有機物質のガス化システム及びその熱分解器差圧解消方法
【課題】熱分解器において発生する改質器に対する差圧を解消する技術を提供する。
【解決手段】上記課題は、熱分解器4の圧力計4pによる計測結果が所定の定常運転許容範囲を超えたときに、ヒートキャリアの循環、及び熱風生成装置1から予熱器2への熱風供給を継続したまま、有機物質原料の供給を停止する、差圧解消運転を行い、この差圧解消運転において、熱分解器4の圧力計4pによる計測結果が所定の定常運転許容範囲に戻ったときに、有機物質原料の供給を再開して差圧解消運転を終了する、ことにより解決できる。
【解決手段】上記課題は、熱分解器4の圧力計4pによる計測結果が所定の定常運転許容範囲を超えたときに、ヒートキャリアの循環、及び熱風生成装置1から予熱器2への熱風供給を継続したまま、有機物質原料の供給を停止する、差圧解消運転を行い、この差圧解消運転において、熱分解器4の圧力計4pによる計測結果が所定の定常運転許容範囲に戻ったときに、有機物質原料の供給を再開して差圧解消運転を終了する、ことにより解決できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質バイオマス等の有機物質のガス化システム及びその熱分解器差圧解消方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の代替及び地球温暖化防止を目的とした新エネルギー供給システムとして、間伐材等の木質バイオマスをガス化し、このガスを燃料として熱や電気エネルギーを生成する技術が提案され、利用されている。
【0003】
このようなガス化システムとしては、種々のものが提案されているが、中でも特許文献1記載のヒートキャリア循環型システムは水素濃度の高いガスを生成できる点で優れたものの一つである。このガス化システムは、上から順に、予熱器、改質器、熱分解器、及び分離機を備えており、熱を運ぶための多数のヒートキャリア(熱担持媒体)が、予熱器で加熱されてから改質器、熱分解器及び分離機の順に通された後、バケットコンベア等の移送装置により再び予熱器に戻されるように構成されている。
【0004】
有機物質原料は、スクリューコンベア等の適宜の定量供給装置により、例えば改質器と熱分解器とを繋ぐ供給管路を介して、熱分解器の上部供給口へ連続的に定量供給される。熱分解器内に供給された有機物質は、予熱器から改質器を経て供給された、加熱されたヒートキャリアと接触することにより、チャー(固体の炭素含有残留物)と熱分解ガス(揮発性相)とに分離される。固形分であるチャーは、ヒートキャリアとともに分離機へ供給され、気体である熱分解ガスはヒートキャリアに対して向流接触しながら改質器へ上昇供給される。
【0005】
改質器には反応媒体としての水蒸気が供給されており、熱分解ガスがヒートキャリアにより加熱される条件下でこの水蒸気と混合接触すること及び950℃前後の高温環境下にあることにより、550℃前後で発生する熱分解ガスよりもはるかに水素含有濃度が高く、従って生成量も増大する。
【0006】
改質器で発生したガスは、改質器の上部に設けられた改質ガス排出口を介して、下流側に設けられた誘引送風機によりガス処理・利用設備に送出される。
【0007】
一方、分離機では、熱分解器から供給される混合物がチャーとヒートキャリアとに分離される。分離されたチャーは熱風炉等の熱風生成装置に供給され、ヒートキャリアは移送装置により予熱器に戻される。
【0008】
熱風生成装置では、チャーの燃焼により熱風(高温排ガス)が生成される。この熱風は予熱器に供給され、予熱器内を堆積状態で通過するヒートキャリア間に通され、ヒートキャリアと直接接触することによりヒートキャリアが加熱される。また、熱風生成装置ではチャーの燃焼により灰が生成される。この灰は、大部分は熱風生成装置1内で回収・除去されるが、一部は予熱器に供給され、予熱器の排気経路に設けられたサイクロン等の分離手段で取り除かれる。
【0009】
他方、改質器と熱分解器とを繋ぐ接続管路内には、改質器の下端排出口に取り付けられた漏斗状の通気性ヒートキャリア管路及びこの通気性ヒートキャリア管路の下端排出口の開閉を行うバルブが設けられている。ヒートキャリアの循環中は、このバルブが所定の間隔で開閉を繰り返し、ヒートキャリア等の固形分が断続的に定量通過するようになっている。また、バルブの開閉に関係なく、熱分解器で発生した熱分解ガスが通気性ヒートキャリア管路を透過して改質器に自由に上昇し、両機器間に内圧の差(差圧、圧力差)が殆ど発生しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許4264525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述のシステムにおいては、熱分解器と改質器との接続管路に設けられた通気性ヒートキャリア管路が灰・ダスト(灰以外の粉粒体)で閉塞し、本来改質器の内圧と熱分解器の内圧とは等圧になるべきところ、1kPaを超える差圧が生じるという問題点があった。
【0012】
熱分解器はガス発生装置であることから、何らかの異常により熱分解器の内圧が上昇したときのために、熱分解器の上端部はガス抜出管を介してシールポットに接続されており、熱分解器の内圧がシールポットの設定圧以上に上昇すると、熱分解器内のガスがシールポット内に抜き出され、煙突を介して大気放出されるようになっている。しかし、改質器と熱分解器との間に差圧が発生すると、(1)熱分解器で発生したガスが改質器に流入しなくなり、改質ガスが発生しなくなるのはもちろん、(2)差圧を放置してガス化を続けると、熱分解ガスをシールポットを介して大気放出せざるをえなくなる等、安全性の面で好ましくない事態にもつながるため、改善が望まれるものである。
【0013】
しかも、こうしたトラブルは、原料供給量がある量を超えた当たりから、数時間間隔で発生するため、その都度分解清掃をしていては、操業ロスは計り知れないものがある。
【0014】
当初、灰やヒートキャリアや耐火煉瓦から発生した灰・ダストは、熱風生成装置の下部に集積するものと考えられていた。しかし、現実には、熱風生成装置での灰・ダストの蓄積はあまり観察されず、バケットコンベアの下部に大量の蓄積がみられ、開炉点検では、予熱器の下部への灰・ダスト堆積、パンチングメタルの穴の灰・ダストによる閉塞が観察された。そこで、この灰・ダスト、チャーを採取し、また新品のヒートキャリアであるアルミナボール、耐火煉瓦、断熱材を、それぞれ蛍光エックス線で分析したところ、灰・ダストの成分については採取位置によりバラツキが出たものの、いずれも主成分はアルミニューム、カルシューム、鉄、珪素及びカリウムが1パーセント以上の構成物質であった。カリウムは、アルミナボールでは不検出、耐火煉瓦と断熱材で1パーセント以下の構成であることが判明し、チャーに20パーセント程度含まれていることが判明した。灰のもう一つの主成分であるカルシュームについては、耐火煉瓦に10パーセント程度含まれているために灰・ダストの生成由来を考える上では使えないことも分かった。灰・ダスト中に数パーセントのカリウムが含まれていることが確認され、灰・ダストは炉から出た粉と灰の混ざったものであることが確認できた。
【0015】
本発明が対象とするヒートキャリア循環型システムにおいては、ヒートキャリアの循環で熱供給をするため、これらを循環する際の摩擦・衝撃で粉が発生することはやむを得ないものである。また、ガス化原料として有機物が使用されるが、熱分解においては、間接ガス化のため、熱分解器や改質器での燃焼は無く、ガス化原料はガス・チャー・タールの3つに分解され、反応器の中での灰の発生は無いこととされている。しかし、開炉点検で得た灰・ダストの分析で灰の混入が認められ、このブルータワーというシステムにおいては、プラント内での灰の発生も避けられないと考えられる。
【0016】
そこで、本発明の主たる課題は、ヒートキャリア循環型システムの熱分解器において不可避的に発生する改質器に対する差圧を、分解清掃を要せずに解消可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決した本発明は、次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
熱を運ぶための多数のヒートキャリアと、このヒートキャリアを加熱するための予熱器と、熱分解ガスの水蒸気改質を行うための改質器と、有機物質原料を熱分解するための熱分解器と、熱風を生成する熱風生成装置とを備え、
前記ヒートキャリアを、前記予熱器、改質器、及び熱分解器の順に通した後、移送装置により再び予熱器に戻して循環させるとともに、前記熱分解器内に有機物質原料を供給し、前記改質器内に対して直接又は間接的に水蒸気を供給し、
前記熱分解器内では、前記有機物質原料を、加熱されたヒートキャリアと接触させることによりチャーと熱分解ガスとに熱分解し、熱分解ガスはヒートキャリアに対して向流接触しながら改質器へ供給し、
前記改質器では、前記熱分解ガスを前記ヒートキャリアにより加熱しつつ前記水蒸気と接触させることにより水素含有濃度を向上させたガスを生成し、
前記熱風生成装置では、熱風を生成して予熱器に供給し、
前記予熱器では、前記熱風生成装置から供給される熱風を、前記予熱器内を堆積状態で通過するヒートキャリア間に通して、ヒートキャリアと直接接触することによりヒートキャリアを加熱する、
ように構成した有機物質のガス化システムであって;
前記改質器と熱分解器とを繋ぐ接続管路と、
この接続管路内に接続管路内面から離間するように配置され、前記熱分解ガスは内外に通過するが前記ヒートキャリアは内外に通過しない通気孔が形成された管壁を有し、且つ前記改質器から排出されるヒートキャリアの導入口及び導入したヒートキャリアを接続管路内に放出する放出口を有する、通気性ヒートキャリア管路と、
このヒートキャリア管路からのヒートキャリアの放出の開閉を行うバルブと、
前記熱分解器の内圧を計測する熱分解器圧力計と、を備え、
前記熱分解器圧力計による計測結果が所定の定常運転許容範囲を超えたときに、前記ヒートキャリアの循環、及び前記熱風生成装置から前記予熱器への熱風供給を継続したまま、前記有機物質原料の供給を停止する、差圧解消運転を行い、
この差圧解消運転において、前記熱分解器圧力計による計測結果が前記所定の定常運転許容範囲に戻ったときに、前記有機物質原料の供給を再開して差圧解消運転を終了するように構成した、
ことを特徴とする有機物質のガス化システム。
【0018】
(作用効果)
熱分解器において不可避的に発生する圧力上昇(差圧)の原因は、熱分解器と改質器との接続管路に設けられた通気性ヒートキャリア管路の通気孔が灰・ダストで閉塞することにあるが、通気孔に詰まった灰・ダストは、指で突けばポロリと落ちるような軽いもので、硬く固まるものではない。よって、このような灰・ダストによる閉塞が発生したとき、原料供給を停止してヒートキャリアの予熱及び循環を継続すると、熱分解ガスの発生停止により熱分解器の内圧上昇が停止するとともに、移動するヒートキャリアが通気孔や灰・ダストに接触し、その衝撃力や押し出し力により、通気孔内の灰・ダストは通気孔内から押し出されて剥離・脱落し、通気孔を介した改質器への通気性が回復するため、改質器に対する差圧を分解清掃無して解消することができる。
【0019】
<請求項2記載の発明>
前記通気孔は、前記通気性ヒートキャリア管路の内側から外側に向かうにつれて径が拡大するテーパー状をなしている、請求項1記載の有機物質のガス化システム。
【0020】
(作用効果)
通気孔の形状が通気性ヒートキャリア管路の内側から外側まで同じ径であると、通気孔に入る灰・ダストの層が成長し易く、また詰まった灰・ダストが抜け難いが、上述のように、通気性ヒートキャリア管路の内側から外側に向かうにつれて径が拡大するテーパー状にすると、灰・ダスト付着が始まっても閉塞には至り難くなる。つまり、通気孔は、通気性ヒートキャリア管路の内面に開口しており、移動するヒートキャリアに接触する部分であるため、その接触により、灰・ダストは通気孔に押し込まれていく。この際、通気孔が上述のように外側に向かうにつれて径が拡大するテーパー形状をなしていると、通気孔内の灰・ダストは通気孔から押し出されて剥離・脱落し易くなり、通気孔内で閉塞まで成長するといった事態は発生し難くなる。
【0021】
<請求項3記載の発明>
シールポットと、一端が前記シールポット内の貯留液体中に所定深さまで挿入され、且つ他端が前記熱分解器内に連通するガス抜出管とを設けるとともに、このガス抜出管にガス抜出開閉弁を設け、
前記熱分解器内に不活性ガスを加圧供給するガス吹込み口を設け、
前記熱分解器圧力計による計測結果が所定の定常運転許容範囲を超えたときに、前記差圧解消運転に代えて又は前記差圧解消運転を行うとともに、前記ガス抜出開閉弁を閉じた状態で、前記ガス吹込み口を介して前記熱分解器内に不活性ガスを瞬間的に加圧供給する操作を一回又は複数回行い、
この操作により、前記熱分解器圧力計による計測結果が前記所定の定常運転許容範囲に戻ったときに、前記ガス抜出開閉弁を開くように構成した、
請求項1又は2記載の有機物質のガス化システム。
【0022】
(作用効果)
熱分解器内に不活性ガスを瞬間的に加圧供給する操作を行うと、その圧力上昇による衝撃が閉塞灰・ダストに十分に伝われば、通気孔内の閉塞灰・ダストを改質器側又は熱分解器側に吹き飛ばすことができる。しかし、前述のとおり、熱分解器はガス発生装置であることから、何らかの異常により熱分解器の内圧が上昇したときのために、熱分解器の上端部はガス抜出管を介してシールポットに接続されており、熱分解器の内圧がシールポットの設定圧以上に上昇すると、熱分解器内のガスがシールポット内に抜き出され、煙突を介して大気放出されるようになっている。よって、単に不活性ガスを熱分解機内に供給してもシールポットがその圧力変動を吸収してしまい、閉塞灰・ダストに衝撃を効率良く伝えることができない。そこで、上述のように、シールポットへのガス抜出管に開閉弁を設け、これを閉じた状態で不活性ガスを加圧供給することにより、その圧力上昇による衝撃が閉塞灰・ダストに効果的に伝わるようになり、閉塞灰・ダストの除去効果が高まるようになる。その結果、短時間での差圧解消を図ることができる。これに対して、前述の差圧解消運転や通気孔形状の改良技術は、通気孔を閉塞する灰・ダストの自然除去力を利用し、また補助するものであり、差圧解消にある程度の時間を要するものである。
