説明

有機EL素子の封止方法

【目的】長寿命の有機ELデバイスを製造することが可能な、有機EL素子の封止方法を提供する
【構成】互いに対向する2つの電極間に蛍光性の有機固体からなる発光層が少なくとも介在してなる積層構造体を有する有機EL素子の前記積層構造体の外表面に、電気絶縁性高分子化合物からなる保護層を設けた後、この保護層の外側に、電気絶縁性ガラス、電気絶縁性高分子化合物および電気絶縁性気密流体からなる群より選択される1つからなるシールド層を設ける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)の封止方法に係り、特に有機EL素子の封止方法に関する。
【0002】
【背景技術】EL素子には無機EL素子と有機EL素子とがあり、いずれのEL素子も自己発光性であるために視認性が高く、また完全固体素子であるために耐衝撃性に優れるとともに取扱が容易である。このため、グラフィックディスプレイの画素やテレビ画像表示装置の画素、あるいは面光源等としての研究開発および実用化が進められている。有機EL素子は、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層とトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層、または発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層、あるいは正孔注入層と発光層と電子注入層とを、2つの電極(発光面側の電極は透明電極)間に介在させた積層構造体を、一般に基板上に形成してなる。
【0003】このような有機EL素子は、発光層に注入された電子と正孔とが再結合するときに生じる発光を利用するものである。このため有機EL素子は、発光層の厚さを薄くすることにより例えば4.5Vという低電圧での駆動が可能で応答も速いといった利点や、輝度が注入電流に比例するために高輝度のEL素子を得ることができるといった利点等を有している。また、発光層とする蛍光性の有機固体の種類を変えることにより、青、緑、黄、赤の可視域すべての色で発光が得られている。有機EL素子は、このような利点、特に低電圧での駆動が可能であるという利点を有していることから、現在、実用化のための研究が進められている。
【0004】ところで、有機EL素子の発光層の材料である蛍光性の有機固体は、水分、酸素等に弱い。また、発光層上に直接あるいは正孔注入層または電子注入層を介して設けられる電極(以下、対向電極ということがある)は、酸化により特性が劣化し易い。このため、従来の有機EL素子を大気中で駆動させると発光特性が急激に劣化する。したがって、実用的な有機EL素子や有機ELデバイスを得るためには、発光層に水分や酸素等が侵入しないように、また対向電極が酸化されないように、素子を封止して長寿命化を図る必要がある。
【0005】しかしながら、有機EL素子については、有効な封止方法が未だ開発されていない。例えば、無機EL素子を封止する方法、すなわち、背面電極(対向電極)の外側に背面ガラス板を設け、背面電極と背面ガラス板との間にシリコーンオイルを封入する方法を有機EL素子に適用した場合には、対向電極を介して、あるいは対向電極と正孔注入層または電子注入層とを介してシリコーオイルが発光層に侵入し、このシリコーンオイルにより発光層が変性してしまうために、有機EL素子の発光特性が大幅に劣化するかもしくは全く発光しなくなる。また、機械的保護等のために設けられている樹脂コーティング層を有機EL素子の封止に応用した場合にも、樹脂コーティング液(一般に、溶媒はテトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒か、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒)が上記のようにして発光層を溶かしてしまうために、有機EL素子の発光特性が大幅に劣化するかもしくは全く発光しない。
【0006】有機EL素子開発のこのような動向の中にあって、本発明者らは、前述の積層構造体を特定のフッ素系高分子薄膜で被覆することにより長寿命の有機ELデバイスを得ることに成功し、この有機ELデバイスについては既に特許出願を行った(特願平2−336450号、特願平2−409017号、特願平3−129852号。以下、これらを先願の有機ELデバイスと総称することがある。)。
【0007】
【発明の目的】本発明の目的は、先願の有機ELデバイスよりも長寿命の有機ELデバイスを製造することが可能な、有機EL素子の封止方法を提供することにある。
【0008】
【目的を達成するための手段】上記目的を達成する本発明の方法は、互いに対向する2つの電極間に蛍光性の有機固体からなる発光層が少なくとも介在してなる積層構造体を有する有機EL素子の前記積層構造体の外表面に、電気絶縁性高分子化合物からなる保護層を設けた後、この保護層の外側に、電気絶縁性ガラス、電気絶縁性高分子化合物および電気絶縁性気密流体からなる群より選択される1つからなるシールド層を設けることを特徴とするものである。
