説明

有用な植物での植物寄生性の土壌センチュウによる植物被害を抑制する方法

【課題】
植物寄生性の土壌センチュウを殺滅することなく、低い施用薬量でかつ省力的に有用な植物でのセンチュウ被害を防止できるように、植物体へのセンチュウの侵入を阻止および/または侵入センチュウによる病害発生を抑制する方法を提供することが課題である。
【解決手段】
既知の化合物のクロラントラニリプロールを含有する水性の溶液剤または固体製剤を、土壌ないし有用な植物の植物体に施用することにより、センチュウの植物内侵入を阻止すると共にセンチュウ類によるネコブまたは病徴形成の被害を抑制する方法を提供する。クロラントラニリプロールの施用薬量が有用な植物の育成土壌の10アールあたり1g〜300g、特に、1g〜150gの範囲内、好ましくは5g〜30gの範囲内で調整されて、かつ土壌中の植物寄生性の土壌センチュウを殺滅する薬量よりも少ない量であるように調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人に有用な植物、特に農園芸分野での有用な植物における植物寄生性の土壌センチュウによる植物被害を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの野菜、花卉植物、果樹あるいは芝草等が植物寄生性の土壌センチュウに感染された結果として、これら植物の健全な成育を阻害する重要な病害が起ることは古くから知られている。例えば、イネ科、マメ科、ユリ科、ナス科、アカザ科、アブラナ科、キク科、ウリ科等の作物、芝草、リンゴ、モモ、ナシ、ブドウ、カキ、パイナップル等の果樹等の植物の根に侵入して、ゴール(ネコブ)を形成し、それによって根系全体が奇形となったり、岐根が生じたり、表皮がザラついたりして、品質や貯蔵性を著しく低下させるサツマイモネコブセンチュウによる病害が知られ、またニンジン、トマト、キュウリ、ダイズ等の作物に寄生して根の生長点付近に侵入して品質低下をきたすキタネコブセンチュウによる病害、ニンジン、ゴボウ、ダイコン等の根菜類に寄生し、品質低下や、収量低下を引き起こすミナミネグサレセンチュウによる病害、若い茶の苗に寄生して、成育を阻害するチャネグサレセンチュウの病害が知られている。さらに、ジャガイモの地下部に寄生し、根の組織を壊死させ、萎凋症状を発現させるジャガイモシストセンチュウによる病害は重大な問題である。
【0003】
従って、土壌中で生きている植物寄生性のネコブセンチュウ類、ネグサレセンチュウ類、シストセンチュウ類などの植物寄生性の土壌センチュウは、農園芸分野で防除すべき重要害虫となっている。一般的にこれら植物寄生性の土壌センチュウを殺滅する防除剤としては、燻蒸剤(例えば、臭化メチル、クロルピクリンなど)と接触剤(例えば、オキサミル、ピラクロホス、ホスチアゼートなど)がある(非特許文献1参照)。しかし、上記の燻蒸剤はいずれもその施用時には土への被覆作業が必須で作業効率が悪かったり、ガス抜きを行わなければ作物薬害を生じる場合がある。また刺激性のガスが発生するため、作業者ないし周辺住民の安全性に問題を生じる場合もある。また、上記の接触剤では、十分な土壌混和を行う必要があり、接触剤と土壌との混和が不十分だと効果が不安定になるなど、多くの解決すべき欠点を抱えている。
【0004】
他方、特許文献1に示される一般式(1)の殺節足動物性アントラニルアミドや、特許文献2に示される一般式(1)の殺節足動物性アントラニルアミドや、特許文献3に示される一般式(1)のシアノアントラニルアミド類などのアントラニルアミド誘導体が農園芸の害虫防除用殺虫剤として開発されている。これらの殺虫性アントラニルアミド誘導体は、人畜毒性が非常に低く、作物安全性が高いものであり、そして、茎葉散布剤、土壌処理剤として、鱗翅目害虫などの害虫防除に使用できる。また、これらのアントラニルアミド誘導体は節足動物でないセンチュウ類に対して殺センチュウ活性のあることが例えば特許文献2の56頁に多少とも記載されている。しかし、これら特許文献1〜3の公報にはそれに示されるアミド化合物の殺センチュウ活性を例証する実験例が全く開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004−538328号公報
【特許文献2】特開2005−41880号公報
【特許文献3】特開2006−290862号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「農薬ハンドブック 2005年版(改定新版)」196〜206頁、395〜406頁(社団法人日本植物防疫協会 平成17年10月11日発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的ないし課題は、植物寄生性の土壌センチュウを殺滅することなしに、低い施用薬量で該土壌センチュウが植物体に侵入するのを阻止することにより、および/または侵入し得た該土壌センチュウの感染もしくは食害によるネコブもしくは病徴形成を抑制することにより、有用な植物での植物寄生性の土壌センチュウによる植物被害を阻止または抑制するに適した方法であって、しかも実施にあたって、作業者への安全性が高く、薬剤による環境負荷が軽減され、作業性に優れた方法を提供することにある。かかる本発明の課題は、前記の特許文献1〜3の公報には記載されてない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意検討した。その結果、特許文献1〜2中に開示された化合物群のうち、特許文献1の41頁、表2の最下行、あるいは特許文献2の実施例6に記載された化合物であって、下記の式(1)
【化1】

