説明

木ネジおよびその製造方法

【課題】 木造家屋における大引きと柱等の固定用大型金物を止着する大径の木ネジであって、下穴を開けることなく電動ドライバーで容易に取付けることができる木ネジおよびその木ネジの製造方法の提供。
【解決手段】 軸部1の先端部に略角錐状の錐部3を形成し、その錐部3の互いに 180度離間した一対の稜線部のみに、幅の狭い帯状の一対の刃部4を形成する。そして、その一対の刃部4は刃面を互いに逆向きにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、木造家屋における大引きと柱等を固定する大型の厚みの厚い金物用の大型木ネジおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木造家屋の大引きと柱を固定する厚みの厚い各種金物が市販されている。その金物には、少なくとも四つのボルト孔を有し、金物の一方側を大引きにコーチスクリューで止着すると共に、他方側を柱に同様のコーチスクリューで螺着締結していた。
このコーチスクリューは大型の木ネジであり、先端から中間部までネジが形成されていると共に、その先端部は円錐形に形成されている。このコーチスクリューの直径は、8mm〜12mm程度である。
【0003】
このようなコーチスクリューを大引きや柱に取付けるには、その大引きや柱に予め下穴を開けておき、そこにコーチスクリューをねじ込む必要がある。ところが、コーチスクリューの取付に伴い、しばしば木割れが発生していた。
これは、主として施工に問題があるとされている。作業者がハンマーでコーチスクリューを下穴に2/3〜3/4程度叩き込み、最後に僅かに残った部分を締め付け工具で螺回するからである。即ち、そのコーチスクリューを下穴に叩き込むときに、木割れが発生するものである。作業手順としては、コーチスクリューの下穴への叩き込みは禁止されているが、施工の迅速性から現場において、その禁止事項は守られていないのが実状である。
【0004】
従来から、小径の木ネジについては下穴を開けることなく電動ドライバーでねじ込むことができる下記特許文献1に記載のものが知られている。これは軸部の先端に角錐部を設け、その角錐部の四つの角部に夫々刃部を設けたものである。そして刃部により、木材を削りながら進行し、木ネジを螺着締結するものである。
【0005】
【特許文献1】特開2002−357209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の公報に記載の木ネジは、その外径が比較的小さい場合には有効であるが、8mm以上の軸径を有する木ネジとして用いるとき、木材を切削中に刃がこぼれ落ち目的を達しないものとなる。
そこで本発明は、軸直径が8mm以上の木ネジにおいて、先端の刃部がこぼれ落ちず、丈
夫で電動ドライバーによって確実に下穴なしに木材に螺着締結できる木ネジおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の本発明は、軸部(1) の外周にネジ部(2) を有する木ネジにおいて、
略角錐状に形成される錐部(3) を軸部(1) の先端部に有し、その錐部(3) の外周にはネジ部が存在しないと共に、錐部(3) の互いに 180度離間した一対の稜線部のみに、その稜線に沿って幅の狭い帯状の一対の刃部(4) が一体的に突設され、それらに直交する方向の他の一対の稜線(5) には刃部が存在せず、
その一対の刃部(4) は、その刃面を互いに逆向きにして形成され、前記錐部(3) の軸直角断面における、前記一対の刃部(4) 間の外径D2 が、前記他の一対の稜線(5) 間の外径D1 より大きい木ネジである。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、請求項1において、
前記一対の刃部(4) は、錐部(3) の軸直角断面における対角線に整合して位置し、その刃部の裏面側は角錐の斜面(a) の延長面をなす木ネジである。
請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2において、
軸直角断面における前記一対の刃部(4) 間の最大外径D2 が、前記ネジ部(2) の谷径D0 以上でその山径D3 より小さい木ネジである。
【0009】
請求項4に記載の本発明は、請求項1〜請求項4のいずれかにおいて、
