説明

材料の穿孔を非破壊的に分析する方法および装置

材料に小さい穴を作製し且つこれを検査する方法を開示する。同方法は、材料および材料に形成された穴に光を当てる段階、ならびに、材料の穴を通過した光を検出器で収集する段階を含む。同方法は、穴の特性について光を分析する段階、および、この検出された特性に基づいて処理を修正する段階をさらに含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、概して、非破壊分析の方法に関する。より具体的には、本発明は、薄膜などの材料に正確に設けられた小さい穴のアレイを迅速且つ非破壊的に分析するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
さまざまな技術分野において、規則的な間隔を有する非常に小さい穴のアレイが設けられた薄いシート材料の利用が望ましいことがある。例えばそのような材料は、種々の電子部品の製造に使用され得る。1つまたは複数の穴を有する薄いシートはまた、インクジェットプリンタまたは燃料噴射器の部品の形成にも使用され得る。そのような細孔アレイのより直接的な用途としてはフィルタがある。細孔サイズおよび細孔密度は、フィルタの幅広い用途に応じて調整可能である。または、薬剤を含む液体調合物をそのような多細孔性部品に通過させて、吸入用のエアロゾルを作ることもできる。
【0003】
患者に薬剤を投与する方法として最も優しく且つ受け容れられている方法の1つが、エアロゾルによるものである。エアロゾルによる治療法は、調合物(例えば薬剤調合物または診断薬調合物)のエアロゾル化と、患者への投与(例えば吸入による投与)とにより実現してもよい。エアロゾルは、肺組織の局所治療に用いてもよく、且つ/または、薬剤を全身に送達するため循環系に吸収させてもよい。調合物が診断薬を含む場合は、例えば、肺機能不全に関連する身体状態および疾患の診断に調合物を用いてもよい。
【0004】
一般的に、呼吸器系に送達するためのエアロゾル粒子は、直径が12ミクロン以下である必要がある。しかし、好ましい粒径は標的部位によって異なる(例えば、気管支(bronchi)、気管支(bronchia)、細気管支、肺胞、または循環系を標的とした送達など)。例えば、肺の局所治療は、直径1.0〜12.0ミクロンの粒子で行うことができる。全身治療を有効に行うためには、直径がさらに小さい粒子(一般的に0.5〜6.0ミクロン)が必要であるが、眼科治療は直径15ミクロン以上、一般的には15〜100ミクロンの粒子で有効に行うことができる。
【0005】
米国特許第5,544,646号、同第5,709,202号、同第5,497,763号、同第5,544,646号、同第5,718,222号、同第5,660,166号、同第5,823,178号、および同第5,829,435号には、薬物送達に適したエアロゾルの生成に有用な装置および方法が記載されている。これらの装置は、例えばレーザーアブレーションなどにより形成され得るミクロン規模の細孔を有するノズルアレイに調合物を通過させることによって、細かく均一なエアロゾルを生成する。
【0006】
そのように小さな形体(feature)を有する細孔アレイは、製造が困難であり且つ費用がかかる。さらに(1)電子部品の製造、(2)フィルタ材料、(3)インクジェットプリンタ、(4)燃料噴射器、(5)治療上必要な用量が常に患者に投与されるよう、患者に治療用薬剤を送達するためのエアロゾルの生成、という用途に用いる場合、細孔は高い品質および均一性を有している必要がある。したがって、細孔サイズおよび細孔密度など種々のパラメータを決定するため寸法の小さい多細孔性試料を迅速に作製および分析でき、且つ、品質および均一性の高い細孔を有する細孔アレイを作製するためそれらのパラメータを調整できる能力を有する、作製方法および検査方法が求められている。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
小さい穴を有する薄膜(細孔アレイ)を、(1)シートの細孔を通るように光を当てる段階、(2)細孔を通過した光を検出する段階、ならびに(3)シートが検査に「合格」するか否かを細孔サイズおよび細孔密度などの基準に基づいて迅速に判定することを可能にする様式で検出光を分析する段階により、検出し、又は、非破壊的に分析する。検査に使用する装置は、(1)光源、(2)光検出器、および(3)検出した光を分析する手段を含んでいる必要がある。システムの全体的な精度を向上させるための光フィルタおよびレンズ、ならびにシステムの全体的な効率を向上させるためシートを定位置におよび定位置から移動させるための手段など、他の部品も存在していてよく、且つ、存在するのが一般的である。
【0008】
本発明の検査システムは、薄膜中の微細孔の有無について非破壊検査を行い、細孔のサイズおよび形状、細孔密度、ならびに細孔アレイの全体的な許容性を含む細孔アレイの特性を決定する。同システムは、シート内の穴を通して伝えられる光を検出する能力、および、検出した光の情報を利用して、光のレベルと、穴の有無、位置、サイズ、および形状との関係を確立できる能力を含む。すなわち、各々の穴形体から検出された光のレベルは、個々の細孔のサイズまたは形状と関連付けることができる。さらに、シート内の細孔のアレイ全体に起因する光のレベルは、穴の全体的な平均サイズおよび/または形状と関連付けることができる。シート内の細孔が要求基準を満たしていない場合は、与えられた閾値レベルで、検査中の細孔アレイが所望のサイズおよび/または形状の穴を十分な数だけ有していないことを示すアラームをトリガしてもよい。そのような評価は、好ましくは、細孔アレイの全体的な読み取り結果に対して行われる。より具体的には、光を細孔アレイに当て、穴から検出器へと通過させる。望ましい光量が検出器で検出されない場合は、形成された穴の数が不十分であるか、穴のサイズもしくは形状が不適切であるか、またはこれらの何らかの組合せである。さらに、検出される光が多すぎる場合は、穴が大きすぎるかまたは望ましくない形状であるか、または、シートに存在する穴の数が多すぎる。検出された光量が多すぎるかまたは少なすぎると、検査中の細孔アレイを不合格にするアラームがトリガされる。
【0009】
本発明のシステムは種々の異なる細孔アレイと関連させて使用できる。細孔は、サイズまたは形状がさまざまに異なっていてもよく、且つ、さまざまに異なるパターンおよび密度でシートに存在していてもよい。パターンおよび細孔サイズが異なるこれらの異なるシートは、同じ電荷結合光検出素子で検出してもよく、且つ、同じマイクロプロセッサユニットで処理してもよい。必要であれば、本発明のシステムは、検査システムの同じ基本部品の細孔アレイで所望の結果を得るため、ミラー、偏菱形プリズム、光学くさび、またはこれらの組合せなどを含む種々の異なる部品を利用してもよい。
【0010】
本発明の検査システムは、任意の生産システムで生産された細孔アレイの全て検査に用いてもよく、または、それら細孔アレイの特定の割合の無作為抽出検査に使用してもよい。さらに、シートが、細孔アレイを含む部品を生産するための組立工程に使用される前の任意のポイントで検査されるよう、本発明のシステムは、生産システムの中に組み込んでもよい。この様式で使用する場合は、細孔アレイを検査のためにシステムから取り出す必要がない。シートの細孔を通して伝えられる光を検出し、細孔アレイを以後の製造工程に使用するか否かの合否トリガとして用いてもよい。
【0011】
本発明の検査システムは、細孔アレイを構成する穴を形成するための作製システムの一部であってもよく、またはそのような作製システムと併用してもよい。作製システムは、エネルギー源、および、エネルギー源からのエネルギーを穿孔対象のシート上の1つまたは複数の位置に誘導するためのエネルギー輸送体を含む。集光レーザー光などであるエネルギー源は、シートに細孔を形成するのに使用する。細孔は、連続的に(1度に1つ)形成しても、もしくは同時に(1度に複数)形成してもよく、またはこれらの組合せ、すなわち、複数の穴からなるアレイの部分集合を連続的に作製することによって細孔アレイを作製してもよい。穴の形成に使用するものと同じ光を用いて、リアルタイムで前記の検査を行ってもよい。レーザーでシートを穿孔する際に、レーザー(またはその他の光源)からの光が検出器に到達しはじめる。より具体的には、穴の形成に使用されるレーザー光は、、検出器で検出され、かつ、穴が作製されたか、適切なサイズで作製されたか、正しい形状で作製されたか、細孔密度が十分か、または細孔アレイのその他の特性の判定に用いられてもよい。光は、1度に1つの穴を通して伝えられてもよく、複数の穴に集合体として通過させてもよく、または複数の穴に個々に通過させてもよい。
【0012】
加えて、本発明は、シートに送達されるエネルギーの量もしくは強さを制御するため、および/または、細孔アレイに送達されるエネルギーの方向もしくは角度を制御するための、エネルギーのフィードバック機構または制御機構をさらに含んでいてもよい。フィードバック制御機構は、検出器の出力を利用して、検出された光のいくつかの特性(例えば、シートに形成された穴のサイズ、形状、または数を示す、最小または最大のエネルギーレベルなど)が閾値レベルに到達しているか否かを判定する。例えば、シートに穴を形成するために用いたレーザー光を検出する場合は、特定の量(例えば閾値レベル)の光が検出されたら、穴が十分大きいかまたは所望の細孔サイズに達したという信号を出し、これにより、穴が大きくなりすぎないようレーザー光を停止させるという信号を送ってもよい。または、1つまたは複数の穴を通して伝えられる光のパラメータの測定結果に基づいて、光の強度、量、パルス周波数、パルス幅、偏光、波長、もしくはその他の特性を修正してもよい。レーザー光は、分析対象のパワーを通過させる穴とは異なる穴のセットを作製するように修正してもよい。例えば、穴の部分集合を通して伝えられる光に基づいて、穴のアレイに送達するパワーを修正してもよい。この様式により、非常に小さいサイズの細孔を繰返し且つ正確にシートに作製することが可能となる。この方法において、本発明の検出/検査部品は、制御されたレーザーと統合される。したがって、本発明のこの方法により、分析と製造とは、完全に同時に、且つ、互いを補足する様式で実施される。この方法は、好ましくは、一度に2つ、3つ、または複数の穴を同時に穿孔および分析するように実施される。