で表される水溶性の化合物(一般名「クロラントラニリプロール」で知られる)は、これを植物寄生性の土壌センチュウに対して殺センチュウ活性の作用を示さないところの、10アールあたり1g〜300g、特に1g〜150gの範囲内、好ましくは5g〜30gまたは1g〜5gという低い施用薬量で有用な植物の育成土壌に施用した時には、該植物の根部に土壌センチュウが侵入するのを阻止できる活性ないし作用や、該化合物の存在下または不存在で植物体に侵入し得た該土壌センチュウの感染もしくは食害によるネコブもしくは病徴形成を抑制できる活性ないし作用を発現できることを、本発明者は知見した。そしてそれら知見により、有用な植物における植物寄生性の土壌センチュウによる植物被害を阻止または抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
従って、第1の本発明においては、次式(1)
【化2】

で表される化合物であって、殺センチュウ活性を有し且つ植物の根部から吸収される吸収性と共に植物体内の浸透移行性を有することが知られる水溶性の化合物を、該化合物を含有する粒剤もしくは粉剤の固体製剤の形で、または該化合物を溶解、含有する水性の溶液剤の形で、有用な植物を育成中の土壌へもしくは育成中の有用な植物の株元の所の土壌へ施用するか、これから有用な植物を育成する土壌全体へ施用するか、または有用な植物の植物体にもしくは有用な植物の種子に直接に施用し、これによって、該化合物を育成中の該有用な植物体内に吸収および浸透させ、しかも前記のとおり土壌へ、もしくは植物体または種子へ施用される該化合物の施用薬量は、植物寄生性の土壌センチュウを殺減するに足る量よりも少ない量であるが、但し該土壌センチュウが植物体の根に侵入するのを阻止する量であるか、または植物体中へ侵入し得たあとの該土壌センチュウの感染もしくは食害によるネコブもしくは病徴形成を抑制する量であるように調整することを特徴とする、植物寄生性の土壌センチュウの有用な植物の植物体への侵入を阻止し、および/または植物体中へ侵入し得た該土壌センチュウの感染もしくは食害によるネコブもしくは病徴形成を抑制する方法が提供される。
【0010】
前記される第1の本発明の方法は、例えば下記の3通りの実施態様(1)〜(3)で実施できる。
【0011】
(1)本化合物を含有する乳剤、水和剤またはフロアブル剤を水で希釈して調製されたところの、該化合物を200ppm〜1000ppmの濃度で溶解、含有した水性の溶液剤を、植物寄生性の土壌センチュウ非汚染の土壌で育成中のトマト苗、ナス苗、キュウリ苗、メロン苗、ダイコン苗、またはニンジン苗あるいはその他の有用な植物の苗の株元の所の土壌へ、該化合物の施用薬量が5g〜30g/10アールになる溶液量で灌注して施用し、これによって、前記の苗の植物体の根部から該化合物を吸収させて植物体内に浸透移行させ、その後、該化合物を吸収して含有したこの苗の植物体を植物寄生性の土壌センチュウで汚染された圃場土壌に移植、定植させ、定植後に育成中である植物体への土壌センチュウの侵入を阻止し、および/または植物体中へ侵入し得た該土壌センチュウの感染もしくは食害によるネコブもしくは病徴形成を抑制する方法。
【0012】
(2)本化合物を含有する乳剤、水和剤またはフロアブル剤を水で希釈して調製されたところの、該化合物を200ppm〜1000ppmの濃度で溶解、含有した水性の溶液剤、または該化合物含有の粒剤または粉剤を、播種されたダイコンまたはニンジンの種子あるいはその他の有用な植物の種子を含有する植物寄生性の土壌センチュウで汚染された圃場土壌へ、該化合物の施用薬量が5g〜30g/10アールになる量で施用し、その後に種子を発芽させ、発芽後に育成中であるこの有用な植物の植物体が土壌から該化合物を経根吸収して植物体内に浸透移行するようにさせ、そして育成中である植物体が含有する該
化合物の作用に由り、植物寄生性の土壌センチュウの植物体への侵入を阻止し、および/または植物体中へ侵入し得た該土壌センチュウの感染もしくは食害によるネコブもしくは病徴形成を抑制する方法。
【0013】
(3)本化合物を含有する水溶性製剤を水に希釈して調製されたところの、該化合物を200ppm〜1000ppmの濃度で溶解、含有した水性の溶液剤中に、定植前のセンチュウ非感染のサツマイモ苗の茎部を浸漬処理し、該化合物を吸収させて植物体内に浸透移行させ、その後、該化合物を吸収して含有したこのサツマイモ苗の植物体を土壌ネコブセンチュウで汚染された圃場土壌に移植し、定植後に育成中の植物体への土壌ネコブセンチュウの侵入を阻止し、および/または該土壌ネコブセンチュウの感染によるサツマイモ植物のネコブ形成を抑制する方法。
【0014】
さらに、第2の本発明においては、本化合物を1000ppm以下の濃度、好ましくは200ppm〜500ppmの濃度で溶解、含有する水性の溶液剤である液状組成物であって、植物寄生性の土壌センチュウで汚染された圃場土壌に対して、該化合物の施用薬量が1g〜300g/10アール、特に1g〜150g/10アールの範囲内、好ましくは5g〜30g/10アールの範囲内になるような溶液量で施用されることを特徴とする、植物寄生性の土壌センチュウの有用な植物の植物体への侵入を阻止し、および/または植物体中へ侵入し得た該土壌センチュウの感染もしくは食害によるネコブもしくは病徴形成を抑制する方法で使用される、液状組成物が提供される。
【0015】
