説明

木質表面化粧材の着色方法

【課題】従来の高圧水蒸気処理の着色方法よりもさらに木目のコントラストを必要とした場合に、木質感が高い木質表面化粧材が得られる木質表面化粧材の着色方法を提供することを目的としている。また、木質感を強調する際に、木質表面化粧材の耐光性も確保することを目的としている。
【解決手段】木材2に高圧水蒸気による加熱を与えて、木材2の内部に耐光性の高い重合性着色物を生成させる熱着色処理を行い、その後、木材2をスライスしてスライス単板2sを作製し、スライス単板2sの表面に、白色顔料を主成分とした着色剤を希釈剤で希釈した塗料Pを塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質表面化粧材の着色方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、床材などの製造方法においては、天然感を保ちながら、丈夫で傷のつきがたい床材を得るために、木質表面化粧材を基材の表面に貼着するようにしている。
【0003】
例えば、特許文献1には、中密度繊維板と天然材フリッチとをモザイク乱張り状に交互配置して貼着集成した後、スライスしたものを木質表面化粧材とし、この木質表面化粧材を基材の表面に貼着するようにして、天然感を保ちながら、丈夫で傷のつきがたい床材が得られるようにした床材とその製造方法が開示され提案されている。
【0004】
そして、このような床材などの木質表面化粧材表面には、一般に着色剤で塗布処理を行うが、木材らしさを表現するために、化粧表面に存在する木材道管の凹部(例えば環孔材)を利用した生地着色が主として用いられてきた(ワイピング生地着色)。この生地着色により、耐光性も確保されているが、近年この道管の凹部が無い材料(例えば散孔材)が主流になりつつあり既存手法では木材らしさが表現しにくくなりつつある。
【0005】
このように、木目のはっきりしない樹種などの場合や、あるいは基材色のバラツキを抑えたい場合には、木質表面化粧材に着色,塗装を行って仕上げようとすると着色が厚くなり、木目が解り難くなる程に濃度の上がった着色で仕上がることが多く、樹種の木目が消えて見え、天然木の良さが消えてしまいがちになるなど、突き板を生かした仕上りとなっていないことが多かった。
【0006】
また、素材の木目を生かそうとすると、着色の濃度を下げなければならないが、この場合、無処理に近い突き板が光や熱で変色してしまうため、施工後に問題となることもあった。
【0007】
このように、突き板などの木質表面化粧材は、従来より、木材をスライスした後、その表面に、耐光性を増すため、あるいは、基材色のバラツキを抑えるために、着色剤で塗布処理を行っているが、木目のはっきりしない樹種に塗装を行って着色すると樹種の木目が消え、天然木の良さがなくなり、突き板としての商品価値を損ねてしまうことが多かった。
【0008】
このような問題を解決するため、本発明者らは、特願2009−40459などにおいて、高圧水蒸気による加熱処理を用いた着色方法を提案した。
【0009】
この方法によれば、高圧水蒸気処理によって、木材には、耐光性の高い重合性着色物(このとき、耐光性の低い酸化着色物も副産物として生成し木材の表面に析出する)を生成して、細胞が緻密な晩材部分が、細胞が疎な早材部分よりも着色濃度が濃くなって木目が強調され、しかも、木目が解り難くなる程に濃度の上がった着色で仕上がることがないので、樹木の木目が消えずに天然木の良さを生かした仕上りを得ることができた。
【0010】
しかしながら、突き板として商品価値を高めるためには、高圧水蒸気圧処理によって着色されたときの色調が変化しないように、スライスした表面に塗料やコーティング材を塗布して耐光性を向上させるための表面の仕上げ処理が必要となるが、品質にばらつきのない突き板を工場生産する場合、高圧水蒸気処理にあっては温度設定の問題があり、表面の仕上げ処理にあっては塗布する塗料の濃度の調整があり、これらの条件を最適な値に設定することが強く望まれる。
【0011】
