説明

木材の洗浄装置

【課題】木材から余分な成分を確実に除去できる木材の洗浄装置を提供する。
【解決手段】本発明は、木材1に洗浄液Sを含浸させて余分な成分を排出する木材の洗浄装置を対象とする。本装置は、木材1の一方側木口1aを液密状態に閉塞する一方側チャンバ2aと、木材1の他方側木口1bを液密状態に閉塞する他方側チャンバ2bと、上記両側チャンバ間において木材1の中間外周面1cを液密状態に閉塞する中間チャンバ2cと、を備える。そして一方側チャンバ2a内に洗浄液Sを加圧供給して、木材1の一方側木口1aから洗浄液Sを木材内部に含浸させつつ、他方側チャンバ2b内を吸引して、他方側木口1bから洗浄液Sを排出する一方側加圧洗浄処理と、中間チャンバ2c内に洗浄液Sを加圧供給して、木材1の中間外周面1cから木材内部に洗浄液Sを含浸させる中間加圧処理と、を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、木材に洗浄液等の液体を含浸させるための木材の洗浄装置およびその関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
合板等の基材に突板が貼り付けられた化粧床材や化粧壁材の化粧面を着色する方法としては、突板を基材に貼付した後、顔料を直接突板表面に付着させてアミノやウレタン等の樹脂を塗布する方法や、突板を先に染色しておいてその着色された突板を基材に貼り付ける方法等が周知である。
【0003】
さらに後者の着色方法において、突板を着色する方法としては、下記特許文献1に示すように木材を切削して単板(突板)を作製した後、その単板を染色する方法や、下記特許文献2,3に示すように木材を染色した後、その木材を切削して着色単板を得る方法が一般に用いられている。
【特許文献1】特開昭58−28303号
【特許文献2】特開平8−244006号
【特許文献3】特開平8−57804号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示す従来の着色単板の製造方法においては、単板を1枚ずつ染色するものであるため、多数の単板を染色するのに膨大な時間が必要となり、生産効率の低下を来すという問題があった。
【0005】
一方、特許文献2,3に示す従来の着色木材の製造方法においては、木材を染色した後、その着色木材を切削して着色単板を得るものであるため、染色を切削前の木材の状態で行うことができ、単板を1枚ずつ染色する等の低能率な作業が必要なく、生産性を向上させることができる。
【0006】
しかしながら、特許文献2,3に示す着色木材の製造方法においては、染液によって木材を染色する場合、細胞壁や壁内を確実に染色するには、細胞内や細胞間の空隙を染液で十分に満たす必要がある。その状態は含水率10%の木材に染液を110〜150%含浸させた状態に相当するが、細胞壁や壁内を染色した後の染液と未反応の染液(未定着染料)は、余分な染液成分として木材内に残存してしまう。この余分な染液成分が残存した状態で木材を切削すると、余分な染液成分が切削単板の表面に、汚らしい斑模様のようになって表出し、いわゆる染色ムラが発生して品質の低下を来すという問題があった。
【0007】
さらに余分な染液成分が残存した状態の染色加工後木材は、切削可能な含水率まで乾燥させてから切削したとしても、上記と同様に染色ムラが発生してしまう。
【0008】
染色ムラを防止するには、木材を染色した後、洗浄して未定着染料等の余分な染液成分を十分に洗い出す必要がある。しかしながら通常の洗浄方法では、木材内部全域に洗浄液を十分に浸透させることができず、余分な染液成分を確実に除去することが困難であるという問題が発生する。
【0009】
この発明は、上記従来技術の問題を解消し、木材内部の未定着染料等の余分な成分を確実に除去することができる木材の洗浄装置およびその関連技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、以下の構成を要旨としている。
【0011】
[1] 木材に洗浄液を含浸させて余分な成分を排出する木材の洗浄装置であって、
木材の一方側木口を液密状態に閉塞する一方側チャンバと、
木材の他方側木口を液密状態に閉塞する他方側チャンバと、
上記両側チャンバ間において木材の中間外周面を液密状態に閉塞する中間チャンバと、を備え、
前記一方側チャンバ内に洗浄液を加圧供給して、木材の一方側木口から洗浄液を木材内部に含浸させつつ、前記他方側チャンバ内を吸引して、他方側木口から洗浄液を排出する一方側加圧洗浄処理と、
前記中間チャンバ内に洗浄液を加圧供給して、木材の中間外周面から木材内部に洗浄液を含浸させる中間加圧処理と、を行うようにしたことを特徴とする木材の洗浄装置。
【0012】
[2] 前記中間加圧処理においては、両側チャンバ内を吸引して、木材の両側木口から洗浄液を排出する両側吸引中間加圧処理を行うようにした前項1に記載の木材の洗浄装置。
【0013】
[3] 前記中間加圧処理においては、両側チャンバ内を密閉する両側密閉中間加圧処理を行うようにした前項1または2に記載の木材の洗浄装置。
【0014】
[4] 前記他方側チャンバ内に洗浄液を加圧供給して、木材の他方側木口から洗浄液を木材内部に含浸させつつ、前記一方側チャンバ内を吸引して、一方側木口から洗浄液を排出する他方側加圧洗浄処理をさらに行うようにした前項1〜3のいずれかに記載の木材の洗浄装置。
【0015】
[5] 前記中間チャンバ内を吸引して、木材の中間外周面から洗浄液を排出する中間減圧処理をさらに行うようにした請求項1〜4のいずれかに記載の木材の洗浄装置。
【0016】
[6] 木材に洗浄液を含浸させて余分な成分を排出する木材の洗浄装置であって、
木材の一方側木口を液密状態に閉塞する一方側チャンバと、
木材の他方側木口を液密状態に閉塞する他方側チャンバと、
上記両側チャンバ間において木材の中間外周面を液密状態に閉塞する中間チャンバと、を備え、
前記一方側チャンバ内に洗浄液を加圧供給して、木材の一方側木口から洗浄液を木材内部に含浸させつつ、前記他方側チャンバ内を吸引して、他方側木口から洗浄液を排出する一方側加圧洗浄処理と、
前記中間チャンバ内を吸引して、木材の中間外周面から洗浄液を排出する中間減圧処理と、を行うようにしたことを特徴とする木材の洗浄装置。
【0017】
[7] 染色加工済木材に洗浄液を含浸させて余分な染液成分を排出する木材の染液洗浄装置であって、
請求項1〜6のいずれかに記載の木材の洗浄装置によって構成されたことを特徴とする木材の染液洗浄装置。
【0018】
[8] 木材に洗浄液を含浸させて余分な成分を排出する木材の洗浄方法であって、
木材の一方側木口を液密状態に閉塞する一方側チャンバと、
