説明

木炭粉含有塗料組成物及びその塗装方法

【課題】
住環境の改善技術として、防腐、防蟻効果及びシックハウス症候群の原因となるVOC等のガス吸着、調湿効果を有する木炭粉含有塗料組成物及びその塗装方法を提供することである。
【解決手段】
ポリビニルアルコール水溶液50〜80重量%、天然ヒバ油1〜10重量%、木炭粉10〜20重量%を含む塗料組成物及びその塗料組成物を塗装した建材、土台、火打土台、大引、根太、床束、根がらみ等、柱、間柱、筋交い、胴縁、窓台等の土台上端から高さ1m以内の部分(室内の見えがかり部分は除く)、モルタル塗り、ラス張り下地板で土台上端から高さ1m以内の部分、浴室の軸組、天井下地等、又は基礎コンクリート等への塗装方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住環境の改善技術に関連する技術分野とするものであって、防腐、防蟻及びガス吸着、調湿塗料組成物及びその塗装方法に関し、例えば木造建築用や鉄筋コンクリート建築用として床下、内壁、天井裏等に塗装することで、防蟻、防腐効果と臭気やホルムアルデヒドなどのガス吸着効果、調湿効果を発揮し、人体に安全で快適な住環境を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
一般住宅の主流となっている布基礎工法による床下構造、木造建築物、鉄筋コンクリート建築物、鉄骨建築物等において、省エネルギーのために高気密化や高断熱化が進んでいる。その反面、十分な通気を確保するのが困難となり、結露によるカビ、腐食等の問題により、シロアリ等が発生し、住宅の著しい老朽化を招いてしまう虞がある外、建材から発生するホルムアルデヒドや揮発性有機化合物や悪臭物質による人体に有害な物質が滞留することによるシックハウス症候群や化学物質過敏症等の健康被害もある。
この状況に対し、様々な新技術が相次いで開発、実用化されており、木炭粉含有塗料組成物を塗装することで、防腐、防蟻効果を得ることができ、更に木炭特性のガス吸着効果、調湿効果により、上記問題の解決ができるとしている。(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)
【特許文献1】特開平11−29742号公報
【特許文献2】特開2001−115096号公報
【特許文献3】特開2004−244432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上のように、住環境の改善技術に役立つ木炭粉含有塗料組成物及びその塗装方法技術が、長年に渡る経験と数々の工夫とによって一定の完成した水準にまで達成しており、更に住環境を健康的なものに改善する機能性を高めるようにした商品への要望も強くなっている折柄、住宅の建築、増改築に携わる建設業界及び住宅設備業界等では、このような市場ニーズに十分に応えることのできるよう付加価値を高めた木炭粉含有塗料組成物及びその塗装方法の提供が急務となっている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、天然ヒバ油による防腐、防蟻性能と、木炭粉によるガス吸着性能、調湿性能を保持するために、親水性が非常に強く、温水に可溶という特徴を持つ合成樹脂のポリビニルアルコール水溶液に配合した塗料組成物であり、更に一液型塗料組成物であるため、建築現場等での使用に際しても作業性の効率化が得られることが特徴である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の塗料組成物を、建材、土台、火打土台、大引、根太、床束、根がらみ等、柱、間柱、筋交い、胴縁、窓台等の土台上端から高さ1m以内の部分(室内の見えがかり部分は除く)、モルタル塗り、ラス張り下地板で土台上端から高さ1m以内の部分、浴室の軸組、天井下地等、又は基礎コンクリート等に塗装することにより、ホルムアルデヒド等のシックハウス原因物質や悪臭原因物質等に曝されることなく、更に湿度を調整するとともに、シロアリ等の被害を防ぎ、防腐効果も得られ、快適な住環境が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明で用いる天然ヒバ油の成分は、天然ヒノキチオール、天然植物抽出油等である。塗料組成物中1〜10重量%含まれるのが好ましい。1重量%未満では十分な防蟻、防腐効果が得られず、10重量%を超えると塗料の安定性と塗膜の耐水性が劣り好ましくない。
【0007】
本発明で用いる木炭粉は、針葉樹系木材チップを900〜1000℃の高温で炭化した後に適量の水で急冷し、乾燥後、木炭を粉砕して200メッシュ(約75μm)以下の粒径にした粉砕物を用いる。また木炭粉としては塗料組成物中に10〜20重量%含まれるのが好ましい。
【0008】
本発明に用いる合成樹脂は、親水性が強く、温水に可溶という特徴を持つものが用いられる。一般的に接着剤やバインダーに用いられるポリビニルアルコール等が好ましい。
【0009】
ポリビニルアルコールは、側鎖にヒドロキシル基をもつ高分子であるが、モノマーの重合ではなく、ポリ酢酸ビニルのけん化によって合成される。ポリ酢酸ビニルはガムベースや水性接着剤などに使用される合成樹脂であり、このポリ酢酸ビニルを用いることもできる。
【0010】
ポリビニルアルコールの市販品としては、クラレトレーディング社製ポバール、日本合成化学社製ゴーセノール、マルバン社製バンスター等が挙げられる。ポリビニルアルコール水溶液は、十分な接着性、塗装性を得るために、塗料組成物中に50〜80重量%含まれるのが好ましい。
【0011】
本発明の塗料組成物は、例えば上記天然ヒバ油と木炭粉と合成樹脂を攪拌機等で混合、分散を行うことによって得ることができる。その際に、一般に水性塗料やエマルション塗料に用いられる分散剤、消泡剤、増粘剤、酸化防止剤、防腐剤等の添加剤を用いても良い。
【0012】
本発明の塗料組成物は、例えば、刷毛塗り等で、250〜300g/mが好ましく、塗り面のホコリ、鋸屑、土などの付着物を取り除き、ペンキやニスなどの塗膜はサンドペーパーなどで完全に取り除き、土台、火打土台、大引、根太、床束、根がらみ等、柱、間柱、筋交い、胴縁、窓台等の土台上端から高さ1m以内の部分(室内の見えがかり部分は除く)、モルタル塗り、ラス張り下地板で土台上端から高さ1m以内の部分、浴室の軸組、天井下地等、又は基礎コンクリート等に塗布する。
塗装後、常温又は強制的に乾燥を行うことにより塗膜を得ることができる。乾燥時間は、塗装環境条件などによって異なるが、常温(気温20℃、湿度65%)で24時間以上行われることが好ましい。
【実施例】
【0013】
以上のとおりの構成からなる、本発明の塗料組成物に対して、以下の試験を実施した。
(1)ガス吸収試験
ガラスろ紙(円形、125mm径)に本発明の塗料組成物を5.0g塗布し、乾燥、秤量し、試験試料とした。
(1)―1.ホルムアルデヒド吸収試験
試料の調整方法は、フッ化ビニル製(以下サンプリングバッグ)に空気100Lを入れ、ホルマリン液のビン内のホルムアルデヒドガスを含むガスを加えて、1.0ppmになるようにホルムアルデヒドガスを調整した。
あらかじめ試料を入れ、再び密閉した50Lのサンプリングバッグに、調整したホルムアルデヒドガス40Lを導入し、各経過時間ごとのサンプリングバッグ内のホルムアルデヒド濃度を測定した。
測定方法は、ガステック社の検知管(ホルムアルデヒド用91L)を使用、一回の測定に、500ml/7分とした。試験結果を表1に示す。
【0014】
【表1】

