説明

木質バイオマス農法。

【課題】低下した土壌の地力を回復させて農作物の収穫量を増やし品質は向上させるようにすると共に、農業従事者を従来の完熟堆肥作りの重労働から解放するにした上、化学肥料や化学合成農薬の使用を大幅に減らして食の安全を保証する新規な農法を実現する。
【解決手段】
木質土壌改良剤1と廃棄有機物2とを田畑や人工栽培容器内など施行箇所5の土壌4の表面または表層3に施行し、木質土壌改良剤1で廃棄有機物2の発酵、分解を促し、木質土壌改良剤1と廃棄有機物2とを施行箇所5の土壌4の表面や表層3で消滅させていく過程で、施行した箇所およびその辺りの土壌改良を励行するようにした木質バイオマス農法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、土壌改質を図って農作物の増収や品質向上に繋げようとする農産物の生産技術、特に、バイオマス、即ち、枯渇性資源ではない、現生生物体構成物質起源の産業資源を活用するようにした農産物の生産する分野を中心とし、それら分野に直接的にも間接的にも係わりを有するか、有することが予測されるあらゆる分野を包含しており、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
農産物生産現場において、化学肥料や化学合成農薬を使用する近代農法が農産物の生産性を飛躍的に向上させ、農業従事者を従来の重労働から解放してきた事実に何ら疑いを挟む余地などはない。しかしながら、化学肥料や化学合成農薬の使用に伴う環境汚染や生態系の攪乱で、食の安全性や人々の健康面への懸念が高まっている。その上、化学肥料や化学合成農薬から成る化学合成物質を投入され続けてきた土壌の地力は低下したままとなり、土壌障害、塩類障害、連作障害などを引き起こし、農業の持続可能性が地球規模で脅かされている現状にある。
【0003】
(従来の技術)
そうした事情の反省から、現在、農産物生産現場では、化学肥料や化学合成農薬の使用の如何を問わず、好気性菌を使用した完熟堆肥によって土壌を改良していくという土作りを基本とする農法に切り替え始められているが、この完熟堆肥の施用には多くの時間と労力とを強いられることになるのと同時に、完熟堆肥自体に、次のような致命的な問題を抱えている。
【0004】
先ず、完熟堆肥を作る過程における基本的な発酵のメカニズムを見てみると、家畜排泄物等の有機物を繰り返し切り返して完熟堆肥を作る、例えば、特開平7−10669号公報「堆肥の製造方法」発明や特開2003−123887号公報「たい肥」発明、特開2007−302803号公報「土壌改良剤」発明などに掲載されているような手段に依るものが一般的となっており、切り返しを行うことによって有機物の中に酸素が送り込まれ、酸素を好む好気性菌が活発に活動するようにし、これら好気性菌による酸化を進行させて堆肥化を行っているが、この酸化は、ある種の燃焼に相当するものと考えることができ、その結果、この発酵過程で有機物は熱を発することとなり、二酸化炭素(CO2)やアンモニア(NH4)を大気に放出しながら腐植化していく経過を辿り、こうした一連の反応生成物資を生じさせている事実から、地球温暖化の原因の一端に農業が加担しているといわれる所以である。
【0005】
この酸化の過程では、堆肥の基となる有機物が本来持っていたエネルギーである炭素(C)を放出し、完熟堆肥になるまでに窒素(N)等の栄養素も失われることとなって、作物の育成に必要且つ有効なエネルギーが失われてしまうという問題点がある。
このような完熟堆肥を施用された土壌中では、確かに腐植酸によって土壌は団粒化されるが、有用微生物は、むしろ静菌化してその活力を失い、本来の作物育成機能を十分に発揮できない状態になってしまうことから、土壌中の有用微生物菌は次第に減少することになって、逆に病害虫菌が発生し易い環境を作り出すというような状況を呈する。
【0006】
