説明

本質安全防爆渦流量計システム

【課題】 圧電素子を回路内に組み込んだ状態で衝撃を与えた際には、発生電圧を所定値以下に抑えて、本質安全防爆機器としての基準に適合した渦流量計を提供する。
【解決手段】 本発明は、圧電素子を有する渦検出器と、検出された渦信号に応じたパルス信号出力或いはアナログ電流出力に変換する危険場所に設置されている変換器とを備え、変換された出力信号に基づき流量値を表示する本質安全防爆渦流量計システムにおいて、一対の圧電素子検出線間に逆並列にダイオードを挿入することにより、圧電素子から、正負のいずれの方向に、所定値以上の電圧が発生しても変換器内部のキャパシタにはダイオードにてクランプされた電圧しか印加されないように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子により検出された渦信号に応じた出力や流量表示に変換する危険場所に設置されている変換器から構成される本質安全防爆渦流量計システムに関する。
【背景技術】
【0002】
爆発性ガスが存在するか、あるいは存在するおそれのある危険場所に設置される流量計は、本質安全防爆構造とすることが求められる。各種流量の流量計測を行う場合、爆発性ガスの流量計測も含まれる。流量計測には渦流量計が多用されている。周知のように、渦流量計は、流路中に、流路軸と直角に設けられた渦発生体から単位時間に流出するカルマン渦の数が所定Re(レイノルズ)数範囲で、流量に比例することを利用した推測形の流量計である。
【0003】
渦流量計の渦検出の方式の中には、渦検出器として、圧電素子を用いるものが知られている。図2は、従来の圧電素子を用いる一般的な渦流量計を例示する図である。この流量計システムは、圧電素子を有する渦検出器と、変換器と、受信器とからなり、通常、変換器は渦検出器に装着されて、危険場所に設置されている。受信器は、変換器と伝送ケーブルにより接続され、非危険場所に設置されている。
【0004】
なお渦流量計は、電池による駆動も可能であり、その場合、受信器にはつながらず危険場所での流量表示のみとなる。
【0005】
図3は、図2に示す変換器の一例を示す図である。この変換器は、渦信号と等しい周期のパルス信号を出力する回路であり、圧電素子からの渦信号は、アンプで増幅された後、シュミットトリガ回路からなる渦信号変換回路により渦信号と等しい周波数のパルス出力が得られる。このパルス出力は、出力回路(トランジスタ)に入力して流量パルスを出力する。
【0006】
図4は、変換器の別の例を示す図である。この変換器は、アナログ電流を出力する回路であり、圧電素子からの渦信号は、アンプで増幅された後、シュミットトリガ回路により渦信号に応じた周波数の高パルス列に変換される。このパルス列は、周波数/電圧変換回路(F/V)により、渦周波数に比例したアナログ電圧に変換される。この電圧が電圧/電流変換回路(V/I)により変換された電流出力は、出力回路(トランジスタ)より4〜20mAの電流として出力される。
【0007】
圧電素子を使用している渦検出器及び変換器を危険場所(現場)に設置する場合、本質安全防爆機器にしなければならないが、その防爆構造の要件の一つとして、圧電素子に所定の衝撃を与え、その時発生する電圧が防爆の検定の際、電気的なパラメータとして用いられる。その発生電圧は、圧電素子により大きさは様々であるが、数十ボルト〜数百ボルトまで大きくなるものがある。
【0008】
しかし、その発生電圧を基に本質安全防爆構造の検定性能試験が行われてしまうと、本質安全防爆構造となり得なくなってしまう恐れがある。従来、圧電素子への衝撃エネルギーを抑えるための手法として、圧電素子に機械的な保護を設けたり、機器(変換器)内部の電気回路のキャパシタの容量を下げたりしていた。しかし、機械的な保譲を設ける場合でも、感度の良い圧電素子に対してはあまり効果はなく、またキャパシタの容量を下げると、機器の性能に影響を及ぼすことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、係る問題を解決して、素子単体では、所定の衝撃を与えた時に発生する電圧が高電圧になる圧電素子であるとしても、このような圧電素子を回路内に組み込んだ状態で衝撃を与えた際には、発生電圧を所定値以下に抑えて、本質安全防爆機器としての基準に適合した渦流量計を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の本質安全防爆渦流量計システムは、圧電素子を有する渦検出器と、検出された渦信号に応じたパルス信号出力或いはアナログ電流出力に変換する危険場所に設置されている変換器、または電池駆動により、変換された信号に基づき流量値を表示する変換器から構成される。圧電素子の近傍において一対の圧電素子検出線間に逆並列にダイオードを挿入することにより、圧電素子から、正負のいずれの方向に、所定値以上の電圧が発生しても変換器内部へのキャパシタにはダイオードにてクランプされた電圧しか印加されないように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、圧電素子に所定の衝撃を与えた時に発生する電圧が高電圧になるとしても、このような圧電素子を回路内に組み込んだ状態では発生電圧を所定値以下に抑えて、本質安全防爆機器としての基準に適合した渦流量計を提供することができる。
【0012】
