説明

有機薄膜太陽電池

【課題】簡便に成膜できる陰極バッファ層を備え、光電変換効率が高い新たなタイプの有機薄膜太陽電池を提供すること。
【解決手段】透明基板上の透明電極と、金属電極と、これら両電極の間に介在する光電変換層と、該透明電極と金属電極との間で金属電極と接触するように形成された陰極バッファ層を備えてなる有機薄膜太陽電池において、前記陰極バッファ層はアミノ官能基またはイミノ官能基を末端に有する高分子化合物からなることを特徴とする有機薄膜太陽電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜太陽電池に関し、詳細には、バルクヘテロ型有機薄膜太陽電池の性能を向上させた有機薄膜太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性ポリマーやフラーレンなどを組み合わせた有機薄膜半導体を用いる有機薄膜太陽電池は、従来の太陽電池に比べて安価で製法が簡便であり、軽量、フレキシブルといった特徴を備えることから、種々の用途への展開が期待されている。
有機薄膜太陽電池の発電メカニズム(光電変換プロセス)は以下の通りである。まず有機分子が光エネルギーを吸収して励起子(励起電子とホールが対を形成したもの)を生じる。この励起子は対を形成したまま拡散移動し、pn接合界面に到達して電荷分離する。そしてこれにより生じた電子とホールが各電極界面に移動し、電流の取り出しが可能となる。
上述の有機薄膜太陽電池の中でも、特にバルクへテロ構造を有する有機薄膜太陽電池は、高効率な変換効率を示すことから種々検討されている。
【0003】
さて、太陽電池の光電変換効率は、光吸収効率、励起子拡散効率、電荷移動効率、電荷注入効率の積で表される。光電変換効率を向上させる一つの方法として、電極と有機薄膜半導体層との間にバッファ層を設けることにより、電荷注入効率向上させ、逆移動の電荷注入を抑制する試みがなされている。
このうち、透明電極と光電変換層との間に形成される陽極側のバッファ層としては、代表的なものとして例えばポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT/PSS)が用いられている。こうした陽極バッファ層は、製造コストの安価な溶液塗布法にて形成可能である。
一方、金属電極と光電変換層との間に形成される陰極側のバッファ層としては、例えばフッ化リチウム(LiF)、酸化モリブデン(MoO3)、酸化バナジウム(V25)な
どの金属酸化物が用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の陰極バッファ層は、陽極バッファ層で適用可能な溶液塗布法による層形成はできず、通常、真空蒸着法にて形成されるため、生産コストが高くなってしまうという欠点がある。しかしながら、溶液塗布法で作製可能な陰極バッファ層に関する報告は殆どなされておらず、また、ターフェニル誘導体を塗布法にて形成した陰極バッファ層を用いた有機薄膜太陽電池が提案されているものの(特許文献1)、十分な光電変換効率は達成されていないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、陰極側のバッファ材料として、アミノ官能基またはイミノ官能基を末端に有する高分子化合物を用いることにより、溶液塗布法で簡便に陰極バッファ層を製膜でき、また光電変換効率が高い新たなタイプの有機薄膜太陽電池が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明は、第1観点として、透明基板上の透明電極と、金属電極と、これら両電極の間に介在する光電変換層と、該光電変換層と金属電極との間で金属電極と接触するように形成された陰極バッファ層とを備えてなる有機薄膜太陽電池において、前記陰極バッファ層はアミノ官能基またはイミノ官能基を末端に有する高分子化合物からなることを特
徴とする有機薄膜太陽電池に関する。
第2観点として、前記高分子化合物が、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量が1,000乃至2,000,000である高分岐ポリマーであることを特徴とする、第1観点に記載の有機薄膜太陽電池に関する。
第3観点として、前記高分子化合物が、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAを、該モノマーAに対して5モル%乃至200モル%のアミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる高分岐ポリマーである、第1観点又は第2観点に記載の有機薄膜太陽電池に関する。
第4観点として、前記アミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bが、ヘテロ環アミン構造を有する重合開始剤である、第3観点に記載の有機薄膜太陽電池に関する。
第5観点として、前記アミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bが、式[1]で表される官能基を有する重合開始剤である、第3観点又は第4観点に記載の有機薄膜太陽電池に関する。
【化1】