【0013】
本発明は、ミクロンレベルまたはミクロン以下レベルの小ささの穴または通し形体の試料を高速に検査する。この方法は、以前に製造された試料の検査に用いてもよく、または、そのような形体を含む試料の製造と検査を同時に行えるようにするため製造工程に組み込んでもよい。本発明の1つの局面において、検査対象の画像のサイズを小さくするため撮像レンズを使用してもよい。これにより、検査がより迅速になり、CCD検出器のサイズが小さくてすみ、且つ、画像が小さくなるため分析時間も短くてすむ。
【0014】
本発明の1つの局面は、細孔アレイを分析する方法であって、細孔アレイに光を誘導する段階、シートの細孔を通過した光を検出する段階、および、シートの細孔が所望の基準を満たすか否かを判定できるような様式で検出光を分析する段階を含む方法である。
【0015】
本発明の別の局面は、細孔アレイに光を誘導する段階、シートから反射した光を検出する段階、および、シートの細孔が所望の基準を満たすか否かを判定できるような様式で反射光を分析する段階によって、細孔アレイを分析する方法である。
【0016】
本発明の別の局面は、分析システムであって、細孔アレイに光を誘導する手段、シートから反射した光および/またはシートの細孔を通過した光を検出する手段、ならびに、シートの細孔が所望の基準を満たすか否かを判定するため、シートから反射した光および/またはシートの細孔を通過した光を分析する手段を含む分析システムである。
【0017】
本発明の好ましい局面は、細孔アレイを次々に分析用の位置に移動させる手段、またはシートを次々に連続的に分析するためシートに対してシステムを移動させる手段を含む。
【0018】
本発明の別の局面は、細孔の数およびサイズを決定するための検査が済んだレーザーアブレーション細孔を含むフィルム(例えばポリイミドフィルム)を含む。
【0019】
本発明のさらに別の局面において、使用される光源は、検査対象試料の形体を通じて選択的に伝えられる紫外光を生成する。
【0020】
本発明のさらに別の局面においては、1つまたは複数の細孔の形成に使用される光が検出され、且つ、検出された1つまたは複数のパラメータに基づいて、光の1つまたは複数のパラメータが修正される。
【0021】
本発明は、さらなる局面において、前記の検査方法に合格したエアロゾル化ノズルを含むエアロゾル化コンテナを作製するための方法を提供する。
【0022】
本発明は、さらなる局面において、そのようなコンテナを含むエアロゾル化装置を作製する方法も提供する。
【0023】
本発明の利点の1つは、細孔アレイを迅速、正確、且つ効率的に検査できることである。本発明の別の利点は、形成される細孔のサイズおよび形状を非常に厳密に制御でき、且つ、より小さな形体を実現でき、これにより、より性能のすぐれた最終産物が得られることである。
【0024】
本発明の特徴の1つは、さまざまな種類の光源を使用できること、および、さまざまな種類のフィルタを使用し、これを検査中のシートに対してさまざまな位置に配置できることである。
【0025】
本発明の別の特徴は、シートを光源および検出器に対して移動させてもよいこと、または、光源および/もしくは検出器をシートに対して移動させてもよいことである。
【0026】
本発明のこれらおよび他の局面、目的、利点、および特徴は、本開示を読むことおよび本開示の一部を構成する図面を参照することにより当業者に明らかになると思われる。
【0027】
図面の簡単な説明
本発明は、以下の詳細な説明を添付の図面とともに読むことによって最もよく理解される。強調されるべき点として、慣習に従い、図面のさまざまな特徴は縮尺通りではなく、むしろ、さまざまな特徴の寸法は、分かりやすくするため、任意に拡大または縮小されている。含まれる図面は下記「図面の簡単な説明」に記載の通りである。
【0028】
好ましい態様の説明
穴を検出および分析するための本発明の方法およびシステムを開示する前に、説明する特定の方法および装置は無論異なり得るものであり、したがって本発明がそれら特定の方法および装置に限定されるわけではないことが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明する目的にのみ使用されるものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定する意図はないことも併せて理解されるべきである。
【0029】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる名詞の単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、特に断りがない限り複数形も含む。したがって、例えば、「1つの調合物(a formulation)」という表現には異なる調合物の混合物が含まれ、「1つの分析手段(an analyzing means)」という表現には1つまたは複数のそのような手段が含まれ、「その方法(the method)」または「その段階(the step)」という表現には当業者に公知の同等の段階および方法が含まれる。他の表現も同様である。
【0030】
値の範囲が示されている場合は、その範囲の上限と下限との間に存在する各値も具体的に開示されることが理解されるべきである。記述された任意の値または記述された範囲中に存在する任意の値と、他の任意の値またはその記述された範囲中に存在する他の任意の値との間に入る、より小さい各範囲も、本発明に含まれる。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立にその範囲に包含または除外されてもよい。そして、そのより小さい範囲に上限および下限のいずれか一方もしくは両方が含まれるかまたはいずれも含まれないような各範囲も本発明に含まれ、記述された範囲内において具体的に除外される任意の限界の対象となる。記述された範囲が1つまたは両方の限界を含む場合は、その含まれる限界の一方または両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0031】
特に断りがない限り、本明細書中の技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する分野の当業者に一般的に理解されているのと同じ意味を持つ。本発明の実施または検証においては本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法および物質が使用可能であるが、以下に好ましい方法および物質を説明する。本明細書中に挙げるすべての刊行物は、その文献の引用により示される具体的な情報を説明および開示するため、参照として本明細書に組み入れられる。
【0032】
上記の刊行物は、本発明の出願日より前の開示の目的でのみ提供される。本明細書に記載の事項のいずれも、先行発明によるそのような開示に先行する権利を本発明が有さないことの承認として解釈されるべきでない。
【0033】
定義
本明細書において、「多孔度」という用語は、シート、ノズル、フィルタ、または他の材料において開空間(例えば、細孔、穴、チャネル、または他の開口部)で構成される部分の表面積のパーセンテージを意味する。したがって、多孔度パーセントは、開空間の全面積を材料の面積で割るものとして定義され、パーセンテージ(100をかける)として表記される。多孔度が大きいこと(例えば、多孔度が約50%より大きいこと)は、(例えばエアロゾル化ノズル、燃料噴射器、またはフィルタなど、液体が細孔アレイを通過するような用途において)単位面積あたりの流量が大きいことおよび流れ抵抗が小さいことと関連する。一般的に、細孔アレイの多孔度は約10%未満であり、約10-5%〜約10%までの間の値を取りうる。本発明の細孔アレイの多孔度は、非限定的に任意の多孔度を有していてよい。さらに、細孔アレイは、任意の数(1を含む)の細孔、任意の細孔密度、任意の細孔形状、または任意の細孔サイズを有していてよい。例えば、シートは、サイズがかなりの範囲にわたっていてもよい1つの穴を有していてもよく、または、各細孔のサイズが同じであってもよくもしくは各細孔のサイズが異なり且つサイズがかなりの範囲にわたっていてもよい数千個の細孔を有していてもよい。多くの用途において、材料の面積は厳密に規定されない。すなわち、細孔はシートの小さな一部にのみ存在していてもよい。この場合、多孔度は、シートの全領域ではなく、細孔の存在により規定される領域の多孔度を意味する。
【0034】