そのため、結局、化学肥料や化学合成農薬を多投せざるを得なくなってしまっているという現状で、こうして、化学肥料や化学合成農薬を多投された土壌中では、好気性菌の酸化作用により、酸性物質(硫酸、塩酸、硝酸等)がイオン化して残留してしまい、このようにして汚染された土壌は、地力の低下、連作障害、塩分・塩類集積土壌や酸性・アルカリ性土壌の拡大などの原因となり、最終的には作物の品質の低下や収量の減少等の結果を招いてしまうことになっている。
【特許文献1】(1)特開平7−10669号公報 (2)特開2003−123887号公報 (3)特開2007−302803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(問題意識)
以上のとおり、改善されつつあるとはいえ、これまでに実施されている農産物の生産手段においては、バイオマス物資、即ち、枯渇性資源ではない、現生生物体構成物質起源の産業資源を極力採用することに依り、化学肥料や化学合成農薬に依存しないようにして食の安全を基本とするバイオマス循環型農法を実現させようとする潮流が根付きはじめ、既に、林業試験場研究報告第338号「木質土壌改良剤の畑地使用時における木材成分の経時変化」や、日林学会講演集「土壌改良材としての木質廃材の利用に関する研究」などに散見されるとおり、現生生物体構成物質として木質材を使って堆肥化して施行するようにしたバイオマス農法までも試行済となってはいるものの、上述したとおりの課題は、今のところ残されたままになっていて、有用微生物を含有する木質土壌改良剤で廃棄有機物の発酵分解を促し、有用微生物の活動を増強させ、有用微生物の栄養源になった廃棄有機物と木質土壌改良剤を地力のバイオマスエネルギーに転換し、さらには、木質土壌改良剤に含有させた酵母菌が、酵母発酵で無機化してしまった土壌を有機化へ導くという眼目を果たせないでいる。
【0008】
(発明の目的)
そこで、この発明は、土壌の地力を回復させ、化学肥料や化学合成農薬の使用を大幅に減らし、農業従事者を従来の完熟堆肥作り等の重労働から解放するのと同時に、農作物の収穫量を増やし、その品質も向上させ、ひいては、二酸化炭素(CO2)やアンモニア(NH4)を大気に放出させてしまう堆肥化を見直して地球温暖化原因の一つと指弾されないようにする新たな農法技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に、木質土壌改良剤と廃棄有機物とを田畑の土の表面や表層で発酵、分解させることを基本とする新規な構成からなる木質バイオマス農法を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述していくこととする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の木質バイオマス農法は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、木質土壌改良剤と廃棄有機物とを、田畑や人工栽培容器内など施行箇所の土壌の表面または表層に直接施行し、木質土壌改良剤で廃棄有機物の発酵、分解を促すようにし、更には木質土壌改良剤と廃棄有機物とを施行箇所の土壌内で消滅させていく過程を経過させることにより、施行した箇所およびその辺りの土壌改良を励行するようにした構成を要旨とする木質バイオマス農法である。
【0010】
この基本的な構成からなるこの発明の上記構成を、より具体的なものとして示せば、木質土壌改良剤と廃棄有機物とを、田畑や人工栽培容器内など施行箇所の土壌の表面または表層に直接施行し、木質土壌改良剤が含有する有用微生物によって廃棄有機物の発酵、分解を促して有用微生物を増殖すると共に、それら増殖した有用微生物によって当該木質土壌改良剤の木質母材自体の発酵、分解を円滑化するようにし、更にはそれら木質土壌改良剤と廃棄有機物とを当該施行箇所の土壌内で消滅させていく過程を経過させることにより、施行した箇所およびその辺りの土壌改良を励行するようにした構成からなる木質バイオマス農法となる。
【0011】