【0009】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の方法は、上述のように、互いに対向する2つの電極間に蛍光性の有機固体からなる発光層が少なくとも介在してなる積層構造体の外表面に保護層を設け、この保護層の外側にシールド層を設けることにより、有機EL素子を封止するものである。ここで、上記積層構造体の構成としては下記■〜■電極(陰極)/発光層/正孔注入層/電極(陽極)
■電極(陽極)/発光層/電子注入層/電極(陰極)
■電極(陽極)/正孔注入層/発光層/電子注入層/電極(陰極)
■電極(陽極または陰極)/発光層/電極(陰極または陽極)
があるが、本発明の方法はいずれの構成の積層構造体を有する有機EL素子に対しても適用することができる。また、これらの積層構造体の形状、大きさ、材質、製造方法等は有機EL素子の用途等に応じて適宜選択されるものであるが、本発明の方法では積層構造体の形状、大きさ、材質、製造方法等は問わない。ただし、長寿命の有機EL素子を得るうえからは、積層構造体の形成過程での発光層の特性劣化をできるだけ抑止することが望ましく、そのためには、発光層の形成から対向電極の形成までを一連の真空環境下で行うことが特に好ましい。
【0010】本発明の方法では、まず、上述した積層構造体の外表面に電気絶縁性高分子化合物膜からなる保護層を設ける。保護層は、少なくとも対向電極の主表面上に設けられていればよいが、積層構造体の外表面全面に設けられていることが特に好ましい。また、構造上、対向電極が発光層、正孔注入層または電子注入層のいずれかの層の主表面の一部に設けられている有機EL素子では、少なくとも、対向電極の下地となった層の主表面のうちで対向電極が設けられていない部分上と、対向電極の主表面上とに保護層を設けることが好ましい。
【0011】保護層の材料である電気絶縁性高分子化合物は、物理蒸着法(以下、PVD法ということがある)により成膜可能なもの、化学気相蒸着法(以下、CVD法ということがある)により成膜可能なもの、またはパーフルオロアルコール、パーフルオロエーテル、パーフルオロアミン等のフッ素系溶媒に可溶のものであればよいが、透湿度の小さなものが特に好ましい。各電気絶縁性高分子化合物の具体例としては、それぞれ以下のものが挙げられる。
【0012】■PVD法により成膜可能な電気絶縁性高分子化合物ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド(2種類のモノマーを基板上に堆積させて重合させたもの。テクニカルジャーナル,1988,30,22参照。)、ポリユリア(2種類のモノマーを基板上に堆積させて重合させたもの。テクニカルジャーナル,1988,30,22参照。)、特開昭63−18964号公報に開示されているフッ素系高分子化合物、特開昭63−22206号公報に開示されているフッ素系高分子化合物、特開昭63−238115号公報に開示されているフッ素系高分子化合物、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、環状構造を有する含フッ素共重合体(特願平3−129852号公報参照)等。
【0013】■CVD法[プラズマ重合法(プラズマCVD)]により成膜可能な電気絶縁性高分子化合物ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルトリメチルシラン、ポリメチルトリメトキシシラン、ポリシロキサン等。
【0014】■パーフルオロアルコール、パーフルオロエーテル、パーフルオロアミン等のフッ素系溶媒に可溶の電気絶縁性高分子化合物特開昭63−18964号公報に開示されているフッ素系高分子化合物、特開昭63−22206号公報に開示されているフッ素系高分子化合物、特開昭63−238115号公報に開示されているフッ素系高分子化合物、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、環状構造を有する含フッ素共重合体(特願平3−129852号公報参照)等のフッ素系高分子化合物。
【0015】保護層は、用いる高分子化合物に応じて、それぞれPVD法(上記■の高分子化合物)、CVD法(上記■の高分子化合物)、キャスト法またはスピンコート法(上記■の高分子化合物)により設けることができる。保護層の厚さは、用いる材料や形成方法にもよるが、10nm〜100μmであることが好ましい。また、保護層を設けた側を発光面とする場合には、有機EL素子からのEL光に対する透光性に優れた保護層が得られるように材料および形成方法を選択する。各方法による保護層の形成は、例えば以下のようにして行うことができる。
【0016】・PVD法PVD法としては、真空蒸着法(蒸着重合法を含む)、スパッタ法等を適用することができるが、特に、真空蒸着法またはスパッタ法を適用することが好ましい。なお真空蒸着法およびスパッタ法は、例えば以下のように細分することができるが、いずれの手法であっても適用することができる。
