説明

有軌道搬送台車の耐震レール構造

【課題】地震発生時などの軌道の偏位を吸収し、さらに、センサーにて軌道の偏位を自動的に検知して搬送台車を停止させるようにした有軌道搬送台車の耐震レール構造を提供すること。
【解決手段】搬送台車の搬送路に沿って敷設した軌道4を、コンクリート製床面の一部に形成したエキスパンション床部2上で分割し、搬送台車が、コンクリート製床面上の軌道41とエキスパンション床面2上の軌道42間を円滑に移乗できるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有軌道搬送台車の耐震レール構造に関し、特に、地震発生時等において軌道を敷設した床面に大きな変動が生じた場合に、床面の変動に伴って発生する軌道のずれ等の偏位を自動的に検知して軌道上を搬送する搬送台車を停止させ、搬送台車の脱線転覆を未然に防止するようにした有軌道搬送台車の耐震レール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶、有機EL、半導体等の電子部品の製造工場や自動倉庫等においては、搬送台車(RGV)が予め走行する運行軌跡に沿うようにして、床面上所定高さ位置に軌道を敷設し、この軌道に沿って搬送台車が自動運転にて走行するようにしている。
【0003】
ところで、従来の液晶、有機EL、半導体等の電子部品の製造工場や自動倉庫等における有軌道搬送台車のレール構造は、地震など大きな外部負荷が床面にかかっても床面が破壊されないように、図1〜図2に示すように、工場や倉庫のコンクリート製の床面の一部に、地震などの揺れを吸収できるように所定間隔に合成樹脂やゴム等にて形成したエキスパンション床を配設し、このコンクリート製の床面及びエキスパンション床上に軌道支持柱を所定間隔で樹立し、この軌道支持柱上に1本状にした軌道を取り付けて構成するようにしている。
【0004】
しかしながら、コンクリート製の床面、エキスパンション床面に敷設する軌道は、コンクリート製床面、エキスパンション床面上に掛け渡すようにして連続した1本の軌道を配設しているので、地震発生時床面の変動はエキスパンション床面が緩衝帯となって吸収することができるも、軌道は1本であるため、地震の揺れが軌道に直接作用して、軌道が所定の軌跡(コース)から位置ずれが生じたり、或いは軌道が歪曲又は変形したり、さらには破壊したりすることがあり、この軌道が変形した状態で搬送台車が走行してくると、この軌道の変形位置で搬送台車が脱線もしくは脱線して破損したり、さらには脱線台車にて軌道そのものをさらに破壊して、その復旧に多大の時間と労力がかかるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の有軌道搬送台車のレール構造の有する問題点に鑑み、地震発生時などの軌道の偏位を吸収し、さらに、センサーにて軌道の偏位を自動的に検知して搬送台車を停止させるようにした有軌道搬送台車の耐震レール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の有軌道搬送台車の耐震レール構造は、搬送台車の搬送路に沿って敷設した軌道を、コンクリート製床面の一部に形成したエキスパンション床部上で分割し、搬送台車が、コンクリート製床面上の軌道とエキスパンション床面上の軌道間を円滑に移乗できるように構成したことを特徴とする。
【0007】
この場合において、互いに端面を突き合わせるコンクリート製床面上の軌道端面と、エキスパンション床面上の軌道端面とを搬送台車が移乗しやすいよう互いに斜面状とすることができる。
【0008】
また、分割軌道の偏位を検知して搬送台車の走行を停止させるようにしたセンサーを分割軌道に沿って配設することができる。
【0009】
また、センサーをリミットスイッチ、近接スイッチ、圧電素子、赤外線素子のいずれか、或いはその組み合わせにより構成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の有軌道搬送台車の耐震レール構造によれば、搬送台車の搬送路に沿って敷設した軌道を、コンクリート製床面の一部に形成したエキスパンション床面部で分割し、搬送台車が、コンクリート製床面上の軌道とエキスパンション床面上の軌道間を円滑に移乗できるように構成することにより、地震などにより軌道に大きな負荷がかかり、偏位するような場合でも、この軌道の偏位をエキスパンション床面上の軌道部分にて吸収して本体側軌道を保護できるので、復旧時に修復する必要があるのはこの分割された軌道部分だけとなり、簡易に行うことができる。
【0011】
また、互いに端面を突き合わせるコンクリート製床面上の軌道端面と、エキスパンション床上の軌道端面とを搬送台車が移乗しやすいよう互いに斜面状とすることにより、軌道の継ぎ合わせ部においても搬送台車は円滑に移乗することができる。
【0012】
また、分割軌道に沿ってその偏位を検知して搬送台車の走行を停止させるようにしたセンサーを分割軌道に沿って配設することにより、軌道の少しの偏位でも確実に検知することができるので、搬送台車の走行安定性を向上させることができる。
【0013】
また、センサーをリミットスイッチ、近接スイッチ、圧電素子、赤外線素子のいずれか、或いはその組み合わせにより構成することにより、センサーの配置が簡易であるとともに、既設の設備にも容易に応用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の有軌道搬送台車の耐震レール構造の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1〜図2に、本発明の有軌道搬送台車の耐震レール構造の一実施例を示す。
液晶、有機EL、半導体等の電子部品の製造工場や自動倉庫等において、その床面は通常コンクリート製床面となっており、地震等が発生した場合に、外部負荷により床面に発生する変動や偏位を吸収できるよう、該コンクリート製床面の一部に、合成樹脂製又はゴム製のエキスパンション床部2を形成するようにしている。
そして、このコンクリート製床面1とエキスパンション床部2との表面が面一となるようにした床面に、搬送台車(図示省略)が予め定められたコースに沿って走行するよう、搬送路(走行コース)に沿って軌道4を敷設する。