【0023】
<請求項4記載の発明>
熱を運ぶための多数のヒートキャリアを、ヒートキャリアを加熱するための予熱器、熱分解ガスの水蒸気改質を行うための改質器、及び有機物質原料を熱分解するための熱分解器の順に通した後、移送装置により再び予熱器に戻して循環させるとともに、
前記熱分解器内に有機物質原料を供給し、且つ前記改質器内に対して直接又は間接的に水蒸気を供給し、
前記熱分解器内では、前記有機物質原料を、加熱されたヒートキャリアと接触させることによりチャーと熱分解ガスとに熱分解し、熱分解ガスはヒートキャリアに対して向流接触しながら改質器へ供給し、
前記改質器では、前記熱分解ガスを前記ヒートキャリアにより加熱しつつ前記水蒸気と接触させることにより水素含有濃度を向上させたガスを生成し、
熱風生成装置で、熱風を生成して予熱器に供給し、
前記予熱器では、前記熱風生成装置から供給される熱風を、前記予熱器内を堆積状態で通過するヒートキャリア間に通して、ヒートキャリアと直接接触することによりヒートキャリアを加熱する、
有機物質のガス化システムにおける熱分解器差圧解消方法であって;
前記改質器と熱分解器とを繋ぐ接続管路と、
この接続管路内に接続管路内面から離間するように配置され、前記熱分解ガスは内外に通過するが前記ヒートキャリアは内外に通過しない通気孔が形成された管壁を有し、且つ前記改質器から排出されるヒートキャリアの導入口及び導入したヒートキャリアを接続管路内に放出する放出口を有する、通気性ヒートキャリア管路と、
このヒートキャリア管路からのヒートキャリアの放出の開閉を行うバルブと、を備え付け、
前記熱分解器の内圧が所定の定常運転許容範囲を超えたときに、前記ヒートキャリアの循環、及び前記熱風生成装置から前記予熱器への熱風供給を継続したまま、前記有機物質原料の供給を停止する、差圧解消運転を行い、
この差圧解消運転において、前記熱分解器の内圧が前記所定の定常運転許容範囲に戻ったときに、前記有機物質原料の供給を再開して差圧解消運転を終了する、
有機物質のガス化システムにおける熱分解器差圧解消方法。
【0024】
(作用効果)
請求項1記載の発明と同様の作用効果が奏せられる。
【発明の効果】
【0025】
以上のとおり、本発明によれば、ヒートキャリア循環型システムの熱分解器において不可避的に発生する改質器に対する差圧を、分解清掃を要せずに解消できるようになる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ガス化システムのフロー図である。
【図2】予熱器の縦断面図である。
【図3】図1のA−A断面図及びB−B断面図である。
【図4】改質器の縦断面図である。
【図5】図4のC−C断面図及びD−D断面図である。
【図6】熱分解器の縦断面図である。
【図7】図6のE−E断面図である。
【図8】分離機の概略図である。
【図9】傘状スクリーンの概略図である。
【図10】分離機の概略図である。
【図11】予熱器の縦断面図である。
【図12】図11のF−F断面図である。
【図13】予熱器の破断斜視図である。
【図14】通気性ヒートキャリア管路の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら詳説する。
本発明に係るガス化システムは、例えば図1に示される機器構成で実施することができる。すなわち、図1に示されるガス化システムは、上から順に、予熱器2、改質器3、熱分解器4、及び分離機5を直列に備えており、熱を運ぶための多数のヒートキャリア(熱担持媒体)が、予熱器2で加熱されてから改質器3、熱分解器4及び分離機5の順に通された後、バケットコンベア等の移送装置6により再び予熱器2に戻されるように構成されているものである。
【0028】
ヒートキャリアとしては、粒径5〜20mm程度、好ましくは粒径8〜12mm程度の粒状物を用いることができ、特に球状のものが好適である。また、ヒートキャリアの素材としては、アルミナ等のように硬質で熱容量の大きなものが好適である。なお、粒径とは、JIS Z 8801−1「試験用ふるい−第 1 部:金属製網ふるい」に規定されるふるいを用い、JIS A 1102 「骨材のふるい分け試験方法」に準じて測定される、ふるい分け法による粒径(ふるいの目開き)を意味する(以下同じ)。
【0029】
有機物質原料は原料ホッパ17に貯留されており、スクリューコンベア14やロータリーフィーダ等の適宜の定量供給装置により切り出され、改質器3と熱分解器4とを繋ぐ接続管路3xを介して、熱分解器4の上部供給口へ連続的に定量供給される。この接続管路の詳細は図4に示されている。接続管路3xにおける原料供給位置よりも上方には、改質器3の下端排出口に取り付けられた漏斗状の通気性ヒートキャリア管路3e及びこの通気性ヒートキャリア管路3eの下端排出口の開閉を行うバルブ3b(図示例は弁体が矢印方向に回動することにより開閉するものである)が設けられており、ヒートキャリア等の固形分の通過を停止させる等の制御が可能になっているとともに、バルブ3bの開閉に関係なく、熱分解器4で発生した熱分解ガスが接続管路3xと通気性ヒートキャリア管路3eとの間のスペース、及び通気性ヒートキャリア管路3eの管壁を透過して改質器3に自由に上昇できるようになっている。ヒートキャリアの循環中は、このバルブ3bが所定の間隔で開閉を繰り返し、ヒートキャリア等の固形分が断続的に定量通過するようになっている。通気性ヒートキャリア管路は、熱分解ガスは通過するがヒートキャリアは通過しない寸法の通気孔3fが管壁の全体(一部でも良い)にわたり多数形成された漏斗状部材(円筒状でも良い)であり、例えばパンチングメタル等により形成することができる。
【0030】
有機物質原料としては、間伐材や剪定枝等の木質バイオマスが好適であるが、プラスチック等他の廃棄物等を用いることもできる。廃ラスチックの例としては、塩化ビニル、ポリウレタン、メタクリル樹脂、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等を挙げることができる。有機物質原料の形状は特に限定されないが、φ1〜50mm程度、L=1〜150mm程度、特にヒートキャリアの粒径の1.6倍以下程度の粒径に破砕、切削、ペレット化したものを好適に用いることができる。
【0031】
熱分解器4内に供給された有機物質は、予熱器2から改質器3を経て供給された、加熱されたヒートキャリアと混合状態で接触することにより、吸熱反応を起こし、チャー(固体の炭素含有残留物)と熱分解ガス(揮発性相)とに分離される。熱分解器4内の温度は適宜定めることができるが、500〜600℃程度にするのが好ましい。熱分解生成物のうち、固形分であるチャーは、ヒートキャリアとともに供給管路4xを介して分離機5へ供給され、気体である熱分解ガスはヒートキャリアに対して向流接触しながら改質器3へ上昇供給される。この供給管路4xにはバルブ4bが設けられるとともに、その下流側にダンパ4dが二段に設けられており、前者によりヒートキャリア等の固形分の通過を停止させる等の制御が可能になっており、後者により気体分の通過を停止させる等の制御が可能になっている。ヒートキャリアの循環中は、このバルブ4bが所定の間隔で開閉を繰り返すとともに、上下のダンパ4dが開閉動作を反対に行うことにより、気体の通過を遮断しつつ、ヒートキャリア等の固形分が断続的に定量通過するようになっている。
【0032】
また、熱分解器4に対して、シールポット60と、一端がシールポット60内の水等の貯留液体中に所定深さまで挿入され、且つ他端が熱分解器4内に連通するガス抜出管61とが設けられており、熱分解器4の内圧がシールポット60の設定圧(ガス抜出管の浸漬深さに応じて定まり、通常の場合4kPa程度とすることができる)以上に上昇すると、熱分解器4内のガスがシールポット60内に抜き出され、煙突を介して大気放出されるようになっている。
【0033】
改質器3に対しては反応媒体としての水蒸気が供給されており、熱分解ガスがヒートキャリアにより加熱されつつ水蒸気と混合接触することにより、次式の改質反応が起こり、水素含有濃度の高いガスが発生する。改質器3内の温度は適宜定めることができるが、改質を十分かつ確実に行うために950℃以上とするのが好ましい。
CnHm + nH2O → nCO + (m/2+n)H2 …(1)
CO + H2O → H2 + CO2 …(2)
【0034】
水蒸気は適宜の方法で供給することができるが、図示例では、貯水タンク19の水を給水ポンプ19pにより汲みだし、廃熱ボイラ(間接接触式熱交換器)7において、改質器3から別途供給される生成ガスの熱を利用して蒸気とした後、改質器3の下部から供給するようにしている。また、改質器3への水蒸気供給とともに又はこれに代えて、改質器3における改質反応に利用する水蒸気を図示するように熱分解器4を介して間接的に供給することもできる。
【0035】
一方、分離機5では、熱分解器4から供給される混合物がチャーとヒートキャリアとに分離される。分離されたチャーはスクリューコンベア等の移送装置1iにより熱風炉等の熱風生成装置1に供給され、ヒートキャリアは移送装置6により予熱器2に戻される。移送装置6から予熱器2への供給管路6xにはバルブ6bが設けられるとともに、その下流側にダンパ6dが二段に設けられており、前者によりヒートキャリア等の固形分の通過を停止させる等の制御が可能になっており、後者により気体分の通過を停止させる等の制御が可能になっている。ヒートキャリアの循環中は、このバルブ6bが所定の間隔で開閉を繰り返すとともに、上下のダンパ6dが開閉動作を反対に行うことにより、気体の通過を遮断しつつ、ヒートキャリア等の固形分が断続的に定量通過するようになっている。
【0036】
熱風生成装置1はバーナーを備えており、このバーナーを介して炉内に空気が供給されることによりチャーが燃焼し、熱風(高温排ガス)が生成される。熱風生成装置1の運転においては、LPG等の気体補助燃料やBDF等の液体燃料を、連続的に又は運転開始時等の必要時にバーナーに供給し、燃焼させることができる。熱風生成装置1で生成された熱風は予熱器2に供給される。また、熱風生成装置1でチャーの燃焼により生成される灰は、熱風生成装置1内で回収され、灰貯留部1pに排出される。
【0037】
予熱器2では、熱風生成装置1から供給される熱風が、予熱器2内を堆積状態で通過するヒートキャリア間に通され、ヒートキャリアと直接接触することによりヒートキャリアが加熱される。予熱器2で加熱されたヒートキャリアは、供給管路2xを介して改質器3に供給される。この供給管路2xにはバルブ2bが設けられるとともに、その下流側にダンパ2dが二段に設けられており、前者によりヒートキャリア等の固形分の通過を停止させる等の制御が可能になっており、後者により気体分の通過を停止させる等の制御が可能になっている。ヒートキャリアの循環中は、このバルブ2bが所定の間隔で開閉を繰り返すとともに、上下のダンパ2dが開閉動作を反対に行うことにより、気体の通過を遮断しつつ、ヒートキャリア等の固形分が断続的に定量通過するようになっている。
【0038】
予熱器2でヒートキャリアの加熱利用された熱風は、誘引送風機15により予熱器2から排気され、サイクロン等の分離手段8を介して排気に混入する灰・ダストDを取り除かれた後、好適には空気加熱器((間接接触式熱交換器))9において熱風生成装置1へ供給する空気の加熱に利用した後、大気に放出される。なお、空気加熱器9における予熱に先立って、予熱器(間接接触式の熱交換器)9iを利用して水蒸気(前述の方法により製造し、供給できる)と熱交換し、予熱しておくとより好ましい。
【0039】
改質器3で生成された水素高含有の生成ガスは、図示例では、誘引送風機11により改質器3からガス処理・利用設備に送出され、廃熱ボイラ7で250℃程度まで冷却され、続いて湿式スクラバー10に供給されてタールが除去されるとともに40℃程度まで冷却された後、ガスホルダ12に貯留されるようになっている。なお、図示例の湿式スクラバー10は、上部から散水した洗浄水を下部から排出し、冷却器(間接接触式の熱交換器)10cで冷却した後、再度上部から散水するものであり、符号10pは洗浄水循環ポンプを示しており、符号10dは冷却器に対する冷却水の循環を行う冷却水循環ポンプを示しており、符号10tは冷却水を水により冷却する冷却塔を示しており、符号18は洗浄水を排水処理する排水処理装置を示している。
【0040】
生成されるガスの利用形態は特に限定されるものではないが、図示するように、ガスエンジン発電機13を用いて電力に変換するのも一つの好ましい形態である。また、生成ガスの一部を、熱風生成装置1の補助燃料として使用するのも好ましい形態である。
【0041】
他方、ヒートキャリアの循環サイクルは、各器間に設けられたセグメントバルブ2b,3b,4b,6bの開閉頻度(間隔)を操作することにより調節が可能であり、通常の場合、12〜8時間がサイクルタイムとして適切である。この1サイクルは、ヒートキャリア総量を時間当たりの循環量で割ることで求めることができる。
【0042】
また、予熱器2内温度、予熱器2からの排ガス温度、改質器3内温度、熱分解器4内温度は、それぞれ温度計2t,2x,3t,4tにより監視することができる。ここで、予熱器2内温度とは、図示位置からも分るとおり、予熱器2内の下部の温度(つまり予熱が完了して改質器3に向けて排出される前のヒートキャリアの温度に等しい)を意味する。同様に、図示位置からも分るとおり、改質器3内温度とは、改質器3内の下部の温度(つまり熱分解器4に向けて排出される前のヒートキャリアの温度に等しい)を意味し、熱分解器4内温度とは熱分解器4内の下部の温度(つまり分離機に向けて排出される前のヒートキャリアの温度に等しい)を意味する。
【0043】
さらに、改質器3の内圧、及び熱分解器4の内圧は、各器の上部に設けられた圧力計3p,4pによりそれぞれ計測することができる。
【0044】
(予熱器)
予熱器2は特に限定されないが、例えば図2及び図3に示されるような灰除去手段を有するものが好適である。すなわち、図2及び図3に示される予熱器2は、上下方向に沿う円筒状の上側ヒートキャリア通路20と、この上側ヒートキャリア通路20の下方に連続する漏斗状(逆さ裁頭円錐台状。下側に向かうにつれて径が小さくなる形状であればよい。)の下側ヒートキャリア通路21とを有し、上側ヒートキャリア通路20上面の中央部に供給口20i、下側ヒートキャリア通路21下端に排出口21x、上側ヒートキャリア通路20の側面に排気口20x及び下側ヒートキャリア通路21の側面に熱風吹き出し口22nをそれぞれ有しているものである。