本発明は、このような観点から、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、高圧水蒸気処理では、木材の加熱温度が極めて重要であり、その芯部分の温度が110℃〜150℃の範囲になるまで加熱し、木材の内部に耐光性の高い重合性着色物の生成を著しく助長することで、スライス面に木目が現れ難いビーチやブナなどの樹木にあっても、木目が消えずに天然木の良さが活かせる着色ができたという知見を得て本発明に到達したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−58406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、木目のはっきりしない樹種などの場合、あるいは基材色のバラツキを抑えたい場合でも、着色,塗装を行って仕上げようとする際に着色が厚くなって、木目が解り難くなる程に濃度の上がった着色で仕上がることがなく、樹種の木目が消えずに天然木の良さを生かした仕上りとなる木質表面化粧材の着色方法を提供することを目的としている。
【0014】
また、着色の濃度を下げても光や熱で変色することが少なく、施工後に問題となることも少ない木質表面化粧材の着色方法を提供することを目的としている。
【0015】
特に、本発明は、高圧水蒸気による加熱処理を用いて木材を着色する際に、最も重要な条件となる加熱温度に着目して、木材に含有されている耐光性の高い重合性着色物の生成を著しく助長させることで、スライス面に木目が現れ難い樹木にあっても、木目が消えずに天然木の良さが活かせる着色を行うことにある。
【0016】
また、高圧水蒸気による加熱処理を用いて着色した木材のスライス単板の表面に簡単な塗装による仕上げ処理を施すことで、高圧水蒸気による加熱処理を用いて着色した木材の色調を阻害することなく、耐光性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を解決するために、請求項1に記載の木質表面化粧材の着色方法は、木材を、芯の部分が110℃〜150℃になるまで高圧水蒸気による加熱を行って、木材内部に耐光性の高い重合性着色物を生成させることで熱着色処理を行い、その後、熱着色処理された木材をスライスしてスライス単板を作製し、該スライス単板の表面に、熱着色処理後の色調を阻害しない程度の低濃度の塗料を塗布することを特徴とする。
【0018】
また、請求項2に記載の木質表面化粧材の着色方法は、請求項1に記載の木質表面化粧材の着色方法において、上記木材としては、散孔材が用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の木質表面化粧材の着色方法によれば、高圧水蒸気による加熱処理を用いて木材を着色する際、木材を、芯の部分が110℃〜150℃になるまで高圧水蒸気による加熱を行い、木材内部に耐光性の高い重合性着色物を多量に生成させているので、木目が現れ難い樹木にあっても、熱着色後にスライスして、スライス単板を作成したときに表面が木目が消えずに天然木の良さが活かせた着色が出来る。
【0020】
高圧水蒸気による熱処理は、110℃以下の処理ではヘミセルロースが十分熱分解できず、また生成物の重合も不十分で耐光性能向上が見られない。また、150℃以上になるとヘミセルルロ一スの分解が進みすぎ、強度低下を起こす。いずれの場合でも芯の部分が処理温度になるまで高圧水蒸気による熱処理を続けることが好ましい。
【0021】
また、熱着色後は、熱着色処理後の色調を阻害しない程度の低濃度の塗料を塗布して、仕上げ処理を行っているので、処理が簡単で、かつ、熱着色処理後の色調を阻害せずに耐光性を図ることができる。
【0022】
また、請求項2に記載の木質表面化粧材の着色方法によれば、特に、従来、ワイピング生地着色など、化粧表面に存在する木材道管の凹部を利用した生地着色では、木材らしさを表現することが困難であった散孔材においても、着色が濃くなって、木目が解り難くなる程に濃度の上がった着色で仕上がることがなく、樹種の木目が消えずに天然木の良さを生かした仕上りとなる。
【0023】
また、着色の濃度を下げても光や熱で変色することが少なく、施工後に問題となることも少ない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の木質表面化粧材の着色方法を示すフロー図である。
【図2】本発明の木質表面化粧材の着色方法に適用する処理装置の構成を示す概念図である。
【図3】図1の処理装置の概略の対応断面図である。
【図4】木質表面化粧材の表面の概念図である。
【図5】本発明の木質表面化粧材の着色方法による実施例の評価結果をまとめた表である。
