説明

木材の注入処理装置

【課題】木材の注入処理に使用する処理液は、繰り返し使用すると汚染されて更新しなければならないが、使用後の処理液を廃棄することなく汚染物のみを取り除き、循環使用できるようにする。
また注薬缶にバットを入れて加熱注入処理を行う場合にはバットの構造が複雑になり、バット内の洗浄が不完全となって処理液の品種替えが困難となっている。
【解決手段】処理液中の汚染物質を取り除く袋濾過器を貯蔵槽の中に組み込むことにより、処理液の浄化が簡単に安価にできて液の循環使用が可能になる。
また注薬缶に加熱器と液面センサー及び液面計を取付けた多機能熱交システムの採用により、注薬缶内の水を加熱し、その加熱水でバット内の処理液を加熱できるので、バットの構造がシンプルになり、洗浄も容易にできて1つのバットで品種替えも可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木材に防腐剤、不燃剤、樹脂等の薬剤を注入する注入処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、木材に耐久性を与えるための加圧式防腐処理方法については、日本工業規格である(JIS A 9002)に規定されているが、木材防腐剤だけでなく、各種の処理液による注入処理方法及び装置もその規格を準用している。
【0003】
現在使用されている注入処理装置は、処理液を繰り返し使用すると、木材に付着している塵や埃及び木材から溶出するヤニ等によって処理液が汚染されるため、製品の品質に影響を与える前には、その処理液を廃棄し、新しい処理液に交換している。
【0004】
一方、処理液を加温して注入処理をする場合には、注薬缶に設けた加熱コイルに蒸気を通して加熱する方法と、注薬缶の中にバットを入れて、そのバットの中に設けた加熱コイルに蒸気を通して加熱する方法がある。バットを使う方式では構造が複雑なため、充分な洗浄が出来ない問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題は、上述したように、従来の注入処理装置はポンプや弁などの機器を保護するために装置の配管系統にはストレーナーを取付けているが、処理液を清澄に浄化する機能は有していないので、注入処理を繰り返し続けると処理液が汚染されてしまうという問題があった。
また少量の木材を処理する時及び処理液の品種替えが必要な時などにはバットを使用して注入処理を行うが、このバットを使用して処理液を加熱するには、バット内に加熱コイルを取付けるため、バットの構造が複雑となって、装置費用が高価になるとともに、バット内の洗浄が困難となる。充分洗浄できていないバットの中で品種の違う処理液が混ざらないようにするには、処理液の品種ごとにバットを保有しなければならないという問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、使用後の処理液を廃棄することなく清澄に浄化して循環使用できるようにすること。
またバットを使用するときにも、簡単で安価なバットの構造とし、且つ洗浄も容易にできて、一つのバットで処理液の品種替えができる木材の注入処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1の発明は、木材の加圧式防腐処理等に使用する注入処理装置において、貯蔵槽の中に濾過器を組み込んで、処理液の浄化をする濾過システムと、または注薬缶の中に加熱器を設けて、注薬缶内の処理液またはバット内の処理液を加熱できるとともに、前記の加熱器により蒸気を発生させる多機能熱交システムを備えたことにより、木材への注入処理及び蒸煮処理ができる。
【0008】
上記の「・・・する濾過システムと、または注薬缶の・・・」とは次の3つの構成を意味する。
1.濾過システムのみを備えた木材の注入処理装置
2.多機能熱交システムのみを備えた木材の注入処理装置
3.濾過システムと多機能熱交システムの両方を備えた木材の注入処理装置
【0009】
請求項2の発明は、開閉可能な蓋付のフィルターベッセルにフィルターバスケットを取付け、フィルターベッセルには液入口ノズルが接続されており、フィルターバスケットにはフィルターバッグを着脱可能に装着し、フィルターベッセルに流入した処理液はフィルターバッグの内側から外側へ流れ、フィルターバスケットを通過して、貯蔵槽へ流出し、処理液中の固体はフィルターバッグの中に捕集される構造の濾過器を備えた濾過システムにより、処理液の清澄浄化を行う。
【0010】
使用する濾過器の構造は上述の袋濾過器の型式に限らず、加圧葉状濾過器やカートリッヂ濾過器等の他の型式を使用することもできる。また固体粒子を除去する濾材は濾布に限らず、金網、フエルト及び粒状濾材であってもよい。
【0011】