木材の他方側木口を液密状態に閉塞する他方側チャンバと、
上記両側チャンバ間において木材の中間外周面を液密状態に閉塞する中間チャンバと、を準備しておき、
前記一方側チャンバ内に洗浄液を加圧状態に供給して、木材の一方側木口から洗浄液を木材内部に含浸させつつ、前記他方側チャンバ内を吸引して、他方側木口から洗浄液を排出する工程と、
前記中間チャンバ内に洗浄液を加圧供給して、木材の中間外周面から木材内部に洗浄液を含浸させる工程と、を行うことを特徴とする木材の洗浄方法。
【0019】
[9] 木材を染液によって染色する染色加工工程と、染色された木材を洗浄液により洗浄して余分な染液成分を除去する洗浄工程と、を含む着色木材の製造方法であって、
前記洗浄工程を、請求項8に記載の木材の洗浄方法を用いて行うようにしたことを特徴とする着色木材の製造方法。
【0020】
[10] 木材に液体を含浸させるための木材の液体含浸装置であって、
木材の一方側木口を液密状態に閉塞する一方側チャンバと、
木材の他方側木口を液密状態に閉塞する他方側チャンバと、
上記両側チャンバ間において木材の中間外周面を液密状態に閉塞する中間チャンバと、を備え、
各チャンバ内に液体を加圧状態に導入して、液体を木材の外表面から木材内部に含浸させる加圧含浸処理を行うようにしたことを特徴とする木材の液体含浸装置。
【発明の効果】
【0021】
上記発明[1]〜[5]における木材の洗浄装置によれば、木材に対し、あらゆる方向から洗浄液を含浸/排出することができ、洗浄液を木材内部全域に供給することができ、余分な成分を確実に排出除去することができる。
【0022】
上記発明[6]における木材の洗浄装置によれば、木材に対し、あらゆる方向から洗浄液を含浸/排出することができ、洗浄液を木材内部全域に供給することができ、余分な成分を確実に排出除去することができる。
【0023】
上記発明[7]における木材の染液洗浄装置によれば、上記と同様に、洗浄液を木材内部全域に供給することができ、未定着の染料等の余分な染液成分を確実に排出除去することができる。
【0024】
上記発明[8]によれば、上記と同様に、同様の効果を奏する木材の洗浄方法を提供することができる。
【0025】
上記発明[9]によれば、上記と同様に、同様の効果を奏する着色木材の製造方法を提供することができる。
【0026】
上記発明[10]における木材の液体含浸装置によれば、木材に対し、あらゆる方向から液体を含浸させることができ、液体を木材内部全域に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態である着色木材の製造方法を用いて、板材から化粧床材を製造する場合を例に挙げて説明する。
【0028】
図1に示すように、この実施形態の製法は、板材に染液を含浸させて染色する染色加工工程(染液含浸工程)と、染色加工された染色加工済板材(染液含浸済板材)を洗浄する洗浄工程と、洗浄された洗浄済板材を乾燥する乾燥工程と、乾燥された乾燥済板材からフリッチを製作するフリッチ作製工程と、フリッチを切削して単板(着色単板)を製作する切削工程と、着色単板を基材に貼り付けて化粧床材を製作する単板貼着工程と、を含むものである。
【0029】
本実施形態で使用される板材(出発材)は、特に限定されるものではないが、例えばナラ(オーク)、ブナ(ビーチ)、カバ(バーチ)、メイプル、シカモア等の木材を一般的に使用することができる。
【0030】
この板材としては、カビの発生や腐朽菌等による腐蝕を防止するため気乾状態(含水率およそ8〜15%)に調整したもの等があるが、本実施形態では後に詳述するように、含水率をコントロールできるため、どのような含水率の板材であっても不具合なく使用することができる。
【0031】
さらに板材の形状は、特に限定されることはないが、例えば丸太形状、平板形状(板材形状)等のものを好適に用いることができる。なお本発明においては、木口から洗浄液を強制導入できる板材であれば、薄板形状(単板形状)のものであっても使用することができる。
【0032】
また板材のサイズも、特に限定されるものではないが、厚さが10〜100mm、幅が50〜150mm、長さが100〜1000mmのものを好適に用いることができる。
【0033】
染色加工工程で用いられる染液に含まれる着色材料としては、染料、顔料、染料および顔料の双方からなるものが用いられるが、均一に木材の内部まで着色するには、染料を用いるのが好ましい。
【0034】
また染料の種類も特に限定されることはないが、例えば酸性染料、酸性媒染染料、金属錯塩酸性染料、塩基性染料、直接染料、硫化染料を用いることができ、中でも、定着性(固定性)に優れた酸性染料は好適に用いることができる。
【0035】
さらに染液には染料以外にも、必要に応じて適宜、添加剤を配合するようにしても良い。例えば染料を木材の内部全域に均等にバランス良く浸透させるために、分散剤、緩染剤を混合しても良い。
【0036】
本実施形態において、染色加工工程を行うための染色加工装置(染液含浸装置)は、木材の染色用として一般に使用されるものであって、ワークとしての木材(板子)を収容可能な真空加圧タンクと、そのタンク内に染液を供給するための染液供給手段と、を備えている。
【0037】
そして真空加圧タンク内に木材をセットして、染液を加熱した状態でタンク内に供給して、染液内に木材を浸漬する。その後、タンク内の圧力および染液温度を適宜コントロールして、染液を木材内部に十分に染み込ませて染色する。
【0038】
こうして染色した木材(染色加工済木材)において、木材内部に染み込んで定着固定した染料以外の染液は、余分な染液成分として導管内や細胞腔内に残存している。この残留する余分な染液成分は、既述したように色ムラの要因となるため、洗浄処理を行って余分な染液成分を除去する必要がある。
【0039】
本実施形態においては、この洗浄処理に用いられる洗浄装置として図2に示す装置が用いられる。
【0040】
この洗浄装置は、チャンバ装置(2)と、チャンバ装置(2)に洗浄液を加圧状態に供給する洗浄液加圧供給手段と、チャンバ装置(2)内から洗浄液を吸引排出する洗浄液吸引排出手段と、を基本的な構成要素として備えている。
【0041】
チャンバ装置(2)は、その一方側に設けられる一方側チャンバ(2a)と、他方側に設けられるチャンバ(2b)と、両側チャンバ(2a)(2b)間に設けられる中間チャンバ(2c)とを有している。
【0042】
そして図2,3に示すように、染色されたワーク(板子)としての染色加工済木材(1)は、その元口等の一方側木口(1a)が一方側チャンバ(2a)に収容され、末口等の他方側木口(2b)が他方側チャンバ(2b)に収容されさらに、中間部全域が中間チャンバ(2c)に収容された状態でチャンバ装置(2)内にセットされる。
