説明

木造建築における枠体修正具

【課題】 従来の木造家屋の建設工法では木製の扉枠体や窓枠体の変形に対して多数の楔形の部材を打ち込んで真直ぐになるように修正していたが楔形の部材は打ち込んだまま回収されないため多数の楔形の部材を打ち込むことは建築コストが高くなる原因の一つとなっていた。本願発明は木造家屋における木製の枠体の変形を修正するための操作が簡単で安価な枠体の修正具を提供するものである。
【解決手段】 少なくとも一面に平坦面を有する長尺体からなる断面が方形状の基体と該基体に湿度等の環境変化により変形した枠体を挟持して押圧するための押圧具を固定または取り外し可能に設けるようにした枠体の修正具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
木造家屋の建設工法において一般的に行われている方法は、最初に柱、梁、屋根、床等の基礎部分を施工した後、予め成形されている襖、ドアー、窓用サッシの周囲を木製の枠体で固定し該枠体の周囲をさらに芯材や外装材等の壁材で施工することが行われている。
ところが、木製の枠体は湿度等の環境変化により反り等の変形が生じて枠体と壁材の接合部分に隙間が発生する。本願発明は襖、ドアー、窓用サッシの周囲を木製の枠体で固定した後に該枠体の周囲をさらに芯材および外装材等の壁材を施工するにおいて、湿度等の環境変化により発生する枠体の変形を修正するための器具に関する。
【背景技術】
【0002】
木造家屋では湿度等の環境変化により変形する材木を用いて柱、梁、壁、床および枠体等が成形されている。特に枠体は柱や梁に用いる材木に比べて小径の材木が使用されているため変形幅が大きい。この枠体の変形を抑制するために種々の工夫が凝らされている。例えば、壁パネルに外装材を取り付ける前に化粧部材を取り付ける部位の少なくとも一部に該外装材の側縁部の位置を決める位置出し冶具を取り付けて外装材を取り付けた後に取り外す方法(特許文献1)、壁部を構築した後に壁部の傾きを計測する傾き計測冶具を用いて壁部の垂直方向に対する傾きを計測しこの計測結果に基づいて壁部の傾きを調整することにより壁部を正確に垂直に構築する(特許文献2)。
【0003】
また、設置体と基礎面の相対面にあてがわれる建築用スペーサ用具であって、水平面とその水平面と相対側に位置する傾斜面と、細長な楔形を呈する板厚面を有するとともに、少なくとも該傾斜面を長手方向に向かう直線状の凹凸によるギザギザ面として形成した長尺なスペーサからなり隙間の寸法に基づいてスペーサ板を適宜選定される板厚箇所で複数に分割し、このうち少なくとも二枚を板厚の大小方向逆向きに傾斜面で相対させて凹凸で噛合させる用具(特許文献3)、さらに筒状体と貫通孔を有する調整部材と調整部材の先端側に回動自在に取り付けられた板バネとを備えたものであって、調整部材に設けたドライバー係合部に工具ドライバーを係合させこの工具ドライバーを介して調整部材を枠体の穿設孔に嵌挿させた筒状体に螺合させて筒状体および調整部材を板バネの弾力性により付勢して枠体に支持した建築物に枠体を取り付ける装置(特許文献4)等がある。
【特許文献1】:特開2002−201740号公報
【特許文献2】:特開2001− 40760号公報
【特許文献3】:特開平10− 159258号公報
【特許文献4】:特開2000−179237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
木造家屋では襖、ドアー、窓用サッシ等の外周は木製の枠体で囲まれているが、この枠体の材質は材木であり湿度の変化により形状が変形してしまう。従来は変形した枠体を修正するために施工時に枠体と壁材の間に多数の楔形の部材を打ち込み枠体の垂直性を確認した上で固定具で固定されていたが多数の楔形の部材は打ち込んだままで回収されないため従来の楔形の部材を打ち込む方法はコストが高くなる要因になっている。
本願発明は木造家屋において、枠体の垂直性および水平性を容易に設定できるとともに
襖、ドアー、窓用サッシ等を固定する枠体の変形を簡単に修正することができる枠体の修正具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明は上記の課題を解決するものとして、第1には、木造家屋における襖、ドアー、窓用サッシを固定する枠体の垂直性や反り等による変形を真直ぐにするために、少なくとも一面が平坦である長尺の基体と該基体の平坦面に変形した枠体を押圧して枠体の変形を修正するための押圧具が基体に係合されている枠体の修正具を提供する。
第2には、少なくとも一面が平坦である長尺の基体の断面が方形の充実体または方形の中空体である枠体の修正具を提供する。
第3には、基体の平坦面に枠体を押圧するための押圧具が固着されているとともに押圧具のアーム部が折り曲げ可能である枠体の修正具を提供する。
第4には、枠体を押圧するための押圧具が基体から取り外せるように少なくとも一面に平坦面を有する長尺に押圧具が着脱自在に係合されている上記の枠体の修正具を提供する。
第5には、少なくとも一面に平坦面を有する長尺の基体が折り曲げ可能である上記の枠体の修正具を提供する。
【発明の効果】
【0006】