第2の本発明による液状組成物は、植物体の吸収を助ける界面活性剤を配合されてもよく、第1の本発明の方法を行う時に、本化合物を含む水性の溶液剤を施用する場合に好都合に利用できるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の方法は、センチュウ類が有用な植物の植物体に侵入することを阻止することができ、あるいはまた植物体へ侵入し得たセンチュウによる病害を抑制することができ、その結果、効果的にセンチュウ類による植物被害を抑制する。また、本発明の方法は、土壌ないし植物に適用する時、土壌混和や被覆ガス抜きの工程を行う必要がないので、従来のセンチュウ防除方法の欠点を解決できる上に、作業の簡便化、作業条件の改善などの利点を奏することができる。また、殺センチュウ作用を示さない低薬量で、センチュウの植物への侵入阻止がおきるため、従来の殺センチュウ剤農薬の施用薬量よりも少ない量でもセンチュウ制御に十分な効果が得られ、必要コストの低減や、土壌の環境汚染を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の方法では、土壌から植物体への植物寄生性の土壌センチュウの侵入阻止を図るために、あるいは本化合物の存在に抵抗して万一にも植物体へ侵入し得た該土壌センチュウがネコブないし病徴形成をするのを抑制するために必要な施用薬量として、10アールあたり1g〜300gの範囲、特に1g〜150gの範囲内の量で活性成分としての本化合物を土壌ないし植物体に施用すればよい。本化合物の好ましい施用薬量は10アールあたり5g〜30gである。
【0018】
本発明の方法を土壌ないし植物体へ応用して実施する時期は、植物の栽培期間内なら、いつでもよい。または、植物種子へも適用できる。好ましくは、本圃への種子の播種の直前または同時期の土壌や、播種後2週間以内の土壌または植物体について実施するか、苗の定植時や育苗期中に株元の土壌ないし植物体について実施できる。それによって、効果的にセンチュウの被害を防止できる。また、苗を栽培するために用いる培土について本発明の方法を施用したり、定植前に苗の根部ないし茎部を、本化合物含有の水性溶液剤中に
浸漬したり、あるいは種子にコーティング処理で施しても、良好な結果が得られる。本発明の方法は、播種時、育苗期、定植時ないし生育期の1回の実施で十分な効果が得られるが、植物の栽培期間が長い場合には、生育期間中も含めて、2回以上、土壌ないし植物体について本発明の方法を実施しても何ら問題はない。
【0019】
本化合物を含む薬液を定植前の植物体ないし土壌に灌注する場合の最適な施用液量は、植物の育苗形態により異なるが、セル成型育苗トレイ内で本発明の方法を行う場合は1箱あたり0.5リットルの液量であり、ポットを用いる場合はポットあたり0.0125リットル〜0.05リットルの液量を灌注するのが望ましい。また、本圃にて本発明の方法を
行う場合では10アールあたり、50リットル〜500リットルの液量で、本化合物を含む水性溶液剤を灌注するのが望ましい。
【0020】
本発明の方法で、センチュウによる植物被害を効果的に防止することができる。ここでいう本発明の方法での処理対象となるセンチュウ類として、例えば、以下のものが挙げられる。
双腺綱:ハリセンチュウ目に属するコムギツブセンチュウ、イチゴメセンチュウ、イモグサレセンチュウ、ナミクキセンチュウ等のアングイナ科、ナミイシュクセンチュウ、リュウキュウイシュクセンチュウ、フタワイシュクセンチュウ等のベロノライムス科、イマムラネモグリセンチュウ、イネネモグリセンチュウ、ミナミネグサレセンチュウ、キタネグサレセンチュウ、チャネグサレセンチュウ、クルミネグサレセンチュウ等のプラティレンクス科、ナミラセンセンチュウ、チャラセンセンチュウ、ニセフクロセンチュウ等のホプロライムス科、ムギシストセンチュウ、ニセシストセンチュウ、ジャガイモシストセンチュウ、オカボシストセンチュウ、ダイズシストセンチュウ、クローバーシストセンチュウ等のヘテロデラ科、アレナリアネコブセンチュウ、ツバキネコブセンチュウ、キタネコブセンチュウ、サツマイモネコブセンチュウ、ジャワネコブセンチュウ、リンゴネコブセンチュウ、スギナミネコブセンチュウ等のメトイドギネ科、ミカンネセンチュウ等のティレンクルス科、ツバキマルセンチュウ等のスフェロマネ科、ワセンチュウ、カヤサヤワセンチュウ、カナヤサヤワセンチュウ、ミカントゲワセンチュウ、クワトゲワセンチュウ、クヌギトゲワセンチュウ、ノコギリトゲワセンチュウ等のクリコマネ科、チャピンセンチュウ、ヒメピンセンチュウ等のパラティレンクス科、ネセネグサレセンチュウ等のアフェレンクス科、イネシンガレセンチュウ、イチゴセンチュウ、ユリセンチュウ、ハガレセンチュウ、マツノザイセンチュウ等のアフェレンコイデス科。
【0021】
双器綱:ニセハリセンチュウ目に属するクワナガハリセンチュウ、ナガハリセンチュウ、クワオオハリセンチュウ、ボンサイオオハリセンチュウ、ヤマユリオオハリセンチュウ等のロンギドルス科、ヒメユミハリセンチュウ、ツバユミハリセンチュウ、ナガイモユミハリセンチュウ等のトリコドルス科
のセンチュウ類が挙げられる。
【0022】
本発明の方法での処理対象とされる植物として、例えば、以下のものが挙げられる。
イネ、オオムギ、コムギ、エンバク、ライムギ、トウモロコシ、サトウキビ、アワ、キビ、ヒエ等のイネ科、ソバ等のタデ科、ジャガイモ、ナス、トマト、ピ−マン、トウガラシ、タバコ等のナス科、サツマイモ等のヒルガオ科、インゲンマメ、アズキ、ダイズ、ササゲ、エンドウ、ソラマメ、ラッカセイ等のマメ科、オクラ等のアオイ科、テンサイ、ホウレンソウ、フダンソウ、オカヒジキ等のアカザ科、ダイコン、キャベツ、ハクサイ、カリフラワー、ブロッコリー、カブ、カラシナ等のアブラナ科、キュウリ、メロン、シロウリ、スイカ、カボチャ、ヘチマ、ユウガオ、トウガン、ニガウリ等のウリ科、サトイモ等のサトイモ科、ヤマノイモ等のヤマノイモ科、ショウガ等のショウガ科、タマネギ、ネギ、ワケギ、ラッキョウ、ニラ、ニンニク、アサツキ、アスパラガス、チューリップ等のユリ科、カキ等のカキノキ科、パイナップル等のパイナップル科、バナナ等のバショウ科、
