説明

材料の精密加工のための方法と装置

【課題】改良された生体組織のミクロン精度の精密加工のためのレーザー装置を提供する。
【解決手段】この高精度材料加工法、特に生体組織のための方法においては、パルス長50 fs〜1 ps、パルス周波数50 kHz〜1 MHz、および波長600〜2000 nmを有するレーザーパルスが、加工すべき材料に作用させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料および組織の精密加工のためのフェムト秒レーザーシステム、特に生体材料好ましくは眼のミクロン精度の精密加工のためのレーザー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この分野に対する重要な寄与である、本件の出願人によるドイツ特許DE 197 46 483号には、大きなスポット径を有するレーザーによって材料の大きな表面領域にわたって加工する場合に、ミクロン精度で巨視的な量の材料を切除、気化、または溶解(CO2レーザー、Nd:YAG、エキシマー、...)する方法が開示されている。
【0003】
この分野に対するもう一つの重要な寄与である、本件の出願人によるドイツ特許DE 197 27 573号には、実現しうる、材料のもっとも精密な最善の加工を保証するためにレーザービームを偏向しうる方法が記載されている。
【0004】
US 5,656,186号明細書には、材料を加工すると同時に、材料に応じて、特別なパルス持続時間を選択することにより、損傷を与える二次効果(へりの溶解、熱損傷、音響衝撃波、亀裂生成)を防止または最小限に抑える方法が記載されている。
【0005】
レーザーの材料加工作用は、光強度が光破壊のしきい値を超えるのに十分な大きさの、レーザー焦点の小さな空間体積(一般に、数μm3)に限られている。焦点体積に限って、材料の結合が破壊され、キャビテーション泡が形成される。各レーザーパルスごとにレーザー焦点が新しい位置にできるようにすれば、直線、平坦、あるいは3次元切断パターンを形成させることができる。操作の終了時の、隣接キャビテーション泡の間隔は、これらの泡の直径と大体一致させ、材料が切れ目に沿って機械的に簡単に除去できるようにしなければならない。
【0006】
フェムト秒レーザーパルスによって材料を加工するためのレーザー装置の励起においては、フェムト秒発振器の個々のパルスを増幅する15 kHz以下の繰り返し数の再生増幅器を使用する。この発振器そのものはnJ領域のパルスエネルギーを与えるだけであるが、パルスは再生増幅器によって数mJまで増幅することができる。これらのレーザー発生源は、大きなレーザーパルスあたりの切除速度を用いる用途に適しているが、精密切断のための前記用途に最適とはいえない。
【0007】
屈折に関する角膜手術のために前記タイプのレーザーを使用することは公知である。通常のパルスエネルギーは5〜10μJである。この場合、直径10〜30μmの直径のキャビテーション泡が形成される。これらの泡寸法により、生成される切れ目に同程度の大きさの微小粗さが生じる。一方、この程度の大きさの微小粗さのため、不十分な屈折に関する結果しか得られない、ということが知られている。
【0008】
K.Konigほかは、Optics letters,Vol.26,No.11(2001)において、フェムト秒発振器からのナノジュールパルスによっても組織の切断を行うことができる方法を述べている。しかし、個々のレーザーパルスはキャビテーション泡の生成をもたらさず、切断作用を生じさせるためには、同じ位置に複数のパルスをあてる必要があるので、この方法は、ミクロンスケールの非常に微細な切断形状の場合にのみ適当である。このレーザー発生源は工業または医療使用のためには適当でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、先行技術の欠点を克服する、材料の精密加工のための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、独立クレームに示す方法と装置により達成される。その他の有利な構成は従属クレームに示される。
特に、前記目的は材料特に生体材料の精密加工のための装置によって達成される。この装置は、加工すべき材料内に、10μmよりも小さな直径のキャビテーション泡を生成する。これを実現するために、5μJよりも小さなパルスエネルギーのパルスレーザービームが数ミクロンの焦点直径に集束させられる。焦点直径は好ましくは約3μmであり、パルスエネルギーは好ましくは1μJである。また、この装置は、50 kHzよりも大きなパルス繰り返し数の使用により、非常に高速の加工が可能である、ということを特徴とする。これは、特に屈折に関する角膜手術に対して大きな利点となる。この場合、数秒〜約1分の手術時間が実現されるからである。
【0011】
また、この目的は、前記パラメータを有するパルスレーザーシステムを線源として備えた、材料特に生体材料の精密加工のための装置によって達成される。この場合、線源からの加工ビームを、ビーム偏向のための少なくとも一つの装置を有するビーム装置によって、材料に作用させることができる。パルス放出はビーム偏向と相関させられ、ビーム偏向のための装置はレーザーパルスをオンにする手段を有する。オンにするというのは、レーザー装置がレーザーパルスを発射できるようにし、レーザーパルスを、レーザー装置がその最大繰り返し数を有するレーザーパルスを送り出すことができるようになったらただちにふたたび発射させる、ということである。パルス放出をビーム偏向と相関させるというのは、特に、ビームが所定の点に向けられたときパルス放出を行うことができる、すなわちパルス放出がビーム偏向に応じて制御される、ということである。