(式[1]中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至6の
アルキル基又は炭素原子数1乃至6のヒドロキシアルキル基を表し、またR1、R2及びR3の任意の2つ以上はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、環を形成していてもよ
い。)
第6観点として、前記アミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bが、式[2]で表される重合開始剤である、第3観点乃至第5観点のうち何れか一項に記載の有機薄膜太陽電池に関する。
【化2】

(式[2]中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至6の
アルキル基又は炭素原子数1乃至6のヒドロキシアルキル基を表し、またR1、R2及びR3の任意の2つ以上はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、環を形成していてもよ
く、R4及びR5はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基を表す。)
第7観点として、A)透明電極が基板表面上に形成された透明基板を準備する段階と、B)その上又は上方に光電変換層を形成する段階と、C)該光電変換層の上又は上方に陰極バッファ層を形成する段階と、D)さらにその上に金属電極を積層する段階とを有してなる有機薄膜太陽電池の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の有機薄膜太陽電池は、陰極側のバッファ材料としてアミノ官能基またはイミノ官能基を末端に有する高分子化合物を用いることにより、陰極バッファ層を溶液塗布法で簡便に製膜できる。
そして本発明は、陰極バッファ層として用いられている蒸着法で形成されるフッ化リチウムを用いた従来の太陽電池に匹敵する、高い光電変換効率を有する有機薄膜太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本発明の有機薄膜太陽電池の模式図である。
【図2】図2は陰極バッファ層に用いた高分岐ポリマーの1H−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の有機薄膜太陽電池は、透明基板上の透明電極と、金属電極と、これら両電極の間に介在する光電変換層と、該光電変換層と該金属電極との間で金属電極と接触するように形成された陰極バッファ層とを備えてなり、前記陰極バッファ層はアミノ官能基或いはイミノ官能基を末端に有する高分子化合物からなることを特徴とする。
以下に上記陰極バッファ層を構成する材料、並びに本発明の有機薄膜太陽電池を構成する各成分について説明する。
【0010】
<陰極バッファ層>
本発明に係る陰極バッファ材料は、アミノ官能基またはイミノ官能基を末端に有する高分子化合物であって、より好ましくはゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量が1,000乃至2,000,000である高分岐ポリマーである。
特に本発明に係る陰極バッファ材料として好適な高分子化合物は、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAを、該モノマーAに対して5モル%以上200モル%以下のアミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることで得られる高分岐ポリマーである。
【0011】
本発明において、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAは、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有することが好ましく、特にジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。なお、本発明では(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物とメタクリレート化合物の両方をいう。例えば(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸をいう。
【0012】
このようなモノマーAとしては、例えば、以下の(A1)乃至(A7)に示した有機化合物が例示される。
(A1)ビニル系炭化水素:
(A1−1)脂肪族ビニル系炭化水素類;イソプレン、ブタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン等
(A1−2)脂環式ビニル系炭化水素;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ノルボルナジエン等
(A1−3)芳香族ビニル系炭化水素;ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、ジビニルフルオレン、ジビニルカルバゾール、ジビニルピリジン等
(A2)ビニルエステル、アリルエステル、ビニルエーテル、アリルエーテル、ビニルケトン:
(A2−1)ビニルエステル;アジピン酸ジビニル、マレイン酸ジビニル、フタル酸ジビニル、イソフタル酸ジビニル、イタコン酸ジビニル、ビニル(メタ)アクリレート等
(A2−2)アリルエステル;マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、アリル(メタ)アクリレート等
(A2−3)ビニルエーテル;ジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等
(A2−4)アリルエーテル;ジアリルエーテル、ジアリルオキシエタン、トリアリルオキシエタン、テトラアリルオキシエタン、テトラアリルオキシプロパン、テトラアリルオ
キシブタン、テトラメタリルオキシエタン等
(A2−5)ビニルケトン;ジビニルケトン、ジアリルケトン等
(A3)(メタ)アクリル酸エステル:
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシチタントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリロイルオキシ−3−メタクリロイルオキシプロパン、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ウンデシレノキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス[4−(メタ)アクリロイルチオフェニル]スルフィド、ビス[2−(メタ)アクリロイルチオエチル]スルフィド、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジエトキシジ(メタ)アクリレート等
(A4)ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系化合物:
ポリエチレングリコール(分子量300)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)ジ(メタ)アクリレート等
(A5)含窒素ビニル系化合物:
ジアリルアミン、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルシアヌレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビスマレイミド等
(A6)含ケイ素ビニル系化合物:
ジメチルジビニルシラン、ジビニルメチルフェニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシラザン、ジエトキジビニルシラン等
(A7)含フッ素ビニル系化合物:
1,4−ジビニルパーフルオロブタン、1,6−ジビニルパーフルオロヘキサン、1,8−ジビニルパーフルオロオクタン等
【0013】
これらのうち好ましいものは、上記(A1−3)群の芳香族ビニル系炭化水素化合物、(A2)群のビニルエステル、アリルエステル、ビニルエーテル、アリルエーテル及びビニルケトン、(A3)群の(メタ)アクリル酸エステル、(A4)群のポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系化合物、並びに(A5)群の含窒素ビニル系化合物である。特に好ましいのは、(A1−3)群に属するジビニルベンゼン、(A2)群に属するフタル酸ジアリル、(A3)群に属するエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジエトキシジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン並びに(A5)群に属するメチレンビス(メタ)アクリルアミドである。これらの中でもジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びビスフェノールAジエトキシジ(メタ)アクリレートが好ましく、より好ましくはジビニルベンゼンである。
【0014】
本発明における、アミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bは、アミノ基、及びアンモニアの水素原子を一価又は二価の炭化水素残基で置換したアミン又はイミン化合物の他、ヘテロ環アミンを含む重合開始剤である。
これらの例としては、シクロヘキシルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、フェネチルアミン、ジベンジルアミンなどの第1級乃至第3級脂肪族アミン;アニリン、ジ
メチルアミノピリジン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミンなどの第1級乃至第3級芳香族アミン;メタンイミン、プロパン−2−イミン、N−メチルエタンイミンなどのイミン;ピロリン、ピロリジン、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、ピペリジン、ジヒドロピリミジン、テトラヒドロピリミジン、ヘキサヒドロピリミジン、ジヒドロピラジン、テトラヒドロピラジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどの脂環式へテロ環アミン;ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、カルバゾールなどの芳香族へテロ環アミン等の構造を含む重合開始剤が挙げられる。