本明細書において、「シート」という用語は、本発明の工程を用いて1つまたは複数の細孔が検査または形成される任意の材料を含む。特定の態様において、シートは、ポリマー材料のウェブの一部、または、ポリマー材料および/もしくは金属などその他の材料の積層物として示される。シート材料は疎水性であってもよく、例えばポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、およびポリエステルなどの材料を含んでいてもよい。その他の有用な材料としては、金属、ガラス、またはセラミックなど、非ポリマー性の比較的硬質の材料がある。検査用途向けのシートは、金属またはその他の好適な材料の薄膜にレーザードリルまたは異方性エッチングなど任意の好適な方法を行うことにより形成した細孔を有していてもよい。例えばエアロゾル薬物送達用などにノズルとして使用する場合、シートは、調合物を細孔に通過させる際に最大約40バール、好ましくは最大約50バールまでの力を印加してもインタクトに保たれるよう(破断しないよう)、十分な構造的完全性を有することが好ましい。好ましい態様において、シートは、ポリマー材料のウェブの一部、または、ポリマー材料および/もしくは金属などその他の材料の積層物として示される。しかし、シートは一般的に、平面形状に限定されるわけではない。当業者には、本発明が、多数の幾何学形状、燃料噴射システムに使用される金属部品、またはその他多数の用途に適用できることが明らかであると思われる。
【0035】
本明細書において、「ピッチ」という用語は、概して、検査および/または細孔アレイ作製のための1回の位置決め操作において位置決めされた1つまたは複数のシートに関する。好ましい態様において、ピッチは、ポリマーウェブまたは積層ウェブ上の1つまたは複数の領域からなる。ピッチは任意の数のシートを含んでよいが、好ましくは1〜約10枚のシートを含み、より好ましくは約4〜約8のシートを含み、最も好ましくは約6枚のシートを含む。
【0036】
「細孔アレイ」という用語は、1つまたは複数の穴を有する任意のシートを意味するものと解釈される。しかし、作製および/または検査に本発明のシステムおよび方法が特に有用である、好ましい細孔アレイの種類がいくつか存在する。したがって細孔アレイとは、与えられた任意の外部パラメータ形状を有する(平面形状または凸形状であってもよい)材料のシートであって、1つまたは複数の細孔を有し、開口部が規則的または不規則なパターンで配置されていてもよく、呼吸器系への送達用に細孔の出口アパーチャの非屈曲時の直径が約0.01〜約100ミクロンであり且つ細孔密度が約1〜約1,000細孔/平方ミリメートルであるようなシートを意味し得る。細孔アレイが眼球送達用のノズルのアレイである場合、細孔の出口アパーチャの非屈曲時の直径は約5〜約50ミクロンであり、好ましくは約7.5〜約25ミクロンであり、細孔密度は同程度である。ノズルアレイの多孔度は約0.0001〜約0.2%であり、好ましくは約0.001〜約0.1%である。1つの態様において、ノズルアレイは、例えば大きなシート材料上に、1列の細孔を含む。細孔はシートの表面に垂直な円筒形であってもよく、または、円錐形もしくはその他の形状であってもよい。
【0037】
本明細書において、「検出器」および「光検出器」などの用語は互いに交換可能であり、入射光の任意の特性を測定するのに使われる任意の装置を意味するものとして解釈される。そのような特性としては、エネルギー、パワー、振幅、位相、偏光、波長、ビーム幅、曲率半径、コヒーレンス、または伝播方向などがあるが、それに限定されるわけではない。検出器の例としては、CCDアレイなどの撮像検出器;半導体、ボロメーター、焦電検出器、もしくは熱電検出器などの非撮像検出器;およびその他の装置または材料などがある。検出器は、入射エネルギーを電流に変換することが好ましいが、入射光の特性に基づいて工程パラメータを制御する機械的手段またはその他の手段を用いることも可能である。
【0038】
概要
本発明は、試料に存在する複数の穴または貫通の形体を高速に検査および分析する方法を提供する。同方法は、試料材料に吸収されるが穴または貫通の形体を通過し且つ光検出器(例えば電荷結合素子)により検出される波長を生成する光源を誘導する段階を含む。撮像レンズを用いて画像のサイズを小さくし、これにより分析時間を短縮し且つスループットを向上させてもよい。この検査方法は、さまざまな用途向けの細孔アレイの製造に組み込んでもよい。
【0039】
図1は本発明の検査システムを示した略図である。光源1は、光源から放射された光の波長が検査対象のシート10の材料によりどのような影響を受けるかなどの要因に関連する、種々の基準に基づいて選択される。光源1から出た光は、シート10を直接照らしてもよいが、好ましくは、光ガイド(例えば1つまたは複数の光ファイバーなど)を介して誘導される。光ガイド2から放射された光は、シート10を直接照らしてもよいが、好ましくは、光学ディフューザー3、照明レンズ4、および、1つまたは複数のスペクトルフィルタ5のうち全部または任意のいくつかを介して誘導される。
【0040】
スペクトルフィルタ5から出た光は細孔アレイ10を照らす。シートに当たる光の全部または実質的に全部は吸収または反射のいずれかを受け、したがって光は、細孔アレイの細孔の1つに入射しない限りシート10を通過しない。細孔に入射した光は一部が伝播され、好ましくは電荷結合素子(CCD)の形態である、光検出器8に達する。光は、光検出器8に接触する前に、撮像レンズ6およびアパーチャストップ7を通過してもよい。細孔アレイ10の検査が完了したら、単純に、新しい細孔アレイを収容しているシリンダー11を回転させ、検査済みの細孔アレイをシリンダー12に巻き上げるのが好ましい。この様式により細孔アレイを次々に検査することができ、したがって効率的な検査システムが提供される。
【0041】
細孔アレイ10の細孔から出たすべての光は、好ましくは、光封じ込めチューブ13に収容される。これにより信号を向上させることができ、且つ、光検出器8上の信号に影響を与え得る迷光が改善される。光検出器8で光が検出されると、得られた信号がマイクロプロセッサ9に伝送され、マイクロプロセッサ9によりコンピュータ画像分析が行われる。この処理は種々の異なる方法で実施してよく、且つ、処理の対象はシートの個々の細孔であっても、または、より好ましくは受信された全信号であってもよい。受信された全信号が小さすぎる場合は、細孔の大きさが不十分であるか、細孔の形状が正しくないか、または細孔密度が十分でない。受信された全信号が大きすぎる場合は、細孔が大きすぎるか、細孔の形状が正しくないか、または細孔密度が過剰である。設定された基準にかかわらず、いったん分析がなされると、システムは、検査中の細孔アレイが検査に合格するか不合格かに関する信号を出す。
【0042】
システムの構成要素
システムの基本的な構成要素を図1に示す。しかし、これらの構成要素のうち、光源1、検出手段8、および分析手段9は必ず含める必要がある。分析手段9は好ましくはマイクロプロセッサであるが、離散的電子制御器または機械的制御器であってもよい。システムの精度および効率を向上させるため、好ましくは他の構成要素も使用する。最も重要な点として、システムは、好ましくは、検査を行うため、または製造と検査とを同時に行うため、1つまたは複数の試料シート10を次々に所定の位置に移動させるための手段を含む。次に、図1の各構成要素を詳しく説明する。
【0043】
照明光源1は、Ultracure 100SS Plusの商品名で販売されている市販の光源であってもよい。光源は、UV硬化の用途に一般的に使用されている100ワット水銀ランプシステムである。水銀ランプは典型的に、365 nm付近で強いスペクトル成分を発し、これは、Kaptonの商品名でDuPontから販売されている厚さ25ミクロンのポリイミドフィルムに強く吸収される。同光源は、300〜400 nmの範囲内でスペクトルピークを発し、波長450 nm未満の光という有用なスペクトルレンジを有する。波長450 nm未満の光は、厚さ25ミクロンのフィルムの上部数ミクロンの部分で吸収される。波長が550 nmを超えると、まったく吸収されずにフィルムを通して伝えられる。照明とフィルムに吸収される波長との組合せにより、フィルムを通して伝えられる光と穴を通して伝えられる光とのコントラストが決定される。光がすべて吸収されるようなフィルムを使用してもよい。さらに、検出器8には、フィルムを通過した光の波長を検出しないような検出器を使用してもよい。細孔を通過した光とフィルムを通過した光とのコントラストが強いほど、画像分析用の画像処理アルゴリズムが強力になる。
【0044】
本質的に任意の種類の光源が使用できるが、アークランプが好ましく、且つ、小さいことを特徴とする光源であるため光をより効率的に集束およびコリメーションできる。これにより、光を光ガイドに伝播することが可能となり、且つ、光ガイドから出た光を比較的良好にコリメーションすることも可能となる。検査試料上で光をコリメーションすることにより、フィルムの各穴への入射光の角度を同じにすることができる。フィルムに当たる光に角度がついていると、穴がフィルムを完全に貫通していても、最初にフィルムの穴に入った信号のいくつかが細孔から出てこないという、信号の歪みが生じる可能性がある。これはエラーの原因となり、このエラーは、フィルムの厚さが増すほど、および/または光の角度が大きくなるほど、増大する。無論、他の光源も、望ましい細孔を通して伝えられるがシートには実質的に遮断されるような波長のものである限り、使用できる。
【0045】