前記軸部の直径が8mm以上である木ネジである。
請求項5に記載の本発明は、請求項1〜請求項4のいずれかの木ネジを製造する方法において、
木ネジの頭部(8) および前記錐部(3) 並びに前記刃部(4) を鍛造により成形する工程の後に、前記ネジ部(2) を形成する木ネジの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の木ネジは、錐部3の一対の稜線部のみに幅の狭い帯状の一対の刃部4が一体的に突設され、その一対の刃部4は刃面を互いに逆向きにし且つ、一対の刃部4間の外径D2 を他の一対の稜線5の外径D1 より大きく形成したから、錐部3によって木材を容易に穿設することができる。即ち、穿設の際の抵抗を最小にすることができる。そして、一対の刃部4は一対の稜線のみに互いに刃面を逆向きに形成し、構造が単純であるため、丸棒材から鍛造等により容易に加工することができ、それを安価に提供できる。
【0011】
上記構成において、刃部4を錐部3の軸直角断面における対角線上に整合して位置し、その刃部4の裏面側は角錐の斜面aの延長面をなすようにすることができる。このように構成することにより、より単純な構造となり刃部4の強度を強くし、製造のし易いものとなる。
上記構成において、軸直角断面における一対の刃部4間の最大外径D2 を、ネジ部2の谷外径D0 以上でその山径D3 より小さくすることができる。このようにすることにより、木ネジを木材にさらに容易に螺着締結することができる。
【0012】
上記構成において、軸部の直径を8mm以上とすることができる。係る木ネジは、家屋における構造補強用金具の止着に効果的に使用することができる。
そして、本発明の木ネジの製造方法によれば、刃部4を有する錐部3を容易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1は本発明の木ネジの正面図であり、図2は平面図、図3(A)〜(D)は夫々断面図であって図1のA−A〜D−D矢視断面図である。
この木ネジは、軸部1の直径が8mm〜12mmのものであって、木造家屋等における大型金物を電動ドライバーによって、下穴なしに螺着締結できるものである。
この木ネジは、軸部1の上端に頭部8が設けられ、頭部8の上面に四角形或いは六角形等の電動ドライバ嵌着部9が設けられている。なお、頭部8の外周は円形であっても六角形であってもよい。
【0014】
軸部1の先端部には、ネジの存在しない錐部3が設けられている。この錐部3は、図1及び図3に示す如く、略角錐状に形成されている。その錐部3の図1において両側のみの一対の稜線部に、その稜線に沿って幅の狭い一対の刃部4が一体的に形成されている。そして、それらの刃面は互いに逆向きに形成されている。即ち、図1において右側の刃部4は正面側に左側のそれは裏面側に形成されている。
なお、好ましくは刃部4部分を焼入れする。或いは木ネジ全体をステンレス鋼その他の比較的硬度の高い鋼材で製造することができる。
【0015】
また、図3から明らかな如く、一対の刃部4に直交する他の一対の稜線5には刃部が存在しない。それと共に、一対の刃部4の先端間外径D2 はそれに直交する一対の稜線5間外径D1 よりも大に形成されている。これは、木ネジを回転したとき、外径D1 の角部が木材に接触しないようにして、回転の抵抗を減じるものである。また、その刃部の外径D2 の最大値はネジ部2の谷径D0 (ネジの谷2aの直径)よりも大きく且つ、ネジ部2の山径D3 よりも小さく形成されている。これにより木ネジの螺着を容易にするものである。 なお、図3(A)において錐部3の斜面aと一対の稜線5の対角線とのなす角θ1 は、斜面bと一対の稜線5の対角線とのなす角θ2 よりも大に形成されている。
【0016】
次に、錐部3の上端部から上方にはネジ部2が形成されている。この例では、ネジ部2は二条ネジであり、山の高さの高いものと低いものとが存在する。なお、これに代えて高さの同一の二条ネジとすることも、或いは高さの高い一条ネジとすることもできる。
さらにこの例では、ネジ部2に多数のノッチ11が形成されている。このノッチ11は公知のものであり、本発明の必須要件ではない。即ち、ノッチ11は存在しなくてもよい。
刃部4の幅は、図1及び図3より明らかなように各断面において等しく形成されている。
【実施例】
【0017】