【0045】
図示例では、下側ヒートキャリア通路21は、パンチングメタル等のように多数の透過孔22nが全面に形成された漏斗状部材22により形成されており、この漏斗状部材22の外側を取り囲むように環状スペース23が形成され、この環状スペース23の側面に外部からの熱風供給口24が連通されており、漏斗状部材22の透過孔22nが熱風吹き出し口となり、環状スペース23が熱風吹き出し口22nの全てに連通する分配供給路となる。漏斗状部材22はニッケル合金等の耐熱金属又はアルミナセラミックス等の耐熱セラミックスにより、また、上側ヒートキャリア通路20及び環状スペース23の周壁はアルミナセラミックス等の耐熱セラミクス材により形成することができ、予熱器2の外面は鉄皮により形成することができる。
【0046】
予熱器2では、上側及び下側ヒートキャリア通路20,21において、ヒートキャリアがある程度の堆積状態を維持しながら下降し、下側ヒートキャリア通路21を通過する過程で各熱風吹き出し口22nから、つまり周方向の複数個所から吹き出される熱風と接触して加熱される。このように、下側ヒートキャリア通路21を通るヒートキャリア群に対して、周方向の複数個所から熱風が供給されると、ヒートキャリアの通過数が下側ヒートキャリア通路21の径の減少に伴って減少することも相まって、熱風生成装置1からの高温熱風がより多くのヒートキャリアに対して直接又はそれに近い状態で接触されるため、ヒートキャリアの加熱効率に優れるようになる。
【0047】
そして特徴的には、漏斗状部材22の透過孔22nの寸法は、灰・ダストDは通過するがヒートキャリアは通過しないように設定されるとともに、分配供給路である環状スペース23から外部に連通する灰・ダストDの抜出口25が形成されている。漏斗状部材22の透過孔22nの形状は、図示例のような円状の他、楕円状、三角形状等、適宜の形状とすることができる。透過孔22nの寸法は、ヒートキャリアの寸法に応じて適宜定めることができ、例えば、透過孔22nの直径(円孔の場合は直径を意味し、その他の形状(楕円孔等)の場合は短径(直径のうち最も短いものを意味する)が、ヒートキャリアの粒径未満、特に70%以下とすることができる。また、灰・ダストDの抜出口の下端は環状スペース23の下端に合わせるのが好ましい。さらに、抜出口25は環状スペース23の側面から水平方向ないし下降気味に延在しているのが好ましい。
【0048】
このような抜出口25を有することにより、予熱器2内に堆積する灰・ダストDを抜出口25を介して除去し、熱風吹き出し口22n及び分配供給路23の閉塞を防止できるようになる。よって、予熱器2におけるヒートキャリアの加熱効率の経時的低下を防止でき、生成ガスの水素濃度が低下するといった事態を防止できるようになる。
【0049】
なお、抜出口25からの灰・ダストDの取り出しは、灰掻き等の機械的手段により行ってもよいが、作業が煩雑となるため、図示例のように、分配供給路23に連通する吹き込み口26を設け、ここから圧縮空気(圧縮空気に代えて不活性ガスを用いても良い。以下同じ。)を吹き込み、灰・ダストDを圧縮空気に乗せて抜出口25から排出するように構成すると、炉内温度に関係なく灰・ダストDの抜出を実行でき、また自動的に定期実行することもできるため好ましい。吹き込み口26の数、位置及び吹き込み方向は適宜定めることができるが、図示例のように、環状の分配供給路23における抜出口25に対して反対側の位置の側面に設けるのが好ましい。特に、吹き込み口26を周方向に複数(図示例では2つ)並設し、図中に矢印で示すように、一方の吹き込み口26からの圧縮空気を環状の分配供給路23の一方側から、また、他方の吹き込み口26からの圧縮空気を環状の分配供給路23の他方側から、それぞれ抜出口25に向けて回りこませるようにすると、分配供給路23内の灰・ダストDを円滑に抜出口25へ送り出すことができるため好ましい。予熱器2における圧縮空気による灰の排出はガス化運転を行っていないときに実施する他、ガス化運転中にも実施できる。圧縮空気による灰の排出を行う場合は、予熱器2内温度を低下させないために、供給する圧縮空気を、例えば熱風生成装置1への供給空気と同様の廃熱との熱交換等、適宜の加熱手段により予め改質器3内温度又は近傍まで加熱してから供給することができる。
【0050】
(改質器)
灰はヒートキャリアに伴って予熱器2、改質器3、熱分解器4の順に移動する過程で、改質器3内や改質器3と熱分解器4との間の経路(例えば、バルブ等)にも蓄積し、ヒートキャリアの循環阻害や、改質器3と熱分解器4との間の経路の閉塞による熱分解器4内圧の異常上昇等の問題を発生させる。この問題は、前述の予熱器2における灰の除去によって軽減されるが、さらに改質器3においても灰除去手段を設けると、より好ましい。
【0051】
図4及び図5は、予熱器2と同様の灰除去手段を有する改質器3の一例を示している。すなわち、この改質器3は、上下方向に沿う円筒状の上側ヒートキャリア通路30と、この上側ヒートキャリア通路30の下方に連続する漏斗状(逆さ裁頭円錐台状。下側に向かうにつれて径が小さくなる形状であればよい。)の下側ヒートキャリア通路31とを有し、上側ヒートキャリア通路30上面の中央部に供給口30i、下側ヒートキャリア通路31下端にガス導入兼ヒートキャリア排出口31x、上側ヒートキャリア通路30の側面に改質ガス排出口30x、及び下側ヒートキャリア通路31下端部に連通する水蒸気注入口37をそれぞれ有しているものである。
【0052】
改質器3では、予熱器2で十分に加熱されたヒートキャリアが上部供給口30iから供給され、ある程度の堆積状態を維持しながら上側及び下側ヒートキャリア通路30,31を下降しつつ、改質器3内を改質反応温度に維持する。この温度条件下で、改質器3内に導入される熱分解ガス及び水蒸気が前述の改質反応を起こし、水素高含有の改質ガスが生成し、改質ガス排出口30xを介してガス処理・利用設備へ供給される。
【0053】
特徴的には、図示例の改質器3では、下側ヒートキャリア通路31は、パンチングメタル等のように多数の透過孔32nが全面に形成された漏斗状部材32により形成されている。漏斗状部材32の透過孔32nの寸法は、灰・ダストDは通過するがヒートキャリアは通過しないように設定されるとともに、漏斗状部材32の外側を取り囲むように環状スペース33が形成され、この環状スペース33の側面から外部に連通する灰・ダストの抜出口35が形成されている。漏斗状部材32の透過孔32nは灰・ダスト取り込み口となり、環状スペース33が灰・ダスト取り込み口32nの全てに連通する灰・ダスト落としスペースとなる。このような灰・ダスト取り込み口32n、灰・ダスト落としスペース33、及び抜出口35を有することにより、予熱器2で除去仕切れない灰・ダストDを、改質器3で除去することができ、改質器3内や改質器3と熱分解器4との間の経路における灰・ダストDの蓄積を効果的に防止できる。
【0054】
漏斗状部材32はニッケル合金等の耐熱金属又はアルミナセラミックス等の耐熱セラミックスにより、また、上側ヒートキャリア通路30及び環状スペース33の周壁は耐熱セラミックス材により形成することができ、改質器3の外面は鉄皮により形成することができる。
【0055】
漏斗状部材32の透過孔32nの形状や寸法等、灰・ダストの抜出口35の位置や向き等は、予熱器2の場合と同様の改変が可能である。また、予熱器2の場合と同様に、抜出口35からの灰・ダストの取り出しを容易にするために、灰・ダスト落としスペース33に連通する吹き込み口36を設け、灰・ダスト落としスペース33に圧縮空気(圧縮空気に代えて不活性ガスを用いても良い。以下同じ。)を吹き込んで抜出口35から排出するように構成することもできる。改質器3における圧縮空気による灰・ダストDの排出はガス化運転を行っていないときに実施する。灰・ダストDの排出を行う場合に、改質器3内温度を低下させないために、供給する圧縮空気を、例えば熱風生成装置1への供給空気と同様の廃熱との熱交換等、適宜の加熱手段により予め改質器3内温度又は近傍まで加熱してから供給することができる。圧縮空気吹き込み口36の位置や向き等は、予熱器2の場合と同様の改変が可能である。図示例では、予熱器2と同様の吹き込み口配置に対してさらに両側の吹き込み口36間の中央に吹き込み口36を追加している。
【0056】
(分離機)
分離機5は特に限定されるものではなく、回転篩、振動篩等を好適に用いることができる。このようなスクリーンによる分離機5を用いる場合、熱分解後のチャーの寸法がヒートキャリアより十分に小さければ、ヒートキャリアより小さいチャーのみを通すスクリーンを用いることにより、ヒートキャリアとチャーとを確実に分離できる。しかし、現実には、有機物質原料の粒径を破砕等により揃えるとしても限界があり、ヒートキャリアより大きなチャーの発生を避けえず、この大きな塊状のチャーがヒートキャリアとともに予熱器2に送られ、予熱器2内で燃焼して灰が発生してしまう。しかも、このようにして発生した灰は、予熱器2の排気に伴い排出されるよりも、予熱器2内、改質器3内等、ヒートキャリアの循環経路内に堆積し易い。
【0057】
そこで、図8に示すように、分離機5として、ヒートキャリアと等しい粒径を有する第1固形物(主にヒートキャリア)、第1固形物より粒径が小さい第2固形物(主に小さいチャー)、並びに第1固形物より粒径が大きい第3固形物(主に大きいチャー)の三種類に分離するものを用い、分離機5で分離した第1固形物、第2固形物及び第3固形物のうち、第1固形物は移送装置6により予熱器2に返送し、第2固形物及び第3固形物は熱風炉1に供給するように構成するのも好ましい形態である。
【0058】
分離機5において三種類の粒径の固形物に分離し、ヒートキャリアより大きなチャーを、ヒートキャリアより小さなチャーとともに熱風炉生成装置1に送るように構成し、ヒートキャリア循環経路内の灰・ダストDの堆積を抑制するのは好ましい。なお、現実には厳密な分離は困難であり、ある程度のチャーはヒートキャリアとともに予熱器2に供給され、予熱器2内で灰を発生させることになるため、前述の灰・ダストDの除去は極めて有効な手段である。
【0059】
分離機5の形態は特に限定されるものではないが、例えば図示のような、第1固形物及び第2固形物は通すが第3固形物は通さない円筒状内側スクリーン50と、第2固形物は通すが第1固形物及び第3固形物は通さない、内側スクリーン50より大径の円筒状外側スクリーン51とを有する、2段スクリーンタイプの回転篩5を用いることができる。この回転篩5は、各スクリーン50,51内に供給された分離対象物が、各スクリーン50,51の軸心が水平方向に対して僅かに傾斜していること(これとともに又はこれに代えて、スクリーン50,51の内周面に螺旋方向に沿う羽根を突出させ、この羽根がスクリーン50,51の回転に伴い回転することにより、スクリューコンベアのように分離対象物が移送される構成としても良い。)、並びに各スクリーン50,51が軸心周りに回転されることにより、各スクリーン50,51の回転方向及び軸心の傾斜方向下側に移動しつつ、各スクリーン50,51を通過するものと、通過しないものとに分離されることを基本原理とするものである。そして、本例では、内側スクリーン50の一端側に、分離対象であるチャー及びヒートキャリアを供給すると、そのうち第1固形物及び第2固形物は内側スクリーン50を通過して外側スクリーン51内に供給され、第3固形物は内側スクリーン50を通過せずに内側スクリーン50の他端側に移動し、内側スクリーン50の他端側開口より回収され、外側スクリーン51内に供給された第1固形物及び第2固形物のうち、第2固形物は外側スクリーン51を通過して回収され、第1固形物は外側スクリーン51を通過せずに外側スクリーン51の他端側に移動し、外側スクリーン51の他端側開口より回収されるようになっている。
【0060】
(熱分解器)
ヒートキャリアより大きなチャーは、分離機5において三種類の粒径に分離することでも解決できるが、分離機5のコストや設置面積が嵩むという問題点がある。そこで、図6及び図7に示すように、熱分解器4におけるヒートキャリアの排出口41xは、ヒートキャリアと等しい粒径を有する第1固形物、並びに第1固形物より粒径が小さい第2固形物は通すが、第1固形物より粒径が大きい第3固形物は通さないスクリーン42で覆うのも好ましい形態である。より詳細には、図示例の熱分解器4は、上下方向に沿う円筒状の上側通路40と、この上側通路40の下方に連続する漏斗状(逆さ裁頭円錐台状。下側に向かうにつれて径が小さくなる形状であればよい。)の下側通路41とを有し、上側通路40上面の中央部に供給口40i、下側通路41下端に、スクリーン42で覆われた排出口41x、下側通路41の側面に水蒸気吹き込み口44をそれぞれ有しているものである。
【0061】
このような排出口スクリーン42を設けることにより、ヒートキャリアより大きなチャーをスクリーン42で止めて熱分解器4から排出させず、ヒートキャリア及びヒートキャリアより小さなチャーのみ、スクリーン42を通過させることができ、分離機5によらずに(つまり、ヒートキャリアより小さいチャーのみを通す篩装置のように簡素な分離機5を用いても)、ヒートキャリアより大きなチャーが予熱器2に送られるのを防止できる。しかも、スクリーン42で止められたヒートキャリアより大きなチャーは、熱及びヒートキャリアの移動による外力を受けて砕けていくため、最終的にはヒートキャリア以下の寸法となってスクリーン42を通過するため、熱分解器4の排出口が閉塞することもない。
【0062】
排出口スクリーン42の形状等は適宜定めることができ、平坦なパンチングメタルであっても良いが、図9(a)に示すように、排出口41x側に向かうにつれて直径が拡大する傘状(図示例では円錐状となっているが角錐状、ドーム状等にすることもできる)体の側面に、排出口41x側に向かうにつれて開口幅が拡大する通過孔42n(図示例では二等辺三角形状となっているが滴状等の適宜の形状とすることもできる)を周方向に所定の間隔で設けたものが好適である。このような傘状スクリーン42においては、熱分解器4内を下降する固形物がスクリーン42の側面の通過孔42nにスムーズに移動することができる。また、このスクリーン42の側面の通過孔42nは、排出口側に向かうにつれて開口幅が拡大する形状となっているため、スクリーン42側面に沿って接触しながら下降する固形物は、通過孔42nに引っ掛かり難く、円滑な分離が可能となる。