Lumatecの商品名で販売されているような光ガイドを本発明のシステムに使用してもよい。そのような光ガイドは、コア直径が約5 mm、長さが約1000 mmである。この光ガイドは、約300〜約400 nmの波長の光を伝播できるという理由で選択される。光ガイドは、ファイバーコアのガイド領域内で複数の反射光を混合することにより、出口面で均質なビームをつくることを補助する。光ガイドにより、フィルムの各穴に同じ光量の照明光が入射するようになる。光源が、光ガイドなしでも均質なビームを放射できる場合は、光ガイドを省いてもよい。光ガイドの機械的可撓性および長さにより、自由なビーム光路を得るためのミラーおよびリレーレンズの必要なく、遠隔領域に対応するための余分の自由度が得られる。光ガイドにより、検査領域から離れた場所に光源を配置することも可能になる。このことは、必須ではないが望ましい特徴である。
【0046】
光学ディフューザー3も含めることが好ましい。ディフューザーは、ファイバーから出る際のビームの均質性に寄与する。ディフューザーは、両側の表面に緩やかなリップルを有するガラスで構成される。ディフューザーは必須ではないが、使用することにより、読み取り精度がいくらか向上することが期待できる。特に好ましいディフューザーはCoherent-Ealingガラスディフューザーである。
【0047】
本発明のシステムは、好ましくは照明レンズ4も含む。特に好ましいレンズは、Melles-Griotの商品名で販売されている、焦点距離25 mmの合成石英ガラス製平凸レンズである。レンズは、光ガイドから来たビームをコリメーションさせて、検査中の試料へと誘導する。スペクトルフィルタ5も利用することが好ましい。使用が好ましいのは、Schott Color Filter UG-11およびSchott Color Filter KG-3の商品名で販売されている2つのスペクトルフィルタである。このスペクトルフィルタの組合せにより、前述のようなKaptonフィルム上の穴を検査する用途に用いるための300〜400 nmのスペクトルバンドが選択される。UG-11は本質的に可視光領域を、KG-3は赤外領域を遮断するため、このフィルタの組合せを通して伝えられるのはUV光となる。これらの透光フィルタ、または、スペクトル的に選択したより好適なミラーを、照明光源の一体部分として組み込み、これにより、外部フィルタの必要性を排除してもよい。
【0048】
細孔が存在していなくてもシートを通して伝えられ得る光を遮断するため、さまざまなフィルタまたはフィルタの組合せを用いてもよい。したがって、そのようなフィルタまたはフィルタ群は、光源の直前(すなわち細孔アレイの前)または光検出器の直前も含めて、光源と検出器との間の任意の所望の位置に配置してよい。シートの材料が、光に対してまったく透過性を持たない材料を含むのであれば、フィルタは不要である。しかし、シートが(多くの場合そうであるように)特に薄く、且つ、(多くの場合そうであるように)ポリマー材料を含む場合は、光または少なくとも光のいくつかの波長が透過する。したがって、正確な読み取りを得るためには、フィルタを使用して、細孔が存在していなくてもシートを通過してくる光を除去する。
【0049】
細孔アレイを通過した光は、光検出器8に直接入ってもよい。光は、まず撮像レンズを通過することが好ましい。好適な撮像レンズは、Melles-Griotの商品名で販売されている石英ガラス製の対称凸レンズである。このレンズの焦点距離約50 mmである。撮像レンズは、細孔アレイを通過してきた光を検出素子8に集束させる。費用面を考慮し、このレンズの収差は高度な補正を行わない。カスタムデザインのレンズを利用してもよいが、市販のレンズより費用がかかると考えられる。さらに、カスタムデザインのレンズにはさまざまな材料が用いられるが、そうした材料の多くは紫外光の透過効率が高くない。そこで、単純且つ費用効果の高い解決方法として、単純な単一要素(single element)レンズを選択し、光封じ込めチューブ13の中に保持した。
【0050】
撮像レンズ6を通過した後の光は、好ましくは、アパーチャストップ7を通過する。有用なアパーチャストップとしては、Thorlabsから販売されている可変アイリスがある。アパーチャストップは、必要に応じて分解能をシャープにするために使用する。アパーチャが小さいほど、レンズ収差の影響を軽減する能力が大きくなる。したがって、レンズに収差がない場合はアパーチャの必要性は少なくなる。アパーチャを絞ることにより画像をシャープにすることができる。このことは、前述の単一要素レンズなど、軸から外れた光線の補正が行われていない撮像レンズの場合に特に有用である。
【0051】
アパーチャ7を通過した後の光は、光検出素子8に接触する。有用な光検出器としては、モデルXC-75CEとしてSonyから販売されている白黒CCDがある。検出素子は、典型的には、二次元画像を取得し且つ検出信号に対するコンピュータ画像処理を可能にするようなカメラに使用されているタイプの、標準的な電荷結合素子(CCD)である。典型的なCCDは、各ピクセルにつき256階調が利用できる8ビットカメラに使用されているタイプのCCDである。8ビットより多いまたは少ないカメラも使用できる。カメラ内の典型的なCCDチップは、サイズが縦約4.8 mm、横約6.4 mmで、ピクセル数439,992である。各ピクセルは幅約8.6ミクロン、縦約8.3ミクロンであり、横方向に756ピクセル、縦方向に582ピクセルが存在する。ここに説明する構成は、カメラに使用されている一般的なCCDの構成であり、費用効果の高いシステムを提供する。倍率1倍(1:1撮像)となるように撮像レンズが配置されている場合、検査できる面積は検出素子の有効面積に等しい。この倍率では、画像中の輝点を約5ピクセルの距離で分離できる。輝点間のピクセル数が5未満になると、輝点がぼけて融合しはじめ、穴の数を正しく計数する能力が低下する。
【0052】
検出器8で取得された情報はマイクロプロセッサ9へと送られる。有用な画像取得・処理ユニットとしては、Cognex社のCheckpoint 900Cがある。フレームグラッバーはコンピュータ拡張電子基板であり、光検出器8から送られた画像信号を、階調と二次元画像内のピクセル位置とからなるデジタル数値配列に変換する。これにより、コンピュータが数値配列を処理すること(画像処理)が可能となる。ブロブ解析は、広く市販されている典型的な画像処理ツールである。この種の処理では、多数の明るいピクセルが互いに隣接しているか否かが検出される。すると同ツールは、あらかじめ指定した閾値を上回るブロブの数を画像内でカウントすることができる。ブロブ数は、典型的に、検査試料中の穴の数に対応する。使用できる別の画像処理ツールとしては、「照度計」または「平均ピクセル値」とよばれるものがある。これは、あらかじめ指定した特定の関心領域(ROI)内の全ピクセルの階調を合計して、平均値を計算する。
【0053】
同時の製造および分析
本発明は、材料の穿孔の分析に関する。一般的に、本発明の方法は、複数の細孔を含む細孔アレイをスキャンし、複数の基準を同時に考慮して複数の細孔を分析した結果に基づいてそのシートの合否に関する分析を行うために用いられる。
【0054】
本発明はまた、細孔アレイを連続的に分析できるように設計されている。より具体的には、シートを分析するための装置は、分析中のシートを所定の位置に保持する手段、および、シートを次々に検査位置へと移動させる手段を含んでいてもよい。この種の連続検査/分析手順は、製造中に有用である。しかしこの方法は、シートが検査分析に合格するか不合格かを示すこと以外には、製造に具体的な影響を及ぼさない。
【0055】
別の態様において、本発明は、実際の製造/生産工程に具体的に影響を及ぼすか、これを制御するか、または改善させるように設計してもよい。現在公知のシステムおよび技術により作製した細孔アレイは、細孔アレイごとまたは任意の細孔アレイ内の平均細孔サイズの変動幅が許容範囲内でないことがある。例えば、全身作用性の化合物の肺投与において、ノズルを通してエアロゾルを作る場合、エアロゾルのサイズは一般的にノズルのサイズと相関する。したがって、細孔サイズの制御は、肺の中における局所付着の制御に直接的に影響する。この別のシステムおよび方法は、細孔のサイズ、形状、および/または数の変動を小さくするため、各細孔アレイの作製と同時にこれを分析し、製造/生産工程を調整または停止するためのフィードバックを提供するために使用される。こうして変動が小さくなることにより、小さな細孔も再現性をもって作製することができる。
【0056】
そのような閉ループフィードバックシステムの基本的な構成要素を図4に示す。必須の構成要素としては、エネルギー源またはレーザー光源20、エネルギーまたは光の伝達システム24、検出手段28、ならびに、分析手段32とフィードバック制御ライン34および/または36とを含むフィードバック機構がある。前述のように、システムの精度および効率を向上させるため、好ましくは他の構成要素も使用される。図4のシステムは図1のシステムと同様に機能するが、主な相違点は、光源20を細孔の作製および検査の両方に使用すること、ならびに、細孔アレイ製造工程(例えば、シートへの光の送達、細孔アレイの位置、温度など)を調整または停止するためにフィードバック制御機構を追加で使用することである。
【0057】