【0012】
一つの特定実施形態において、前記目的は、線源としてパルスレーザーシステムを有する、材料特に生体材料の精密加工のための装置によって達成される。ビームエネルギーは約100 nJ〜10μJ好ましくは500 nJ〜5μJである。放射の繰り返し数は、好ましくは50 kHz〜1 MHz特に好ましくは100〜500 kHzである。ビームの焦点直径は好ましくは約500 nm〜10μm特に好ましくは3〜5μmである。放射のパルス持続時間は好ましくは約100 fs〜1 ps特に好ましくは200〜500 fsである。
【0013】
ビーム整形および/またはビーム偏向のための装置、またはより一般にビーム整形およびビーム偏向のシステムは、回折もしくは屈折微小光学装置または適応光学装置または通常の光学システムを有することができる。いくつかの通常の光学要素を回折または屈折要素で置き換えることができる。
【0014】
材料の精密加工のための前記装置は、好ましくは、眼科における眼の治療、特に眼の視力の欠陥の矯正のために使用される。この装置は、視力の欠陥の矯正のために、角膜に組織弁または微小レンズ(lenticle)を切るために使用することができる。微小レンズの切断のほかに、本発明の装置により、角膜内に屈折構造、たとえば横並びの平坦スポットまたは点の集合体(cloud)の形のものを作ることもできる。
【0015】
レーザーパルスは屈折構造を作るために直接作用させることもできる。たとえば、材料または液体を気化させることにより、眼の水晶体内に小さな泡を作ることができる。そのためには、たとえば、本発明の装置によって実施できるような非常に多くの割合に低エネルギーのレーザーパルス打ち込みが必要である。
【0016】
同様に可能なことは、本発明の装置により、組織たとえば眼の水晶体内に意図的な切れ目を作り、隣接組織部分の相対変位をより容易にすることによって、眼の柔軟性と弾性とを良くすることである。材料特に生体材料の精密加工のためのこの装置は、本発明のこの側面においては、老眼の治療のための装置として使用することができる。ビーム整形は、通常のやり方、または回折もしくは屈折微小光学装置または適応光学装置によって実施することができる。ビーム偏向は好ましくは走査システムによって実施される。
【0017】
適当なレーザービーム発生源は発振器-増幅器装置である。適当な増幅器は、特に再生増幅器、チャープパルス増幅器(CPA)、または多重通過(multipass)増幅器である。
モード連結(mode-coupled)発振器の構成においては、ディスクレーザー発振器、ファイバーレーザー発振器、およびロッドレーザー発振器が特に好ましい。増幅器の構成においては、ディスクレーザー増幅器、ファイバーレーザー増幅器、およびロッドレーザー増幅器が特に好ましい。
【0018】
レーザー媒質に対する励起源として特に好ましいのは、長寿命、信頼性、制御性、および割合に低い製造価格のため、半導体レーザーダイオードが特に好ましい。
前記レーザービーム発生源における好ましいレーザー媒質は、ドープした固体材料特に結晶およびガラスである。例としては、YAG、タングステン酸塩、サファイア、およびフッ化物ガラスがある。
【0019】
これらの基材には、好ましくはネオジム、エルビウム、チタン、クロム、リチウム、またはイッテルビウムをドープすることができる。これらの材料はすべて、スペクトル範囲600〜2000 nmの広帯域スペクトルのレーザー放射を特徴とし、したがって屈折に関する角膜手術に特に適当な800〜1200 nmのスペクトル範囲が含まれる。
【0020】
前記材料のレーザー放射の広いスペクトル帯域により、レーザーパルスの超短持続時間50 fs〜1 psが保証される。この場合、レーザー装置自身がこのパルス持続時間のパルスを放出する必要はなく、約300 fsの好ましいパルス持続時間を、加工すべき加工物内またはその表面において実現することができる。この目的のために、本発明の装置は、適当なやり方でレーザーパルスのスペクトル位相関数に作用させるための光学装置モジュールを有する。特に、この光学装置モジュールは、光学系の線形チャープに適合する大きさの線形プレチャープ(prechirp)を生成する。この光学装置モジュールは、最初からレーザービーム発生源に適当に統合することもできる。特に、このモジュールはCPAレーザービーム発生源のパルス圧縮器と結合することができ、または同一のものとすることができる。
【0021】
ミクロン精度で加工するのに好ましい材料としては、ミクロン領域の構造を有する材料、すなわち格子、コンタクトレンズ、プラスチック、眼内レンズ(IOL)、半導体ウェーハ、微小光学装置要素、その他がある。生体材料たとえば組織特に人の眼の組織が特に好ましい。
【0022】
パルスレーザーシステムは、fsパルスを生成させるためのレーザービーム発生源とこれに対応する光学装置、特にミラー、レンズ、その他とから成る装置である。
本発明による装置の一つの構成においては、ビーム偏向のための手段は走査モードで動作させられる。線源からの加工ビームは、一つの次元に沿って周期的に繰り返される経路上で偏向させることができ、したがってたとえば、いろいろな直径の円形経路またはらせん経路を生成させることができる。加工ビームの経路は、装置を回転させることにより、または他の手段たとえばミラー、レンズ、格子、その他によってビームをある経路上に保つことのできる装置により、生成させることができる。ビーム偏向のための手段は、所定の経路上を動くことができるように支持されたスキャナーたとえば機械的スキャナーを有することができる。本発明においては、偏向システムの自然な経路上で、たとえば回転偏向システムにおける円形経路またはらせん経路上で、レーザーを偏向させる高速偏向システムを使用する。個々の位置に接近し、所定位置に到達するとただちに該位置に対してレーザーパルスを発射し、その際偏向システムがふたたび停止するというのではなく、偏向システムの経路を、停止することなく通過し、パルスの放出が所定の時刻に開始される。この所定の放出は、焦点の経路移動速度によって与えられる所定の繰り返し数でなされる。