a.真空蒸着法抵抗加熱法、電子ビーム加熱法、高周波誘導加熱法、反応性蒸着法、分子線エピタキシー法、ホットウォール蒸着法、イオンプレーティング法、クラスターイオンビーム法、蒸着重合法等b.スパッタ法2極スパッタ法、2極マグネトロンスパッタ法、3極および4極プラズマスパッタ法、反応性スパッタ法、イオンビームスパッタ法等成膜条件は原料および適用するPVD法の種類により異なるが、例えば真空蒸着法(抵抗加熱法、電子ビーム加熱法、高周波誘導加熱法)の場合は、蒸着前真空度は概ね1×10-2Pa以下好ましくは6×10-3Pa以下、蒸着源の加熱温度は概ね700℃以下好ましくは600℃以下、基板温度は概ね200℃以下好ましくは100℃以下であり、蒸着速度を50nm/秒以下好ましくは3nm/秒以下として成膜することが望ましい。
【0017】・CVD法エチレン、プロピレン等の気体のモノマーをプラズマにより重合するプラズマ重合が好ましい。一般の熱分解CVDは基板温度が高温になるため不適である。
【0018】・キャスト法原料を、パーフルオロアルコール、パーフルオロエーテルまたはパーフルオロアミン等のフッ素系溶媒に溶解させ、この溶液を積層構造体上に展開した後、8〜16時間風乾させることにより保護層を得る。乾燥時間は8時間以上であれば何時間でもよいが、16時間を超えて乾燥させても乾燥の程度に大きな差はでないので不適である。乾燥時間は通常、12時間程度が適当である。溶液中の原料の濃度は目的とする保護層の厚さに応じて適宜選択される。
【0019】・スピンコート法上記キャスト法の場合と同様にして得た溶液を、100〜20000rpm好ましくは200〜8000rpmで回転させている積層構造体上に適当量滴下し、この積層構造体をそのままさらに5〜60秒好ましくは10〜30秒回転させた後、キャスト法の場合と同様にして乾燥させることにより保護層を得る。このときの溶液の滴下量は、積層構造体あるいは封止しようとする有機EL素子の大きさにより異なるが、通常のスライドガラスの大きさ(25×75×1.1mm)の積層構造体または有機EL素子で0.6〜6ml好ましくは0.5〜3mlである。溶液中の原料の濃度はキャスト法の場合と同様に、目的とする保護層の厚さに応じて適宜選択されるが、その範囲はキャスト法の場合より狭く、膜厚の制御や膜の均一性等の点から、1〜40g/100ml好ましくは4〜20g/100mlである。
【0020】なお、キャスト法およびスピンコート法のいずれの方法においても、風乾後に真空乾燥機等を用いて、30〜100℃好ましくは50〜80℃で、1〜24時間好ましくは8〜16時間、さらに乾燥することが望ましい。
【0021】長寿命の有機EL素子を得るうえからは、保護層の形成過程での発光層や対向電極の特性劣化をできるだけ抑止することが望ましく、そのためにはPVD法やCVD法により真空環境下で保護層を設けることが特に好ましい。そして、同様の理由から、積層構造体を構成する発光層の形成から保護層の形成までを一連の真空環境下で行うことが特に好ましい。
【0022】本発明の方法では、このようにして設けた保護層の外側に、電気絶縁性ガラス、電気絶縁性高分子化合物および電気絶縁性気密流体からなる群より選択される1つからなるシールド層を設ける。このとき、積層構造体は保護層により守られたかたちになっているので、シールド層の形成には種々の方法を適用することができる。以下、材料毎にシールド層の形成方法を説明する。
【0023】a.電気絶縁性ガラスガラス基板等の基板上に設けられた積層構造体の外表面に保護層を設けた後、保護層の上からこの電気絶縁性ガラスを被せ、基板の縁部と電気絶縁性ガラスの縁部とを接着剤等を用いて貼り合わせることによりシールド層を設ける。この電気絶縁性ガラスにおける保護層側の表面は、フォトマスクグレードの研磨面であることが好ましい。また、このガラスはアルカリ含有量の少ない高体積抵抗(350℃において107 Ωm以上)のものが好ましく、具体例としてはコーニング社製#7059が挙げられる。この電気絶縁性ガラスは、保護層に直接接触させて設けてもよいし、ポリビニルアルコールやナイロン66等からなる吸湿層を介して保護層の外側に設けてもよい。吸湿層を介在させる場合、吸湿層は予め電気絶縁性ガラスの表面に設けておくことが好ましい。また、この場合のガラス面は、フォトマスクグレードより粗い面でもよい。
【0024】b.電気絶縁性高分子化合物電気絶縁性の液状樹脂または固形樹脂を用いて、例えば以下の方法によりシールド層を形成する。なお、以下に例示する方法のうち、浸漬法およびトランスファー成形法では素子全体(積層構造体が基板上に設けられている場合はこの基板も含める)がシールド層により覆われるため、封止しようとする有機EL素子からのEL光に対して実用上十分な透光性が得られるようにシールド層の材料を選択する。また、他の方法では、積層構造体が基板上に設けられている場合には保護層側の面だけにシールド層を形成することが可能であるため、保護層側の面を発光面としない限りは、シールド層の透光性については勘案しなくてもよい。