【0015】
(1)―2.アンモニア吸収試験
サンプリングバッグに空気150Lを入れ、28%アンモニア水に40%KOH溶液を加えて発生させたアンモニアガス45mlを加えて、30ppmのアンモニアガスを調整した。
あらかじめ試料を入れ、再び密閉した50Lのサンプリングバッグに、調整したアンモニアガス40Lを導入し、各経過時間ごとのサンプリングバッグ内のアンモニア濃度を測定した。
測定方法は、ガステック社の検知管(アンモニア用3L)を使用、一回の測定に100ml/1分とした。試験結果を表2に示す。
【0016】
【表2】

【0017】
(1)―3.エチレン吸収試験
サンプリングバッグに空気150Lを入れ、これにエチレン標準ガス1.5mlを加え、10ppmのエチレンガスを調整した。
あらかじめ試料を入れ、再び密閉した50Lのサンプリングバッグに、調整したエチレンガス40Lを導入し、各経過時間ごとのサンプリングバッグ内のエチレン濃度を測定した。
測定方法は、ガステック社の検知管(エチレン用172L)を使用、一回の測定に400mL/8分とした。試験結果を表3に示す。
【0018】
【表3】

【0019】
(2)湿度変化による水分吸収放出試験
ガラスろ紙(円形、125mm径)に塗料組成物を5.0g塗布し、乾燥、秤量し、試験試料とした。次に、試料を湿度60%の室内に放置し、時間ごとの質量を測定した。次に、湿度97%の恒温恒湿器(内部循環ファン付)に放置し、時間ごとの質量を測定した。次に、湿度20%のデシケーターに入れ(150cm×80cm×80cm)時間ごとの質量を測定した。(開け閉めごとに湿度が変動するが、おおむね20%)試験結果を表4に示す。
【0020】
【表4】