【0023】
焦点位置が所定の点に到達すると、レーザー装置がオンになり、したがってレーザーパルスが加工領域に送られる。その結果、加工体積の経路、短いパルス持続時間中に実質的に予定の経路に沿ってレーザー焦点によって加工される材料の場所が決定される。この予定の経路は、特に、均一かつ所定の距離、たとえばキャビテーション泡の直径の大きさの程度で、隣接加工体積が配置される、ということを特徴とする。一緒になって切断面を形成する追加経路は、偏向システムの自然な経路の小さな変更により、たとえば円形経路半径の小さな減少たとえば隣接加工体積間の距離に対応する量だけの減少により、描くことができる。たとえば、同心経路、らせん経路、その他を生成させることができる。偏向ミラーを使用する場合、この作業は、たとえば、傾斜を変える一方で、ミラーの回転を一定に保つことにより、実行できる。その目的は、加工体積またはレーザー焦点の均一格子によって必要切断面を覆うことである。偏向システムの自然経路は、レーザーシステムの大きな繰り返し数のおかげで、所定の時系列で非常に高速で通過できる。このとき、レーザーパルスの時系列を適当に選ぶことにより、レーザー打ち込みスポットによる必要な切断面被覆率を得ることができる。
【0024】
さらに、ビーム整形および/またはビーム制御および/またはビーム偏向および/またはビーム集束のためのビーム装置が、本発明のもう一つの実施形態によって与えられる。これらのビーム装置により、意図する用途で必要なだけの精度で材料が加工されるように、ビームを配向し、案内することができる。特に、約1μJという低パルスエネルギーのため、3μmの程度の大きさの焦点直径に集束される超短レーザーパルスにより、材料の隣接領域に対する熱的、音響的、または機械的負荷なしで、材料の結合を切断し、かつ/または材料に構造変化を生じさせて、小さく正確なキャビテーション泡を生成する。センチメートルスケールの巨視的切断および構造の場合、レーザー焦点は加工すべき材料の全体にわたって3次元的に走査される。それぞれの用途により、大きな加工速度と高い精度とを同時に実現するために、ビーム発生源、ビーム制御とビーム整形、スキャナー、走査アルゴリズム、および集束光学装置をどのように整合させるかが決定される。
【0025】
ビーム整形は、好ましくは、ビーム直径を拡大して、レーザーが対応する小さな焦点に集束することができるようにする望遠鏡(好ましくは、集光レンズと発散レンズとを有するガリレオ望遠鏡)によって実行する。好ましくは、望遠鏡の結像誤差を最小限に抑えるレンズ系を使用する。
【0026】
好ましくは、ビーム制御は、個々の下位要素において、ビームを調節できるミラーまたはミラー対によって行う。
ビーム偏向装置は、通常のスキャナー、または機械的レーザービーム偏向システムたとえば閉ループモードのガルバノミラーその他を有することができる。しかし、所定の経路(たとえば、円形経路)を通過し、それに応じて所定の位置でビーム発生源を作動させることによって作動する機械的スキャナーが好ましい。このようにして、大面積の切断面を割合にゆっくりしたスキャナー運動により十分な繰り返し数で加工することができる。
【0027】
ビーム集束装置は、材料表面または材料内のビームの焦点で材料の一体性を破壊する(光切断)のに使用される。これは一般に材料の局所気化を伴う。好ましくは、レーザーはこの目的のためにミクロン領域の直径に集束させられる。この直径は可視および近赤外領域の光の回折限界に近い。したがって好ましくは、集束光学装置は大きな開口数を有し、したがって短い焦点距離と大きな口径(拡大されたレーザービーム直径)を有する。レーザー発生源からやってくるビームは、好ましくは、材料または組織に集束する前に、直径が拡大される。したがって好ましくは、ビーム制御、ビーム偏向、およびビーム集束のためのシステムは、大ビーム直径用として設計する。
【0028】
レーザー発生源、ビーム偏向(スキャナー)、および集束光学装置は、光切断によって精密な高速切断が可能になるように、整合させられる。約100 nm〜数μmの集束直径を有するレーザースポットが、キャビテーション泡直径程度の大きさのスポット距離で材料内に配置される。
【0029】
特に好ましい実施形態においては、ビーム装置特に偏向装置はプログラム可能である。それぞれのビーム装置を互いに整合させて、対応するプログラムによって制御する能力により、ビーム装置のシステムとパルスレーザーシステムとを、材料とその材料に対して使用すべき切断要件とに合わせて正確に調節することができる。すなわち、パラメータの組が、加工すべき材料の透明度と屈折能力、および必要な切断形状と作業の持続時間に応じて、プログラムによってあらかじめ選択される。
【0030】
本発明の別の好ましい実施形態においては、加工すべき材料の位置決めおよび/または固定のために、保持装置が備えられる。これらの保持装置によって保証されるのは、本発明によってレーザーにより形成させることのできるミクロン精度の構造が、加工すべき材料特に人の眼の制御できない運動によって損なわれることがない、ということである。
【0031】