【図6】金属カゴに木材を拘止させる構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について説明する。図1は、本発明の木質表面化粧材の着色方法を示すフロー図であり、図2は、本発明の木質表面化粧材の着色方法に適用する処理装置の構成を示す概念図である。また、図3は、図2の処理装置の概略の対応断面図である。また、図4は、木質表面化粧材の表面の概念図である。
【0026】
図1に示す本実施形態の木質表面化粧材の着色方法Sは、木質表面化粧材2k(図4)の耐光性を確保しながら、木質感が高い木質表面化粧材2kを得るためのものであり、図2、図3に示す処理装置1を用いて木質表面化粧材2k(図4)の表面に貼り付けられるスライス単板2s(図4)を製造するためのフリッチ材である木材2(図2、図3)を処理する。
【0027】
図2、図3に示すように、処理装置1は、高圧蒸気釜4を備えており、この高圧蒸気釜4は、フリッチ材として用いる木材2を拘止した状態に保持する保持手段としての台座3を内部に有した水溜容器5を内部に備えている。
【0028】
台座3は、上側固定部材3a、下側固定部材3bと、押さえ板2a、2bとを備えている。図2では、木材2は、押さえ板2a、2bで上下両側から挟まれ、隙間を確保するために、スペーサー7a、7bを介在させた状態で台座3の上側固定部材3a、下側固定部材3bとの間に置かれ拘止される。
【0029】
上側固定部材3aと下側固定部材3bとは、両者の間隔を変更可能に構成されており、木材2は、押さえ板2a、2bで上下両側から挟まれ、台座3の上側固定部材3aと下側固定部材3bとの間に置かれた状態で、ボルトナット構造3dによって拘止される。
【0030】
そして、下側固定部材3bは、水溜容器5の中に固定されており、水溜容器5は、高圧蒸気釜4の内壁面からレール6によって支持された状態で高圧蒸気釜4の内部でレール6の車輪7により移動可能になっており、高圧蒸気釜4に対して出し入れできる。
【0031】
このように、高圧蒸気釜4と水溜容器5とが別々に設けられ、水溜容器5内に冷却水を導入させるので、高圧蒸気釜4に直接冷却水が注がれて加わる熱衝撃をなくすることができる結果、高圧蒸気釜4の耐圧容器の安全性が高い。
【0032】
また、水に触れる水溜容器5だけをステンレスで製造し、高圧蒸気釜4はそれよりも安価な材料を採用するなど、使用する材料を異なるものにすることにより、装置のコストを低減することができる。
【0033】
高圧蒸気釜4は、長手方向に分割可能に構成されている。この高圧蒸気釜4は、不図示のボルトナット機構あるいはクランプ機構により、フランジ4a、4bを着脱することによりふた4cを開けて内部を開放し、台座3ごと水溜容器5を取り出すことができるようになっている。
【0034】
また、高圧蒸気釜4には、高圧高温蒸気の導入口5aと、排気口5bと、加圧タンク8で加圧された水タンク9からの加圧水の導入口5cとが設けられている他、液化した蒸気をスチームトラップ5dを介して排水するドレン口5eと、水の排水口5fと、蒸気導入バルブ6aと、蒸気排気バルブ6bと、水導入バルブ6cと、ドレンバルブ6eと、排水バルブ6fとが設けられている。
【0035】
ここで、木材2としては、ブナ(散孔材)のフリッチ厚み30mm×幅120mm×長さ450mmを用いた。
【0036】
次に、図1を参照して、この処理装置1を用いて実施する木質表面化粧材の着色方法Sについて説明する。
【0037】
本実施形態の木質表面化粧材の着色方法Sにおいては、まず、ステップS1において、複数の木材2を、スペーサー7a、7bを介在させて積層し、木材2それぞれの隙間を確保する。
【0038】
次に、ステップS2において、積層された複数の木材2の最上面と最下面に押さえ板2a、2bで挟む。
【0039】
また、ステップS3において、押さえ板2a、2bで挟んだ複数の木材2を、水溜容器5の保持手段である台座3に固定する。
【0040】
それから、ステップS4において、水溜容器5ごと高圧蒸気釜4に挿入。水溜容器5の底部にも配管を接続して水の排水口5f、ドレン口5eと接続し、ふた4cを閉じて閉釜する。
【0041】
また、ステップS5において、蒸気導入バルブ6a、蒸気排気バルブ6b、ドレンバルブ6eを開いて釜内空気を蒸気と置換する。
【0042】
また、ステップS6において、蒸気排気バルブ6bを閉めて、高圧蒸気釜4の中に高圧蒸気を供給して木材2を処理してヘミセルロースから熱分解により耐光性の高い重合性着色物を生成させる。
【0043】
