有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法
【課題】ヒートキャリア循環型の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法を提供する。
【解決手段】上記課題は、熱分解器4に対する原料供給及びヒートキャリアの循環を停止した状態で、熱風生成装置1から予熱器2へ熱風供給する、予熱器昇温運転を行い、予熱器2内の温度が所定の予熱器定常運転温度に達した後に、原料供給停止状態及び熱風供給状態を継続しつつ、ヒートキャリアの循環を行う急加熱運転を、改質器3内の温度及び熱分解器4内の温度が所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達するまで行うことにより解決できる。
【解決手段】上記課題は、熱分解器4に対する原料供給及びヒートキャリアの循環を停止した状態で、熱風生成装置1から予熱器2へ熱風供給する、予熱器昇温運転を行い、予熱器2内の温度が所定の予熱器定常運転温度に達した後に、原料供給停止状態及び熱風供給状態を継続しつつ、ヒートキャリアの循環を行う急加熱運転を、改質器3内の温度及び熱分解器4内の温度が所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達するまで行うことにより解決できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質バイオマス等の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の代替及び地球温暖化防止を目的とした新エネルギー供給システムとして、間伐材等の木質バイオマスをガス化し、このガスを燃料として熱や電気エネルギーを生成する技術が提案され、利用されている。
【0003】
このようなガス化システムとしては、種々のものが提案されているが、中でも特許文献1記載のヒートキャリア循環型システムは水素濃度の高いガスを生成できる点で優れたものの一つである。このガス化システムは、上から順に、予熱器、改質器、熱分解器、及び分離機を備えており、熱を運ぶための多数のヒートキャリア(熱担持媒体)が、予熱器で加熱されてから改質器、熱分解器及び分離機の順に通された後、バケットコンベア等の移送装置により再び予熱器に戻されるように構成されている。
【0004】
有機物質原料は、スクリューコンベア等の適宜の定量供給装置により、例えば改質器と熱分解器とを繋ぐ供給管路を介して、熱分解器の上部供給口へ連続的に定量供給される。熱分解器内に供給された有機物質は、予熱器から改質器を経て供給された、加熱されたヒートキャリアと接触することにより、チャー(固体の炭素含有残留物)と熱分解ガス(揮発性相)とに分離される。固形分であるチャーは、ヒートキャリアとともに分離機へ供給され、気体である熱分解ガスはヒートキャリアに対して向流接触しながら改質器へ上昇供給される。
【0005】
改質器には反応媒体としての水蒸気が供給されており、熱分解ガスがヒートキャリアにより加熱される条件下でこの水蒸気と混合接触すること及び950℃前後の高温環境下にあることにより、550℃前後で発生する熱分解ガスよりもはるかに水素含有濃度が高く、従って生成量も増大する。
【0006】
改質器で発生したガスは、改質器の上部に設けられた改質ガス排出口を介してガス処理・利用設備に送出される。
【0007】
一方、分離機では、熱分解器から供給される混合物がチャーとヒートキャリアとに分離される。分離されたチャーは熱風炉等の熱風生成装置に供給され、ヒートキャリアは移送装置により予熱器に戻される。
【0008】
熱風生成装置では、チャーの燃焼により熱風(高温排ガス)が生成される。この熱風は予熱器に供給され、予熱器内を堆積状態で通過するヒートキャリア間に通され、ヒートキャリアと直接接触することによりヒートキャリアが加熱される。また、熱風生成装置ではチャーの燃焼により灰が生成される。この灰は、大部分は熱風生成装置内で回収・除去されるが、一部は予熱器に供給され、予熱器の排気経路に設けられたサイクロン等の分離手段で取り除かれる。
【0009】
定常運転においては、ヒートキャリアは、予熱器において、熱風により約1000℃に昇温され、熱分解では550℃付近の熱、改質器では950℃付近の熱を放出して、温度帯の異なる2つの吸熱反応を誘発する。
【0010】
図16は、気温状態からのシステムの立上げ(コールドスタート)における各器の温度変化を示している。コールドスタートにおいては、関係機器の起動操作を経て、システム全体が気温レベルの温度となっている状態から、まず熱風生成装置において補助燃料を燃焼させて熱風を生成し、熱風温度を徐々に上げ、最終的に約1050℃の熱風を予熱器に導いてヒートキャリアを気温レベルの温度から加熱・昇温していく。システムは、停止している間に、気温状態まで冷めた状態にあり、また、雨水の浸入や炉内結露等により炉内が湿っている場合もある。予熱器内のヒートキャリアが十分に加熱された時点、例えば予熱器から出て行く排ガス(予熱器排ガス)がおよそ200℃を超えた時点から、ヒートキャリアの循環も開始され、予熱器の下に設置された改質器に落とされる。同時に、改質器にあった冷えたヒートキャリアもその下に設けられた熱分解器に落とされ、さらに、熱分解器のヒートキャリアも排出が始まって、システム全体のヒートキャリアが循環を始める。このように、予熱器で昇温されたヒートキャリアは、循環に伴って、改質器、熱分解器、分離機、移送装置(バケットコンベア)など、循環経路に熱を供給し、システム全体を昇温していく。昇温過程では、システム内に水分があると、水分が蒸発するまで100℃で暫く温度上昇が停滞することもあるが、蒸発が終わると再び上昇に転じ、熱分解器の温度が定常運転温度(600度程度)に達した時点から原料の供給を開始してその熱分解(吸熱反応)で熱分解器の機器制限温度を超える過剰な温度上昇を抑制しつつ、改質器が定常運転温度(950度程度)に到達するのを待つ。
【0011】
ヒートキャリアは、予め予熱器、改質器、熱分解器、分離機、バケットコンベアなどに適正な量が詰め込まれており、予め設定された循環量となるように循環される。例えば、予熱器と熱分解器に設けたヒートキャリアのレベル計からの信号により、予熱器と熱分解器のヒートキャリアの堆積レベルが一定の範囲に納まるように一部のセグメントバルブ開閉が管理され、原料投入時に熱分解器で発生するチャーによる熱分解器からの排出量の増大化時の排出量の微調整はこのレベル計信号に基づいて行われる。
【0012】
ヒートキャリア循環型システムの場合、ヒートキャリアの循環量は、改質器と熱分解器の間に設けられたセグメントバルブの開閉頻度(時間間隔)を操作することにより調節が可能である。ヒートキャリアは、システム内を循環しながら、昇温・放熱を繰り返すこととなるが、この1サイクルは、ヒートキャリア総量を時間当たりの循環量で割ることで得られ、通常の場合では、12〜8時間がサイクルタイムとしてある。例えば、ヒートキャリアの全体量が約4.7トンの場合、熱媒体の循環速度は400〜600kg/h程度となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許4264525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、このようなヒートキャリア循環型システムは、改質器及び熱分解器をそれぞれ異なる定常運転温度に導くのが容易ではなく、システムを定常運転温度まで高速に昇温できないという問題点を有していた。
【0015】
例えば、ヒートキャリアの全体量が約4.7トン、ヒートキャリアの循環速度が400〜600kg/h程度のヒートキャリア循環型システムにおいては、システム温度が気温程度(例えば改質器25℃、熱分解器25℃)まで低下した状態から熱分解ガスの水蒸気改質まで可能な温度、即ち改質器を950℃、熱分解器を有機物の熱分解が可能な550℃の水準まで昇温するためには、機器からの放熱もあって、凡そヒートキャリアを7サイクル以上、日数にして3〜4日、時にはそれ以上循環させる必要がある。
【0016】
このように、システムを熱分解ガスの水蒸気改質まで可能な温度にするのに要する時間が長いと、稼動日の朝にシステムを起動して、その日の夕方には運転を停止する、というデイリースタート・デイリーストップ(DSSと略される。)は不可能である。昇温時間が長い、という問題点だけであれば、システムを停止せずに24時間連続運転を行うことにより解決できるが、例えばヒートキャリア循環型システムで生成したガスを用いて発電を行い、売電を行う場合は、電気買取価格が低く人件費が高い夜間の収益が極端に低下する場合等、24時間連続運転が適さない場合もある。
【0017】
また、週末に操業を休む場合、改めて月曜日からシステムの昇温に入るのでは、昇温に時間がかかり過ぎて、その日のガス製造や発電ができなくなってしまう。
【0018】
さらに、別の問題として、システムの昇温過程、原料の過剰供給により反応器の温度が極端に低下した場合、反応器の温度を規定の温度に戻そうとしても、直ぐに戻すことができず、不経済な運転を強いられることも問題である。
【0019】
そこで、本発明の主たる課題は、ヒートキャリア循環型の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決した本発明は、次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
熱を運ぶための多数のヒートキャリアと、このヒートキャリアを加熱するための予熱器と、熱分解ガスの水蒸気改質を行うための改質器と、有機物質原料を熱分解するための熱分解器と、熱風を生成する熱風生成装置とを備え、
前記ヒートキャリアを、前記予熱器、改質器、及び熱分解器の順に通した後、移送装置により再び予熱器に戻して循環させるとともに、前記熱分解器内に有機物質原料を供給し、前記改質器内に対して直接又は間接的に水蒸気を供給し、
前記熱分解器内では、前記有機物質原料を、加熱されたヒートキャリアと接触させることによりチャーと熱分解ガスとに熱分解し、熱分解ガスはヒートキャリアに対して向流接触しながら改質器へ供給し、
前記改質器では、前記熱分解ガスを前記ヒートキャリアにより加熱しつつ前記水蒸気と接触させることにより水素含有濃度を向上させたガスを生成し、
前記熱風生成装置では、熱風を生成して予熱器に供給し、
前記予熱器では、前記熱風生成装置から供給される熱風を、前記予熱器内を堆積状態で通過するヒートキャリア間に通して、ヒートキャリアと直接接触することによりヒートキャリアを加熱する、
ように構成した有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法であって;
前記熱分解器に対する前記有機物質原料の供給、及び前記ヒートキャリアの循環をそれぞれ停止した状態で、前記熱風生成装置から前記予熱器へ熱風供給する、予熱器昇温運転を行い、
前記予熱器内の温度が所定の予熱器定常運転温度に達した後に、前記有機物質原料の供給停止状態及び前記熱風供給状態を継続しつつ、前記ヒートキャリアの循環を行う急加熱運転を、前記改質器内の温度及び熱分解器内の温度が所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達するまで行う、
ことを特徴とする有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【0021】
(作用効果)
このように、ヒートキャリアの循環及び原料供給を停止した状態で、予熱器内の温度を定常運転温度まで昇温した後、原料供給を開始せずに、ヒートキャリアの循環を開始すると、各器の定常運転温度の大小関係と加熱順番との関係の影響もあり、図15に示すように、熱分解器が機器制限温度を超えることもなく、改質器及び熱分解器の温度が円滑に定常運転温度に導かれる。そして、改質器及び熱分解器が定常運転温度に達してから原料供給を開始しても、ガス化不可能となるような温度低下は防ぐことができる。しかも、この効果は、後述するコールドスタートだけでなく、ホットスタートの場合でも発揮される。よって、本発明によれば、システムをガス化可能な温度まで高速に昇温できるようになる。
これに対して、ヒートキャリアの循環及び原料供給を行いつつシステム全体の昇温を開始すると、ヒートキャリアが熱分解器を経て予熱器に戻る頃には低温になり過ぎ、熱分解器の定常運転温度が最も低いこともあって、図16に実線で、また図15に二点鎖線で示すように、熱分解器は定常運転温度に達していながら改質器は定常運転温度に達せず、ガス化不可能という中途半端な状態が続いてしまう。つまり、これが、ヒートキャリア循環型システムにおける昇温長期化の主要因である。
【0022】
<請求項2記載の発明>
前記予熱器定常運転温度は1000℃以上であり、前記改質器定常運転温度は950℃以上であり、前記熱分解器定常運転温度は550℃以上である、請求項1記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【0023】
(作用効果)
各器の定常運転温度は上記範囲とするのが好ましい。
【0024】
<請求項3記載の発明>
予熱器、改質器及び熱分解器を気温状態からそれぞれ予熱器定常運転温度、改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度まで昇温する、コールドスタートに際し、
前記有機物質原料の供給及び前記ヒートキャリアの循環を行わずに、前記予熱器に対して熱風の供給を開始し、前記予熱器内温度が所定温度を超えた後に前記熱風供給を継続したまま前記ヒートキャリアの循環を開始し、
このヒートキャリアの循環により前記熱分解器内温度が熱分解器定常運転温度に到達した後に、前記予熱器昇温運転を開始し、
この予熱器昇温運転により、前記予熱器内の温度が所定の予熱器定常運転温度に達した後に、前記改質器内の温度及び熱分解器内の温度が所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達するまで前記急加熱運転を行い、しかる後に前記有機物質原料の供給を開始する、請求項1又は2記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【0025】
(作用効果)
前述したとおり、従来のコールドスタートでは、水蒸気改質の出来る状態、すなわち改質器内温度が950℃に到達するには3〜4日間、低気温、強風下などの悪条件下ではそれ以上の継続運転を必要とする。これに対して、本発明のコールドスタートでは、熱分解器が定常運転温度に達するまでは従来同様に昇温を行うが、その後に予熱器昇温運転及び急加熱運転を介在させることにより加熱効率が改善され、各器の温度が円滑且つ高速に定常運転温度に到達するようになる。
【0026】
<請求項4記載の発明>
前記予熱器内の温度、前記改質器内の温度、及び前記熱分解器内の温度が、前記予熱器定常運転温度、前記改質器定常運転温度、及び前記熱分解器定常運転温度にそれぞれ達している状態で、前記予熱器に対する熱風の供給、前記ヒートキャリアの循環、及び前記有機物質原料の供給を行う定常運転から、
前記有機物質原料の供給を停止した状態で、前記予熱器に対する供給熱量の増減及び前記ヒートキャリアの循環速度の増減の少なくとも一方を行い、予熱器に対する熱風供給量及び供給熱風温度のうち少なくとも一方を低減し、且つ前記予熱器内の温度を前記予熱器定常運転温度よりも低く且つ所定の下限温度以上、前記熱分解器内の温度を前記熱分解器定常運転温度よりも低く且つ所定の下限温度以上、及び前記改質器内の温度を前記改質器定常運転温度よりも低く且つ所定の下限温度以上にそれぞれ保持する、保温運転に移行した後、
この保温運転から前記予熱器昇温運転に移行し、前記予熱器内の温度が所定の予熱器定常運転温度に達した後に、前記改質器内の温度及び熱分解器内の温度が所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達するまで前記急加熱運転を行い、しかる後に前記有機物質原料の供給を再開する、ホットスタートを行う、請求項1又は2記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【0027】
(作用効果)
前述したとおり、ガス化システムを運用していく上では一時的に操業を停止する方が望ましい場合もある。例としては、生成ガスを用いて発電を行い、売電を行うにあたり、電気買取価格が低く人件費が高い夜間の収益が極端に低下する場合や、週末、連休に操業を休む場合である。このような一時的な操業停止において、システムをある程度まで冷却してしまうと、システムを再びガス化可能な状態まで昇温するのには長時間を要する。
例えば、本システムが、連休前に原料供給を停止し、数日後の連休明けから原料供給を開始する場合、一旦熱風送風まで停止するシステム全停止の状態にすると、熱分解器の内部温度は気温が2℃から4℃の冬季の計測では24時間で500℃から100℃に冷却する。予熱器など最も熱が残る部分でも、5日から6日でほぼ気温程度まで冷却する。一旦システムが気温程度まで冷却してしまうと、コールドスタートの昇温となるため、その昇温には長時間を要し、連休明けから昇温に入っても直ぐにはガス化を開始することはできないこととなる。
そこで、システムを一時的に停止する場合、上述のように保温運転を行うことによりシステムを一定温度以上に保ち、その後に本発明の予熱器昇温運転及び急加熱運転を経て原料供給を再開するというホットスタートを採用することにより、エネルギー消費を抑えつつシステムの再開を速やかに行うことができるようになる。
なお、上述の保温運転と次述の待機運転との相違点は、主に保とうとするシステム温度の違いであり、保温運転は、効率的なホットスタート昇温を行うために必要な下限温度に維持する運転であり、待機運転は、何時でも原料供給できる定常運転温度状態、すなわち高温に保つ運転である。待機運転及び保温運転は、共に原料供給を停止した状態でシステムの温度を保つものであり、高温に保つほどエネルギー消費が大きくなるため、数日間の休業の際には、次述の待機運転ではなく、上述の保温運転を採用する方が合理的である。
【0028】
<請求項5記載の発明>
前記予熱器内の温度、前記改質器内の温度、及び前記熱分解器内の温度が、前記予熱器定常運転温度、前記改質器定常運転温度、及び前記熱分解器定常運転温度にそれぞれ達しており、且つ前記原料供給を停止している状態から、前記原料供給を開始するまでの間、
(い)前記ヒートキャリアの循環の一時的又は連続的な停止、
(ろ)前記ヒートキャリアの循環の一時的又は連続的な実行、並びに
(は)前記予熱器に対する熱風供給量及び供給熱風温度のうち少なくとも一方の増減、
の少なくとも一つの操作により、前記予熱器内の温度、前記改質器内の温度、及び前記熱分解器内の温度を、前記予熱器定常運転温度、前記改質器定常運転温度、及び前記熱分解器定常運転温度にそれぞれ維持する、待機運転を行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス化システムにおける高速昇温方法。
【0029】
(作用効果)
例えば、本ガス化システムを運用していく上では、原料供給を行わない状態でシステム温度を定常運転温度に保つことが望ましい場合がある。例えば、急加熱運転によりシステムの各機器は定常運転温度に達したが、原料供給開始までにしばし原料供給を始められない時間がある場合、或いはDSSにおける夜間の原料供給停止時に、翌日の原料供給再開に向けシステム温度を定常運転温度状態に保つ場合がそれである。このような場合、上述の待機運転を行うことにより、何時でも原料供給可能な温度状態を保つことができる。より詳細には、(い)の操作によって各機器の温度を放熱により下げることができ、(ろ)の操作によって各機器の温度を熱供給により上げることができ、(は)の操作によってヒートキャリアの加熱の程度を変化させることができる。
【0030】
<請求項6記載の発明>
前記予熱器内の温度、前記改質器内の温度、及び前記熱分解器内の温度が、前記予熱器定常運転温度、前記改質器定常運転温度、及び前記熱分解器定常運転温度にそれぞれ達している状態で、前記熱風の供給、前記ヒートキャリアの循環、及び前記有機物質原料の供給を行う定常運転中に、前記熱分解器内温度が前記熱分解器定常運転温度未満となったとき、