エネルギー源20からのレーザー光は、任意である光ガイド22(例えば1つまたは複数の光ファイバー)を介して送達され、且つ、好ましくは、シート38に細孔または穴を穿孔または形成するためにレーザー光を細く収束させる、シートの前(シートの入射側)に配置されたエネルギーまたは光の伝達機構24を介して誘導される。光伝達機構は、エキシマレーザーの使用に非常に好適な光学系である、シャッター、ホモジナイザー、マスク、および/または映写レンズを含んでいてもよい。好適な映写レンズは、約2 mm〜約60 mm、好ましくは約5 mm〜45 mm、より好ましくは約25〜約40 mmである、大きな視野を有する。有効焦点距離は、一般的に約100〜約500 mm、好ましくは約150〜約350 mm、より好ましくは約200〜約300 mmである。開口数は、0.04〜約2、好ましくは約0.005〜約1.5、より好ましくは約0.75〜約1.25である。映写レンズの縮率は2x〜10x、好ましくは3x〜7x、より好ましくは約5xである。シャッターは一般的に、ビームを遮断するための機械的手段であり、一般的に、迅速に、すなわち約2〜約25 ms以内、好ましくは約4〜約15 ms以内、より好ましくは約8 ms以内にビームを止める必要がある。これらの作動時間は、モーター、空気圧、音響光学など多数の方法により実現できるが、好ましい態様においてはソレノイドを使用する。または、光伝達機構は、周波数逓倍イットリウム-アルミニウム-ガーネット(YAG)レーザーまたは同様のレーザーなどのレーザーにより好適な光学系である、任意である空間フィルタ、任意である回折素子、および集束レンズを含んでいてもよい。レーザー光は、望ましい結果に応じて、連続波として伝達してもまたは不連続なパルスとして伝達してもよい。細孔が形成されると、光が細孔を通過し、シート38の反対側または出口側に配置された光検出器28に伝達され、これに当たる。図1のシステムに示すように、光は、光検出器28に接触する前に撮像レンズ26およびアパーチャストップ27を通過してもよい。または、伝達される全パワーのみを測定する場合、もしくは個々の細孔から出る光を識別できるほど検出器が細孔アレイに十分近い場合は、透過光は単純に検出器に直接当たってもよい。細孔アレイ28の細孔から出るすべての光は、迷光となって光検出器28の信号に影響を及ぼし得る光を最小限にするため、好ましくは光封じ込め構造30の中に収容される。光検出器28が光を検出すると、レーザー光の1つまたは複数のパラメータ(例えば、光のパワーまたは強度水準の時間分布および/または空間分布)を表す信号がフィードバックコントロール32に伝達される。フィードバックコントロールは、細孔のサイズ、形状、または密度に影響することがわかっている1つまたは複数のパラメータの分析を行う。この分析結果、特に、光のパラメータが特定の閾値レベルを下回るか上回るかという判定に基づき、フィードバックコントロール32から、信号ライン34、36、および/または43をそれぞれ介して、レーザー光源20、エネルギー伝達システム24、および/またはテープ駆動機構42へと制御信号が返される。閾値レベルが最適な細孔サイズに対応する場合は、細孔サイズを制御することもできる。制御信号を利用して、エネルギー源20をオンおよびオフにしてもよく、または、エネルギー伝達システムを調整してもよい(例えば、連続光ビームのパワーまたはパルス光の周波数を変化させるなど)。例えば、レーザー光を単一の連続パルスとして提供する場合、制御信号はパルスを停止させることに関与してもよい。レーザー光を一連の不連続パルスとして提供する場合、制御信号は、パルスの数、持続時間、または周波数を減らすことに関与してもよい。パルス数をゼロにすること、または連続パルスを停止することは、レーザーを制御することによって、または外部シャッターによって実現してもよい。さらに、例えば細孔が大きすぎるなど、追加処理による修正ができない何らかの基準について細孔アレイが不合格であることが分析により判定された場合は、シートをマーキング、除去、またはその他の方法で欠陥ありと識別してもよい。1枚のシート38、複数のシート38、またはシート38の一部において、満足できる状態で細孔が形成されたら、別のシート、一連のシート、または同じシートの別の部分にさらに細孔を形成できるよう、シートを細孔形成/検査位置から前進させてもよい。
【0058】
エネルギー源20は、好ましくは、UVレーザー、IRレーザー、または可視光レーザーなどのレーザー光である。本発明に用いるのに好適なUVレーザーの例としては、Nd:YAGまたはNd:YLF周波数逓倍UVレーザーがあり、好ましくは、355 nmの光を2〜20ナノ秒パルスで発するダイオード励起固体Nd:YAG周波数三倍レーザーである。好ましくは、レーザーは、波長約100〜約500 nm、好ましくは約193〜約350 nm、最も好ましくは約248 nmから約308 nmのエキシマレーザーである。エキシマレーザーの好ましい化学種はキセノン/塩素またはクリプトン/フッ素である。エキシマシステムは一般的にパルス波を発し、その繰返し数は約50〜約1000 hz、好ましくは約100〜約400 hz、最も好ましくは約300Hzである。好適なレーザーの例としてはLlambda Physik Steel 1000 Laserがあるが、他のレーザーシステムも使用できることが当業者には明白であると思われる。パルス幅は一般的に約10〜約100 nsであり、好ましくは約15〜約40 ns、最も好ましくは約28 nsである。パルスエネルギーは用途によって異なるが、一般的には約1〜約1000 mJになると考えられ、薄いポリマーフィルムに細孔アレイを作製するには好ましくは約300〜約800 mJ、最も好ましくは約400〜約600 mJになると考えられる。シートに入射するパルスエネルギーは、約0.01〜約10 mJになると考えられ、薄いポリマーフィルムに細孔アレイを作製するには好ましくは約3〜約8 mJ、最も好ましくは4〜6 mJになると考えられる。本発明に使用するのに好適なIRレーザーとしては、短パルス(1〜100フェムト秒)IRレーザーがある。本発明の工程および材料に適切なその他の光源および周波数逓倍方式による代替も当業者には明らかであると思われる。
【0059】
エネルギー伝達システム24はレンズシステムであってもよく、レンズシステムは、形成される1つまたは複数の細孔またはスポットのサイズおよび形状に関するパラメータにより特徴付けられる1つまたは複数の集束ビームを作るための1つまたは複数の手段を含んでいてもよい。そのような手段は、次のうち1つまたは複数を非限定的に含んでいてもよい:ビーム拡大器、最終対物/映写レンズ、空間フィルタ、可変減衰器、エネルギーを1度に複数の位置に誘導するためのビームスプリッター、または、エネルギーを複数の位置に同時に高速に誘導するためのガルバノミラー。ビームスプリッターは、屈折/透過インターフェースもしくは回折光学系に基づいたものであってもよく、または、ホモジナイザーを用いたものであってもよい。さまざまなタイプの回折光学ビームスプリッターを使用してよく、例えば非限定的に、透過マスクに基づくもの、位相差光学系に基づくもの、屈折率に基づくもの、またはこれらの組合せなどがあり、これらの各ビームスプリッターの可変形式は、2値式、階段式、または連続式であってもよい。ビームスプリッターによりビームを1つまたは2つの方向に分け、これにより、数本のビーム(約4本またはそれ以上)を提供してもよく、または数十本もしくは数百本のビームの大きなアレイを提供してもよい。ビームスプリッターにより、例えば約4〜約100本のビームの一次元アレイもしくは例えば約12〜約1000本のビームの二次元アレイを生成してもよく、または、これらのアレイの複数のコピーを生成してもよい。
【0060】
複数の細孔を形成する場合、エネルギー輸送体24で誘導するエネルギーのパラメータは、すべての細孔またはスポットについて値および制御様式を同じにしてもよく、または、細孔ごともしくはスポットごとに値および制御様式が異なるようにしてもよい。送達されるエネルギーのパワーまたは強度(時間分布および空間分布)は、穿孔する材料の1つまたは複数の領域において閾値レベル(例えば、材料に損傷を与える閾値、材料に熱アブレーションを起こす閾値、または材料に光アブレーションを起こす閾値など)を上回るかまたは下回るようにプリセットしてもよい。多くの用途においては、所望のサイズより小さい穴を生成するが、最適サイズを得るため必要に応じて調整できるようなパワー強度を最初に選択することが好ましい可能性がある。この方法により、大きすぎる穴が形成されるリスクが最小限となり、損傷した材料または使用できない材料を不合格にすることのコストが低減される。細孔あたりのエネルギー総量は用途ごとに異なり得る。パルスUVレーザーを用いて薄いポリマーフィルムにマイクロメートル規模の構造(例えばエアロゾル薬物送達ノズルに好適なもの)を作製する場合、エネルギーは典型的に約0.1〜約5マイクロジュール/パルス、より典型的には約0.2〜約1マイクロジュール/パルス、さらに典型的には約0.2〜約0.6マイクロジュール/パルスである。作製工程終了時の細孔あたり・パルスあたりの伝送エネルギーも、例えば細孔のサイズおよび形状、光源の特性、ならびにシートの材料などによって、用途ごとに異なるのが一般的である。パルスUVレーザーを用いて薄いポリマーフィルムにマイクロメートル規模の構造(例えばエアロゾル薬物送達ノズルに好適なもの)を作製する場合、典型的なエネルギーは約1フェムトジュール〜約1マイクロジュール/パルス、約1フェムトジュール〜約1ナノジュール、または約10フェムトジュール〜約20ピコジュールである。ポリイミドなどのポリマー材料にパルスUVレーザーを用いる場合、スポットあたり・細孔あたりのエネルギー密度は約0.1〜約2ジュール/cm2(1〜20ナノジュール/平方マイクロメートル)であってもよく、またはより典型的に約0.25〜約0.4ジュール/cm2(2.5〜4ナノジュール/平方マイクロメートル)であってもよい。前述のように、エネルギーは連続的に送達してもよく、またはパルスとして送達してもよい。パルスの場合、パルス幅は、例えば約1〜約100ナノ秒、または約1ナノ秒未満もしくは約1ピコ秒未満など、任意の好適な値であってよい。
【0061】