【0015】
したがって、前記アミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bとしては、好ましくはヘテロ環アミン構造を含む重合開始剤や、下記式[1]で表される官能基を有する重合開始剤、特にアゾ系重合開始剤を挙げることができる。
【化3】

式[1]中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至6の
アルキル基又は炭素原子数1乃至6のヒドロキシアルキル基を表す。またR1、R2及びR3の任意の2つ以上はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、環を形成していてもよ
く、環を形成しているものがより好適である。
【0016】
上記式[1]で表される官能基の例としては、例えば下記式[A]乃至式[M]で表される基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【化4】

【0017】
上記式[A]乃至[M]で表される官能基を有する化合物からなるアゾ系重合開始剤としては、下記式[2]で表される重合開始剤を挙げることができる。
【化5】

式[2]中、R1、R2及びR3は前記式[1]で定義されたものを表し、R4及びR5
それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基を表す。
【0018】
上記式[2]で表されるアゾ系重合開始剤としては、例えば以下の(1)〜(2)に示す化合物を挙げることができる;
(1)環状アゾアミジン化合物:
2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルフェートジヒドレート、2,2’−アゾビス[2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]−プロパン]ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロリド等;
(2)アゾアミジン化合物:
2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラヒドレート等。
【0019】
上記アゾ系重合開始剤の中でも、ヘテロ環アミン構造を含む2,2'−アゾビス[2−
(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]又は2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロリドが特に好ましい。
【0020】
前記重合開始剤Bは、前記モノマーAに対して、5モル%乃至200モル%の量で使用され、好ましくは15モル%乃至200モル%、より好ましくは15モル%乃至170モル%、より好ましくは50モル%乃至100モル%の量で使用される。
【0021】
本発明に用いる高分岐ポリマーは、前述のモノマーAに対して所定量の重合開始剤Bの存在下で重合させて得られ、該重合方法としては公知の方法、例えば溶液重合、分散重合、沈殿重合、及び塊状重合等が挙げられ、中でも溶液重合又は沈殿重合が好ましい。特に分子量制御の点から、有機溶媒中での溶液重合によって反応を実施することが好ましい。
【0022】
このとき用いられる有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素系溶媒;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロリド、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系又はエステルエーテル系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル等のアルコール系溶媒;N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;酢酸、プロピオン酸等の脂肪族カルボン酸系溶媒、並びにこれらの2種以上の混合溶媒が挙げられる。
【0023】
これらのうち好ましいものは、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、脂肪族カルボン
酸系溶媒等であり、特に好ましいものはベンゼン、トルエン、キシレン、オルトジクロロベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン及び酢酸であり、最も好ましいものは、n−プロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン及び酢酸である。
【0024】
上記重合反応を有機溶媒の存在下で行う場合、重合反応物全体における有機溶媒の含量は前記モノマーAの1質量部に対し、好ましくは5乃至200質量部、さらに好ましくは10乃至150質量部、最も好ましくは30乃至120質量部である。
【0025】
重合反応は常圧、加圧密閉下、又は減圧下で行われ、装置及び操作の簡便さから常圧下で行うのが好ましい。また、N2等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