請求項3の発明は、注薬缶には加熱器と液面センサーを設けるとともに、注薬缶内の液面及び注薬缶の中に装着したバット内の液位を測定する液面計を取付けた多機能熱交システムにより次の機能を有することができる。
1つは注薬缶内の処理液を加熱する機能。
2つ目は、注薬缶内の水を加熱し、その加熱水でバット内の処理液を加熱する機能。
3つ目は、注薬缶内の水を加熱蒸発させて、蒸気を自己発生させる機能。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、本発明に係る濾過システムを使用して、処理液が浄化されることにより、汚染された処理液を廃棄せずに循環使用することができる。その結果処理液の使用量が削減され、また廃棄コストも不要となる。
さらに清澄な処理液で注入処理された製品は品質が向上する。
【0013】
本発明の多機能熱交システムによれば、バット内の加熱用コイルが不要となり、配管系統が簡単になるため装置費が安価になる。また処理液の品種替え時の洗浄が容易にできて1つのバットで各種処理液の注入処理が可能となる。さらに加熱器として電気加熱用ヒーターを使用する時には、蒸気の自己発生ができるため、ボイラー設備が不要となり設備費が削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
処理液の浄化に使用する濾過器は、処理液を装置の外部へ排出しない。また洩らさない方法で処理液の中の固形分のみを取り出すことのできる構造とし、かつ濾材の交換と濾滓の取り出しが容易にできる型式とする。
【0015】
注薬缶内の液体を加熱する加熱器は、大型の装置では蒸気加熱パイプを使用し、小型の装置では電気加熱ヒーターを使用するのが経済的である。多機能熱交システムは処理液の加熱と蒸気を自己発生できるように前記の加熱器と液面センサー及び液面計から構成する。
【実施例】
【0016】
本発明の実施例1を図面に従って説明する。
図1は本発明装置の全体を示すフローチャート図であり、図2はバットを使用して注入処理を行う時の注薬缶の断面図を示す。
符号の1は注薬缶で開閉蓋を有する円筒横置き型の圧力タンク。
2は処理液を貯蔵する貯蔵槽で円筒竪置き型常圧タンク。
3は処理液を濾過する袋濾過器であり、貯蔵槽の内部に固定されている。
4は処理液を注薬缶又は濾過器に圧送する加圧ポンプ。
5はバットで台車6の上に取付けられており、レール7の上を移動して注薬缶1に脱着できる。バット5には処理液を入出するためのフレキシブルホースA8と、液面計10に連通するフレキシブルホースB9が接続されており、フレキシブルホース8.9はそれぞれの接続配管とカップリング15で着脱可能になっている。
11は加熱器で蒸気加熱パイプ又は電気加熱ヒーター、12は液面センサーで注薬缶内の水位を検知する。13は真空ポンプで注薬缶内を真空にする時に使用する。
14は空気圧縮機で主に注薬缶内を加圧するときに使用する。
【0017】
上述の機器で構成されているこの実施例において、バットを使用して注入処理を行う工程を次に説明する。
バット5に木材(M)を投入して、注薬缶1の中に装着する。
フレキシブルホース8.9をそれぞれの接続配管に継ぎ、貯蔵槽2内の処理液を加圧ポンプ4により、液送りライン16を通して液面計10の指示液面までバット5に入液する。注薬缶には液面センサー12の指示水位まで注水し、加熱器11により水を加熱昇温する。この加熱昇温によりバット5内の処理液は所定の温度まで加温することができる。同時に空気圧縮機14を稼動し、注薬缶内を所定圧力まで圧縮空気で加圧することにより木材への加圧注入処理を行う。注入処理の終了後は、加圧状態のまま液送ライン16と濾過ライン17のバブルを開き、処理液は圧力差で濾過器3で濾過されて濾液は貯蔵槽2に入り、固形粒子はフィルターバッグ24に捕集される。
【0018】
処理液の濃度や粘度が低く、木材の処理量が多い場合には、バットを使用しないで注入処理を行う。この工程では、台車6に直接木材(M)を積載して、注薬缶の中に装着する。前記と同様に処理液を注薬缶に入液した後、加熱器11で処理液を直接加熱昇温して所定の温度まで加温する。注入処理を促進するために、加圧注入工程の前後に前排気と後排気の工程を行うことがあるが、その工程時には、真空ポンプ13を稼動して注薬缶内の真空引きを行う。
【0019】
処理液を注薬缶やバットに入液する前に、木材を蒸煮してヤニや樹脂分を除去し、木材の中の水分傾斜を均一にする場合がある。この蒸煮処理の工程では、台車6の下面まで水を注薬缶1に注水し電気加熱ヒーターで加熱し、蒸気を自己発生させて蒸煮処理を行う。大型の装置で外部から蒸気が供給される場合は、蒸気を直接注薬缶に導入することもできる。
【0020】