上記第1の発明によれば、湿度の変化によって変形した木製の扉枠体や窓枠体等の変形を少なくとも一面が平坦である長尺の基体とこの基体に係合した押圧具で枠体を挟持して押圧することにより平坦な板状体に修正できる。また、一面が平坦な硬質材料を用いることにより枠体の垂直性や水平性を容易に判断することができる。
上記第2の発明によれば、基体の断面を充実体または中空体の方形にすることにより木造家屋の建築現場に対応した枠体の修正具を提供することができる。
上記第3の発明によれば、基体の平坦面に枠体を押圧するための押圧具が基材に固着されているとともに押圧具のアーム部が折り曲げ可能であることにより枠体の修正具を使用するに際して押圧具を取り付けたり取り外したりする必要がない。
上記第4の発明によれば、基体に押圧具を着脱自在に取り付けができることにより該基体と押圧具を別々に搬送することができる。
上記第5の発明によれば、基体の長手方向に折り曲げ可能であることによりコンパクトにして搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
日本の木造家屋の多くは襖、ドアー、窓サッシ等の周囲を固定するための枠体は材木で製造されているがこの枠体は金属やセメントとは異なり吸湿等の環境変化によって変形して壁材との間に隙間が生じる。この枠体と壁材の隙間を修正するために従来では「墨壷」と呼ばれる道具を用いて枠体が傾斜したり変形したりしていないかどうかを調べて、もし枠体が傾斜していたり変形していたりする場合には隙間に楔形の部材を打ち込んで枠体の変形を強制的に修正し、釘を打ち付けて固定する施工法が行われている。図5は従来の工法を用いて変形した枠体(21)と壁材(22)との間にできた隙間(16)に楔形の部材(17)を打ち込んで枠体(21)を強制的に修正している態様を示した斜視図である。また、図6は枠体を垂直に、且つ平坦に修正した状態で枠体(21)と壁材(22)にL字型の固定具(18)を用いて固定した状態を示した断面図である。なおL字型の固定具(18)は直角に交わった部位の固定具として使用するものであり、L字型の金属板に楕円形の穴(19)と複数の円形の穴(20)が並列に設けてある。このL字型の固定具(18)の使用法としては、先ず楕円形の穴(19)に微調整できるように釘を打ち付けて枠体(21)を緩く固定する、そして枠体(21)が垂直方向および平坦に正確に修正された状態で円形の穴(20)に釘を打ち付けて強固に固定するものである。
【0008】
図6の断面図に示されているように枠体(21)と壁材(22)との隙間(16)に多数の楔形の部材(17)を打ち込むことにより変形された枠体(21)は強制的に修正されるとともに垂直方向に正確に位置決めされることになる。しかしながら、多数の楔形の部材(17)を打ち込んで枠体(21)の変形を強制的に修正する従来の施工法では楔形の部材(17)は打ち込んで固定したまま回収されないため建設コストが高い原因の一つとなっている。本願発明はこのような建設コストが高い従来の課題を解決するものであり、変形した枠体を少なくとも長手方向の一面が平坦である長尺の基体と押圧具で挟持して押圧することにより基材の平坦な面に沿わせて枠体の変形を修正するとともに枠体を平坦面を有する基体に沿わせて正確に垂直に設けることができるものである。
本願発明の枠体の修正具の詳細を図1〜図4に従って以下に説明する。
【0009】
図1は本願発明の典型的な枠体の修正具の態様を模式的に示したものであるが本願発明の修正具の構造は平坦面(2)を有する基体(1)と該基体(1)の側面または基体の平坦面の反対面に押圧具(3)が結合された構造を有している。なお、図1では本願発明の修正具の構造を分かり易く説明するために基体(1)に押圧具(3)が2個だけ設けられたものが示されているが実際の修正具では基体(1)に多数の押圧具(3)が設けられている。本願発明で用いられる基体(1)の材質は軽量で硬質な材料であれば特に限定されないが、例えばアルミナやステンレス等の軽量金属で成形されていることが好ましい。
なお、本願発明における長尺の基体の長尺とは少なくとも枠体の長さの半分以上であることが好ましいが長さが特定されているわけではない。また、本願発明における少なくとも一面が平坦とは、一面全体が平坦であるものだけを意味するのではなく、例えば、一面に円形、楕円形、方形、星型等の窪みがあるような場合や長手方向にスリットや溝を有するような場合であっても押圧することにより変形した枠体が真直ぐに修正できるものであれば一面が平坦に包含される。本願発明における押圧具(3)の使用態様としては、図1の上方に示されているような押圧ハンドル(7)を緩めて変形した枠体(21)を装填した後、該枠体(21)を押圧してもよいが、図1の下方に示されているような押圧具(3)のアーム(4)の途中に屈曲部(5)を設けて変形した枠体(21)を容易に挟持および押圧できるような構造であってもよい。
【0010】
図2は本願発明の典型的な修正具を用いて変形した枠体(21)を修正して固定した状態を示したものである。即ち、基体(1)の平坦面(2)と押圧具(3)の圧接部(6)の間に湿度等の環境変化により変形した襖、ドアー、窓用サッシを固定する枠体(21)を挟持して押圧ハンドル(7)を回転して押圧することにより平坦な板状体に修正する。
