説明

木質系合板及びその製造方法並びに使用方法

【課題】 要約書木質系居住空間、特に高齢者向けの居住空間における視覚上の配慮(危険個所の容易な認知)を、木質系の特色を損なう事無く実施するため、それに適した材料及びその製造方法並びに使用方法を開発する。
【解決手段】 節目密度が段階的に異なる木質系合板を使用する。該木質系合板の原材料を得るため、原木の梢部分或は間伐材を用い、これを取得するのに適したし裁断基準を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として内装材に適した木質系合板のうち、視認性に特色を与えた木質系合板及びそのその製造方法(特に間伐材の利用に適するもの)並びに使用方法(特に高齢者居住空間の構成に適したもの)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材によって構成された居住空間が、居住者に対して、無機質で構成された居住空間では得難い精神的・肉体的な快適感を与えることは、従来から経験的に熟知されており、最近では木材の香気に含まれるテルペン類の生理的鎮静作用、木材表面の触覚による大脳刺激、木材表面の適度な光散乱による眩しさの軽減、木目による視覚刺激の適度の揺らぎが与える神経の安静等の科学的な裏付けも徐々に蓄積されつつある。これに加えて、高齢者の増加に伴い、これに対応したバリヤフリー等の居住空間構成が多く用いられつつあるが、高齢者に対しては歩行能力の低下のみならず、視覚の劣化に対して、構成上やむを得ず生じる危険個所、即ち階段、曲り角、棚下部の角等に対して注意を喚起するための配慮が欠かせない。しかしながら、この点については未ださしたる工夫がなく、特に、木質環境、木目の与える安静感に適することに注目したものは見当たらない。
【0003】
他方、木材原料の面で見ると、原木の裁断に当っては間尺(切断長さ)は2m、3m及び4mを基準とし、特注により更に長尺物が採取され、木の先端部分は径が小さく、且つ小枝による節目が多いため材木に不適として山に廃棄される。また、木の生長に応じて間引きのために伐採されるいわゆる間伐材は、径が小さいため材木としては使用できず、殆どは山に廃棄されたままになっている。これら廃棄物は、資源のムダであるのみならず、蓄積の増加に伴い森林環境にとって好ましからぬ存在になっている。
【非特許文献1】増田:日本木材学会誌vol.38,p.1075(1987)
【非特許文献2】増田:京大農学部演習林報告no.59,p.273(1987)
【非特許文献3】平間:林産試だより(北海道)2003年5月号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明においては、上記木質系居住空間、特に高齢者向けの居住空間における視覚上の配慮を、木質系の特色を損なう事無く実施するため、それに適した材料及びその製造方法並びに使用方法を開発する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、多年にわたり木質系居住空間特にヒノキを使用した居住空間について低コストで良質の構成の普及に努め(特願2004−238917、特願2005−280754)、その延長線上において上記課題を解決するために以下の発明を行った。
(1)木質系合板において、表面に存在する節目の密度を段階的に制御して、密度段階の異なる合板間若しくは同一合板内の密度段階の異なる部分間に視覚刺激に対する差異を与えることを特徴とする木質系合板(以下、視認性合板と言う)。
(2)視認性合板において、その原木の裁断に対し65cm間尺を使用することを特徴とする製造方法。
(3)(2)記載の原木として間伐材特に好ましくはヒノキ間伐材を使用することを特徴とする製造方法。
(4)視認性合板の使用において、注意を惹くべき個所特に段差、角、棚下部等の危険防止のため注意を必要とする個所に、周囲より節目密度の高い視認性合板を用いることを特徴とする視認性合板の使用方法。
(5)視認性合板の使用において、居間等の安静な環境の望ましい居住空間に可能な限り節目密度の低い視認性合板を用いることを特徴とする視認性合板の使用方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、木質系居住空間に適した視覚的な危険回避の手段が得られ、良質な居住空間の一層の普及が期待され、更に、未使用資源の有効活用により、コストの低減と森林環境の改善が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