【0043】
さらに木材(1)の両端部外周には、弾性パッキン(15)(15)が嵌着されている。そして一方側の弾性パッキン(15)が一方側チャンバ(2a)および中間チャンバ(2c)間の内周面に弾性密着されるとともに、他方側の弾性パッキン(15)が他方側チャンバ(2b)および中間チャンバ(2c)間の内周面に弾性密着されている。これにより一方側チャンバ(2a)および中間チャンバ(2c)間が水密状態に設定されるとともに、他方側チャンバ(2b)および中間チャンバ(2c)間が水密状態に設定されている。従って、各チャンバ(2a)〜(2c)は、互いに独立した状態となる。
【0044】
各チャンバ(2a)〜(2c)には、出入口(21a)〜(21c)が設けられており、この出入口(21a)〜(21c)を介して、各チャンバ(2a)〜(2c)に対し、洗浄液(S)の供給および排出が行われるようになっている。
【0045】
一方側チャンバ(2a)の出入口(21a)には、一方側接続管(40)が水密状態に連通接続される。さらにこの一方側接続管(40)には、供給側第1配管(41)の一端が連通接続されるとともに、その供給側第1配管(41)の他端が加圧タンク(43)に連通接続されている。また加圧タンク(43)の上流側には、加圧ポンプ(44)、供給側洗浄液タンク(45)が配管接続されている。
【0046】
なお供給側洗浄液タンク(45)には、排出管(46)が設けられており、その管(46)上に設けられた排出バルブ(46v)を開放することにより、供給側洗浄液タンク(45)内の洗浄液(S)が、排水管(46)を介して所定箇所に排出されるようになっている。
【0047】
他方側チャンバ(2b)の出入口(21b)には、他方側接続管(50)が水密状態に連通接続されている。さらにこの他方側接続管(50)には、排出側第1配管(51)の一端が連通接続されるとともに、その排出側第1配管(51)の他端が排出側洗浄液タンク(55)に連通接続されている。また排出側洗浄液タンク(55)の下流側には真空ポンプ(吸引ポンプ54)が連通接続されている。
【0048】
なお排出側洗浄液タンク(55)には、排出管(56)が設けられており、その管(56)上に設けられた排水バルブ(56v)を開放することにより、排出側洗浄液タンク(55)内の処理済洗浄液(S)が、排出管(56)を介して排出されるよう構成されている。さらに排出管(56)における排水バルブ(56v)の上流側には、戻し管(57)の一端が連通接続されるとともに、その戻し管(57)の他端が、上記供給側洗浄液タンク(45)に連通接続されている。そして排水バルブ(56v)を閉じた状態では、排水側処理液タンク(55)内に回収された洗浄液(S)が、戻り管(57)を通って供給側洗浄液タンク(45)内に戻されるよう構成されている。
【0049】
また供給側第1配管(41)の途中には、供給側第2配管(42)の一端が連通接続されるとともに、その供給側第2配管(42)の他端が、上記他方側接続管(50)に連通接続されている。さらに排出側第1配管(51)の途中には、排出側第2配管(52)の一端が連通接続されるとともに、その排出側第2配管(52)の他端が、上記一方側接続管(50)に連通接続されている。
【0050】
また供給側第1配管(41)における供給側第2配管(42)の接続部よりも下流側には、供給側第1バルブ(41v)が設けられるとともに、供給側第2配管(42)における排出側第1配管(51)との接続部近傍には、供給側第2バルブ(42v)が設けられている。
【0051】
さらに排出側第1配管(51)における排出側第2配管(52)の接続部よりも上流側には、排出側第1バルブ(51v)が設けられるとともに、排出側第2配管(52)における供給側第1配管(41)との接続部近傍には、排出側第2バルブ(52v)が設けられている。
【0052】
また中間チャンバ(2c)における出入口(21c)には、中間接続管(30)の一端が水密状態に連通接続されている。この中間接続管(30)の他端には、供給側中間配管(31)の一端が連通接続されるとともに、供給側中間配管(31)の他端が、供給側第1配管(41)における供給側第1バルブ(41v)よりも上流側に連通接続されている。
【0053】
さらに中間接続管(30)の他端には、排出側中間配管(32)の一端が連通接続されるとともに、排出側中間配管(32)の他端が、排出側第1配管(51)における排出側第1バルブ(51v)よりも下流側に連通接続されている。
【0054】
また供給側中間配管(31)には、供給側中間バルブ(31v)が設けられるとともに、排出側中間配管(32)には、排出側中間バルブ(32v)が設けられている。
【0055】
なお本実施形態において、一方側チャンバ(2a)に対し洗浄液(S)の供給および排出を制御する供給側第1バルブ(41v)および排出側第2バルブ(52v)を共に閉じた状態では、一方側チャンバ(2a)の出入口(21a)が閉塞されて、一方側チャンバ(2a)内が密封されるようになっている。同様に、他方側チャンバ(2b)に対し洗浄液(S)の供給および排出を制御する供給側第2バルブ(42v)および排出側第1バルブ(51v)を共に閉じた状態では、他方側チャンバ(2b)の出入口(21b)が閉塞されて、他方側チャンバ(2b)が密封されるようになっている。さらに中間チャンバ(2c)に対し洗浄液(S)の供給および排出を制御する供給側中間バルブ(31v)および排出側中間バルブ(32v)を共に閉じた状態では、中間チャンバ(2c)の出入口(21c)が閉塞されて、中間チャンバ(2c)の密封されるようになっている。
【0056】
本実施形態においては、中間接続管(30)、供給側中間配管(31)、一方側接続管(40)、他方側接続管(50)、供給側第1配管(41)、供給側第2配管(42)、加圧タンク(43)、加圧ポンプ(44)、供給側洗浄液タンク(45)等によって、洗浄液加圧供給手段が構成されている。さらに洗浄液加圧供給手段のうち、一方側チャンバ(2a)に洗浄液を加圧供給するための構成要素例えば、一方側接続管(40)、供給側第1配管(41)、加圧タンク(43)、加圧ポンプ(44)、供給側洗浄液タンク(45)等によって、一方側チャンバ加圧供給手段が構成されている。さらに洗浄液加圧供給手段のうち、他方側チャンバ(2b)に洗浄液を加圧供給するための構成要素例えば、他方側接続管(50)、供給側第2配管(42)、加圧タンク(43)、加圧ポンプ(44)、供給側洗浄液タンク(45)等によって、他方側チャンバ加圧供給手段が構成されている。さらに洗浄液加圧供給手段のうち、中間チャンバ(2c)に洗浄液を加圧供給するための構成要素例えば、中間接続管(30)、供給側中間配管(31)、加圧タンク(43)、加圧ポンプ(44)、供給側洗浄液タンク(45)等によって、中間チャンバ加圧供給手段が構成されている。