それから、処理が完了したら、ステップS7において、蒸気導入バルブ6aを閉めて、加圧保持しながら水溜容器5内に水導入バルブ6cを開いて水を供給して保持手段の台座3に固定している木材2を水没させる。
【0044】
この時、水導入バルブ6cを開いて、高圧蒸気釜4内に水を挿入して、台座3に固定している木材2を高圧状態のまま水没冷却させる。その際、高圧蒸気釜4内の圧力が下がらないように管理する。圧力の低下には蒸気導入バルブ6aを補助的に開、あるいは水の圧力をアップする。また、圧力の上がり過ぎには蒸気排気バルブ6bでコントロールする。さらに冷却効率を上げるため、水をオーバーフローさせて調整しながら、循環させる。
【0045】
冷却が完了したら、ステップS8において、蒸気排気バルブ6bを開いて、高圧蒸気釜4を降圧処理する。また、排水バルブ6fを開いて水溜容器5内の冷却水を排出後、水の排水口5f、ドレン口5eと接続している配管を水溜容器5から取り外す。
【0046】
そして、ステップS9において、水溜容器5ごと高圧蒸気釜4内から取り出し、ステップS10において、保持手段の台座3から木材2を取り出す。
【0047】
また、ステップS11において、木材2をスライスしてスライス単板2sを作製する。
【0048】
さらに、ステップS12において、このスライス単板2sを基材2m(図4)に貼り付けた後、ステップS13において、スライス単板2sの表面の研磨仕上げを行い、最後に、ステップS14において、スライス単板2sの表面の木目の上から白色の塗料Pで塗装処理する。
【0049】
このように、本実施形態の木質表面化粧材2kの着色方法Sにおいては、木材2を、芯の部分が110℃〜150℃になるまで高圧水蒸気による加熱を行って、木材2の内部に耐光性の高い重合性着色物を生成させることで熱着色処理を行い、その後、熱着色処理された木材2をスライスしてスライス単板2sを作製し、該スライス単板2sの表面に、熱着色処理後の色調を阻害しない程度の低濃度の塗料Pを塗布することを特徴とする。
【0050】
また、木材2としては、散孔材が用いられることを特徴とする。
【0051】
ここで、図5に示すように、上述の処理装置1を用いて行った実験例(実施例1、2、比較例1、2、3)について説明する。図5は、本発明の木質表面化粧材の着色方法による実施例の評価結果をまとめた表である。
【0052】
実施例1では、熱処理すべき木材2として、ブナ(散孔材)のフリッチ厚み30mm×幅120mm×長さ450mm生材(含水率56〜64%)を用いた。この木材2を高圧水蒸気にて135℃にて1時間処理し、スライサーにて厚み0.25mmのスライス単板化した。そして、このスライス単板2sを接着剤にて基材2mに貼り込んだ。この時、接着剤は、水性ゴムラテックス系接着剤を使用し、貼りは、熱圧110℃、3Kg/cm2の条件で1分間保持した。
【0053】
次に、この貼り込んだスライス単板2sの表面を#240のベルトサンダーにて表面仕上げし、着色剤水系色剤の塗料Pを塗布して着色した。
【0054】
ここで、塗料Pとしては、白色顔料(酸化チタン)92%、黒色顔料(カーボンブラック〉0.5%、赤色顔料(有機)2%、黄色顔料(有機)5.5%の配合のものを希釈剤にて5%に希釈し、この顔料に粘度調整剤、界面活性剤を添加して調整した。この時の顔料、希釈剤はいずれもナトコ株式会社製のフローラ(商標名)を用いた。
【0055】
この時、塗布量は、14〜16g/m2とし、塗布方法としては、スポンジロールコーター塗布に続いてリバースコーターにて掻きとり、続いてゴムロールコ一ターにて補色した。その後、140℃の温風で45秒間乾燥させた。
【0056】
この後、仕上げ塗装においては、下塗りとして、ウレタン塗料(サンユーペイント製NYX−S−701)をロールコーター(ゴム)にて80g/m2塗装した後、風乾し、#240のベルトサンダーで表面研磨をした。
【0057】
また、その後、上塗りとして、ウレタン塗料(商標名サンユーペイント製NYX−E−800)をロールコーター(ゴム)にて、60g/m2塗装して、風乾した。
【0058】
次に、実施例2は、実施例1において熱処理温度(高圧水蒸気)を110℃にした場合であり、他の条件は実施例1と同様である。
【0059】
また、比較例1は、実施例1において熱処理が乾燥状態で実施されたもの(乾燥機にて135℃の温度で1時間乾燥)であり、他条件は,実施例1と同様である。
【0060】