イチゴ、リンゴ、ウメ、アンズ、モモ、スモモ、ニホンナシ、チュウゴクナシ、セイヨウナシ等のバラ科、ブドウ等のブドウ科、クリ等のブナ科、キウイ等のマタタビ科、カンキツ等のミカン科、クワ等のクワ科、シソ、ハッカ等のシソ科、チャ、ツバキ、サザンカ等のツバキ科、ゴボウ、レタス、シュンギク、フキ、ヤーコン、エゾギク、キク、ダリア、キンセンカ等のキク科、マツ等のマツ科の作物群を含めて、農園芸用の有用な植物と林業用の植物とが挙げられる。
【0023】
本発明の方法の実施に使用される本化合物を含有する組成物を実際に施用するにあたって、該組成物は、必要に応じて、他の活性化合物、例えば殺虫剤、殺菌剤や肥料等を混用して配合したものとして予め調製されてもよい。更に、その他の活性な農薬化合物を配合する場合、これらの活性化合物は、根からの吸収移行性を有するものが好ましい。その代表例として、ダイアジノン、イソキサチオン、ジメトエート、エチルチオメトン、モノクロトホス、アセフェート、DEP、カルボスルファン、ベンフラカルブ、ベンスルタップ、イミダクロプリド、アセタミプリド、ニテンピラム、チアクロプリド、チアメトキサム、クロチアニジン、ジノテフラン、フィプロニル、エチプロール、ピメトロジン、フラニカミド、イソプロチオラン、フルトラニル、アゾキシストロビン、オリサストロビン、プロベナゾール、フラメトピル、チフルザミド、ピロキロン、カスガマイシン、カルプロパミド、ジクロシメット、トリシクラゾールなどを例示できる。
【0024】
本発明の方法を実施するにあたり、土壌に粒剤または粉剤を施用する場合、それら固体製剤は、有効成分として本化合物を常用の補助剤と共に常法で製剤されたものであることができる。また、本発明を実施するにあたり、土壌または植物体に施用される場合の本化合物を溶解、含有する水性溶液剤は、常法で予め製造された本化合物含有の乳剤、水和剤またはフロアブル剤を適量の水で希釈し、これにより、所要の濃度で本化合物を含む水性の溶液剤として調製できる。前記のような乳剤、水和剤またはフロアブル剤は、本化合物に対して常法によって、担体(固体または液体)、補助剤、例えば界面活性剤、結合剤、安定化剤なども配合して、水和剤、顆粒水和剤、顆粒水溶剤、乳剤、液剤、油剤、フロアブル剤、エマルジョン剤、マイクロエマルジョン剤、サスポエマルジョン剤、マイクロカプセル剤等の任意の剤型で調製できる。
【実施例】
【0025】
以下に、製剤例および試験例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例示のみに限定されるものではない。なお、製剤例中の部はすべて質量部を示す。
【0026】
製剤例1(乳剤の製造)
クロラントラニリプロール(本化合物、有効成分)5部、ソルポールT−15(東邦化学製、非イオン性界面活性剤)10部およびN−メチルピロリドン(有機溶剤)85部を均一に混合して乳剤を得た。この乳剤を水で希釈して得られる水性の溶液剤は本発明の方法に有用である。
【0027】
製剤例2(水和剤の製造)
クロラントラニリプロール5部、ホワイトカーボン5部、ラウリル硫酸ナトリウム2部、リグニンスルホン酸カルシウム2部および微粉クレー86部を均一に混合して水和剤を得た。この水和剤を水で希釈して得られる水性の溶液剤は本発明の方法に有用である。
【0028】
製剤例3(フロアブル剤の製造)
クロラントラニリプロール5部、プロピレングリコール5部、ソルポールT−20(東邦化学製、界面活性剤)5部、リグニンスルホン酸ナトリウム2部、イオン交換水78部を混合した後、キサンタンガム2%水溶液5部を加えて均一に混合してフロアブル剤を得た。このフロアブル剤は、水で希釈すると、本発明の方法で有用な水性の溶液剤を調製で
きる。
【0029】
製剤例4(粒剤の製造)
クロラントラニリプロール0.5部、ラウリル硫酸ナトリウム0.5部、リグニンスルホン酸カルシウム5部および一般クレー94部を均一に混合し、水を加えて造粒後、乾燥して粒剤を得た。この粒剤は本発明の方法で土壌処理に利用できる。
【0030】
以下の試験例では、本発明の方法で用いられる有効成分のクロラントラニリプロールが植物寄生性の土壌センチュウに対して示す種々な作用を示すことを例証する。
【0031】
試験例1 室内試験でのサツマイモネコブセンチュウに対するトマト根吸収後のクロラントラニリプロールのセンチュウ侵入阻止効果の評価
5葉期のトマト苗(桃太郎、128穴セル成型育苗箱に育成)を対象植物として用いた。トマト苗の株元の土に、製剤例3で作成したフロアブル剤を水で希釈して得られた水性の溶液剤(クロラントラニリプロール500ppmを含有)を1箱あたり0.5リットル
の液量で灌注した。この灌注で10g/10aに相当の施用薬量のクロラントラニリプロールで処理したことになる。処理1日後に、クロラントラニリプロールを吸収したトマトの根を取り出し、土壌を洗い流した。その根の先端部3本を、寒天培地を充填したガラスシャーレに入れた。この中にサツマイモネコブセンチュウ2期幼虫を30頭ずつ放飼した(1区15連制)。放飼7日後に実体顕微鏡下でセンチュウの生死虫数を調べて死亡率を算出し、また根へ侵入したセンチュウ数を調査した。センチュウの根部侵入率(根中センチュウ数/全センチュウ数×100の計算式で算出)を算定した。その結果を次の表1に示す。クロラントラニリプロールの10g/10aの低い施用薬量では、センチュウ殺滅作用は認められなかったが、トマト根部に吸収されたクロラントラニリプロールによりセンチュウ侵入の高い阻止阻害効果を得た。
【0032】
【表1】

