノ粒子分散液を遠心分離及び上澄み除去し、沈殿物を回収することによってCZTSナノ粒子(無機P型半導体化合物粒子、平均粒子径10nm)を得た。
【0036】
(無機N型半導体化合物粒子の作製)
酢酸亜鉛二水和物1重量部をメタノール35重量部に溶解し、60℃の湯浴中にて攪拌しながら、水酸化カリウム0.5重量部をメタノール15重量部に溶解した液を滴下し、滴下終了後5時間加熱攪拌を続けることにより、酸化亜鉛ナノ粒子分散液を得た。次いで、酸化亜鉛ナノ粒子分散液を遠心分離及び上澄み除去し、沈殿物を回収することによって酸化亜鉛ナノ粒子(無機N型半導体化合物粒子、平均粒子径5nm)を得た。
【0037】
(有機無機複合薄膜太陽電池の作製)
ガラス基板上に陽極として厚み300nmのITO膜を形成したものを、純水、アセトン、エタノールを順に用いて各10分間超音波洗浄した後、乾燥させた。洗浄後のITO膜の表面上にホール輸送層としてポリエチレンジオキサイドチオフェン:ポリスチレンスルフォネート(PEDOT:PSS)をスピンコート法により50nmの厚みに形成した。
次に、酸化亜鉛ナノ粒子5.00重量部とCZTSナノ粒子0.50重量部とポリ(3−アルキルチオフェン)1.50重量部をクロロホルム350重量部に溶解、分散させることで、光電変換活性層インクを調製した。得られた光電変換活性層インクをホール輸送層上にスピンコート法により100nmの厚みに塗工し、乾燥させることによって光電変換活性層を形成した。更に、光電変換活性層の表面に陰極として真空蒸着によりアルミニウムを100nmの厚みに形成することにより、有機無機複合薄膜太陽電池を作製した。
なお、ポリ(3−アルキルチオフェン)とCZTSナノ粒子の合計に対するCZTSナノ粒子の含有量は、25重量%であった。
【0038】
(実施例2)
実施例1の(有機無機複合薄膜太陽電池の作製)において、CZTSナノ粒子の添加量を0.10重量部、ポリ(3−アルキルチオフェン)の添加量を1.90重量部としたこと以外は実施例1と同様に有機無機複合薄膜太陽電池を作製した。
なお、ポリ(3−アルキルチオフェン)とCZTSナノ粒子の合計に対するCZTSナノ粒子の含有量は、5重量%であった。
【0039】
(実施例3)
実施例1の(有機無機複合薄膜太陽電池の作製)において、CZTSナノ粒子の添加量を1.00重量部及びポリ(3−アルキルチオフェン)の添加量を1.00重量部としたこと以外は実施例1と同様に有機無機複合薄膜太陽電池を作製した。
なお、ポリ(3−アルキルチオフェン)とCZTSナノ粒子の合計に対するCZTSナノ粒子の含有量は、50重量%であった。
【0040】
(比較例1)
実施例1の(有機無機複合薄膜太陽電池の作製)において、CZTSナノ粒子を添加せず、ポリ(3−アルキルチオフェン)の添加量を2.00重量部としたこと以外は実施例1と同様に有機無機複合薄膜太陽電池を作製した。
【0041】
(比較例2)
実施例1の(有機無機複合薄膜太陽電池の作製)において、CZTSナノ粒子の添加量を0.05重量部及びポリ(3−アルキルチオフェン)の添加量を1.95重量部としたこと以外は実施例1と同様に有機無機複合薄膜太陽電池を作製した。
なお、ポリ(3−アルキルチオフェン)とCZTSナノ粒子の合計に対するCZTSナノ粒子の含有量は、2.5重量%であった。
【0042】
(比較例3)
CZTSナノ粒子の添加量を1.20重量部及びポリ(3−アルキルチオフェン)の添加量を0.80重量部としたこと以外は実施例1と同様に有機無機複合薄膜太陽電池を作製した。
なお、ポリ(3−アルキルチオフェン)とCZTSナノ粒子の合計に対するCZTSナノ粒子の含有量は、60重量%であった。
【0043】
<評価>
実施例及び比較例で得られた有機無機複合薄膜太陽電池について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0044】
(有機無機複合薄膜太陽電池の評価)
得られた有機無機複合薄膜太陽電池の電極間に、電源(KEYTHLEY社製、236モデル)を接続し、100mW/cmの強度のソーラーシミュレータ(山下電装社製)を用いて、有機無機複合薄膜太陽電池のエネルギー変換効率を測定した。なお、表1には、比較例1の変換効率、短絡電流密度を1.00として規格化した数値を示した。
【0045】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、光電変換効率に優れる有機無機複合薄膜太陽電池、及び、該有機無機複合薄膜太陽電池の製造方法を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機P型半導体化合物中に、無機N型半導体化合物粒子が存在する光電変換活性層を有する有機無機複合薄膜太陽電池であって、前記有機P型半導体化合物中に、更に無機P型半導体化合物粒子が存在しており、前記無機P型半導体化合物粒子の含有量が、有機P型半導体化合物及び無機P型半導体化合物粒子の合計に対して5〜50重量%であることを特徴とする有機無機複合薄膜太陽電池。
【請求項2】
無機P型半導体化合物粒子は、カルコパイライト系化合物又はCZTSからなることを特徴とする請求項1記載の有機無機複合薄膜太陽電池。
【請求項3】
請求項1又は2記載の有機無機複合薄膜太陽電池を製造する方法であって、有機P型半導体化合物、無機N型半導体化合物粒子及び無機P型半導体化合物粒子を含有する光電変換活性層用インクを作製する工程、及び、前記光電変換活性層用インクを塗工、乾燥させて光電変換活性層を形成する工程を有することを特徴とする有機無機複合薄膜太陽電池の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−98334(P2013−98334A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239501(P2011−239501)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】