【0057】
また中間接続管(30)、排出側中間配管(32)、一方側接続管(40)、他方側接続管(50)、排出側第1配管(51)、排出側第2配管(52)、真空ポンプ(54)、排出側洗浄液タンク(55)等によって洗浄液吸引排出手段が構成されている。さらに洗浄液強制排出手段のうち、他方側チャンバ(2b)の洗浄液を吸引排出するための構成要素例えば、他方側接続管(50)、排出側第1配管(51)、真空ポンプ(54)、排出側洗浄液タンク(55)等によって他方側チャンバ吸引排出手段が構成されている。さらに洗浄液強制排出手段のうち、一方側チャンバ(2a)の洗浄液を吸引排出するための構成要素例えば、一方側接続管(40)、排出側第2配管(52)、真空ポンプ(54)、排出側洗浄液タンク(55)等によって一方側チャンバ吸引排出手段が構成されている。さらに洗浄液強制排出手段のうち、中間チャンバ(2c)の洗浄液を吸引排出するための構成要素例えば、中間接続管(30)、排出側中間配管(32)、真空ポンプ(54)、排出側洗浄液タンク(55)等によって中間チャンバ吸引排出手段が構成されている。
【0058】
次に上記洗浄装置によって、洗浄される木材(1)の通道に関して説明する。
【0059】
木材(1)は、根から吸収した水分を葉に供給する通水組織として、導管や仮導管等の通道(通道組織)が繊維方向に沿って形成されている。
【0060】
板子等の木材(1)の通道は、木口−木口連通型、木口−周面連通型、周面−周面連通型の3つのタイプに大別することができる。
【0061】
木口−木口連通型の通道(3)は図4(a)に示すように、一端が木材(1)における一方側木口(1a)に連通し、かつ他端が他方側木口(1b)に連通しているものである。
【0062】
木口−周面連通型の通道(3)は同図(b)に示すように、一端が木材(1)における一方側木口(1a)に連通し、かつ他端が両側面、上下面(板面)等の中間外周面(1c)に連通しているものや、同図(c)に示すように一端が他方側木口(1b)に連通し、かつ他端が両側面、上下面等の中間外周面(1c)に連通しているものである。
【0063】
周面−周面連通型の通道(3)は同図(d)に示すように、一端が木材(1)おける両側面、上下面等の中間外周面(1c)に連通し、かつ他端も両側面、上下面等の中間外周面(1c)に連通しているものである。
【0064】
染色加工された木材(1)には、上記の各通道(3)内の全てに染液が染み込んでおり、以下に説明するように、本実施形態においては上記洗浄装置によって、各通道内の染液のうち、未定着の余分な染色成分を洗浄して除去する。
【0065】
まず、染色加工済木材(1)を既述したように、チャンバ装置(2)内にセットする。
【0066】
続いて洗浄液(S)の供給を開始する。すなわち図2に示すように、供給側第1バルブ(41v)、排出側第1バルブ(51v)および排出側中間バルブ(32v)をそれぞれ開放し、他のバルブ(31v)(42v)(52v)はそれぞれ閉じておく。
【0067】
この状態で図5(a)に示すように、加圧ポンプ(44)によって、供給側洗浄液タンク(45)内の洗浄液(S)を加圧タンク(43)に送り込んで、そこから供給側第1配管(41)および一方側接続管(40)を介して一方側チャンバ(2a)内に加圧導入する。なおこの状態では、未だ真空ポンプ(54)による吸引は行われておらず、他方側チャンバ(2b)および中間チャンバ(2c)の各出入口(21b)(21c)は大気に開放されている。
【0068】
これにより一方側チャンバ(2a)内に加圧供給された洗浄液(S)が、木材(1)の一方側木口(1a)から木材内部に強制的に導入(含浸)される。さらにその洗浄液(S)は、木材内部の通道を通って、木材(1)の他方側木口(1b)から流出されて他方側チャンバ(2b)内に放出されるとともに、木材(1)の両側面および上下面等の中間外周面(1c)から流出されて中間チャンバ(2c)内に放出される。
【0069】
次に、各バルブの開閉操作は行わずに、真空ポンプ(54)による吸引を開始する。これにより図5(b)に示すように排出側経路が負圧となり、他方側チャンバ(2b)および中間チャンバ(2c)が負圧に設定される。従って一方側木口(1a)から木材内部に含浸される洗浄液(S)が他方側木口(1b)から吸引排出されると同時に、中間外周面(1c)からも吸引排出される。また他方側チャンバ(2b)内の洗浄液(S)は、他方側接続管(50)および排出側第1配管(51)を通って排出側洗浄液タンク(55)に導かれるとともに、中間チャンバ(2c)内の洗浄液(S)は、中間接続管(30)および排出側中間配管(32)を通って排出側洗浄液タンク(55)に導かれる。
【0070】
こうして洗浄液(S)を一方側木口(1a)から木材内部に強制的に含浸させて他方側木口(1b)および中間外周面(1c)から吸引排出することによって、一方側木口(1a)から他方側木口(1b)にかけて連通する通道(図4(a)参照)と、一方側木口(1a)から中間外周面(1c)にかけて連通する通道(図4(b)参照)との内部を確実に洗浄できて、これらの通道内に残留する未定着の染料等の余分な染液成分を、洗浄液(S)と共に木材外部に排出除去することができる。
【0071】
次に上記の状態から、排出側中間バルブ(32v)のみを閉じる。これにより図5(c)に示すように、中間チャンバ(2c)の出入口(21c)が閉塞されて、中間チャンバ(2c)内が密閉される。従って一方側チャンバ(2a)の洗浄液(S)が一方側木口(1a)を介して木材内部に含浸し、他方側木口(1b)から吸引排出されるとともに、中間チャンバ(2c)内に貯留された洗浄液(S)が中間外周面(1c)から木材内部に含浸して、他方側木口(1b)から吸引排出される。
【0072】
こうして洗浄液(S)を一方側木口(1a)および中間外周面(1c)から含浸させて他方側木口(1b)から吸引排出することによって、一方側木口(1a)から他方側木口(1b)にかけて連通する通道(図4(a)参照)と、中間外周面(1c)から他方側木口(1b)にかけて連通する通道(図4(c)参照)との内部を確実に洗浄できて、これらの通道内に残留した未定着の染料等の余分な染液成分を、洗浄液(S)と共に木材外部に排出除去することができる。
【0073】
なお本実施形態においては、一方側チャンバ(2a)を加圧して他のチャンバ(2b)(2c)を吸引(減圧)して行う洗浄処理(図5(b)参照)と、一方側チャンバ(2a)を加圧して他方側チャンバ(2b)を吸引し、さらに中間チャンバ(2c)を密閉して行う洗浄処理(図5(c)参照)と、の2つの洗浄処理がそれぞれ一方側加圧洗浄処理を構成している。
【0074】
