説明

有機物除去用ケミカルフィルター

【課題】 有機物除去用のケミカルフィルターにおいて、NOを確実に除去できるようにする。
【解決手段】 活性炭を構成部材としたケミカルフィルターにおいて、フィルター全質量に対し0.1〜5質量%のリン酸と0.02〜1質量%の硫酸鉄または硫酸アルミニウムとが添着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機物除去用ケミカルフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野においては、従来から、アンモニア、硫黄酸化物、窒素酸化物などの無機系ガスによるガス汚染や、低沸点有機溶剤から発生する有機ガスによる低濃度のガス汚染により、製品歩留まりが低下することが知られている。その対策として、活性炭、各種薬剤を添着した活性炭、イオン交換体などを主な構成部材としたケミカルフィルターによる空気浄化が行われている。半導体製造工場のクリーンルームにおいて、ケミカルフィルターは、クリーンルームの外気取り入れ口、クリーンルームの空気循環系、製造装置に取り付ける局所系など、多くの箇所に様々な種類のものが用いられている(例えば特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
近年、半導体製造分野においては、有機物ガス汚染、特にクリーンルームの構成部材から放出されるフタル酸エステル類などの極微量の高沸点有機物の影響による、歩留まりの低下が大きな問題となっている。このため、活性炭を主な構成部材とする有機物除去用フィルターの需要が増大し、またさらなる高性能化が要求されている。
【0004】
ところが、活性炭を主な構成部材とする有機物除去用フィルターを使用する際に、フィルター下流側すなわちフィルター通過後の部分から、フィルター上流側すなわちフィルター通過前の部分よりも高濃度の亜硝酸イオン(NO)が検出されるという問題が発生している。通常、クリーンルーム内においては、イオンクロマトグラフ分析による無機系ガスの常時監視が行われているが、一般に有機物除去用フィルターは通常無機系ガスの除去能力はほとんどなく、無機系ガスについての下流側濃度は上流側濃度からわずかに低下する程度である。しかし、有機物除去用フィルターの設置環境によっては、設置後数時間で下流側のNO濃度が上流側のNO濃度を超え、さらにはクリーンルーム内のNO濃度管理基準を超えてしまうことがある。
【0005】
特許文献3には、上記のフィルター下流側のNO濃度が高くなる現象はクリーンルーム内で使用されるコーキング材が脱オキシム型である場合に発生するので、脱オキシム型以外のコーキング材、特に脱アルコール型のコーキング材を使用することで、かかる問題点が解決されるという記載がある。
【0006】
特許文献4には、溶解性の酸性物質又は塩基性物質を有効成分とする薬剤を無機繊維紙に担持してなることを特徴とする空気清浄化剤が記載されている。酸性物質としては、りん酸、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄、硫酸アルミニウムなどが例示されている。しかし、これら酸性物質は、単に列挙されているだけで、具体的にどの物質をどの程度用いればどのような効果が得られるのかについては、特許文献4には示唆も記載もない。また特許文献4では、酸性物質は、塩基性ガスを除去するものであって、酸性ガスに対しては効果が示されていない。
【特許文献1】特開平06−339629号公報
【特許文献2】特開2000−33217号公報
【特許文献3】特開2004−116961号公報
【特許文献4】特開昭62−129142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者による検討では、特許文献3の記載に反して、脱オキシム型コーキング材が存在しない環境でも、フィルター下流側NO濃度が上流側以上になることが確認された。すなわち、低濃度ガス状プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下「PGMEA」と略称する)を有機物除去用フィルターに流し続けると、フィルター下流から上流側濃度以上のNOが検出された。
【0008】