また、比較例2は、実施例1において、高圧水蒸気による熱処理温度を105℃にした場合であり、他条件は実施例1と同様である。
【0061】
また、比較例3は、実施例1において塗料Pが白色顔料主体で無いものであり、白色顔料(チタン)60%、黒色顔料(カーボンブラック)2%、赤色顔料(有機)10%、黄色顔料28%の配合であった。他条件は実施例1と同様である。
【0062】
ここで、図5の表では、上述の各実験例の木質感の外観について、目視および木目周辺の色差と、耐光性と、総合評価とをまとめている。目視は、観察者の見た目の印象で判断し、木目が強調されているものを良としている。また、木目周辺の色差は、測色計にて木目とその近傍色差とを測定径2mmで測定し、ハンター色差ΔEにて確認した数値であり、ΔEの数値が大きいものほど木目が強調されて良であるとしている。さらに、耐光性は、フェードメーター(キセノンランプ)を48時間照射後、照射前後での退色色差をハンター色差ΔEにて確認した数値であり、ΔEの数値が小さいものほど退色が少なく良であるとしている。評価はそれぞれ記号◎(極めて良好)、○(良好)、△(やや不良)、×(不良)で表した。
【0063】
これによれば、目視の結果は、実施例1が一番良好で◎、次に、実施例2と、比較例1とが良好で○、比較例2がやや不良△で、比較例3が木目以外に濃色部あり不良×であった。
【0064】
また、木目周辺の色差は、目視の結果と同一で、実施例1(ΔE=6.1)が一番良好で◎、次に、実施例2(ΔE=4.5)と、比較例1(ΔE=5.1)とが良好で○、比較例2(ΔE=2.1)がやや不良で△、比較例3(ΔEは木目以外に濃色部あり測定しなかった)が不良×であった。
【0065】
さらに、耐光性は、比較例3(ΔE=2.0)が塗料Pが白色顔料主体で無いものであったために、一番良好で◎であり、順に実施例1(ΔE=2.3、○)、実施例2(ΔE=2.6、○)、比較例1(ΔE=4.6、×)、比較例2(ΔE=5.3、×)であった。
【0066】
その結果、総合評価が、実施例1、2が良好でO、であったのに対して、比較例の方は、比較例1、2、3が、不良×であった。このように、実施例では、実施例1、2のように高圧水蒸気処理を使い分けるとともに、濃度を下げた着色を行うことにより最終的な色調としてΔEで6以下の狙いの色調を得ることができることがわかる。
【0067】
このように、木材2から得られたスライス単板2sは細胞が緻密に配列された晩材部分2s1と、細胞が疎に配列された早材部分2s2とで出来ており、これらのコントラストによって木目を形成しており、高圧水蒸気による加熱を与えて熱着色処理を行なうと、耐光性の高い重合性着色物が生成して、木材2やスライス単板2sの耐光性も向上されるが、細胞が緻密な晩材部分2s1は疎な早材部分2s2に比べてより濃く着色されるので、木目が強調される。
【0068】
本実施形態の木質表面化粧材2kの着色方法Sによれば、高圧水蒸気による加熱処理を用いて木材2を着色する際、木材2を、芯の部分が110℃〜150℃になるまで高圧水蒸気による加熱を行い、木材2の内部に耐光性の高い重合性着色物を多量に生成させているので、木目が現れ難い樹木にあっても、熱着色後にスライスして、スライス単板2sを作成したときに表面の木目が消えずに天然木の良さが活かせた着色が出来る。
【0069】
高圧水蒸気による熱処理は、110℃以下の処理ではヘミセルロースが十分熱分解できず、また生成物の重合も不十分で耐光性能向上が見られない。また、150℃以上になるとヘミセルルロ一スの分解が進みすぎ、強度低下を起こす。いずれの場合でも芯の部分が処理温度になるまで高圧水蒸気による熱処理を続けることが好ましい。
【0070】
また、熱着色後は、熱着色処理後の色調を阻害しない程度の低濃度の塗料Pを塗布して、仕上げ処理を行っているので、処理が簡単で、かつ、熱着色処理後の色調を阻害せずに耐光性を図ることができる。
【0071】
また、特に、従来、ワイピング生地着色など、化粧表面に存在する木材道管の凹部を利用した生地着色では、木材らしさを表現することが困難であった散孔材においても、着色が濃くなって、木目が解り難くなる程に濃度の上がった着色で仕上がることがなく、樹種の木目が消えずに天然木の良さを生かした仕上りとなる。
【0072】
また、着色の濃度を下げても光や熱で変色することが少なく、施工後に問題となることも少ない。
【0073】