前記予熱器昇温運転を行い、前記予熱器内の温度が所定の予熱器定常運転温度に達した後に、前記改質器内の温度及び熱分解器内の温度が所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達するまで前記急加熱運転を行う、リセット操作を実行し、このリセット操作後に、リセット操作前よりも少ない供給量で前記有機物質原料の供給を再開する、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【0031】
(作用効果)
本システムは、ヒートキャリアをシステム内で循環させ、予熱器での蓄熱と改質器と熱分解器での放熱を利用して、熱分解器の中での有機物質の熱分解と改質器の中での水蒸気改質を行うシステムであるが、熱分解器に原料が供給され過ぎると、吸熱反応と水分の蒸発等により、熱分解器内でヒートキャリアの温度低下が起こり、この温度低下が許容範囲を超えると、ヒートキャリア温度が循環の度に下がる温度低下スパイラルに入る。例えば、通常の場合、熱分解器内のヒートキャリア温度として許容できる下限温度はおよそ500℃であり、この温度を下回ると、予熱器に戻る時には400℃以下となり、予熱器での昇温の限界もあって、温度低下スパイラルという悪循環に陥り、ヒートキャリアを定常運転温度に戻せなくなる。これに対して、上述のリセット操作を行うと、温度低下の悪循環から抜け出すことができる。
【0032】
<請求項7記載の発明>
前記予熱器内温度が前記予熱器定常運転温度に達し、前記予熱器の排ガス温度が機器制限温度を超えたとき、次の、
(イ)前記ヒートキャリアの循環が停止しているとき、一時的に、前記ヒートキャリアの循環を開始する、
(ロ)一時的又は連続的に、前記予熱器に対する熱風供給量及び供給熱風温度のうち、供給熱風温度は維持したまま熱風供給量を減少させる、
(ハ)一時的に、前記予熱器への熱風供給を停止する、
(ニ)一時的に、予熱器に対して冷却用空気を送風する、
の少なくとも一つの過熱抑制操作を実行する、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【0033】
(作用効果)
予熱器昇温運転中、急加熱運転中、又は待機運転中等に、予熱器内温度が予熱器定常運転温度に達し、さらに温度が上昇して予熱器の排ガス温度が機器制限温度を超えるおそれがあるが、そのときは、上記(イ)〜(ニ)の少なくとも一つの過熱抑制操作を実行することにより、予熱器の温度低下を抑えつつ、運転継続による予熱器の過熱を防止できるようになる。なお、一時的とは断続的を含む意味である(以下同じ)。例えば、一時的又は連続的に(イ)のヒートキャリアの循環を再開し、それでも予熱器内温度が下がらないときには、予熱器に対する供給熱風温度は維持したまま熱風供給量を減少させる(ロ)〜(ハ)の操作を行うことによって、予熱器昇温運転等の継続による予熱器の過熱を防止できるのであるが、それでもなお、予熱器の昇温を抑えられない場合もありうる。よって、そのような場合には、上述の(二)のような予熱器冷却行程を行うのが好ましい。
【0034】
<請求項8記載の発明>
前記急加熱運転における前記ヒートキャリアの循環開始と同時又はその直前もしくは直後に、前記予熱器に対する熱風供給量及び供給熱風温度の少なくとも一方を増加する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【0035】
(作用効果)
急加熱運転においてヒートキャリアの循環を開始すると、予熱器の温度が低下し過ぎるおそれがあるため、このように、ヒートキャリアの循環開始と同時又はその直前もしくは直後に、予熱器に対する熱風供給量及び供給熱風温度の少なくとも一方を増加し、予熱器の温度低下を防止するのが好ましい。
【0036】
<請求項9記載の発明>
システムを停止するにあたり、前記熱分解器に対する前記有機物質原料の供給を停止した状態で、前記ヒートキャリアの循環及び前記予熱器への熱風供給を継続する、後処理運転を所定時間を行い、しかる後に、前記ヒートキャリアの循環及び前記予熱器への熱風供給をそれぞれ停止する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【0037】
(作用効果)
システムを停止する際、直ちにヒートキャリアの循環をも停止してしまうと、熱分解器に滴下するタールの固化により多数のヒートキャリアが塊状に固まり、次のシステム開始の際にヒートキャリアの循環阻害をもたらすことがある。これに対して、上述のように後処理運転を行うと、熱分解器においてタールが滴下しても熱風により加熱されたヒートキャリアが循環しているため、塊状に固化するといった事態は発生し難くなる。
【発明の効果】
【0038】
以上のとおり、本発明によれば、ヒートキャリア循環型の有機物質のガス化システムにおいて、システムをガス化可能な温度まで高速に昇温できるようになる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】ガス化システムのフロー図である。
【図2】予熱器の縦断面図である。
【図3】図1のA−A断面図及びB−B断面図である。
【図4】改質器の縦断面図である。
【図5】図4のC−C断面図及びD−D断面図である。
【図6】熱分解器の縦断面図である。
【図7】図6のE−E断面図である。
【図8】分離機の概略図である。
【図9】傘状スクリーンの概略図である。
【図10】分離機の概略図である。
【図11】予熱器の縦断面図である。
【図12】図11のF−F断面図である。
【図13】予熱器の破断斜視図である。
【図14】予熱器の温度変化例を概略的に示すグラフである。
【図15】コールドスタートにおける各器の温度変化例を概略的に示すグラフである。
【図16】従来のコールドスタートにおける各器の温度変化例を概略的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら詳説する。
本発明に係るガス化システムは、例えば図1に示される機器構成で実施することができる。すなわち、図1に示されるガス化システムは、上から順に、予熱器2、改質器3、熱分解器4、及び分離機5を直列に備えており、熱を運ぶための多数のヒートキャリア(熱担持媒体)が、予熱器2で加熱されてから改質器3、熱分解器4及び分離機5の順に通された後、バケットコンベア等の移送装置6により再び予熱器2に戻されるように構成されているものである。
【0041】
ヒートキャリアとしては、粒径5〜20mm程度、好ましくは粒径8〜12mm程度の粒状物を用いることができ、特に球状のものが好適である。また、ヒートキャリアの素材としては、アルミナ等のように硬質で熱容量の大きなものが好適である。なお、粒径とは、JIS Z 8801−1「試験用ふるい−第 1 部:金属製網ふるい」に規定されるふるいを用い、JIS A 1102 「骨材のふるい分け試験方法」に準じて測定される、ふるい分け法による粒径(ふるいの目開き)を意味する(以下同じ)。
【0042】
有機物質原料は原料ホッパ17に貯留されており、スクリューコンベア14やロータリーフィーダ等の適宜の定量供給装置により切り出され、例えば改質器3と熱分解器4とを繋ぐ供給管路3xを介して、熱分解器4の上部供給口へ連続的に定量供給される。この供給管路3xにはバルブ3bが設けられており、ヒートキャリア等の固形分の通過を停止させる等の制御が可能になっている。ヒートキャリアの循環中は、このバルブ3bが所定の間隔で開閉を繰り返し、ヒートキャリア等の固形分が断続的に定量通過するようになっている。
【0043】
有機物質原料としては、間伐材や剪定枝等の木質バイオマスが好適であるが、プラスチック等他の廃棄物等を用いることもできる。廃ラスチックの例としては、塩化ビニル、ポリウレタン、メタクリル樹脂、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等を挙げることができる。有機物質原料の形状は特に限定されないが、φ1〜50mm程度、L=1〜150mm程度、特にヒートキャリアの粒径の1.6倍以下程度の粒径に破砕、切削、ペレット化したものを好適に用いることができる。
【0044】
熱分解器4内に供給された有機物質は、予熱器2から改質器3を経て供給された、加熱されたヒートキャリアと混合状態で接触することにより、吸熱反応を起こし、チャー(固体の炭素含有残留物)と熱分解ガス(揮発性相)とに分離される。熱分解器4内の温度は適宜定めることができるが、500〜600℃程度にするのが好ましい。熱分解生成物のうち、固形分であるチャーは、ヒートキャリアとともに供給管路4xを介して分離機5へ供給され、気体である熱分解ガスはヒートキャリアに対して向流接触しながら改質器3へ上昇供給される。この供給管路4xにはバルブ4bが設けられるとともに、その下流側にダンパ4dが二段に設けられており、前者によりヒートキャリア等の固形分の通過を停止させる等の制御が可能になっており、後者により気体分の通過を停止させる等の制御が可能になっている。ヒートキャリアの循環中は、このバルブ4bが所定の間隔で開閉を繰り返すとともに、上下のダンパ4dが開閉動作を反対に行うことにより、気体の通過を遮断しつつ、ヒートキャリア等の固形分が断続的に定量通過するようになっている。
【0045】
改質器3に対しては反応媒体としての水蒸気が供給されており、熱分解ガスがヒートキャリアにより加熱されつつ水蒸気と混合接触することにより、次式の改質反応が起こり、水素含有濃度の高いガスが発生する。改質器3内の温度は適宜定めることができるが、改質を十分かつ確実に行うために950℃以上とするのが好ましい。
CnHm + nH2O → nCO + (m/2+n)H2 …(1)
CO + H2O → H2 + CO2 …(2)
【0046】
水蒸気は適宜の方法で供給することができるが、図示例では、貯水タンク19の水を給水ポンプ19pにより汲みだし、廃熱ボイラ(間接接触式熱交換器)7において、改質器3から別途供給される生成ガスの熱を利用して蒸気とした後、改質器3の下部から供給するようにしている。また、改質器3への水蒸気供給とともに又はこれに代えて、改質器3における改質反応に利用する水蒸気を図示するように熱分解器4を介して間接的に供給することもできる。
【0047】
一方、分離機5では、熱分解器4から供給される混合物がチャーとヒートキャリアとに分離される。分離されたチャーはスクリューコンベア等の移送装置1iにより熱風炉等の熱風生成装置1に供給され、ヒートキャリアは移送装置6により予熱器2に戻される。移送装置6から予熱器2への供給管路6xにはバルブ6bが設けられるとともに、その下流側にダンパ6dが二段に設けられており、前者によりヒートキャリア等の固形分の通過を停止させる等の制御が可能になっており、後者により気体分の通過を停止させる等の制御が可能になっている。ヒートキャリアの循環中は、このバルブ6bが所定の間隔で開閉を繰り返すとともに、上下のダンパ6dが開閉動作を反対に行うことにより、気体の通過を遮断しつつ、ヒートキャリア等の固形分が断続的に定量通過するようになっている。
【0048】
熱風生成装置1はバーナーを備えており、このバーナーを介して炉内に空気が供給されることによりチャーが燃焼し、熱風(高温排ガス)が生成される。熱風生成装置の運転においては、LPG等の気体補助燃料やBDF等の液体燃料を、連続的に又は運転開始時等の必要時にバーナーに供給し、燃焼させることができる。熱風生成装置1で生成された熱風は予熱器2に供給される。また、熱風生成装置1でチャーの燃焼により生成される灰は、熱風生成装置1内で回収され、灰貯留部1pに排出される。
【0049】
予熱器2では、熱風生成装置1から供給される熱風が、予熱器2内を堆積状態で通過するヒートキャリア間に通され、ヒートキャリアと直接接触することによりヒートキャリアが加熱される。予熱器2で加熱されたヒートキャリアは、供給管路2xを介して改質器3に供給される。この供給管路2xにはバルブ2bが設けられるとともに、その下流側にダンパ2dが二段に設けられており、前者によりヒートキャリア等の固形分の通過を停止させる等の制御が可能になっており、後者により気体分の通過を停止させる等の制御が可能になっている。ヒートキャリアの循環中は、このバルブ2bが所定の間隔で開閉を繰り返すとともに、上下のダンパ2dが開閉動作を反対に行うことにより、気体の通過を遮断しつつ、ヒートキャリア等の固形分が断続的に定量通過するようになっている。
【0050】
予熱器2でヒートキャリアの加熱利用された熱風は、誘引送風機15により予熱器2から排気され、サイクロン等の分離手段8を介して排気に混入する灰・ダスト(灰以外の粉粒体)Dを取り除かれた後、好適には空気加熱器((間接接触式熱交換器))9において熱風生成装置1へ供給する空気の加熱に利用した後、大気に放出される。なお、空気加熱器9における予熱に先立って、予熱器(間接接触式の熱交換器)9iを利用して水蒸気(前述の方法により製造し、供給できる)と熱交換し、予熱しておくとより好ましい。
【0051】
改質器3で生成された水素高含有の生成ガスは、図示例では、誘引送風機11により改質器3からガス処理・利用設備に送出され、廃熱ボイラ7で250℃程度まで冷却され、続いて湿式スクラバー10に供給されてタールが除去されるとともに40℃程度まで冷却された後、ガスホルダ12に貯留されるようになっている。なお、図示例の湿式スクラバー10は、上部から散水した洗浄水を下部から排出し、冷却器(間接接触式の熱交換器)10cで冷却した後、再度上部から散水するものであり、符号10pは洗浄水循環ポンプを示しており、符号10dは冷却器に対する冷却水の循環を行う冷却水循環ポンプを示しており、符号10tは冷却水を外気により冷却する冷却塔を示しており、符号18は洗浄水を排水処理する排水処理装置を示している。
【0052】
生成されるガスの利用形態は特に限定されるものではないが、図示するように、ガスエンジン発電機13を用いて電力に変換するのも一つの好ましい形態である。また、生成ガスの一部を、熱風生成装置1の補助燃料として使用するのも好ましい形態である。
【0053】
他方、ヒートキャリアの循環サイクルは、各器間に設けられたセグメントバルブ2b,3b,4b,6bの開閉頻度(間隔)のうち、セグメントバルブ3bの開閉頻度を操作することにより調節が可能であり、通常の場合、12〜8時間がサイクルタイムとして適切である。この1サイクルは、ヒートキャリア総量を時間当たりの循環量で割ることで求めることができる。その他のセグメントバルブ2b,4b,6bは、予熱器2と熱分解器4に設置されたヒートキャリアのレベル計によりヒートキャリアの堆積高が測定され、レベルが高い場合には開閉頻度を早め、レベルが低い場合は遅くする自動調整がなされ、予熱器2と熱分解器4のヒートキャリアの堆積高さが一定の範囲に保たれる。
【0054】
(予熱器)
予熱器2は特に限定されないが、例えば図2及び図3に示されるような灰除去手段を有するものが好適である。すなわち、図2及び図3に示される予熱器2は、上下方向に沿う円筒状の上側ヒートキャリア通路20と、この上側ヒートキャリア通路20の下方に連続する漏斗状(逆さ裁頭円錐台状。下側に向かうにつれて径が小さくなる形状であればよい。)の下側ヒートキャリア通路21とを有し、上側ヒートキャリア通路20上面の中央部に供給口20i、下側ヒートキャリア通路21下端に排出口21x、上側ヒートキャリア通路20の側面に排気口20x及び下側ヒートキャリア通路21の側面に熱風吹き出し口22nをそれぞれ有しているものである。
【0055】
図示例では、下側ヒートキャリア通路21は、パンチングメタル等のように多数の透過孔22nが全面に形成された漏斗状部材22により形成されており、この漏斗状部材22の外側を取り囲むように環状スペース23が形成され、この環状スペース23の側面に外部からの熱風供給口24が連通されており、漏斗状部材22の透過孔22nが熱風吹き出し口となり、環状スペース23が熱風吹き出し口22nの全てに連通する分配供給路となる。漏斗状部材22はニッケル合金等の耐熱金属又はアルミナセラミックス等の耐熱セラミックスにより、また、上側ヒートキャリア通路20及び環状スペース23の周壁はアルミナセラミックス等の耐熱セラミクス材により形成することができ、予熱器2の外面は鉄皮により形成することができる。
【0056】
予熱器2では、上側及び下側ヒートキャリア通路20,21において、ヒートキャリアがある程度の堆積状態を維持しながら下降し、下側ヒートキャリア通路21を通過する過程で各熱風吹き出し口22nから、つまり周方向の複数個所から吹き出される熱風と接触して加熱される。このように、下側ヒートキャリア通路21を通るヒートキャリア群に対して、周方向の複数個所から熱風が供給されると、ヒートキャリアの通過数が下側ヒートキャリア通路21の径の減少に伴って減少することも相まって、熱風生成装置1からの新鮮な熱風がより多くのヒートキャリアに対して直接又はそれに近い状態で接触されるため、ヒートキャリアの加熱効率に優れるようになる。
【0057】
そして特徴的には、漏斗状部材22の透過孔22nの寸法は、灰・ダストDは通過するがヒートキャリアは通過しないように設定されるとともに、分配供給路である環状スペース23から外部に連通する灰・ダストの抜出口25が形成されている。漏斗状部材22の透過孔22nの形状は、図示例のような円状の他、楕円状、三角形状等、適宜の形状とすることができる。透過孔22nの寸法は、ヒートキャリアの寸法に応じて適宜定めることができ、例えば、透過孔22nの直径(円孔の場合は直径を意味し、その他の形状(楕円孔等)の場合は短径(直径のうち最も短いものを意味する)が、ヒートキャリアの粒径未満、特に70%以下とすることができる。また、灰・ダストの抜出口25の下端は環状スペース23の下端に合わせるのが好ましい。さらに、抜出口25は環状スペース23の側面から水平方向ないし下降気味に延在しているのが好ましい。
【0058】
このような抜出口25を有することにより、予熱器2内に堆積する灰・ダストDを抜出口25を介して除去し、熱風吹き出し口22n及び分配供給路23の閉塞を防止できるようになる。よって、予熱器2におけるヒートキャリアの加熱効率の経時的低下を防止でき、生成ガスの水素濃度が低下するといった事態を防止できるようになる。
【0059】
なお、抜出口25からの灰・ダストDの取り出しは、灰掻き等の機械的手段により行ってもよいが、作業が煩雑となるため、図示例のように、分配供給路23に連通する吹き込み口26を設け、ここから圧縮空気(圧縮空気に代えて不活性ガスを用いても良い。以下同じ。)を吹き込み、灰・ダストDを圧縮空気に乗せて抜出口25から排出するように構成すると、炉内温度に関係なく灰・ダストDの抜出を実行でき、また自動的に定期実行することもできるため好ましい。吹き込み口26の数、位置及び吹き込み方向は適宜定めることができるが、図示例のように、環状の分配供給路23における抜出口25に対して反対側の位置の側面に設けるのが好ましい。特に、吹き込み口26を周方向に複数(図示例では2つ)並設し、図中に矢印で示すように、一方の吹き込み口26からの圧縮空気を環状の分配供給路23の一方側から、また、他方の吹き込み口26からの圧縮空気を環状の分配供給路23の他方側から、それぞれ抜出口25に向けて回りこませるようにすると、分配供給路23内の灰・ダストDを円滑に抜出口25へ送り出すことができるため好ましい。予熱器2における圧縮空気による灰の排出はガス化運転を行っていないときに実施する他、ガス化運転中にも実施できる。圧縮空気による灰の排出を行う場合は、予熱器2内温度を低下させないために、供給する圧縮空気を、例えば熱風生成装置1への供給空気と同様の廃熱との熱交換等、適宜の加熱手段により予め改質器3内温度又は近傍まで加熱してから供給することができる。
【0060】
(改質器)
灰はヒートキャリアに伴って予熱器2、改質器3、熱分解器4の順に移動する過程で、改質器3内や改質器3と熱分解器4との間の経路(例えば、バルブ等)にも蓄積し、ヒートキャリアの循環阻害や、改質器3と熱分解器4との間の経路の閉塞による熱分解器4内圧の異常上昇等の問題を発生させる。この問題は、前述の予熱器2における灰の除去によって軽減されるが、さらに改質器3においても灰除去手段を設けると、より好ましい。