この点に関し、以前は、半導体製造工場内でウエハーの洗浄用にフロン系溶剤が用いられていたが、近年脱フロンの規制による代替溶剤として、PGMEAなどの酢酸エステル系有機溶剤を使用するようになっており、これらの酢酸エステル系有機溶剤が活性炭の細孔内に吸着されると、細孔内で加水分解されることも報告されている。加水分解されると、分解生成物である酢酸がフィルター下流側から放出され、周辺の金属部分などを腐蝕するという事態が発生する。
【0009】
有機物除去用フィルターから発生したNOを除去するため、下流側にさらに酸性ガス除去用フィルターを設置することが考えられる。しかしながら、本来不要な酸性ガス除去フィルターを重ねて設置することで、フィルターの圧力損失が増大することになる。またフィルター設置スペースが制限される関係で、酸性ガス除去フィルターに対応した分だけ有機物除去用フィルターの厚みを小さくする必要が生じる場合には、本来必要な有機物除去性能が低下することになる。
【0010】
そこで本発明は、有機物除去用のケミカルフィルターにおいてNOを確実に除去できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、下記のような構成を有する有機物除去用のケミカルフィルターであれば、NOを確実に除去することができることを見出し、しかも、使用中にフィルター下流側においてフィルター上流側よりも高濃度のNOが検出されることもないことを見出して、本発明に到達した。すなわち本発明の有機物除去用ケミカルフィルターは、活性炭を構成部材としたケミカルフィルターにおいて、フィルター全質量に対し0.1〜5質量%のリン酸と0.02〜1質量%の硫酸鉄または硫酸アルミニウムとが添着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の有機物除去用ケミカルフィルターは、活性炭の持つ優れた有機物吸着性能を示すとともに、従来においては酸性ガスの除去には塩基性の除去剤を用いるのが通例であったのに反して亜硝酸イオン(NO)を除去するのに活性炭と酸とを組み合わせたものであり、しかも、2種類の添着薬剤の相乗効果によってNOを大幅に除去することができ、このため高精度な除去能力を要求される半導体製造工場クリーンルーム内の有機物除去用のケミカルフィルターとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の有機物除去用ケミカルフィルターの主たる構成部材としての活性炭は、その形態は特に限定されるものではなく、繊維状、粒状、粉末状など種々のものが用いられる。その中でも、繊維状活性炭が、表面積が大きいため有機物除去速度が高く、またシート、フィルターへの加工性が高く、このため最も好ましく用いられる。繊維状活性炭としては、ピッチ系、フェノール系、セルロース系等のものを使用することができる。高い有機物除去性能を得るためには、活性炭は、細孔容積が0.4〜1.2mL/g、平均細孔直径が1.7〜3.5nmであることが好ましい。
【0014】
本発明のフィルターは、フィルター形状への加工性、フィルターの強度維持、活性炭脱落防止などの理由で、主たる構成部材としての活性炭のほかに、バインダーなどを含む必要がある。このとき、フィルターにおける活性炭の配合割合は30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。30質量%に満たない場合は、有機物除去性能が不充分になりやすい。また上記のようにバインダーなどを含む必要があるため、活性炭の配合割合の上限は、通常90質量%である。
【0015】
本発明のフィルターは、フィルター全質量に対し0.1〜5質量%のリン酸と0.02〜1質量%の硫酸鉄または硫酸アルミニウムとが添着されている。これら二種類の薬剤の添着方法については、特に制限はなく、シート状に加工する前の活性炭を薬剤水溶液に浸漬、脱水、乾燥する方法や、活性炭を含むシート、フィルターを成型した後に薬剤水溶液を散布する方法などがあるが、本発明の効果を充分に得るためには、薬剤分布の均一性が重要であるため、特に前者の方法が好ましい。シート状に加工する前の活性炭を2種類の薬剤水溶液に浸漬した場合、リン酸は活性炭の細孔内に吸着されて濃縮されるが、硫酸鉄または硫酸アルミニウムは細孔内には吸着されず濃縮はされない。例えば、2種類の薬剤がともに0.5質量%である水溶液に、細孔容積0.7〜0.9mL/g、細孔直径1.8〜2.0nmの繊維状活性炭を浸漬したのち、元の繊維状活性炭の質量の2倍になるまで脱水して乾燥した場合、添着量は、リン酸が4〜6質量%、硫酸鉄または硫酸アルミニウムが0.4〜0.6質量%となる。添着量の数値は、用いる活性炭の形状、活性炭の保水性、細孔容積、細孔直径、などにより変化するので、水溶液中の薬剤の濃度を、本発明の効果が得られる範囲の添着量となるように適宜調節する。