前記のような種類の固定および位置決め装置は、好ましくは最適調節のために加工物を移動および傾斜させるために多軸調節能力を有する、簡単な加工物のクランプ装置とすることができる。さらに、器官たとえば眼に対する医療用途のための固定装置は、その場合の生物学的要因に合わせなければならない。人の眼は、たとえば特別の取りつけ具と真空吸引リングとによって固定することができる。
【0032】
前記の大繰り返し数と前記の低パルスエネルギーおよび偏向装置とにより、光切断のためのレーザーの作用を精密に局在させることができる。そのようにして、材料構造を明確に定められた焦点体積内で破壊することができ、隣接する領域(μmよりも小さな距離しか離れていない)では、大体において材料には変化がない。したがって、材料の隣接領域の損傷なしで、高い加工精度(ミクロン精度)が得られる。加工されない領域に対する熱および機械的負荷は、他の切断法の場合に比してかなり小さい。
【0033】
本発明の装置のもう一つの好ましい実施形態においては、線源からの加工ビームを、ビーム装置特に偏向装置によって、あらかじめ定めることのできる時系列により、あらかじめ定めることのできる幾何的形状にしたがって、材料に作用させることができる。それぞれの要素間の相互作用により、切れ目と構造とを生成させることができる。一般に、所定のパルスパラメータ(パルスエネルギー、パルス持続時間、焦点)を有する一つのレーザーパルスが、材料構造が分解した一つのスポットを生成させるのに十分である。切断と構造生成とのためには、複数のこのようなスポットを、隣接配置しなければならない。隣接スポット間の距離は、作業の完了時に、キャビテ-ション泡の大きさの程度でなければならない。そのために、レーザー焦点を、材料の表面および内部の全体にわたって、走査移動させることができる。理想的には、レーザー焦点は3次元的な所定の幾何的経路をミクロン精度で追跡する。たとえば、隣接μmスポットから成る組織内の任意の面たとえば長方形の面上を、次々と順次に走査するように動かすことにより、加工すべき材料内に切れ目を生成させることができる。その結果、材料の完全性がこの面において精密に破壊され、したがって組織内に切れ目が形成される。また、スキャナーを円形経路内で円形運動させることにより、加工すべき材料にレーザー焦点を作用させる。たとえば、加工ビームをらせんパターンに沿って順次に案内することにより、材料に円筒面を切ることができる。また、光切断は好ましくは非常に小さな領域内で実施されるので、レーザービームを、焦点の外部にレーザービームが侵入することによる材料への損傷を与えることなく、組織に作用させることができる。このようにして、材料に、任意の幾何的経路したがって形状の切れ目を、光切断によって形成させることができる。
【0034】
屈折に関する角膜手術においては、本発明の装置によって、特殊な切断案内を実現することができる。通常の組織弁を作ることなく、あらかじめ本発明の装置によって角膜内に形成された微小レンズを、やはり本発明の装置によって形成される一つ以上の明確な横切れ目により、周縁から引き出すことができる。そのために、微小レンズを、あらかじめ本発明の装置によって一つ以上の部分に分割するのが有利でありうる。この分割は、分割後これらの部分が吸引/洗浄カニューレによって吸引されて引き出される場合には、特に有効である。
【0035】
本発明の好ましい実施形態においては、パルス加工ビームをビーム偏向装置によって材料に作用させることのできる装置が提供され、この作業においては、加工ビームのパルス繰り返し数を変えることができる。加工ビームを加工すべき材料に対してビーム制御すると同時に繰り返し数を変えるための装置を備えることにより、加工すべき材料に洗練されたやり方で均一なスポットパターンを生成させることができる。これは、ビームが、偏向装置によっていろいろな角度または速度で、加工すべき材料に作用させられる場合でも、そうである。特に著しい利点は、たとえば、偏向装置がビームを円形経路で加工すべき材料に作用させ、これらの円形経路が偏向装置特にたとえば偏向ミラーの特定の回転速度によって生成される場合に、実現される。回転速度が50 Hzの場合に、たとえば、レーザービームを、300 kHzの繰り返し数で直径1 cmの円形経路上を案内すると、60,000スポットが各回転においてそのときの円形経路に均一に分布するように配置される。これと同じ偏向装置回転速度で、ビームを、直径0.5 cmしかない円上を案内する場合、パルス加工ビームの繰り返し数を減少させることにより、大きな円形経路上でビームを案内する場合に生成される個別スポット間隔と同じ距離が、加工すべき材料に生じる。偏向装置がしたがう幾何的形状に応じて繰り返し数を変えることにより、事実上スポット間距離が一定の任意の幾何的パターンを、加工すべき材料に生成させることができる。たとえば、らせん上を、偏向装置の回転速度を一定として、繰り返し数が外から内へ連続的に減少するように進むことができる。これとは異なる任意の他の幾何的形状を生成させることもできる。材料に一定の個別スポット間隔を与える必要がなく、特定領域には高スポット密度、別の領域には低スポット密度を与える必要がある場合、これは、加工ビームの繰り返し数と偏向装置の速度または空間経路とに関して選択パラメータを組み合わせることによっても、実現できる。たとえば、やはり好ましいやり方においては、それぞれの領域で異なる焦点密度を有するように徐々に密度を変えることもできる。円の場合、たとえば、中心では非常に小さな焦点間距離を有し、へりに向って焦点間距離が次第に増大するようにすることができる。
【0036】
本発明の目的は、また、前記特徴を有するレーザービーム発生源からのfsパルスを、特に大繰り返し数と低パルスエネルギーとで、材料特に生体材料特にヒトの眼に作用させる方法によっても達成される。この場合、材料は、レーザービームの焦点における、光切断または完全性の破壊によって加工される。