【0061】
図4及び図5は、予熱器2と同様の灰除去手段を有する改質器3の一例を示している。すなわち、この改質器3は、上下方向に沿う円筒状の上側ヒートキャリア通路30と、この上側ヒートキャリア通路30の下方に連続する漏斗状(逆さ裁頭円錐台状。下側に向かうにつれて径が小さくなる形状であればよい。)の下側ヒートキャリア通路31とを有し、上側ヒートキャリア通路30上面の中央部に供給口30i、下側ヒートキャリア通路31下端にガス導入兼ヒートキャリア排出口31x、上側ヒートキャリア通路30の側面に改質ガス排出口30x、及び下側ヒートキャリア通路31下端部に連通する水蒸気注入口37をそれぞれ有しているものである。
【0062】
改質器3では、予熱器2で十分に加熱されたヒートキャリアが上部供給口30iから供給され、ある程度の堆積状態を維持しながら上側及び下側ヒートキャリア通路30,31を下降しつつ、改質器3内を改質反応温度に維持する。この温度条件下で、改質器3内に導入される熱分解ガス及び水蒸気が前述の改質反応を起こし、水素高含有の改質ガスが生成し、改質ガス排出口30xを介してガス処理・利用設備へ供給される。
【0063】
特徴的には、図示例の改質器3では、下側ヒートキャリア通路31は、パンチングメタル等のように多数の透過孔32nが全面に形成された漏斗状部材32により形成されている。漏斗状部材32の透過孔32nの寸法は、灰・ダストDは通過するがヒートキャリアは通過しないように設定されるとともに、漏斗状部材32の外側を取り囲むように環状スペース33が形成され、この環状スペース33の側面から外部に連通する灰・ダストの抜出口35が形成されている。漏斗状部材32の透過孔32nは灰・ダスト取り込み口となり、環状スペース33が灰・ダスト取り込み口32nの全てに連通する灰・ダスト落としスペースとなる。このような灰・ダスト取り込み口32n、灰・ダスト落としスペース33、及び抜出口35を有することにより、予熱器2で除去仕切れない灰を、改質器3で除去することができ、改質器3内や改質器3と熱分解器4との間の経路における灰の蓄積を効果的に防止できる。
【0064】
漏斗状部材32はニッケル合金等の耐熱金属又はアルミナセラミックス等の耐熱セラミックスにより、また、上側ヒートキャリア通路30及び環状スペース33の周壁は耐熱セラミックス材により形成することができ、改質器3の外面は鉄皮により形成することができる。
【0065】
漏斗状部材32の透過孔32nの形状や寸法等、灰・ダストの抜出口35の位置や向き等は、予熱器2の場合と同様の改変が可能である。また、予熱器2の場合と同様に、抜出口35からの灰・ダストDの取り出しを容易にするために、灰・ダスト落としスペース33に連通する吹き込み口36を設け、灰・ダスト落としスペース33に圧縮空気(圧縮空気に代えて不活性ガスを用いても良い。以下同じ。)を吹き込んで抜出口35から排出するように構成することもできる。改質器3における圧縮空気による灰の排出はガス化運転を行っていないときに実施する。灰の排出を行う場合に、改質器3内温度を低下させないために、供給する圧縮空気を、例えば熱風生成装置1への供給空気と同様の廃熱との熱交換等、適宜の加熱手段により予め改質器3内温度又は近傍まで加熱してから供給することができる。圧縮空気吹き込み口36の位置や向き等は、予熱器2の場合と同様の改変が可能である。図示例では、予熱器2と同様の吹き込み口配置に対してさらに両側の吹き込み口36間の中央に吹き込み口36を追加している。
【0066】
(分離機)
分離機5は特に限定されるものではなく、回転篩、振動篩等を好適に用いることができる。このようなスクリーンによる分離機5を用いる場合、熱分解後のチャーの寸法がヒートキャリアより十分に小さければ、ヒートキャリアより小さいチャーのみを通すスクリーンを用いることにより、ヒートキャリアとチャーとを確実に分離できる。しかし、現実には、有機物質原料の粒径を破砕等により揃えるとしても限界があり、ヒートキャリアより大きなチャーの発生を避けえず、この大きな塊状のチャーがヒートキャリアとともに予熱器2に送られ、予熱器2内で燃焼して灰が発生してしまう。しかも、このようにして発生した灰は、予熱器2の排気に伴い排出されるよりも、予熱器2内、改質器3内等、ヒートキャリアの循環経路内に堆積し易い。
【0067】
そこで、図8に示すように、分離機5として、ヒートキャリアと等しい粒径を有する第1固形物(主にヒートキャリア)、第1固形物より粒径が小さい第2固形物(主に小さいチャー)、並びに第1固形物より粒径が大きい第3固形物(主に大きいチャー)の三種類に分離するものを用い、分離機5で分離した第1固形物、第2固形物及び第3固形物のうち、第1固形物は移送装置6により予熱器2に返送し、第2固形物及び第3固形物は熱風生成装置1に供給するように構成するのも好ましい形態である。
【0068】
分離機5において三種類の粒径の固形物に分離し、ヒートキャリアより大きなチャーを、ヒートキャリアより小さなチャーとともに熱風生成装置1に送るように構成し、ヒートキャリア循環経路内の灰の堆積を抑制するのは好ましい。なお、現実には厳密な分離は困難であり、ある程度のチャーはヒートキャリアとともに予熱器2に供給され、予熱器2内で灰を発生させることになるため、前述の灰の除去は極めて有効な手段である。
【0069】
分離機5の形態は特に限定されるものではないが、例えば図示のような、第1固形物及び第2固形物は通すが第3固形物は通さない円筒状内側スクリーン50と、第2固形物は通すが第1固形物及び第3固形物は通さない、内側スクリーン50より大径の円筒状外側スクリーン51とを有する、2段スクリーンタイプの回転篩5を用いることができる。この回転篩5は、各スクリーン50,51内に供給された分離対象物が、各スクリーン50,51の軸心が水平方向に対して僅かに傾斜していること(これとともに又はこれに代えて、スクリーン50,51の内周面に螺旋方向に沿う羽根を突出させ、この羽根がスクリーン50,51の回転に伴い回転することにより、スクリューコンベアのように分離対象物が移送される構成としても良い。)、並びに各スクリーン50,51が軸心周りに回転されることにより、各スクリーン50,51の回転方向及び軸心の傾斜方向下側に移動しつつ、各スクリーン50,51を通過するものと、通過しないものとに分離されることを基本原理とするものである。そして、本例では、内側スクリーン50の一端側に、分離対象であるチャー及びヒートキャリアを供給すると、そのうち第1固形物及び第2固形物は内側スクリーン50を通過して外側スクリーン51内に供給され、第3固形物は内側スクリーン50を通過せずに内側スクリーン50の他端側に移動し、内側スクリーン50の他端側開口より回収され、外側スクリーン51内に供給された第1固形物及び第2固形物のうち、第2固形物は外側スクリーン51を通過して回収され、第1固形物は外側スクリーン51を通過せずに外側スクリーン51の他端側に移動し、外側スクリーン51の他端側開口より回収されるようになっている。
【0070】
(熱分解器)
ヒートキャリアより大きなチャーは、分離機5において三種類の粒径に分離することでも解決できるが、分離機5のコストや設置面積が嵩むという問題点がある。そこで、図6及び図7に示すように、熱分解器4におけるヒートキャリアの排出口41xは、ヒートキャリアと等しい粒径を有する第1固形物、並びに第1固形物より粒径が小さい第2固形物は通すが、第1固形物より粒径が大きい第3固形物は通さないスクリーン42で覆うのも好ましい形態である。より詳細には、図示例の熱分解器4は、上下方向に沿う円筒状の上側通路40と、この上側通路40の下方に連続する漏斗状(逆さ裁頭円錐台状。下側に向かうにつれて径が小さくなる形状であればよい。)の下側通路41とを有し、上側通路40上面の中央部に供給口40i、下側通路41下端に、スクリーン42で覆われた排出口41x、下側通路41の側面に水蒸気吹き込み口44をそれぞれ有しているものである。
【0071】
このような排出口スクリーン42を設けることにより、ヒートキャリアより大きなチャーをスクリーン42で止めて熱分解器4から排出させず、ヒートキャリア及びヒートキャリアより小さなチャーのみ、スクリーン42を通過させることができ、分離機5によらずに(つまり、ヒートキャリアより小さいチャーのみを通す篩装置のように簡素な分離機5を用いても)、ヒートキャリアより大きなチャーが予熱器2に送られるのを防止できる。しかも、スクリーン42で止められたヒートキャリアより大きなチャーは、熱及びヒートキャリアの移動による外力を受けて砕けていくため、最終的にはヒートキャリア以下の寸法となってスクリーン42を通過するため、熱分解器4の排出口が閉塞することもない。
【0072】
排出口スクリーン42の形状等は適宜定めることができ、平坦なパンチングメタルであっても良いが、図9(a)に示すように、排出口41x側に向かうにつれて直径が拡大する傘状(図示例では円錐状となっているが角錐状、ドーム状等にすることもできる)体の側面に、排出口41x側に向かうにつれて開口幅が拡大する通過孔42n(図示例では二等辺三角形状となっているが滴状等の適宜の形状とすることもできる)を周方向に所定の間隔で設けたものが好適である。このような傘状スクリーン42においては、熱分解器4内を下降する固形物がスクリーン42の側面の通過孔42nにスムーズに移動することができる。また、このスクリーン42の側面の通過孔42nは、排出口側に向かうにつれて開口幅が拡大する形状となっているため、スクリーン42側面に沿って接触しながら下降する固形物は、通過孔42nに引っ掛かり難く、円滑な分離が可能となる。
【0073】
この他にも、例えば図9(b)に示すように、通過孔を有しない上面と、上下方向に沿って所定幅で延在する通過孔42nが周方向に間隔を空けて形成された周面と、排出口41xに連通する開口底面とを備えた円筒状のスクリーン42を用いることもできる。
【0074】
他方、排出口スクリーン42を設ける場合、分離機5としては、第1固形物及び第2固形物の二種類に分離するものを用い、分離機5で分離した第1固形物及び第2固形物のうち、第1固形物は移送装置6により予熱器2に返送し、第2固形物は熱風生成装置1に供給するように構成すると、設備がより簡素となるため好ましい。しかしもちろん、前述の三種類に分離するものを用いても、多重分離による分離性能向上効果はもたらされる。この場合における分離機5の形態は特に限定されるものではないが、例えば図10に示されるような、第2固形物は通すが第1固形物は通さない円筒状スクリーン52を有する回転篩5を用いることができる。この回転篩5において、スクリーン52の一端側に、分離対象であるチャー及びヒートキャリアを供給すると、スクリーン52の軸心が水平方向に対して僅かに傾斜していること、(これとともに又はこれに代えて、スクリーン50,51の内周面に螺旋方向に沿う羽根を突出させ、この羽根がスクリーン50,51の回転に伴い回転することにより、スクリューコンベアのように分離対象物が移送される構成としても良い。)、並びにスクリーン52が軸心周りに回転されることにより、第2固形物はスクリーン52を通過して回収され、第1固形物は外側スクリーン52を通過せずに外側スクリーン52の他端側に移動し、外側スクリーン52の他端側開口より回収されるようになっている。
【0075】
(高速昇温方法)
次に、図14に示されるシステム運用時の温度変化を参照しつつ、本発明の特徴部分について、(a)コールドスタートにおける高速昇温の応用、(b)待機運転、(c)ホットスタートにおける高速昇温の応用、(d)過熱抑制操作、(e)リセット操作、及び(f)後処理運転の順に説明する。
【0076】
なお、以下の説明において、予熱器2内温度、予熱器2からの排ガス温度、改質器3内温度、熱分解器4内温度は、それぞれ温度計2t,2x,3t,4tにより検出し、監視することができる。また、予熱器2内温度とは、図示位置からも分るとおり、予熱器2内の下部の温度(つまり予熱が完了して改質器3に向けて排出される前のヒートキャリアの温度に等しい)を意味する。さらに、ヒートキャリアの循環の停止は、各セグメントバルブ2b,3b,4b,6bを閉じるとともに移送装置6を停止することにより行うことができ、循環の開始は、各セグメントバルブ2b,3b,4b,6bを各所定の開閉頻度で開閉駆動するとともに移送装置6を起動することにより行うことができる。また、有機物質原料の供給開始及び停止は、原料供給系14,17の起動及び停止により行うことができ、その際に必要となる他の設備の起動及び停止も行われる。また、熱風供給の開始及び停止は、熱風供給生成装置1への燃料供給の開始及び停止、並びにこれに伴う着火及び消火により行うことができ、その際に必要となる他の設備の起動及び停止も行われる。
【0077】
(a)コールドスタートへの応用。
図14及び図15に示されるように、コールドスタートは、システム全体が気温レベルにある状態からのシステム起動である。通常、この状態では計測機器以外は全て停止状態にある。この状態から、熱分解器4内温度が熱分解器定常運転温度に達するまでは従来同様にして昇温を行う。すなわち、先ず、熱風生成装置1において補助燃料を燃焼させて熱風を生成し、熱風温度を徐々に上げる。予熱器2内の温度が所定温度に達した時点、例えば予熱器2から出て行く排ガス(予熱器排ガス)が200℃を超えた時点からヒートキャリアの循環を開始し、予熱器2内で暖められたヒートキャリアはその下に設置された改質器3、熱分解器4へと順に落とされた後、再び予熱器2に戻されるようになる。このヒートキャリアの循環に伴って、改質器3、熱分解器4、分離機など、循環経路に熱が供給し、システム全体が昇温されていく。
【0078】
特徴的には、熱分解器4の温度が熱分解器定常運転温度、例えば600℃を超えた時点で、原料供給を開始するのではなく、原料供給は停止したまま、ヒートキャリアの循環を停止し、この状態で熱風生成装置1から予熱器2へ熱風供給を継続する、予熱器昇温運転を行う。この予熱器昇温運転においては、熱風生成装置1に対するチャーの供給は不可能であるため、熱風生成装置1は補助燃料により運転を行う。この予熱器昇温運転により、図15に示されるように予熱器2内の温度は上昇傾向となり、ある程度の時間を経て予熱器定常運転温度(例えば1000℃)に達する。一方、改質器3及び熱分解器4は、ヒートキャリアの循環停止に伴い熱が供給されなくなるため放熱冷却が始まり、温度が低下していく。よって、熱分解器4の温度が機器制限温度を超えることもない。
【0079】
そして、予熱器2内の温度が所定の予熱器定常運転温度に達したならば、有機物質原料の供給停止状態及び熱風供給状態を継続しつつ、ヒートキャリアの循環を開始する。これにより、図15に示されるように、改質器3内の温度及び熱分解器4内の温度が速やかに上昇し、所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達する。改質器3内の温度及び熱分解器4内の温度が所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達したならば、直ちに又は後述の待機運転を経て、有機物質原料の供給を開始し、定常運転に移行する。
【0080】
このような手法によって、ヒートキャリアの循環再開と共にその保有熱が改質器3及び熱分解器4に供給され、各器の定常運転温度の高低関係と加熱順番との関係の影響もあり、図15に示されるように、各部の温度がバランス良く、迅速に上昇する。その結果、従来よりも燃料無駄が無く、昇温時間が短くなる。
【0081】
なお、急加熱運転の開始当初は、ヒートキャリア循環の再開により、予熱器2に移送装置6から冷えた熱媒体が入り込んでくるため、予熱器2内温度が低下し過ぎるおそれがある。そこで、急加熱運転におけるヒートキャリアの循環開始と同時又はその直前もしくは直後に、予熱器2に対する熱風供給量及び供給熱風温度の少なくとも一方を増加し、予熱器2の温度低下を緩和又は防止する操作を行うのが好ましく、特に、熱風温度を一定にしつつ熱風供給量を増加することにより、予熱器2の温度低下を防止するのが好ましい。後者の場合、熱風生成装置1における補助燃料の供給量及び燃焼用空気の供給量を、生成熱風の温度が変化しないように増加させる。熱風生成装置1が燃焼排ガスの温度を指標にしたオート運転を行っている場合は、自動的に補助燃料の供給量がコントロールされるので、燃焼用空気量を増やす操作だけでよい。この操作は急加熱運転である限り、後述のホットスタート等にも利用できるものである。
【0082】
(b)待機運転
DSS運転で、例えば夕方に定常運転を終え、翌日のビジネスタイムから定常運転に入る場合等、次の操業が予定時刻から確実に開始できるようにプラントを定常運転温度のままの待機状態に置くことが望ましい場合がある。これに反して、一旦プラントの火を消すと、外気との温度差が大きいために高温部ほど急速に冷却し、迅速に定常運転温度に戻すことは不可能になる。
【0083】
そこでこのような場合、原料供給を停止している状態から、原料供給を開始するまでの間、次の(い)〜(は)の少なくとも一つの操作により、予熱器内の温度、改質器内の温度、及び熱分解器内の温度を、予熱器定常運転温度、改質器定常運転温度、及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ維持する、待機運転を行い、何時でも原料供給可能な温度状態を保つのは好ましい。
(い)ヒートキャリアの循環を一時的又は連続的に停止する。これにより、各機器の温度を放熱により下げることができる。
(ろ)ヒートキャリアの循環を一時的又は連続的に実行する。これにより、各機器の温度を熱供給により上げることができる。
(は)予熱器2に対する熱風供給量及び供給熱風温度のうち少なくとも一方を増減する。これにより、ヒートキャリアの加熱の程度を変化させることができる。
【0084】
本発明では、この高温環境を維持する運転方法を、待機運転と呼び、原料供給系と生成ガス系統の機器を停止した状態で、熱風生成装置1の運転及び熱風生成装置1から予熱器2への燃焼排ガスの供給、ヒートキャリアの循環を継続する運転方法である。図14に示される例では、コールドスタートと定常運転との間、及び後述するホットスタートと定常運転との間でこの待機運転を行っている。
【0085】
例えば、DSSの場合は、水蒸気供給停止、誘引送風機11停止、洗浄水循環停止と順に操作した後、熱風供給とヒートキャリアの循環を停止せずに、予熱器2、改質器3、熱分解器4への熱供給を継続して温度低下を防ぎ、何時でも原料供給を開始できる待機状態に保つようにする。操業停止が夕方で、翌朝通常のビジネスタイムに操業開始する場合、概ね15時間の待機運転となる。また、金曜日夕方停止から翌週月曜日操業開始の場合は、63時間程度の待機運転となる。さらに、昇温が原料供給開始時刻よりも早く、定常運転温度に到達した場合にも、この運転方法により、温度を維持することが可能となる。
【0086】
この待機運転の場合、予熱器2、改質器3、熱分解器4のいずれかの内部温度が、必要以上に上昇することがあるが、そのような場合に備えて、温度上昇を抑えるための後述する過熱抑制操作を実施するのは好ましい。
【0087】
(c)ホットスタートにおける高速昇温の応用
ガス化システムを運用していく上では一時的に操業を停止し、労力を軽減することが望まれる場合がある。代表的な例としては、生成ガスを用いて発電を行い、売電を行うにあたり、電気買取価格が低く人件費が高い夜間の収益が極端に低下する場合や、週末、連休に操業を休む場合を挙げることができる。このような一時的な操業停止において、システムをある程度まで冷却してしまうと、システムを再びガス化可能な状態まで昇温するのには長時間を要する。
【0088】
例えば、本システムが、連休前に原料供給を停止し、数日後の連休明けから原料供給を開始する場合、一旦熱風送風まで停止するシステム全停止の状態にすると、熱分解器の内部温度は気温が2℃から4℃の冬季の計測では24時間で500℃から100℃に冷却する。予熱器2など最も熱が残る部分でも、5日から6日でほぼ気温程度まで冷却する。一旦システムが気温程度まで冷却してしまうと、コールドスタートの昇温となるため、その昇温には長時間を要し、連休明けから昇温に入っても直ぐにはガス化を開始することはできないこととなる。この場合、待機運転をすることも考えられるが、操業停止期間が長過ぎるため、不経済な運転となってしまう。