一方側加圧洗浄処理を行った後は、他方側加圧洗浄処理が行われる。すなわち図2に示すように、供給側第2バルブ(42v)、排出側第2バルブ(52v)および排出側中間バルブ(32v)をそれぞれ開放し、他のバルブ(31v)(41v)(51v)はそれぞれ閉じておく。
【0075】
この状態で図6(a)に示すように、加圧ポンプ(44)によって、供給側洗浄液タンク(45)内の洗浄液(S)を加圧タンク(43)に送り込んで、そこから供給側第2配管(42)および他方接続管(50)を介して他方側チャンバ(2b)内に加圧導入する。なおこの状態では、真空ポンプ(54)による吸引は行われておらず、一方側チャンバ(2a)および中間チャンバ(2c)の各出入口(21a)(21c)は大気に開放されている。
【0076】
これにより他方側チャンバ(2b)内に加圧供給される洗浄液(S)が、木材(1)の他方側木口(1b)から木材内部に含浸していく。さらにその洗浄液(S)は、木材内部の通道を通って、木材(1)の一方側木口(1a)から流出されて一方側チャンバ(2a)内に放出されるとともに、木材(1)の両側面および上下面等の外周面(1c)から流出されて中間チャンバ(2c)内に放出される。
【0077】
次に、各バルブの開閉操作は行わずに、真空ポンプ(54)による吸引を開始する。これにより図6(b)に示すように一方側経路が負圧に設定されて、一方側チャンバ(2a)および中間チャンバ(2c)が負圧に設定される。従って他方側木口(1b)から木材内部に含浸される洗浄液(S)が一方側木口(1a)から吸引排出されると同時に、中間外周面(1c)からも吸引排出される。また一方側チャンバ(2a)内の洗浄液(S)は、一方側接続管(40)および排出側第1配管(52)を通って排出側洗浄液タンク(55)に導かれるとともに、中間チャンバ(2c)内の洗浄液(S)は、中間接続管(30)および排出側中間配管(32)を通って排出側洗浄液タンク(55)に導かれる。
【0078】
こうして洗浄液(S)を他方側木口(1b)から木材内部に強制的に含浸させて一方側木口(1a)および中間外周面(1c)から吸引排出することによって、他方側木口(1b)から一方側木口(1a)にかけて連通する通道(図4(a)参照)と、他方側木口(1b)から中間外周面(1c)にかけて連通する通道(図4(c)参照)との内部を確実に洗浄できて、これらの通道内に残留する未定着の染料等の余分な染液成分を、洗浄液(S)と共に木材外部に排出除去することができる。
【0079】
次にこの状態から、排出側中間バルブ(32v)のみを閉じる。これにより図6(c)に示すように、中間チャンバ(2c)の出入口(21c)が閉塞されて、中間チャンバ(2c)内が密閉される。従って他方側チャンバ(2b)の洗浄液(S)が他方側木口(1b)から木材内部に含浸し、一方側木口(1a)から吸引排出されるとともに、中間チャンバ(2c)内に貯留される洗浄液(S)が中間外周面(1c)から木材内部に含浸して、一方側木口(1a)から吸引排出される。
【0080】
こうして洗浄液(S)を他方側木口(1b)および中間外周面(1c)から含浸させて一方側木口(1a)から吸引排出することによって、他方側木口(1b)から一方側木口(1a)にかけて連通する通道(図4(a)参照)と、中間外周面(1c)から一方側木口(1a)にかけて連通する通道(図4(b)参照)との内部を確実に洗浄できて、これらの通道内の余分な染液成分を、洗浄液(S)と共に木材外部に排出除去することができる。
【0081】
なお本実施形態においては、他方側チャンバ(2b)を加圧して他のチャンバ(2a)(2c)を吸引(減圧)して行う洗浄処理(図6(b)参照)と、他方側チャンバ(2b)を加圧して一方側チャンバ(2a)を吸引し、さらに中間チャンバ(2c)を密閉して行う洗浄処理(図6(c)参照)と、の2つの洗浄処理がそれぞれ他方側加圧洗浄処理を構成している。
【0082】
他方側加圧洗浄処理が完了した後は、中間加圧洗浄処理が行われる。すなわち図2に示すように、供給側中間バルブ(31v)、排出側第1バルブ(51v)および排出側第2バルブ(52v)をそれぞれ開放し、他のバルブ(32v)(41v)(42v)はそれぞれ閉じておく。
【0083】
この状態で図7(a)に示すように、加圧ポンプ(44)によって、供給側洗浄液タンク(45)内の洗浄液(S)を加圧タンク(43)に送り込んで、そこから供給側中間配管(31)および中間接続管(30)を介して中間チャンバ(2c)内に加圧導入する。なおこの状態では、真空ポンプ(54)による吸引は行われておらず、一方側チャンバ(2a)および他方側チャンバ(2b)の各出入口(21a)(21b)は、大気に開放されている。
【0084】
これにより中間チャンバ(2c)内に加圧供給された洗浄液(S)が、木材(1)の中間外周面(1c)から木材内部に強制的に導入される。さらにその洗浄液(S)は、木材内部の通道を通って、木材(1)の一方側木口(1a)から流出されるとともに、他方側木口(1b)から流出される。
【0085】
続けて、各バルブの開閉操作は行わずに、真空ポンプ(54)による吸引を開始して、両側チャンバ(2a)(2b)を減圧する。これにより図7(b)に示すように、木材(1)の中間外周面(1c)から木材内部に含浸される洗浄液(S)が両側木口(1a)(1b)から吸引排出される。また一方側および他方側チャンバ(2a)(2b)内の洗浄液(S)は、一方側および他方側接続管(40)(50)および排出側第1および第2配管(51)(52)を通って排出側洗浄液タンク(55)に導かれる(両側吸引中間加圧洗浄処理)。
【0086】
こうして洗浄液(S)を中間外周面(1c)から木材内部に強制的に含浸させて一方側および他方側木口(1a)(1b)から吸引排出することによって、一方側木口(1a)から中間外周面(1c)にかけて連通する通道(図4(b)参照)と、他方側木口(1b)から中間外周面(1c)にかけて連通する通道(図4(c)参照)との内部を確実に洗浄できて、これらの通道内に残留する未定着の染料等の余分な染液成分を、洗浄液(S)と共に木材外部に排出除去することができる。
【0087】
次にこの状態から、排出側第1および第2バルブ(51v)(52v)を閉じて、吸引ポンプ(54)による吸引も停止する。これにより図7(c)に示すように、両側チャンバ(2a)(2b)の各出入口(21a)(21b)が閉塞されて、両側チャンバ(2a)(2b)内が密閉される(両側密閉中間加圧洗浄処理)。
【0088】
この状態においては、中間チャンバ(2c)内は加圧状態となっているが、中間チャンバ(2c)内の圧力分布は均一ではなく、バラツキがある。このため、両端が共に中間外周面(1c)に連通する周面−周面連通型の通道(図4(d)参照)に対しても、その一端から洗浄液(S)を含浸させて他端側から流出させることができる。従って、周面−周面連通型の通道内に残留する未定着の染料等の余分な染液成分も、洗浄液(S)と共に木材外部に排出除去することができる。