図3は袋濾過器の断面図であるが、その濾過器の実施例について述べる。フィルターベッセル20は開閉可能な上蓋21の付いた密閉容器で底板22の穴部にフィルターバスケット23を取付けている。フィルターバスケット23は多孔板からなり、上部が開口している円筒状容器で、その中に袋状の濾材であるフィルターバック24を装着し、フィルターバッグ押え金具27で固定している。またフィルターバスケット23が無くてフィルターバッグ24のみで使用することもできる。フィルターベッセル20には液入口ノズル25と空気入口ノズル26が接続されている。
【0021】
次に上記濾過器の使用について説明する。
濾過器3は貯蔵槽2の中に取付けられており、貯蔵槽2内の処理液は加圧ポンプ4により、濾過ライン17から液入口ノズル25を通りフィルターベッセル20に流入する。流入した処理液はフィルターバッグ24の内側から外側へと流れフィルターバスケット23の孔を通過して貯蔵槽2へと流出する。処理液中の固体粒子はフィルターバッグ24の中に捕集されるが、濾滓(捕集された固体粒子)中の液分を除去するために空気入口ノズル26から圧縮空気を供給して通気脱水を行う。また10ミクロン以下の微小の固体粒子を除去するため、上記の濾過回路を使用して、繰り返し循環濾過を行いながら、貯蔵槽2内の処理液を浄化することができる。
圧縮空気で脱水された濾滓は、上蓋21とフィルターバッグ押工金具27を取り外してフィルターバッグ24と一緒に取り出し、廃棄する。一方、注入処理の終わった処理液を注薬缶1またはバット5から貯蔵槽2に戻す時は、液送ライン16から濾過ライン17を通り濾過器3に圧送して濾過を行い、濾過された処理液にして貯蔵槽2へ液戻しすることもできる。
【0022】
処理液の量と濾過能力により、フィルターバスケット23及びフィルターバッグ24は1本に限らず複数本使用する場合もある。
フィルターバッグ24の目開きのサイズは処理液の物性と濾過性能によって決定するが、通常10〜100ミクロンが多く使用される。フィルターバスケット23及びフィルターバッグ24の中に活性炭等の吸着剤を入れて、処理液に溶解している不純物質を取り除くこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の活用例としては、木材への注入処理と蒸煮処理がある。
本発明の装置は真空から高圧までの圧力範囲と多機能熱交システムによる、冷却から加熱までの多くの機能を備えているため、以下の用途に使用することができる。
1.木材の防腐、防虫処理
2.木材の不燃剤含浸処理
3.木材のWPC含浸処理
4.セルロース系物質の形状固定処理
5.各種製品の蒸気加熱殺菌処理
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】 実施例1の木材注入処理装置のフローチャート図
【図2】 実施例1のバット使用時の注薬缶の断面図
【図3】 実施例1の袋濾過器の断面図
【符号の説明】
【0025】
1: 注薬缶 10: 液面計
2: 貯蔵槽 11: 加熱器
3: 濾過器 12: 液面センサー
4: 加圧ポンプ 20: フィルターベッセル
5: バット 23: フィルターバスケット
6: 台車 24: フィルターバッグ
8: フレキシブルホース M: 木材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材の加圧式防腐処理等に使用する注入処理装置において、貯蔵槽の中に濾過器を組み込んで、処理液の浄化をする濾過システムと、または注薬缶の中に加熱器を設けて、注薬缶内の処理液またはバット内の処理液を加熱できるとともに、前記の加熱器により蒸気を発生させる多機能熱交システムを備えたことを特徴とする木材の注入処理装置。
【請求項2】
開閉可能な蓋付のフィルターベッセルにフィルターバスケットを取付け、フィルターベッセルには液入口ノズルが接続されており、フィルターバスケットにはフィルターバッグを着脱可能に装着し、フィルターベッセルに流入した処理液はフィルターバックの内側から外側へ流れ、フィルターバスケットを通過して貯蔵槽へ流出し、処理液中の固体はフィルターバックの中に捕集される構造の濾過器を備えた濾過システムである請求項1の木材の注入処理装置。
【請求項3】
注薬缶には加熱器と液面センサーを設けるとともに、注薬缶内の液面及び注薬缶の中に装着したバット内の液位を測定する液面計を取付けたことを特徴とする多機能熱交システムである請求項1の木材の注入処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−142790(P2006−142790A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360578(P2004−360578)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(597136456)有限会社コウムラテクノ (7)
【Fターム(参考)】