【0037】
本発明の特に好ましい方法においては、パルスレーザービームが、偏向装置によって加工すべき材料に作用させられ、レーザービームのパルス繰り返し数が、材料にこのやり方で生成されるスポットパターンに応じて変えられる。このようにして、任意のスポットパターン、また特に任意の個別スポット間距離を、加工すべき材料に必要な形態で生成させることができる。特に好ましいやり方においては、スポットパターンが、光切断によって生じる各個別スポットのキャビテーション泡が次のスポットのキャビテーション泡にきっちり隣接配置されるように、加工すべき材料に分布させられる。このようにして、キャビテーション泡が密接した必要な切れ目パターンが生成される。ある種の用途においては、スポットをさらに近づけて配置することが望ましいこともある。この配置は、たとえば、加工すべき材料がある時間の経過後に再生されるが、材料の破壊がある時間にわたって保証され、たとえば、加工すべき材料から切断された穿孔芯その他の切断片が除去できる場合に、推奨される。また、最初はスポットを互いに離して配置し、後続のステップにおいて、スポット間のギャップを埋めて、キャビテーション泡の必要なパターンを生成させることも可能である。
【0038】
本発明の装置は、角膜または水晶体を加工することによる、屈折に関する手術のために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明のレーザー装置の実施形態の模式図である。
【図2】外科用顕微鏡および施術される眼とともに示す、本発明のレーザー装置のもう一つの実施形態を示す図である。
【図3】本発明のレーザーシステムによって形成することのできる切断パターンのいくつかの例の模式図である。
【図4】円周上のレーザースポットの並びの詳細模式図である。
【図5】レーザー共振器の内部と外部におけるレーザーパルスの時系列チャートである。
【図6】角膜断面において、微小レンズを生成させるための切断制御を示す図である。
【図7】小さな横切れ目を通して切断微小レンズを引き出す過程を示す。
【図8】切断微小レンズを角膜上面図に示す。
【図9】微小レンズを分割し、二つの横切れ目から引き出すことのできる、切断操作のもう一つの形を示す図である。
【図10】微小レンズが、吸引/洗浄装置によって除去される多くの部分に分割されている、本発明の方法のもう一つの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明のその他の有利な構成について説明する。
図1は、本発明のレーザーシステムの実施形態の各要素を示す模式図である。加工装置1は、線源11としてfsレーザービーム発生源を有する。レーザービーム15は、ミラーとビームスプリッター57とによってビーム拡大光学装置21に連絡している。次に、拡大レーザービーム15´はビーム偏向装置たとえばスキャナーによってXY方向に案内され、ビーム集束装置24にいたる。ビーム集束装置24は、Z軸方向に動くことができ、したがってこのビーム集束装置を矢印Zに沿って変位させることによって焦点を変位させることができる。あるいは、可変焦点距離の集束光学システムを使用して、焦点位置をZ軸方向に制御されたやり方で変位させることができる。このようにして、集束レーザースポット16が加工すべき材料90に作用させられ、このとき材料90は固定装置32によって正しい位置に保持される。この例の場合、材料90は加工すべきコンタクトレンズである。スポット16は、固定装置32を材料上または材料内でX´Y´またはZ´方向に変位させることによって位置を変えることもできる。
【0041】
線源11によって発生させられるレーザービーム15は、加工装置1によって材料90上に集束させられる。数ミクロンの焦点直径は、数mmのビーム直径のレーザービーム15を数cmの焦点距離を有する光学装置によって集束させることによって、実現できる。たとえば、ガウスビーム断面分布(profile)の場合、波長1000 nm、ビーム直径10 mmのレーザービームを焦点距離50 mmに集束させるとき、3μmの焦点直径が得られる。
【0042】
一般に、線源11の出口におけるレーザービーム15の直径は、光学的集束のために必要なものよりも小さい。ビーム拡大光学装置21により、ビーム直径を要求に合わせることができる。好ましくは、無限遠に合わせたガリレオ望遠鏡(発散レンズと集光レンズとの組合せ)を、ビーム拡大光学装置21として使用することができる。この場合、ある種の環境下で光学的絶縁破壊(optical breakdown)を生じうる中間焦点はない。したがって、保持されるレーザーエネルギーは大きく、ビーム断面分布は常に良好である。好ましくは、望遠鏡の最適結像特性を与えるレンズ系を使用する。この望遠鏡を調節することにより、線源11のビーム発散における製造誤差を補正することもできる。
【0043】
この実施形態の場合、レーザー焦点が材料上または材料内を走査するように移動させられる。したがって、レーザー焦点またはレーザースポット16は、ミクロン精度で3次元走査される。拡大レーザービーム15´は、偏向装置23によってもとのビームの方向に直交する方向に偏向される。集束光学装置24通過後の焦点16の位置は、もとのビームの方向に直交する向きに変位する。したがって、焦点は、実質的に平面でレーザービームの方向(X/Y方向)に直交する面内で動かすことができる。一方、ビームの方向(Z方向)に平行な移動は、加工物を移動させる(矢印Z´)ことによって実行できる。この場合、操作手順は、好ましくは、加工物はゆっくりと移動させ、高速の走査運動を偏向ユニットで実行するように、構成される。また、集束光学装置をレーザービームの方向(Z方向)に平行に移動させて焦点のZ方向位置を下げることもできる。特に、医療用途の場合、第二のやり方が好ましい。一般に患者を十分速く動かすことはできないからである。