そして、枠体(21)を強制的に垂直で平坦な板状体にした状態を保ちながら図6の従来例で示されているような楕円形の穴(19)と複数の円形の穴(20)が空いたL字型の固定具(18)を用いて固定する。また、図3は他の構造を有する修正具を示したものである。図3に記載されている修正具は押圧具(3)が基体(1)に対して取り外し可能に係合されている点において図1および図2に記載されている修正具と異なっている。
【0011】
この図3に記載されている修正具を詳しく説明すると基体(1)の断面形状は中空で方形体(8)を有しており、基体(1)の平坦面(2)の反対面(9)は押圧具(3)の端部(10)が係止できるように大きな径と小さい径からなる穴(11)が設けられている。
そして、大きな径の穴に押圧具(3)の端部(10)を装填すると押圧具(3)の端部(10)は自重で小さな径の部分に移行され取り外し可能な係止構造が形成される。
このように、基体(1)と押圧具(3)を取り外しができる構造にすることにより枠体を修正した後に押圧具(3)を簡単に取り外しができ基体(1)と押圧具(3)を別々に搬送することができるため便利である。なお、図3は本願発明の枠体の修正具は基体(1)を長手方向に対して屈曲部(12)を設ける態様をも示している。なお、図3では断面が中空の方形体(8)をした基体(1)について長手方向に対して屈曲部を設ける態様が示されているが図1や図2に示されている枠体の修正具も図3に示されている修正具と同様に長手方向に対して1回または2回以上屈曲できる構造を包含していることはいうまでもない。このように基体(1)を1回または2回以上屈曲できる構造にすることにより本願発明の修正具はさらにコンパクトにして搬送することが可能となる。
【0012】
図4は修正具の他の態様を示したものであるが、この図4に記載されている修正具が基本的な構造において図1〜図3に記載されている修正具と変わりがないことはいうまでもない。図4における板状アーム(13)、板状圧接部(14)、型締めハンドル(15)は図1〜図3に記載されているアーム(4)、圧接部(6)、押圧ハンドル(7)に相当する。図4では型締め構造の詳細は省略してあるがこの型締め構造は本出願前に汎用されている型締め構造を利用している。たとえば、型締めハンドル(15)を回転させることにより先端に設けてある歯車によって螺旋溝を有する棒体を回転させて板状圧接部(14)を圧接方向へ移動させる等がある。基体(1)にこのような図1〜図4に示す押圧具を複数個設けることにより変形した長尺の枠体(21)は垂直で平坦な板状体になる。なお、この図4に記載されている枠体(21)の修正具についても基体(1)の搬送が容易なように基体(1)に屈曲部(12)を設けることができることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本願発明の枠体の修正具の使用態様を示したものである。
【図2】枠体の変形を修正した後の状態を示したものである。
【図3】本願発明の他の枠体の修正具を示したものである。
【図4】本願発明のさらに異なった構造の枠体の修正具を示したものである。
【図5】従来工法の態様を示したものである。
【図6】従来工法で枠体の変形を修正した状態を示したものである。
【符号の説明】
【0014】
1 基体
2 基体の平坦面
3 押圧具
4 押圧具のアーム部
5 アームの屈曲部
6 圧接部
7 押圧ハンドル
8 中空の方形体
9 平坦面の反対面
10 押圧具の端部
11 大きな径と小さい径からなる係止穴
12 基体の屈曲部
13 板状アーム
14 板状圧接部
15 型締めハンドル
16 枠体と壁材の隙間
17 楔形の部材
18 L字型の固定具
19 楕円形の穴
20 円形の穴
21 枠体
22 壁材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一面が平坦である長尺の基体と該基体に枠体を押圧して枠体の変形を修正する押圧具が結合されていることを特徴とする枠体の修正具。
【請求項2】
少なくとも長手方向の一面が平坦である長尺の基体の断面が充実体または中空の方形体であることを特徴とする請求項1に記載の枠体の修正具。
【請求項3】
基体の平坦面に枠体を押圧するための押圧具が固着されているとともに押圧具のアーム部が屈曲可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の枠体の修正具。
【請求項4】
基体の平坦面に枠体を押圧するための押圧具が着脱自在に係止されていることを特徴とする請求項1または2に記載の枠体の修正具。
【請求項5】
少なくとも一面が平坦である長尺の基体が折り曲げ可能であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の枠体の修正具。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−43486(P2010−43486A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208858(P2008−208858)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(508247578)
【出願人】(508247567)
【Fターム(参考)】