【0033】
試験例2 トマト植物体に侵入後のサツマイモネコブセンチュウに施用されたクロラントラニリプロールのネコブ形成阻止の効果
直径9cmのスチロールポットに充填されたセンチュウ汚染土250g中へ、トマト種子(品種:世界一)を各ポットごと10粒ずつ播種して発芽させ、栽培した。播種13日後の時点で、育成中の、センチュウに侵入されたトマト苗を、センチュウ無汚染土250gが充填された9cmスチロールポットに移植した。移植後のトマト苗の株元の土壌に、に製剤例3で作成したフロアブル剤を水で希釈し得られる水希釈薬液(クロラントラニリプロール500ppmを含有)を、25gまたは10g(ai)/10aの施用薬量に相当する液量で灌注した。この灌注処理17日後に、本化合物を吸収、含有するトマト根部のネコブ被害程度を調査した。そのネコブ被害程度は、下記の算式で算定されるネコブ指数で表した。その結果を表3に示した。トマト植物に侵入後のセンチュウに対しても、センチュウ侵入後のトマト根に吸収されたクロラントラニリプロールは、比較剤より優れて高いネコブ形成抑制の効果を示すことが認められた。
なお、ネコブ指数は、ネコブの形成の程度を次の表2に示す基準にしたがって5階級値
に分けて評価しながら、下記の算式1によりもとめた。
【0034】
【表2】