重合温度は、反応混合物の沸点以下であれば任意であるが、重合効率と分子量調節の点から、好ましくは50℃以上200℃以下、さらに好ましくは80℃以上150℃以下、より好ましくは80℃以上120℃以下である。
反応時間は、反応温度や、モノマーA及び重合開始剤Bの種類及び割合、有機溶媒種等によって変動するものであるため一概には規定できないが、好ましくは30分以上720分以下、さらに好ましくは40分以上540分以下である。
【0026】
重合反応の終了後、得られた高分岐ポリマーを任意の方法で回収し、必要に応じて洗浄等の後処理を行う。反応溶液から高分子を回収する方法としては、再沈殿等の方法が挙げられる。
【0027】
上記高分岐ポリマーからなる陰極バッファ層を形成する具体的な方法としては、適当な溶媒に溶解又は分散してワニスの形態(膜形成材料)とする。
ここで使用する溶媒としては、高分岐ポリマーを均一に溶解させうる溶媒であれば特に限定されず、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル等のエーテル系化合物、酢酸エチル等のエステル系化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系化合物、ジメチルスルホキシド、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、ノルマルヘプタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類等が使用できる。これら有機溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上の溶媒を混合してもよい。
特に、上記バッファー層を塗布法により積層構造とする場合は、先に塗布した層を溶解させずに塗布できる溶媒として、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の溶媒が好ましい。
【0028】
ワニスの濃度としては、塗膜が形成できれば特に限定されず、前記ワニスの総質量に対して高分岐ポリマーの総質量は好ましくは0.01乃至10質量%、より好ましくは0.01乃至5質量%である。
【0029】
続いて該ワニスを、所望の層上、通常は光電変換層の上にスピンコート法、ブレードコ
ート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凸版、平板、スクリーン印刷等)等によって塗布してリキッド薄層を形成し、その後、溶媒を蒸発・乾燥させるために焼成することにより、硬化膜(陰極バッファ層)を形成する。
なお、これらの塗布方法の中でもスピンコート法が好ましい。スピンコート法を用いる場合には、単時間で塗布することができるために、揮発性の高い溶液であっても利用でき、また、均一性の高い塗布を行うことができるという利点がある。
【0030】
溶媒の乾燥法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホットプレートやオーブンを用いて、適切な雰囲気下、すなわち大気、窒素等の不活性ガス、真空中等で蒸発させればよい。これにより、均一な成膜面を有する陰極バッファ層を得ることが可能である。焼成温度は、溶媒を蒸発させることができれば特に限定されないが、40〜250℃で行うことが好ましい。この場合、より高い均一成膜性を発現させたり、基材上で反応を進行させたりする目的で、2段階以上の温度変化をつけてもよい。
【0031】
<有機薄膜太陽電池を構成する他の層>
本発明の有機薄膜太陽電池は、一対の電極(透明電極、金属電極)とその間に介在する光電変換層とを含み、前記光電変換層と金属電極との間に前述の陰極バッファ層を有するものである。
従って、本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法としては、透明電極(陽極)基板に対して、必要に応じて他の層:例えば陽極バッファ層を作製し、続いて光電変換層を作成した後、前述の陰極バッファ層を形成して、金属電極(陰極)を形成することが好ましい。
以下、電極材料、光電変換層並びに他の層の材料について述べる。
【0032】
<透明電極>
透明電極としては、有機薄膜太陽電池に照射される光を効率的に光電変換層に供給できる光透過性の高い材料が好ましく、且つ、光電変換層で生成した電気エネルギーを効率的に取り出せる導電性の高い材料が好ましい。
従って、透明電極材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、及びインジウム亜鉛酸化物(IZO)に代表される導電性金属酸化物を用いた透明電極が挙げられ、平坦化処理を行ったものが好ましい。中でもITOが特に好ましい。
透明電極は洗浄その他の処理により、光電変換効率を高めることが可能であり、例えばITOの場合、逆スパッタリング、オゾン処理、酸処理等の洗浄処理を行い表面の有機物等の異物を除去したものが用いられる。但し透明電極材料が有機物を主成分とする場合には表面処理を行わなくてもよい。
【0033】
<光電変換層>
前記光電変換層は、電子受容性材料と電子供与性材料とを含有する。