【0044】
加工される材料90は、固定および調節装置32内に、レーザー装置に相対するように取りつけられる。この場合、固定装置は好ましくはビーム装置に直交および平行な方向に調節され、材料90内の意図する位置に切断パターンが形成されるようにすることができる。パイロットレーザー27から出てくる、加工レーザービーム15、15´と共線の可視レーザービームが、調節を支援する。
【0045】
ミラーまたはミラー対22が、個々の要素の間でのビーム制御とビーム位置の精密調節とのために備えられている。ミラーは、好ましくは、加工レーザーの波長において反射率が大きくて加工レーザービームがミラーを破壊することはなく、かつパイロットレーザーを十分に反射するように構成される。コーティングは、ミラーが実質的にレーザーパルス持続時間を引き延ばさないように選択される。特に好ましいやり方では、少なくとも一つのミラーがチャープミラー(chirped mirror)であり、該ミラーによって、ビーム経路内に存在するすべての光学装置の分散を補正して、最適の短いパルスを加工焦点において実現することができる。
【0046】
図2は、外科用顕微鏡を有する本発明のレーザー加工装置のもう一つの実施形態である。この構成は図1の構成と本質的には同じてある。同一部品は同じ参照番号で示す。この例では、ヒトの眼を材料90として示す。精密な切れ目をヒトの眼の角膜に作ることのできるこのレーザー装置を、以下で例として詳しく説明する。角膜の曲率にしたがい、眼の光軸に中心をおく円形面が、fsレーザーパルスによって角膜内に加工できる。角膜組織弁が、弧状周縁切れ目によって、円形面から角膜の外部に向って形成され、レーザー切断のあと、片側に開くことができる。
【0047】
前記のような組織弁は、LASIK手術の準備のために作られる。該手術においては、角膜の厚さがレーザーアブレーションによって、眼の屈折誤差が矯正されるように、変えられる。以前には、この切断は機械的角膜切開刀手術(keratomy)によって実施されたが、これは、医師の側の高いレベルの訓練を必要とし、危険に満ちたものである。また、角膜の屈折矯正は、組織弁を開いてから除去できる微小レンズを組織弁の第一の円形面と協同して包囲するもう一つの湾曲円形面を作る同じ加工ステップによって実施することができる。
【0048】
本発明の特定実施形態においては、眼が吸引リング32によって接触ガラス31に押しつけられ、該ガラスは平面であるか、または好ましくは大体角膜の曲率に適合させたものである。吸引リングは、レーザー装置の出口窓と固定連結されており、それによってレーザー焦点に対する角膜の所定位置が与えられる。拡大フェムト秒レーザービームは光学装置24によって角膜内に集束させられる。レーザー波長に対して反射率が高く、可視光を通過させるビームスプリッターが、眼を観察し中心を合わせるのに使用される外科用顕微鏡のビーム経路でレーザービームを反射する。集束光学装置24が顕微鏡対物レンズの部分を構成する。集束光学装置(bundling optics)と協働して、角膜の中間実像を生成させることができ、これを立体接眼レンズ80によって3次元観察することができる。ビーム偏向ユニット23が拡大レーザービーム15をその伝播方向に垂直に偏向させる。したがって、レーザー焦点を角膜内のいろいろな位置に向けることができる。焦点の深さは、集束光学装置23を光軸に沿って変位させるか、または集束光学装置の焦点距離を調節することにより、変えることができる。
【0049】
好ましくは、偏向ユニットは円形経路を追跡する。円形面の切断のために、円の半径が一つの円形経路から次の円形経路へと減少させられ、繰り返し数が、均一スポット距離が維持されるように調節される。焦点の深さは、一つの円形経路から次の円形経路へと、切れ目が角膜の曲率にしたがうように、調節される。乱視に関する視力矯正(円柱形矯正)を行うために、焦点を円形経路に沿って上下させ、円柱形水晶体部分から成る微小レンズが形成されるようにすることができる。組織弁のへりにおいて、焦点の深さを次第に組織弁の基底から角膜の外側に向って変位させ、一方半径は一定のままにして円筒形ジャケットが形成されるようにする。レーザービーム照射を前記円のある弧状セグメントにおいては停止して、形成組織弁を保持するヒンジが残されるようにしなければならない。そのためには、単に線源11からのレーザーパルスを切るだけで良い。
【0050】
線源11は前記パラメータを有するフェムト秒線源であり、好ましくは直接にダイオード励起されるものであり、したがって簡単で高信頼性である。放射されるレーザービーム15は、好ましくは、ガリレオ望遠鏡によりビーム直径1〜2 cmに拡大される。パイロットレーザー27からの可視レーザービームが、拡大レーザービーム15と共線に重ねられ、それから加工レーザービームとともに走査され、集束させられる。そのために、ビームスプリッター57はフェムト秒レーザー波長に対しては透明であり、パイロットビームは反射する。
【0051】
多くの可能な切断形状は、走査手順のみに依存する。原理的には、ここで述べたようなレーザー装置は、切れ目または構造変形を、眼の透明な部分(角膜、水晶体、ガラス体)内、または不透明部分たとえば強膜、虹彩、および毛様体に関して実施する、非常に多くの用途(たとえば、屈折に関する視力矯正)に対して適当である。したがって、本発明は、このような小さな使用領域に関してさえも、汎用性と精密さ(周囲組織への損傷を避ける)に関して、既存の技術に比してはるかにすぐれたものである。
【0052】