【0035】
【数1】

【0036】
【表3】

【0037】
試験例3 定植前のナス苗ポット栽培中にナス苗の株元に供試化合物を施用した時のナス植物でのサツマイモネコブセンチュウの侵入阻止効果とセンチュウによるネコブ形成抑制の効果
ポット栽培されている6葉期のナス苗(千両2号、9号ビニルポット植え)の株元の土壌に、製剤例1、2、3で作成した乳剤、水和剤またはフロアブルをそれぞれ水で希釈して得られる3種の水希釈薬液(それぞれクロラントラニリプロール500ppm含有)を灌注した。それぞれ、25gまたは12.5g(ai)/10aの施用薬量に相当する液
量を灌注した。土壌施用された本化合物はナス苗根部から吸収された。この処理1日後に、サツマイモネコブセンチュウ汚染土壌が充填された1/5000aポットに供試化合物を吸収したナス苗を移植した。比較のホスチアゼート粒剤は、300g(ai)/10a相当量を汚染土壌に混和した。移植30日後に、試験例2に記載の方法に準じてナス根部の被害程度を調査した。その結果を次の表4に示す。また、移植直前と、移植30日後と
に、移植用ポット内のセンチュウ汚染土壌20g中のセンチュウをベルマン法により抽出して、センチュウ数を計数した。その結果、25gまたは12.5g(ai)/10aの
低い施用薬量では、センチュウ数の減少は認められないので、センチュウ殺滅効果がないと示されたけれども、ナス根部から吸収された本化合物によりセンチュウの植物内侵入と、ナス根部のネコブ形成の被害が抑制された。殺センチュウ効果を得るのには不十分な低薬量でも、ナス根部でのセンチュウ侵入とセンチュウによるネコブ形成について十分な被害抑制効果を示すことがわかった。
【0038】
【表4】

【0039】
試験例4 メロン苗の株元土壌処理でのサツマイモネコブセンチュウの侵入阻止とネコブ形成抑止との効果試験
5葉期のメロン苗(ホームラン、3号ビニルポット植え)の株元の土壌に、製剤例3で作成したフロアブル剤を水で希釈して得られる水希釈薬液を灌注した。この灌注で25gまたは12.5g(ai)/10a相当量の供試化合物としてのクロラントラニリプロー
ルを施用した。灌注処理1日後に、サツマイモネコブセンチュウ汚染圃場に供試化合物を吸収したメロン苗を移植した。比較のホスチアゼート粒剤は、300g(ai)/10a相当量を施用して汚染土壌に混和した。移植70日後に、試験例2に記載の方法に準じてメロン根部のネコブ形成程度と、汚染土壌20g中のセンチュウ数(ベルマン法により抽出)とを調査した。その結果を次の表5に示した。センチュウ数の減少、従ってセンチュウの殺滅効果は認められなかったが、比較薬剤より低いクロラントラニリプロールの施用薬量で、十分なネコブ形成の抑制効果を得た。このことから、センチュウのメロン根部への侵入が阻止される効果が得られたこともわかる。
【0040】
【表5】

【0041】
試験例5 キュウリ苗の株元の土壌へ粒剤施用でのサツマイモネコブセンチュウの侵入阻止とネコブ形成抑制との効果試験
3葉期のキュウリ苗(シャープ−1、3号ビニルポット植え)の株元の土壌に、製剤例4で作成した粒剤を散布した。これで20gまたは10g(ai)/10a相当量の供試化合物を施用した。供試化合物としてのクロラントラニリプロールは土壌に移行後、キュウリ苗に経根的に吸収された。この散布処理1日後に、サツマイモネコブセンチュウ汚染圃場に、クロラントラニリプロールを吸収したキュウリ苗を移植した。比較のホスチアゼート粒剤は、300g(ai)/10a相当量で汚染土壌に混和した。定植70日後に、試験例2に記載の方法に準じてキュウリ根部のネコブ形成程度と、汚染土壌20g中のセンチュウ数(ベルマン法により抽出)とを調査した。その結果を表6に示した。センチュウ数の減少、従ってセンチュウの殺滅効果は認められなかったが、比較薬剤より低いクロラントラニリプロール施用薬量で、十分なネコブ形成の抑制効果を得た。
また、ネコブ形成の抑制効果を得たことから、キュウリ植物に吸収、移行浸透したクロラントラニリプロールは、ネコブセンチュウのキュウリ植物への侵入を阻止したと確定できる。
【0042】
【表6】