前記電子受容性材料としては例えば、[6、6]−フェニル−C61−酪酸メチルエステル(PCBM)などのフラーレン誘導体、ペリレン誘導体などが挙げられる。
また、電子供与性材料としては、ポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT)などのポリチオフェン誘導体、ポリ−2−メトキシ−5−(3',7'−ジメチルオクチロキシ)−1,4−フェニレンビニレン(MDMO−PPV)などのフェニレンビニレン誘導体、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)(PFO)などのポリフルオレン誘導体など可視光に光吸収領域を有する高分子が挙げられる。
前記電子受容性材料と、電子供与性材料との配合割合は特に限定されないが、質量比で例えば電子受容性材料:電子供与性材料=5:2〜5:7である。
【0034】
また、光電変換層は、上記電子受容性材料と電子供与性材料のみから形成すればよいが、適宜、光電変換作用を有する導電性材料や色素などを更に添加しても良い。
導電性材料としては、例えば、ポリアセチレン系、ポリピロール系、ポリチオフェン系、ポリパラフェニレン系、ポリパラフェニンビニレン系、ポリチエニレンビニロン系、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)系、ポリフルオレン系、ポリアニリン系、ポリアセン系の導電性材料が挙げられる(但し、PEDOT:PSSは除く)。
また、色素としては、例えば、シアニン系、メロシアニン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、キノン系、キノイシン系、キナクドリン系、スクアリリウム系、トリフェニルメタン系、キサンテン系、ポルフィリン系、ペリレン系、インジコ系の色素が挙げられる。
こうしたその他の添加剤(導電性材料や色素)を光電変換層に添加する場合には、これらの添加量は限定的ではないが、上記電子受容性材料と電子供与性材料の合計量を100質量部として、1〜100質量部程度が好ましく、1〜40質量部程度がより好ましい。
【0035】
光電変換層の形成方法は限定されないが、例えば、上記電子受容性材料と電子供与性材料を適当な溶媒に溶解し、該溶液を前記バッファ層の上にスピンコートすることにより形成する。その他の添加剤を含む場合には、前記溶液に予め混合(溶解)しておくことが好ましい。
光電変換層の厚さは限定的ではないが、1〜500nm程度が好ましく、5〜100nm程度がより好ましい。
【0036】
金属電極材料としてはアルミニウム、マグネシウム−銀合金、アルミニウム−リチウム合金、リチウム、ナトリウム、カリウム及びセシウム等が挙げられる。
前記金属電極は真空蒸着法により積層され、有機薄膜太陽電池を製造できる。
【0037】
なお、前記透明電極と前記光電変換層の間に、前記透明電極とする接触するバッファ層(以下、陽極バッファ層と称する)としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT/PSS)層や、酸化モリブデン層、アモルファス酸化チタン層を挿入することができる。
これらの層は、下地層を侵食しない溶媒を用いる溶液塗布法や真空蒸着法、還元析出法などによって作製可能である。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0039】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
(1)GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)
装置:昭和電工(株)製 GPC−101
カラム:昭和電工(株)製 LF−804×4
カラム温度:60℃
溶媒:20mM LiBr添加NMP
検出器:RI
(2)1H−NMRスペクトル
装置:日本電子(株)製 JNM−ECA700
溶媒:CDCl3
内部標準:テトラメチルシラン
(3)スピンコーター
装置:ミカサ(株)製 MS−A100
(4)光源
装置:ソーラシミュレータ(YSS−50A:山下電装(株)製)
照射光:太陽光標準スペクトル AM 1.5G
照射強度:白色光100mW/cm2(1sun)
照射時間:約1分間
(5)電圧印加及び電流測定
装置:ソースメジャーユニット 238(ケースレーインスツルメンツ(株)製)
測定条件:電圧範囲:1.5V〜1.5V、スイープ速度:0.05V/秒
【0040】
[合成例1]
<高分岐ポリマー(HI−DVB)の合成>
2L反応フラスコに、n−プロパノール781gを仕込み、攪拌しながら5分間窒素を流し込み、n−プロパノールが還流するまで(標準沸点97℃)加熱した。
別の1L反応フラスコに、ジビニルベンゼン13.0g(100mmol)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](AIYP)20.0g(80mmol、ジビニルベンゼンに対して80モル%)、及びn−プロパノール781gを仕込み、攪拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行い、氷浴にて0℃まで冷却を行った。