上述した実施の形態は本発明の好ましい具体例を例示したものに過ぎず、本発明は上述した実施の形態に限定されない。
【0074】
例えば、本発明の利用分野は木質化粧表面を持つ商品ならいずれでも構わない。内装材、家具材、また建具やエクステリア、家電表面や日用雑貨等が考えられるなど、種々の変更が可能である。
【0075】
保持手段は、図示の台座3のような、構成に限定されない。図6は、保持手段としての金属カゴ25に木材2を拘束させる構成を示す説明図である。図6では、金属カゴ25の重量によって木材2の浮きを防止しながら木材2を水没させて冷却するように構成されている。図6の処理装置21において、金属カゴ25は、網カゴ25aとカゴ台25bとを備え、網カゴ25aの上部を開いて積層した複数の木材2を金属カゴ25内に隙間なく収納できるようになっている。このように、処理装置21においては、スペーサー7aを介して積層した複数の木材2を金属カゴ25に詰めて高圧蒸気処理するとともに、この金属カゴ25の重量によって木材2の浮きを防止しながら木材2を水没させて冷却するように構成されている。
【0076】
なお、金属カゴ25は、高圧蒸気釜4の底面からレール6によって支持された状態で高圧蒸気釜24の内部で車輪27により移動して高圧蒸気釜24から出入りできるようになっている。
【0077】
このように、木材2を拘止した状態に保持することができる構造であれば、種々の保持手段が採用可能である。
【0078】
高圧蒸気釜4の材質もステンレスに限定されない。木材2の金属汚染を考えると、圧力容器はステンレスが好ましいが、その他の材料が採用可能である。
【0079】
また、水の加圧手段は特に限定しないが、高圧水タンクや高圧ポンプの使用が、好ましい。
【0080】
また、本実施形態では、熱処理すべき木材2として、ブナ(散孔材)のフリッチ厚み30mm×幅120mm×長さ450mm生材(含水率56〜64%)を用いたが、このようなフリッチ材に限定されない。種々の木材が採用可能であるし、サイズも種々の設計変更が可能である。集成、スライス条件なども種々の設計変更が可能である。
【0081】
また、本実施形態では、塗料Pとして、白色顔料(酸化チタン)92%、黒色顔料(カーボンブラック〉0.5%、赤色顔料(有機)2%、黄色顔料(有機)5.5%の配合のものを希釈剤にて5%(希釈剤に対する顔料の比率)に希釈し、この顔料に粘度調整剤、界面活性剤を添加して調整したが、条件により種々の設計変更が可能である。
【0082】
また、塗料Pの塗布方法は、原理的には塗布量のかせげるスポンジロールで塗布し、金属リバースロールで掻き取る工程が効果的であるが、塗料Pの塗布方法はスプレー、ロールコ一ター、フローコ一ター、ナイフコータ一等いずれでも構わないなど、種々の設計変更が可能である。また、塗布量や、塗布条件、仕上げ塗装なども、種々の設計変更が可能である。
【0083】
ただし、リバース掻きとりも含めてスポンジコーターの場合は、希釈剤に対する顔料の比率は10%以下が好ましい。また、ゴムおよび金属のナチュラルコーターの場合は、希釈剤に対する顔料の比率は25%以下が好ましい。
【0084】
その他、本発明の特許請求の範囲内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0085】
P 塗料
2 木材
2k 木質表面化粧材
2s スライス単板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材を、芯の部分が110℃〜150℃になるまで高圧水蒸気による加熱を行って、木材内部に耐光性の高い重合性着色物を生成させることで熱着色処理を行い、その後、熱着色処理された木材をスライスしてスライス単板を作製し、該スライス単板の表面に、熱着色処理後の色調を阻害しない程度の低濃度の塗料を塗布することを特徴とする木質表面化粧材の着色方法。
【請求項2】
請求項1に記載の木質表面化粧材の着色方法において、
上記木材としては、散孔材が用いられることを特徴とする木質表面化粧材の着色方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−25591(P2011−25591A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175384(P2009−175384)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】