更に具体的には、間伐材や林地残材等木材を粉砕した木質母材に、麹菌、納豆菌、乳酸菌、酵母菌などといった有用微生物を含有させてなる木質土壌改良剤を、農産物生産現場や家庭など生活環境の中から得られる雑草や農作物残渣、家畜糞、食品残渣など廃棄有機物と共に、田畑や人工栽培容器内など施行箇所の土壌の表面または表層に直接施行して放置するようにし、該施行箇所における廃棄有機物の発酵、分解を促しながら、当該木質土壌改良剤の木質母材自体の発酵、分解を円滑化するようにし、更にはそれら木質土壌改良剤と廃棄有機物とを施行箇所の土壌内で消滅させていく過程を経過させることにより、施行した箇所およびその辺りの土壌改良を励行するようにしたことを特徴とする木質バイオマス農法ということができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明の木質バイオマス農法によれば、それに用いる木質土壌改良剤に含有させてある、それ自体、高価に付く有用微生物が、厄介者の廃棄有機物を栄養源として還元発酵による発酵、分解を促すようにし、限られた木質土壌改良剤内の有用微生物自体を増殖させることに依って木質土壌改良剤の木質母材をも円滑に発酵、分解させるという、換言すれば、廃棄有機物が酸化して腐敗した有害物になる前に、木質土壌改良剤内の有用微生物が廃棄有機物を「還元発酵」させて廃棄有機物を蘇生して有効な肥料化を果たさせる、言わば木質土壌改良剤が起爆剤となって木質土壌改良剤および諸共、発酵、分解、そして最後には消滅させてしまうという過程を経過させるようにしたことから、木質土壌改良剤は、高価なために限られた有用微生物に依るものとし、可能な限り木質土壌改良剤の単価を押さえたものとしても、施行箇所の土壌改良を十分に励行することが可能になるという大きな特徴を有している。
【0013】
また、施行箇所の土壌費用面または表層において直接発酵、分解、消滅過程をさせてしまうようにした農法に依るものし、専ら完熟堆肥を施行するというこれまでのバイオマス農法とも違って強制的な発酵、分解とはならないため、一気に大量の二酸化炭素(CO2)やアンモニア(NH4)を大気に放出させてしまう、言わば化石資源(石油などの枯渇性エネルギー資源)使用に依る二酸化炭素量の増加原因と同じような現象に通じさせてしまうのではなく、自然界で普通に繰り返されてきたような、所謂、全体として見れば大気中の二酸化炭素量を増加させないという「カーボンニュートラル」な手法による堆肥化、特に木質土壌改良剤と廃棄有機物とを、直接、田畑の土の表面または表層で発酵、分解、消滅を実現させてしまうようにするという手法に依り、先ずは地球温暖化原因の一つと指弾される問題を解決することができるという秀れた効果を発揮し得るものとなっている。
【0014】
と同時に、有用微生物が含有された木質土壌改良剤で廃棄有機物の発酵分解を促し、有用微生物の活動を増強させ、有用微生物の栄養源になった廃棄有機物と木質土壌改良剤とを地力のバイオマスエネルギーに転換し、さらには、木質土壌改良剤が含有する酵母菌の酵母発酵に依り、これまで長年に亘る化学肥料や化学合成農薬の投与の所為で無機化されてしまった土壌を、有機化することによって土壌の地力を回復させ、農作物の健全な生産と増産とに導き、化学肥料や化学合成農薬に依存しないようにした食の安全を確保可能とすることから、国民の健康維持に大きく寄与して高い評価を得ることに繋げられ、それが農業の安定経営を保証することにもなるという顕著な効果を発揮することができるものとなる。
【0015】
加えて、農家にとっては、バイオマス農法といっても、これまでの完熟堆肥を使う農法のときのような、家畜排泄物等の有機物を繰り返し切り返するような作業を一切不要として、農業従事者を煩雑で汚い労働作業から解放することにも繋げられるようにし、そのことが農業環境の改善となって後継者問題の解消のために役立つことにもなって、将来の食糧事情の安定化への布石にもなり得るという秀れた特徴をもたらすことにもなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、いかでは、その最良もしくは望ましい形態について順次説明を加えていくことにする。