本発明のレーザーシステムの使用によって実現できる切断形状の例を、図3a〜3dに示す。これらの使用例は単なる例として示すものであり、多くの他の形状が実現できる。材料90の完全性がレーザーの焦点16内で破壊される(光切断)。一般に、これは材料の局所的気化によって生じる。レーザーパルスの作用のあと、材料構造が小さな体積内で破壊され、キャビテーション泡(以下では、スポット16とも呼ぶ)が、永久に、または少なくとも作業時間の終わりまでの時間中、生じる。したがって、強く集束したフェムト秒レーザーの使用により、レーザー作用の非常に正確な局所化がなされる。したがって、明確に定まった焦点体積内では、材料の構造が破壊されるが、密接する領域(1μmよりも近い距離)内では一般に材料の変化は起こらない。そのため、高い加工精度が得られるが、材料の隣接領域の損傷は避けられる。
【0053】
切断と構造形成とのために、材料構造を破壊する多数の個別スポットが互いに近接して配置される。隣接スポット間の距離は作業の終了時のスポット直径の程度とすべきである。図3aにおいては、所定の体積(たとえば、材料の穿孔)が、除去すべき体積を個別スポット16によって完全に満たすことによって、形成される。この種の不透明材料の場合、レーザーに対面するスポット層からはじめて一層ずつ進められる。
【0054】
図3bにおいては、穿孔のへりのみがスポットで覆われる。この場合、切れ目は材料を貫通するように示されている。スポット16は、鎖線で示す軸Zのまわりに回転対称となるように配置すべきである。この場合、穿孔芯が加工される材料90の中央に形成されている。このあと、この穿孔芯は一体片として除去できる。したがって、必要なレーザーパルスの量が、図3aの場合に比して、かなり大きく減少する。穿孔の断面積が大きい場合には、特にそうである。
【0055】
図3cには、透明材料90のくり抜きを示す。光線は材料90によっては吸収されないので、材料の完全片を、この材料片が表面に接する切れ目の周縁にスポットを配置することによって材料から切り離すことができる。
【0056】
図3dは、空洞または構造(たとえば、光学的特性の変化のため)を材料の構造に応じてどのように形成しうるかを示している。
巨視的切断形状(cm領域)の場合、十分な密度のスポットで切断面のみを覆う(図3bおよび3c)のに、数百万のレーザースポットが必要である。多くの用途(特に、医療用途)においては、作業時間あるいは治療時間をできるだけ短くするのが有利である。本発明においては、レーザー装置の線源は、大繰り返し数でレーザーパルスを送り出すことができる。図4には、個々のレーザーパルスによって加工される個々のスポット16が、スキャナーが連続的に走査できる経路に沿って配置される可能な走査パターンの部分を模式的に示す。線源11の大繰り返し数においてスポット間の十分大きな距離を実現するために、焦点を、三つの走査次元の少なくとも一つにおいて非常に高速で移動させる。したがって、好ましくは、走査アルゴリズムは、偏向ユニットの自然な運動に対応する経路に沿ってスポットが配置されるように、設計される。このとき、他の二つの次元における運動は割合に低速で行うことができる。偏向ユニットの自然な経路は、たとえば、偏向ユニットが一定の回転速度で移動することができる円形経路とすることができる。これは、たとえば、偏向ユニットの光学要素を回転させることによって実行することができる。この場合、円形経路の半径と焦点の深さ(Z方向)とは、ゆっくりと変えうる走査量である。この変形は、回転対称な切断形状を作り出さなければならない場合に、特に適当である。この場合、レーザーの繰り返し数は、円形経路の回転速度を、線源の最大繰り返し数によって、移動すべき最大円形経路(B)における必要なスポット距離dが与えられるように選択した場合に、特に有利に使用できることになる。切断パターン全体にわたる移動時に円形経路(A)の半径が小さくされたときには、それに応じて線源の繰り返し数を小さくして、ふたたび最適スポット距離を実現することができる。繰り返し数のこの調節は、前記のレーザー線源によって容易に実現することができる。回転速度を線源の繰り返し数に合わせることは、技術的にはより難しい。各円形経路(A、B)に対して連続的にこれを実施しなければならない場合には、特にそうである。しかし、作業時間の短縮のために、回転速度を数ステップ間隔で小さな円形経路に合わせるのが有利でありうる。
【0057】
図5には、レーザーパルスの可能な系列を、発振器-増幅器装置の内部と外部とに関して示す。発振器40におけるレーザーパルスの回転速度は、共振器の長さのみに依存し、所定の線源に関してあらかじめ決定され、2〜3 mの共振器の長さの場合、約100 MHzである。ここに示す再生増幅の場合、たとえば、パルス41が増幅器に送られて増幅される。小さな繰り返し数が必要な場合、パルス43の増幅が実行される。このようにして、増幅されたレーザーパルスの繰り返し数が、経済的なやり方で変えられる。
【0058】
図6は、前面100と後面101とを有するヒトの角膜107における切断を示す。微小レンズ103が二つの面状切れ目104と105とによって形成される。角膜の前面100まで達する小さな横切れ目102により、微小レンズ103を引き出すことができる。この引出しを図7に示す。残される空洞はつぶれて106になる。
【0059】
図8は角膜の上面を示す。この図には、微小レンズ103の境界111と角膜の前面に導く切れ目102とを示す。角膜の前面は線110に沿って切り離され、前記レンズを引き出すことができる。
【0060】