第1の実施形態:第1の実施形態は、(1)に述べた如く、本発明の目的に使用する木質系合板に関するものである。即ち、周囲と違和感のない同質の木材を用い、節目が注意を惹くことを利用するため、段階的に節目密度を制御し、視認され易さに差を設けた木質系合板であって、節目密度は合板全面に渡り均一であっても、合板の特性を活かして必要部分のみを高めたものであっても良い。注意を惹くための具体的な節目密度は、節目の濃淡・大小によって異なり、周辺環境によっても影響されるので一定し難いが、直径2cm前後の節目であれば10cmに2個程度が目安となると考えられる。
【0008】
第2の実施形態:第2の実施形態は、(2)及び(3)に述べた如く、視認性合板の製造方法のうち、原材料の取得に関するものである。本発明の視認性合板においては、表面の必要個所の節目密度を制御する必要上、所期の節目密度を有する原料木材が確実に供給されることが前提条件である。このため、特に節目密度の大なる原料木材、即ち従来廃棄されてきた原木の梢部分を利用することが有効であり、そのためには原木の裁断に際し、従来の基準間尺よりも短い間尺を必要個所に適用しなければならない。発明者の経験によれば該間尺としては65cm(実際使用部分60cm)が最も便利であり、この数値を標準化することを提案する。また、間伐材特にヒノキ間伐材の合板としての有効利用は本発明者がかねてより主唱してきた所であるが、種種の節目密度を持つため本発明の原材料としては特に適しており、間伐材に対しては全長に渡り65cm間尺を適用することが出来る。
【0009】
第3の実施形態:第3の実施形態は、(4)及び(5)に述べた如く、視認性合板の使用方法に関するものである。視認性合板は注意を喚起する必要のある個所に適用することを目的としており、インテリアデザイン上のアクセントとしても有用であるが、主たる対象は居住空間の危険個所、段差、角、棚下部等、適宜な対応動作を求められる個所であり、該個所に対し節目密度の高い視認性合板ないし部分的に節目密度を高めた視認性合板を適用する。この際、周辺環境とのコントラストに注意することが必要であり、十分に目立つこと、過度に目立ちすぎて違和感を生じないことに配慮しなければならない。
【0010】
逆に、本発明者の経験によれば、居住者は木目の適宜な揺らぎを妨げない、節目密度の低い木質空間において心の安静を得やすく、従ってこの目的に対しては出来るだけ節目密度の低い視認性合板を使用する。節目密度の低い視認性合板で構成された居住空間での視野に注意を喚起する個所が存在する場合においても、節目密度の高い視認性合板が使用されれば、本来が同質の木材であるため、異種の材料によるよりも違和感が少なく、安静がデイスターブされる度合いが小さいと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明は木質系居住空間に適した危険個所表示方法を与えて木質内装住宅の利便性を向上させ、且つ従来廃材とされて来た原木部分又は間伐材の有効な利用手段を提供してコスト削減と森林環境の改善に資するものであって、関係方面での広範な利用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系合板において、表面に存在する節目の密度を段階的に制御して、密度段階の異なる合板間若しくは同一合板内の密度段階の異なる部分間に視覚刺激に対する差異を与えることを特徴とする木質系合板(以下、視認性合板と言う)。
【請求項2】
視認性合板において、その原木の裁断に対し65cm間尺を使用することを特徴とする製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の原木として間伐材特に好ましくはヒノキ間伐材を使用することを特徴とする製造方法。
【請求項4】
視認性合板の使用において、注意を惹くべき個所特に段差、角、棚下部等の危険防止のため注意を必要とする個所に、周囲より節目密度の高い視認性合板を用いることを特徴とする視認性合板の使用方法。
【請求項5】
視認性合板の使用において、居間等の安静な環境の望ましい居住空間に可能な限り節目密度の低い視認性合板を用いることを特徴とする視認性合板の使用方法。

【公開番号】特開2007−137040(P2007−137040A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358233(P2005−358233)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(000100757)アイシーエス株式会社 (26)
【出願人】(597015519)
【Fターム(参考)】