一例として、軸部1の軸直径を9mmとし、頭部8を17mm、錐部3の長さを12mm、刃部4の幅を1.5mm、ネジ部2の山径を12mm、谷径を7mmとしたものを製作した。 本発明者は、上記構造の木ネジを製作し、その刃部4を焼入れした。そして充電式電動ドライバーでこの木ネジの頭部8を把持し、下穴なしの杉柱に取り付けたところ、錐部3によって確実に下穴が開けられると共に、その柱材にネジ部2が進入し頭部8によって図示しない金物を確実に止着することができた。なお、上記の各寸法、頭部形状その他は必要に応じ、各種設計変更できる。
【0018】
(製造方法)
次に、このような木ネジは、一例として次の方法により製造することができる。
先ず、棒材を適宜長さに切断し鍛造により頭部8及び錐部3を形成すると共に、その錐部3に刃部4を形成する。次いで、錐部3の上端からネジ部2を転造により成形すると共にノッチ11を形成する。次いで、木ネジの外周全体を焼入れして、メッキ処理し、本木ネジを完成する。なお、ステンレス鋼、その他の高硬度鋼を使用することにより、焼き入れ工程、メッキ工程を省略することもできる。
【0019】
次に、図4及び図5は本発明の第2の木ネジの実施の形態を示す要部正面図及び各断面矢視図である。
この例の木ネジが図1及び図3のそれと異なる点は、斜面bのみが僅かに段付きに形成されていることである。即ち、直線3aを境にし、斜面bの傾斜角は図4において右側が左側よりも鋭角になっているものである。これは図5(A)において、斜面bの第2面の角θ2 が第1面の角θ3 より小となっているものである。このようにすることにより、刃部4の切れ味がより良くなることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の木ネジの正面図。
【図2】同木ネジの平面図。
【図3】図1のA−A〜D−Dの各断面図。
【図4】本発明の第2の木ネジ10の要部正面図。
【図5】図4のA−A〜D−Dの各断面図。
【符号の説明】
【0021】
1 軸部
2 ネジ部
2a ネジの谷
3 錐部
3a 直線
4 刃部
5 稜線
【0022】
8 頭部
9 電動ドライバ嵌着部
10 木ネジ
11 ノッチ
P 先端
a 斜面
b 斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部(1) の外周にネジ部(2) を有する木ネジにおいて、
略角錐状に形成される錐部(3) を軸部(1) の先端部に有し、その錐部(3) の外周にはネジ部が存在しないと共に、錐部(3) の互いに 180度離間した一対の稜線部のみに、その稜線に沿って幅の狭い帯状の一対の刃部(4) が一体的に突設され、それらに直交する方向の他の一対の稜線(5) には刃部が存在せず、
その一対の刃部(4) は、その刃面を互いに逆向きにして形成され、前記錐部(3) の軸直角断面における、前記一対の刃部(4) 間の外径D2 が、前記他の一対の稜線(5) 間の外径D1 より大きい木ネジ。
【請求項2】
請求項1において、
前記一対の刃部(4) は、錐部(3) の軸直角断面における対角線に整合して位置し、その刃部の裏面側は角錐の斜面(a) の延長面をなす木ネジ。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
軸直角断面における前記一対の刃部(4) 間の最大外径D2 が、前記ネジ部(2) の谷径D0 以上でその山径D3 より小さい木ネジ。
【請求項4】
請求項1〜請求項4のいずれかにおいて、
前記軸部の直径が8mm以上である木ネジ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかの木ネジを製造する方法において、
木ネジの頭部(8) および前記錐部(3) 並びに前記刃部(4) を鍛造により成形する工程の後に、前記ネジ部(2) を形成する木ネジの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−333066(P2007−333066A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164972(P2006−164972)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(500167928)東日本パワーファスニング株式会社 (13)