【0016】
薬剤の添着量は、上記のように、フィルター全質量に対しリン酸が0.1〜5質量%、硫酸鉄または硫酸アルミニウムが0.02〜1質量%である。リン酸において0.1質量%に満たない場合と、硫酸鉄または硫酸アルミニウムにおいて0.02質量%に満たない場合とには、それぞれ本発明の効果が低下する。リン酸において5質量%を超える場合と、硫酸鉄または硫酸アルミニウムにおいて1質量%を超える場合とには、それぞれ、フィルターにおけるNOの除去効果はあるものの、添着薬剤が活性炭の細孔を閉塞するため、本来の目的である有機物除去性能が低下する。リン酸と硫酸鉄または硫酸アルミニウムとの添着量の比率は、(リン酸):(硫酸鉄または硫酸アルミニウム)=1:1〜50:1が好ましく、5:1〜20:1がより好ましい。リン酸の添着量が硫酸鉄または硫酸アルミニウムの添着量を下回る場合、またリン酸の添着量が硫酸鉄または硫酸アルミニウムの添着量の50倍を超える場合は、両者を添着することの相乗効果が低下して本発明の効果が低下する。
【0017】
本発明の有機物除去用のケミカルフィルターは、薬剤が添着した活性炭とバインダーとを混合してシート化し、通常はさらにコルゲートまたはプリーツ加工を行うことによって製造される。
【0018】
シート化の方法については特に制限はなく、通常の湿式加工法、乾式加工法が用いられる。ただし、湿式加工法の場合は、活性炭とバインダーとを水中でスラリーとして抄紙することによりシートを得るが、この場合は薬剤を添着した活性炭から薬剤が溶け出して本発明の効果が低下する場合がある。このため、乾式加工法がより好ましい。
【0019】
活性炭として繊維状活性炭を用いる場合は、薬剤が添着した繊維状活性炭とバインダーとしての熱融着繊維とを混合してカード機またはランダムウエーバー機などでウエブを形成し、強度向上のために、熱融着繊維の融点以上、(融点+40)℃未満の温度に設定した乾燥機中を通過させ、熱融着により繊維間固定を行い、さらに必要に応じて厚み低減のためカレンダーロールを通すことでシートを得る。熱融着繊維としては、補強強度、成型性、耐薬品性などの面から、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系重合体からなるものが好ましく、芯部に高融点重合体を配するとともに鞘部に低融点重合体を配した芯鞘複合繊維であることがより好ましい。
【0020】
活性炭として粒状または粉末状のものを用いる場合は、薬剤が添着した活性炭と熱融着性材料とを不織布上に均一に散布し、更にその上に別の不織布を重ね合わせてサンドイッチ構造にする方法が、主に用いられる。不織布の材料および熱融着性材料については特に制限はなく、強度、接着性、成型性、耐薬品性などの面から、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系重合体からなるものが好ましく用いられる。
【0021】
シートの目付は、通常40〜250g/mが好ましいが、特にフィルターがコルゲート形状の場合は、成型性、圧力損失の観点から60〜160g/mがより好ましい。
【0022】
このようにして得た活性炭シートを公知の方法によって加工し、本発明の有機物除去用のケミカルフィルターを得る。すなわち、シートをヒダ状に折り曲げ加工することでプリーツフィルターを得ることができ、また平板状のシートと波板状に加工したシートとを貼り合わせて片段ボール状とし、その複数枚を積層し、所定の大きさに切断することでコルゲートフィルターを得ることができる。どちらの形態でも本発明にもとづく所要の効果を得ることができるが、圧力損失、体積当たりの活性炭量、有機物除去性能の効率などの観点から、コルゲート形状のフィルターがより好ましい。
【0023】
