説明

木材の難燃性及び不燃性を実現させることにおいて、環境に負荷をかけない注入剤を含浸することで木材自体に消化性能を付与する難燃性、不燃性木材の製造方法

【課題】木材の難燃性及び不燃性を維持する技術及び製造方法において、製造時や建築外装、内装に使用時、使用後の処理及び再資源化に適応することが社会ニーズであり、重要である。然るに環境に負荷をかけない難燃性木材及び不燃性木材に至る木材注入含浸剤や製造方法でなければならない。特に、燃焼時の有毒ガスの発生、溶出物の毒性及び排出物の毒性が人体や生物への影響があってはならないものである。
【解決手段】食品添加物として広く使用されている安全性が高い難燃性木材及び不燃性木材に至る木材注入含浸剤で、更に環境に負荷をかけない炭酸水素ナトリウムや、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムによる重量比2%〜30%の水溶液を木材中の木材細胞空隙内に加圧減圧法、温冷浴法、浸漬法等で含浸し定着、固着させることで実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材の難燃化及び不燃化する製造方法に関する。詳細には、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウム等の炭酸塩類から選ばれる1種の水溶液を木材中に含浸し、対象木材を乾燥することにより木材細胞空隙内に定着、固着させることで、木材に難燃性、不燃性を付与して難燃性、不燃性木材を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材を難燃化及び不燃化する方法において、注入含浸剤として、ホウ素・ホウ酸類、ケイ素類、リン酸類の金属アルコキシドや化合物が主成分であったことから、建築物等に使用した際の環境安全性や使用後の処理及び再資源化といった社会ニーズに対応するものではなかった。更に製造時の人体への安全性、排水処理に課題を残すものであった。
【0003】
そこで本発明は、食品添加物に使用される炭酸水素ナトリウムや、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムといった安全性の高い炭酸塩を用いている。更に炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムで含浸処理された木材は、燃焼時においても発生するガスが炭酸ガスであるため無害物質である。
【0004】
本発明では燃焼抑制作用を実現させるため、一般的に使用されている炭酸水素ナトリウム等の消化剤を難燃性、不燃性木材の注入含浸剤とすることが特徴の一つであり、燃焼時には水と炭酸ガスが発生し、燃焼抑制効果として、水の蒸発による吸熱作用や、炭酸ガスが燃焼対象木材と外気酸素との間に遮断層を形成することで燃焼を食い止める。更に同時に、炭酸ガス自体の燃焼抑制効果も発揮される。
【0005】
これらの特徴から、建築外装材、内装材に難燃性木材及び不燃性木材を使用することにおいて、環境安全性にも社会的ニーズにも対応した画期的な建築資材であることは明らかであり、従来の難燃性木材及び不燃性木材の製造技術にはなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
木材の難燃性及び不燃性を維持する技術及び製造方法において、製造時や建築外装、内装に使用時、使用後の処理及び再資源化に適応することが社会ニーズであり、重要である。然るに環境に負荷をかけない難燃性木材及び不燃性木材に至る木材注入含浸剤や製造方法でなければならない。特に、燃焼時の有毒ガスの発生、溶出物の毒性及び排出物の毒性が人体や生物への影響があってはならないものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために鋭意研究を行った結果、食品添加物として広く使用されている安全性が高い難燃性木材及び不燃性木材に至る木材注入含浸剤で、更に環境に負荷をかけない炭酸水素ナトリウムや、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムによる重量比2%〜30%の水溶液を木材中の木材細胞空隙内に加圧減圧法、温冷浴法、浸漬法等で含浸し定着、固着させることで実現される。
【0008】
即ち、炭酸塩類の炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムから選ばれる1種の重量比2%〜30%の水溶液を対象木材に含浸して得られた難燃性木材及び不燃性木材は、従来建築で難燃性、不燃性を必要とする外装、内装等に使用することができ、意匠性や美観等の点で有効且つ木の風合い、暖かさを提供することが容易で確実に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明に関する説明を詳細に説明する。本発明の難燃性、不燃性木材の製造方法は、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウム等の炭酸塩類の水溶液を対象木材に含浸し乾燥させることで、木材中の細胞空隙に定着させ、燃焼時に発生する水による吸熱効果や炭酸ガスによる消火効果により燃焼抑制される。以上が請求項1の説明である。
【0010】