【0089】
そこで、システムを一時的に停止する場合、定常運転から操業を完全に停止せず、図14に示されるように保温運転に移行し、しかる後に保温運転から操業を再開する方法も提案する。定常運転では、予熱器2内の温度、改質器3内の温度、及び熱分解器4内の温度が、予熱器定常運転温度、改質器定常運転温度、及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達している状態で、予熱器に対する熱風の供給、ヒートキャリアの循環、及び有機物質原料の供給を行っている。この状態から、保温運転に入り、原料供給停止の後、ガス発生終了を確認して、改質器3に対する水蒸気供給、改質器3からの誘引送風機11による生成ガス送出、及びガス処理・利用設備をそれぞれ停止するが、熱風発生装置1の運転及び熱風発生装置1から予熱器2への燃焼排ガスの供給は継続する。原料供給停止に伴い、熱風発生装置1に対するチャーの供給は数時間で途絶えるため、熱風発生装置1は補助燃料により運転を継続する。
【0090】
そして、エネルギー効率良く保温を行うために、予熱器2に対する供給熱量の増減及びヒートキャリアの循環速度の増減の少なくとも一方を行い、予熱器2内の温度を予熱器定常運転温度よりも低く且つ所定の下限温度以上、熱分解器4内の温度を熱分解器定常運転温度よりも低く且つ所定の下限温度以上、及び改質器3内の温度を改質器定常運転温度よりも低く且つ所定の下限温度以上にそれぞれ保持する。この保温運転は、次の原料開始の所定時間前(例えば24時間前)にホットスタート高速昇温運転に入ることを前提としており、予熱器2、改質器3、熱分解器4の温度を下限温度付近に保つことが目的である。通常の場合、予熱器2、改質器3、熱分解器4を迅速に(例えば6〜7時間程度で)定常運転温度に昇温するためには、予熱器2の下限温度は750℃とし、改質器3の下限温度は600℃とし、熱分解器4の下限温度は500℃とするのが望ましい。
【0091】
保温運転において各機器の温度を低下させる場合、熱風温度を維持したまま予熱器2への供給熱量を減らすのが望ましく、特に、熱風発生装置1への補助燃料供給量及び燃焼用空気の送風量の少なくとも一つを減らすのが望ましい。もちろん、熱風供給量を維持したまま供給熱風温度を低下しても良いし、熱風供給量及び供給熱風温度の両方を低下させても良い。また、ヒートキャリアの循環速度を標準より遅くしたり、上記下限温度に各反応器が温度低下するまで熱風送風を停止したり、あるいは熱風送風及びヒートキャリアの循環の両者を停止し、各反応器が下限温度まで低下したら再開するといった方法をとることもできる。
【0092】
以上の熱風とヒートキャリアに関する操作で、予熱器2、改質器3、熱分解器4は、徐々に温度低下傾向に入る。この時には、基本的に過熱の心配は無くなっているが、念のため、各器の温度低下を監視するのが好ましい。熱分解器4が、熱分解機定常運転温度を超える事態が発生したときには、ヒートキャリアの循環を一時停止して、予熱器2に送る熱風の温度及び風量の少なくとも一つを低減し、予熱器2出口のヒートキャリアの温度を下げる操作を行い、熱分解器4の温度が熱分解機定常運転温度以下に冷却してからヒートキャリアの循環を再開する。
【0093】
一方、いずれかの器の温度が下限温度に近づく又は下回ったときには、熱風の量ないし温度を増やす方向に操作して、予熱器2から出て行くヒートキャリアの温度を高め、ヒートキャリアの循環を早めて各器への供給熱量を増加する。保温運転においていずれかの反応器の温度が一時的に下限温度を下回ることがあっても、次述の予熱器昇温運転前に下限温度に回復すれば保温運転の目的は達せられる。
【0094】
操業の再開に際しては、保温運転からヒートキャリアの循環を停止して前述の予熱器昇温運転に移行する。そして、予熱器2内の温度が所定の予熱器定常運転温度に達した後に、ヒートキャリアの循環を再開し、改質器3内の温度及び熱分解器4内の温度が所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達するまで前述の急加熱運転を行う。このヒートキャリアの循環再開によって、改質器3と熱分解器4の温度は、一気に定常運転温度に達する。より詳細には、予熱器昇温運転が概ね数時間で終了し、その間、改質器3と熱分解器4が放熱冷却で温度低下を起こすものの、ヒートキャリアの循環再開で改質器3には予熱器2から1000℃前後のものが落下、熱分解器には600℃程度のものが改質器から落下するため、改質器2も熱分解器3もほぼ同時に適正温度に到達する。
【0095】
しかる後に有機物質原料の供給を再開し、ガス化を開始する。このように保温運転を行うことによりシステムを一定温度以上に保ち、その後に本発明の予熱器昇温運転及び急加熱運転を経て原料供給を再開することにより、エネルギー消費を抑えつつシステムの再開を速やかに行うことができるようになる。
【0096】
保温運転の際、予熱器2の内部温度が700℃、改質器3の内部温度が600℃、熱分解器4の内部温度が500℃付近にあり、その温度からそれぞれ1000℃、950℃、600℃の定常運転温度まで昇温する場合を想定すると、保温運転から予熱器昇温運転への移行は、原料供給開始予定時刻の6〜7時間前から開始するのが適当である。すなわち、ヒートキャリアの各反応器での貯留量は、大体ヒートキャリア全量の3分の1程度であり、仮にヒートキャリアの全量を4.7トンとし、仮にヒートキャリアの循環量を時間当たり500キログラムとすると、予熱器2のヒートキャリアが改質器3に全量移動する時間は、約3時間である。従って、予熱器昇温のスタートから定常運転温度到達まで一連の作業時間は、予熱器昇温の約3時間と合わせ、凡そ6時間である。原料投入予定時刻の約6〜7時間前から高速昇温に入れば原料投入予定時刻までには十分昇温できる。
【0097】
(d)過熱抑制操作
例えば予熱器昇温運転中はヒートキャリアの循環を停止しているため、予熱器2内温度が予熱器定常運転温度に達し、さらに温度が上昇して予熱器の排ガス温度が機器制限温度を超えるおそれがある。また、待機運転中も、既に各機器が定常運転温度に達しているため、さらに温度が上昇して予熱器の排ガス温度が機器制限温度を超えるおそれがある。もちろん、急加熱運転中や定常運転中もそのおそれが無いわけではない。よって、予熱器2内温度が予熱器定常運転温度に達し、予熱器2の排ガス温度が機器制限温度(例えば550℃程度)を超えたとき、次の(イ)〜(ニ)の少なくとも一つの過熱抑制操作を実行するのが望ましい。
(イ)ヒートキャリアの循環が停止しているとき、一時的に、ヒートキャリアの循環を開始する。これにより、冷えたヒートキャリアを予熱器2内に供給して予熱器2を冷却することができる。
(ロ)一時的又は連続的に、予熱器2に対する熱風供給量及び供給熱風温度のうち、供給熱風温度は維持したまま熱風供給量を減少させる。これにより予熱器2に対する供給熱量を減少させ、放熱による冷却効果を利用し、冷却することができる。熱風生成装置1が燃焼排ガスの温度を指標にしたオート運転を行っている場合は、自動的に補助燃料の供給量がコントロールされるので、燃焼用空気量を減らす操作だけで、温度は下がらずに熱量が減る。
(ハ)一時的に、予熱器2への熱風供給を停止する。これにより、予熱器2に対する供給熱量を無くし、放熱による冷却効果を最大限利用して冷却することができる。
(ニ)一時的に、予熱器2に対して冷却用空気を送風する。これにより、予熱器2の強制冷却を行うことができる。冷却用空気としては、熱風生成装置1に供給される燃焼用空気をそのまま(図示例の場合、予熱器排ガス温度に近い温度となっている)用いることができる。この操作は、放熱冷却を待ちきれない緊急時に適用するものである。
このような過熱抑制操作を実行することによって予熱器2の温度低下を抑えつつ、運転継続による予熱器2の過熱を防止できるようになる。この操作は、温度の超過度合いに応じて、超過度合いが大きいときほど多い数の操作を組み合わせて適用し、かつその際に(イ)〜(ニ)の順に適用するのは望ましい。例えば、一時的又は連続的に(イ)のヒートキャリアの循環を再開し、それでも予熱器2内温度が下がらないときには、予熱器2に対する供給熱風温度は維持したまま熱風供給量を減少させる(ロ)〜(ハ)の操作を行うことによって、予熱器昇温運転等の継続による予熱器2の過熱を抑制する。ただし、それでもなお、予熱器2の昇温を抑えられない場合もありうる。よって、そのような場合には、上述の(二)のような予熱器冷却行程を行うのが好ましい。
【0098】
(e)リセット操作
本システムは、ヒートキャリアをシステム内で循環させ、予熱器2での蓄熱と改質器3と熱分解器4での放熱を利用して、熱分解器4の中での有機物質の熱分解と改質器3の中での水蒸気改質を行うシステムであるが、熱分解器4に原料が供給され過ぎると、吸熱反応と水分の蒸発等により、熱分解器4内でヒートキャリアの温度低下が起こり、この温度低下が許容範囲を超えると、図14に示されるように、ヒートキャリア温度が循環の度に下がる温度低下スパイラルに入る。例えば、通常の場合、熱分解器4内のヒートキャリア温度として許容できる下限温度はおよそ500℃であり、この温度を下回ると、予熱器2に戻る時には400℃以下となり、予熱器2での昇温の限界もあって、温度低下スパイラルという悪循環に陥り、ヒートキャリアを定常運転温度に戻せなくなる。そして、このような低温状態になると、改質器3の温度も水蒸気改質の出来る温度ではなくなり、水蒸気改質反応は消え、単なる熱分解だけのガス製造が続いているだけとなり、生成ガスの水素濃度は低くなる。
【0099】
そこで、このような温度低下の悪循環から抜け出すための手法として、次のようなリセット操作も提案する。すなわち、予熱器2内の温度、改質器3内の温度、及び熱分解器4内の温度が、予熱器定常運転温度、改質器定常運転温度、及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達している状態で、熱風の供給、ヒートキャリアの循環、及び有機物質原料の供給を行う定常運転中に、熱分解器4内温度が熱分解器定常運転温度未満、特に下限温度未満となったとき、原料供給を停止し、熱風の送風を継続して予熱器昇温運転に入る。この予熱器昇温運転により、予熱器2内の温度が所定の予熱器定常運転温度に回復したならば、ヒートキャリアの循環を再開して急加熱運転に移行し、改質器3内の温度及び熱分解器4内の温度をそれぞれ所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度に一気に回復させる。
【0100】
このリセット操作によって、各器の温度が定常運転温度に回復したら、温度低下悪循環の原因となった原料の供給量をリセット操作前よりも減らすように、原料供給系14,17の設定を変更してから原料供給を再開する。原料の供給量をどの程度減らすかは適宜定めることができるが、最初は大幅に減らし(概ね3分の1から4分の1に減らす)、そこから徐々に供給量を増やし、原料供給を継続しても熱分解器4の温度が下限温度以下に低下しない適正原料供給量に調整するのが好ましい。
【0101】
(f)後処理運転
システムを停止する際、直ちにヒートキャリアの循環をも停止してしまうと、熱分解器4に滴下するタールの固化により多数のヒートキャリアが塊状に固まり、次のシステム開始の際にヒートキャリアの循環阻害をもたらすことがある。そこで、システムを停止するにあたり、熱分解器4に対する有機物質原料の供給を停止した状態で、ヒートキャリアの循環及び予熱器2への熱風供給を継続する、後処理運転を所定時間(例えば2時間以上)行い、しかる後に、ヒートキャリアの循環及び予熱器2への熱風供給をそれぞれ停止することも提案する。この後処理運転を行うことにより、熱分解器4においてタールが滴下しても熱風により加熱されたヒートキャリアが循環しているため、塊状に固化するといった事態は発生し難くなる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、木質バイオマス等の有機物質のガス化に利用できるものである。
【符号の説明】
【0103】
1…熱風生成装置、2…予熱器、3…改質器、4…熱分解器、5…分離機、6…移送装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質バイオマス等の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の代替及び地球温暖化防止を目的とした新エネルギー供給システムとして、間伐材等の木質バイオマスをガス化し、このガスを燃料として熱や電気エネルギーを生成する技術が提案され、利用されている。
【0003】
このようなガス化システムとしては、種々のものが提案されているが、中でも特許文献1記載のヒートキャリア循環型システムは水素濃度の高いガスを生成できる点で優れたものの一つである。このガス化システムは、上から順に、予熱器、改質器、熱分解器、及び分離機を備えており、熱を運ぶための多数のヒートキャリア(熱担持媒体)が、予熱器で加熱されてから改質器、熱分解器及び分離機の順に通された後、バケットコンベア等の移送装置により再び予熱器に戻されるように構成されている。
【0004】
有機物質原料は、スクリューコンベア等の適宜の定量供給装置により、例えば改質器と熱分解器とを繋ぐ供給管路を介して、熱分解器の上部供給口へ連続的に定量供給される。熱分解器内に供給された有機物質は、予熱器から改質器を経て供給された、加熱されたヒートキャリアと接触することにより、チャー(固体の炭素含有残留物)と熱分解ガス(揮発性相)とに分離される。固形分であるチャーは、ヒートキャリアとともに分離機へ供給され、気体である熱分解ガスはヒートキャリアに対して向流接触しながら改質器へ上昇供給される。
【0005】
改質器には反応媒体としての水蒸気が供給されており、熱分解ガスがヒートキャリアにより加熱される条件下でこの水蒸気と混合接触すること及び950℃前後の高温環境下にあることにより、550℃前後で発生する熱分解ガスよりもはるかに水素含有濃度が高く、従って生成量も増大する。
【0006】
改質器で発生したガスは、改質器の上部に設けられた改質ガス排出口を介してガス処理・利用設備に送出される。
【0007】
一方、分離機では、熱分解器から供給される混合物がチャーとヒートキャリアとに分離される。分離されたチャーは熱風炉等の熱風生成装置に供給され、ヒートキャリアは移送装置により予熱器に戻される。
【0008】
熱風生成装置では、チャーの燃焼により熱風(高温排ガス)が生成される。この熱風は予熱器に供給され、予熱器内を堆積状態で通過するヒートキャリア間に通され、ヒートキャリアと直接接触することによりヒートキャリアが加熱される。また、熱風生成装置ではチャーの燃焼により灰が生成される。この灰は、大部分は熱風生成装置内で回収・除去されるが、一部は予熱器に供給され、予熱器の排気経路に設けられたサイクロン等の分離手段で取り除かれる。
【0009】
定常運転においては、ヒートキャリアは、予熱器において、熱風により約1000℃に昇温され、熱分解では550℃付近の熱、改質器では950℃付近の熱を放出して、温度帯の異なる2つの吸熱反応を誘発する。
【0010】
図16は、気温状態からのシステムの立上げ(コールドスタート)における各器の温度変化を示している。コールドスタートにおいては、関係機器の起動操作を経て、システム全体が気温レベルの温度となっている状態から、まず熱風生成装置において補助燃料を燃焼させて熱風を生成し、熱風温度を徐々に上げ、最終的に約1050℃の熱風を予熱器に導いてヒートキャリアを気温レベルの温度から加熱・昇温していく。システムは、停止している間に、気温状態まで冷めた状態にあり、また、雨水の浸入や炉内結露等により炉内が湿っている場合もある。予熱器内のヒートキャリアが十分に加熱された時点、例えば予熱器から出て行く排ガス(予熱器排ガス)がおよそ200℃を超えた時点から、ヒートキャリアの循環も開始され、予熱器の下に設置された改質器に落とされる。同時に、改質器にあった冷えたヒートキャリアもその下に設けられた熱分解器に落とされ、さらに、熱分解器のヒートキャリアも排出が始まって、システム全体のヒートキャリアが循環を始める。このように、予熱器で昇温されたヒートキャリアは、循環に伴って、改質器、熱分解器、分離機、移送装置(バケットコンベア)など、循環経路に熱を供給し、システム全体を昇温していく。昇温過程では、システム内に水分があると、水分が蒸発するまで100℃で暫く温度上昇が停滞することもあるが、蒸発が終わると再び上昇に転じ、熱分解器の温度が定常運転温度(600度程度)に達した時点から原料の供給を開始してその熱分解(吸熱反応)で熱分解器の機器制限温度を超える過剰な温度上昇を抑制しつつ、改質器が定常運転温度(950度程度)に到達するのを待つ。
【0011】
ヒートキャリアは、予め予熱器、改質器、熱分解器、分離機、バケットコンベアなどに適正な量が詰め込まれており、予め設定された循環量となるように循環される。例えば、予熱器と熱分解器に設けたヒートキャリアのレベル計からの信号により、予熱器と熱分解器のヒートキャリアの堆積レベルが一定の範囲に納まるように一部のセグメントバルブ開閉が管理され、原料投入時に熱分解器で発生するチャーによる熱分解器からの排出量の増大化時の排出量の微調整はこのレベル計信号に基づいて行われる。
【0012】
ヒートキャリア循環型システムの場合、ヒートキャリアの循環量は、改質器と熱分解器の間に設けられたセグメントバルブの開閉頻度(時間間隔)を操作することにより調節が可能である。ヒートキャリアは、システム内を循環しながら、昇温・放熱を繰り返すこととなるが、この1サイクルは、ヒートキャリア総量を時間当たりの循環量で割ることで得られ、通常の場合では、12〜8時間がサイクルタイムとしてある。例えば、ヒートキャリアの全体量が約4.7トンの場合、熱媒体の循環速度は400〜600kg/h程度となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許4264525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、このようなヒートキャリア循環型システムは、改質器及び熱分解器をそれぞれ異なる定常運転温度に導くのが容易ではなく、システムを定常運転温度まで高速に昇温できないという問題点を有していた。
【0015】
例えば、ヒートキャリアの全体量が約4.7トン、ヒートキャリアの循環速度が400〜600kg/h程度のヒートキャリア循環型システムにおいては、システム温度が気温程度(例えば改質器25℃、熱分解器25℃)まで低下した状態から熱分解ガスの水蒸気改質まで可能な温度、即ち改質器を950℃、熱分解器を有機物の熱分解が可能な550℃の水準まで昇温するためには、機器からの放熱もあって、凡そヒートキャリアを7サイクル以上、日数にして3〜4日、時にはそれ以上循環させる必要がある。
【0016】
このように、システムを熱分解ガスの水蒸気改質まで可能な温度にするのに要する時間が長いと、稼動日の朝にシステムを起動して、その日の夕方には運転を停止する、というデイリースタート・デイリーストップ(DSSと略される。)は不可能である。昇温時間が長い、という問題点だけであれば、システムを停止せずに24時間連続運転を行うことにより解決できるが、例えばヒートキャリア循環型システムで生成したガスを用いて発電を行い、売電を行う場合は、電気買取価格が低く人件費が高い夜間の収益が極端に低下する場合等、24時間連続運転が適さない場合もある。
【0017】
また、週末に操業を休む場合、改めて月曜日からシステムの昇温に入るのでは、昇温に時間がかかり過ぎて、その日のガス製造や発電ができなくなってしまう。
【0018】
さらに、別の問題として、システムの昇温過程、原料の過剰供給により反応器の温度が極端に低下した場合、反応器の温度を規定の温度に戻そうとしても、直ぐに戻すことができず、不経済な運転を強いられることも問題である。
【0019】