上記のようにして製造された本発明の有機物除去用のケミカルフィルターは、活性炭の持つ優れた有機物吸着性能を示すとともに、リン酸と硫酸鉄または硫酸アルミニウムとの2種類の添着薬剤の相乗効果によってNOを確実に除去することができ、しかも使用中にフィルター下流側においてフィルター上流側よりも高濃度のNOが検出されることもなく、このため高性能な除去能力を要求される半導体製造工場クリーンルーム内の有機物除去用フィルターとして好適に用いられる。
【実施例】
【0024】
次に、本発明を実施例にもとづき具体的に説明する。しかし、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例における各特性値の測定は、室温下で次の各試験により行い、各物質の添着量は次のようにして測定した。
【0025】
(1)活性炭のPGMEAガス通気試験
活性炭1gを内径25mmのガラスカラムに充填し、層高40mmとした。パーミエーター(ガステック社製)でPGMEAガスを発生させ、空気で希釈して、濃度0.5μg/m、相対湿度30%に調製し、8.8L/minの風量で試料に供給した。168時間後、および504時間後に、試料よりも下流側のガスを純水40mLを入れたインピンジャーに2L/minの風速で供給して2時間ガスを捕集し、イオンクロマトグラフ(ダイオネクス社製DX−100)によりNO濃度を求めた。
【0026】
(2)フィルターのPGMEAガス通気試験
フィルターを直径25mm、層高60mmの円柱状にカットし、内径25mmのガラスカラムに充填した。そして、(1)と同様の方法によってNO濃度を求めた。
【0027】
(3)トルエンガス通気試験
フィルターを直径25mm、層高60mmの円柱状にカットし、内径25mmのガラスカラムに充填した。そして、パーミエーター(ガステック社製)でトルエンガスを発生させ、空気で希釈して、濃度20ppm、相対湿度40%に調製し、14.7L/minの風量で試料に供給し、試料よりも下流側のトルエンガス濃度が4ppmに達するまでの時間を測定してそれをフィルター寿命とした。ガス濃度の測定は、アナテックヤナコ社製の全炭化水素自動計測器(EHF−7C)を用いて行った。
【0028】
(4)活性炭へのリン酸、硫酸鉄、硫酸アルミニウムの添着量
あらかじめ真空乾燥機で乾燥させた試料(添着済み活性炭)0.2gを、マイクロウェーブ法で加圧酸分解させ(1st step:HSO、2nd step:HNO、3rd step:HClO)、その後に、日本ジャーレルアッシュ社製、IRIS/AP Advantage を用いたICP法で測定した。
【0029】
実施例1
硫酸第一鉄7水和物0.5560gを水に溶解し、さらに85%リン酸0.5882gを加え、全量を100mLとした。その水溶液中の硫酸第一鉄の濃度は0.3質量%、リン酸の濃度は0.5質量%であった。ピッチ系繊維状活性炭(アドール社製A−15 細孔容積0.8mL/g 細孔直径1.9nm)2gを上記水溶液に30分間浸漬し、吸引脱水後、110℃の乾燥機中で2時間乾燥させて添着活性炭を得た。
【0030】
実施例2
硫酸第一鉄の代わりに硫酸アルミニウム13〜14水和物0.585gを用いた。そして、それ以外は実施例1と同様の操作により、添着活性炭を得た。水溶液中の硫酸アルミニウムの濃度は0.3質量%であった。
【0031】
比較例1
溶液にリン酸を加えないようにした。そして、それ以外は実施例1と同様の操作により添着活性炭を得た。
【0032】
比較例2
溶液に硫酸第一鉄を加えないようにした。そして、それ以外は実施例1と同様の操作により添着活性炭を得た。
【0033】
比較例3
添着を行わないピッチ系繊維状活性炭(アドール社製A−15 細孔容積0.8mL/g 細孔直径1.9nm)を用意した。
【0034】
各実施例、比較例に関し、本発明の有機物除去用のケミカルフィルターの主な構成部材となる活性炭について、2種類の添着薬剤の有無および2種類の薬剤の相乗効果についての検討を行った。全5試料についての、添着量およびPGMEAガス通気試験結果を、表1に示す。この表1に示すように、実施例1および2では共に504時間経過後でも下流側でNOの発生はほとんど認められず、2種類の添着薬剤による相乗効果が明らかであった。また下流側のNO濃度が上流側を上回ることもなかった。2種類の薬剤のどちらか一方のみを添着した比較例1および2では、同様に504時間経過後も下流側のNO濃度が上流側を上回ることはなかったものの、実施例1、2よりはNOの発生量が大きかった。添着を行っていない比較例3では、通気168時間後から下流側で大量のNOが発生することを確認した。