形成された1つまたは複数の穴を通過してきた光のいくつかの特性を測定する検出手段28は、一部もしくは全部の穴を通過してきたエネルギーを検出するよう構成された単一の検出器を含んでいてもよく、または、全部ではない穴からのエネルギーを検出するよう各々が構成された2つ以上のサブ検出器を含んでいてもよい。検出手段28は、非限定的に、半導体、ボロメーター、焦電検出器、熱電検出器、ダウンコンバージョン/フォトダイオード、または入射エネルギーを電流に変換するその他の装置もしくは材料を含んでいてもよい。伝送されたパワーを検出するための好適な検出器の例としては、HUV-4000B演算増幅器フォトダイオードコンビネーション(EG&G Optoelectronics)がある。伝送されたパワーを検出するための別の好適な検出器の例としては、Star Techダウンコンバージョン/フォトダイオードエネルギー検出器、モデル番号XR-16-Gがある。好ましい態様において、レーザーからのビームは、各領域が個々のノズルアレイを作製するための標的領域である、シート上の複数の領域に誘導される。個々の標的領域は専用の検出器を有し、各検出器を使用して、シャッターにより各標的領域へのパワーを遮断する。検出手段28はまた、フォトダイオードまたは電荷結合素子(CCD)であってもよい。検出器28は、レーザー光の特定の穿孔波長を通過させ他の波長を遮断するよう構成された、光入力フィルタを含んでいてもよい。検出器28の時定数または検出器28の電気出力の時定数は、個々のパルスエネルギーの測定、個々のパルスの時間形状もしくは複数のパルスのエネルギーの加重積分の測定、またはこれらの組合せを可能にするようなものであってもよい。検出器28により、レーザーのパルスを参照するロックイン増幅器回路などの位相敏感検波を実現してもよい。信号の質を向上させるため、検出器28の出力をさらにフィルタリングしてもよい。
【0062】
フィードバック制御機構は、検出器28の出力を用いて、細孔部分に送達された光が調整を必要とするか否か、または、1つまたは複数の新しいシートを処理位置に移動させるべきか否かを判定する。細孔部位が複数ある場合、この判定は、どの細孔部位が調整を必要としどの細孔部位が必要としないかを特定する段階を含んでいてもよい。フィードバックによる制御または調整は、信号ライン34を介して制御信号を送ることによって実現してもよく、これにより例えば、伝送されるエネルギーが上昇し、特定の細孔部位または細孔部位のセットについて所望の穴のサイズが達成されたことを示す閾値レベルを超えた場合などに、エネルギー源20をオフにしてもよい。例えば、検出器で入射パワーが測定されたときにレーザーパワーを調整するかまたは完全に停止させてもよい。または、各アレイ部位の細孔の構成(例えばサイズ)が目標値に達するまで、1つまたは複数のアレイ部位に対するエネルギーの送達を修正または遮断しつつ他のアレイ部位に対するエネルギー送達を維持するため、信号ライン36を介して送られた制御信号を用いてエネルギー送達システム24を調整してもよい。これを実現するための1つの手段は、シートに入射するレーザー光の各ビームもしくは各ビームセットに対するシャッター、または各細孔部位に対するシャッターを、エネルギー送達システム24の一部として設けることである。シャッターは、光源と穿孔するシートとの間の任意の位置に配置してよいが、個々のビームまたは一連のビームを個別に遮断する場合は、ビームスプリッター部品より下流に配置する必要がある。特定の細孔部位または細孔部位のセットにおいてシートを通過する透過光のいくつかのパラメータの目標値(好ましくは、レーザー光の目標エネルギーレベル[すなわち、所望の細孔サイズに対応するレベル])が達成されたら、フィードバック機構によりシャッターをトリガしてその特定のビームを遮断し、これにより、シートのさらなる穿孔および穴の拡大を防ぐ。これを実現する別の方法は、可変減光器を使用することである。これを実現するさらに別の方法は、次のシートまたはシートのセットへと移動させてそこで穿孔を開始するため、テープ駆動機構に信号を送ることである。
【0063】
フィードバックシステムは、検出器28からの出力を積分およびフィルタリングしたものを利用して、穿孔操作に使われた1つ、いくつか、またはすべてのパルスの蓄積伝送エネルギーに基づき、適切なアクションを判定してもよい。この判定は、いくつかまたはすべての部位のエネルギーを均等加重または不均等荷重により平均する段階を含んでいてもよい。この判定には指数加重を用いてもよく、検出器の時定数がパルスの繰返し数と近いときはこれが該当する。既定量の伝送エネルギーが測定された後、伝送エネルギーレベルが異なる値になるか、特定の数の追加パルスが送達されるか、または、他の何らかのアクションが完了するかもしくは基準が達成されるまで、工程の何らかのパラメータを変化させるために、フィードバックシステムを用いてもよい。制御してもよいさまざまなパラメータとしては、送達されるエネルギーの強度もしくはパワー、パルスレート、フルエンス、レーザーの焦点位置、パルス幅、および/またはパルスの繰返し数などがあるが、それに限定されるわけではない。
【0064】
本発明を用いて形成される細孔は任意のサイズおよび形状であってよい。エアロゾル化ノズル用である場合、細孔の寸法は約0.1〜約50マイクロメートルであり、好ましくは約0.3〜10マイクロメートルである。肺への薬物送達用である場合、細孔のサイズは一般的に約0.1〜約10マイクロメートル、好ましくは約0.3〜約2.5マイクロメートル、より好ましくは約0.4〜約1.4マイクロメートルである。細孔は、概ね円錐形、円筒形、またはその組合せなど、任意の形状であってよい。細孔の出口は任意の形状であってよいが、好ましくは概ね円形である。
【0065】
シートに送達されるビームは、実質的な円形を非限定的に含む任意の放射形であってよく、且つ、概ねガウス形またはトップハット形のプロフィールを非限定的に含む任意の適切なプロフィールを特徴としていてもよい。1〜数百、またはそれ以上など、任意の好適な数の細孔または穴を形成してよい。
【0066】
実施例
以下の実施例は、本発明をどのように作製および利用するかについての完全な開示と説明を当業者に提供するためのものであり、本発明者らが自らの発明であると考える範囲を限定するものではなく、以下に示す態様が実施されたすべてまたは唯一の実験であることを示すものでもない。示した数字(例えば量、温度など)は正確であるように注意を払っているが、いくらかの実験誤差および逸脱は考慮に入れられるべきである。特に断りがない限り、割合は質量比による割合であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧または大気圧付近である。
【0067】
実施例1
この実験は、試料中の穴を検査することを目的とした、本発明の方法の利用を示すものである。紫外線接着硬化に一般的に使用されているタイプの水銀アークランプを光源として使用した。当業者に周知である適切な反射性および透過性の光学フィルタ素子を利用して、スペクトルの紫外線部分の約300〜400ナノメートルを特異的に分離した。この紫外線部分は、主として、水銀に由来する365ナノメートルの強い輝線から成っていた。フィルタリングした光を、選択したスペクトル域内で紫外線付近を透化させる一般的な液体光ガイドにより誘導した。このファイバーの出口で、拡散反射ガラスを使用して、ガイドから出たビームをさらに均質化させた。次に、集光レンズを用いて光をコリメーションさせ、検査対象の試料を照明した。試料はポリイミドフィルムとした。試料の物質を通過してくる検出可能な可視光および赤外光を確実に排除するため、コリメーションした光の中にスペクトルフィルタを配置した。光検出素子に画像を送るため、試料の後方に撮像レンズを配置した。この撮像素子には電荷結合素子(CCD)を使用した。撮像レンズのすぐ近くに、閉じて直径が小さくなるとCCDの画像が鮮明になるアパーチャストップを配置した。画像をモニタに表示し、画像情報をコンピュータ画像ファイルに保存した。試料中の形体の数およびサイズを判定するため、画像を処理した。例えば、数百個の通し穴からなるアレイを有するノズルは、輝点のアレイとして表示された。画像中のスポットの数は、そのパーツ中にデザインされた穴の数と正確に対応するはずである。各穴からCCDに入射する光の量は、CCD内の画素(ピクセル)をカバーする階調に変換される。8ビットCCDカメラにおいて、階調は0〜255であった。各穴に対応するピクセルをセルと定義し、各セル内のピクセル階調の合計を求めて、穴のサイズと相関させた。このようにして、画像処理により、アレイ中の穴の数およびサイズを判定することができた。
【0068】
実施例2
この実験は、試料中の穴を検査することを目的とした、本発明の方法の利用を示すものである。紫外線接着硬化に一般的に使用されているタイプの水銀アークランプを光源として使用した。当業者に周知である適切な反射性および透過性の光学フィルタ素子を利用して、スペクトルの紫外線部分の約300〜400ナノメートルを特異的に分離した。この紫外線部分は、主として、水銀に由来する365ナノメートルの強い輝線から成っていた。フィルタリングした光を、選択したスペクトル域内で紫外付近を透化させる一般的な液体光ガイドにより誘導した。このファイバーの出口で、拡散反射ガラスを使用して、ガイドから出たビームをさらに均質化させた。次に、集光レンズを用いて光をコリメーションさせ、検査対象の試料を照明した。試料はポリイミドフィルムとした。試料の物質を通過してくる検出可能な可視光および赤外光を確実に排除するため、コリメーションした光の中にスペクトルフィルタを配置した。光検出素子に画像を送るため、試料の後方に撮像レンズを配置した。この撮像素子には電荷結合素子(CCD)を使用した。撮像レンズのすぐ近くに、閉じて直径が小さくなるとCCDの画像が鮮明になるアパーチャストップを配置した。画像をモニタに表示し、画像情報をコンピュータ画像ファイルに保存した。試料中の形体の数およびサイズを判定するため、画像を処理した。例えば、数百個の通し穴からなるアレイを有するノズルは、輝点のアレイとして表示された。画像中のスポットの数は、そのパーツ中にデザインされた穴の数と正確に対応するはずである。各穴からCCDに入射する光の量は、CCD内の画素(ピクセル)をカバーする階調に変換される。8ビットCCDカメラにおいて、階調は0〜255であった。穴のアレイ全体を囲む関心領域を指定する。照度計ツールを用いて、穴のアレイを通過した光の平均レベルを求める。光のレベルは、アレイの平均較正穴サイズと相関する。
