説明

木材チップの搬送装置

【課題】小型で簡易な木材チップの搬送装置を提供する。
【解決手段】荷室2に収容された木材チップ3を荷役するための木材チップ3の搬送装置4において、荷室2内に水を注入する水注入手段5と、水の注入で浮き上がった木材チップ3を荷室2からオーバーフローさせて荷室2外に案内するチップ流路6と、そのチップ流路6から水と共にオーバーフローした木材チップ3を受けると共に水を分離して木材チップ3を荷役するメッシュコンベア7と、メッシュコンベア7から落下した水を受け、これを水注入手段5に戻して循環させるための集水部8とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷室に収容された木材チップを荷役する木材チップの搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙、パルプの原料となる木材チップはチップ船に積載され、港湾付近の製紙工場に荷役される。
【0003】
一般的に大規模な港(ハブ港)には荷役機械が設置されており、小規模な港(スポーク港)には設置されていない。このため、小規模な港で荷役を行う小型のチップ船には荷役機械が必須となる。
【0004】
チップ船の荷役機械たるデッキクレーンとしては、図4及び図5に示すグラブバケット付きのデッキクレーン(以下、デッキクレーンとのみ記述)が使用される。図示するように、デッキクレーン30は、チップ船31の甲板32上に旋回自在に設けられるクレーン本体33と、クレーン本体33に俯仰自在に設けられるブーム34と、ブーム34の先端に昇降自在に吊り下げられるグラブバケット35とからなり、甲板32に形成された荷搬出入口36に臨んで複数設けられる。また、チップ船31の甲板32上には、グラブバケット35から落下される木材チップ(図示せず)を受けるための複数のホッパ37と、これらホッパ37から落下される木材チップを港湾設備(図示せず)に受け渡すべく移送するコンベア38とが設けられる。
【0005】
【特許文献1】特開2001−328725号公報
【特許文献2】特開平07−300240号公報
【特許文献3】特開平06−278682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、デッキクレーンなどの荷役機械は、タワー状の本体と長尺のブームと高出力の駆動装置とを有する大がかりなものであり、特に航行時の小型のチップ船にあっては操舵室からの視界を遮る障害物でもあった。また、甲板上でブームやグラブバケット等を駆動するものであるため、荷役時の安全管理を徹底する必要があると共に、きめ細かなメンテナンスが必要であった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、小型で簡易な木材チップの搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、荷室に収容された木材チップを荷役するための木材チップの搬送装置において、荷室内に水を注入する水注入手段と、水の注入で浮き上がった木材チップを荷室からオーバーフローさせて荷室外に案内するチップ流路と、そのチップ流路から水と共にオーバーフローした木材チップを受けると共に水を分離して木材チップを荷役するメッシュコンベアと、メッシュコンベアから落下した水を受け、これを水注入手段に戻して循環させるための集水部とを備えたものである。
【0009】
水注入手段は、水ポンプと、その水ポンプの吐出口と荷室を接続する注水管と、水ポンプの吸込口と集水部を接続する戻し管と、その戻し管に水を供給するための給水源とからなるとよい。
【0010】
荷室は木材チップを運搬するチップ船に複数形成され、注水管は、上記チップ船の甲板又は船底部に沿って設けられるとよい。
【0011】
戻し管には水からチップゴミを漉し取るフィルタが設けられるとよい。
【0012】
集水部はメッシュコンベアに沿って樋状に形成されるとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、小型で簡易な木材チップの搬送装置で荷室に収容された木材チップを荷役することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の好適実施の形態を添付図面を用いて説明する。
【0015】
図1及び図2に示すように、木材チップ3を運搬するチップ船1は、複数の荷室2を有し、それぞれの荷室2に木材チップ3を収容するようになっている。また、チップ船1には、荷室2に収容された木材チップ3を荷役するための搬送装置4が設けられている。
【0016】
図1及び図3に示すように、搬送装置4は、荷室2内に水を注入する水注入手段5と、水の注入で浮き上がった木材チップ3を荷室2からオーバーフローさせて荷室2外に案内するチップ流路6と、そのチップ流路6から水と共にオーバーフローした木材チップ3を受けると共に水を分離して木材チップ3を荷役するメッシュコンベア7と、メッシュコンベア7から落下した水を受け、これを水注入手段5に戻して循環させるための集水部8とを備えて構成されている。
【0017】
