説明

木材のトレーサビリティシステム

【課題】木材の追跡調査を確実に行うことができる木材のトレーサビリティシステムを提供すること。
【解決手段】本発明では、木材のトレーサビリティシステムにおいて、木材に対して施された各種処理の履歴を蓄積した木材履歴データ(3)と、各種処理を施した後の木材の端面に現れる端面紋様を記録した端面紋様データ(4c〜4g)とを関連付けて記憶しておき、現物の木材の端面に現れている端面紋様と前記端面紋様データ(4c〜4g)とを照合することにより、現物の木材に施された各種処理の履歴を追跡可能とすることにした。特に、前記端面紋様として木材の端面の年輪を用いることにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現物の木材に施された各種処理の履歴を追跡可能とした木材のトレーサビリティシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食料品に代表される加工製品について、安全性の確保や信頼性の向上のために、原材料の産地や加工時期・場所などを追跡して調査できるようにしたトレーサビリティが注目されている。
【0003】
これは、食料品だけでなく木製品についても同様であり、住宅や家具などに使用されている木材の伐採地や加工時期・場所などを追跡して調査できるようにすることで、住宅や家具などの木製品の安全性を確保することができ、木製品に対する信頼性を向上させることができる。また、伐採現場を特定できることで、跡地再造林を合法的に行った木材であることを証明する手段ともなる。
【0004】
そのため、従来より、木材のトレーサビリティに関しては食料品などと同様に木材にバーコードやICタグなどを貼付して、バーコードやICタグなどを用いて木材に施された乾燥や加工などの各種処理の履歴を追跡して調査できるようにしていた。
【0005】
また、アイディアレベルではあるが、伐採後の木材の年輪を記録しておき、記録した年輪と現物の木材の年輪とを照合することで木材を特定する方法について提案されている(特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開2007−210119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、木材の場合、食料品などと大きく異なっているのは、伐採されてから住宅や家具などに使用されるまでの間に、屋外において天然乾燥される処理工程が含まれている点である。
【0008】
そのため、木材の場合には、天然乾燥処理時において、風雨によりバーコードやICタグが剥離してしまったり破損してしまうおそれがあり、食料品と同様にバーコードやICタグを用いたトレーサビリティシステムを構築することが困難であった。
【0009】
また、木材の場合には、天然乾燥処理によって木材が収縮するために、乾燥処理の前後で年輪模様が変化してしまい、伐採後の木材の年輪と現物の年輪とでは大幅に異なっていて照合することが極めて困難であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、請求項1に係る本発明では、木材のトレーサビリティシステムにおいて、木材に対して施された各種処理の履歴を蓄積した木材履歴データと、各種処理を施した後の木材の端面に現れる端面紋様を記録した端面紋様データとを関連付けて記憶しておき、現物の木材の端面に現れている端面紋様と前記端面紋様データとを照合することにより、現物の木材に施された各種処理の履歴を追跡可能とすることにした。
【0011】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記端面紋様として木材の端面の年輪を用いることにした。
【発明の効果】
【0012】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0013】
すなわち、本発明では、木材のトレーサビリティシステムにおいて、木材に対して施された各種処理の履歴を蓄積した木材履歴データと、各種処理を施した後の木材の端面に現れる端面紋様を記録した端面紋様データとを関連付けて記憶しておき、現物の木材の端面に現れている端面紋様と端面紋様データとを照合することにより、現物の木材に施された各種処理の履歴を追跡可能としているために、伐採後に木材に対して屋外において天然乾燥処理が施されてもバーコードやICタグなどとは違って木材の端面紋様が剥離や破損してしまう心配がなく、しかも、乾燥処理後の端面紋様を記録した端面紋様データを用いて照合することができるので、木材の追跡調査を確実に行うことができるようになる。
【0014】
特に、端面紋様として木材の端面の年輪を用いた場合には、年輪の模様が木材に特有の模様であり人工的に偽造することができないため、木材の追跡調査の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明に係る木材のトレーサビリティシステムの具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0016】
木材は、山林において伐採された後に、乾燥処理や製材処理などの各種処理が施され、その後、住宅の柱や床材、家具の構成材、足場や型枠といった建築補助材などの幅広い用途で利用されている。
【0017】
特に、住宅や家具などの木製品においては、近年、安全性の確保や信頼性の向上などを目的とし、伐採から木製品に到るまでに木材に施された各種処理の履歴を追跡調査できるようにするために、木材のトレーサビリティシステムの構築が望まれている。
【0018】
例えば、住宅の柱として使用される木材は、図1に示すように、山林において伐採され、その後の所定期間で山林において天然乾燥され(葉枯らし乾燥)、その後、所定の長さに切断され(玉切り)、切断された丸太の状態で山林から製材所に搬送される。
【0019】
その後、製材所の屋外において丸太の状態のまま天然乾燥され(丸太乾燥)、その後、所定の形状に切断され(製材)、さらに、製材された状態で屋内において強制的に乾燥され(乾燥)、製材所からプレカット工場に搬送される。
【0020】