そこで、本発明の主たる課題は、ヒートキャリア循環型の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決した本発明は、次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
熱を運ぶための多数のヒートキャリアと、このヒートキャリアを加熱するための予熱器と、熱分解ガスの水蒸気改質を行うための改質器と、有機物質原料を熱分解するための熱分解器と、熱風を生成する熱風生成装置とを備え、
前記ヒートキャリアを、前記予熱器、改質器、及び熱分解器の順に通した後、移送装置により再び予熱器に戻して循環させるとともに、前記熱分解器内に有機物質原料を供給し、前記改質器内に対して直接又は間接的に水蒸気を供給し、
前記熱分解器内では、前記有機物質原料を、加熱されたヒートキャリアと接触させることによりチャーと熱分解ガスとに熱分解し、熱分解ガスはヒートキャリアに対して向流接触しながら改質器へ供給し、
前記改質器では、前記熱分解ガスを前記ヒートキャリアにより加熱しつつ前記水蒸気と接触させることにより水素含有濃度を向上させたガスを生成し、
前記熱風生成装置では、熱風を生成して予熱器に供給し、
前記予熱器では、前記熱風生成装置から供給される熱風を、前記予熱器内を堆積状態で通過するヒートキャリア間に通して、ヒートキャリアと直接接触することによりヒートキャリアを加熱する、
ように構成した有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法であって;
前記熱分解器に対する前記有機物質原料の供給、及び前記ヒートキャリアの循環をそれぞれ停止した状態で、前記熱風生成装置から前記予熱器へ熱風供給する、予熱器昇温運転を行い、
前記予熱器内の温度が所定の予熱器定常運転温度に達した後に、前記有機物質原料の供給停止状態及び前記熱風供給状態を継続しつつ、前記ヒートキャリアの循環を行う急加熱運転を、前記改質器内の温度及び熱分解器内の温度が所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達するまで行う、
ことを特徴とする有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【0021】
(作用効果)
このように、ヒートキャリアの循環及び原料供給を停止した状態で、予熱器内の温度を定常運転温度まで昇温した後、原料供給を開始せずに、ヒートキャリアの循環を開始すると、各器の定常運転温度の大小関係と加熱順番との関係の影響もあり、図15に示すように、熱分解器が機器制限温度を超えることもなく、改質器及び熱分解器の温度が円滑に定常運転温度に導かれる。そして、改質器及び熱分解器が定常運転温度に達してから原料供給を開始しても、ガス化不可能となるような温度低下は防ぐことができる。しかも、この効果は、後述するコールドスタートだけでなく、ホットスタートの場合でも発揮される。よって、本発明によれば、システムをガス化可能な温度まで高速に昇温できるようになる。
これに対して、ヒートキャリアの循環及び原料供給を行いつつシステム全体の昇温を開始すると、ヒートキャリアが熱分解器を経て予熱器に戻る頃には低温になり過ぎ、熱分解器の定常運転温度が最も低いこともあって、図16に実線で、また図15に二点鎖線で示すように、熱分解器は定常運転温度に達していながら改質器は定常運転温度に達せず、ガス化不可能という中途半端な状態が続いてしまう。つまり、これが、ヒートキャリア循環型システムにおける昇温長期化の主要因である。
【0022】
<請求項2記載の発明>
前記予熱器定常運転温度は1000℃以上であり、前記改質器定常運転温度は950℃以上であり、前記熱分解器定常運転温度は550℃以上である、請求項1記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【0023】
(作用効果)
各器の定常運転温度は上記範囲とするのが好ましい。
【0024】
<請求項3記載の発明>
予熱器、改質器及び熱分解器を気温状態からそれぞれ予熱器定常運転温度、改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度まで昇温する、コールドスタートに際し、
前記有機物質原料の供給及び前記ヒートキャリアの循環を行わずに、前記予熱器に対して熱風の供給を開始し、前記予熱器内温度が所定温度を超えた後に前記熱風供給を継続したまま前記ヒートキャリアの循環を開始し、
このヒートキャリアの循環により前記熱分解器内温度が熱分解器定常運転温度に到達した後に、前記予熱器昇温運転を開始し、
この予熱器昇温運転により、前記予熱器内の温度が所定の予熱器定常運転温度に達した後に、前記改質器内の温度及び熱分解器内の温度が所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達するまで前記急加熱運転を行い、しかる後に前記有機物質原料の供給を開始する、請求項1又は2記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【0025】
(作用効果)
前述したとおり、従来のコールドスタートでは、水蒸気改質の出来る状態、すなわち改質器内温度が950℃に到達するには3〜4日間、低気温、強風下などの悪条件下ではそれ以上の継続運転を必要とする。これに対して、本発明のコールドスタートでは、熱分解器が定常運転温度に達するまでは従来同様に昇温を行うが、その後に予熱器昇温運転及び急加熱運転を介在させることにより加熱効率が改善され、各器の温度が円滑且つ高速に定常運転温度に到達するようになる。
【0026】
<請求項4記載の発明>
前記予熱器内の温度、前記改質器内の温度、及び前記熱分解器内の温度が、前記予熱器定常運転温度、前記改質器定常運転温度、及び前記熱分解器定常運転温度にそれぞれ達している状態で、前記予熱器に対する熱風の供給、前記ヒートキャリアの循環、及び前記有機物質原料の供給を行う定常運転から、
前記有機物質原料の供給を停止した状態で、前記予熱器に対する供給熱量の増減及び前記ヒートキャリアの循環速度の増減の少なくとも一方を行い、予熱器に対する熱風供給量及び供給熱風温度のうち少なくとも一方を低減し、且つ前記予熱器内の温度を前記予熱器定常運転温度よりも低く且つ所定の下限温度以上、前記熱分解器内の温度を前記熱分解器定常運転温度よりも低く且つ所定の下限温度以上、及び前記改質器内の温度を前記改質器定常運転温度よりも低く且つ所定の下限温度以上にそれぞれ保持する、保温運転に移行した後、
この保温運転から前記予熱器昇温運転に移行し、前記予熱器内の温度が所定の予熱器定常運転温度に達した後に、前記改質器内の温度及び熱分解器内の温度が所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達するまで前記急加熱運転を行い、しかる後に前記有機物質原料の供給を再開する、ホットスタートを行う、請求項1又は2記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【0027】
(作用効果)
前述したとおり、ガス化システムを運用していく上では一時的に操業を停止する方が望ましい場合もある。例としては、生成ガスを用いて発電を行い、売電を行うにあたり、電気買取価格が低く人件費が高い夜間の収益が極端に低下する場合や、週末、連休に操業を休む場合である。このような一時的な操業停止において、システムをある程度まで冷却してしまうと、システムを再びガス化可能な状態まで昇温するのには長時間を要する。
例えば、本システムが、連休前に原料供給を停止し、数日後の連休明けから原料供給を開始する場合、一旦熱風送風まで停止するシステム全停止の状態にすると、熱分解器の内部温度は気温が2℃から4℃の冬季の計測では24時間で500℃から100℃に冷却する。予熱器など最も熱が残る部分でも、5日から6日でほぼ気温程度まで冷却する。一旦システムが気温程度まで冷却してしまうと、コールドスタートの昇温となるため、その昇温には長時間を要し、連休明けから昇温に入っても直ぐにはガス化を開始することはできないこととなる。
そこで、システムを一時的に停止する場合、上述のように保温運転を行うことによりシステムを一定温度以上に保ち、その後に本発明の予熱器昇温運転及び急加熱運転を経て原料供給を再開するというホットスタートを採用することにより、エネルギー消費を抑えつつシステムの再開を速やかに行うことができるようになる。
なお、上述の保温運転と次述の待機運転との相違点は、主に保とうとするシステム温度の違いであり、保温運転は、効率的なホットスタート昇温を行うために必要な下限温度に維持する運転であり、待機運転は、何時でも原料供給できる定常運転温度状態、すなわち高温に保つ運転である。待機運転及び保温運転は、共に原料供給を停止した状態でシステムの温度を保つものであり、高温に保つほどエネルギー消費が大きくなるため、数日間の休業の際には、次述の待機運転ではなく、上述の保温運転を採用する方が合理的である。
【0028】
<請求項5記載の発明>
前記予熱器内の温度、前記改質器内の温度、及び前記熱分解器内の温度が、前記予熱器定常運転温度、前記改質器定常運転温度、及び前記熱分解器定常運転温度にそれぞれ達しており、且つ前記原料供給を停止している状態から、前記原料供給を開始するまでの間、
(い)前記ヒートキャリアの循環の一時的又は連続的な停止、
(ろ)前記ヒートキャリアの循環の一時的又は連続的な実行、並びに
(は)前記予熱器に対する熱風供給量及び供給熱風温度のうち少なくとも一方の増減、
の少なくとも一つの操作により、前記予熱器内の温度、前記改質器内の温度、及び前記熱分解器内の温度を、前記予熱器定常運転温度、前記改質器定常運転温度、及び前記熱分解器定常運転温度にそれぞれ維持する、待機運転を行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス化システムにおける高速昇温方法。
【0029】
(作用効果)
例えば、本ガス化システムを運用していく上では、原料供給を行わない状態でシステム温度を定常運転温度に保つことが望ましい場合がある。例えば、急加熱運転によりシステムの各機器は定常運転温度に達したが、原料供給開始までにしばし原料供給を始められない時間がある場合、或いはDSSにおける夜間の原料供給停止時に、翌日の原料供給再開に向けシステム温度を定常運転温度状態に保つ場合がそれである。このような場合、上述の待機運転を行うことにより、何時でも原料供給可能な温度状態を保つことができる。より詳細には、(い)の操作によって各機器の温度を放熱により下げることができ、(ろ)の操作によって各機器の温度を熱供給により上げることができ、(は)の操作によってヒートキャリアの加熱の程度を変化させることができる。
【0030】
<請求項6記載の発明>
前記予熱器内の温度、前記改質器内の温度、及び前記熱分解器内の温度が、前記予熱器定常運転温度、前記改質器定常運転温度、及び前記熱分解器定常運転温度にそれぞれ達している状態で、前記熱風の供給、前記ヒートキャリアの循環、及び前記有機物質原料の供給を行う定常運転中に、前記熱分解器内温度が前記熱分解器定常運転温度未満となったとき、
前記予熱器昇温運転を行い、前記予熱器内の温度が所定の予熱器定常運転温度に達した後に、前記改質器内の温度及び熱分解器内の温度が所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達するまで前記急加熱運転を行う、リセット操作を実行し、このリセット操作後に、リセット操作前よりも少ない供給量で前記有機物質原料の供給を再開する、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【0031】
(作用効果)
本システムは、ヒートキャリアをシステム内で循環させ、予熱器での蓄熱と改質器と熱分解器での放熱を利用して、熱分解器の中での有機物質の熱分解と改質器の中での水蒸気改質を行うシステムであるが、熱分解器に原料が供給され過ぎると、吸熱反応と水分の蒸発等により、熱分解器内でヒートキャリアの温度低下が起こり、この温度低下が許容範囲を超えると、ヒートキャリア温度が循環の度に下がる温度低下スパイラルに入る。例えば、通常の場合、熱分解器内のヒートキャリア温度として許容できる下限温度はおよそ500℃であり、この温度を下回ると、予熱器に戻る時には400℃以下となり、予熱器での昇温の限界もあって、温度低下スパイラルという悪循環に陥り、ヒートキャリアを定常運転温度に戻せなくなる。これに対して、上述のリセット操作を行うと、温度低下の悪循環から抜け出すことができる。
【0032】
<請求項7記載の発明>
前記予熱器内温度が前記予熱器定常運転温度に達し、前記予熱器の排ガス温度が機器制限温度を超えたとき、次の、
(イ)前記ヒートキャリアの循環が停止しているとき、一時的に、前記ヒートキャリアの循環を開始する、
(ロ)一時的又は連続的に、前記予熱器に対する熱風供給量及び供給熱風温度のうち、供給熱風温度は維持したまま熱風供給量を減少させる、
(ハ)一時的に、前記予熱器への熱風供給を停止する、
(ニ)一時的に、予熱器に対して冷却用空気を送風する、
の少なくとも一つの過熱抑制操作を実行する、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【0033】
(作用効果)
予熱器昇温運転中、急加熱運転中、又は待機運転中等に、予熱器内温度が予熱器定常運転温度に達し、さらに温度が上昇して予熱器の排ガス温度が機器制限温度を超えるおそれがあるが、そのときは、上記(イ)〜(ニ)の少なくとも一つの過熱抑制操作を実行することにより、予熱器の温度低下を抑えつつ、運転継続による予熱器の過熱を防止できるようになる。なお、一時的とは断続的を含む意味である(以下同じ)。例えば、一時的又は連続的に(イ)のヒートキャリアの循環を再開し、それでも予熱器内温度が下がらないときには、予熱器に対する供給熱風温度は維持したまま熱風供給量を減少させる(ロ)〜(ハ)の操作を行うことによって、予熱器昇温運転等の継続による予熱器の過熱を防止できるのであるが、それでもなお、予熱器の昇温を抑えられない場合もありうる。よって、そのような場合には、上述の(二)のような予熱器冷却行程を行うのが好ましい。
【0034】
<請求項8記載の発明>
前記急加熱運転における前記ヒートキャリアの循環開始と同時又はその直前もしくは直後に、前記予熱器に対する熱風供給量及び供給熱風温度の少なくとも一方を増加する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【0035】
(作用効果)
急加熱運転においてヒートキャリアの循環を開始すると、予熱器の温度が低下し過ぎるおそれがあるため、このように、ヒートキャリアの循環開始と同時又はその直前もしくは直後に、予熱器に対する熱風供給量及び供給熱風温度の少なくとも一方を増加し、予熱器の温度低下を防止するのが好ましい。
【0036】
<請求項9記載の発明>
システムを停止するにあたり、前記熱分解器に対する前記有機物質原料の供給を停止した状態で、前記ヒートキャリアの循環及び前記予熱器への熱風供給を継続する、後処理運転を所定時間を行い、しかる後に、前記ヒートキャリアの循環及び前記予熱器への熱風供給をそれぞれ停止する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【0037】
(作用効果)
システムを停止する際、直ちにヒートキャリアの循環をも停止してしまうと、熱分解器に滴下するタールの固化により多数のヒートキャリアが塊状に固まり、次のシステム開始の際にヒートキャリアの循環阻害をもたらすことがある。これに対して、上述のように後処理運転を行うと、熱分解器においてタールが滴下しても熱風により加熱されたヒートキャリアが循環しているため、塊状に固化するといった事態は発生し難くなる。
【発明の効果】
【0038】
以上のとおり、本発明によれば、ヒートキャリア循環型の有機物質のガス化システムにおいて、システムをガス化可能な温度まで高速に昇温できるようになる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】ガス化システムのフロー図である。
【図2】予熱器の縦断面図である。
【図3】図1のA−A断面図及びB−B断面図である。
【図4】改質器の縦断面図である。
【図5】図4のC−C断面図及びD−D断面図である。
【図6】熱分解器の縦断面図である。
【図7】図6のE−E断面図である。
【図8】分離機の概略図である。
【図9】傘状スクリーンの概略図である。
【図10】分離機の概略図である。
【図11】予熱器の縦断面図である。
【図12】図11のF−F断面図である。
【図13】予熱器の破断斜視図である。
【図14】予熱器の温度変化例を概略的に示すグラフである。
【図15】コールドスタートにおける各器の温度変化例を概略的に示すグラフである。
【図16】従来のコールドスタートにおける各器の温度変化例を概略的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら詳説する。
本発明に係るガス化システムは、例えば図1に示される機器構成で実施することができる。すなわち、図1に示されるガス化システムは、上から順に、予熱器2、改質器3、熱分解器4、及び分離機5を直列に備えており、熱を運ぶための多数のヒートキャリア(熱担持媒体)が、予熱器2で加熱されてから改質器3、熱分解器4及び分離機5の順に通された後、バケットコンベア等の移送装置6により再び予熱器2に戻されるように構成されているものである。
【0041】
ヒートキャリアとしては、粒径5〜20mm程度、好ましくは粒径8〜12mm程度の粒状物を用いることができ、特に球状のものが好適である。また、ヒートキャリアの素材としては、アルミナ等のように硬質で熱容量の大きなものが好適である。なお、粒径とは、JIS Z 8801−1「試験用ふるい−第 1 部:金属製網ふるい」に規定されるふるいを用い、JIS A 1102 「骨材のふるい分け試験方法」に準じて測定される、ふるい分け法による粒径(ふるいの目開き)を意味する(以下同じ)。
【0042】
有機物質原料は原料ホッパ17に貯留されており、スクリューコンベア14やロータリーフィーダ等の適宜の定量供給装置により切り出され、例えば改質器3と熱分解器4とを繋ぐ供給管路3xを介して、熱分解器4の上部供給口へ連続的に定量供給される。この供給管路3xにはバルブ3bが設けられており、ヒートキャリア等の固形分の通過を停止させる等の制御が可能になっている。ヒートキャリアの循環中は、このバルブ3bが所定の間隔で開閉を繰り返し、ヒートキャリア等の固形分が断続的に定量通過するようになっている。
【0043】
有機物質原料としては、間伐材や剪定枝等の木質バイオマスが好適であるが、プラスチック等他の廃棄物等を用いることもできる。廃ラスチックの例としては、塩化ビニル、ポリウレタン、メタクリル樹脂、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等を挙げることができる。有機物質原料の形状は特に限定されないが、φ1〜50mm程度、L=1〜150mm程度、特にヒートキャリアの粒径の1.6倍以下程度の粒径に破砕、切削、ペレット化したものを好適に用いることができる。
【0044】
熱分解器4内に供給された有機物質は、予熱器2から改質器3を経て供給された、加熱されたヒートキャリアと混合状態で接触することにより、吸熱反応を起こし、チャー(固体の炭素含有残留物)と熱分解ガス(揮発性相)とに分離される。熱分解器4内の温度は適宜定めることができるが、500〜600℃程度にするのが好ましい。熱分解生成物のうち、固形分であるチャーは、ヒートキャリアとともに供給管路4xを介して分離機5へ供給され、気体である熱分解ガスはヒートキャリアに対して向流接触しながら改質器3へ上昇供給される。この供給管路4xにはバルブ4bが設けられるとともに、その下流側にダンパ4dが二段に設けられており、前者によりヒートキャリア等の固形分の通過を停止させる等の制御が可能になっており、後者により気体分の通過を停止させる等の制御が可能になっている。ヒートキャリアの循環中は、このバルブ4bが所定の間隔で開閉を繰り返すとともに、上下のダンパ4dが開閉動作を反対に行うことにより、気体の通過を遮断しつつ、ヒートキャリア等の固形分が断続的に定量通過するようになっている。