【0021】
(3)耐久試験
塗料組成物の耐久性を調べる為に試験を行った。試験方法は、日本木材保存協会の「表面処理用木材防蟻効力試験方法および性能基準(JWPS−TW−S.1)」内で定められている耐候操作を行った。
試験体は、使用する木材は正常なクロマツ、アカマツ、スギの辺材で、年輪数が10mmにつき3〜5個、二方マサで各面を平滑かつ正確にカンナ仕上げした(20±0.5)(L)×(10±0.5)(R)×(10±0.5)(T)mmの直方体を用いた。その直方体を60±2℃の乾燥機中で24時間乾燥した。その後通常の施工方法と同じ方法で塗布し、24時間乾燥して試験体とした。
試験は溶脱と揮散を10回繰り返した。溶脱は、試験体を室温のイオン交換式純水に5時間浸漬した。揮散は、溶脱を行った試験体を直ちに60±2℃の乾燥機中に19時間放置した。
これを1サイクルとし、10回繰り返した。その結果、通常床下では起こり得ない様な過酷な試験を行ったが、塗料組成物が剥がれ落ちたり、溶け出す様なことはなかった。
(4)防蟻効力試験
塗料組成物のシロアリに対する防蟻性能試験を行った。(3)耐久試験を行った試料を用いて、日本木材保存協会規格の「表面処理用木材防蟻剤の室内防蟻効力試験方法及び性能基準(JWPA−TW−S.1)」に準じて実施した。
処理試験体と無処理試験を各5個準備し、試験に供するシロアリはイエシロアリとした。処理試験体、無処理試験体用を各々の容器内に水平に置き、職蟻150頭と兵蟻15頭を投入した。
21日後に試験体の質量減少率と蟻の死亡率を測定した。処理試験体の平均質量減少率が3%未満である時、防蟻性能を有するという基準であり、本発明による塗料組成物は、木材防蟻剤として防蟻性能があると判断される。試験結果を表5に示す。
【0022】
【表5】

【0023】
(5)防かび試験
本発明の塗料組成物の防腐性能評価として防かび試験を行った。試験方法は、JISZ2911(かび抵抗性試験方法)に準じて実施した。まず、プラスチック製シャーレに調製した培地を分注し、固化して平板培地を作製し、各試料を平板培地表面に置いた。5種類の菌(かび)それぞれについて、斜面培養基から胞子を一定量採取し、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(50ppm)水溶液に懸濁させ、胞子懸濁液を調製した。それぞれの懸濁液を合わせて混合胞子懸濁液とし、平板培地上の試料および培地表面に一定量噴霧し、恒温恒湿器の中で培養した。期間終了後に各資料(サンプル数3)の菌糸の発育部分の表面積を評価した。使用した菌(かび)は、アスペルギルス・ニゲル(JISZ2911第1群のb)、ペニシリウム・フニクロスム(JISZ2911第2群のb)、クラドスポリウム・クラドスポリオイデス(JISZ2911第4群のa)、オーレオバシジウム・プルランス(JISZ2911第4群のb)、グリオクラジウム・ビレンス(JISZ2911第4群のc)、以上5種類の菌を用いた。培養条件は、温度28℃、相対湿度95%以上、試験期間28日とした。試験結果より、本発明の塗料組成物の防かび性能を確認できた。試験結果を表6に示す。
【0024】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール水溶液50〜80重量%、天然ヒバ油1〜10重量%、木炭粉10〜20重量%を配合した塗料組成物。
【請求項2】
ポリビニルアルコール水溶液にヒバ油及び木炭粉を配合した請求項1記載の塗料組成物を塗装した建材、土台、火打土台、大引、根太、床束、根がらみ等、柱、間柱、筋交い、胴縁、窓台等の土台上端から高さ1m以内の部分(室内の見えがかり部分は除く)、モルタル塗り、ラス張り下地板で土台上端から高さ1m以内の部分、浴室の軸組、天井下地等、又は基礎コンクリート等への塗装方法。
【請求項3】
ポリビニルアルコール水溶液にヒバ油及び木炭粉を配合した請求項1に記載の原液、混合原液又は混合溶液を水又はアルコールにより希釈させた塗料組成物。

【公開番号】特開2009−149797(P2009−149797A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329884(P2007−329884)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(595049725)東北カーボン株式会社 (2)
【Fターム(参考)】