この発明の木質バイオマス農法に用いる木質土壌改良剤は、間伐材や林地残材等として処分されなければならない木質廃材、特に杉を中心にした我が国の木材事情に併せた材質のものが採用可能であり、それら木質廃材を粉砕するなどして木質母材とし、出来るだけ均一に含有させるため、有用微生物を水で溶いた液状のものとした上、それらを一緒に攪拌機で攪拌して麹菌、納豆菌、乳酸菌、酵母菌等の有用微生物を含有させてしまった後に、湿度の管理をしてから所定両毎に梱包(袋詰め)して製造することによって得られるものが含有されている。
【0017】
この木質土壌改良剤に使用する廃材が杉材の場合には、多孔質であることから土壌の保水性、透水性、通気性の大幅改善に繋がり、それら多孔質部分が微生物の温床となって数種類の有用微生物を育み、しかも保温効果にも秀れて有用微生物の繁殖環境に適しているという利点もあり、土壌改良による団粒構造形成に大いに寄与すると共に、また、大きな吸着面積を保有するため、脱臭効果に秀れていて発酵臭が低減される。
【0018】
木質土壌改良剤における有用微生物としては、代表的なものとして麹菌、納豆菌、乳酸菌、酵母菌等が該当しているが、これら有用微生物は、発酵の中で、腐敗現象に繋がる酸化ではなくて、所謂「ぼかし」と称される「還元発酵」に寄与し得る微生物であれば足りるものであり、廃棄有機物も、そのまま田畑に入れると酸化をさせる微生物(菌)が優勢のために、先ず腐敗してしまうこととなるため、この酸化をさせる微生物(菌)が廃棄有機物に住み着く前に、これら有用微生物を廃棄有機物に植え付けるようにするもので、廃棄有機物の「還元発酵」を確実に実現するための起爆剤として、この木質土壌改良剤に含有させる有用微生物が機能することになるものである。
【0019】
これら有用微生物の中、麹菌は、主に柔らかい農産物の炭水化物を弱酸性の環境で分解して酸素と糖分を作り出し他の有用微生物(納豆菌等)の初期活動の栄養源になり、それらの中、納豆菌などはアルカリ性の環境で生息し、麹菌が作り出した糖や酸素を摂取してアルカリ性の消化酵素を出しながら、茎や葉などの硬いセルロースまで分解してタンパク質、脂肪、アミノ酸および抗菌物質を作り出す機能を有している。
【0020】
また、有用微生物の中の放線菌は、麹菌が作り出した糖や酸素を摂取して強アルカリ性の消化酵素を出しながら、甲殻類が持つ硬い殻、例えば、カニの甲羅などの有機物を分解可能とし、更には、抗生物質の合成を行い強い殺菌効果を持っている。また、有用微生物の中の乳酸菌は、強酸性の環境で糖分を摂取して乳酸を作り出し、その活動は運搬作用を持つミミズ等の生物によって土壌内へと運ばれ、土壌のpHを調整することとなり、それが農作物の成長を害する土壌内の有害微生物の増殖を抑制して病気などへの抵抗力を高め、植物の生育上で好ましい土壌に改良する機能を発揮する。
【0021】
有用微生物の中の酵母菌は、弱酸性の環境で酸素を摂取して微生物が分解した有機物を合成してアミノ酸、ビタミン、核酸、ミネラル、ホルモン、脂肪酸、その他の成分を作り出し、当該酵母菌の作り出すアミノ酸は、他の微生物が発酵作用を及ぼすときに必要な栄養源等になっており、その栄養源等は、運搬作用を持つミミズ等の生物により土壌内へと広がり、それら各々の成分が農産物の生育の促進に寄与するものとなる。
【0022】
有用微生物の中の乳酸菌は、納豆菌の過剰増殖を制御し、アミノ酸が分解してできる二酸化炭素とアンモニアを抑制して好気発酵を防ぎ、また、同酵母菌は、化学肥料等を多投されて無機化した土壌を酵母発酵させることにより、それらを有機化した土壌に変えるよう作用し、有機物、無機物と問わず発酵、分解できる機能を発揮する。そして、これら有用微生物の好気菌および嫌気菌の発酵、分解、つまり、酸化・還元作用には、初期発酵させる有用微生物から始まり、最終発酵させる有用微生物と夫々に一連の役割があると共に、有機物を土壌に元還りさせる循環メカニズムを有しているものと考えられる。