【0045】
改質器3に対しては反応媒体としての水蒸気が供給されており、熱分解ガスがヒートキャリアにより加熱されつつ水蒸気と混合接触することにより、次式の改質反応が起こり、水素含有濃度の高いガスが発生する。改質器3内の温度は適宜定めることができるが、改質を十分かつ確実に行うために950℃以上とするのが好ましい。
CnHm + nH2O → nCO + (m/2+n)H2 …(1)
CO + H2O → H2 + CO2 …(2)
【0046】
水蒸気は適宜の方法で供給することができるが、図示例では、貯水タンク19の水を給水ポンプ19pにより汲みだし、廃熱ボイラ(間接接触式熱交換器)7において、改質器3から別途供給される生成ガスの熱を利用して蒸気とした後、改質器3の下部から供給するようにしている。また、改質器3への水蒸気供給とともに又はこれに代えて、改質器3における改質反応に利用する水蒸気を図示するように熱分解器4を介して間接的に供給することもできる。
【0047】
一方、分離機5では、熱分解器4から供給される混合物がチャーとヒートキャリアとに分離される。分離されたチャーはスクリューコンベア等の移送装置1iにより熱風炉等の熱風生成装置1に供給され、ヒートキャリアは移送装置6により予熱器2に戻される。移送装置6から予熱器2への供給管路6xにはバルブ6bが設けられるとともに、その下流側にダンパ6dが二段に設けられており、前者によりヒートキャリア等の固形分の通過を停止させる等の制御が可能になっており、後者により気体分の通過を停止させる等の制御が可能になっている。ヒートキャリアの循環中は、このバルブ6bが所定の間隔で開閉を繰り返すとともに、上下のダンパ6dが開閉動作を反対に行うことにより、気体の通過を遮断しつつ、ヒートキャリア等の固形分が断続的に定量通過するようになっている。
【0048】
熱風生成装置1はバーナーを備えており、このバーナーを介して炉内に空気が供給されることによりチャーが燃焼し、熱風(高温排ガス)が生成される。熱風生成装置の運転においては、LPG等の気体補助燃料やBDF等の液体燃料を、連続的に又は運転開始時等の必要時にバーナーに供給し、燃焼させることができる。熱風生成装置1で生成された熱風は予熱器2に供給される。また、熱風生成装置1でチャーの燃焼により生成される灰は、熱風生成装置1内で回収され、灰貯留部1pに排出される。
【0049】
予熱器2では、熱風生成装置1から供給される熱風が、予熱器2内を堆積状態で通過するヒートキャリア間に通され、ヒートキャリアと直接接触することによりヒートキャリアが加熱される。予熱器2で加熱されたヒートキャリアは、供給管路2xを介して改質器3に供給される。この供給管路2xにはバルブ2bが設けられるとともに、その下流側にダンパ2dが二段に設けられており、前者によりヒートキャリア等の固形分の通過を停止させる等の制御が可能になっており、後者により気体分の通過を停止させる等の制御が可能になっている。ヒートキャリアの循環中は、このバルブ2bが所定の間隔で開閉を繰り返すとともに、上下のダンパ2dが開閉動作を反対に行うことにより、気体の通過を遮断しつつ、ヒートキャリア等の固形分が断続的に定量通過するようになっている。
【0050】
予熱器2でヒートキャリアの加熱利用された熱風は、誘引送風機15により予熱器2から排気され、サイクロン等の分離手段8を介して排気に混入する灰・ダスト(灰以外の粉粒体)Dを取り除かれた後、好適には空気加熱器((間接接触式熱交換器))9において熱風生成装置1へ供給する空気の加熱に利用した後、大気に放出される。なお、空気加熱器9における予熱に先立って、予熱器(間接接触式の熱交換器)9iを利用して水蒸気(前述の方法により製造し、供給できる)と熱交換し、予熱しておくとより好ましい。
【0051】
改質器3で生成された水素高含有の生成ガスは、図示例では、誘引送風機11により改質器3からガス処理・利用設備に送出され、廃熱ボイラ7で250℃程度まで冷却され、続いて湿式スクラバー10に供給されてタールが除去されるとともに40℃程度まで冷却された後、ガスホルダ12に貯留されるようになっている。なお、図示例の湿式スクラバー10は、上部から散水した洗浄水を下部から排出し、冷却器(間接接触式の熱交換器)10cで冷却した後、再度上部から散水するものであり、符号10pは洗浄水循環ポンプを示しており、符号10dは冷却器に対する冷却水の循環を行う冷却水循環ポンプを示しており、符号10tは冷却水を外気により冷却する冷却塔を示しており、符号18は洗浄水を排水処理する排水処理装置を示している。
【0052】
生成されるガスの利用形態は特に限定されるものではないが、図示するように、ガスエンジン発電機13を用いて電力に変換するのも一つの好ましい形態である。また、生成ガスの一部を、熱風生成装置1の補助燃料として使用するのも好ましい形態である。
【0053】
他方、ヒートキャリアの循環サイクルは、各器間に設けられたセグメントバルブ2b,3b,4b,6bの開閉頻度(間隔)のうち、セグメントバルブ3bの開閉頻度を操作することにより調節が可能であり、通常の場合、12〜8時間がサイクルタイムとして適切である。この1サイクルは、ヒートキャリア総量を時間当たりの循環量で割ることで求めることができる。その他のセグメントバルブ2b,4b,6bは、予熱器2と熱分解器4に設置されたヒートキャリアのレベル計によりヒートキャリアの堆積高が測定され、レベルが高い場合には開閉頻度を早め、レベルが低い場合は遅くする自動調整がなされ、予熱器2と熱分解器4のヒートキャリアの堆積高さが一定の範囲に保たれる。
【0054】
(予熱器)
予熱器2は特に限定されないが、例えば図2及び図3に示されるような灰除去手段を有するものが好適である。すなわち、図2及び図3に示される予熱器2は、上下方向に沿う円筒状の上側ヒートキャリア通路20と、この上側ヒートキャリア通路20の下方に連続する漏斗状(逆さ裁頭円錐台状。下側に向かうにつれて径が小さくなる形状であればよい。)の下側ヒートキャリア通路21とを有し、上側ヒートキャリア通路20上面の中央部に供給口20i、下側ヒートキャリア通路21下端に排出口21x、上側ヒートキャリア通路20の側面に排気口20x及び下側ヒートキャリア通路21の側面に熱風吹き出し口22nをそれぞれ有しているものである。
【0055】
図示例では、下側ヒートキャリア通路21は、パンチングメタル等のように多数の透過孔22nが全面に形成された漏斗状部材22により形成されており、この漏斗状部材22の外側を取り囲むように環状スペース23が形成され、この環状スペース23の側面に外部からの熱風供給口24が連通されており、漏斗状部材22の透過孔22nが熱風吹き出し口となり、環状スペース23が熱風吹き出し口22nの全てに連通する分配供給路となる。漏斗状部材22はニッケル合金等の耐熱金属又はアルミナセラミックス等の耐熱セラミックスにより、また、上側ヒートキャリア通路20及び環状スペース23の周壁はアルミナセラミックス等の耐熱セラミクス材により形成することができ、予熱器2の外面は鉄皮により形成することができる。
【0056】
予熱器2では、上側及び下側ヒートキャリア通路20,21において、ヒートキャリアがある程度の堆積状態を維持しながら下降し、下側ヒートキャリア通路21を通過する過程で各熱風吹き出し口22nから、つまり周方向の複数個所から吹き出される熱風と接触して加熱される。このように、下側ヒートキャリア通路21を通るヒートキャリア群に対して、周方向の複数個所から熱風が供給されると、ヒートキャリアの通過数が下側ヒートキャリア通路21の径の減少に伴って減少することも相まって、熱風生成装置1からの新鮮な熱風がより多くのヒートキャリアに対して直接又はそれに近い状態で接触されるため、ヒートキャリアの加熱効率に優れるようになる。
【0057】
そして特徴的には、漏斗状部材22の透過孔22nの寸法は、灰・ダストDは通過するがヒートキャリアは通過しないように設定されるとともに、分配供給路である環状スペース23から外部に連通する灰・ダストの抜出口25が形成されている。漏斗状部材22の透過孔22nの形状は、図示例のような円状の他、楕円状、三角形状等、適宜の形状とすることができる。透過孔22nの寸法は、ヒートキャリアの寸法に応じて適宜定めることができ、例えば、透過孔22nの直径(円孔の場合は直径を意味し、その他の形状(楕円孔等)の場合は短径(直径のうち最も短いものを意味する)が、ヒートキャリアの粒径未満、特に70%以下とすることができる。また、灰・ダストの抜出口25の下端は環状スペース23の下端に合わせるのが好ましい。さらに、抜出口25は環状スペース23の側面から水平方向ないし下降気味に延在しているのが好ましい。
【0058】
このような抜出口25を有することにより、予熱器2内に堆積する灰・ダストDを抜出口25を介して除去し、熱風吹き出し口22n及び分配供給路23の閉塞を防止できるようになる。よって、予熱器2におけるヒートキャリアの加熱効率の経時的低下を防止でき、生成ガスの水素濃度が低下するといった事態を防止できるようになる。
【0059】
なお、抜出口25からの灰・ダストDの取り出しは、灰掻き等の機械的手段により行ってもよいが、作業が煩雑となるため、図示例のように、分配供給路23に連通する吹き込み口26を設け、ここから圧縮空気(圧縮空気に代えて不活性ガスを用いても良い。以下同じ。)を吹き込み、灰・ダストDを圧縮空気に乗せて抜出口25から排出するように構成すると、炉内温度に関係なく灰・ダストDの抜出を実行でき、また自動的に定期実行することもできるため好ましい。吹き込み口26の数、位置及び吹き込み方向は適宜定めることができるが、図示例のように、環状の分配供給路23における抜出口25に対して反対側の位置の側面に設けるのが好ましい。特に、吹き込み口26を周方向に複数(図示例では2つ)並設し、図中に矢印で示すように、一方の吹き込み口26からの圧縮空気を環状の分配供給路23の一方側から、また、他方の吹き込み口26からの圧縮空気を環状の分配供給路23の他方側から、それぞれ抜出口25に向けて回りこませるようにすると、分配供給路23内の灰・ダストDを円滑に抜出口25へ送り出すことができるため好ましい。予熱器2における圧縮空気による灰の排出はガス化運転を行っていないときに実施する他、ガス化運転中にも実施できる。圧縮空気による灰の排出を行う場合は、予熱器2内温度を低下させないために、供給する圧縮空気を、例えば熱風生成装置1への供給空気と同様の廃熱との熱交換等、適宜の加熱手段により予め改質器3内温度又は近傍まで加熱してから供給することができる。
【0060】
(改質器)
灰はヒートキャリアに伴って予熱器2、改質器3、熱分解器4の順に移動する過程で、改質器3内や改質器3と熱分解器4との間の経路(例えば、バルブ等)にも蓄積し、ヒートキャリアの循環阻害や、改質器3と熱分解器4との間の経路の閉塞による熱分解器4内圧の異常上昇等の問題を発生させる。この問題は、前述の予熱器2における灰の除去によって軽減されるが、さらに改質器3においても灰除去手段を設けると、より好ましい。
【0061】
図4及び図5は、予熱器2と同様の灰除去手段を有する改質器3の一例を示している。すなわち、この改質器3は、上下方向に沿う円筒状の上側ヒートキャリア通路30と、この上側ヒートキャリア通路30の下方に連続する漏斗状(逆さ裁頭円錐台状。下側に向かうにつれて径が小さくなる形状であればよい。)の下側ヒートキャリア通路31とを有し、上側ヒートキャリア通路30上面の中央部に供給口30i、下側ヒートキャリア通路31下端にガス導入兼ヒートキャリア排出口31x、上側ヒートキャリア通路30の側面に改質ガス排出口30x、及び下側ヒートキャリア通路31下端部に連通する水蒸気注入口37をそれぞれ有しているものである。
【0062】
改質器3では、予熱器2で十分に加熱されたヒートキャリアが上部供給口30iから供給され、ある程度の堆積状態を維持しながら上側及び下側ヒートキャリア通路30,31を下降しつつ、改質器3内を改質反応温度に維持する。この温度条件下で、改質器3内に導入される熱分解ガス及び水蒸気が前述の改質反応を起こし、水素高含有の改質ガスが生成し、改質ガス排出口30xを介してガス処理・利用設備へ供給される。
【0063】
特徴的には、図示例の改質器3では、下側ヒートキャリア通路31は、パンチングメタル等のように多数の透過孔32nが全面に形成された漏斗状部材32により形成されている。漏斗状部材32の透過孔32nの寸法は、灰・ダストDは通過するがヒートキャリアは通過しないように設定されるとともに、漏斗状部材32の外側を取り囲むように環状スペース33が形成され、この環状スペース33の側面から外部に連通する灰・ダストの抜出口35が形成されている。漏斗状部材32の透過孔32nは灰・ダスト取り込み口となり、環状スペース33が灰・ダスト取り込み口32nの全てに連通する灰・ダスト落としスペースとなる。このような灰・ダスト取り込み口32n、灰・ダスト落としスペース33、及び抜出口35を有することにより、予熱器2で除去仕切れない灰を、改質器3で除去することができ、改質器3内や改質器3と熱分解器4との間の経路における灰の蓄積を効果的に防止できる。
【0064】
漏斗状部材32はニッケル合金等の耐熱金属又はアルミナセラミックス等の耐熱セラミックスにより、また、上側ヒートキャリア通路30及び環状スペース33の周壁は耐熱セラミックス材により形成することができ、改質器3の外面は鉄皮により形成することができる。
【0065】
漏斗状部材32の透過孔32nの形状や寸法等、灰・ダストの抜出口35の位置や向き等は、予熱器2の場合と同様の改変が可能である。また、予熱器2の場合と同様に、抜出口35からの灰・ダストDの取り出しを容易にするために、灰・ダスト落としスペース33に連通する吹き込み口36を設け、灰・ダスト落としスペース33に圧縮空気(圧縮空気に代えて不活性ガスを用いても良い。以下同じ。)を吹き込んで抜出口35から排出するように構成することもできる。改質器3における圧縮空気による灰の排出はガス化運転を行っていないときに実施する。灰の排出を行う場合に、改質器3内温度を低下させないために、供給する圧縮空気を、例えば熱風生成装置1への供給空気と同様の廃熱との熱交換等、適宜の加熱手段により予め改質器3内温度又は近傍まで加熱してから供給することができる。圧縮空気吹き込み口36の位置や向き等は、予熱器2の場合と同様の改変が可能である。図示例では、予熱器2と同様の吹き込み口配置に対してさらに両側の吹き込み口36間の中央に吹き込み口36を追加している。
【0066】
(分離機)
分離機5は特に限定されるものではなく、回転篩、振動篩等を好適に用いることができる。このようなスクリーンによる分離機5を用いる場合、熱分解後のチャーの寸法がヒートキャリアより十分に小さければ、ヒートキャリアより小さいチャーのみを通すスクリーンを用いることにより、ヒートキャリアとチャーとを確実に分離できる。しかし、現実には、有機物質原料の粒径を破砕等により揃えるとしても限界があり、ヒートキャリアより大きなチャーの発生を避けえず、この大きな塊状のチャーがヒートキャリアとともに予熱器2に送られ、予熱器2内で燃焼して灰が発生してしまう。しかも、このようにして発生した灰は、予熱器2の排気に伴い排出されるよりも、予熱器2内、改質器3内等、ヒートキャリアの循環経路内に堆積し易い。
【0067】
そこで、図8に示すように、分離機5として、ヒートキャリアと等しい粒径を有する第1固形物(主にヒートキャリア)、第1固形物より粒径が小さい第2固形物(主に小さいチャー)、並びに第1固形物より粒径が大きい第3固形物(主に大きいチャー)の三種類に分離するものを用い、分離機5で分離した第1固形物、第2固形物及び第3固形物のうち、第1固形物は移送装置6により予熱器2に返送し、第2固形物及び第3固形物は熱風生成装置1に供給するように構成するのも好ましい形態である。
【0068】
分離機5において三種類の粒径の固形物に分離し、ヒートキャリアより大きなチャーを、ヒートキャリアより小さなチャーとともに熱風生成装置1に送るように構成し、ヒートキャリア循環経路内の灰の堆積を抑制するのは好ましい。なお、現実には厳密な分離は困難であり、ある程度のチャーはヒートキャリアとともに予熱器2に供給され、予熱器2内で灰を発生させることになるため、前述の灰の除去は極めて有効な手段である。
【0069】
分離機5の形態は特に限定されるものではないが、例えば図示のような、第1固形物及び第2固形物は通すが第3固形物は通さない円筒状内側スクリーン50と、第2固形物は通すが第1固形物及び第3固形物は通さない、内側スクリーン50より大径の円筒状外側スクリーン51とを有する、2段スクリーンタイプの回転篩5を用いることができる。この回転篩5は、各スクリーン50,51内に供給された分離対象物が、各スクリーン50,51の軸心が水平方向に対して僅かに傾斜していること(これとともに又はこれに代えて、スクリーン50,51の内周面に螺旋方向に沿う羽根を突出させ、この羽根がスクリーン50,51の回転に伴い回転することにより、スクリューコンベアのように分離対象物が移送される構成としても良い。)、並びに各スクリーン50,51が軸心周りに回転されることにより、各スクリーン50,51の回転方向及び軸心の傾斜方向下側に移動しつつ、各スクリーン50,51を通過するものと、通過しないものとに分離されることを基本原理とするものである。そして、本例では、内側スクリーン50の一端側に、分離対象であるチャー及びヒートキャリアを供給すると、そのうち第1固形物及び第2固形物は内側スクリーン50を通過して外側スクリーン51内に供給され、第3固形物は内側スクリーン50を通過せずに内側スクリーン50の他端側に移動し、内側スクリーン50の他端側開口より回収され、外側スクリーン51内に供給された第1固形物及び第2固形物のうち、第2固形物は外側スクリーン51を通過して回収され、第1固形物は外側スクリーン51を通過せずに外側スクリーン51の他端側に移動し、外側スクリーン51の他端側開口より回収されるようになっている。
【0070】
(熱分解器)
ヒートキャリアより大きなチャーは、分離機5において三種類の粒径に分離することでも解決できるが、分離機5のコストや設置面積が嵩むという問題点がある。そこで、図6及び図7に示すように、熱分解器4におけるヒートキャリアの排出口41xは、ヒートキャリアと等しい粒径を有する第1固形物、並びに第1固形物より粒径が小さい第2固形物は通すが、第1固形物より粒径が大きい第3固形物は通さないスクリーン42で覆うのも好ましい形態である。より詳細には、図示例の熱分解器4は、上下方向に沿う円筒状の上側通路40と、この上側通路40の下方に連続する漏斗状(逆さ裁頭円錐台状。下側に向かうにつれて径が小さくなる形状であればよい。)の下側通路41とを有し、上側通路40上面の中央部に供給口40i、下側通路41下端に、スクリーン42で覆われた排出口41x、下側通路41の側面に水蒸気吹き込み口44をそれぞれ有しているものである。
【0071】
このような排出口スクリーン42を設けることにより、ヒートキャリアより大きなチャーをスクリーン42で止めて熱分解器4から排出させず、ヒートキャリア及びヒートキャリアより小さなチャーのみ、スクリーン42を通過させることができ、分離機5によらずに(つまり、ヒートキャリアより小さいチャーのみを通す篩装置のように簡素な分離機5を用いても)、ヒートキャリアより大きなチャーが予熱器2に送られるのを防止できる。しかも、スクリーン42で止められたヒートキャリアより大きなチャーは、熱及びヒートキャリアの移動による外力を受けて砕けていくため、最終的にはヒートキャリア以下の寸法となってスクリーン42を通過するため、熱分解器4の排出口が閉塞することもない。
【0072】