【0063】
この他にも、例えば図9(b)に示すように、通過孔を有しない上面と、上下方向に沿って所定幅で延在する通過孔42nが周方向に間隔を空けて形成された周面と、排出口41xに連通する開口底面とを備えた円筒状のスクリーン42を用いることもできる。
【0064】
他方、排出口スクリーン42を設ける場合、分離機5としては、第1固形物及び第2固形物の二種類に分離するものを用い、分離機5で分離した第1固形物及び第2固形物のうち、第1固形物は移送装置6により予熱器2に返送し、第2固形物は熱風生成装置1に供給するように構成すると、設備がより簡素となるため好ましい。しかしもちろん、前述の三種類に分離するものを用いても、多重分離による分離性能向上効果はもたらされる。この場合における分離機5の形態は特に限定されるものではないが、例えば図10に示されるような、第2固形物は通すが第1固形物は通さない円筒状スクリーン52を有する回転篩5を用いることができる。この回転篩5において、スクリーン52の一端側に、分離対象であるチャー及びヒートキャリアを供給すると、スクリーン52の軸心が水平方向に対して僅かに傾斜していること、(これとともに又はこれに代えて、スクリーン50,51の内周面に螺旋方向に沿う羽根を突出させ、この羽根がスクリーン50,51の回転に伴い回転することにより、スクリューコンベアのように分離対象物が移送される構成としても良い。)、並びにスクリーン52が軸心周りに回転されることにより、第2固形物はスクリーン52を通過して回収され、第1固形物は外側スクリーン52を通過せずに外側スクリーン52の他端側に移動し、外側スクリーン52の他端側開口より回収されるようになっている。
【0065】
(差圧解消)
本発明では、差圧解消のための技術として、主に(a)空運転による差圧解消、(b)灰・ダスト閉塞防止技術、(c)強制灰・ダスト除去による差圧解消、が提案される。これらは全て又は2つの技術を組み合わせて適用することができる。以下、順に説明する。
【0066】
(a)空運転による差圧解消
定常運転において、熱分解器4の内圧を圧力計4pにより監視し、この内圧が所定の定常運転許容範囲を超えたときに、ヒートキャリアの循環及び熱風生成装置1から予熱器2への熱風供給を継続したまま、有機物質原料の供給を停止する、差圧解消運転(空運転)を行う。この際、生成ガス誘引送風機11、水蒸気注入b、その他はそのまま継続すると、復帰を迅速に行うことができるため好ましいが、不必要な機器は停止することもできる。差圧解消運転は、圧力計4pによる計測値が所定の定常運転許容範囲を超えたときに、自動的に開始するようにしても良いし、警告音や警告表示が出るように構成し、この警告に基づいて作業員が原料供給を停止するようにしても良い。また、熱分解器4の内圧だけでなく、改質器3の内圧も圧力計3pによる計測し、両者の差が所定値を超えたときに、熱分解器4の内圧が所定の定常運転許容範囲を超えたものとして差圧解消運転を開始するようにしても良い。
【0067】
熱分解器4の内圧の定常運転許容範囲は適宜定めることができるが、例えば熱分解器4が改質器3を介して誘引送風機11により吸引されている場合、熱分解器4内は−0.2kPa程度の負圧になるため、定常運転許容範囲は例えば0.7kPa以下とすることができる。
【0068】
このような差圧解消運転を行うと、熱分解ガスの発生停止により熱分解器4の内圧上昇が停止するとともに、移動するヒートキャリアが通気性ヒートキャリア管路3eの通気孔3fや灰・ダストDに接触し、その衝撃力や押し出し力により、通気孔3f内の灰・ダストDは通気孔3f内から押し出されて剥離・脱落し、通気孔を介した改質器への通気性が回復する。その結果、改質器3に対する差圧が自然に解消される。
【0069】
そして、この差圧解消運転において、熱分解器4の内圧を圧力計4pにより監視し、この内圧が所定の定常運転許容範囲に戻ったときに、有機物質原料の供給を再開して差圧解消運転を終了することで、定常運転に復帰することができる。この差圧解消運転中の熱分解器4の圧力監視においても、自動的に終了して定常運転に復帰するようにしたり、熱分解器圧力異常に伴う警告音や警告表示が消えるように構成し、これに基づいて作業員が原料供給を再開するようにしても良く、さらに、熱分解器4の内圧だけでなく、改質器3の内圧も圧力計3pにより監視し、両者の差が所定値以下又は各値が定常運転許容範囲であるときに、熱分解器4の内圧が所定の定常運転許容範囲に戻ったものとして差圧解消運転を終了するようにしても良い。差圧解消運転の時間はシステムの規模やヒートキャリアのサイクルタイムによるが、早くて数十分程度で差圧が解消し、分解清掃と比較して著しく短い時間で対処できることが判明している。
【0070】
(b)灰・ダスト閉塞防止技術
改質器3と熱分解器4とを繋ぐ接続管路3x内の通気性ヒートキャリア管路3eにおいて、通気孔3fが図14(a)に示すように管路の内側から外側まで同じ径であると、通気孔に入る灰・ダストDの層が成長し易く、また詰まった灰・ダストDが抜け難い。そこで、図14(b)に示すように、通気孔3fの形状を通気性ヒートキャリア管路3eの内側から外側に向かうにつれて径が拡大するテーパー状にすることも提案する。これにより、灰・ダストDの付着が始まっても閉塞には至り難くなる。つまり、通気孔3fは、通気性ヒートキャリア管路3eの内面に開口しており、移動するヒートキャリアに接触する部分であるため、その接触により、灰・ダストDは通気孔3fに押し込まれていく。この際、通気孔3fが上述のように外側に向かうにつれて径が拡大するテーパー形状をなしていると、通気孔3f内の灰・ダストDは通気孔から押し出されて剥離・脱落し易くなり、通3f気孔内で閉塞まで成長するといった事態は発生し難くなる。
【0071】
(c)強制灰・ダスト除去による差圧解消
上述の(a)及び(b)の技術は、通気孔3fを閉塞する灰・ダストDの自然除去力を利用し、また補助するものであり、差圧解消にある程度の時間を要する。そこで、熱分解器4内に水蒸気、窒素等の不活性ガスNを加圧供給するガス吹込み口4gを設けるとともに、シールポット60へのガス抜出管61にガス抜出開閉弁62を設け、熱分解器圧力計4pによる計測結果が前述の定常運転許容範囲を超えたときに、ガス抜出開閉弁62を閉じた状態で、ガス吹込み口4gを介して熱分解器4内に不活性ガスを瞬間的に加圧供給する操作を一回又は複数回行うことも提案される。この操作により、熱分解器4の瞬間的内圧上昇が発生し、その衝撃が閉塞灰・ダストDに効果的に伝わり、通気孔3f内の閉塞灰・ダストDを改質器3側又は熱分解器4側に吹き飛ばすことができる。これに対して、熱分解器4からのガス抜出管61をシールポット60に連通させたまま、単に不活性ガスを熱分解機4内に供給してもシールポット60がその圧力変動を吸収してしまい、閉塞灰・ダストDに衝撃を効率良く伝えることができない。また、熱分解器4内に水素等の引火性ガスが存在していても、不活性ガスを供給するのであれば安全性は確保できる。
【0072】
ガス吹込み手段は、専用のものを設けることもできるが、通常この手の火を扱うプラントには緊急停止時の火災防止装置として窒素ガス等の不活性ガスを10kPa程度の圧力で吹き込むガスパージが設置されているため、これを利用することができる。特に、窒素は、水蒸気と違い常温でガス状態であるため、熱分解器4に注入すれば、通気孔3fの閉塞物を吹き飛ばす有効・確実な圧力となる。図示例では、熱分解器4に改質用水蒸気を吹き込むための吹込み口4gを介して不活性ガスNを加圧供給するように構成している。
【0073】
上述の不活性ガス供給操作により、熱分解器4の内圧が前述の定常運転許容範囲に戻ったならば、ガス抜出開閉弁62を開くことにより定常状態に戻すことができる。この際、有機物質原料の供給を停止していた場合は、有機物質原料の供給も再開する。
【0074】
これらの操作の開始及び終了の指標となる熱分解器4の圧力監視は、前述の差圧解消運転の開始及び終了の場合と同様に行うことができる。
【0075】
他方、ガス抜出開閉弁62を閉じた後、上述の不活性ガス供給操作に先立って、熱分解器4内へのガス改質用水蒸気の注入を停止せずに継続しておくのが望ましい。これにより、通気孔3fに対しては、熱分解器4内へのガス改質用水蒸気の注入圧と、生成ガスの誘引送風機11による吸引力が作用し、通気孔3fに詰まった灰・ダストDが改質器3側へ押し出され易くなる。これにより、熱分解器4の内圧が前述の定常運転許容範囲に戻ったならば、不活性ガス供給操作を行わずに、ガス抜出開閉弁62を開くことにより定常状態に戻すことができる。この際、有機物質原料の供給を停止していた場合は、有機物質原料の供給も再開する。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、木質バイオマス等の有機物質のガス化に利用できるものである。
【符号の説明】
【0077】
1…熱風生成装置、2…予熱器、3…改質器、4…熱分解器、5…分離機、6…移送装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質バイオマス等の有機物質のガス化システム及びその熱分解器差圧解消方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の代替及び地球温暖化防止を目的とした新エネルギー供給システムとして、間伐材等の木質バイオマスをガス化し、このガスを燃料として熱や電気エネルギーを生成する技術が提案され、利用されている。
【0003】
このようなガス化システムとしては、種々のものが提案されているが、中でも特許文献1記載のヒートキャリア循環型システムは水素濃度の高いガスを生成できる点で優れたものの一つである。このガス化システムは、上から順に、予熱器、改質器、熱分解器、及び分離機を備えており、熱を運ぶための多数のヒートキャリア(熱担持媒体)が、予熱器で加熱されてから改質器、熱分解器及び分離機の順に通された後、バケットコンベア等の移送装置により再び予熱器に戻されるように構成されている。
【0004】
有機物質原料は、スクリューコンベア等の適宜の定量供給装置により、例えば改質器と熱分解器とを繋ぐ供給管路を介して、熱分解器の上部供給口へ連続的に定量供給される。熱分解器内に供給された有機物質は、予熱器から改質器を経て供給された、加熱されたヒートキャリアと接触することにより、チャー(固体の炭素含有残留物)と熱分解ガス(揮発性相)とに分離される。固形分であるチャーは、ヒートキャリアとともに分離機へ供給され、気体である熱分解ガスはヒートキャリアに対して向流接触しながら改質器へ上昇供給される。
【0005】
改質器には反応媒体としての水蒸気が供給されており、熱分解ガスがヒートキャリアにより加熱される条件下でこの水蒸気と混合接触すること及び950℃前後の高温環境下にあることにより、550℃前後で発生する熱分解ガスよりもはるかに水素含有濃度が高く、従って生成量も増大する。
【0006】
改質器で発生したガスは、改質器の上部に設けられた改質ガス排出口を介して、下流側に設けられた誘引送風機によりガス処理・利用設備に送出される。
【0007】
一方、分離機では、熱分解器から供給される混合物がチャーとヒートキャリアとに分離される。分離されたチャーは熱風炉等の熱風生成装置に供給され、ヒートキャリアは移送装置により予熱器に戻される。
【0008】
熱風生成装置では、チャーの燃焼により熱風(高温排ガス)が生成される。この熱風は予熱器に供給され、予熱器内を堆積状態で通過するヒートキャリア間に通され、ヒートキャリアと直接接触することによりヒートキャリアが加熱される。また、熱風生成装置ではチャーの燃焼により灰が生成される。この灰は、大部分は熱風生成装置1内で回収・除去されるが、一部は予熱器に供給され、予熱器の排気経路に設けられたサイクロン等の分離手段で取り除かれる。
【0009】
他方、改質器と熱分解器とを繋ぐ接続管路内には、改質器の下端排出口に取り付けられた漏斗状の通気性ヒートキャリア管路及びこの通気性ヒートキャリア管路の下端排出口の開閉を行うバルブが設けられている。ヒートキャリアの循環中は、このバルブが所定の間隔で開閉を繰り返し、ヒートキャリア等の固形分が断続的に定量通過するようになっている。また、バルブの開閉に関係なく、熱分解器で発生した熱分解ガスが通気性ヒートキャリア管路を透過して改質器に自由に上昇し、両機器間に内圧の差(差圧、圧力差)が殆ど発生しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許4264525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述のシステムにおいては、熱分解器と改質器との接続管路に設けられた通気性ヒートキャリア管路が灰・ダスト(灰以外の粉粒体)で閉塞し、本来改質器の内圧と熱分解器の内圧とは等圧になるべきところ、1kPaを超える差圧が生じるという問題点があった。
【0012】
熱分解器はガス発生装置であることから、何らかの異常により熱分解器の内圧が上昇したときのために、熱分解器の上端部はガス抜出管を介してシールポットに接続されており、熱分解器の内圧がシールポットの設定圧以上に上昇すると、熱分解器内のガスがシールポット内に抜き出され、煙突を介して大気放出されるようになっている。しかし、改質器と熱分解器との間に差圧が発生すると、(1)熱分解器で発生したガスが改質器に流入しなくなり、改質ガスが発生しなくなるのはもちろん、(2)差圧を放置してガス化を続けると、熱分解ガスをシールポットを介して大気放出せざるをえなくなる等、安全性の面で好ましくない事態にもつながるため、改善が望まれるものである。
【0013】
しかも、こうしたトラブルは、原料供給量がある量を超えた当たりから、数時間間隔で発生するため、その都度分解清掃をしていては、操業ロスは計り知れないものがある。
【0014】