図9は、切断を行うのに好ましいもう一つのやり方である。微小レンズは切れ目122によって二つの部分123と124とに分割される。一つの引出し切れ目110の代わりに二つの引出し切れ目120と121とが作られる。そのあと、レンズ部分123が引出し切れ目120から取り出され、レンズ部分124が引出し切れ目121から取り出される。
【0061】
図10は、本発明の方法のもう一つの実施形態を示す。この場合、へり111によって区切られる微小レンズが多数の小片132に分割される。この場合、これらの小片132を、好ましくは小片の寸法に合わせた直径を有するカニューレ133によって、吸い出すことができる。このプロセスは、第二のカニューレ134を有する洗浄装置によって促進することができる。このカニューレは、対向配置の導管内に配置することができ、あるいは同じ導管内に配置することができる。洗浄媒質136、135は好ましくは等張食塩水であるが、他の溶液も使用できる。このプロセスにより、屈折に関するレーザー手術のこの方法における角膜の弱体化が最小限に抑えられる。
【0062】
以上、本発明を好ましい実施形態に即して説明した。当業者は、特許請求の範囲によって定められる保護範囲を逸脱することなく、変形を加えることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 加工装置
11 線源
15 レーザービーム
15´ 拡大レーザービーム
16 集束レーザースポット
21 ビーム拡大光学装置
22 ミラー
23 偏向装置
24 ビーム集束装置
27 パイロットレーザー
31 接触ガラス
32 固定装置
40 発振器
41 パルス
43 パルス
57 ビームスプリッター
80 立体接眼レンズ
90 加工すべき材料
100 前面
101 後面
102 横切れ目
103 微小レンズ
104 面状切れ目
105 面状切れ目
106 つぶれた空洞
107 角膜
110 線
111 境界
120 引出し切れ目
121 引出し切れ目
122 切れ目
123 103の部分
124 103の部分
132 微小レンズの小片
133 カニューレ
134 第二のカニューレ
135 洗浄媒質
136 洗浄媒質
A 円形経路
B 円形経路
XY 方向
X´Y´ 方向
(図1)
Z 方向
Z´ 方向
(図3B)
Z 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織の精密加工のための装置であって、
パルス長50 fs〜1 psおよびパルス周波数100 kHzより上〜1 MHzを有するパルスレーザと、
ビーム整形および/またはビーム制御および/またはビーム偏向および/またはビーム集束のためのビーム装置とを備え、
前記ビーム装置は、第一の切断面を組織内に形成し、該第一の切断面とともに、実質的にレンズ形の組織の切断部分を包囲する第二の切断面を形成し、組織の表面と組織の前記切断部分との間に少なくとも一つの切れ目を形成すべくレーザーパルスを組織上または組織内に集束し、かつ焦点を3次元誘導する、生体組織の精密加工のための装置。
【請求項2】
各レーザーパルスのエネルギーが100 nJ〜5 μJより下であることを特徴とする請求項1に記載の生体組織の精密加工のための装置。
【請求項3】
前記ビーム装置がプログラム可能であることを特徴とする請求項1に記載の生体組織の精密加工のための装置。
【請求項4】
さらに、保持装置が、加工すべき生体組織の位置決めおよび/または固定のために備えられていることを特徴とする請求項1から3の中のいずれか1つに記載の生体組織の精密加工のための装置。
【請求項5】
線源からの加工ビームを、あらかじめ決定できる時系列により、あらかじめ決定できる幾何的形状で、ビーム装置によって、生体組織に対してまたは生体組織内に作用させることができることを特徴とする請求項1から4の中のいずれか1つに記載の生体組織の精密加工のための装置。
【請求項6】
パルス加工ビームを、ビーム偏向装置によって生体組織に作用させることができ、このとき繰り返し数を変えることができることを特徴とする請求項5に記載の生体組織の精密加工のための装置。
【請求項7】
レーザーがファイバーレーザーであることを特徴とする請求項1から6の中のいずれか1つに記載の生体組織の精密加工のための装置。
【請求項8】
レーザーがディスクレーザーであることを特徴とする請求項1から6の中のいずれか1つに記載の生体組織の精密加工のための装置。
【請求項9】
レーザーがファイバーレーザー発振器とディスクレーザー増幅器との組合せであることを特徴とする請求項1から6の中のいずれか1つに記載の生体組織の精密加工のための装置。
【請求項10】
前記少なくとも一つの切れ目が前記切断部分を引き出すために使用される、請求項1から9の中のいずれか1つに記載の生体組織の精密加工のための装置。
【請求項11】
前記パルスレーザは、レーザーパルス間の時間間隔を焦点の位置に応じて変えられるように構成されている、請求項1から10の中のいずれか1つに記載の生体組織の精密加工のための装置。
【請求項12】
前記ビーム装置は、前記焦点が誘導される速度を焦点の位置に応じて変えられるように構成されている、請求項1から11の中のいずれか1つに記載の生体組織の精密加工のための装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−63336(P2013−63336A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−3727(P2013−3727)
【出願日】平成25年1月11日(2013.1.11)
【分割の表示】特願2006−508415(P2006−508415)の分割
【原出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【出願人】(505444983)