【0016】
この場合、コンクリート製床面1及びエキスパンション床部2上に、かつ搬送路(走行コース)に沿って所定間隔毎、或いは任意間隔毎に軌道支持柱もしくは架台3、3を樹立し、この軌道支持柱もしくは架台3を介して軌道(レール)4を敷設する。
この軌道の敷設固定方法は、従来と同じようにするが、コンクリート製床面上と、エキスパンション床部上とにおいては、軌道4を分割、すなわち、コンクリート製床面上の軌道41と、エキスパンション床部上の軌道42とを分割し、かつ搬送台車がコンクリート製床面上に敷設する軌道41とエキスパンション床上に敷設する軌道42との間を円滑に移乗できるように配設する。
【0017】
コンクリート製床面上の軌道41とエキスパンション床上の軌道42との継合部となる互いの軌道41、42の突き合わせる端面4aは、図1に示すように、互いに突き合わされる軌道41と軌道42の端面形状が同じ方向に、同じ傾斜角度を有する斜面形とし、これにより軌道41と42とが、その端面4aで互いに突き合わせるようにすることで、恰も1本の軌道となるようにし、コンクリート製床面上の軌道41とエキスパンション床面上の軌道42間の搬送台車の移乗が円滑にできるようにする。
【0018】
また、この軌道の分割により地震などの大きな負荷が床面を介して軌道に作用しても、エキスパンション床面2により床面全体にかかる偏位を吸収するとともに、床面上の偏位は軌道本体から分割されたエキスパンション床面上の軌道42より吸収し、これにより本体側の軌道41を保護するようにするとともに、この分割された軌道42の偏位を検知するため、分割された軌道42に沿って、或いは近接して偏位検知用のセンサー5、5を配設し、このセンサー5により軌道の偏位を検知して走行する搬送台車を自動的に停止させるようにする。
【0019】
このセンサー5としては、特に限定されるものではないが、例えば、図1に示すように、リミットスイッチのほかに、近接スイッチ、圧電素子、赤外線素子等の1つ、或いはこれらの組み合わせにより構成することができる。
【0020】
センサー5は、分割された軌道42の側面に沿って1又は2以上を、軌道42の側面と対向して配設し、軌道42が設定位置より少しでもずれが生じると、このセンサー5にて搬送台車を停止、或いは減速させるように構成する。
【0021】
次に、本発明の有軌道搬送台車の耐震レール構造の作用について説明する。
コンクリート製床面上の軌道41とエキスパンション床面上の軌道42とを互いに突き合わせるようにして搬送台車の搬送路に沿って敷設し、この軌道41、42間の搬送台車の移乗が円滑に行えるようにする。
地震などが発生して床面1、2及び軌道4に大きな負荷がかかると、その揺れ方向により分割された軌道42は、特に限定されるものではないが、例えば、図1の鎖線にて示すように、その軌道支持柱もしくは架台3毎、位置ずれが生じることがある。
【0022】
本体側軌道より分割された軌道42が位置ずれを生じると、この偏位は軌道に近接したセンサー5にて検知される。搬送台車が円滑に移乗できる範囲の偏位では作用しないが、設定以上の偏位が生じると、該センサー5にて搬送台車の電源を切って強制的に停止させるか、或いは他の方法で搬送台車を停止させたり、減速させたりして不足の事故を未然に防止するようにする。
【0023】
なお、このセンサー5を、分割された軌道42の各両端部に配設することにより、軌道42の全体の位置ずれが生じなくても、軌道の一端側で位置ずれが発生すると確実にその偏位を検知することができるので、搬送台車を速やかに停止させ、不測の事故を防止することができる。
【0024】
以上、本発明の有軌道搬送台車の耐震レール構造について、実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の有軌道搬送台車の耐震レール構造は、軌道をエキスパンション床面上で分割することで床面を介して軌道に作用する偏位負荷を吸収し、本体側軌道を保護するという特性を有していることから、搬送台車の軌道の用途に好適に用いることができるほか、例えば、天井走行台車の用途にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の有軌道搬送台車の耐震レール構造の一実施例を示す平面図である。
【図2】縦断側面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 コンクリート製床面
2 エキスパンション床部
3 軌道支持柱もしくは架台
4 軌道
41 コンクリート製床面上の軌道
42 エキスパンション床部上の軌道
5 センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送台車の搬送路に沿って敷設した軌道を、コンクリート製床面の一部に形成したエキスパンション床部上で分割し、搬送台車が、コンクリート製床面上の軌道とエキスパンション床面上の軌道間を円滑に移乗できるように構成したことを特徴とする有軌道搬送台車の耐震レール構造。
【請求項2】
互いに端面を突き合わせるコンクリート製床面上の軌道端面と、エキスパンション床面上の軌道端面とを搬送台車が移乗しやすいよう互いに斜面状としたことを特徴とする請求項1記載の有軌道搬送台車の耐震レール構造。
【請求項3】
分割軌道の偏位を検知して搬送台車の走行を停止させるようにしたセンサーを分割軌道に沿って配設したことを特徴とする請求項1又は2記載の有軌道搬送台車の耐震レール構造。
【請求項4】
センサーをリミットスイッチ、近接スイッチ、圧電素子、赤外線素子のいずれか、或いはその組み合わせにより構成したことを特徴とする請求項3記載の有軌道搬送台車の耐震レール構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−219864(P2006−219864A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33013(P2005−33013)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)