当初、灰やヒートキャリアや耐火煉瓦から発生した灰・ダストは、熱風生成装置の下部に集積するものと考えられていた。しかし、現実には、熱風生成装置での灰・ダストの蓄積はあまり観察されず、バケットコンベアの下部に大量の蓄積がみられ、開炉点検では、予熱器の下部への灰・ダスト堆積、パンチングメタルの穴の灰・ダストによる閉塞が観察された。そこで、この灰・ダスト、チャーを採取し、また新品のヒートキャリアであるアルミナボール、耐火煉瓦、断熱材を、それぞれ蛍光エックス線で分析したところ、灰・ダストの成分については採取位置によりバラツキが出たものの、いずれも主成分はアルミニューム、カルシューム、鉄、珪素及びカリウムが1パーセント以上の構成物質であった。カリウムは、アルミナボールでは不検出、耐火煉瓦と断熱材で1パーセント以下の構成であることが判明し、チャーに20パーセント程度含まれていることが判明した。灰のもう一つの主成分であるカルシュームについては、耐火煉瓦に10パーセント程度含まれているために灰・ダストの生成由来を考える上では使えないことも分かった。灰・ダスト中に数パーセントのカリウムが含まれていることが確認され、灰・ダストは炉から出た粉と灰の混ざったものであることが確認できた。
【0015】
本発明が対象とするヒートキャリア循環型システムにおいては、ヒートキャリアの循環で熱供給をするため、これらを循環する際の摩擦・衝撃で粉が発生することはやむを得ないものである。また、ガス化原料として有機物が使用されるが、熱分解においては、間接ガス化のため、熱分解器や改質器での燃焼は無く、ガス化原料はガス・チャー・タールの3つに分解され、反応器の中での灰の発生は無いこととされている。しかし、開炉点検で得た灰・ダストの分析で灰の混入が認められ、このブルータワーというシステムにおいては、プラント内での灰の発生も避けられないと考えられる。
【0016】
そこで、本発明の主たる課題は、ヒートキャリア循環型システムの熱分解器において不可避的に発生する改質器に対する差圧を、分解清掃を要せずに解消可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決した本発明は、次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
熱を運ぶための多数のヒートキャリアと、このヒートキャリアを加熱するための予熱器と、熱分解ガスの水蒸気改質を行うための改質器と、有機物質原料を熱分解するための熱分解器と、熱風を生成する熱風生成装置とを備え、
前記ヒートキャリアを、前記予熱器、改質器、及び熱分解器の順に通した後、移送装置により再び予熱器に戻して循環させるとともに、前記熱分解器内に有機物質原料を供給し、前記改質器内に対して直接又は間接的に水蒸気を供給し、
前記熱分解器内では、前記有機物質原料を、加熱されたヒートキャリアと接触させることによりチャーと熱分解ガスとに熱分解し、熱分解ガスはヒートキャリアに対して向流接触しながら改質器へ供給し、
前記改質器では、前記熱分解ガスを前記ヒートキャリアにより加熱しつつ前記水蒸気と接触させることにより水素含有濃度を向上させたガスを生成し、
前記熱風生成装置では、熱風を生成して予熱器に供給し、
前記予熱器では、前記熱風生成装置から供給される熱風を、前記予熱器内を堆積状態で通過するヒートキャリア間に通して、ヒートキャリアと直接接触することによりヒートキャリアを加熱する、
ように構成した有機物質のガス化システムであって;
前記改質器と熱分解器とを繋ぐ接続管路と、
この接続管路内に接続管路内面から離間するように配置され、前記熱分解ガスは内外に通過するが前記ヒートキャリアは内外に通過しない通気孔が形成された管壁を有し、且つ前記改質器から排出されるヒートキャリアの導入口及び導入したヒートキャリアを接続管路内に放出する放出口を有する、通気性ヒートキャリア管路と、
このヒートキャリア管路からのヒートキャリアの放出の開閉を行うバルブと、
前記熱分解器の内圧を計測する熱分解器圧力計と、を備え、
前記熱分解器圧力計による計測結果が所定の定常運転許容範囲を超えたときに、前記ヒートキャリアの循環、及び前記熱風生成装置から前記予熱器への熱風供給を継続したまま、前記有機物質原料の供給を停止する、差圧解消運転を行い、
この差圧解消運転において、前記熱分解器圧力計による計測結果が前記所定の定常運転許容範囲に戻ったときに、前記有機物質原料の供給を再開して差圧解消運転を終了するように構成した、
ことを特徴とする有機物質のガス化システム。
【0018】
(作用効果)
熱分解器において不可避的に発生する圧力上昇(差圧)の原因は、熱分解器と改質器との接続管路に設けられた通気性ヒートキャリア管路の通気孔が灰・ダストで閉塞することにあるが、通気孔に詰まった灰・ダストは、指で突けばポロリと落ちるような軽いもので、硬く固まるものではない。よって、このような灰・ダストによる閉塞が発生したとき、原料供給を停止してヒートキャリアの予熱及び循環を継続すると、熱分解ガスの発生停止により熱分解器の内圧上昇が停止するとともに、移動するヒートキャリアが通気孔や灰・ダストに接触し、その衝撃力や押し出し力により、通気孔内の灰・ダストは通気孔内から押し出されて剥離・脱落し、通気孔を介した改質器への通気性が回復するため、改質器に対する差圧を分解清掃無して解消することができる。
【0019】
<請求項2記載の発明>
前記通気孔は、前記通気性ヒートキャリア管路の内側から外側に向かうにつれて径が拡大するテーパー状をなしている、請求項1記載の有機物質のガス化システム。
【0020】
(作用効果)
通気孔の形状が通気性ヒートキャリア管路の内側から外側まで同じ径であると、通気孔に入る灰・ダストの層が成長し易く、また詰まった灰・ダストが抜け難いが、上述のように、通気性ヒートキャリア管路の内側から外側に向かうにつれて径が拡大するテーパー状にすると、灰・ダスト付着が始まっても閉塞には至り難くなる。つまり、通気孔は、通気性ヒートキャリア管路の内面に開口しており、移動するヒートキャリアに接触する部分であるため、その接触により、灰・ダストは通気孔に押し込まれていく。この際、通気孔が上述のように外側に向かうにつれて径が拡大するテーパー形状をなしていると、通気孔内の灰・ダストは通気孔から押し出されて剥離・脱落し易くなり、通気孔内で閉塞まで成長するといった事態は発生し難くなる。
【0021】
<請求項3記載の発明>
シールポットと、一端が前記シールポット内の貯留液体中に所定深さまで挿入され、且つ他端が前記熱分解器内に連通するガス抜出管とを設けるとともに、このガス抜出管にガス抜出開閉弁を設け、
前記熱分解器内に不活性ガスを加圧供給するガス吹込み口を設け、
前記熱分解器圧力計による計測結果が所定の定常運転許容範囲を超えたときに、前記差圧解消運転に代えて又は前記差圧解消運転を行うとともに、前記ガス抜出開閉弁を閉じた状態で、前記ガス吹込み口を介して前記熱分解器内に不活性ガスを瞬間的に加圧供給する操作を一回又は複数回行い、
この操作により、前記熱分解器圧力計による計測結果が前記所定の定常運転許容範囲に戻ったときに、前記ガス抜出開閉弁を開くように構成した、
請求項1又は2記載の有機物質のガス化システム。
【0022】
(作用効果)
熱分解器内に不活性ガスを瞬間的に加圧供給する操作を行うと、その圧力上昇による衝撃が閉塞灰・ダストに十分に伝われば、通気孔内の閉塞灰・ダストを改質器側又は熱分解器側に吹き飛ばすことができる。しかし、前述のとおり、熱分解器はガス発生装置であることから、何らかの異常により熱分解器の内圧が上昇したときのために、熱分解器の上端部はガス抜出管を介してシールポットに接続されており、熱分解器の内圧がシールポットの設定圧以上に上昇すると、熱分解器内のガスがシールポット内に抜き出され、煙突を介して大気放出されるようになっている。よって、単に不活性ガスを熱分解機内に供給してもシールポットがその圧力変動を吸収してしまい、閉塞灰・ダストに衝撃を効率良く伝えることができない。そこで、上述のように、シールポットへのガス抜出管に開閉弁を設け、これを閉じた状態で不活性ガスを加圧供給することにより、その圧力上昇による衝撃が閉塞灰・ダストに効果的に伝わるようになり、閉塞灰・ダストの除去効果が高まるようになる。その結果、短時間での差圧解消を図ることができる。これに対して、前述の差圧解消運転や通気孔形状の改良技術は、通気孔を閉塞する灰・ダストの自然除去力を利用し、また補助するものであり、差圧解消にある程度の時間を要するものである。
【0023】
<請求項4記載の発明>
熱を運ぶための多数のヒートキャリアを、ヒートキャリアを加熱するための予熱器、熱分解ガスの水蒸気改質を行うための改質器、及び有機物質原料を熱分解するための熱分解器の順に通した後、移送装置により再び予熱器に戻して循環させるとともに、
前記熱分解器内に有機物質原料を供給し、且つ前記改質器内に対して直接又は間接的に水蒸気を供給し、
前記熱分解器内では、前記有機物質原料を、加熱されたヒートキャリアと接触させることによりチャーと熱分解ガスとに熱分解し、熱分解ガスはヒートキャリアに対して向流接触しながら改質器へ供給し、
前記改質器では、前記熱分解ガスを前記ヒートキャリアにより加熱しつつ前記水蒸気と接触させることにより水素含有濃度を向上させたガスを生成し、
熱風生成装置で、熱風を生成して予熱器に供給し、
前記予熱器では、前記熱風生成装置から供給される熱風を、前記予熱器内を堆積状態で通過するヒートキャリア間に通して、ヒートキャリアと直接接触することによりヒートキャリアを加熱する、
有機物質のガス化システムにおける熱分解器差圧解消方法であって;
前記改質器と熱分解器とを繋ぐ接続管路と、
この接続管路内に接続管路内面から離間するように配置され、前記熱分解ガスは内外に通過するが前記ヒートキャリアは内外に通過しない通気孔が形成された管壁を有し、且つ前記改質器から排出されるヒートキャリアの導入口及び導入したヒートキャリアを接続管路内に放出する放出口を有する、通気性ヒートキャリア管路と、
このヒートキャリア管路からのヒートキャリアの放出の開閉を行うバルブと、を備え付け、
前記熱分解器の内圧が所定の定常運転許容範囲を超えたときに、前記ヒートキャリアの循環、及び前記熱風生成装置から前記予熱器への熱風供給を継続したまま、前記有機物質原料の供給を停止する、差圧解消運転を行い、
この差圧解消運転において、前記熱分解器の内圧が前記所定の定常運転許容範囲に戻ったときに、前記有機物質原料の供給を再開して差圧解消運転を終了する、
有機物質のガス化システムにおける熱分解器差圧解消方法。
【0024】
(作用効果)
請求項1記載の発明と同様の作用効果が奏せられる。
【発明の効果】
【0025】
以上のとおり、本発明によれば、ヒートキャリア循環型システムの熱分解器において不可避的に発生する改質器に対する差圧を、分解清掃を要せずに解消できるようになる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ガス化システムのフロー図である。
【図2】予熱器の縦断面図である。
【図3】図1のA−A断面図及びB−B断面図である。
【図4】改質器の縦断面図である。
【図5】図4のC−C断面図及びD−D断面図である。
【図6】熱分解器の縦断面図である。
【図7】図6のE−E断面図である。
【図8】分離機の概略図である。
【図9】傘状スクリーンの概略図である。
【図10】分離機の概略図である。
【図11】予熱器の縦断面図である。
【図12】図11のF−F断面図である。
【図13】予熱器の破断斜視図である。
【図14】通気性ヒートキャリア管路の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら詳説する。
本発明に係るガス化システムは、例えば図1に示される機器構成で実施することができる。すなわち、図1に示されるガス化システムは、上から順に、予熱器2、改質器3、熱分解器4、及び分離機5を直列に備えており、熱を運ぶための多数のヒートキャリア(熱担持媒体)が、予熱器2で加熱されてから改質器3、熱分解器4及び分離機5の順に通された後、バケットコンベア等の移送装置6により再び予熱器2に戻されるように構成されているものである。
【0028】
ヒートキャリアとしては、粒径5〜20mm程度、好ましくは粒径8〜12mm程度の粒状物を用いることができ、特に球状のものが好適である。また、ヒートキャリアの素材としては、アルミナ等のように硬質で熱容量の大きなものが好適である。なお、粒径とは、JIS Z 8801−1「試験用ふるい−第 1 部:金属製網ふるい」に規定されるふるいを用い、JIS A 1102 「骨材のふるい分け試験方法」に準じて測定される、ふるい分け法による粒径(ふるいの目開き)を意味する(以下同じ)。
【0029】
有機物質原料は原料ホッパ17に貯留されており、スクリューコンベア14やロータリーフィーダ等の適宜の定量供給装置により切り出され、改質器3と熱分解器4とを繋ぐ接続管路3xを介して、熱分解器4の上部供給口へ連続的に定量供給される。この接続管路の詳細は図4に示されている。接続管路3xにおける原料供給位置よりも上方には、改質器3の下端排出口に取り付けられた漏斗状の通気性ヒートキャリア管路3e及びこの通気性ヒートキャリア管路3eの下端排出口の開閉を行うバルブ3b(図示例は弁体が矢印方向に回動することにより開閉するものである)が設けられており、ヒートキャリア等の固形分の通過を停止させる等の制御が可能になっているとともに、バルブ3bの開閉に関係なく、熱分解器4で発生した熱分解ガスが接続管路3xと通気性ヒートキャリア管路3eとの間のスペース、及び通気性ヒートキャリア管路3eの管壁を透過して改質器3に自由に上昇できるようになっている。ヒートキャリアの循環中は、このバルブ3bが所定の間隔で開閉を繰り返し、ヒートキャリア等の固形分が断続的に定量通過するようになっている。通気性ヒートキャリア管路は、熱分解ガスは通過するがヒートキャリアは通過しない寸法の通気孔3fが管壁の全体(一部でも良い)にわたり多数形成された漏斗状部材(円筒状でも良い)であり、例えばパンチングメタル等により形成することができる。
【0030】
有機物質原料としては、間伐材や剪定枝等の木質バイオマスが好適であるが、プラスチック等他の廃棄物等を用いることもできる。廃ラスチックの例としては、塩化ビニル、ポリウレタン、メタクリル樹脂、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等を挙げることができる。有機物質原料の形状は特に限定されないが、φ1〜50mm程度、L=1〜150mm程度、特にヒートキャリアの粒径の1.6倍以下程度の粒径に破砕、切削、ペレット化したものを好適に用いることができる。