前述の2L反応フラスコ中の還流してあるn−プロパノール中に、ジビニルベンゼン、AIYP及びn−プロパノールが仕込まれた前記1L反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を60分間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成させた。
次に、ロータリーエバポレーターを用いてこの反応液を260gになるまで濃縮し、イオン交換水1,300gに滴下して、再沈殿を行った。得られた残渣を再度n−プロパノール130gに溶解させ、イオン交換水1,300gに滴下して再沈殿を行った。得られた淡黄色粉末を真空乾燥して、下記式[3]で示される目的物(HI−DVB)14.6gを得た。得られた目的物の1H−NMRスペクトルの測定結果を図2に示す。また、目
的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは29,000、分散度:Mw/Mnは2.35であった。
【化6】

【0041】
[実施例1乃至実施例4:有機薄膜太陽電池(ITO/PEDOT:PSS/P3HT:PCBM/HI−DVB/Cu)の作成]
図1に示すような有機薄膜太陽電池(以下、単に素子とも称する)を、陰極側のバッファ層(以下陰極バッファ層と称する)として前記合成例1で製造したイミダゾリン基含有高分子化合物(HI−DVB)を用いて作製した。
【0042】
<陽極バッファ層の作製>
透明電極としてガラス基板上にインジウム−スズ酸化物(ITO)透明電極が製膜された透明導電膜基板(膜厚150nm、表面抵抗10Ω/□:三谷真空社製 以下、ITO
基板と称する)を用いた。
該ITO基板上に、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)/ポリスチレンスルホン酸(PSS)の溶液(C.Starck社製、AI4083)を用いて2,0
00rpm、30秒でスピンコートにより製膜し、大気中ホットプレートを用いて130℃、20分間アニールして陽極バッファ層を形成した。
【0043】
<光電変換層(P3HT:PCBM)の作製>
次に、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)(P3HT)、フェニル−C61−ブチル酸メチルエステル)(PCBM)の1:1(質量比)の3wt%オルトジクロロベンゼン溶液をグローブボックス内で調製した。この溶液をグローブボックス内で50℃で遮光して、12時間攪拌した。
次に、このP3HT:PCBM(1wt:1wt)の3wt%オルトジクロロベンゼン溶液を孔径0.20μmのPTFE製ディスポーザブルメンブレンフィルター(DISMIC series 13JP050AN:ADVANTEC社)により濾過した後、前述の陽極バッファ層を製膜した基板上に2〜3滴滴下し、スピンコーターを用いて、1回目:500rpm、60秒、2回目:2,000rpm、1秒、3回目:500rpm、80秒の条件でスピンコートした。
その後、スピンコートした基板をホットプレートを用いて120℃、10分間アニールした。
【0044】
<陰極バッファ層の作製>
HI−DVBを秤量し、サンプル瓶に入れグローブボックス内に搬入し、グローブボックス内でイソプロパノールを溶媒として用いて溶液を調製した。この際、HI−DVB濃度は、0.03wt%、0.05wt%、0.10wt%とした。
その後、陽極バッファ層(PEDOT:PSS)と光電変換層(P3HT:PCBM)を製膜した基板の上に、HI−DVB溶液を孔径0.45μmであるシリンジフィルタ(親水性)を通して基板上に滴下し、スピンコーターを用い3,000rpm,30秒の条件でスピンコートした。
スピンコートした基板をホットプレートを用いて120℃、10分間アニールした。
【0045】
<金属電極(実施例1〜実施例3:Al、実施例4:Cu)の作製>
Al電極の作製:陰極バッファ層を形成した前記基板上に、アルミニウム小片(純度99.999%:(株)ニラコ)をタングステンバスケットに充填し、0〜20nmまで蒸着速度:1.0〜2.0Å/秒にて、その後、蒸着速度:3.0〜4.0Å/秒にて100nm蒸着した。
Cu電極の作製:陰極バッファ層を形成した前記基板上に、銅線(0.50mm 純度
99.9%:(株)ニラコ)をタングステンボートに充填し、0〜20 nmまで蒸着速度1.0〜2.0Å/秒にて、その後、蒸着速度:1.0〜2.0Å/秒にて70nm蒸着した。
【0046】
上記のようにして作製した素子を、グローブボックス内で封止した。すなわち、円柱状の封止ガラスの縁上にUV硬化型エポキシ樹脂の封止剤(XNR 5516Z:ナガセケムテックス(株))をのせ、UVランプ(スポットキュア SP3:ウシオ電機(株))を用いてUV硬化させ、封止素子を作製した。
なお作製した有機薄膜太陽電池の模式図を図1に示す。
【0047】
[比較例1及び比較例2]
陰極バッファ層を用いない以外は、実施例と同様にして素子作製を行った。
なお、比較例1においては金属電極をAlに、比較例2においてはCuとした。
【0048】
[有機薄膜太陽電池の測定方法]
上記実施例1乃至実施例4及び比較例1及び比較例2で作製した有機薄膜太陽電池について、それぞれ大気下の光電変換効率(PCE)、短絡電流密度(JSC)及び開放端電圧