【0023】
廃棄有機物を有用微生物の栄養源とすることにより、廃棄有機物の発酵、分解を促進可能とし、これらの発酵、分解した発酵分解が、この発明の農法を特徴付ける過程で実現される環境の下で進行し、その作り出された成分は、運搬作用を持つミミズなどの土中生物によって土壌へと運ばれ、次第に土壌内に蔓延していくこととなって、この発明の目的とする土壌の改良が行われるものと考えられる。
【0024】
これまでの実証データによると、これらの木質土壌改良剤と廃棄有機物とを用いて実施するこの発明の木質バイオマス農法には、木質土壌改良剤の標準使用量を、10アール当たり500kgとし、また、木質土壌改良剤と廃棄有機物との重量比は、1:0.5を基準とするようにするのが望ましい。
【0025】
この発明の木質バイオマス農法に採用する木質土壌改良剤は、種々の剤形、例えば、粉剤、粒状剤、ペレット状、あるいはそれらの混在したものなどとすることができる外、廃棄有機物としては、農産物生産現場からの雑草や農作物残渣および食品残渣、家畜糞などを対象とすることができる。
そして、この木質バイオマス農法は、土壌の耕作を必要としないため、農作物生育中となっている圃場でも施行が容易に実施可能となる。
【0026】
なお、この木質バイオマス農法における適用作物としては、イネ、コムギ等の作物を始めコマツナ、ホウレンソウ等の葉菜類、トマト、キュウリ等の果菜類、ダイコン、カブ等の根菜類、マメ類、果樹、花き、林木、キノコ、芝などを挙げることができる。
以下では、図面として取り上げた各実施例に基づき、この発明の木質バイオマス農法をより明確に把握できるよう、具体的な説明を加えていくこととするが、この発明の木質バイオマス農法のものが、これらの実施例に限定されるものでないことは言うまでもないことである。
【実施例1】
【0027】
まず、実施例1として取り挙げてある図1に示す事例は、この発明を代表する農法を畑に実施した断面図にして簡略図解したものである。
この図からも明瞭に把握できるとおり、畝立てした畑地の土壌3,3,……の中、畝R,R,……間夫々の谷部の土壌3,3,……の表層4,4,……部分を所定深さに掘り下げ、施行箇所5,5,……とした上で、同所5,5,……の夫々内に、木質土壌改良剤1と廃棄有機物2とを混在状となるようにして施用したものとし、木質土壌改良剤1に含有させた有用微生物が、廃棄有機物2を餌に活動を開始して廃棄有機物2が発酵、分解されていくと、木質土壌改良剤1に含有させていた有用微生物が増殖して木質母材自体も発酵、分解されていき、最終的に、当該施行箇所5,5,……における木質土壌改良剤1および廃棄有機物2は、共に消滅することとなるが、この過程において、酵母菌が有機物をアミノ酸とかビタミン等に再合成し、それ等を餌に土壌の微生物が土壌の分解を開始すると共に、作り出された成分を、ミミズなどの土中生物によってその周辺の土壌へと運び込まれることとなり、次第に畑地全体の土壌内に蔓延していくこととなって土壌が肥沃になり、作物Cの生育を良くすることになる。
【実施例2】
【0028】
図2に示した事例は、この発明の木質バイオマス農法を、植木鉢Pに施してなるものの簡略図面化した断面図である。
図面に示してあるように、植木鉢P内の土壌3の周辺全周に亘って全体的に所定巾だけ土壌3を掘り下げて取り除くか、あるいは、植木鉢Pの内周壁に添うようにして、何本かの縦穴を掘り下げるかして施行箇所5,5,……とした上、同所5,5,……の夫々内に、木質土壌改良剤1と廃棄有機物2とを混在状となるようにして施用したものとする事例であり、後の過程は、上記実施例1と同様になり、次第に植木鉢P内全体の土壌に蔓延していくこととなって土壌を肥沃化することになり、作物Cは、良好に生育を維持していくこととなる。
【0029】
(結 び)
叙述の如く、この発明の木質バイオマス農法は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも、同じバイオマス農法といっても、完熟堆肥を使うための煩雑な作業を強いられる従前からの農法に比較し、いたって施行も容易な上、