【0089】
なお図7(a)(b)の状態においても、周面−周面連通型の通道内に少量の洗浄液は浸透させることができるが、図7(c)の状態に比べて、洗浄効果は若干低いものとなる。
【0090】
次に図2に示すように、排出側第1および第2バルブ(51v)(52v)を開いて、吸引ポンプ(54)による吸引を行い、両側チャンバ(2a)(2b)を減圧する。これにより上記図7(b)と同様に、木材(1)の中間外周面(1c)から木材内部に含浸された洗浄液(S)が両側木口(1a)(1b)から吸引排出される。こうして中間外周面(1c)から両側木口(1a)(1b)にかけて連通する通道(図4(d)参照)の内部を洗浄することができる。
【0091】
その後、供給側第1および第2バルブ(41v)(42v)、排出側中間バルブ(32v)を開き、他のバルブ(31v)(51v)(52v)は閉じて、両側チャンバ(1a)(1b)に洗浄液(S)を加圧供給するとともに、中間チャンバ(1c)の洗浄液(S)を吸引排出する。これにより図8に示すように洗浄液(S)を、木材(1)の両側木口(1a)(1b)から木材内部に含浸させて、中間外周面(1c)から吸引排出する。こうして、両側木口(1a)(1b)から中間外周面(1c)にかけて連通する通道(図4(b)(c)参照)内を洗浄する。
【0092】
これにより染色加工済木材(1)の洗浄工程が終了する。
【0093】
本実施形態の洗浄装置による洗浄方法によれば、一方側および他方側加圧洗浄処理(図5,6参照)により、一端が一方側木口(1a)に連通し、かつ他端が他方側木口(1b)に連通する木口−木口連通型の通道と、一端が中間外周面(1c)に連通し、かつ他端が両側木口(1a)(1b)のいずれかに一方に連通する木口−周面連通型の通道と、を確実に洗浄することができるとともに、中間加圧洗浄処理(図7参照)および中間減圧洗浄処理(図8参照)によって、木口−周面連通型の通道と、両端が中間外周面(1c)に連通する周面−周面連通型の通道と、を確実に洗浄することができる。つまり木材(1)に形成される全ての通道を洗浄することができ、木材内部の余分な染液成分を、より確実に排出除去することができる。
【0094】
なお上記各洗浄処理において、排出側経路における排出管(56)の排水バルブ(56v)を閉じておくと、排水側処理タンク(55)内に回収された洗浄液(S)が、戻り管(57)を通って、供給側洗浄液タンク(45)に戻される。従って洗浄液(S)を循環させて再利用することができ、コストの削減とともに、洗浄液(S)等の浪費を回避することができる。
【0095】
ここで本実施形態において、洗浄液(S)は、限定されるものではないが、酢酸が0.5〜3%配合された水溶液(PH4〜5)、蟻酸が2〜4%配合された水溶液(PH2〜3)、硫酸アンモニアが1〜5%配合された水溶液(PH6〜7)、硫酸ナトリウムが5〜10%配合された水溶液(PH7)の中から選択されたものを、洗浄液(S)として好適に用いることができる。すなわちこれらの特有の洗浄液(S)酢酸は、木材内部の染料を定着させて色を鮮やかにする作用があるからである。もっとも本発明においては、洗浄液として上水等の水を用いるようにしても良い。
【0096】
また本実施形態では、木材外表面(1a)(1b)(1c)から洗浄液(S)を加圧導入する際の圧力は、180〜1500kPa、200〜1000kPa、より好ましくは300〜500kPaに設定するのが良い。さらに吸引排出する際の圧力(吸引力)は、1.3kPa(10torr)〜13kPa(100torr)、より好ましくは2.6kPa(20torr)〜6.6kPa(50torr)に設定するのが良い。すなわち導入圧力や吸引力が低過ぎる場合には、洗浄液(S)を木材内部に確実に浸透させつつ流通させることができず、未定着の染料を確実に除去することが困難になるおそれがある。逆に導入圧力や吸引力が高過ぎる場合には、弾性パッキン(15)(15)等の密封部分が、高圧に耐えきれずに水密性が破壊されて、確実に洗浄できないおそれがあり、好ましくない。
【0097】
一方、上記の洗浄処理が完了した後、続いて乾燥(水切り)処理が行われる。この乾燥処理は、上記図2に示す洗浄装置を用いて行われる。すなわち、供給側洗浄液タンク(45)を供給側経路(回路)から切り離しておいて、洗浄液(S)に代えて圧縮空気を導入して、その圧縮空気を木材内部に浸透させることによって、乾燥処理が行われる。例えば一方側チャンバ(1a)内に加圧ポンプ(44)によって圧縮空気を送り込むとともに、他方側チャンバ(1b)内を真空ポンプ(54)によって減圧する(一方側加圧処理)。この場合、中間チャンバ(1c)に対しては、ポンプ(44)(54)によって適宜、加圧や減圧を行う。さらに他方側チャンバ(1b)内に圧縮空気を送り込むとともに、一方側チャンバ(1a)内を減圧する(他方側加圧処理)。この場合にも、中間チャンバ(1c)に対しては適宜、加圧や減圧を行う。また中間チャンバ(1c)内に圧縮空気を送り込むとともに、両側チャンバ(1a)(1b)に対して適宜、加圧や減圧を行う(中間加圧処理)。さらに中間チャンバ(1c)内を減圧するとともに、両側チャンバ(1a)(1b)に対して適宜、加圧や減圧を行う(中間減圧処理)。
【0098】
このような乾燥処理を適宜行って、空気を木材内部の全域にわたってバランス良く均一に導入して、洗浄済木材(1)を乾燥する。
【0099】
なお乾燥処理における各バルブ(31v)(32v)(41v)(42v)(51v)(52v)の操作方法は、上記の洗浄処理と同様である。
【0100】
また本実施形態においては、木材内部に導入する空気として加熱空気を使用することも可能である。この場合、加熱空気としての熱風を木材内部に流通させることによって、木材(1)の乾燥処理を効率良く行うことができる。
【0101】
ここで本実施形態において、木材外表面(1a)(1b)(1c)から空気を導入する際の圧力は、200〜1500kPa、好ましくは300〜500kPaに設定するのが良い。さらに吸引排出する際の圧力(吸引力)は、1.3kPa(10torr)〜13kPa(100torr)、より好ましくは2.6kPa(20torr)〜6.6kPa(50torr)に設定するのが良い。すなわち導入圧力や吸引力が低過ぎる場合には、空気を木材内部全域に確実に流通させることができず、効率良く乾燥できないおそれがある。逆に導入圧力や吸引力が高過ぎる場合には、弾性パッキン(15)(15)等の密封部分が、高圧に耐えきれずに気密性が破壊されて、確実に乾燥できないおそれがあり、好ましくない。
【0102】