【0043】
試験例6 ダイコンの育成土におけるサツマイモネコブセンチュウに対するクロラントラニリプロールの防除効果試験
21×11cmプランターにセンチュウ汚染土壌を充填した。その汚染土壌にダイコン種子(品種:耐病総太)を各プランターごとに10粒ずつ播種した。播種5日後に、生育中のダイコン苗の株元に製剤例3で作成したフロアブル剤を水で希釈して得られた水性溶液剤の形の希釈薬液(500ppmのクロラントラニリプロールを含有)を灌注したが、1000gまたは250g(ai)/10a相当のクロラントラニリプロールの施用薬量で灌注処理を行った。比較のホスチアゼート粒剤は、300g(ai)/10a相当量の
施用薬量で汚染土壌に混和した後の時点で播種した。灌注処理28日後に、土壌中のセンチュウ数をベルマン法により抽出して計数した。比較剤では、播種28日後に計数した。その結果を表7に示した。
【0044】
【表7】

【0045】
ダイコンを育成中であるサツマイモネコブセンチュウ汚染土壌に対して、クロラントラニリプロールを有効成分として含有の水性溶液剤を、有効成分の施用薬量が1000gまたは250g/10アールという高い量であるように施用する場合には、汚染土壌中のセンチュウ数が減少されており、高薬量のクロラントラニリプロールによりセンチュウの殺滅ないし防除が顕著に行われることが認められる。
【0046】
試験例7 サツマイモ苗茎部の浸漬処理でのサツマイモネコブセンチュウによるネコブ形成の抑制効果試験
製剤例3で作成したフロアブル剤を水で希釈して得られた500ppmまたは250ppmの濃度でクロラントラニリプロールを含む水性の溶液剤としたものにサツマイモ苗の茎部を30分間浸漬した。
この浸漬処理によりクロラントラニリプロールを吸収、含有できたサツマイモ苗を、サツマイモネコブセンチュウ汚染圃場に定植した。比較のホスチアゼート粒剤は、定植直前に300g(ai)/10a相当量で汚染土壌に全面混和することで処理した。定植70日後に、試験例2に記載の方法に準じてサツマイモ根部のネコブ形成の程度を調査した。その結果を次の表8に示す。サツマイモ苗に吸収されたクロラントラニリプロールは、苗へのセンチュウ侵入を阻止して十分なネコブ形成抑制効果を得たことが認められる。
【0047】
【表8】

【0048】
試験例8 ダイコン種子の粉衣処理でのキタネグサレセンチュウによる病斑形成の抑制効
果試験
製剤例2で作成した水和剤をダイコンの複数種子に湿粉衣処理した。種子に粉衣処理で付着されたクロラントラニリプロール量は、土壌10アールあたり20gまたは10gに相当するクロラントラニリプロールの施用薬量になるよう調節された。このように粉衣されたダイコン種子を0.5アールのキタネグサレセンチュウ汚染圃場に播種した。播種し
た種子を発芽させ、その後、通常に栽培した。その間に、種子粉衣層からクロラントラニリプロールは土壌に移行し、そしてダイコン植物に経根的に吸収された。対照のホスチアゼート粒剤は、播種直前に300g(ai)/10a相当量で汚染土壌に全面混和して処
理した。播種60日後に、育成中のダイコンで下記の算式2の基準で根部の表面における病斑形成の被害程度を調査した。なお、病斑形成の被害度は、根部の表面に見られる病斑の面積合計値と根部全面積との割合を達観的評価して病斑面積率(%)を判定し、そしてそれを次の表9に示した基準にしたがって5階級に分け、評価しながら、下記の算式2により算定した。
【0049】
【表9】

【0050】
【数2】

【0051】
得られた調査結果を次の表10に要約して示す。
【表10】

【0052】
試験例9 ニンジン種子の播種前での土壌灌注処理におけるキタネグサレセンチュウによ
る病斑形成の被害抑制の効果試験
製剤例3で作成したフロアブル剤を水で希釈して得た水希釈薬液(500ppmのクロラントラニリプロール含有)をキタネグサレセンチュウ汚染圃場での種子の撒き溝の土壌に灌注した。クロラントラニリプロールの施用薬量が10アールあたり25gまたは12.5gであるように、灌注される薬液の液量を調整した。その灌注処理の直後に、ニンジ
ン種子を播種した。対照のホスチアゼート粒剤は、播種直前に300g(ai)/10a相当量で汚染土壌に全面混和して処理した。
種子を発芽させ、ニンジンを通常の条件で栽培、育成させた。その育成中に、土壌中のクロラントラニリプロールはニンジン植物により経根的に吸収されて浸透移行したと認められる。灌注処理から70日後に、育成中のニンジンについて、試験例8の表9と算式2との基準で根部表面での病斑形成の被害程度を調査した。その結果を表11に示す。対照薬剤より低薬量で、病斑形成に対する十分な被害抑制効果を得た。また、ニンジン植物に浸透したクロラントラニリプロールはネグサレセンチュウのニンジン植物への侵入を阻止できる効果を奏したと認められる。
【0053】
【表11】