【0069】
実施例3
この実験は、厚さ25マイクロメートルのポリイミドシートにスポットを形成し且つこれを検査することを目的とした、本発明の方法の利用を示すものである。使用したエネルギー源は、各パルスのエネルギーが約0.4〜約0.6マイクロジュールである波長355 nmのパルスを発する、周波数三倍ニオブ-イットリウムレーザーである。直径約12〜約15マイクロメートルのスポットにレーザーを集束させて、出口直径約0.4〜約0.6マイクロメートルの穴を形成した。形成された穴は約0.5〜約10ピコジュールを通過させた。これをシリコーンダイオード検出器で検出した。検出器からの信号に基づいて、コンパレータと、基準電圧と、論理ゲートとを含む離散的電子フィードバック回路によりレーザーに電子信号を送り、光パルスの生成を停止させた。
【0070】
同じ光源および光学系を用い、1度に1つの細孔を穿孔して、細孔アレイの複数のセットを作製した。一部のアレイは、予め定めた数のパルスを用いて作製し、一部のアレイは、形成される細孔のサイズを制御する試みとして、穿孔に用いるパルスの数を制御するためフィードバックシステムを用いて作製した。下記のデータは、フィードバックの実施により細孔サイズの制御が向上したことを示している。「アレイ平均サイズ」の各値は1つのアレイ内の10個の細孔の平均サイズ、「アレイ内SD」は各アレイのこれら10個の細孔サイズの標準偏差である。「アレイ間SD」はセッション内の「アレイ平均サイズ」の標準偏差、「セッション平均サイズ」はアレイ平均サイズの平均値である。各ノズル内の細孔サイズはより良好に制御され、作製セッション中の各細孔アレイの平均細孔サイズもより良好に制御され、且つ、任意のセッション内の全アレイの平均細孔サイズも目標サイズ(この場合は595 nm)により近かった。サイズの単位はすべてナノメートルである。
【0071】
(表1)フィードバックを用いなかった作製セッション

【0072】
(表2)フィードバックを用いた作製セッション

【0073】
(表3)フィードバックを用いた作製セッション

【0074】
実施例4
この実験は、本発明の閉ループフィードバックシステムと先行技術の開ループシステムを用いて、シートまたはノズルに形成したミクロンサイズの細孔の平均細孔サイズを比較したものである。使用したシステムは波長308 nmのエキシマレーザーである。光学系は投射系であり、これにより6つの個別の細孔アレイを同時に作製した。レーザーからのビームをホモジナイザーで分割し、各ビームに対して機械的シャッターを設けた。シャッターはこの用途専用に設計したもので、ソレノイドを用いて作動させた。6枚の各シートの下に、6つの個別のStar Tech XR-16-G検出器を配置した。検出器で測定されたパワーが予め定められた閾値を超えたときに、そのビームに対するシャッターを閉じた。6つの細孔アレイがすべて作製されたら、6枚のシートの新しいセットを処理位置に移動させて処理を繰り返した。アブレーションステージの下には、シート(厚さ25マイクロメートルのポリイミドフィルム)を通過してきたレーザーエネルギーを6つのStar Techセンサーへとリレーする6つのレンズを配置した。これらのレンズは、倍率を1:1とし、焦点面をセンサーの約2 mm上に合わせた。すべてのセンサーについて入射強度をカットするため、センサーの上に減衰プレートも配置した。
【0075】
閉ループ穿孔法(CL)を用いて10個のノズルアレイを作製し、同様の開ループ穿孔法(OL)を用いて10個のノズルアレイを作製した。シートを穿孔領域に配置するごとに(1「ピッチ」)、6つのノズルまたはシート(N1〜N6)を穿孔し、各ノズルアレイの穴が平均15個となるようにした。各穿孔法について次の値を示す:ノズルアレイごとの平均穴サイズ(ミクロン)、各ピッチにおける、ノズルアレイの穴サイズの平均値の標準偏差(PSD)、および、ピッチ間の、ノズルの穴サイズの平均値の標準偏差(P/PSD)。閉ループ穿孔法を行った場合は、開ループ穿孔法を行った場合と比較して、各ピッチにおけるノズルアレイの穴サイズの平均値の標準偏差(PSD)が有意に小さかった。このことが最も劇的に示されたのは、ピッチ間の標準偏差を、閉ループ穿孔法(PSD = 0.04マイクロメートル)と開ループ穿孔法(PSD = 0.17マイクロメートル)とで比較した場合であった。ミクロン以下のサイズの細孔の形成について同様の実験を行った場合も、同様の結果が得られた。
【0076】
(表4)閉ループ法(単位はすべてマイクロメートル)

【0077】
(表5)開ループ法(単位はすべてマイクロメートル)

【0078】
以上の説明は本発明の原理を示したものにすぎない。当業者であれば、本明細書に明示的に説明しまたは示してはいないものの本発明の原理を具現化し且つ本発明の精神および範囲に含まれる、種々の組合せを作製できると考えられ、このことは理解されるべきである。さらに、本明細書に説明するすべての実施例および条件的文言は、本発明の原理および本発明者らが当技術を促進するために提供する概念を読者が理解することを助けることをもっぱら意図したものであり、具体的に説明されたそのような実施例および条件に限定されるわけではないものとして解釈されるべきである。さらに、本発明の原理、局面、および態様、ならびに本発明の具体的な実施例を説明した、本明細書におけるすべての言明は、それらの構造的および機能的な同等物も包含すると意図される。さらに、そのような同等物は、現在公知の同等物および今後開発される同等物の両者、すなわち、構造にかかわらず同じ機能を実施する、開発されたあらゆる要素を含むものと意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に示しまたは説明した例示的な態様に限定されるとは意図されず、本発明の範囲および精神は、添付の特許請求の範囲により具体化される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】試料を貫通する穴のサイズおよび数について試料を検査するために使用される、本発明のシステムの略図である。
【図2】本発明の検査方法による検査に合格する試料の光学像である。
【図3】本発明の検査方法による検査に合格しない試料の光学像である。
【図4】シートに細孔を形成するために使用され、且つ、形成される細孔のサイズおよび数を制御するためのフィードバック制御機構を有する、本発明の別のシステムの略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、細孔アレイを作製する方法:
細孔アレイ作製位置にある材料のシートに光を誘導する段階であって、該光が、該シートに細孔を形成するのに十分な強度および波長を有する段階;
該シートに細孔アレイを形成する段階であって、細孔が、該光が該シートの表面に接触する位置で該シートに形成され、さらに該光が該細孔を通過する段階;
該細孔を通過した該光を検出する段階;ならびに
細孔サイズ、細孔密度、細孔の形状、および形成される細孔の数からなる群のうち1つまたは複数の関数である基準を該細孔が満たすか否かを判定するため、該検出光を分析する段階。
【請求項2】
基準が満たされたか否かに基づいて作製方法を修正する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
光源が、レーザーである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
以下の段階をさらに含む、請求項1記載の方法:
複数のシートを提供し、誘導、形成、検出、および分析の段階を各シートについて繰り返す段階。
【請求項5】
形成された細孔の直径が、約100ミクロン未満である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
レーザーが、UVレーザーおよび可視光レーザーからなる群より選択される、請求項3記載の方法。
【請求項7】
検出の段階が、フォトダイオード、焦電検出器、およびダウンコンバージョン/フォトダイオードからなる群より選択される検出器を用いる段階を含み、且つ、分析の段階が、電子回路を含むシステムを使用する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
修正する段階が、誘導される光の強度、パルス幅、およびパルス周波数のうち1つまたは複数を変更する段階を含む、請求項2記載の方法。
【請求項9】
修正する段階が、強度を減少させる段階を含み、作製方法が本質的に停止される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
修正する段階が、新しいシートを穿孔位置へと動かす段階を含む、請求項2記載の方法。