【0031】
熱分解器4内に供給された有機物質は、予熱器2から改質器3を経て供給された、加熱されたヒートキャリアと混合状態で接触することにより、吸熱反応を起こし、チャー(固体の炭素含有残留物)と熱分解ガス(揮発性相)とに分離される。熱分解器4内の温度は適宜定めることができるが、500〜600℃程度にするのが好ましい。熱分解生成物のうち、固形分であるチャーは、ヒートキャリアとともに供給管路4xを介して分離機5へ供給され、気体である熱分解ガスはヒートキャリアに対して向流接触しながら改質器3へ上昇供給される。この供給管路4xにはバルブ4bが設けられるとともに、その下流側にダンパ4dが二段に設けられており、前者によりヒートキャリア等の固形分の通過を停止させる等の制御が可能になっており、後者により気体分の通過を停止させる等の制御が可能になっている。ヒートキャリアの循環中は、このバルブ4bが所定の間隔で開閉を繰り返すとともに、上下のダンパ4dが開閉動作を反対に行うことにより、気体の通過を遮断しつつ、ヒートキャリア等の固形分が断続的に定量通過するようになっている。
【0032】
また、熱分解器4に対して、シールポット60と、一端がシールポット60内の水等の貯留液体中に所定深さまで挿入され、且つ他端が熱分解器4内に連通するガス抜出管61とが設けられており、熱分解器4の内圧がシールポット60の設定圧(ガス抜出管の浸漬深さに応じて定まり、通常の場合4kPa程度とすることができる)以上に上昇すると、熱分解器4内のガスがシールポット60内に抜き出され、煙突を介して大気放出されるようになっている。
【0033】
改質器3に対しては反応媒体としての水蒸気が供給されており、熱分解ガスがヒートキャリアにより加熱されつつ水蒸気と混合接触することにより、次式の改質反応が起こり、水素含有濃度の高いガスが発生する。改質器3内の温度は適宜定めることができるが、改質を十分かつ確実に行うために950℃以上とするのが好ましい。
CnHm + nH2O → nCO + (m/2+n)H2 …(1)
CO + H2O → H2 + CO2 …(2)
【0034】
水蒸気は適宜の方法で供給することができるが、図示例では、貯水タンク19の水を給水ポンプ19pにより汲みだし、廃熱ボイラ(間接接触式熱交換器)7において、改質器3から別途供給される生成ガスの熱を利用して蒸気とした後、改質器3の下部から供給するようにしている。また、改質器3への水蒸気供給とともに又はこれに代えて、改質器3における改質反応に利用する水蒸気を図示するように熱分解器4を介して間接的に供給することもできる。
【0035】
一方、分離機5では、熱分解器4から供給される混合物がチャーとヒートキャリアとに分離される。分離されたチャーはスクリューコンベア等の移送装置1iにより熱風炉等の熱風生成装置1に供給され、ヒートキャリアは移送装置6により予熱器2に戻される。移送装置6から予熱器2への供給管路6xにはバルブ6bが設けられるとともに、その下流側にダンパ6dが二段に設けられており、前者によりヒートキャリア等の固形分の通過を停止させる等の制御が可能になっており、後者により気体分の通過を停止させる等の制御が可能になっている。ヒートキャリアの循環中は、このバルブ6bが所定の間隔で開閉を繰り返すとともに、上下のダンパ6dが開閉動作を反対に行うことにより、気体の通過を遮断しつつ、ヒートキャリア等の固形分が断続的に定量通過するようになっている。
【0036】
熱風生成装置1はバーナーを備えており、このバーナーを介して炉内に空気が供給されることによりチャーが燃焼し、熱風(高温排ガス)が生成される。熱風生成装置1の運転においては、LPG等の気体補助燃料やBDF等の液体燃料を、連続的に又は運転開始時等の必要時にバーナーに供給し、燃焼させることができる。熱風生成装置1で生成された熱風は予熱器2に供給される。また、熱風生成装置1でチャーの燃焼により生成される灰は、熱風生成装置1内で回収され、灰貯留部1pに排出される。
【0037】
予熱器2では、熱風生成装置1から供給される熱風が、予熱器2内を堆積状態で通過するヒートキャリア間に通され、ヒートキャリアと直接接触することによりヒートキャリアが加熱される。予熱器2で加熱されたヒートキャリアは、供給管路2xを介して改質器3に供給される。この供給管路2xにはバルブ2bが設けられるとともに、その下流側にダンパ2dが二段に設けられており、前者によりヒートキャリア等の固形分の通過を停止させる等の制御が可能になっており、後者により気体分の通過を停止させる等の制御が可能になっている。ヒートキャリアの循環中は、このバルブ2bが所定の間隔で開閉を繰り返すとともに、上下のダンパ2dが開閉動作を反対に行うことにより、気体の通過を遮断しつつ、ヒートキャリア等の固形分が断続的に定量通過するようになっている。
【0038】
予熱器2でヒートキャリアの加熱利用された熱風は、誘引送風機15により予熱器2から排気され、サイクロン等の分離手段8を介して排気に混入する灰・ダストDを取り除かれた後、好適には空気加熱器((間接接触式熱交換器))9において熱風生成装置1へ供給する空気の加熱に利用した後、大気に放出される。なお、空気加熱器9における予熱に先立って、予熱器(間接接触式の熱交換器)9iを利用して水蒸気(前述の方法により製造し、供給できる)と熱交換し、予熱しておくとより好ましい。
【0039】
改質器3で生成された水素高含有の生成ガスは、図示例では、誘引送風機11により改質器3からガス処理・利用設備に送出され、廃熱ボイラ7で250℃程度まで冷却され、続いて湿式スクラバー10に供給されてタールが除去されるとともに40℃程度まで冷却された後、ガスホルダ12に貯留されるようになっている。なお、図示例の湿式スクラバー10は、上部から散水した洗浄水を下部から排出し、冷却器(間接接触式の熱交換器)10cで冷却した後、再度上部から散水するものであり、符号10pは洗浄水循環ポンプを示しており、符号10dは冷却器に対する冷却水の循環を行う冷却水循環ポンプを示しており、符号10tは冷却水を水により冷却する冷却塔を示しており、符号18は洗浄水を排水処理する排水処理装置を示している。
【0040】
生成されるガスの利用形態は特に限定されるものではないが、図示するように、ガスエンジン発電機13を用いて電力に変換するのも一つの好ましい形態である。また、生成ガスの一部を、熱風生成装置1の補助燃料として使用するのも好ましい形態である。
【0041】
他方、ヒートキャリアの循環サイクルは、各器間に設けられたセグメントバルブ2b,3b,4b,6bの開閉頻度(間隔)を操作することにより調節が可能であり、通常の場合、12〜8時間がサイクルタイムとして適切である。この1サイクルは、ヒートキャリア総量を時間当たりの循環量で割ることで求めることができる。
【0042】
また、予熱器2内温度、予熱器2からの排ガス温度、改質器3内温度、熱分解器4内温度は、それぞれ温度計2t,2x,3t,4tにより監視することができる。ここで、予熱器2内温度とは、図示位置からも分るとおり、予熱器2内の下部の温度(つまり予熱が完了して改質器3に向けて排出される前のヒートキャリアの温度に等しい)を意味する。同様に、図示位置からも分るとおり、改質器3内温度とは、改質器3内の下部の温度(つまり熱分解器4に向けて排出される前のヒートキャリアの温度に等しい)を意味し、熱分解器4内温度とは熱分解器4内の下部の温度(つまり分離機に向けて排出される前のヒートキャリアの温度に等しい)を意味する。
【0043】
さらに、改質器3の内圧、及び熱分解器4の内圧は、各器の上部に設けられた圧力計3p,4pによりそれぞれ計測することができる。
【0044】
(予熱器)
予熱器2は特に限定されないが、例えば図2及び図3に示されるような灰除去手段を有するものが好適である。すなわち、図2及び図3に示される予熱器2は、上下方向に沿う円筒状の上側ヒートキャリア通路20と、この上側ヒートキャリア通路20の下方に連続する漏斗状(逆さ裁頭円錐台状。下側に向かうにつれて径が小さくなる形状であればよい。)の下側ヒートキャリア通路21とを有し、上側ヒートキャリア通路20上面の中央部に供給口20i、下側ヒートキャリア通路21下端に排出口21x、上側ヒートキャリア通路20の側面に排気口20x及び下側ヒートキャリア通路21の側面に熱風吹き出し口22nをそれぞれ有しているものである。
【0045】
図示例では、下側ヒートキャリア通路21は、パンチングメタル等のように多数の透過孔22nが全面に形成された漏斗状部材22により形成されており、この漏斗状部材22の外側を取り囲むように環状スペース23が形成され、この環状スペース23の側面に外部からの熱風供給口24が連通されており、漏斗状部材22の透過孔22nが熱風吹き出し口となり、環状スペース23が熱風吹き出し口22nの全てに連通する分配供給路となる。漏斗状部材22はニッケル合金等の耐熱金属又はアルミナセラミックス等の耐熱セラミックスにより、また、上側ヒートキャリア通路20及び環状スペース23の周壁はアルミナセラミックス等の耐熱セラミクス材により形成することができ、予熱器2の外面は鉄皮により形成することができる。
【0046】
予熱器2では、上側及び下側ヒートキャリア通路20,21において、ヒートキャリアがある程度の堆積状態を維持しながら下降し、下側ヒートキャリア通路21を通過する過程で各熱風吹き出し口22nから、つまり周方向の複数個所から吹き出される熱風と接触して加熱される。このように、下側ヒートキャリア通路21を通るヒートキャリア群に対して、周方向の複数個所から熱風が供給されると、ヒートキャリアの通過数が下側ヒートキャリア通路21の径の減少に伴って減少することも相まって、熱風生成装置1からの高温熱風がより多くのヒートキャリアに対して直接又はそれに近い状態で接触されるため、ヒートキャリアの加熱効率に優れるようになる。
【0047】
そして特徴的には、漏斗状部材22の透過孔22nの寸法は、灰・ダストDは通過するがヒートキャリアは通過しないように設定されるとともに、分配供給路である環状スペース23から外部に連通する灰・ダストDの抜出口25が形成されている。漏斗状部材22の透過孔22nの形状は、図示例のような円状の他、楕円状、三角形状等、適宜の形状とすることができる。透過孔22nの寸法は、ヒートキャリアの寸法に応じて適宜定めることができ、例えば、透過孔22nの直径(円孔の場合は直径を意味し、その他の形状(楕円孔等)の場合は短径(直径のうち最も短いものを意味する)が、ヒートキャリアの粒径未満、特に70%以下とすることができる。また、灰・ダストDの抜出口の下端は環状スペース23の下端に合わせるのが好ましい。さらに、抜出口25は環状スペース23の側面から水平方向ないし下降気味に延在しているのが好ましい。
【0048】
このような抜出口25を有することにより、予熱器2内に堆積する灰・ダストDを抜出口25を介して除去し、熱風吹き出し口22n及び分配供給路23の閉塞を防止できるようになる。よって、予熱器2におけるヒートキャリアの加熱効率の経時的低下を防止でき、生成ガスの水素濃度が低下するといった事態を防止できるようになる。
【0049】
なお、抜出口25からの灰・ダストDの取り出しは、灰掻き等の機械的手段により行ってもよいが、作業が煩雑となるため、図示例のように、分配供給路23に連通する吹き込み口26を設け、ここから圧縮空気(圧縮空気に代えて不活性ガスを用いても良い。以下同じ。)を吹き込み、灰・ダストDを圧縮空気に乗せて抜出口25から排出するように構成すると、炉内温度に関係なく灰・ダストDの抜出を実行でき、また自動的に定期実行することもできるため好ましい。吹き込み口26の数、位置及び吹き込み方向は適宜定めることができるが、図示例のように、環状の分配供給路23における抜出口25に対して反対側の位置の側面に設けるのが好ましい。特に、吹き込み口26を周方向に複数(図示例では2つ)並設し、図中に矢印で示すように、一方の吹き込み口26からの圧縮空気を環状の分配供給路23の一方側から、また、他方の吹き込み口26からの圧縮空気を環状の分配供給路23の他方側から、それぞれ抜出口25に向けて回りこませるようにすると、分配供給路23内の灰・ダストDを円滑に抜出口25へ送り出すことができるため好ましい。予熱器2における圧縮空気による灰の排出はガス化運転を行っていないときに実施する他、ガス化運転中にも実施できる。圧縮空気による灰の排出を行う場合は、予熱器2内温度を低下させないために、供給する圧縮空気を、例えば熱風生成装置1への供給空気と同様の廃熱との熱交換等、適宜の加熱手段により予め改質器3内温度又は近傍まで加熱してから供給することができる。
【0050】
(改質器)
灰はヒートキャリアに伴って予熱器2、改質器3、熱分解器4の順に移動する過程で、改質器3内や改質器3と熱分解器4との間の経路(例えば、バルブ等)にも蓄積し、ヒートキャリアの循環阻害や、改質器3と熱分解器4との間の経路の閉塞による熱分解器4内圧の異常上昇等の問題を発生させる。この問題は、前述の予熱器2における灰の除去によって軽減されるが、さらに改質器3においても灰除去手段を設けると、より好ましい。
【0051】
図4及び図5は、予熱器2と同様の灰除去手段を有する改質器3の一例を示している。すなわち、この改質器3は、上下方向に沿う円筒状の上側ヒートキャリア通路30と、この上側ヒートキャリア通路30の下方に連続する漏斗状(逆さ裁頭円錐台状。下側に向かうにつれて径が小さくなる形状であればよい。)の下側ヒートキャリア通路31とを有し、上側ヒートキャリア通路30上面の中央部に供給口30i、下側ヒートキャリア通路31下端にガス導入兼ヒートキャリア排出口31x、上側ヒートキャリア通路30の側面に改質ガス排出口30x、及び下側ヒートキャリア通路31下端部に連通する水蒸気注入口37をそれぞれ有しているものである。
【0052】
改質器3では、予熱器2で十分に加熱されたヒートキャリアが上部供給口30iから供給され、ある程度の堆積状態を維持しながら上側及び下側ヒートキャリア通路30,31を下降しつつ、改質器3内を改質反応温度に維持する。この温度条件下で、改質器3内に導入される熱分解ガス及び水蒸気が前述の改質反応を起こし、水素高含有の改質ガスが生成し、改質ガス排出口30xを介してガス処理・利用設備へ供給される。
【0053】