排出口スクリーン42の形状等は適宜定めることができ、平坦なパンチングメタルであっても良いが、図9(a)に示すように、排出口41x側に向かうにつれて直径が拡大する傘状(図示例では円錐状となっているが角錐状、ドーム状等にすることもできる)体の側面に、排出口41x側に向かうにつれて開口幅が拡大する通過孔42n(図示例では二等辺三角形状となっているが滴状等の適宜の形状とすることもできる)を周方向に所定の間隔で設けたものが好適である。このような傘状スクリーン42においては、熱分解器4内を下降する固形物がスクリーン42の側面の通過孔42nにスムーズに移動することができる。また、このスクリーン42の側面の通過孔42nは、排出口側に向かうにつれて開口幅が拡大する形状となっているため、スクリーン42側面に沿って接触しながら下降する固形物は、通過孔42nに引っ掛かり難く、円滑な分離が可能となる。
【0073】
この他にも、例えば図9(b)に示すように、通過孔を有しない上面と、上下方向に沿って所定幅で延在する通過孔42nが周方向に間隔を空けて形成された周面と、排出口41xに連通する開口底面とを備えた円筒状のスクリーン42を用いることもできる。
【0074】
他方、排出口スクリーン42を設ける場合、分離機5としては、第1固形物及び第2固形物の二種類に分離するものを用い、分離機5で分離した第1固形物及び第2固形物のうち、第1固形物は移送装置6により予熱器2に返送し、第2固形物は熱風生成装置1に供給するように構成すると、設備がより簡素となるため好ましい。しかしもちろん、前述の三種類に分離するものを用いても、多重分離による分離性能向上効果はもたらされる。この場合における分離機5の形態は特に限定されるものではないが、例えば図10に示されるような、第2固形物は通すが第1固形物は通さない円筒状スクリーン52を有する回転篩5を用いることができる。この回転篩5において、スクリーン52の一端側に、分離対象であるチャー及びヒートキャリアを供給すると、スクリーン52の軸心が水平方向に対して僅かに傾斜していること、(これとともに又はこれに代えて、スクリーン50,51の内周面に螺旋方向に沿う羽根を突出させ、この羽根がスクリーン50,51の回転に伴い回転することにより、スクリューコンベアのように分離対象物が移送される構成としても良い。)、並びにスクリーン52が軸心周りに回転されることにより、第2固形物はスクリーン52を通過して回収され、第1固形物は外側スクリーン52を通過せずに外側スクリーン52の他端側に移動し、外側スクリーン52の他端側開口より回収されるようになっている。
【0075】
(高速昇温方法)
次に、図14に示されるシステム運用時の温度変化を参照しつつ、本発明の特徴部分について、(a)コールドスタートにおける高速昇温の応用、(b)待機運転、(c)ホットスタートにおける高速昇温の応用、(d)過熱抑制操作、(e)リセット操作、及び(f)後処理運転の順に説明する。
【0076】
なお、以下の説明において、予熱器2内温度、予熱器2からの排ガス温度、改質器3内温度、熱分解器4内温度は、それぞれ温度計2t,2x,3t,4tにより検出し、監視することができる。また、予熱器2内温度とは、図示位置からも分るとおり、予熱器2内の下部の温度(つまり予熱が完了して改質器3に向けて排出される前のヒートキャリアの温度に等しい)を意味する。さらに、ヒートキャリアの循環の停止は、各セグメントバルブ2b,3b,4b,6bを閉じるとともに移送装置6を停止することにより行うことができ、循環の開始は、各セグメントバルブ2b,3b,4b,6bを各所定の開閉頻度で開閉駆動するとともに移送装置6を起動することにより行うことができる。また、有機物質原料の供給開始及び停止は、原料供給系14,17の起動及び停止により行うことができ、その際に必要となる他の設備の起動及び停止も行われる。また、熱風供給の開始及び停止は、熱風供給生成装置1への燃料供給の開始及び停止、並びにこれに伴う着火及び消火により行うことができ、その際に必要となる他の設備の起動及び停止も行われる。
【0077】
(a)コールドスタートへの応用。
図14及び図15に示されるように、コールドスタートは、システム全体が気温レベルにある状態からのシステム起動である。通常、この状態では計測機器以外は全て停止状態にある。この状態から、熱分解器4内温度が熱分解器定常運転温度に達するまでは従来同様にして昇温を行う。すなわち、先ず、熱風生成装置1において補助燃料を燃焼させて熱風を生成し、熱風温度を徐々に上げる。予熱器2内の温度が所定温度に達した時点、例えば予熱器2から出て行く排ガス(予熱器排ガス)が200℃を超えた時点からヒートキャリアの循環を開始し、予熱器2内で暖められたヒートキャリアはその下に設置された改質器3、熱分解器4へと順に落とされた後、再び予熱器2に戻されるようになる。このヒートキャリアの循環に伴って、改質器3、熱分解器4、分離機など、循環経路に熱が供給し、システム全体が昇温されていく。
【0078】
特徴的には、熱分解器4の温度が熱分解器定常運転温度、例えば600℃を超えた時点で、原料供給を開始するのではなく、原料供給は停止したまま、ヒートキャリアの循環を停止し、この状態で熱風生成装置1から予熱器2へ熱風供給を継続する、予熱器昇温運転を行う。この予熱器昇温運転においては、熱風生成装置1に対するチャーの供給は不可能であるため、熱風生成装置1は補助燃料により運転を行う。この予熱器昇温運転により、図15に示されるように予熱器2内の温度は上昇傾向となり、ある程度の時間を経て予熱器定常運転温度(例えば1000℃)に達する。一方、改質器3及び熱分解器4は、ヒートキャリアの循環停止に伴い熱が供給されなくなるため放熱冷却が始まり、温度が低下していく。よって、熱分解器4の温度が機器制限温度を超えることもない。
【0079】
そして、予熱器2内の温度が所定の予熱器定常運転温度に達したならば、有機物質原料の供給停止状態及び熱風供給状態を継続しつつ、ヒートキャリアの循環を開始する。これにより、図15に示されるように、改質器3内の温度及び熱分解器4内の温度が速やかに上昇し、所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達する。改質器3内の温度及び熱分解器4内の温度が所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達したならば、直ちに又は後述の待機運転を経て、有機物質原料の供給を開始し、定常運転に移行する。
【0080】
このような手法によって、ヒートキャリアの循環再開と共にその保有熱が改質器3及び熱分解器4に供給され、各器の定常運転温度の高低関係と加熱順番との関係の影響もあり、図15に示されるように、各部の温度がバランス良く、迅速に上昇する。その結果、従来よりも燃料無駄が無く、昇温時間が短くなる。
【0081】
なお、急加熱運転の開始当初は、ヒートキャリア循環の再開により、予熱器2に移送装置6から冷えた熱媒体が入り込んでくるため、予熱器2内温度が低下し過ぎるおそれがある。そこで、急加熱運転におけるヒートキャリアの循環開始と同時又はその直前もしくは直後に、予熱器2に対する熱風供給量及び供給熱風温度の少なくとも一方を増加し、予熱器2の温度低下を緩和又は防止する操作を行うのが好ましく、特に、熱風温度を一定にしつつ熱風供給量を増加することにより、予熱器2の温度低下を防止するのが好ましい。後者の場合、熱風生成装置1における補助燃料の供給量及び燃焼用空気の供給量を、生成熱風の温度が変化しないように増加させる。熱風生成装置1が燃焼排ガスの温度を指標にしたオート運転を行っている場合は、自動的に補助燃料の供給量がコントロールされるので、燃焼用空気量を増やす操作だけでよい。この操作は急加熱運転である限り、後述のホットスタート等にも利用できるものである。
【0082】
(b)待機運転
DSS運転で、例えば夕方に定常運転を終え、翌日のビジネスタイムから定常運転に入る場合等、次の操業が予定時刻から確実に開始できるようにプラントを定常運転温度のままの待機状態に置くことが望ましい場合がある。これに反して、一旦プラントの火を消すと、外気との温度差が大きいために高温部ほど急速に冷却し、迅速に定常運転温度に戻すことは不可能になる。
【0083】
そこでこのような場合、原料供給を停止している状態から、原料供給を開始するまでの間、次の(い)〜(は)の少なくとも一つの操作により、予熱器内の温度、改質器内の温度、及び熱分解器内の温度を、予熱器定常運転温度、改質器定常運転温度、及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ維持する、待機運転を行い、何時でも原料供給可能な温度状態を保つのは好ましい。
(い)ヒートキャリアの循環を一時的又は連続的に停止する。これにより、各機器の温度を放熱により下げることができる。
(ろ)ヒートキャリアの循環を一時的又は連続的に実行する。これにより、各機器の温度を熱供給により上げることができる。
(は)予熱器2に対する熱風供給量及び供給熱風温度のうち少なくとも一方を増減する。これにより、ヒートキャリアの加熱の程度を変化させることができる。
【0084】
本発明では、この高温環境を維持する運転方法を、待機運転と呼び、原料供給系と生成ガス系統の機器を停止した状態で、熱風生成装置1の運転及び熱風生成装置1から予熱器2への燃焼排ガスの供給、ヒートキャリアの循環を継続する運転方法である。図14に示される例では、コールドスタートと定常運転との間、及び後述するホットスタートと定常運転との間でこの待機運転を行っている。
【0085】
例えば、DSSの場合は、水蒸気供給停止、誘引送風機11停止、洗浄水循環停止と順に操作した後、熱風供給とヒートキャリアの循環を停止せずに、予熱器2、改質器3、熱分解器4への熱供給を継続して温度低下を防ぎ、何時でも原料供給を開始できる待機状態に保つようにする。操業停止が夕方で、翌朝通常のビジネスタイムに操業開始する場合、概ね15時間の待機運転となる。また、金曜日夕方停止から翌週月曜日操業開始の場合は、63時間程度の待機運転となる。さらに、昇温が原料供給開始時刻よりも早く、定常運転温度に到達した場合にも、この運転方法により、温度を維持することが可能となる。
【0086】
この待機運転の場合、予熱器2、改質器3、熱分解器4のいずれかの内部温度が、必要以上に上昇することがあるが、そのような場合に備えて、温度上昇を抑えるための後述する過熱抑制操作を実施するのは好ましい。
【0087】
(c)ホットスタートにおける高速昇温の応用
ガス化システムを運用していく上では一時的に操業を停止し、労力を軽減することが望まれる場合がある。代表的な例としては、生成ガスを用いて発電を行い、売電を行うにあたり、電気買取価格が低く人件費が高い夜間の収益が極端に低下する場合や、週末、連休に操業を休む場合を挙げることができる。このような一時的な操業停止において、システムをある程度まで冷却してしまうと、システムを再びガス化可能な状態まで昇温するのには長時間を要する。
【0088】
例えば、本システムが、連休前に原料供給を停止し、数日後の連休明けから原料供給を開始する場合、一旦熱風送風まで停止するシステム全停止の状態にすると、熱分解器の内部温度は気温が2℃から4℃の冬季の計測では24時間で500℃から100℃に冷却する。予熱器2など最も熱が残る部分でも、5日から6日でほぼ気温程度まで冷却する。一旦システムが気温程度まで冷却してしまうと、コールドスタートの昇温となるため、その昇温には長時間を要し、連休明けから昇温に入っても直ぐにはガス化を開始することはできないこととなる。この場合、待機運転をすることも考えられるが、操業停止期間が長過ぎるため、不経済な運転となってしまう。
【0089】
そこで、システムを一時的に停止する場合、定常運転から操業を完全に停止せず、図14に示されるように保温運転に移行し、しかる後に保温運転から操業を再開する方法も提案する。定常運転では、予熱器2内の温度、改質器3内の温度、及び熱分解器4内の温度が、予熱器定常運転温度、改質器定常運転温度、及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達している状態で、予熱器に対する熱風の供給、ヒートキャリアの循環、及び有機物質原料の供給を行っている。この状態から、保温運転に入り、原料供給停止の後、ガス発生終了を確認して、改質器3に対する水蒸気供給、改質器3からの誘引送風機11による生成ガス送出、及びガス処理・利用設備をそれぞれ停止するが、熱風発生装置1の運転及び熱風発生装置1から予熱器2への燃焼排ガスの供給は継続する。原料供給停止に伴い、熱風発生装置1に対するチャーの供給は数時間で途絶えるため、熱風発生装置1は補助燃料により運転を継続する。
【0090】
そして、エネルギー効率良く保温を行うために、予熱器2に対する供給熱量の増減及びヒートキャリアの循環速度の増減の少なくとも一方を行い、予熱器2内の温度を予熱器定常運転温度よりも低く且つ所定の下限温度以上、熱分解器4内の温度を熱分解器定常運転温度よりも低く且つ所定の下限温度以上、及び改質器3内の温度を改質器定常運転温度よりも低く且つ所定の下限温度以上にそれぞれ保持する。この保温運転は、次の原料開始の所定時間前(例えば24時間前)にホットスタート高速昇温運転に入ることを前提としており、予熱器2、改質器3、熱分解器4の温度を下限温度付近に保つことが目的である。通常の場合、予熱器2、改質器3、熱分解器4を迅速に(例えば6〜7時間程度で)定常運転温度に昇温するためには、予熱器2の下限温度は750℃とし、改質器3の下限温度は600℃とし、熱分解器4の下限温度は500℃とするのが望ましい。
【0091】
保温運転において各機器の温度を低下させる場合、熱風温度を維持したまま予熱器2への供給熱量を減らすのが望ましく、特に、熱風発生装置1への補助燃料供給量及び燃焼用空気の送風量の少なくとも一つを減らすのが望ましい。もちろん、熱風供給量を維持したまま供給熱風温度を低下しても良いし、熱風供給量及び供給熱風温度の両方を低下させても良い。また、ヒートキャリアの循環速度を標準より遅くしたり、上記下限温度に各反応器が温度低下するまで熱風送風を停止したり、あるいは熱風送風及びヒートキャリアの循環の両者を停止し、各反応器が下限温度まで低下したら再開するといった方法をとることもできる。
【0092】
以上の熱風とヒートキャリアに関する操作で、予熱器2、改質器3、熱分解器4は、徐々に温度低下傾向に入る。この時には、基本的に過熱の心配は無くなっているが、念のため、各器の温度低下を監視するのが好ましい。熱分解器4が、熱分解機定常運転温度を超える事態が発生したときには、ヒートキャリアの循環を一時停止して、予熱器2に送る熱風の温度及び風量の少なくとも一つを低減し、予熱器2出口のヒートキャリアの温度を下げる操作を行い、熱分解器4の温度が熱分解機定常運転温度以下に冷却してからヒートキャリアの循環を再開する。
【0093】
一方、いずれかの器の温度が下限温度に近づく又は下回ったときには、熱風の量ないし温度を増やす方向に操作して、予熱器2から出て行くヒートキャリアの温度を高め、ヒートキャリアの循環を早めて各器への供給熱量を増加する。保温運転においていずれかの反応器の温度が一時的に下限温度を下回ることがあっても、次述の予熱器昇温運転前に下限温度に回復すれば保温運転の目的は達せられる。
【0094】
操業の再開に際しては、保温運転からヒートキャリアの循環を停止して前述の予熱器昇温運転に移行する。そして、予熱器2内の温度が所定の予熱器定常運転温度に達した後に、ヒートキャリアの循環を再開し、改質器3内の温度及び熱分解器4内の温度が所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達するまで前述の急加熱運転を行う。このヒートキャリアの循環再開によって、改質器3と熱分解器4の温度は、一気に定常運転温度に達する。より詳細には、予熱器昇温運転が概ね数時間で終了し、その間、改質器3と熱分解器4が放熱冷却で温度低下を起こすものの、ヒートキャリアの循環再開で改質器3には予熱器2から1000℃前後のものが落下、熱分解器には600℃程度のものが改質器から落下するため、改質器2も熱分解器3もほぼ同時に適正温度に到達する。
【0095】
しかる後に有機物質原料の供給を再開し、ガス化を開始する。このように保温運転を行うことによりシステムを一定温度以上に保ち、その後に本発明の予熱器昇温運転及び急加熱運転を経て原料供給を再開することにより、エネルギー消費を抑えつつシステムの再開を速やかに行うことができるようになる。
【0096】
保温運転の際、予熱器2の内部温度が700℃、改質器3の内部温度が600℃、熱分解器4の内部温度が500℃付近にあり、その温度からそれぞれ1000℃、950℃、600℃の定常運転温度まで昇温する場合を想定すると、保温運転から予熱器昇温運転への移行は、原料供給開始予定時刻の6〜7時間前から開始するのが適当である。すなわち、ヒートキャリアの各反応器での貯留量は、大体ヒートキャリア全量の3分の1程度であり、仮にヒートキャリアの全量を4.7トンとし、仮にヒートキャリアの循環量を時間当たり500キログラムとすると、予熱器2のヒートキャリアが改質器3に全量移動する時間は、約3時間である。従って、予熱器昇温のスタートから定常運転温度到達まで一連の作業時間は、予熱器昇温の約3時間と合わせ、凡そ6時間である。原料投入予定時刻の約6〜7時間前から高速昇温に入れば原料投入予定時刻までには十分昇温できる。
【0097】
(d)過熱抑制操作
例えば予熱器昇温運転中はヒートキャリアの循環を停止しているため、予熱器2内温度が予熱器定常運転温度に達し、さらに温度が上昇して予熱器の排ガス温度が機器制限温度を超えるおそれがある。また、待機運転中も、既に各機器が定常運転温度に達しているため、さらに温度が上昇して予熱器の排ガス温度が機器制限温度を超えるおそれがある。もちろん、急加熱運転中や定常運転中もそのおそれが無いわけではない。よって、予熱器2内温度が予熱器定常運転温度に達し、予熱器2の排ガス温度が機器制限温度(例えば550℃程度)を超えたとき、次の(イ)〜(ニ)の少なくとも一つの過熱抑制操作を実行するのが望ましい。
(イ)ヒートキャリアの循環が停止しているとき、一時的に、ヒートキャリアの循環を開始する。これにより、冷えたヒートキャリアを予熱器2内に供給して予熱器2を冷却することができる。
(ロ)一時的又は連続的に、予熱器2に対する熱風供給量及び供給熱風温度のうち、供給熱風温度は維持したまま熱風供給量を減少させる。これにより予熱器2に対する供給熱量を減少させ、放熱による冷却効果を利用し、冷却することができる。熱風生成装置1が燃焼排ガスの温度を指標にしたオート運転を行っている場合は、自動的に補助燃料の供給量がコントロールされるので、燃焼用空気量を減らす操作だけで、温度は下がらずに熱量が減る。
(ハ)一時的に、予熱器2への熱風供給を停止する。これにより、予熱器2に対する供給熱量を無くし、放熱による冷却効果を最大限利用して冷却することができる。
(ニ)一時的に、予熱器2に対して冷却用空気を送風する。これにより、予熱器2の強制冷却を行うことができる。冷却用空気としては、熱風生成装置1に供給される燃焼用空気をそのまま(図示例の場合、予熱器排ガス温度に近い温度となっている)用いることができる。この操作は、放熱冷却を待ちきれない緊急時に適用するものである。
このような過熱抑制操作を実行することによって予熱器2の温度低下を抑えつつ、運転継続による予熱器2の過熱を防止できるようになる。この操作は、温度の超過度合いに応じて、超過度合いが大きいときほど多い数の操作を組み合わせて適用し、かつその際に(イ)〜(ニ)の順に適用するのは望ましい。例えば、一時的又は連続的に(イ)のヒートキャリアの循環を再開し、それでも予熱器2内温度が下がらないときには、予熱器2に対する供給熱風温度は維持したまま熱風供給量を減少させる(ロ)〜(ハ)の操作を行うことによって、予熱器昇温運転等の継続による予熱器2の過熱を抑制する。ただし、それでもなお、予熱器2の昇温を抑えられない場合もありうる。よって、そのような場合には、上述の(二)のような予熱器冷却行程を行うのが好ましい。
【0098】
(e)リセット操作
本システムは、ヒートキャリアをシステム内で循環させ、予熱器2での蓄熱と改質器3と熱分解器4での放熱を利用して、熱分解器4の中での有機物質の熱分解と改質器3の中での水蒸気改質を行うシステムであるが、熱分解器4に原料が供給され過ぎると、吸熱反応と水分の蒸発等により、熱分解器4内でヒートキャリアの温度低下が起こり、この温度低下が許容範囲を超えると、図14に示されるように、ヒートキャリア温度が循環の度に下がる温度低下スパイラルに入る。例えば、通常の場合、熱分解器4内のヒートキャリア温度として許容できる下限温度はおよそ500℃であり、この温度を下回ると、予熱器2に戻る時には400℃以下となり、予熱器2での昇温の限界もあって、温度低下スパイラルという悪循環に陥り、ヒートキャリアを定常運転温度に戻せなくなる。そして、このような低温状態になると、改質器3の温度も水蒸気改質の出来る温度ではなくなり、水蒸気改質反応は消え、単なる熱分解だけのガス製造が続いているだけとなり、生成ガスの水素濃度は低くなる。