衝撃試験時、機器内部へのキャパシタにはダイオードにてクランプされた電圧しか印加されなくなるので、機械的な保護や容量を下げる必要は無くなる。これによって、圧電素子を使用した流量計であっても、その発生電圧の影響を無視して設計が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、例示に基づき本発明を説明する。図1は、本発明を具体化する渦流量計システムを例示する図である。この渦流量計システムは、圧電素子を有する渦検出器と、変換器と、受信器とから構成される。受信器は、変換器と伝送ケーブルにより接続され、非危険場所に設置されて、伝送されてきた信号に基づき流量値の表示を行う。渦検出器と変換器は、両者を別体に構成して、配線によって接続することもできるし、或いは、変換器を機構的に脱着可能に構成して、一体に組み立てた際に電気的にも接続されるそれ自体周知の構成とすることもできる。また、受信器は、変換器と一体に構成して、変換器設置場所において流量値を表示することも可能である。さらに変換器を電池駆動とし、伝送ケーブル無しとし現場で流量値の表示のみを行うことも可能である。
【0014】
渦検出器自体は周知であるが、渦発生体を備えて、例えば、この渦発生体内には、圧電素子が内蔵された方持ち梁状の振動管を持つセンサがあり、渦発生体の両端には、センサに交番差圧を導くための導圧孔が設けられている。カルマン渦の発生に伴って、渦発生体の圧力が交互(交番差圧)に変化する。この交番差圧は、センサに交番応力を与え、その応力が圧電素子の電荷変化となって検出される。
【0015】
図示の変換器は、渦検出器からの信号入力側に、複数のダイオードを逆並列に接続した点を除いて、通常の構成のものを用いることができる。例えば、図3を参照して説明したような、渦信号と等しい周期のパルス信号を出力する回路とか、図4を参照して説明したような、アナログ電流を出力する回路等のどのような変換回路も用いることができる。
【0016】
本質安全防爆等級の要求に応じるためには、圧電素子自体が、防爆等級の要求に応じたエネルギー以下のものを選択する第1の要求がある。図から見て変換器入力の左側は圧電素子の発生電圧になり、その圧電素子自体のエネルギー計算をまず行う必要がある。そして、そのエネルギーが防爆等級毎に応じた値以下であれば、圧電素子自体の点火の危険性はないものと判断される。
【0017】
次に、このような素子が選択されたとしても、回路に組み込まれた状態で、衝撃試験時の発生電圧を所定値以下にする第2の要求が求められる。変換器入力の右側の回路には電子回路上における複数のキャパシタが存在しているが、それらに充電すると仮定される電圧は所定値以内に抑えなければならない。
【0018】
例示の変換器は、圧電素子の近傍において一対の圧電素子検出線間に逆並列にダイオード(クランプダイオード)を挿入することにより、上記の第2の要求に応えるものである。逆並列接続とは、一方の方向のダイオードと、これとは逆方向のダイオードを並列に接続したものである。さらに、これら両方向のダイオード自体をそれぞれ、複数個並列に接続する。並列に接続する素子数は、想定される電流を流すのに十分な容量となるだけ接続する。ダイオードの順方向電圧は周知の通りであり、約0.7V以上には上昇しない。逆並列に接続することによって、正負いずれの方向の電圧も、0.7Vに抑えることができる。これによって、0.7V以下の渦信号(電圧信号)は、誤り無く次段の回路に伝達される一方、これを超える電圧は抑制される。衝撃試験時、圧電素子から、正負のいずれの方向に、どのような値の電圧が発生しても機器内部へのキャパシタにはダイオードにてクランプされた電圧しか印加されなくなるので、機械的な保護や容量を下げる必要はなくなる。これによって、圧電素子の発生電圧はダイオードにより必ず抑制されるので、内部回路電圧との関係は以下のようになる為、内部回路電圧のみ考慮した設計にすればよい。
【0019】
圧電素子発生電圧→ダイオードの順方向電圧≦機器内部回路電源電圧
それにより、圧電素子を使用した流量計であっても、その発生電圧の影響を無視して設計が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を具体化する渦流量計システムを例示する図である。
【図2】従来の圧電素子を用いる一般的な渦流量計を例示する図である。
【図3】図2に示す変換器の一例を示す図である。
【図4】変換器の別の例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を有する渦検出器と、検出された渦信号に応じたパルス信号出力或いはアナログ電流出力に変換する危険場所に設置されている変換器とを備え、変換された出力信号に基づき流量値を表示する本質安全防爆渦流量計システムにおいて、
一対の圧電素子検出線間に逆並列にダイオードを挿入することにより、圧電素子から、正負のいずれの方向に、所定値以上の電圧が発生しても変換器内部のキャパシタにはダイオードにてクランプされた電圧しか印加されないように構成したことから成る本質安全防爆渦流量計システム。
【請求項2】
前記ダイオードは、前記変換器の入力側に接続されている請求項1に記載の本質安全防爆渦流量計システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−349436(P2006−349436A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−174542(P2005−174542)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(000103574)株式会社オーバル (82)