また本実施形態においては、木材(1)は洗浄処理によって、含水率が100〜140%となっているが、この含水率を乾燥処理によって40〜80%程度に調整するのが好ましい。すなわち木材の切削や貼付等の木材加工に適した含水率は40〜80%であり、この木材加工に適した含水率に調整することによって、以降の処置、すなわち切削工程や、貼着工程を効率良くスムーズに行うことができる。換言すれば、洗浄工程および乾燥工程によって木材の含水率を調整することができるため、木材含水率の調整を、別工程で行う必要がなく、その分、工程数を削減できて、生産効率の向上およびコストの削減を図ることができる。
【0103】
なお本実施形態においては、圧縮空気を木材内部に強制的に導入することによって、木材(1)を乾燥させるようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、自然に乾燥させるようにした天然乾燥、高温の加熱容器内に木材を配置して乾燥させるようにした温風乾燥等の乾燥処理を行っても良い。
【0104】
こうして乾燥させた木材(着色木材)は、次工程において複数組み合わせて接着することにより、木材フリッチを作製する(図1のフリッチ作製工程)。
【0105】
その後、上記木材フリッチをスライサーにより切削して、単板や突板(着色単板)を作製する(切削工程)。
【0106】
こうして得られた着色単板(突板を含む)を化粧層として基材に貼り付けて化粧床材を作製する(単板貼着工程)。
【0107】
ここで化粧床材の基材としては、合板、パーチクルボード、木質繊維板、集成材等の木質製のものの他に、合成樹脂製のもの、ゴム製のものも使用することができる。さらにこれらの材料は、単独で用いて基材を形成するようにしても良いし、複数のものを複合して用いて基材を形成するようにしても良い。複合して用いる場合には例えば、合板と木質繊維板とを組み合わせて基材を形成したり、あるいは高比重シート(エチレン・プロピレン・ラバー)と木質繊維板とを組み合わせて基材を形成することができる。また基材上に貼り付けた単板に塗装を施して、化粧層とするようにしても良い。
【0108】
以上のように、本実施形態においては、染色を切削前の木材の状態で行って、その着色木材を切削して多数の単板を形成するものであるため、例えば切削後に多数の単板を一枚ずつ染色する場合と比較して、効率良く化粧用単板を生産することができる。
【0109】
さらに本実施形態においては、染色加工後(染液含浸後)の木材(1)を洗浄するにあたって、洗浄液(S)を木材内部の全域に十分浸透させて隅々まで行き渡らせることができるため、未定着染料等の余分な染液成分を確実に洗い流すことができる。従って洗浄後に木材内部に余分な染液成分が残存するのを確実に防止することができ、染液の残留による染色ムラの発生を確実に防止できて、仕上がり具合が良好な高品質の着色木材を製造でき、ひいては高品質の着色単板を製造することができる。
【0110】
特に本実施形態の洗浄装置においては、木材(1)の中間部を収容する中間チャンバ(1c)を設けて、この中間チャンバ(1c)内に洗浄液(S)を加圧状態で供給するようにしているため、この中間加圧処理によって、両端が木材(1)の中間外周面(1c)に連通する外面−外面連通型の通道(図4(d)参照)にも確実に洗浄液(S)を導入することができる。このため、当該通道における余分な染液成分を確実に洗い出すことができ、色ムラの発生等の不具合をより確実に防止することができる。
【0111】
すなわち仮に、中間チャンバ(1c)を設けずに、両側チャンバ(1a)(1b)のみが設けられた洗浄装置において、木材(1)の洗浄を行う場合例えば、一方側チャンバ(1a)に洗浄液(S)を加圧供給して、他方側チャンバ(1b)を吸引する一方側加圧洗浄処理と、他方側チャンバ(1b)から洗浄液(S)を加圧供給する他方側加圧洗浄処理とを行うことになる。この場合には、一端が一方側木口(1a)に連通し、かつ他端が他方側木口(1b)に連通する木口−木口連通型の通道と、一端が中間外周面(1c)に連通し、かつ他端が両側木口(1a)(1b)のいずれかに一方に連通する木口−周面連通型の通道とは洗浄することができるが、両端が中間外周面(1c)に連通する周面−周面連通型の通道に洗浄液(S)を導入することが困難であり、当該通道を確実に洗浄することができない恐れがある。従って木材内部に余分な染液成分が残存し、色ムラの発生等の不具合が生じることがある。
【0112】
これに対し、本願発明は、一方側および他方側加圧洗浄処理に加えて、中間加圧洗浄処理を行っているため、周面−周面連通型の通道にも確実に洗浄液(S)を導入でき洗浄することができる。従って木材(1)に形成される全ての通道を洗浄することができ、木材内部の余分な染液成分をより確実に排出除去することができ、色ムラの発生等の不具合が生じるのを確実に防止することができる。
【0113】
また本実施形態の洗浄処理においては、一方側加圧洗浄処理、他方側加圧洗浄処理、中間加圧洗浄処理、中間減圧洗浄処理を順次切り換えて行うことにより、木材(1)に対し、あらゆる方向から洗浄液(S)を導入/排出することができ、より一層確実に洗浄液(S)を木材内部全域に供給することができ、より一層確実に余分な染液成分を除去することができる。
【0114】
また本実施形態においては、洗浄処理によって木材(1)の含水率が100〜140%に高められた後、乾燥処理によって含水率を低下させるものであるため、木材の含水率を自在に調整することができる。このため例えば、出発材(染色前の木材)として、含水率が5〜20%程度の気候状態の乾燥材を用いたとしても、乾燥処理後においては、含水率40〜80%の切削や貼付に適した状態に調整することができる。つまり出発材として汎用で取扱い易い乾燥材を用いたとしても、含水率を調整する工程を別途行う必要がなく、その分、工程数を削減できて、生産効率をより一層向上させることができる。
【0115】
さらに本実施形態においては、洗浄処理を行う洗浄装置によって、乾燥処理を行うものであるため、乾燥装置を別途設置する必要がなく、その分、生産設備の小型簡素化を図ることができる。
【0116】
また乾燥処理を行う場合も、一方向加圧処理、他方向加圧処理、中間加圧/減圧処理を順次切り換えて行うことにより、木材(1)に対し、あらゆる方向から空気を導入/排出することができ、空気を木材内部全域に確実に行き渡らせることができ、より一層効率良く乾燥することができる。
【0117】
なお上記実施形態で使用した洗浄装置は、洗浄処理や乾燥処理以外にも適用可能である。例えば染色用の染液や、不燃処理用等の薬剤等の液体を含浸させる含浸装置としても利用することができる。このように液体含浸装置として利用する場合には、両側チャンバ(1a)(1b)および中間チャンバ(1c)の全てのチャンバに、染液や薬剤等の液体を加圧供給するのが良い(加圧含浸処理)。もっとも液体を含浸させるに際して、いずれか1つまたは2つのチャンバに液体を加圧供給して、他のチャンバは密封状態とするようにしても良い。