【0099】
そこで、このような温度低下の悪循環から抜け出すための手法として、次のようなリセット操作も提案する。すなわち、予熱器2内の温度、改質器3内の温度、及び熱分解器4内の温度が、予熱器定常運転温度、改質器定常運転温度、及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達している状態で、熱風の供給、ヒートキャリアの循環、及び有機物質原料の供給を行う定常運転中に、熱分解器4内温度が熱分解器定常運転温度未満、特に下限温度未満となったとき、原料供給を停止し、熱風の送風を継続して予熱器昇温運転に入る。この予熱器昇温運転により、予熱器2内の温度が所定の予熱器定常運転温度に回復したならば、ヒートキャリアの循環を再開して急加熱運転に移行し、改質器3内の温度及び熱分解器4内の温度をそれぞれ所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度に一気に回復させる。
【0100】
このリセット操作によって、各器の温度が定常運転温度に回復したら、温度低下悪循環の原因となった原料の供給量をリセット操作前よりも減らすように、原料供給系14,17の設定を変更してから原料供給を再開する。原料の供給量をどの程度減らすかは適宜定めることができるが、最初は大幅に減らし(概ね3分の1から4分の1に減らす)、そこから徐々に供給量を増やし、原料供給を継続しても熱分解器4の温度が下限温度以下に低下しない適正原料供給量に調整するのが好ましい。
【0101】
(f)後処理運転
システムを停止する際、直ちにヒートキャリアの循環をも停止してしまうと、熱分解器4に滴下するタールの固化により多数のヒートキャリアが塊状に固まり、次のシステム開始の際にヒートキャリアの循環阻害をもたらすことがある。そこで、システムを停止するにあたり、熱分解器4に対する有機物質原料の供給を停止した状態で、ヒートキャリアの循環及び予熱器2への熱風供給を継続する、後処理運転を所定時間(例えば2時間以上)行い、しかる後に、ヒートキャリアの循環及び予熱器2への熱風供給をそれぞれ停止することも提案する。この後処理運転を行うことにより、熱分解器4においてタールが滴下しても熱風により加熱されたヒートキャリアが循環しているため、塊状に固化するといった事態は発生し難くなる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、木質バイオマス等の有機物質のガス化に利用できるものである。
【符号の説明】
【0103】
1…熱風生成装置、2…予熱器、3…改質器、4…熱分解器、5…分離機、6…移送装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱を運ぶための多数のヒートキャリアと、このヒートキャリアを加熱するための予熱器と、熱分解ガスの水蒸気改質を行うための改質器と、有機物質原料を熱分解するための熱分解器と、熱風を生成する熱風生成装置とを備え、
前記ヒートキャリアを、前記予熱器、改質器、及び熱分解器の順に通した後、移送装置により再び予熱器に戻して循環させるとともに、前記熱分解器内に有機物質原料を供給し、前記改質器内に対して直接又は間接的に水蒸気を供給し、
前記熱分解器内では、前記有機物質原料を、加熱されたヒートキャリアと接触させることによりチャーと熱分解ガスとに熱分解し、熱分解ガスはヒートキャリアに対して向流接触しながら改質器へ供給し、
前記改質器では、前記熱分解ガスを前記ヒートキャリアにより加熱しつつ前記水蒸気と接触させることにより水素含有濃度を向上させたガスを生成し、
前記熱風生成装置では、熱風を生成して予熱器に供給し、
前記予熱器では、前記熱風生成装置から供給される熱風を、前記予熱器内を堆積状態で通過するヒートキャリア間に通して、ヒートキャリアと直接接触することによりヒートキャリアを加熱する、
ように構成した有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法であって;
前記熱分解器に対する前記有機物質原料の供給、及び前記ヒートキャリアの循環をそれぞれ停止した状態で、前記熱風生成装置から前記予熱器へ熱風供給する、予熱器昇温運転を行い、
前記予熱器内の温度が所定の予熱器定常運転温度に達した後に、前記有機物質原料の供給停止状態及び前記熱風供給状態を継続しつつ、前記ヒートキャリアの循環を行う急加熱運転を、前記改質器内の温度及び熱分解器内の温度が所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達するまで行う、
ことを特徴とする有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【請求項2】
前記予熱器定常運転温度は1000℃以上であり、前記改質器定常運転温度は950℃以上であり、前記熱分解器定常運転温度は550℃以上である、請求項1記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【請求項3】
予熱器、改質器及び熱分解器を気温状態からそれぞれ予熱器定常運転温度、改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度まで昇温する、コールドスタートに際し、
前記有機物質原料の供給及び前記ヒートキャリアの循環を行わずに、前記予熱器に対して熱風の供給を開始し、前記予熱器内温度が所定温度を超えた後に前記熱風供給を継続したまま前記ヒートキャリアの循環を開始し、
このヒートキャリアの循環により前記熱分解器内温度が熱分解器定常運転温度に到達した後に、前記予熱器昇温運転を開始し、
この予熱器昇温運転により、前記予熱器内の温度が所定の予熱器定常運転温度に達した後に、前記改質器内の温度及び熱分解器内の温度が所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達するまで前記急加熱運転を行い、しかる後に前記有機物質原料の供給を開始する、請求項1又は2記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【請求項4】
前記予熱器内の温度、前記改質器内の温度、及び前記熱分解器内の温度が、前記予熱器定常運転温度、前記改質器定常運転温度、及び前記熱分解器定常運転温度にそれぞれ達している状態で、前記予熱器に対する熱風の供給、前記ヒートキャリアの循環、及び前記有機物質原料の供給を行う定常運転から、
前記有機物質原料の供給を停止した状態で、前記予熱器に対する供給熱量の増減及び前記ヒートキャリアの循環速度の増減の少なくとも一方を行い、予熱器に対する熱風供給量及び供給熱風温度のうち少なくとも一方を低減し、且つ前記予熱器内の温度を前記予熱器定常運転温度よりも低く且つ所定の下限温度以上、前記熱分解器内の温度を前記熱分解器定常運転温度よりも低く且つ所定の下限温度以上、及び前記改質器内の温度を前記改質器定常運転温度よりも低く且つ所定の下限温度以上にそれぞれ保持する、保温運転に移行した後、
この保温運転から前記予熱器昇温運転に移行し、前記予熱器内の温度が所定の予熱器定常運転温度に達した後に、前記改質器内の温度及び熱分解器内の温度が所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達するまで前記急加熱運転を行い、しかる後に前記有機物質原料の供給を再開する、ホットスタートを行う、請求項1又は2記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【請求項5】
前記予熱器内の温度、前記改質器内の温度、及び前記熱分解器内の温度が、前記予熱器定常運転温度、前記改質器定常運転温度、及び前記熱分解器定常運転温度にそれぞれ達しており、且つ前記原料供給を停止している状態から、前記原料供給を開始するまでの間、
(い)前記ヒートキャリアの循環の一時的又は連続的な停止、
(ろ)前記ヒートキャリアの循環の一時的又は連続的な実行、並びに
(は)前記予熱器に対する熱風供給量及び供給熱風温度のうち少なくとも一方の増減、
の少なくとも一つの操作により、前記予熱器内の温度、前記改質器内の温度、及び前記熱分解器内の温度を、前記予熱器定常運転温度、前記改質器定常運転温度、及び前記熱分解器定常運転温度にそれぞれ維持する、待機運転を行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス化システムにおける高速昇温方法。
【請求項6】
前記予熱器内の温度、前記改質器内の温度、及び前記熱分解器内の温度が、前記予熱器定常運転温度、前記改質器定常運転温度、及び前記熱分解器定常運転温度にそれぞれ達している状態で、前記熱風の供給、前記ヒートキャリアの循環、及び前記有機物質原料の供給を行う定常運転中に、前記熱分解器内温度が前記熱分解器定常運転温度未満となったとき、
前記予熱器昇温運転を行い、前記予熱器内の温度が所定の予熱器定常運転温度に達した後に、前記改質器内の温度及び熱分解器内の温度が所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達するまで前記急加熱運転を行う、リセット操作を実行し、このリセット操作後に、リセット操作前よりも少ない供給量で前記有機物質原料の供給を再開する、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【請求項7】
前記予熱器内温度が前記予熱器定常運転温度に達し、前記予熱器の排ガス温度が機器制限温度を超えたとき、次の、
(イ)前記ヒートキャリアの循環が停止しているとき、一時的に、前記ヒートキャリアの循環を開始する、
(ロ)一時的又は連続的に、前記予熱器に対する熱風供給量及び供給熱風温度のうち、供給熱風温度は維持したまま熱風供給量を減少させる、
(ハ)一時的に、前記予熱器への熱風供給を停止する、
(ニ)一時的に、予熱器に対して冷却用空気を送風する、
の少なくとも一つの過熱抑制操作を実行する、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【請求項8】
前記急加熱運転における前記ヒートキャリアの循環開始と同時又はその直前もしくは直後に、前記予熱器に対する熱風供給量及び供給熱風温度の少なくとも一方を増加する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【請求項9】
システムを停止するにあたり、前記熱分解器に対する前記有機物質原料の供給を停止した状態で、前記ヒートキャリアの循環及び前記予熱器への熱風供給を継続する、後処理運転を所定時間を行い、しかる後に、前記ヒートキャリアの循環及び前記予熱器への熱風供給をそれぞれ停止する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【請求項1】
熱を運ぶための多数のヒートキャリアと、このヒートキャリアを加熱するための予熱器と、熱分解ガスの水蒸気改質を行うための改質器と、有機物質原料を熱分解するための熱分解器と、熱風を生成する熱風生成装置とを備え、
前記ヒートキャリアを、前記予熱器、改質器、及び熱分解器の順に通した後、移送装置により再び予熱器に戻して循環させるとともに、前記熱分解器内に有機物質原料を供給し、前記改質器内に対して直接又は間接的に水蒸気を供給し、
前記熱分解器内では、前記有機物質原料を、加熱されたヒートキャリアと接触させることによりチャーと熱分解ガスとに熱分解し、熱分解ガスはヒートキャリアに対して向流接触しながら改質器へ供給し、
前記改質器では、前記熱分解ガスを前記ヒートキャリアにより加熱しつつ前記水蒸気と接触させることにより水素含有濃度を向上させたガスを生成し、
前記熱風生成装置では、熱風を生成して予熱器に供給し、
前記予熱器では、前記熱風生成装置から供給される熱風を、前記予熱器内を堆積状態で通過するヒートキャリア間に通して、ヒートキャリアと直接接触することによりヒートキャリアを加熱する、
ように構成した有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法であって;
前記熱分解器に対する前記有機物質原料の供給、及び前記ヒートキャリアの循環をそれぞれ停止した状態で、前記熱風生成装置から前記予熱器へ熱風供給する、予熱器昇温運転を行い、
前記予熱器内の温度が所定の予熱器定常運転温度に達した後に、前記有機物質原料の供給停止状態及び前記熱風供給状態を継続しつつ、前記ヒートキャリアの循環を行う急加熱運転を、前記改質器内の温度及び熱分解器内の温度が所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達するまで行う、
ことを特徴とする有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【請求項2】
前記予熱器定常運転温度は1000℃以上であり、前記改質器定常運転温度は950℃以上であり、前記熱分解器定常運転温度は550℃以上である、請求項1記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【請求項3】
予熱器、改質器及び熱分解器を気温状態からそれぞれ予熱器定常運転温度、改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度まで昇温する、コールドスタートに際し、
前記有機物質原料の供給及び前記ヒートキャリアの循環を行わずに、前記予熱器に対して熱風の供給を開始し、前記予熱器内温度が所定温度を超えた後に前記熱風供給を継続したまま前記ヒートキャリアの循環を開始し、
このヒートキャリアの循環により前記熱分解器内温度が熱分解器定常運転温度に到達した後に、前記予熱器昇温運転を開始し、
この予熱器昇温運転により、前記予熱器内の温度が所定の予熱器定常運転温度に達した後に、前記改質器内の温度及び熱分解器内の温度が所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達するまで前記急加熱運転を行い、しかる後に前記有機物質原料の供給を開始する、請求項1又は2記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【請求項4】
前記予熱器内の温度、前記改質器内の温度、及び前記熱分解器内の温度が、前記予熱器定常運転温度、前記改質器定常運転温度、及び前記熱分解器定常運転温度にそれぞれ達している状態で、前記予熱器に対する熱風の供給、前記ヒートキャリアの循環、及び前記有機物質原料の供給を行う定常運転から、
前記有機物質原料の供給を停止した状態で、前記予熱器に対する供給熱量の増減及び前記ヒートキャリアの循環速度の増減の少なくとも一方を行い、予熱器に対する熱風供給量及び供給熱風温度のうち少なくとも一方を低減し、且つ前記予熱器内の温度を前記予熱器定常運転温度よりも低く且つ所定の下限温度以上、前記熱分解器内の温度を前記熱分解器定常運転温度よりも低く且つ所定の下限温度以上、及び前記改質器内の温度を前記改質器定常運転温度よりも低く且つ所定の下限温度以上にそれぞれ保持する、保温運転に移行した後、
この保温運転から前記予熱器昇温運転に移行し、前記予熱器内の温度が所定の予熱器定常運転温度に達した後に、前記改質器内の温度及び熱分解器内の温度が所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達するまで前記急加熱運転を行い、しかる後に前記有機物質原料の供給を再開する、ホットスタートを行う、請求項1又は2記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【請求項5】
前記予熱器内の温度、前記改質器内の温度、及び前記熱分解器内の温度が、前記予熱器定常運転温度、前記改質器定常運転温度、及び前記熱分解器定常運転温度にそれぞれ達しており、且つ前記原料供給を停止している状態から、前記原料供給を開始するまでの間、
(い)前記ヒートキャリアの循環の一時的又は連続的な停止、
(ろ)前記ヒートキャリアの循環の一時的又は連続的な実行、並びに
(は)前記予熱器に対する熱風供給量及び供給熱風温度のうち少なくとも一方の増減、
の少なくとも一つの操作により、前記予熱器内の温度、前記改質器内の温度、及び前記熱分解器内の温度を、前記予熱器定常運転温度、前記改質器定常運転温度、及び前記熱分解器定常運転温度にそれぞれ維持する、待機運転を行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス化システムにおける高速昇温方法。
【請求項6】
前記予熱器内の温度、前記改質器内の温度、及び前記熱分解器内の温度が、前記予熱器定常運転温度、前記改質器定常運転温度、及び前記熱分解器定常運転温度にそれぞれ達している状態で、前記熱風の供給、前記ヒートキャリアの循環、及び前記有機物質原料の供給を行う定常運転中に、前記熱分解器内温度が前記熱分解器定常運転温度未満となったとき、
前記予熱器昇温運転を行い、前記予熱器内の温度が所定の予熱器定常運転温度に達した後に、前記改質器内の温度及び熱分解器内の温度が所定の改質器定常運転温度及び熱分解器定常運転温度にそれぞれ達するまで前記急加熱運転を行う、リセット操作を実行し、このリセット操作後に、リセット操作前よりも少ない供給量で前記有機物質原料の供給を再開する、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【請求項7】
前記予熱器内温度が前記予熱器定常運転温度に達し、前記予熱器の排ガス温度が機器制限温度を超えたとき、次の、
(イ)前記ヒートキャリアの循環が停止しているとき、一時的に、前記ヒートキャリアの循環を開始する、
(ロ)一時的又は連続的に、前記予熱器に対する熱風供給量及び供給熱風温度のうち、供給熱風温度は維持したまま熱風供給量を減少させる、
(ハ)一時的に、前記予熱器への熱風供給を停止する、
(ニ)一時的に、予熱器に対して冷却用空気を送風する、
の少なくとも一つの過熱抑制操作を実行する、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【請求項8】
前記急加熱運転における前記ヒートキャリアの循環開始と同時又はその直前もしくは直後に、前記予熱器に対する熱風供給量及び供給熱風温度の少なくとも一方を増加する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【請求項9】
システムを停止するにあたり、前記熱分解器に対する前記有機物質原料の供給を停止した状態で、前記ヒートキャリアの循環及び前記予熱器への熱風供給を継続する、後処理運転を所定時間を行い、しかる後に、前記ヒートキャリアの循環及び前記予熱器への熱風供給をそれぞれ停止する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機物質のガス化システムにおける高速昇温方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−201769(P2012−201769A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66792(P2011−66792)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000115463)ライト工業株式会社 (137)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000115463)ライト工業株式会社 (137)
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