特徴的には、図示例の改質器3では、下側ヒートキャリア通路31は、パンチングメタル等のように多数の透過孔32nが全面に形成された漏斗状部材32により形成されている。漏斗状部材32の透過孔32nの寸法は、灰・ダストDは通過するがヒートキャリアは通過しないように設定されるとともに、漏斗状部材32の外側を取り囲むように環状スペース33が形成され、この環状スペース33の側面から外部に連通する灰・ダストの抜出口35が形成されている。漏斗状部材32の透過孔32nは灰・ダスト取り込み口となり、環状スペース33が灰・ダスト取り込み口32nの全てに連通する灰・ダスト落としスペースとなる。このような灰・ダスト取り込み口32n、灰・ダスト落としスペース33、及び抜出口35を有することにより、予熱器2で除去仕切れない灰・ダストDを、改質器3で除去することができ、改質器3内や改質器3と熱分解器4との間の経路における灰・ダストDの蓄積を効果的に防止できる。
【0054】
漏斗状部材32はニッケル合金等の耐熱金属又はアルミナセラミックス等の耐熱セラミックスにより、また、上側ヒートキャリア通路30及び環状スペース33の周壁は耐熱セラミックス材により形成することができ、改質器3の外面は鉄皮により形成することができる。
【0055】
漏斗状部材32の透過孔32nの形状や寸法等、灰・ダストの抜出口35の位置や向き等は、予熱器2の場合と同様の改変が可能である。また、予熱器2の場合と同様に、抜出口35からの灰・ダストの取り出しを容易にするために、灰・ダスト落としスペース33に連通する吹き込み口36を設け、灰・ダスト落としスペース33に圧縮空気(圧縮空気に代えて不活性ガスを用いても良い。以下同じ。)を吹き込んで抜出口35から排出するように構成することもできる。改質器3における圧縮空気による灰・ダストDの排出はガス化運転を行っていないときに実施する。灰・ダストDの排出を行う場合に、改質器3内温度を低下させないために、供給する圧縮空気を、例えば熱風生成装置1への供給空気と同様の廃熱との熱交換等、適宜の加熱手段により予め改質器3内温度又は近傍まで加熱してから供給することができる。圧縮空気吹き込み口36の位置や向き等は、予熱器2の場合と同様の改変が可能である。図示例では、予熱器2と同様の吹き込み口配置に対してさらに両側の吹き込み口36間の中央に吹き込み口36を追加している。
【0056】
(分離機)
分離機5は特に限定されるものではなく、回転篩、振動篩等を好適に用いることができる。このようなスクリーンによる分離機5を用いる場合、熱分解後のチャーの寸法がヒートキャリアより十分に小さければ、ヒートキャリアより小さいチャーのみを通すスクリーンを用いることにより、ヒートキャリアとチャーとを確実に分離できる。しかし、現実には、有機物質原料の粒径を破砕等により揃えるとしても限界があり、ヒートキャリアより大きなチャーの発生を避けえず、この大きな塊状のチャーがヒートキャリアとともに予熱器2に送られ、予熱器2内で燃焼して灰が発生してしまう。しかも、このようにして発生した灰は、予熱器2の排気に伴い排出されるよりも、予熱器2内、改質器3内等、ヒートキャリアの循環経路内に堆積し易い。
【0057】
そこで、図8に示すように、分離機5として、ヒートキャリアと等しい粒径を有する第1固形物(主にヒートキャリア)、第1固形物より粒径が小さい第2固形物(主に小さいチャー)、並びに第1固形物より粒径が大きい第3固形物(主に大きいチャー)の三種類に分離するものを用い、分離機5で分離した第1固形物、第2固形物及び第3固形物のうち、第1固形物は移送装置6により予熱器2に返送し、第2固形物及び第3固形物は熱風炉1に供給するように構成するのも好ましい形態である。
【0058】
分離機5において三種類の粒径の固形物に分離し、ヒートキャリアより大きなチャーを、ヒートキャリアより小さなチャーとともに熱風炉生成装置1に送るように構成し、ヒートキャリア循環経路内の灰・ダストDの堆積を抑制するのは好ましい。なお、現実には厳密な分離は困難であり、ある程度のチャーはヒートキャリアとともに予熱器2に供給され、予熱器2内で灰を発生させることになるため、前述の灰・ダストDの除去は極めて有効な手段である。
【0059】
分離機5の形態は特に限定されるものではないが、例えば図示のような、第1固形物及び第2固形物は通すが第3固形物は通さない円筒状内側スクリーン50と、第2固形物は通すが第1固形物及び第3固形物は通さない、内側スクリーン50より大径の円筒状外側スクリーン51とを有する、2段スクリーンタイプの回転篩5を用いることができる。この回転篩5は、各スクリーン50,51内に供給された分離対象物が、各スクリーン50,51の軸心が水平方向に対して僅かに傾斜していること(これとともに又はこれに代えて、スクリーン50,51の内周面に螺旋方向に沿う羽根を突出させ、この羽根がスクリーン50,51の回転に伴い回転することにより、スクリューコンベアのように分離対象物が移送される構成としても良い。)、並びに各スクリーン50,51が軸心周りに回転されることにより、各スクリーン50,51の回転方向及び軸心の傾斜方向下側に移動しつつ、各スクリーン50,51を通過するものと、通過しないものとに分離されることを基本原理とするものである。そして、本例では、内側スクリーン50の一端側に、分離対象であるチャー及びヒートキャリアを供給すると、そのうち第1固形物及び第2固形物は内側スクリーン50を通過して外側スクリーン51内に供給され、第3固形物は内側スクリーン50を通過せずに内側スクリーン50の他端側に移動し、内側スクリーン50の他端側開口より回収され、外側スクリーン51内に供給された第1固形物及び第2固形物のうち、第2固形物は外側スクリーン51を通過して回収され、第1固形物は外側スクリーン51を通過せずに外側スクリーン51の他端側に移動し、外側スクリーン51の他端側開口より回収されるようになっている。
【0060】
(熱分解器)
ヒートキャリアより大きなチャーは、分離機5において三種類の粒径に分離することでも解決できるが、分離機5のコストや設置面積が嵩むという問題点がある。そこで、図6及び図7に示すように、熱分解器4におけるヒートキャリアの排出口41xは、ヒートキャリアと等しい粒径を有する第1固形物、並びに第1固形物より粒径が小さい第2固形物は通すが、第1固形物より粒径が大きい第3固形物は通さないスクリーン42で覆うのも好ましい形態である。より詳細には、図示例の熱分解器4は、上下方向に沿う円筒状の上側通路40と、この上側通路40の下方に連続する漏斗状(逆さ裁頭円錐台状。下側に向かうにつれて径が小さくなる形状であればよい。)の下側通路41とを有し、上側通路40上面の中央部に供給口40i、下側通路41下端に、スクリーン42で覆われた排出口41x、下側通路41の側面に水蒸気吹き込み口44をそれぞれ有しているものである。
【0061】
このような排出口スクリーン42を設けることにより、ヒートキャリアより大きなチャーをスクリーン42で止めて熱分解器4から排出させず、ヒートキャリア及びヒートキャリアより小さなチャーのみ、スクリーン42を通過させることができ、分離機5によらずに(つまり、ヒートキャリアより小さいチャーのみを通す篩装置のように簡素な分離機5を用いても)、ヒートキャリアより大きなチャーが予熱器2に送られるのを防止できる。しかも、スクリーン42で止められたヒートキャリアより大きなチャーは、熱及びヒートキャリアの移動による外力を受けて砕けていくため、最終的にはヒートキャリア以下の寸法となってスクリーン42を通過するため、熱分解器4の排出口が閉塞することもない。
【0062】
排出口スクリーン42の形状等は適宜定めることができ、平坦なパンチングメタルであっても良いが、図9(a)に示すように、排出口41x側に向かうにつれて直径が拡大する傘状(図示例では円錐状となっているが角錐状、ドーム状等にすることもできる)体の側面に、排出口41x側に向かうにつれて開口幅が拡大する通過孔42n(図示例では二等辺三角形状となっているが滴状等の適宜の形状とすることもできる)を周方向に所定の間隔で設けたものが好適である。このような傘状スクリーン42においては、熱分解器4内を下降する固形物がスクリーン42の側面の通過孔42nにスムーズに移動することができる。また、このスクリーン42の側面の通過孔42nは、排出口側に向かうにつれて開口幅が拡大する形状となっているため、スクリーン42側面に沿って接触しながら下降する固形物は、通過孔42nに引っ掛かり難く、円滑な分離が可能となる。
【0063】
この他にも、例えば図9(b)に示すように、通過孔を有しない上面と、上下方向に沿って所定幅で延在する通過孔42nが周方向に間隔を空けて形成された周面と、排出口41xに連通する開口底面とを備えた円筒状のスクリーン42を用いることもできる。
【0064】
他方、排出口スクリーン42を設ける場合、分離機5としては、第1固形物及び第2固形物の二種類に分離するものを用い、分離機5で分離した第1固形物及び第2固形物のうち、第1固形物は移送装置6により予熱器2に返送し、第2固形物は熱風生成装置1に供給するように構成すると、設備がより簡素となるため好ましい。しかしもちろん、前述の三種類に分離するものを用いても、多重分離による分離性能向上効果はもたらされる。この場合における分離機5の形態は特に限定されるものではないが、例えば図10に示されるような、第2固形物は通すが第1固形物は通さない円筒状スクリーン52を有する回転篩5を用いることができる。この回転篩5において、スクリーン52の一端側に、分離対象であるチャー及びヒートキャリアを供給すると、スクリーン52の軸心が水平方向に対して僅かに傾斜していること、(これとともに又はこれに代えて、スクリーン50,51の内周面に螺旋方向に沿う羽根を突出させ、この羽根がスクリーン50,51の回転に伴い回転することにより、スクリューコンベアのように分離対象物が移送される構成としても良い。)、並びにスクリーン52が軸心周りに回転されることにより、第2固形物はスクリーン52を通過して回収され、第1固形物は外側スクリーン52を通過せずに外側スクリーン52の他端側に移動し、外側スクリーン52の他端側開口より回収されるようになっている。
【0065】
(差圧解消)
本発明では、差圧解消のための技術として、主に(a)空運転による差圧解消、(b)灰・ダスト閉塞防止技術、(c)強制灰・ダスト除去による差圧解消、が提案される。これらは全て又は2つの技術を組み合わせて適用することができる。以下、順に説明する。
【0066】
(a)空運転による差圧解消
定常運転において、熱分解器4の内圧を圧力計4pにより監視し、この内圧が所定の定常運転許容範囲を超えたときに、ヒートキャリアの循環及び熱風生成装置1から予熱器2への熱風供給を継続したまま、有機物質原料の供給を停止する、差圧解消運転(空運転)を行う。この際、生成ガス誘引送風機11、水蒸気注入b、その他はそのまま継続すると、復帰を迅速に行うことができるため好ましいが、不必要な機器は停止することもできる。差圧解消運転は、圧力計4pによる計測値が所定の定常運転許容範囲を超えたときに、自動的に開始するようにしても良いし、警告音や警告表示が出るように構成し、この警告に基づいて作業員が原料供給を停止するようにしても良い。また、熱分解器4の内圧だけでなく、改質器3の内圧も圧力計3pによる計測し、両者の差が所定値を超えたときに、熱分解器4の内圧が所定の定常運転許容範囲を超えたものとして差圧解消運転を開始するようにしても良い。
【0067】
熱分解器4の内圧の定常運転許容範囲は適宜定めることができるが、例えば熱分解器4が改質器3を介して誘引送風機11により吸引されている場合、熱分解器4内は−0.2kPa程度の負圧になるため、定常運転許容範囲は例えば0.7kPa以下とすることができる。
【0068】
このような差圧解消運転を行うと、熱分解ガスの発生停止により熱分解器4の内圧上昇が停止するとともに、移動するヒートキャリアが通気性ヒートキャリア管路3eの通気孔3fや灰・ダストDに接触し、その衝撃力や押し出し力により、通気孔3f内の灰・ダストDは通気孔3f内から押し出されて剥離・脱落し、通気孔を介した改質器への通気性が回復する。その結果、改質器3に対する差圧が自然に解消される。
【0069】
そして、この差圧解消運転において、熱分解器4の内圧を圧力計4pにより監視し、この内圧が所定の定常運転許容範囲に戻ったときに、有機物質原料の供給を再開して差圧解消運転を終了することで、定常運転に復帰することができる。この差圧解消運転中の熱分解器4の圧力監視においても、自動的に終了して定常運転に復帰するようにしたり、熱分解器圧力異常に伴う警告音や警告表示が消えるように構成し、これに基づいて作業員が原料供給を再開するようにしても良く、さらに、熱分解器4の内圧だけでなく、改質器3の内圧も圧力計3pにより監視し、両者の差が所定値以下又は各値が定常運転許容範囲であるときに、熱分解器4の内圧が所定の定常運転許容範囲に戻ったものとして差圧解消運転を終了するようにしても良い。差圧解消運転の時間はシステムの規模やヒートキャリアのサイクルタイムによるが、早くて数十分程度で差圧が解消し、分解清掃と比較して著しく短い時間で対処できることが判明している。
【0070】
(b)灰・ダスト閉塞防止技術
改質器3と熱分解器4とを繋ぐ接続管路3x内の通気性ヒートキャリア管路3eにおいて、通気孔3fが図14(a)に示すように管路の内側から外側まで同じ径であると、通気孔に入る灰・ダストDの層が成長し易く、また詰まった灰・ダストDが抜け難い。そこで、図14(b)に示すように、通気孔3fの形状を通気性ヒートキャリア管路3eの内側から外側に向かうにつれて径が拡大するテーパー状にすることも提案する。これにより、灰・ダストDの付着が始まっても閉塞には至り難くなる。つまり、通気孔3fは、通気性ヒートキャリア管路3eの内面に開口しており、移動するヒートキャリアに接触する部分であるため、その接触により、灰・ダストDは通気孔3fに押し込まれていく。この際、通気孔3fが上述のように外側に向かうにつれて径が拡大するテーパー形状をなしていると、通気孔3f内の灰・ダストDは通気孔から押し出されて剥離・脱落し易くなり、通3f気孔内で閉塞まで成長するといった事態は発生し難くなる。
【0071】
(c)強制灰・ダスト除去による差圧解消