(VOC)について測定し、各素子の耐久性を評価した。
〔測定手順〕
基板の2mm×2mmの正四角形の実効素子面を遮光シートで囲み、直径3mmのホールに合わせ大気下で測定を行った。
なお、素子の電極とソースメジャーユニットの接続には金線(純度99.95%、直径0.05mm:(株)ニラコ)と銀ペースト(ドータイト D−550:藤倉化成(株))を用いた。
【0049】
【表1】

【0050】
表1に示すように、陰極がアルミニウムである実施例1〜実施例3と比較例1の素子を比較すると、実施例の素子は比較例の素子と比較して、いずれも高い短絡電流密度、開放端電圧、変換効率を示した。すなわち、HI−DVBを陰極バッファ層に用いることで、従来陰極バッファ層として用いられているLiF(フッ化リチウム)を用いたときと同程度の開放端電圧Voc(0.58V)を実現できることがわかった。
また、陰極が銅の場合(実施例4及び比較例2)においても実施例の素子の開放端電圧Vocは0.5Vを超えていると結果となった。すなわち、銅のような酸化されやすい金属を電極に用いることも可能であることが示された。
【符号の説明】
【0051】
10 透明電極
11 陽極バッファ層
12 光電変換層
13 陰極バッファ層
14 金属電極
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】
【特許文献1】特開2008−135500号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上の透明電極と、金属電極と、これら両電極の間に介在する光電変換層と、該光電変換層と金属電極との間で金属電極と接触するように形成された陰極バッファ層とを備えてなる有機薄膜太陽電池において、
前記陰極バッファ層はアミノ官能基またはイミノ官能基を末端に有する高分子化合物からなることを特徴とする有機薄膜太陽電池。
【請求項2】
前記高分子化合物が、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量が1,000乃至2,000,000である高分岐ポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項3】
前記高分子化合物が、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAを、該モノマーAに対して5モル%乃至200モル%のアミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bの存在下で重合させることにより得られる高分岐ポリマーである、請求項1又は請求項2に記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項4】
前記アミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bが、ヘテロ環アミン構造を有する重合開始剤である、請求項3に記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項5】
前記アミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bが、式[1]で表される官能基を有する重合開始剤である、請求項3又は請求項4に記載の有機薄膜太陽電池。
【化1】

(式[1]中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至6の
アルキル基又は炭素原子数1乃至6のヒドロキシアルキル基を表し、またR1、R2及びR3の任意の2つ以上はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、環を形成していてもよ
い。)
【請求項6】
前記アミノ官能基又はイミノ官能基を有する重合開始剤Bが、式[2]で表される重合開始剤である、請求項3乃至請求項5のうち何れか一項に記載の有機薄膜太陽電池。
【化2】

(式[2]中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至6の
アルキル基又は炭素原子数1乃至6のヒドロキシアルキル基を表し、またR1、R2及びR3の任意の2つ以上はそれらが結合する窒素原子と一緒になって、環を形成していてもよ
く、R4及びR5はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基を表す。)
【請求項7】
A)透明電極が基板表面上に形成された透明基板を準備する段階と、
B)その上又は上方に光電変換層を形成する段階と、
C)該光電変換層の上又は上方に陰極バッファ層を形成する段階と、
D)さらにその上に金属電極を積層する段階と
を有してなる有機薄膜太陽電池の製造方法。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−186343(P2012−186343A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48925(P2011−48925)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】