【0025】1.液状樹脂を用いる場合・注型法:この方法では、保護層を設けた有機EL素子(以下、保護層付素子ということがある)を型容器内に置き、この型容器内へ、触媒や硬化剤を添加しておいた液状樹脂を注入して保護層付素子の保護層側の面をこの液状樹脂により覆い、硬化・離型した後にオーブン中で完全に硬化させることによりシールド層を設ける。より好ましくは、硬化・離型の後に、温度制御したオーブン中で硬化させる。この場合の液状樹脂は、電気絶縁性(以下、条件(i) ということがある)であれば熱硬化型でも光硬化型でもよいが、保護層側の面を発光層とする場合には、封止しようとする有機EL素子からのEL光に対して実用上十分な透光性を有する(以下、条件(ii)ということがある)樹脂層が得られるものを選択する。また熱硬化型の樹脂については、保護層を形成している電気絶縁性高分子化合物の軟化点よりも硬化温度が低い(以下、条件(iii) ということがある)ものを用いることが好ましい。
【0026】条件(i) および(ii)を満たす熱硬化型の液状樹脂の中で特に好ましいものとしては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、エポキシシリコーン樹脂、フェノール樹脂、ジアクリルフタレート樹脂、アルキッド樹脂等が挙げられ、実用に際しては、条件(iii) を満たすか否かにより適宜選択される。また条件(i) および(ii)を満たす光硬化型の液状樹脂としては、BY−300B(エン・チオール系の光硬化型液状樹脂の商品名、旭電化社製)、BU−230U(アクリル系の光硬化型液状樹脂の商品名、東亜合成化学社製)、UV1001(ポリエステル系の光硬化型液状樹脂の商品名、ソニーケミカル社製)等の紫外線硬化型のものや、LCR000(商品名、アイ・シー・ジャパン社製)等の可視光硬化型のものが挙げられる。これらの液状樹脂の硬化温度および硬化時間は樹脂によって異なるが、例えば熱硬化型のエポキシ樹脂を用いた場合は160〜180℃で1〜2分である。また、熱硬化型および光硬化型のいづれの液状樹脂についても、触媒や硬化剤を樹脂に添加した後に真空中での脱気工程を加えることがより好ましい。
【0027】・真空ポッティング法:この方法では、上述した注型法の全工程を真空中で行うことによりシールド層を設ける。注型法よりもさらに好ましい方法である。
【0028】・浸漬法:この方法では、前述した液状樹脂中に保護層付素子を浸漬した後に引上げ、この後、保護層付素子に付着した液状樹脂液を加熱処理または風乾により硬化させることによりシールド層を設ける。樹脂は、条件(i)および(ii)を満たすものであれば種々の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂を用いることができる。
【0029】・その他:液状樹脂をヘラ等により保護層付素子の保護層側の面に塗布した後に硬化させるとにより、シールド層を設けてもよい。液状樹脂としては上述した液状樹脂をそのまま用いることができるが、保護層側の面を発光面としない場合には、条件(ii)を満たさない液状樹脂であっても用いることができる。
【0030】2.固形樹脂を液状にして用いる場合・ホットメルト法:この方法では、加熱溶融した樹脂を注型あるいは真空ポッティングすることによりシールド層を設ける。この方法で用いる樹脂としては、条件(i) を満たし、かつ保護層を形成している電気絶縁性高分子化合物の軟化点よりも融点の低い(以下、条件(iv)ということがある)熱可塑性樹脂が好ましい。
【0031】条件(i) を満たす熱可塑性樹脂の具体例としてはポリ塩化ビニル、ポリ臭化ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリルニトリル共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリルニトリル三元共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、特開昭63−18964号公報に開示されているフッ素系高分子化合物、特開昭63−22206号公報に開示されているフッ素系高分子化合物、特開昭63−238115号公報に開示されているフッ素系高分子化合物等の、ハロゲン化ビニル重合体またはハロゲン化ビニル共重合体;
【0032】ポリビニルアルコール、ポリアリルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリアリルエーテル等の、不飽和アルコールもしくは不飽和エーテルの重合体または不飽和アルコールと不飽和エーテルとの共重合体;アクリル酸やメタアクリル酸等の不飽和カルボン酸の重合体または共重合体;ポリ酢酸ビニル等のポリビニルエステルやポリフタル酸等のポリアクリルエステル等、アルコール残基中に不飽和結合を持つものの重合体または共重合体;ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、マレイン酸エステル重合体、フマル酸エステル重合体等の、酸残基中または酸残基中とアルコール残基中とに不飽和結合を持つものの重合体または共重合体;アクリルニトリル重合体、メタアクリルニトリル重合体、アクリルニトリルとメタアクリルニトリルとの共重合体、ポリシアン化ビニリデン、マロノニトリル重合体、フマロノニトリル重合体、マロノニトリルとフマロノニトリルとの共重合体;