上述の(a)及び(b)の技術は、通気孔3fを閉塞する灰・ダストDの自然除去力を利用し、また補助するものであり、差圧解消にある程度の時間を要する。そこで、熱分解器4内に水蒸気、窒素等の不活性ガスNを加圧供給するガス吹込み口4gを設けるとともに、シールポット60へのガス抜出管61にガス抜出開閉弁62を設け、熱分解器圧力計4pによる計測結果が前述の定常運転許容範囲を超えたときに、ガス抜出開閉弁62を閉じた状態で、ガス吹込み口4gを介して熱分解器4内に不活性ガスを瞬間的に加圧供給する操作を一回又は複数回行うことも提案される。この操作により、熱分解器4の瞬間的内圧上昇が発生し、その衝撃が閉塞灰・ダストDに効果的に伝わり、通気孔3f内の閉塞灰・ダストDを改質器3側又は熱分解器4側に吹き飛ばすことができる。これに対して、熱分解器4からのガス抜出管61をシールポット60に連通させたまま、単に不活性ガスを熱分解機4内に供給してもシールポット60がその圧力変動を吸収してしまい、閉塞灰・ダストDに衝撃を効率良く伝えることができない。また、熱分解器4内に水素等の引火性ガスが存在していても、不活性ガスを供給するのであれば安全性は確保できる。
【0072】
ガス吹込み手段は、専用のものを設けることもできるが、通常この手の火を扱うプラントには緊急停止時の火災防止装置として窒素ガス等の不活性ガスを10kPa程度の圧力で吹き込むガスパージが設置されているため、これを利用することができる。特に、窒素は、水蒸気と違い常温でガス状態であるため、熱分解器4に注入すれば、通気孔3fの閉塞物を吹き飛ばす有効・確実な圧力となる。図示例では、熱分解器4に改質用水蒸気を吹き込むための吹込み口4gを介して不活性ガスNを加圧供給するように構成している。
【0073】
上述の不活性ガス供給操作により、熱分解器4の内圧が前述の定常運転許容範囲に戻ったならば、ガス抜出開閉弁62を開くことにより定常状態に戻すことができる。この際、有機物質原料の供給を停止していた場合は、有機物質原料の供給も再開する。
【0074】
これらの操作の開始及び終了の指標となる熱分解器4の圧力監視は、前述の差圧解消運転の開始及び終了の場合と同様に行うことができる。
【0075】
他方、ガス抜出開閉弁62を閉じた後、上述の不活性ガス供給操作に先立って、熱分解器4内へのガス改質用水蒸気の注入を停止せずに継続しておくのが望ましい。これにより、通気孔3fに対しては、熱分解器4内へのガス改質用水蒸気の注入圧と、生成ガスの誘引送風機11による吸引力が作用し、通気孔3fに詰まった灰・ダストDが改質器3側へ押し出され易くなる。これにより、熱分解器4の内圧が前述の定常運転許容範囲に戻ったならば、不活性ガス供給操作を行わずに、ガス抜出開閉弁62を開くことにより定常状態に戻すことができる。この際、有機物質原料の供給を停止していた場合は、有機物質原料の供給も再開する。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、木質バイオマス等の有機物質のガス化に利用できるものである。
【符号の説明】
【0077】
1…熱風生成装置、2…予熱器、3…改質器、4…熱分解器、5…分離機、6…移送装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱を運ぶための多数のヒートキャリアと、このヒートキャリアを加熱するための予熱器と、熱分解ガスの水蒸気改質を行うための改質器と、有機物質原料を熱分解するための熱分解器と、熱風を生成する熱風生成装置とを備え、
前記ヒートキャリアを、前記予熱器、改質器、及び熱分解器の順に通した後、移送装置により再び予熱器に戻して循環させるとともに、前記熱分解器内に有機物質原料を供給し、前記改質器内に対して直接又は間接的に水蒸気を供給し、
前記熱分解器内では、前記有機物質原料を、加熱されたヒートキャリアと接触させることによりチャーと熱分解ガスとに熱分解し、熱分解ガスはヒートキャリアに対して向流接触しながら改質器へ供給し、
前記改質器では、前記熱分解ガスを前記ヒートキャリアにより加熱しつつ前記水蒸気と接触させることにより水素含有濃度を向上させたガスを生成し、
前記熱風生成装置では、熱風を生成して予熱器に供給し、
前記予熱器では、前記熱風生成装置から供給される熱風を、前記予熱器内を堆積状態で通過するヒートキャリア間に通して、ヒートキャリアと直接接触することによりヒートキャリアを加熱する、
ように構成した有機物質のガス化システムであって;
前記改質器と熱分解器とを繋ぐ接続管路と、
この接続管路内に接続管路内面から離間するように配置され、前記熱分解ガスは内外に通過するが前記ヒートキャリアは内外に通過しない通気孔が形成された管壁を有し、且つ前記改質器から排出されるヒートキャリアの導入口及び導入したヒートキャリアを接続管路内に放出する放出口を有する、通気性ヒートキャリア管路と、
このヒートキャリア管路からのヒートキャリアの放出の開閉を行うバルブと、
前記熱分解器の内圧を計測する熱分解器圧力計と、を備え、
前記熱分解器圧力計による計測結果が所定の定常運転許容範囲を超えたときに、前記ヒートキャリアの循環、及び前記熱風生成装置から前記予熱器への熱風供給を継続したまま、前記有機物質原料の供給を停止する、差圧解消運転を行い、
この差圧解消運転において、前記熱分解器圧力計による計測結果が前記所定の定常運転許容範囲に戻ったときに、前記有機物質原料の供給を再開して差圧解消運転を終了するように構成した、
ことを特徴とする有機物質のガス化システム。
【請求項2】
前記通気孔は、前記通気性ヒートキャリア管路の内側から外側に向かうにつれて径が拡大するテーパー状をなしている、請求項1記載の有機物質のガス化システム。
【請求項3】
シールポットと、一端が前記シールポット内の貯留液体中に所定深さまで挿入され、且つ他端が前記熱分解器内に連通するガス抜出管とを設けるとともに、このガス抜出管にガス抜出開閉弁を設け、
前記熱分解器内に不活性ガスを加圧供給するガス吹込み口を設け、
前記熱分解器圧力計による計測結果が所定の定常運転許容範囲を超えたときに、前記差圧解消運転に代えて又は前記差圧解消運転を行うとともに、前記ガス抜出開閉弁を閉じた状態で、前記ガス吹込み口を介して前記熱分解器内に不活性ガスを瞬間的に加圧供給する操作を一回又は複数回行い、
この操作により、前記熱分解器圧力計による計測結果が前記所定の定常運転許容範囲に戻ったときに、前記ガス抜出開閉弁を開くように構成した、
請求項1又は2記載の有機物質のガス化システム。
【請求項4】
熱を運ぶための多数のヒートキャリアを、ヒートキャリアを加熱するための予熱器、熱分解ガスの水蒸気改質を行うための改質器、及び有機物質原料を熱分解するための熱分解器の順に通した後、移送装置により再び予熱器に戻して循環させるとともに、
前記熱分解器内に有機物質原料を供給し、且つ前記改質器内に対して直接又は間接的に水蒸気を供給し、
前記熱分解器内では、前記有機物質原料を、加熱されたヒートキャリアと接触させることによりチャーと熱分解ガスとに熱分解し、熱分解ガスはヒートキャリアに対して向流接触しながら改質器へ供給し、
前記改質器では、前記熱分解ガスを前記ヒートキャリアにより加熱しつつ前記水蒸気と接触させることにより水素含有濃度を向上させたガスを生成し、
熱風生成装置で、熱風を生成して予熱器に供給し、
前記予熱器では、前記熱風生成装置から供給される熱風を、前記予熱器内を堆積状態で通過するヒートキャリア間に通して、ヒートキャリアと直接接触することによりヒートキャリアを加熱する、
有機物質のガス化システムにおける熱分解器差圧解消方法であって;
前記改質器と熱分解器とを繋ぐ接続管路と、
この接続管路内に接続管路内面から離間するように配置され、前記熱分解ガスは内外に通過するが前記ヒートキャリアは内外に通過しない通気孔が形成された管壁を有し、且つ前記改質器から排出されるヒートキャリアの導入口及び導入したヒートキャリアを接続管路内に放出する放出口を有する、通気性ヒートキャリア管路と、
このヒートキャリア管路からのヒートキャリアの放出の開閉を行うバルブと、を備え付け、
前記熱分解器の内圧が所定の定常運転許容範囲を超えたときに、前記ヒートキャリアの循環、及び前記熱風生成装置から前記予熱器への熱風供給を継続したまま、前記有機物質原料の供給を停止する、差圧解消運転を行い、
この差圧解消運転において、前記熱分解器の内圧が前記所定の定常運転許容範囲に戻ったときに、前記有機物質原料の供給を再開して差圧解消運転を終了する、
ことを特徴とする有機物質のガス化システムにおける熱分解器差圧解消方法。
【請求項1】
熱を運ぶための多数のヒートキャリアと、このヒートキャリアを加熱するための予熱器と、熱分解ガスの水蒸気改質を行うための改質器と、有機物質原料を熱分解するための熱分解器と、熱風を生成する熱風生成装置とを備え、
前記ヒートキャリアを、前記予熱器、改質器、及び熱分解器の順に通した後、移送装置により再び予熱器に戻して循環させるとともに、前記熱分解器内に有機物質原料を供給し、前記改質器内に対して直接又は間接的に水蒸気を供給し、
前記熱分解器内では、前記有機物質原料を、加熱されたヒートキャリアと接触させることによりチャーと熱分解ガスとに熱分解し、熱分解ガスはヒートキャリアに対して向流接触しながら改質器へ供給し、
前記改質器では、前記熱分解ガスを前記ヒートキャリアにより加熱しつつ前記水蒸気と接触させることにより水素含有濃度を向上させたガスを生成し、
前記熱風生成装置では、熱風を生成して予熱器に供給し、
前記予熱器では、前記熱風生成装置から供給される熱風を、前記予熱器内を堆積状態で通過するヒートキャリア間に通して、ヒートキャリアと直接接触することによりヒートキャリアを加熱する、
ように構成した有機物質のガス化システムであって;
前記改質器と熱分解器とを繋ぐ接続管路と、
この接続管路内に接続管路内面から離間するように配置され、前記熱分解ガスは内外に通過するが前記ヒートキャリアは内外に通過しない通気孔が形成された管壁を有し、且つ前記改質器から排出されるヒートキャリアの導入口及び導入したヒートキャリアを接続管路内に放出する放出口を有する、通気性ヒートキャリア管路と、
このヒートキャリア管路からのヒートキャリアの放出の開閉を行うバルブと、
前記熱分解器の内圧を計測する熱分解器圧力計と、を備え、
前記熱分解器圧力計による計測結果が所定の定常運転許容範囲を超えたときに、前記ヒートキャリアの循環、及び前記熱風生成装置から前記予熱器への熱風供給を継続したまま、前記有機物質原料の供給を停止する、差圧解消運転を行い、
この差圧解消運転において、前記熱分解器圧力計による計測結果が前記所定の定常運転許容範囲に戻ったときに、前記有機物質原料の供給を再開して差圧解消運転を終了するように構成した、
ことを特徴とする有機物質のガス化システム。
【請求項2】
前記通気孔は、前記通気性ヒートキャリア管路の内側から外側に向かうにつれて径が拡大するテーパー状をなしている、請求項1記載の有機物質のガス化システム。
【請求項3】
シールポットと、一端が前記シールポット内の貯留液体中に所定深さまで挿入され、且つ他端が前記熱分解器内に連通するガス抜出管とを設けるとともに、このガス抜出管にガス抜出開閉弁を設け、
前記熱分解器内に不活性ガスを加圧供給するガス吹込み口を設け、
前記熱分解器圧力計による計測結果が所定の定常運転許容範囲を超えたときに、前記差圧解消運転に代えて又は前記差圧解消運転を行うとともに、前記ガス抜出開閉弁を閉じた状態で、前記ガス吹込み口を介して前記熱分解器内に不活性ガスを瞬間的に加圧供給する操作を一回又は複数回行い、
この操作により、前記熱分解器圧力計による計測結果が前記所定の定常運転許容範囲に戻ったときに、前記ガス抜出開閉弁を開くように構成した、
請求項1又は2記載の有機物質のガス化システム。
【請求項4】
熱を運ぶための多数のヒートキャリアを、ヒートキャリアを加熱するための予熱器、熱分解ガスの水蒸気改質を行うための改質器、及び有機物質原料を熱分解するための熱分解器の順に通した後、移送装置により再び予熱器に戻して循環させるとともに、
前記熱分解器内に有機物質原料を供給し、且つ前記改質器内に対して直接又は間接的に水蒸気を供給し、
前記熱分解器内では、前記有機物質原料を、加熱されたヒートキャリアと接触させることによりチャーと熱分解ガスとに熱分解し、熱分解ガスはヒートキャリアに対して向流接触しながら改質器へ供給し、
前記改質器では、前記熱分解ガスを前記ヒートキャリアにより加熱しつつ前記水蒸気と接触させることにより水素含有濃度を向上させたガスを生成し、
熱風生成装置で、熱風を生成して予熱器に供給し、
前記予熱器では、前記熱風生成装置から供給される熱風を、前記予熱器内を堆積状態で通過するヒートキャリア間に通して、ヒートキャリアと直接接触することによりヒートキャリアを加熱する、
有機物質のガス化システムにおける熱分解器差圧解消方法であって;
前記改質器と熱分解器とを繋ぐ接続管路と、
この接続管路内に接続管路内面から離間するように配置され、前記熱分解ガスは内外に通過するが前記ヒートキャリアは内外に通過しない通気孔が形成された管壁を有し、且つ前記改質器から排出されるヒートキャリアの導入口及び導入したヒートキャリアを接続管路内に放出する放出口を有する、通気性ヒートキャリア管路と、
このヒートキャリア管路からのヒートキャリアの放出の開閉を行うバルブと、を備え付け、
前記熱分解器の内圧が所定の定常運転許容範囲を超えたときに、前記ヒートキャリアの循環、及び前記熱風生成装置から前記予熱器への熱風供給を継続したまま、前記有機物質原料の供給を停止する、差圧解消運転を行い、
この差圧解消運転において、前記熱分解器の内圧が前記所定の定常運転許容範囲に戻ったときに、前記有機物質原料の供給を再開して差圧解消運転を終了する、
ことを特徴とする有機物質のガス化システムにおける熱分解器差圧解消方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−201770(P2012−201770A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66793(P2011−66793)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000115463)ライト工業株式会社 (137)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000115463)ライト工業株式会社 (137)
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