【0118】
さらに上記実施形態においては、洗浄装置によって染液を洗浄する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明の洗浄装置によって、染液以外の余分な成分を洗浄するようにしても良い。
【0119】
このように本発明の装置は、木材の染液洗浄等の洗浄処理、乾燥処理、染液や薬剤等の液体を含浸させる液体含浸装置等として利用でき、優れた汎用性を備えている。
【0120】
また上記実施形態の洗浄装置においては、木材(1)の中間部を1つの中間チャンバ(1c)内に収容するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、互いに独立する中間チャンバを複数設けて、木材の中間部を区分けして各中間チャンバに収容するようにしても良い。この場合、各中間チャンバ毎に、洗浄液の加圧供給や吸引排出を行うことによって、より一層効率良く洗浄することができる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
この発明は、木材に洗浄液等の液体を含浸させるための木材の洗浄装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】この発明の実施形態である化粧床材の製造方法を説明するための工程図である。
【図2】実施形態の製造方法に適用された洗浄装置を概略的に示す平面図である。
【図3】同図(a)は実施形態の洗浄装置において洗浄される木材を示す斜視図、同図(b)はその木材にパッキンを装着した状態の斜視図である。
【図4】実施形態において洗浄される木材の通道組織を説明するためのブロック図である。
【図5】実施形態の洗浄装置における一方側加圧洗浄処理を説明するための側面断面図である。
【図6】実施形態の洗浄装置における他方側加圧洗浄処理を説明するための側面断面図である。
【図7】実施形態の洗浄装置における中間加圧洗浄処理を説明するための側面断面図である。
【図8】実施形態の洗浄装置における中間減圧洗浄処理を説明するための側面断面図である。
【符号の説明】
【0123】
1 木材
1a 一方側木口
1b 他方側木口
1c 中間外周面
2 洗浄装置
2a 一方側チャンバ
2b 他方側チャンバ
2c 中間チャンバ
S 洗浄液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材に洗浄液を含浸させて余分な成分を排出する木材の洗浄装置であって、
木材の一方側木口を液密状態に閉塞する一方側チャンバと、
木材の他方側木口を液密状態に閉塞する他方側チャンバと、
上記両側チャンバ間において木材の中間外周面を液密状態に閉塞する中間チャンバと、を備え、
前記一方側チャンバ内に洗浄液を加圧供給して、木材の一方側木口から洗浄液を木材内部に含浸させつつ、前記他方側チャンバ内を吸引して、他方側木口から洗浄液を排出する一方側加圧洗浄処理と、
前記中間チャンバ内に洗浄液を加圧供給して、木材の中間外周面から木材内部に洗浄液を含浸させる中間加圧処理と、を行うようにしたことを特徴とする木材の洗浄装置。
【請求項2】
前記中間加圧処理においては、両側チャンバ内を吸引して、木材の両側木口から洗浄液を排出する両側吸引中間加圧処理を行うようにした請求項1に記載の木材の洗浄装置。
【請求項3】
前記中間加圧処理においては、両側チャンバ内を密閉する両側密閉中間加圧処理を行うようにした請求項1または2に記載の木材の洗浄装置。
【請求項4】
前記他方側チャンバ内に洗浄液を加圧供給して、木材の他方側木口から洗浄液を木材内部に含浸させつつ、前記一方側チャンバ内を吸引して、一方側木口から洗浄液を排出する他方側加圧洗浄処理をさらに行うようにした請求項1〜3のいずれかに記載の木材の洗浄装置。
【請求項5】
前記中間チャンバ内を吸引して、木材の中間外周面から洗浄液を排出する中間減圧処理をさらに行うようにした請求項1〜4のいずれかに記載の木材の洗浄装置。
【請求項6】
木材に洗浄液を含浸させて余分な成分を排出する木材の洗浄装置であって、
木材の一方側木口を液密状態に閉塞する一方側チャンバと、
木材の他方側木口を液密状態に閉塞する他方側チャンバと、
上記両側チャンバ間において木材の中間外周面を液密状態に閉塞する中間チャンバと、を備え、
前記一方側チャンバ内に洗浄液を加圧供給して、木材の一方側木口から洗浄液を木材内部に含浸させつつ、前記他方側チャンバ内を吸引して、他方側木口から洗浄液を排出する一方側加圧洗浄処理と、
前記中間チャンバ内を吸引して、木材の中間外周面から洗浄液を排出する中間減圧処理と、を行うようにしたことを特徴とする木材の洗浄装置。
【請求項7】
染色加工済木材に洗浄液を含浸させて余分な染液成分を排出する木材の染液洗浄装置であって、
請求項1〜6のいずれかに記載の木材の洗浄装置によって構成されたことを特徴とする木材の染液洗浄装置。
【請求項8】
木材に洗浄液を含浸させて余分な成分を排出する木材の洗浄方法であって、
木材の一方側木口を液密状態に閉塞する一方側チャンバと、
木材の他方側木口を液密状態に閉塞する他方側チャンバと、
上記両側チャンバ間において木材の中間外周面を液密状態に閉塞する中間チャンバと、を準備しておき、
前記一方側チャンバ内に洗浄液を加圧状態に供給して、木材の一方側木口から洗浄液を木材内部に含浸させつつ、前記他方側チャンバ内を吸引して、他方側木口から洗浄液を排出する工程と、
前記中間チャンバ内に洗浄液を加圧供給して、木材の中間外周面から木材内部に洗浄液を含浸させる工程と、を行うことを特徴とする木材の洗浄方法。
【請求項9】
木材を染液によって染色する染色加工工程と、染色された木材を洗浄液により洗浄して余分な染液成分を除去する洗浄工程と、を含む着色木材の製造方法であって、
前記洗浄工程を、請求項8に記載の木材の洗浄方法を用いて行うようにしたことを特徴とする着色木材の製造方法。
【請求項10】
木材に液体を含浸させるための木材の液体含浸装置であって、
木材の一方側木口を液密状態に閉塞する一方側チャンバと、
木材の他方側木口を液密状態に閉塞する他方側チャンバと、
上記両側チャンバ間において木材の中間外周面を液密状態に閉塞する中間チャンバと、を備え、
各チャンバ内に液体を加圧状態に導入して、液体を木材の外表面から木材内部に含浸させる加圧含浸処理を行うようにしたことを特徴とする木材の液体含浸装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate