説明

材料の組み合わせライブラリを構築するための命令セットの設計法およびその使用

【課題】セルの利用効率が高い材料の組み合わせライブラリを構築するための命令セットの設計法を提供する。
【解決手段】材料の組み合わせライブラリを構築するための命令セットの設計法であって、コンピューターが、(1)ライブラリを構成する成分を規定するステップ、(2)組成図上においてライブラリがカバーする組成範囲を表す三角形の図形を与えられるステップ、(3)前記で定義した三角形の領域を点集合に変換するステップ、(4)ライブラリのセルと前記の(3)で定義した点を対応付けて割付けられるステップ、および(5)ライブラリの各セルに供給する3成分の堆積量の傾斜を定義して各成分毎に各セルへの成分供給量を定めるステップを含み、複数の成分を含む材料のライブラリを構築する際に、基板に対してライブラリの配置を行うために、基板を複数の領域に分割して入力される材料の組み合わせライブラリを構築するための命令セットの設計法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の組み合わせライブラリを構築するための命令セットを設計する方法に関し、特にマスクを用いた堆積を含む方法によって材料の組み合わせライブラリを基板上に構築するための命令セットを設計する方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の成分を含有する材料の開発は、組成を変えた材料を1種類ずつ作製し、そして試験することによって行われてきた。しかしながら、望まれる材料の組成が複雑であり、また広い範囲の組成について検討しなければならない場合、この方法は、長い期間を有するようになり、また高いコストを伴うようになってきた。
【0003】
この問題を解決するために、コンビナトリアルケミストリー(Combinatorial Chemistry)と呼ばれる分野が存在する。コンビナトリアルケミストリーは、多様な材料(化合物を含む)の集合体又はライブラリを一度に構築し、且つ/又は所望の性質を有する化合物又は材料を、このライブラリから選別する技術である(特許文献1及び2)。このような多数の材料のライブラリの構築は、研究者に多様な材料についての情報を提供し、それによって開発の速度を増加させる。また、コンビナトリアルケミストリーは広義には、実際には材料を作らずに、コンピューター上で作製した構造式に基づいて材料の特性を評価すること、材料を構成する個々の成分の特性に基いて、材料の特性をコンピューターで評価すること等も含む。
【0004】
前記のコンビナトリアルケミストリーにおけるライブラリとは、一般に様々な形態をとることが知られており、材料が円形に配列したものや、三角形に配列したものや、マトリクス状に配列したものが代表的である。
一方、このようなコンビナトリアルケミストリーの使用に関し、全ての可能な材料についてのライブラリを構築すること、又はコンピューター上で評価することは一般的ではなく、材料の構造又は材料の組成の範囲を予め定めておくことが一般に行われる(特許文献1〜4)。
【0005】
上記のようなコンビナトリアルケミストリーの適用範囲は多岐にわたり、堆積を含む方法のためにコンビナトリアルケミストリーによるライブラリ構築方法を適用することが提案されている。例えば、特許文献2で示されているように、コンビナトリアルケミストリーと呼ばれる多様な材料の集合体又はライブラリを一度に構築する技術を、スパッタリング等の堆積を含む方法によって製造される材料に適用することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3665741号
【特許文献2】特許3893152号
【特許文献3】特開2004−86892号
【特許文献4】特開2004−158008号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来公知のコンビナトリアルケミストリーによりライブラリを構築する方法は完全に満足のできるものではなかった。
このため、本特許出願人は、材料の組み合わせライブラリを構築するための命令セットの生成方法、その利用について特許出願を行った(特願2008−22866)。この出願の発明によれば、例えば図1に示すように指定した組成範囲が三角組成図の矩形領域内で作成される。そして、前記特許出願に記載の方法によれば、ライブラリがカバーする組成範囲の形状をテンプレートとして保持することによってライブラリがカバーする組成範囲を直接指定することが可能となる。
しかし、この命令セットの生成方法によっても、マトリクス状に配置したライブラリのセルに対して三角組成図上に三角形で表される組成群を対応付ける際に多くのセルが利用されずに残り、探索の効率が低下する。
従って、本発明の目的は、セルの利用効率が高い材料の組み合わせライブラリを構築するための命令セットの設計法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、高いセルの利用効率によって基板に対するライブラリの配置を行い得る、材料の組み合わせライブラリを基板上に構築する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、材料の組み合わせライブラリを構築するための命令セットの設計法であって、コンピューターが、(1)ライブラリを構成する成分を規定するステップ、(2)組成図上においてライブラリがカバーする組成範囲を表す三角形の図形を与えられるステップ、(3)前記で定義した三角形の領域を点集合に変換するステップ、(4)ライブラリのセルと前記の(3)で定義した点を対応付けて割付けられるステップ、および(5)ライブラリの各セルに供給する3成分の堆積量の傾斜を定義して各成分毎に各セルへの成分供給量を定めるステップを含み、コンピューターが、複数の成分を含む材料のライブラリを構築する際に、基板に対してライブラリの配置を行うために、基板を複数の領域に分割して入力されることを特徴とする材料の組み合わせライブラリを構築するための命令セットの設計法に関する。
【0009】
また、本発明は、マスクを用いた堆積を含む方法によって材料の組み合わせライブラリを基板上に構築する方法であって、前記の設計法によって得られる命令セットに従って前記マスクを移動させて、各成分群によって構成される材料の層を、前記基板上に堆積させることを含む、材料の組み合わせライブラリを基板上に構築する方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、材料の組み合わせライブラリを構築するための命令セットの設計法において高いセルの利用効率を得ることができる。
また、本発明によれば、材料の組み合わせライブラリを基板上に構築する方法における命令セットの設計法において高いセルの利用効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、従来の命令セットの設計法による所定形状が平行四辺形である三角組成図とそれに対応するライブラリのセルを示す図である。
【図2】図2は、従来の命令セットの設計法による所定形状が三角形である三角組成図の他の例とそれに対応するライブラリのセルを示す図である。
【図3】図3は、従来の命令セットの設計法による所定形状が3個の平行四辺形である三角組成図とそれに対応するライブラリのセルを示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施態様のライブラリにおける複数(2つ)のグループに分割し定義された複数個のセルと三角組成図の点集合とを対応付けて割付けした図である。
【図5】図5は、ライブラリに含まれる材料が、各成分が各々1元素からなるか又は各成分が複数の元素からなる場合の三角組成図である。
【図6】図6は、三角組成図の3成分の組成範囲の一例を示す図である。
【図7】図7は、三角組成図の3成分の領域の一例を点集合によって示す図である。
【0012】
【図8】図8は、本発明の実施態様のライブラリにおける複数(2つ)のグループに分割されて定義された複数個のセルと三角組成図の点集合とを対応付けて割付けした図である。
【図9】図9は、本発明の他の実施態様のライブラリにおける複数(2つ)のグループに分割されて定義された複数個のセルと三角組成図の点集合とを対応付けて割付けした図である。
【図10】図10は、本発明の他の実施態様のライブラリにおける複数(3つ)のグループに分割されて定義された複数個のセルと三角組成図の点集合とを対応付けて割付けした図である。
【図11】図11は、本発明の他の実施態様のライブラリにおける複数(4つ)のグループに分割されて定義された複数個のセルと三角組成図の点集合とを対応付けて割付けした図である。
【0013】
【図12】図12は、本発明の他の実施態様のライブラリにおける複数(4つ)のグループに分割されて定義された複数個のセルと三角組成図の点集合とを対応付けて割付けした図である。
【図13】図13は、本発明の他の実施態様のライブラリにおける複数(4つ)のグループに分割されて定義された複数個のセルと三角組成図の点集合とを対応付けて割付けした図である。
【図14】図14は、本発明の他の実施態様のライブラリにおける複数のグループに分割されて定義された複数個のセルと三角組成図の点集合とを対応付けて割付けした図である。
【図15】図15は、実施例のライブラリにおける3成分の三角組成図上での組成範囲を示す図である。
【図16】図16は、5列5行のライブラリを用いる場合の、図15に示す三角形の領域を25個の点集合に変換した図である。
【図17】図17は、実施例のライブラリにおける複数個のセルを2つのグループに分割されて、それぞれのグループに所属するセルと三角組成図における成分A、B及びCの3成分の領域の点集合とを対応付けて割付けした図である。
【0014】
【図18】図18は、図17のライブラリにおける2つのグループに分割されて定義された複数個のセルを含むグループ1における、3成分の堆積量の傾斜を定めて各成分毎に各セルへの成分組成を定める手順を示す図である。
【図19】図19は、図17のライブラリにおける2つのグループに分割されて定義された複数個のセルを含むグループ2における、3成分の堆積量の傾斜を定めて各成分毎に各セルへの成分組成を定める手順を示す図である。
【図20】図20は、図18および図19のライブラリにおける2つのグループ毎に、各元素の堆積量の傾斜を実現するために、自動蒸着装置が各試料に材料を供給するためのシーケンスにおける各セルへの各成分供給量の傾斜マップを示す図である。
【図21】図21は、図20のライブラリについて、自動蒸着装置によって各成分を供給するためのシーケンで用いられる3種類のマスク(マスク1、2、3)を示す図である。
【0015】
【図22】図22は、図21に示したマスク1、マスク3を用いてグループ1に属する試料にAuを供給するためのシーケンスを示す図である。
【図23】図23は、図21に示したマスク1、マスク3を用いてグループ1に属する試料にCuを供給するためのシーケンスを示す図である。
【図24】図24は、図21に示したマスク1、マスク3を用いてグループ1に属する試料にTiを供給するためのシーケンスを示す図である。
【図25】図25は、図21に示したマスク2、マスク3を用いてグループ2に属する試料にAuを供給するためのシーケンスを示す図である。
【図26】図26は、図20に示したマスク2、マスク3を用いてグループ2に属する試料にCuを供給するためのシーケンスを示す図である。
【図27】図27は、図21に示したマスク2、マスク3を用いてグループ2に属する試料にTiを供給するためのシーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1〜8を参照して、本発明の実施の形態を従来技術と対比させて詳説する。
従来技術によって三角組成図上の組成群を対応付けるとすると、図1に示すように、組成群の形状を平行四辺形とするのが最も容易である。あるいは、組成図の全域又は任意の三角形で表される組成群を上記のセルに割付けたい場合、図2に示すように、セルの大部分が利用されずに残る。逆に、セルを残さず利用する観点からは、図1に示す方法を適用して割付けられた3個の平行四辺形の組成群を用いると、図3に示すように、任意の三角形の組成群を隙間なく埋めることができる。しかし、この方法では、組成がほとんど同一又は同一の試料を多数合成することになるため、結果としてセルの利用効率が低い。
これに対して、図4に示すように、本発明の実施態様のライブラリ上のセルの点集合との対応付けにおいては、基板に対してライブラリの配置を行うために複数のA、B、C成分を含む材料のライブラリが複数(2つ)の領域に分割してグループ化して材料の組み合わせライブラリが構築されており、幅広い組成の試料について適正な配置を行い得る。さらに、ライブラリ又は基板を複数に分割して材料の配列を行うことによって、三角組成図における組成範囲形状と基板上の材料配列のミスマッチが生じない。
【0017】
本発明においては、材料の組み合わせライブラリを構築するための命令セットの設計法であって、コンピューターが、(1)ライブラリを構成する成分を規定するステップ、(2)組成図上においてライブラリがカバーする組成範囲を表す三角形の図形を与えられるステップ、(3)前記で定義した三角形の領域を点集合に変換するステップ、(4)ライブラリのセルと前記の(3)で定義した点を対応付けて割付けられるステップ、および(5)ライブラリの各セルに供給する3成分の堆積量の傾斜を定義して各成分毎に各セルへの成分供給量を定めるステップを含み、コンピューターが、複数の成分を含む材料のライブラリを構築する際に、基板に対してライブラリの配置を行うために、基板を複数の領域に分割して入力されることが必要である。
【0018】
本発明の命令セットの設計法における前記の(1)コンピューターがライブラリを構成する成分を規定するステップにおいて、図5に示すように、成分は三角組成図の頂点として定義される。頂点に定義される成分は単一の元素であってもよく、又は図5に示すように複数の元素からなる化合物であってもよく、ライブラリを構成する元素の数には制限はない。この三角組成図上の1点は頂点の3成分の比率を表すものである。例えば図5の(2)に示すように、三角形の重心の位置にある点においては3成分の比率は等しい。
【0019】
次いで、(2)コンピューターが組成図上においてライブラリがカバーする組成範囲を表す三角形の図形を与えられるステップにおいては、例えば図6の(1)、(2)および(3)に示すように、前記(1)で定義された三角組成図上において組成範囲が三角組成図上に定義される三角形の所定形状を規定して、入力される。
ここで、この所定形状は、堆積において使用されるマスクの形状やライブラリに含まれる個々の材料の基板上における配置などに依存している。
【0020】
次いで、(3)コンピューターが三角形の領域を点集合に変換するステップにおいては、例えば図7に示すように、前記のステップ(2)で定義した三角形の領域を点集合に変換する。この変換における点の間隔は等間隔でも不等間隔でもよい。この変換した点の個数はライブラリのセルの個数と一致していることが必要である。また、このステップ(3)では頂点の3点以外の点の座標は厳密に決めなくても良い。
【0021】
次いで、(4)コンピューターが、ライブラリのセルと前記の(3)で定義した点を対応付けて割付けられるステップにおいては、例えば図8の(1)および(2)に示すように、合成されるライブラリのセルは複数個のセルを含む複数、例えば2つ、3つ、4つ、5つのグループに分割されて、グループ毎に前記ステップ(3)で定義された点とセルとを、三角組成図上に対応付けて割付けて、入力される。この場合、図8では2つのグループが示され、1つのグループに10個のセル、他の1つのグループに15個のセルが割付けられているが、グループは3つ以上であり得て、各グループには任意の数のセルが割付けられ得る。
このグループの分割は、基板に対してライブラリの適正配置、特に最適な配置を行うために、基板を複数の領域、すなわち三角形の領域に分割するものである。
【0022】
本発明においては、前記のステップ(4)の後の(5)コンピューターがライブラリの各セルに供給する3成分の堆積量の傾斜を定義されて各成分毎に各セルへの成分供給量を定めるステップにおいて、各セルに供給する三角組成図上のA、B、C各成分の量は膜厚、質量などによって表示されて、その傾斜が定義され、各成分毎に各セルへの供給量が定められる。
そして、前記のステップ(1)〜(5)によって、コンピューターが、材料を構成する複数のグループ毎の各セルについての3つの成分群を入力される。
本発明は、前記のステップ(1)〜(5)を含むことによって、材料の組み合わせライブラリを構築するための命令セットの設計法において高いセルの利用効率を得ることができる。
【0023】
本発明においては、前記の(5)コンピューターがライブラリの各セルに供給する3成分の堆積量の傾斜を定義して各成分毎に各セルへの成分供給量を定めるステップに続いて、通常は(6)コンピューターが、前記の各セルへの成分供給量に従って3成分を基板に供給するためのシーケンスを定めて入力され、シーケンスに従って各セルへの前記成分供給量をデータ記憶手段から出力し得る。
前記のステップ(6)として、コンピューターが、各成分と対応する蒸発源の選択、マスクおよび基板の所定位置までの動作、堆積量を満足するための蒸発源の制御などの堆積条件の少なくとも1つについて計算を行い、自動蒸着装置が各成分のマッピングを堆積することを可能とする命令のセットを構築、出力するステップが挙げられる。
【0024】
例えば、前記のマスクを用いた堆積を含む方法によって基板上に材料の組み合わせライブラリを構築するための命令セットを設計する本発明の方法に関して、製造装置、例えば蒸着装置によって各成分のマッピングを堆積する材料の製造方法としては、基板上の所望の位置に、所望の材料、例えば元素の薄膜を堆積させることができる任意の物理的マスキング法を挙げることができる。例えば、マスクを用いた物理的気相堆積法、化学的気相堆積法、及び化学的液相堆積法を挙げることができ、より具体的にはスパッター法、スパッタリング法、パルスレーザー堆積法、電子ビーム堆積法、熱堆積法、イオン注入又はドーピング法等、特にパルスレーザー堆積法、スパッタリング法、又は電子ビーム堆積法を挙げることができる。
【0025】
前記のパルスレーザー堆積法では、真空チャンバー内にセットしたターゲット材料に、パルスレーザーを照射することによって、ターゲット材料を瞬時に超高温にして蒸発させ、この蒸気を基板表面で凝縮させて堆積させる。このパルスレーザー堆積法は、様々なターゲット材料に適用でき、例えば複数の成分を含有するターゲット材料に適用して、ターゲット材料と同じ組成の膜を基板上に堆積させることができる。
【0026】
また、マスクを用いた堆積において材料を堆積させる基板は、所望の材料を堆積させることができる任意の基板であり、堆積工程及びライブラリを用いた材料の評価工程が可能となるように選択することができる。
本発明によって、材料を構成する3つの成分群の堆積条件は、その場でコンピューターに入力すること、又は予めコンピューターに備えられたデータ記録手段に記録しておき、材料を構成する3つの成分群の堆積条件をデータ記録手段から必要に応じて出力することができる。
【0027】
前記のマスクを用いた堆積を含む方法によって材料の組み合わせライブラリを基板上に構築する本発明の方法は、本発明の方法によって得られる命令セットに従ってマスクを移動させて、複数のグループに分割されて規定される3つの成分群によって構成される材料の層を、基板上に堆積させることを含む。またこの方法では、堆積させた層を更に熱処理することによって、3つの成分群を層内で拡散及び/又は反応させることもできる。
【実施例】
【0028】
表1に列数が5、6、7で、行数が5〜12であるマトリクスに含まれるセルの総数を示す。
【0029】
【表1】

組成図上に定義した三角形の領域を点集合に変換する際は、点の総数がセルの総数と等しくなるようにする。例えば、マトリクスが5列5行の場合、セルの総数は25である。
【0030】
参考例1
マトリクスの分割と、三角組成図上の点集合との対応付けの1例を図9に示す。
図9に示す例は、36点の点集合に変換された領域に対して、2個のグループの領域に分割した6列6行のマトリクスを三角組成図の点集合に対応付けしたものである。
【0031】
参考例2
マトリクスの分割と、三角組成図上の点集合との対応付けの1例を図10に示す。
図10に示す例は、35点の点集合に変換された領域に対して、2個のグループの領域に分割した5列7行のマトリクスを三角組成図の点集合に対応付けしたものである。
【0032】
参考例3
マトリクスの分割と、三角組成図上の点集合との対応付けの1例を図11に示す。
図11に示す例は、35点の点集合に変換された領域に対して、3個のグループの領域に分割した5列7行のマトリクスを三角組成図の点集合に対応付けしたものである。
【0033】
参考例4
マトリクスの分割と、三角組成図上の点集合との対応付けの1例を図12に示す。
図12に示す例は、45点の点集合に変換された領域に対して、4個のグループの領域に分割した5列7行のマトリクスを三角組成図の点集合に対応付けしたものである。
【0034】
参考例5
マトリクスの分割と、三角組成図上の点集合との対応付けの1例を図13に示す。
図13に示す例は、28点の点集合に変換された領域に対して、4個のグループの領域に分割した5列6行の、一部のセルを使用しないマトリクスを三角組成図の点集合に対応付けしたものである。
【0035】
参考例6
マトリクスの分割と、三角組成図上の点集合との対応付けの1例を図14に示す。
図14に示す例は、36点の点集合に変換された領域に対して、4個のグループの領域に分割した5列8行の、一部のセルを使用しないマトリクスを三角組成図の点集合に対応付けしたものである。
【0036】
実施例1
1.ステップ1
Aに対してAu、Bに対してCu、Cに対してTiを対応させる。
2.ステップ2
Au−Cu−Tiの三角組成図上に、図15に示す三角形の領域を定義する。
端点における3成分の比率は、それぞれ以下の通りである。
a点:Au:84at%、Cu:8at%、Ti:8at%
b点:Au:8at%、Cu:84at%、Ti:8at%
c点:Au:8at%、Cu:8at%、Ti:84at%
3.ステップ3
図16の(1)に示す5列5行のライブラリを用いて、図16の(2)に示す三角形の領域を25個の点集合に変換する。
【0037】
4.ステップ4
図17の(1)に示すようにナンバリングされたセルを2個のグループに分割し、それぞれのグループに所属するセルと、ステップ3で定義した点集合の対応付けを行う。
5.ステップ5
各試料の組成を決める。ここでは三角形状に配列したグループの、頂点に位置する3試料の組成を定めてから、頂点間に位置する試料の組成を決めていく。先ず、図18に示すように、手順1で、グループ1の1番、21番、25番試料のAu、Cu、Tiの組成比を決めてから、次に手順2で、それらの3つの試料の間に位置する試料のAu、Cu、Tiの組成比を決める。
次いで、図19に示すように、手順1で、グループ2の2番、5番、20番試料のAu、Cu、Tiの組成比を決めてから、次に手順2で、それらの3つの試料の間に位置する試料のAu、Cu、Tiの組成比を決める。
6.ステップ6
ステップ4で分類したグループ毎に、ステップ5定義した各元素の供給量の傾斜を実現するために、装置が各試料に材料を供給するためのシーケンスを定める。先ず、図20に各グループ、各元素毎の供給量の傾斜マップを示す。
次に、蒸着法にて各成分を供給するためのシーケンスを示す。図20に使用する3種類のマスクを図21に示す。
【0038】
図21に示すマスク1、マスク3を利用して、グループ1に属する試料にAuを供給するためのシーケンスを図22〜27に示す。
図22はグループ1の試料にAuを供給するシーケンスである。
図23はグループ1の試料にCuを供給するシーケンスである。
図24はグループ1の試料にTiを供給するシーケンスである。
図25はグループ2の試料にAuを供給するシーケンスである。
図26はグループ2の試料にCuを供給するシーケンスである。
図27はグループ2の試料にTiを供給するシーケンスである。
【0039】
ライブラリの構築
複数の蒸着源と可動マスク機構を有する自動蒸着装置の記憶部に、上記によって設計された命令セットを記憶させ、それによって自動蒸着装置を命令セットに従って動作させてライブラリを構築する。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の命令セットの設計法によって、従来困難であったコンビナトリアルケミストリーの材料の組み合わせライブラリを構築するための命令セットの設計法において高いセルの利用効率を実現することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の組み合わせライブラリを構築するための命令セットの設計法であって、コンピューターが、(1)ライブラリを構成する成分を規定するステップ、(2)組成図上においてライブラリがカバーする組成範囲を表す三角形の図形を与えられるステップ、(3)前記で定義した三角形の領域を点集合に変換するステップ、(4)ライブラリのセルと前記の(3)で定義した点を対応付けて割付けられるステップ、および(5)ライブラリの各セルに供給する3成分の堆積量の傾斜を定義して各成分毎に各セルへの成分供給量を定めるステップを含み、コンピューターが、複数の成分を含む材料のライブラリを構築する際に、基板に対してライブラリの配置を行うために、基板を複数の領域に分割して入力されることを特徴とする材料の組み合わせライブラリを構築するための命令セットの設計法。
【請求項2】
さらに、コンピューターが、(6)前記の各セルへの成分供給量に従って3成分を基板に供給するためのシーケンスを定めて入力され、シーケンスに従って各セルへの前記成分供給量をデータ記録手段から出力するステップを有する請求項1に記載の設計法。
【請求項3】
前記の(6)のステップが、各成分と対応する蒸発源の選択、マスクおよび基板の所定位置までの動作、堆積量を満足するための蒸発源の制御について計算を行い、合成装置が各成分のマッピングを堆積することを可能とする命令のセットを構築し、出力するステップである請求項2に記載の設計法。
【請求項4】
マスクを用いた堆積を含む方法によって材料の組み合わせライブラリを基板上に構築する方法であって、請求項1〜3のいずれか1項に記載の設計法を含む命令セットに従って前記マスクを移動させて、各成分群によって構成される材料の層を、前記基板上に堆積させることを含む、材料の組み合わせライブラリを基板上に構築する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2010−191546(P2010−191546A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33230(P2009−33230)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】