有用微生物を含有する木質土壌改良剤で廃棄有機物の発酵分解を促し、有用微生物の栄養源になった廃棄有機物と木質土壌改良剤とを地力のバイオマスエネルギーに転換し、さらには、木質土壌改良剤が含有する酵母菌の酵母発酵で、長い間に無機化してしまった土壌を有機化へ導くこととなって、化学肥料や化学合成農薬に依存しないようにした安全な食生活を保証することができることから、農業生産現場や農業に係わる業界などからは固よりのこと、食の安全を願う一般需要者からも高い評価を得て、今後、広範に亘って利用、普及が図られていくことになるものと予想される。

【図面の簡単な説明】
【0030】
図面は、この発明の木質バイオマス農法の技術的思想を具現化した代表的な幾つかの実施例を示すものである。
【図1】木質バイオマス農法を畑に施行した断面図である。
【図2】木質バイオマス農法を植木鉢Pに施行した断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 木質土壌改良剤
2 廃棄有機物
3 土壌
4 表面または表層
5 施行箇所
C 作物
P 植木鉢
R 畝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質土壌改良剤と廃棄有機物とを、田畑や人工栽培容器内など施行箇所の土壌の表面または表層に直接施行し、木質土壌改良剤で廃棄有機物の発酵、分解を促すようにし、更には木質土壌改良剤と廃棄有機物とを施行箇所の土壌内で消滅させていく過程を経過させることにより、施行した箇所およびその辺りの土壌改良を励行するようにしたことを特徴とする木質バイオマス農法。
【請求項2】
木質土壌改良剤と廃棄有機物とを、田畑や人工栽培容器内など施行箇所の土壌の表面または表層に直接施行し、木質土壌改良剤が含有する有用微生物によって廃棄有機物の発酵、分解を促して有用微生物を増殖すると共に、それら増殖した有用微生物によって当該木質土壌改良剤の木質母材自体の発酵、分解を円滑化するようにし、更にはそれら木質土壌改良剤と廃棄有機物とを当該施行箇所の土壌内で消滅させていく過程を経過させることにより、施行した箇所およびその辺りの土壌改良を励行するようにしたことを特徴とする木質バイオマス農法。
【請求項3】
間伐材など木材を粉砕した木質母材に、麹菌、納豆菌、乳酸菌、酵母菌などといった有用微生物を含有させてなる木質土壌改良剤を、農産物生産現場や家庭など生活環境の中から得られる雑草や農作物残渣、家畜糞、食品残渣など廃棄有機物と共に、田畑や人工栽培容器内など施行箇所の土壌の表面または表層に直接施行して放置するようにし、該施行箇所における廃棄有機物の発酵、分解を促しながら、当該木質土壌改良剤の木質母材自体の発酵、分解を円滑化するようにし、更にはそれら廃棄有機物と木質土壌改良剤とを施行箇所の土壌内で消滅させていく過程を経過させることにより、施行した箇所およびその辺りの土壌改良を励行するようにしたことを特徴とする木質バイオマス農法。
【請求項4】
木質土壌改良剤は、その使用量が、施行箇所10アール当たり500kgを標準値としてなるものとした、請求項1ないし3何れか一記載の木質バイオマス農法。
【請求項5】
木質土壌改良剤と廃棄有機物との重量比は、1:0.5を標準とするようにした、請求項1ないし4何れか一記載の木質バイオマス農法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−55760(P2011−55760A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208728(P2009−208728)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(309003706)日本エコサポーター株式会社 (1)
【出願人】(507173366)株式会社セント・インベストメント (3)
【Fターム(参考)】