【0054】
試験例10 発芽後にセンチュウ汚染されたダイコン株元の土壌処理でのミナミネグサレセンチュウによる病斑形成の抑制の効果試験
ダイコン種子をミナミネグサレセンチュウ汚染圃場に播種した。発芽後のダイコンを通常に栽培した。その間に、センチュウはダイコン植物中に侵入した。播種14日後に、製剤例3で作成したフロアブルを水で希釈して得られた水希釈薬液をダイコン株元の土壌に灌注した。
有効成分化合物の施用薬量が10アールあたり25gまたは12.5gになるように、
薬液の灌注液を調整した。対照のホスチアゼート粒剤は、播種直前に300g(ai)/10a相当量で汚染土壌に全面混和して処理した。灌注処理から45日後に、育成中のダイコンについて、試験例8の表9と算式2との基準で根部表面での病斑形成の被害程度を調査した。その結果を表12に示す。クロラントラニリプロールは、対照薬剤より低薬量で、ダイコン植物に侵入した後のミナミネグサレセンチュウによる病斑形成に対する十分な被害抑制効果を得た。
【0055】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(1)
【化1】

で表される化合物を、粒剤もしくは粉剤の固体製剤の形で、または水性の溶液剤の形で、有用な植物を育成中の土壌へもしくは育成中の有用な植物の株元の所の土壌へ施用するか、これから有用な植物を育成する土壌全体へ施用するか、または有用な植物の植物体にもしくは有用な植物の種子に直接に施用し、育成中の該有用な植物体内に吸収および浸透させ、その施用薬量は、植物寄生性の土壌センチュウを殺減するに足る量よりも少ない量であるが、但し該土壌センチュウが植物体の根に侵入するのを阻止する量であるか、または植物体中へ侵入し得た該土壌センチュウの感染もしくは食害によるネコブもしくは病徴形成を抑制する量であるように調整することを特徴とする、植物寄生性の土壌センチュウの有用な植物の植物体への侵入を阻止し、および/または植物体中へ侵入し得た該土壌センチュウの感染もしくは食害によるネコブもしくは病徴形成を抑制する方法。
【請求項2】
式(1)で表される化合物の施用薬量が有用な植物の育成土壌の10アールあたり1g〜300gの範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
植物寄生性の土壌センチュウがネコブセンチュウであるか、またはネグサレセンチュウである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
乳剤、水和剤またはフロアブル剤を水で希釈して調製されたところの、式(1)で表される化合物を200ppm〜1000ppmの濃度で溶解、含有した水性の溶液剤を、植物寄生性の土壌センチュウ非汚染の土壌で育成中の有用な植物の苗の株元の所の土壌へ、該化合物の施用薬量が5g〜30g/10アールになる溶液量で灌注して施用し、その後、該化合物を吸収して含有したこの苗の植物体を植物寄生性の土壌センチュウで汚染された圃場土壌に移植、定植させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
乳剤、水和剤またはフロアブル剤を水で希釈して調製されたところの、式(1)で表される化合物を200ppm〜1000ppmの濃度で溶解、含有した水性の溶液剤、または該化合物含有の粒剤または粉剤を、播種された有用な植物の種子を含有する植物寄生性の土壌センチュウで汚染された圃場土壌へ、該化合物の施用薬量が5g〜30g/10アールになる量で施用し、その後に種子を発芽させ、発芽後に育成中であるこの有用な植物の植物体が土壌から該化合物を経根吸収して植物体内に浸透移行するようにさせる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
水溶性製剤を水に希釈して調製されたところの、式(1)で表される化合物を200p
pm〜1000ppmの濃度で溶解、含有した水性の溶液剤中に、定植前のセンチュウ非感染のサツマイモ苗の茎部を浸漬処理し、該化合物を吸収させて植物体内に浸透移行させ、その後、このサツマイモ苗の植物体を土壌ネコブセンチュウで汚染された圃場土壌に移植し、定植後に育成中の植物体への土壌ネコブセンチュウの侵入を阻止し、および/または該土壌ネコブセンチュウの感染によるサツマイモ植物のネコブ形成を抑制する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
次式(1)
【化2】

で表される化合物を1000ppm以下の濃度で溶解、含有する水性の溶液剤である液状組成物であって、植物寄生性の土壌センチュウで汚染された圃場土壌に対して、該化合物の施用薬量が5g〜30g/10アールの範囲内になるような溶液量で施用されることを特徴とする、植物寄生性の土壌センチュウの有用な植物の植物体への侵入を阻止し、および/または植物体中へ侵入し得た該土壌センチュウの感染もしくは食害によるネコブもしくは病徴形成を抑制する方法で使用される、液状組成物。

【公開番号】特開2011−63514(P2011−63514A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212708(P2009−212708)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【出願人】(000242002)北興化学工業株式会社 (182)
【Fターム(参考)】