水注入手段5は、水ポンプ9と、その水ポンプ9の吐出口10と荷室2を接続する注水管11と、水ポンプ9の吸込口12と集水部8を接続する戻し管13と、その戻し管13に水道水を供給するための給水源14とからなる。注水管11は、甲板15と船底部16とに沿って予め設けられており、それぞれ荷室2の上下に接続されている。特に荷室2の上部に接続される注水管11は、荷室2の上部から水を供給することで木材チップ3の上層部にも水を含ませ、流動性を与えるようになっている。なお、木材チップ3が乾燥状態で十分流動性を有する性状である場合には、荷室2の下部にのみ注水管11を接続してもよく、木材チップ3に水を十分含ませたい場合には荷室2の上部にのみ注水管11を接続してもよい。また、注水管11にはそれぞれ開閉弁17が設けられており、任意の荷室2を選択して注水できるようになっている。戻し管13には木材チップ3を運んだ水からチップゴミを漉し取るためのフィルタ18が設けられている。給水源14は、上水道から供給される水を溜める給水タンク19と、給水タンク19と戻し管13を接続する給水管20とからなる。給水管20には開閉弁21が設けられている。また、注水管11には、完全に荷役を終えた後に水を下水道等に排出するための排水管22が分岐接続されている。排水管22には開閉弁23が設けられており、荷役中に水を流出させないようになっている。
【0018】
メッシュコンベア7は、メッシュ状のコンベアベルト24を有するベルトコンベアであり、甲板15の一側に沿って前後方向に延びて設けられている。コンベアベルト24のメッシュ地は、木材チップ3を通さない程度の大きさの網目に形成されている。また、メッシュコンベア7は、送り側(木材チップが乗る側)のコンベアベルト24をV字状に折り曲げるように形成されており、一側から流れ込む木材チップ3を確実に受けるようになっている。また、メッシュコンベア7の下流側の端は、港湾設備25のホッパ等に木材チップ3を受け渡すように船外の所定の位置まで延出されている。
【0019】
チップ流路6は、荷室2の上部側壁26からメッシュコンベア7のある側方に延びて形成されており、荷室2からオーバーフローした木材チップ3を水と共にメッシュコンベア7上に流すようになっている。
【0020】
集水部8は、メッシュコンベア7に沿って樋状に形成されている。集水部8は、長手方向に沿って複数の接続口27を有し、それぞれの接続口27に戻し管13が接続されている。戻し管13は、集水部8のそれぞれの接続口27から流入する水を集合させて水ポンプ9の吸込口12に流すように形成されている。また、戻し管13には、荷卸し後の荷室2から水を回収すべく荷室2の底部に接続される回収管28が接続されている。回収管28には開閉弁29が設けられており、水回収時以外には水を流通させないようになっている。
【0021】
なお、メッシュコンベア7は船外の所定の位置まで延出されるものとしたが、チップ船1に別途港湾設備25に木材チップ3を受け渡すための受け渡し専用コンベア(図示せず)を設け、メッシュコンベア7から受け渡し専用コンベアに木材チップ3を受け渡すようにしてもよい。この場合、メッシュコンベア7を船外に延出させる必要はない。
【0022】
また、給水タンク19には水道水を供給するものとしたが、木材チップ3を傷めない水であればこれに限るものではない。例えば、雨水や工業用水等の真水であってもよく、木材チップ3の品質保持に好適な薬品等が溶けた水等であってもよい。さらに、予め港に貯水槽(図示せず)を設置しておき、貯水槽内の水を利用してもよい。水を節約することができる。
【0023】
使用済みの水は、環境基準を十分満たすようにきれいに処理することにより、海等に排水することができると共に再使用も可能である。
【0024】
次に本実施の形態の作用を述べる。
【0025】
チップ船1の荷室2から木材チップ3を荷卸しする場合、図1及び図3に示すように、給水タンク19に水道水を供給すると共に給水管20の開閉弁21を開け、戻し管13に水道水を供給する。この後、いずれかの荷室2に接続される注水管11の開閉弁17を開放し、水ポンプ9とメッシュコンベア7を駆動させる。戻し管13に供給された水は、水ポンプ9によって荷室2内に注水される。これにより荷室2内の木材チップ3には浮力が発生し、水位が所定高さに達すると木材チップ3は浮上し始める。そして、木材チップ3はチップ流路6の高さを越えると、オーバーフローしてチップ流路6に流れ込み、メッシュコンベア7上に流れる。メッシュコンベア7のコンベアベルト24はメッシュ状に形成されているため、木材チップ3のみを受けて水を通過させる。これにより木材チップ3と水を分離でき、木材チップ3のみをメッシュコンベア7で移送して港湾設備25に受け渡すことができる。他方、メッシュコンベア7から落下した水は、集水部8で集められて戻し管13に流れ、戻し管13に設けられたフィルタ18を通過することでチップゴミ等の異物を除去され、浄水される。浄水された水は再び水ポンプ9の吸込口12に戻され、循環される。
【0026】
このようにして上記荷室2の木材チップ3を全て荷卸ししたら、注水管11の開閉弁17を閉じると共に他の荷室2に接続される注水管11の開閉弁17を開け、さらに回収管28の開閉弁29を開く。荷卸しを終えた荷室2内には水のみが残っており、荷室2内の水は回収管28を介して戻し管13に流れる。戻し管13から水ポンプ9に戻った水は、注水管11を開いた他の荷室2に注水される。これにより、荷卸しをする荷室2を切り替えることができる。このようにして、全ての荷室2の木材チップ3を荷卸ししたら、回収管28の開閉弁29を開くと共に注水管11の開閉弁17を全て閉じ、さらに排水管22の開閉弁23を開ける。これにより、荷室2内の水は、回収管28を介して戻し管13に流れ、注水管11を経て排水管22から下水道に排出されることとなり、荷室2を空にすることができる。