【請求項11】
シートが、ポリマーフィルムを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
UVレーザーが、エキシマレーザー、周波数逓倍YAGレーザー、および周波数逓倍YLFレーザーからなる群より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項13】
レーザーが、パルスエキシマレーザーである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
以下を含む、細孔アレイを作製するための装置:
材料のシートに光を誘導しそこに複数の細孔を含む細孔アレイを形成する手段であって、ビームスプリッターと関連付けられた光源を含む手段;
該細孔が形成される際に、該細孔アレイの該細孔を通過した光を検出する手段;
該細孔が基準を満たしているかを判定するため、該検出光を分析する手段;および
光を誘導する該手段に対してシートを連続的に再位置決めする手段。
【請求項15】
光を検出する手段が、複数の細孔を通過した光を同時に検出する、請求項14記載の装置。
【請求項16】
検出光を分析する手段が、マイクロプロセッサを含む、請求項14記載の装置。
【請求項17】
ビームスプリッターが、マスクとレンズとの組合せおよび回折光学素子からなる群より選択される、請求項14記載の装置。
【請求項18】
光を検出する手段が、フォトダイオード、焦電検出器、およびダウンコンバージョン/フォトダイオード検出器からなる群より選択される、請求項14記載の装置。
【請求項19】
連続的に再位置決めする手段が、シートを次々に逐次的に移動させる手段を含む、請求項14記載の装置。
【請求項20】
以下の段階を含む、細孔を同時に作製および検査する方法:
シート材料の表面に、少なくとも1つの細孔を該材料に形成するのに十分な量の光エネルギーを誘導する段階;
該シート材料を通過した光を、該光エネルギーが誘導される表面の反対側で検出する段階;および
該少なくとも1つの細孔の少なくとも1つの基準を判定するため、該検出光を分析する段階。
【請求項21】
少なくとも1つの基準が、細孔のサイズおよび細孔の形状からなる群より選択される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つの細孔が予め定められたサイズに達したときに、少なくとも1つの位置で光の誘導を中止する段階をさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1つの細孔が複数の細孔を含み、且つ、予め定められたサイズが、該細孔の少なくともいくつかの平均サイズである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
複数の細孔を同時に形成するため、シート材料の表面の複数の位置に光が誘導される、請求項20記載の方法。
【請求項25】
複数の細孔を通過した光が、検出される、請求項23記載の方法。
【請求項26】
光が複数の位置に誘導され、且つ、シート材料を貫通する細孔が形成されたか、該形成された細孔のサイズが十分か、および、該形成された細孔の細孔密度が十分か、からなる群より選択される少なくとも1つの基準を判定するため分析が実施される、請求項20記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1つの基準が満たされたと分析により判定されたときに、光の誘導を中止する段階をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
光エネルギーが、レーザー光である、請求項20記載の方法。
【請求項29】
レーザー光が、エキシマレーザー、周波数逓倍YAGレーザー、および周波数逓倍YLFレーザーからなる群より選択される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
以下を含む、細孔アレイを製造および分析するシステム:
シート材料に複数の細孔を穿孔するのに十分な量の光を該シート材料の表面に誘導できる光源;および
該光が誘導される表面とは反対側の該シート材料の面において、該シート材料に隣接させて配置されるよう適合された光検出器。
【請求項31】
以下をさらに含む、請求項30記載のシステム:
複数の細孔の少なくとも1つの基準を判定するため、検出光を分析する手段。
【請求項32】
以下をさらに含む、請求項31記載のシステム:
光源および光検出器に電気的に接続されたフィードバック回路であって、シート材料を通過した光および複数の細孔が形成されたときにこれを通過した光を分析するよう適合され、且つ、該複数の細孔の、少なくとも1つの予め定められた基準が達成されたときに、光の誘導を中止するため該光源にフィードバックを提供するフィードバック回路。
【請求項33】
フィードバック回路が、電子回路を含む、請求項32記載のシステム。
【請求項34】
光源とシート材料との間で該誘導光の中に配置するよう適合された、光の誘導を中止するため少なくとも1つのシャッターをさらに含む、請求項30記載のシステム。
【請求項35】
光源とシート材料との間で誘導光の中に配置するよう適合されたホモジナイザーをさらに含む、請求項30記載のシステム。
【請求項36】
光源とシート材料との間で誘導光の中に配置するよう適合された照明レンズをさらに含む、請求項30記載のシステム。
【請求項37】
光源とシート材料との間で誘導光の中に配置するよう適合された少なくとも1つのマスクをさらに含む、請求項30記載のシステム。
【請求項38】
光検出器が、フォトダイオードを含む、請求項30記載のシステム。
【請求項39】
光源が、レーザーである、請求項30記載のシステム。
【請求項40】
レーザーが、UVレーザーである、請求項39記載のシステム。
【請求項41】
以下の段階を含む、細孔のアレイを作製する方法:
シートに該細孔のアレイを作製するため、適切な波長の光源から光を誘導する段階;
該細孔を通して伝えられる光を検出する段階であって、該検出光が該細孔の数を示す段階;および
該細孔が正しい数であることを該透過光が示したときに該光の誘導を停止する段階。
【請求項42】
以下の段階を含む、複数の細孔を同時に作製および検査する方法:
材料の表面に、該複数の細孔を該材料に形成するのに十分な量の光エネルギーを誘導する段階;
該複数の細孔を通過した光を、該光エネルギーが誘導される表面の反対側で検出する段階;および
形成された該複数の細孔の少なくとも1つの基準を判定するため、該検出光を分析する段階。
【請求項43】
分析する段階が、同時に多くの全体的な細孔の平均サイズを判定する段階を含む、請求項42記載の方法。
【請求項44】
予め定められた全体的な平均サイズを有する複数の細孔が形成されたと分析により判定された場所に対応する位置において、光の誘導を中止する段階をさらに含む、請求項43記載の方法。
【請求項45】
少なくとも1つの基準が、材料を貫通する複数の細孔が形成されたか、該形成された複数の細孔のサイズが十分か、および、該形成された複数の細孔の細孔密度が十分か、からなる群より選択される、請求項42記載の方法。
【請求項46】
少なくとも1つの基準が満たされたと分析により判定されたときに、光の誘導を中止する段階をさらに含む、請求項42記載の方法。
【請求項47】
光が、レーザーである、請求項42記載の方法。
【請求項48】
以下を含む、細孔を作製および分析するシステムであって、該少なくとも1つの細孔の、少なくとも1つの予め定められた基準が満たされたときに、該フィードバック制御手段が該光の誘導を中止させるシステム:
材料に少なくとも1つの細孔を穿孔するのに十分な量の光を該材料の表面に誘導できる光源;
該光の誘導を中止するため該光源に接続されたフィードバック制御手段;ならびに
該フィードバック制御手段に接続された光検出器であって、該光が誘導される表面とは反対側の該膜材料の面に且つ該材料に隣接させて配置されるよう適合され、且つ、該材料を通過した光および該少なくとも1つの細孔が形成されたときにこれを通過した光を分析するよう適合された光検出器。
【請求項49】
フィードバック制御手段が、シャッターである、請求項48記載のシステム。
【請求項50】
光源と材料との間で誘導光の中に配置するよう適合されたホモジナイザーをさらに含む、請求項48記載のシステム。
【請求項51】
光源と材料との間で誘導光の中に配置するよう適合された照明レンズをさらに含む、請求項48記載のシステム。
【請求項52】
光検出器とフィードバック制御手段との間の接続が電子回路を含む、請求項48記載のシステム。
【請求項53】
光検出器が、フォトダイオードを含む、請求項48記載のシステム。
【請求項54】
光源が、レーザーである、請求項48記載のシステム。
【請求項55】
レーザーが、UVレーザーである、請求項54記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−528980(P2007−528980A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508252(P2005−508252)
【出願日】平成15年8月14日(2003.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/025455
【国際公開番号】WO2005/020392
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(304043914)アラダイム コーポレーション (3)