請求項2に記載の含浸剤、セスキ炭酸ナトリウムについて、同剤は炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウムの1:1の混合物で、常温の水(20℃)に非常によく溶け、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムと比較すると最適な木材含浸剤である。更に重量比15%、20%、25%の各水溶液を対象木材とした杉辺材及び芯材に含浸した後、含水量50%に調整した試験木片(100mm×100mm×18mm)合計6試験体をISOコーンカロリーメーターで燃焼試験を実施したところ、燃焼時間5分、10分、20分において、貫通燃焼損壊及び発熱量共に不燃性を示した。以上のことからセスキ炭酸ナトリウムは木材の難燃性、不燃性に付与することが明らかとなった。
【0011】
請求項3に記載の含浸剤、炭酸水素ナトリウムは従来から一般的に消化剤として広く流通しているもので、本発明の難燃性、不燃性木材の製造アイデアの原点でもある。重量比2%の水溶液でガスコンロによる燃焼試験、ガスバーナーによる燃焼試験で難燃性の確認をした後、炭酸水素ナトリウムを水によく溶かす方法として60℃まで温め20%の水溶液を作り、杉辺材及び芯材に含浸した後、含水量50%に調整した試験木片をISOコーンカロリーメーターで燃焼試験を実施した。試験結果として、18分程度まで良好であったことから準不燃材としての確認ができた。ただし、同剤を重量比30%の水溶液とした場合、十分に不燃性木材の製造が可能であると思われる。後の炭酸ナトリウム水溶液での燃焼試験で明らかとなる。
【0012】
請求項4に記載の含浸剤、炭酸ナトリウムについて、同剤は水によく溶ける物質で、常温の水(20℃)で十分にセスキ炭酸ナトリウムと同様に水溶液となり、含浸液となる。この炭酸ナトリウム水溶液を。ガスコンロによる燃焼試験、ガスバーナーによる燃焼試験で難燃性の確認をした後、炭酸水素ナトリウムを重量比30%とし、杉辺材及び芯材に含浸した後、含水量50%に調整した試験木片をISOコーンカロリーメーターで燃焼試験を実施した。試験結果として、セスキ炭酸ナトリウムと同様に良好な結果が得られた。後に炭酸水素ナトリウム水溶液を60℃まで温めると炭酸ナトリウム水溶液に変化することが明らかとなり、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムは難燃性、不燃性木材に至る最適な含浸剤であることが明らかとなった。
【0013】
以上、難燃性、不燃性木材を製造する方法として、炭酸塩類の炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムが安価で水溶液化しやすく、且つ木材中の細胞空隙に浸漬しやすい含浸剤であることが実証され、難燃性、不燃性木材に至ることが明らかとなった。尚、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム以外にも、同じ炭酸塩類である炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸マグネシウム等も難燃性、不燃性を維持する物質として有効であることが、燃焼試験で性能のばらつきがあるものの判明した。
【0014】
本発明の炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムを含浸した難燃性、不燃性木材を現実的に建築外装材及び内装材として使用するには、木材表面及び全体から含浸した注入剤の溶出の事故を防止しなければならない。そこで、難燃性、不燃性木材の製造工程の後、柿渋液とクエン酸を混合した浸透性水溶液、水溶性シリコン、水溶性パラフィン等を加圧減圧法により再含浸処理することが必要である。ただし、環境安全性、経済性を考慮すると、柿渋液とクエン酸を混合した浸透性水溶液を使用することが最適である。
【0015】
柿渋液とクエン酸を混合した浸透性水溶液、水溶性シリコン、水溶性パラフィンは本発明の難燃性、不燃性木材の耐候性の向上を目的とするもので、現実的且つ長期に難燃性及び不燃性を維持するものである。
【0016】
以上が本発明の炭酸塩類の炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム水溶液を木材に含浸処理し乾燥することで、難燃性、不燃性木材を製造する方法であり、建築外装、内装等に使用することに当たっての含浸剤の溶出防止、耐候性を向上させる方法の説明である。尚、本発明において、対象木材の種類、形状、使用方法、形態等は限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セスキ炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウム等の炭酸塩類の水溶液を木材中に含浸させることで、木材細胞空隙内に定着させ、含浸した木材自体に消化性能を付与することを特徴とする、難燃性、不燃性木材の製造方法。
【請求項2】
炭酸塩類として、セスキ炭酸ナトリウムの水溶液を用いる請求項1に記載の難燃性、不燃性木材の製造方法。
【請求項3】
炭酸塩類として、炭酸水素ナトリウムの水溶液を用いる請求項1に記載の難燃性、不燃性木材の製造方法。
【請求項4】
炭酸塩類として、炭酸ナトリウムの水溶液を用いる請求項1に記載の難燃性、不燃性木材の製造方法。

【公開番号】特開2006−82227(P2006−82227A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266162(P2004−266162)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(303030346)有限会社二宮農産 (2)
【出願人】(502198191)
【Fターム(参考)】