【0033】ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、ポリp−メチルスチレン、スチレン−p−メチルスチレン共重合体、ポリビニルベンゼン、ポリハロゲン化スチレン等、芳香族ビニル化合物の重合体また共重合体;ポリビニルピリジン、ポリ−N−ビニルピロリジン、ポリ−N−ビニルピロリドン等、複素環式化合物の重合体または共重合体;ポリカーボネート等のポリエステル縮合物や、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド縮合物;無水マレイン酸、無水フマール酸、無水マレイン酸のイミド化合物および無水フマール酸のイミド化合物からなる群より選択される1種の物質の重合体、または前記群より選択される少なくも2種の物質の共重合体;ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート等の耐熱性高分子化合物;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、特開平2−253952号公報に開示されているサーモトロピック液晶ポリマー;等が挙げられ、実用に際しては、条件(iv)を満たすか否かにより適宜選択される。
【0034】・流動浸漬法:微細孔底板と、多孔質底板と、この多孔質底板の下方に空気(圧搾空気)溜りとを備えた容器を用い、この容器の微細孔底板上に200〜300メッシュの大きさに粉砕した固形樹脂(粉体樹脂)を置いて、下方から多孔質底板を介して圧搾空気を流すと、粉体樹脂は流体のように扱うことができる。したがって、この方法では、粉体樹脂に圧搾空気を流した状態の容器を傾けて、粉体樹脂の軟化点以上の温度に加熱した保護層付素子をこの容器内に入れ、加熱された保護層付素子に粉体樹脂を溶融付着させることによりシールド層を設ける。この方法で使用する樹脂としては、ホットメルト法の説明の中で例示した熱可塑性樹脂が好ましい。
【0035】・トランスファー成形法:この方法では、保護層付素子を金型(小穴を有するもの)内に置き、ポット内で溶融させた樹脂を、小穴を通じて金型のキャビティ内に送り込んで硬化させることによりシールド層を設ける。この方法で使用する樹脂としては、ホットメルト法の説明の中で例示した熱可塑性樹脂の中で前述の条件(ii)を満たすものが好ましい。
【0036】・その他:樹脂溶液を保護層付素子の保護層側の面に塗布した後、樹脂溶液中の溶媒を加熱処理または風乾により揮散させることによりシールド層を設けてもよい。この場合の樹脂は、保護相側の面を発光面としない場合には少なくとも条件(i) を満たし、かつハロゲン系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、フッ素系溶媒等の溶媒のいずれかに可溶であればよい。好ましい樹脂としては、アクリル樹脂、ポリスチレン等が挙げられる。また、有機溶媒揮散型接着剤も好ましい例の1つであり、具体的には1001B(エラストマー系の有機溶媒揮散型接着剤の商品名、日本ゼオン社製)やSG4693(有機溶媒揮散型接着剤の商品名、3M社製)等がある。
【0037】3.フィルム封止この方法では、高分子フィルムで保護層付素子を覆うことによりシールド層を設ける。この場合、保護層付素子の全体(積層構造体が基板上に設けられている保護層付素子ではこの基板も含める)を高分子フィルムで覆ってもよし、積層構造体が基板上に設けられている保護層付素子では、保護層付素子の保護層側の面のみを高分子フィルムで覆ってもよい。保護層付素子の全体を高分子フィルムで覆う場合は、高分子フィルを上下から保護層付素子に被せ、上下の高分子フィルム同士を保護層付素子の縁部にそって互いに熱融着させる。また、保護層側の面のみを高分子フィルムで覆う場合は、高分子フィルムの縁部と基板とを接着剤等により接着させるか、積層構造体が高分子基板上に設けられている場合には高分子フィルムの縁部と基板とを熱融着させる。
【0038】高分子フィルムの材質は条件(i) および(ii)を満たす高分子化合物が好ましい。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリアクリルニトリル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ジアクリルフタレート樹脂、セルロース系プラスチック、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等や、これらの2つまたは3つ以上の共重合体が挙げられる。特に好ましい高分子フィルムとしては、ポリビニルフロライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、特開昭63−18964号公報に開示されているフッ素系高分子化合物、特開昭63−22206号公報に開示されているフッ素系高分子化合物、特開昭63−238115号公報に開示されているフッ素系高分子化合物等のような透湿度の小さい高分子化合物を延伸等の方法でフィルムにしたものが挙げられる。なお、保護層付素子における発光面以外の面を覆う高分子フィルムは、条件(ii)を満たさなくてもよい。
【0039】このとき用いる高分子フィルムは単層でもよいが、ナイロン66やポリビニルアルコール等からなる吸湿層が設けられた複層構造の高分子フィルムを用いることがより好ましい。吸湿層が設けられた複層構造の高分子フィルムは、吸湿層が少なくとも保護層と接するようにして使用する。
【0040】c.電気絶縁性気密流体前述した条件(i) を満たすガラス製容器、セラミクス製容器、プラスチック製容器等の容器内に、条件(i) を満たす気体または液体と共に保護層を設けた有機EL素子(保護層付素子)を封入することによりシールド層を設ける。保護層付素子の発光面の外側にも容器壁および気密流体を位置させる場合には、これらは前述した条件(ii)をも満たす必要がある。積層構造体が基板上に設けられている保護層付素子では、この基板を上記容器の一部として利用してもよい。容器の形成は、必要部材同士を低融点ガラス、ハンダ、気密封止用エポキシ樹脂等で接着することにより行われる。容器内に封入する気体としては、Heガス、Arガス、Neガス等の不活性ガスが好ましい。また液体としては、シリコーンオイル等が好ましい。基板を容器の一部として利用してこの容器内に液体を封入する場合には、保護層付素子の保護層側を発光面としないことを前提として、シリカゲル、活性炭等の吸湿材を混入させてもよい。
【0041】以上説明したようにして保護層とシールド層とを設けることにより、これらの層により水分や酸素の発光層への侵入が抑制され、これにより有機EL素子が長寿命化される。
【0042】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
実施例125×75×1.1mmのサイズのガラス板[HOYA(株)製の白板ガラス]を基板として用い、この基板上にITO膜を100nmの厚さで成膜して透明電極とした(以下、ITO膜が成膜された基板を透明支持基板という)。この透明支持基板をイソプロピルアルコールで30分間超音波洗浄した後、純水で5分間洗浄し、その後イソプロピルアルコールでリンスした後に乾燥N2 ガスを吹き付けて乾燥させた。そして最後に、UVオゾン洗浄装置[(株)サムコインターナショナル製]で10分間洗浄した。洗浄後の透明支持基板を市販の真空蒸着装置[日本真空技術(株)製]の基板ホルダーに固定し、モリブデン製抵抗加熱ボートにN,N′−ジフェニル−N,N′−ビス−(3−メチルフェニル)−[1,1′−ビフェニル]−4,4′−ジアミン(以下、TPDAという)を200mg入れ、他のモリブデン製抵抗加熱ボートに昇華精製されたトリス(8−キノリノール)アルミニウム(以下、Alq.という)を200mg入れて、真空チャンバー内を1×10-4Paまで減圧した。
【0043】次に、TPDAを入れた前記抵抗加熱ボートを215〜220℃まで加熱して、TPDAを蒸着速度0.1〜0.3nm/sでITO膜上に堆積させて、膜厚60nmの正孔注入層を成膜した。このときの基板温度は室温であった。次いで、正孔注入層が成膜された透明支持基板を基板ホルダーに固定したまま、Alq.を入れたモリブデン製抵抗加熱ボートを275℃まで加熱して、Alq.を蒸着速度0.1〜0.2nm/sで正孔注入層上に堆積させて、膜厚60nmの発光層を成膜した。このときの基板温度も室温であった。次に、マグネシウム1gを予め入れておいたモリブデン製抵抗加熱ボートと銀500mgを予め入れておいたモリブデン製抵抗加熱ボートとをそれぞれ加熱し、マグネシウムを約1.5nm/sの蒸着速度で蒸着させ、同時に銀を約0.1nm/sの蒸着速度で蒸着させて、マグネシウムと銀との混合金属からなる膜厚150nmの電極(対向電極)を発光層上に設けた。ガラス基板上にITO膜(電極)、正孔注入層、発光層、および対向電極を設けたことで有機EL素子が得られた。
【0044】この後、ガラス基板上に設けられたITO膜、正孔注入層、発光層、および対向電極からなる積層構造体の外表面に、積層構造体の形成に用いた真空蒸着装置と同じ装置を用いて、正孔注入層および発光層の形成からの一連の真空環境下で、以下の要領で保護層を設けた。まず、蒸着源としてテトラフルオロエチレンとパーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールとの無定形共重合体粉末(商品名テフロンAF、デュポン社製)1.5gを収容したアルミナ製坩堝を予め入れておいたタングステン製バスケットの上方(アルミナ製坩堝の上)に12μmφのステンレス製メッシュをかぶせた。次いで、真空チャンバー内を1×10-4Paまで減圧した後、タングステン製バスケットに通電加熱して蒸着源を455℃に加熱して、積層構造体の外表面に蒸着速度0.5nm/sで膜厚0.8μm(800nm)のテフロンAF薄膜(保護層)を設けた。なお、ITO電極を除く各層の膜厚および蒸着速度は、真空チャンバー内に配置されている水晶振動式膜厚計[日本真空技術(株)製]により蒸着膜の膜厚をモニターしながら制御した。また、得られた各層の膜厚は触針式膜厚計で測定し、水晶振動式膜厚計の読みと一致することを確認した。
【0045】次に、保護層を設けた有機EL素子(以下、保護層付素子ということがある)を真空チャンバーから取り出して、保護層の外側に以下の要領でシールド層を設けた。まず、一主表面に吸湿層として膜厚350nmのポリビニルアルコール(以下、PVAという)層が設けられた電気絶縁性ガラス基板(ガラス板のサイズは25×75×1.1mm)を用意した。このガラス基板は、PVA粉末3重量%、塩酸0.5重量%、水96.5重量%を混ぜ合わせた液体1mlをスライドガラスに滴下し、スピンコート装置[ミカサ(株)製]で500rpm 、30秒の条件でスピンコートした後に8時間風乾し、さらに真空乾燥器[ヤマト化学(株)製]の中に入れ60℃で10時間乾燥させて得た。次いで、上記ガラス基板のPVA層側の面の縁部にエポキシ系接着剤(商品名セメダインスパー5、セメダイン社製)を幅約0.5mmで塗布した後、このガラス基板と保護層付素子とを重ね合わせた。このときの重ね合わせは、PVA層と保護層とが接するようにして行った。またエポキシ系接着剤は、主剤と硬化剤とをヘラで20回かき混ぜてから用いた。この後、エポキシ系接着剤を10時間大気中で硬化さて、電気絶縁性ガラス板からなるシールド層を設けた。
【0046】実施例2実施例1と全く同様にして有機EL素子を作製した後、積層構造体の形成に用いた真空蒸着装置の真空環境を一旦破ってから、積層構造体の形成に用いた真空蒸着装置と同じ装置を用いて、有機EL素子の積層構造体の外表面に以下の要領で保護層を設けた。まず、タングステン製のバスケットに、蒸着源として高密度ポリエチレン[商品名440M、出光石油化学(株)製]1gを収容したアルミナ製坩堝を入れ、このアルミナ製坩堝の上に12μmφのステンレス製メッシュをかぶせた。次いでサンプルホルダーに上で得られた有機EL素子をセットし、真空チャンバー内を1×10-4Paまで減圧した後、タングステン製バスケットに通電加熱して蒸着源を400℃に加熱して、積層構造体の外表面に0.5nm/sの蒸着速度で膜厚0.3μm(300nm)の高密度ポリエチレン薄膜(保護層)を設けた。この後、保護層を設けた有機EL素子を真空チャンバーから取り出して、以下の要領でシールド層を設けた。まず、エポキシ系接着剤(商品名セメダインスパー5、セメダイン社製)の主剤と硬化剤とをヘラで20回かき混ぜた。次いで、この混合物をヘラに乗せ、保護層の上に2mmの厚みで塗布した。この後、大気中に5時間放置してエポキシ系接着剤を硬化させることにより、シールド層を設けた。
【0047】実施例3図1に示すように、25×75×1.1mmのサイズのガラス板1[HOYA(株)製の白板ガラス]上に、10mm×75mm×100nmのITO膜2aおよび2bが成膜されたものを透明支持基板3として用いて、以下の要領で保護層付素子を得た。まず、ITO膜2aにマスクをかけた後に実施例1と全く同様にして、正孔注入層と発光層とを成膜した。次いで、蒸着装置に付いているマスク自動交換機構を用いて、ITO膜2aにかけたマスクを外した。次に、上記機構でもってITO膜2aの長手方向の外側縁部に幅5mmに亘ってマスクをかけた後、実施例1と全く同様にして対向電極と保護層とを設けて保護層付素子を得た。図2に示すように、このようにして得られた保護層付素子4では、2つのITO膜2aおよび2bの間のガラス板1表面上からITO膜2bの主表面上にかけて正孔注入層5が設けられており、この正孔注入層5上に発光層6が設けられている。そして、この発光層6上とITO膜2aの内側半分の主表面上とには対向電極7が設けられており、対向電極7の主表面上には保護層8が設けられている。この保護層付素子4では、ITO電極2b、正孔注入層5、発光層6、および対向電極7により積層構造体9が形成されている。これで、正孔注入層から保護層までが全て、一連の真空環境下で作製された。
【0048】この後、保護層付素子4を真空チャンバーから取り出して、以下の要領でシールド層を設けて、封止まで施した有機EL素子を得た。まず、ITO膜2bの長手方向の外側縁部から幅5mmに亘って、ITO膜2b上に設けられている正孔注入層5、発光層6、対向電極7および保護層8を切除した。またガラス板1の短手方向の縁部についても、その厚さが実質的にガラス板1の厚さとITO膜の厚さとの和になるように、幅5mmに亘って正孔注入層5、発光層6、対向電極7および保護層8を切除した。
【0049】次いで、18×73×2mmの凹部と、この凹部の底に設けられた直径2mmの貫通孔(以下、注入口という)とを有するガラス板(外寸:20×75×3mm、以下シールドガラスという)を用意し、このシールドガラスと保護層付素子4とをエポキシ系接着剤(商品名:セメダインスーパー5、セメダイン社製)により貼り合わせた。エポキシ系接着剤は、主剤と硬化剤とを混ぜ合わせてヘラで20回かき混ぜてから、上記保護層付素子4の縁部に幅1mmでほぼ20×75mmの長方形に塗布した。またシールドガラスと保護層付素子4とは、対向電極7および保護層8がシールドガラスの凹部内に収まるようにして貼り合わせた。貼り合わせ後、大気中に10時間放置して、エポキシ系接着剤を硬化させた。
【0050】次いで、シールドガラスに設けられている注入口から、吸湿用のシリカゲル(粒径50μm)を8体積%分散させたシリコーンオイル[商品名:TSK451、東芝(株)製。以下絶縁油という]を注入して、シールドガラスの凹部と保護層付素子とにより形成された空間内を絶縁油で満たした。この後、注入口をガラス製の蓋で封鎖して、シールド層まで設けた有機EL素子を得た。なお、ガラス製の蓋は、上述したエポキシ系接着剤によりシールドガラスに接着させた。
【0051】最終的に得られた有機EL素子の端面を模式的に図3に示す。図3に示すように、封止まで施した有機EL素子10は、ガラス板1の表面に設けられたITO膜2b、正孔注入層5、発光層6および対向電極7からなる積層構造体9を備え、この積層構造体9の外表面にはテフロンAF薄膜からなる保護層8が設けられている。そして、保護層8の外側には絶縁油からなるシールド層11が設けられており、シールド層11の外側には、このシールド層11を設けるためにエポキシ系接着剤12により貼り合わされたシールドガラス13が位置している。また、シールドガラス13に設けられている注入口14は、エポキシ系接着剤15により接着されたガラス製の蓋16により封鎖されている。なお対向電極7は、ガラス板1の表面に設けられたITO膜2aとも接している。
【0052】比較例1実施例1と全く同様にして有機EL素子を得、この有機EL素子には保護層およびシールド層を設けなかった。
【0053】比較例2実施例1と全く同様にして有機EL素子を得、この有機EL素子には実施例1と全く同様にして保護層のみを設けた。
【0054】比較例3実施例1と全く同様にして有機EL素子を得、この有機EL素子の対向電極上に直接、実施例2と同様にしてエポキシ系接着剤の硬化層を設けた。
【0055】寿命測定実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例3で得られた各有機EL素子を大気中に7日間放置した後、各試料に初期輝度が100cd/m2 になるように直流電流を流し、この後、定電流(初期輝度が100cd/m2になった直流電流値)で一定時間ごとに輝度を大気中で測定して、輝度が初期輝度の1/2になるのに要する時間を試料毎に測定した。また、輝度が初期輝度の1/2になった後も電流を流し続けて、輝度が0cd/m2 になるまでの時間を測定し、この時間を素子の破壊時間とした。なお輝度の測定は、その上に電子注入層が設けられたITO膜を陽極とし、このITO膜上に正孔注入層および発光層を介して設けられた対向電極を陰極としてこの有機EL素子に直流電源から電流を流し続け、有機EL素子からのEL光をフォトダイオードで光電変換して得られた出力電圧の値から輝度を算出することで行った。測定結果を表1に示す。
【0056】
【表1】


【0057】表1から明らかなように、本発明の方法により封止した実施例1〜実施例3の有機EL素子は、比較例1〜比較例3のいずれの有機EL素子よりも遥かに長寿命である。
【0058】
【発明の効果】以上説明したように、本発明を実施することにより、素子としての寿命の長い有機EL素子を提供することが可能になり、これに伴って長寿命の有機ELデバイスを提供することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は実施例3で用いた透明支持基板を模式的に示す斜視図である。
【図2】は実施例3で得られた保護層付素子の断面を模式的に示す図である。
【図3】は実施例3で最終的に得られた、封止まで施した有機EL素子を模式的に示す端面図である。
【符号の説明】
1…ガラス板、 2a,2b…ITO膜、 3…透明支持基板、 4…保護層付素子、 5…正孔注入層、 6…発光層、 7…対向電極、 8…保護層、9…積層構造体、10…封止まで施した有機EL素子、 11…シールド層、12,15…エポキシ系接着剤、 13…シールドガラス、 14…注入口、16…ガラス製の蓋。

【特許請求の範囲】
【請求項1】互いに対向する2つの電極間に蛍光性の有機固体からなる発光層が少なくとも介在してなる積層構造体を有する有機EL素子の前記積層構造体の外表面に、電気絶縁性高分子化合物からなる保護層を設けた後、この保護層の外側に、電気絶縁性ガラス、電気絶縁性高分子化合物および電気絶縁性気密流体からなる群より選択される1つからなるシールド層を設けることを特徴とする、有機EL素子の封止方法。
【請求項2】保護層を真空蒸着法により設ける、請求項1に記載の有機EL素子の封止方法。
【請求項3】発光層の形成から保護層の形成までを一連の真空環境下で行う、請求項1または請求項2に記載の有機EL素子の封止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平5−36475
【公開日】平成5年(1993)2月12日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−187906
【出願日】平成3年(1991)7月26日
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)