【0035】
【表1】

【0036】
以上によって、本発明の有機物除去用のケミカルフィルターを構成可能な、薬剤を添着させた活性炭が、NOの発生を抑制することが明らかになった。そこで、引き続いて、この薬剤添着活性炭により有機物除去用のケミカルフィルターを作成し、本発明の効果を明らかにした。
【0037】
実施例3
硫酸第一鉄7水和物5.56kgを水に溶解し、さらに85%リン酸5.882kgを加え、全量を1000Lとした。水溶液中の硫酸第一鉄の濃度は0.3質量%、リン酸の濃度は0.5質量%であった。ピッチ系繊維状活性炭(アドール社製A−15 細孔容積0.8mL/g 細孔直径1.9nm)20kgを2.5kgづつニット袋に分け、上記水溶液に30分間浸漬し、遠心脱水後、110℃の乾燥機中で40時間乾燥させて、添着活性炭を得た。添着後の重量増は3.8%であった。
【0038】
上記で得た添着活性炭80質量%と、鞘成分に融点110℃のポリエチレンテレフタレート共重合体を配するとともに、芯成分に融点260℃のポリエチレンテレフタレート重合体を配した熱融着繊維(ユニチカ社製 メルティ4080)20質量%とを混合し、それをランダムウエーバー製造機に投入してウエブ化し、加熱処理、カレンダー処理を行って、目付100g/m、厚み0.4mmのシートを得た。続いてコルゲート加工機により片段ボールを形成し、複数枚を積層し所定の大きさに切断することによって、貫通孔が300個/inchであるコルゲートフィルターを得た。このコルゲートフィルター中の活性炭は77質量%、リン酸は2.7質量%、硫酸第一鉄は0.3質量%であった。
【0039】
比較例4
85%リン酸の仕込み量を70kgとした。そして、それ以外は実施例3と同様にして、添着活性炭およびコルゲートフィルターを得た。添着後の重量増は8%であった。コルゲートフィルター中の活性炭は74質量%、リン酸は5.7質量%、硫酸第一鉄は0.3質量%であった。
【0040】
比較例5
繊維状活性炭に添着を行わないようにした。そして、それ以外は実施例3と同様の操作により、コルゲートフィルターを得た。コルゲートフィルター中の活性炭は80質量%であった。
【0041】
実施例3および比較例4、5で得たコルゲートフィルターについてPGMEA通気試験およびトルエン通気試験を行った結果を表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
PGMEA通気試験において、薬剤添着していない比較例5のものでは、通気168時間経過後からNOがわずかに発生し始め、504時間経過後では出口側で入口側濃度を大幅に上回る発生を認めた。これに対し、薬剤添着を行った実施例3および比較例4のものでは、504時間後もNOは発生しなかった。
【0044】
トルエン通気試験においては、無添着の比較例5が最も長寿命であった。実施例3では、薬剤を添加することによって活性炭重量が減っていること、および薬剤によって活性炭の細孔が閉塞していることにより、比較例5に比べて10%弱の性能低下が見られたものの、NOの除去効果が高いので、有機物除去用のケミカルフィルターとしての価値はこちらの方が高かった。一方リン酸の添着量が5%を超えた比較例4では、トルエン通気試験に関し比較例5に比べて約40%の大幅な性能低下が見られたため、NOの除去効果は高かったとはいえ、有機物除去用のケミカルフィルターとしては使用できないものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭を構成部材としたケミカルフィルターであって、フィルター全質量に対し0.1〜5質量%のリン酸と0.02〜1質量%の硫酸鉄または硫酸アルミニウムとが添着されていることを特徴とする有機物除去用ケミカルフィルター。

【公開番号】特開2006−346548(P2006−346548A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−174425(P2005−174425)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【出願人】(596042578)日本ピュアテック株式会社 (15)
【Fターム(参考)】