その後、プレカット工場において、最終的な柱の形状に加工され、その後、プレカット工場から施工現場に搬送され、施工現場で住宅の柱として施工される。
【0021】
このように木材が山林で伐採され施工現場で住宅の柱として施工されるまでには、伐採、葉枯らし乾燥、玉切り、丸太乾燥、製材、乾燥、加工、施工といった各種処理が木材に施される。
【0022】
この木材に施される各種処理の履歴を追跡調査することができるようにするために、木材のトレーサビリティシステムでは、図2に模式的に示すように、コンピュータの記録媒体1に、木材に施された処理内容とともに、その処理が施された処理日や処理を施した処理業者(名称)を組合わせた処理データ2a〜2hを蓄積して木材履歴データ3を構築するようにしている(木材履歴データ構築ステップ)。
【0023】
しかも、本発明に係る木材のトレーサビリティシステムでは、図3に模式的に示すように、各種処理が施された後の木材の端面(木口面)に現れる端面紋様を撮影し、その撮影した写真を端面紋様データ4c〜4gとし(端面紋様データ作成ステップ)、これらの端面紋様データ4c〜4gをコンピュータの記録媒体1に木材履歴データ3の該当する処理データ2c〜2gと関連付けて記憶し(端面紋様データ記憶ステップ)、コンピュータの記録媒体1に木材履歴データ3と端面紋様データ4c〜4gとからなる木材追跡データ5を構築するようにしている(木材追跡データ構築ステップ)。
【0024】
そして、木材のトレーサビリティシステムでは、住宅の柱として実際に使用される現物の木材が、どのような履歴を有する木材かを追跡調査する場合に、現物の木材の端面に現れている端面紋様を撮影することによって現物データを作成し(現物データ作成ステップ)、コンピュータを用いて現物データと端面紋様データ4gとを照合して現物データと一致(又は近似)する端面紋様データ4gを検索し(照合ステップ)、その後、検索された端面紋様データ4gと関連付けて記憶されている木材履歴データ3に基づいて木材に施された各種処理の履歴を表示することができるようにしている(履歴表示ステップ)。
【0025】
以上に説明したように、本発明に係る木材のトレーサビリティシステムでは、木材履歴データ構築ステップで木材に対して施された各種処理の履歴を蓄積した木材履歴データ3を構築するとともに、端面紋様データ作成ステップで各種処理が施された後の木材の端面に現れる端面紋様を記録した端面紋様データ4c〜4gを作成し、端面紋様データ記憶ステップで端面紋様データ4c〜4gを木材履歴データ3と関連付けて記憶しておき、その後、現物データ作成ステップで作成した現物の木材の端面に現れている端面紋様からなる現物データと端面紋様データ記憶ステップで記憶した端面紋様データ4c〜4gとを照合ステップで照合し、履歴表示ステップで該当する木材履歴データ3に基づいて木材の履歴を表示するように構成しており、各ステップをコンピュータで実行するようにしている。
【0026】
このように、上記木材のトレーサビリティシステムにおいては、木材に対して施された各種処理の履歴を蓄積した木材履歴データ3と、各種処理を施した後の木材の端面に現れる端面紋様を記録した端面紋様データ4c〜4gとを関連付けて記憶しておき、現物の木材の端面に現れている端面紋様と端面紋様データ4c〜4gとを照合することにより、現物の木材に施された各種処理の履歴を追跡可能としている。
【0027】
そのため、上記木材のトレーサビリティシステムにおいては、伐採後に木材に対して屋外において天然乾燥処理が施されてもバーコードやICタグなどとは違って木材の端面紋様が剥離や破損してしまう心配がなく、しかも、乾燥処理後の端面紋様を記録した端面紋様データを用いて照合することができるので、木材の追跡調査を確実に行うことができるようになる。
【0028】
なお、上記図1〜図3に示す具体例は、本発明に係る木材のトレーサビリティシステムの具体的な一例に過ぎない。たとえば、上記具体例では所定の処理(ここでは、玉切り、丸太乾燥、製材、乾燥、加工。)の後にだけ木材の端面紋様を撮影して端面紋様データ4c〜4gを作成しているが、全ての処理の後に木材の端面紋様を撮影するようにしてもよい。
【0029】
また、上記具体例では、木材の端面紋様を撮影した写真を端面紋様データ4c〜4gとしているため、木材の端面に現れる年輪やひび割れや虫食い跡や傷などを含んだ情報から端面紋様データ4c〜4gが構成されているが、撮影した写真を画像処理することで、木材の端面の年輪だけを端面紋様として抽出し、抽出したデータを端面紋様データ4c〜4gとしてもよい。
【0030】
このように、端面紋様として木材の端面の年輪を用いた場合には、年輪の模様が木材に特有の模様であり人工的に偽造することができないため、木材の追跡調査の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】木材に施される各種処理を示す説明図。
【図2】木材追跡データを示す説明図。
【図3】端面紋様データを示す説明図。
【符号の説明】
【0032】
1 記録媒体
2a〜2h 処理データ
3 木材履歴データ
4c〜4g 端面紋様データ
5 木材追跡データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材に対して施された各種処理の履歴を蓄積した木材履歴データと、各種処理を施した後の木材の端面に現れる端面紋様を記録した端面紋様データとを関連付けて記憶しておき、
現物の木材の端面に現れている端面紋様と前記端面紋様データとを照合することにより、現物の木材に施された各種処理の履歴を追跡可能としたことを特徴とする木材のトレーサビリティシステム。
【請求項2】
前記端面紋様として木材の端面の年輪を用いることを特徴とする請求項1に記載の木材のトレーサビリティシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−149349(P2010−149349A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328949(P2008−328949)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(508219519)瀬戸製材株式会社 (1)
【Fターム(参考)】