【0027】
このように、荷室2内に水を注入する水注入手段5と、水の注入で浮き上がった木材チップ3を荷室2からオーバーフローさせて荷室2外に案内するチップ流路6と、そのチップ流路6から水と共にオーバーフローした木材チップ3を受けると共に水を分離して木材チップ3を荷役するメッシュコンベア7と、メッシュコンベア7から落下した水を受け、これを水注入手段5に戻して循環させるための集水部8とを備えて木材チップ3の搬送装置4を構成したため、小型で簡易な木材チップ3の搬送装置4で荷室2に収容された木材チップ3を荷役することができる。そして、大きな荷役機械を駆動する場合と比べて安全管理とメンテナンスを簡易なものにできる。
【0028】
水注入手段5は、水ポンプ9と、その水ポンプ9の吐出口10と荷室2を接続する注水管11と、水ポンプ9の吸込口12と集水部8を接続する戻し管13と、その戻し管13に水道水を供給するための給水源14とからなるものとしたため、港から良好な水を簡単に得ることができると共に、少量の水を循環させて効率よく荷卸しできる。
【0029】
荷室2は木材チップ3を運搬するチップ船1に複数形成され、注水管11は、チップ船1の甲板15又は船底部16に沿って予め設けられるものとしたため、甲板15上からタワー状の荷役機械をなくすことができ、操舵室からの視界を良好にできると共に、目立たないものにでき、チップ船1の船内及び船上空間を有効に利用することができる。
【0030】
戻し管13には水からチップゴミを漉し取るフィルタ18が設けられるものとしたため、水が循環中に汚れて水ポンプ9や管路等に詰まるのを防ぐことができ、荷卸し完了後には下水道に排出することができる。
【0031】
集水部8はメッシュコンベア7に沿って樋状に形成されるものとしたため、メッシュコンベア7から落下する水を簡易な構造で容易に集めることができる。
【0032】
なお、荷室2を1つずつ荷卸しするものとしたが、異なる荷室2に接続される複数の注水管11を同時に開き、複数の荷室2を同時に荷卸しするものとしてもよい。この場合、水の消費量は増えるが、荷卸しに要する時間を短縮することが可能となる。
【0033】
また、木材チップの搬送装置は、チップ船の荷室から木材チップを荷役するものについて説明したがこれに限るものではない。搬送装置は、荷室から木材チップを荷役する作業全般に用いることができるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の好適実施の形態を示す荷卸ししているチップ船の側面図である。
【図2】荷卸ししているチップ船の平面図である。
【図3】木材チップの搬送装置を示す回路図である。
【図4】従来のチップ船の側面図である。
【図5】従来のチップ船の平面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 チップ船
2 荷室
3 木材チップ
4 搬送装置
5 水注入手段
6 チップ流路
7 メッシュコンベア
8 集水部
9 水ポンプ
10 吐出口
11 注水管
12 吸込口
13 戻し管
14 給水源
15 甲板
16 船底部
18 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷室に収容された木材チップを荷役するための木材チップの搬送装置において、荷室内に水を注入する水注入手段と、水の注入で浮き上がった木材チップを荷室からオーバーフローさせて荷室外に案内するチップ流路と、そのチップ流路から水と共にオーバーフローした木材チップを受けると共に水を分離して木材チップを荷役するメッシュコンベアと、メッシュコンベアから落下した水を受け、これを水注入手段に戻して循環させるための集水部とを備えたことを特徴とする木材チップの搬送装置。
【請求項2】
水注入手段は、水ポンプと、その水ポンプの吐出口と荷室を接続する注水管と、水ポンプの吸込口と集水部を接続する戻し管と、その戻し管に水を供給するための給水源とからなる請求項1記載の木材チップの搬送装置。
【請求項3】
荷室は木材チップを運搬するチップ船に複数形成され、注水管は、上記チップ船の甲板又は船底部に沿って設けられる請求項2に記載の木材チップの搬送装置。
【請求項4】
戻し管には水からチップゴミを漉し取るフィルタが設けられる請求項2又は3に記載の木材チップの搬送装置。
【請求項5】
集水部はメッシュコンベアに沿って樋状に形成される請求項1〜4いずれかに記載の木材チップの搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−137587(P2007−137587A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333015(P2005−333015)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】