説明

杭打機及びリーダの組立方法

【課題】起伏フレームや補助シリンダなどの補助装置を不要とし、リーダの大型化にも対応可能で、輸送状態と作業状態との切り替えを容易かつ安全に行うことができる杭打機及びリーダの組立方法を提供する。
【解決手段】下部リーダ17の上端部から上部リーダ18が取り外され、スライディングホルダ21がガイドレール22の下端部に下降し、係止手段が下部係止部に係止した輸送状態の下部リーダの上端部に上部リーダを連結した後、係止手段と下部係止部との係止状態を解除してバックステー16を伸長させることによりスライディングホルダをガイドレールに沿って上昇させ、係止手段を上部係止部に係止させてリーダを作業状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機及びリーダの組立方法に関し、詳しくは、輸送状態と作業状態との切り替えでリーダの分解及び組立を行う杭打機及びリーダの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
杭打機は、ベースマシン前部のフロントブラケットに傾動可能に設けた下部リーダ(基本リーダ)と、該下部リーダの上部に着脱可能に連結される上部リーダ(延長リーダ)とを有するリーダを、ベースマシン後部に設けたバックステーによって起伏可能に支持し、前記リーダに沿ってオーガ駆動装置などの作業装置を昇降させることで掘削などの作業を行っている。大型の杭打機を輸送する際には、ベースマシンからリーダを取り外したり、リーダを分解することが行われている。
【0003】
杭打機を輸送状態から作業状態にする際のリーダの組立方法としては、リーダをベースマシンの前方に倒した状態で行う方法(例えば、特許文献1参照。)や、リーダをベースマシンの後方に倒した状態で行う方法(例えば、特許文献2参照。)が一般的に知られている。
【特許文献1】特開2001−40663号公報
【特許文献2】特開2006−291643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、リーダを倒したり、起き上がらせたりする際に、作業時に使用するバックステーのストロークが不足するため、リーダをベースマシンの前方に倒すものでも、後方に倒すものでも、バックステーとは別の補助シリンダを用いたり、バックステーの後端部をベースマシンに設けた起伏フレームに連結したり、起伏ロープを用いたりする必要がある。
【0005】
特に、回転トルクが大きなオーガなどの大型の作業装置を装備する杭打機では、作業装置の回転トルクに対応した大きなリーダが必要となるため、前記特許文献1に記載されたリーダを前方に倒す方法では、大きな作業装置をリーダに着脱するという面倒な作業が必要であり、さらに、特許文献1のものでは、起伏フレーム及び該起伏フレームを起伏させるための起伏シリンダを作業用のバックステーとは別に設けておく必要があるという問題がある。また、特許文献2に記載されたリーダを後方に倒す方法では、ベースマシン上部に設けられている運転室を避けなければならず、全高も輸送制限をクリアしなければならないことからリーダの大型化には限度があり、さらに、バックステーとは別の補助シリンダを設けておかなければならないという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、起伏フレームや補助シリンダなどの補助装置を不要とし、リーダの大型化にも対応可能で、輸送状態と作業状態との切り替えを容易かつ安全に行うことができる杭打機及びリーダの組立方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機及びリーダの組立方法は、ベースマシン前部のフロントブラケットに傾動可能に装着された下部リーダと、該下部リーダの上部に着脱可能に連結される上部リーダとを有するリーダを、ベースマシン後部に設けたバックステーによって起伏可能に支持するとともに、前記リーダに作業装置を昇降可能に装着した杭打機において、前記下部リーダ及び前記上部リーダの後部側に、前記バックステーの先端に設けたスライディングホルダをリーダ長手方向にガイドするガイドレールを連続状態でそれぞれ設けるとともに、前記スライディングホルダーに、前記下部リーダに設けた下部係止部及び前記上部リーダに設けた上部係止部にそれぞれ係脱可能に係止してリーダ長手方向におけるスライディングホルダーの位置を固定する係止手段を設けたことを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明の杭打機は、前記フロントブラケットより下方の前記ベースマシン前部に、前記リーダを前傾させたときにリーダ後面が当接してリーダの前傾角度を規制する前傾規制部材が設けられていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明のリーダの組立方法は、前記構成の杭打機における前記リーダを輸送状態から作業状態に組み立てる方法であって、前記下部リーダの上端部から前記上部リーダが取り外され、前記スライディングホルダが前記ガイドレールの下端部に下降し、前記係止手段が前記下部係止部に係止した輸送状態の杭打機における前記下部リーダの上端部に前記上部リーダを連結した後、前記係止手段と下部係止部との係止状態を解除してバックステーを伸長させることによりスライディングホルダをガイドレールに沿って上昇させ、前記係止手段を前記上部係止部に係止させて前記リーダを作業状態とすることを特徴としている。
【0010】
さらに、本発明のリーダの組立方法は、前記輸送状態において、前記下部リーダに作業装置が装着されていることを特徴とし、前記スライディングホルダをガイドレールに沿って上昇させる際に、リーダを前傾状態にすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、まず、作業状態から輸送状態に切り替える際には、作業状態で上部係止部に係止している係止手段の係止状態を解除し、バックステーを短縮させてスライディングホルダーをガイドレールに沿って下降させ、スライディングホルダーが上部リーダ部分から下部リーダの所定位置に下降したときに係止手段を下部係止部に係止させ、バックステーで下部リーダを固定した状態とすることにより、上部リーダを下部リーダの上端部から取り外して輸送状態にすることができる。
【0012】
また、輸送状態から作業状態に切り替える際には、係止手段が下部係止部に係止している輸送状態で、上部リーダを下部リーダの上端部に連結し、係止手段と下部係止部との係止状態を解除してバックステーを伸長させることにより、スライディングホルダーをガイドレールに沿って上昇させ、スライディングホルダーが上部リーダの所定位置に上昇したときに係止手段を上部係止部に係止させることで作業状態にすることができる。
【0013】
輸送状態では、下部リーダがベースマシン前部のフロントブラケットに装着された状態でバックステーにより立設状態で固定されているので、作業装置を下部リーダの部分に下降させておくことにより、輸送状態と作業状態とに切り替える際に作業装置を着脱する必要がなくなり、切替作業の簡略化、切替時間の短縮を図れる。また、スライディングホルダーをガイドレールに沿って上昇させる際に、リーダを前傾状態にすることにより、バックステーの伸長力をスライディングホルダーの上昇力として有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の杭打機の一形態例を示す作業状態の側面図、図2はスライディングホルダーの部分を示す正面図、図3は図2のIII−III断面図、図4は輸送状態の杭打機を示す側面図、図5は同じく平面図、図6は下部リーダに上部リーダを連結した状態を示す側面図、図7はリーダを前傾させた状態を示す側面図、図8はスライディングホルダーを上昇させた状態を示す側面図、図9はリーダを作業状態に組み立てた状態を示す側面図である。
【0015】
まず、本形態例に示す杭打機11は、クローラを備えた走行部12と、該走行部12上に旋回可能に設けられたベースマシン13と、該ベースマシン13の前部に設けられたフロントブラケット14に傾動可能に設けられたリーダ15と、該リーダ15をベースマシン後部から起伏可能に支持する左右一対のバックステー16とを備えている。リーダ15は、前記フロントブラケット14に装着される下部リーダ(基本リーダ)17と、該下部リーダ17の上端部に、ボルト・ナットを使用したフランジ結合によって着脱可能に連結される上部リーダ(延長リーダ)18とを有しており、上部リーダ18は、複数のリーダ部材を着脱可能に連結した状態で形成されている。
【0016】
リーダ15の前面側には、リーダ15の両側全長にわたって設けられたガイドギブ19に沿って昇降可能なオーガ駆動装置などの作業装置20が設けられており、リーダ15の後面側には、下部リーダ17の上部から上部リーダ18の上下方向中間位置までの間に、前記バックステー16の先端に設けられているスライディングホルダー21をリーダ長手方向に移動可能にガイドするための左右一対のガイドレール22が設けられている。
【0017】
スライディングホルダー21は、ホルダ基板23の前面両側部に前記ガイドレール22に摺動可能に係合するスライド部24をそれぞれ備え、ホルダ基板23の後面両側部に前記バックステー16の先端が回動可能に連結される軸着部25をそれぞれ備えるとともに、ホルダ基板23の後面中央部には、下部リーダ17及び上部リーダ18の後面であらかじめ設定された位置にそれぞれ設けられた下部係止部26及び上部係止部27に係脱可能にそれぞれ係止する係止手段である係止ピン28と、係止ピン28を軸方向に移動可能に保持するガイド筒29と、リンク30を介して係止ピン28を出没させる解除シリンダ31と、リンク30を介して係止ピン28を係止位置に保持するスプリング32と、係止ピン28の係止状態(出没状態)を検出するためのスイッチ33が設けられている。
【0018】
前記係止ピン28と下部係止部26及び上部係止部27との関係は、スライディングホルダー21がガイドレール22の最下端に下降して下部リーダ17の上部後面に位置したときに係止ピン28が下部係止部26に挿入可能な状態となり、スライディングホルダー21がガイドレール22の最上端に上昇して上部リーダ18の後面の所定高さに位置したときに係止ピン28が上部係止部27に挿入可能な状態となるように設定されている。
【0019】
また、前記フロントブラケット14より下方の前記ベースマシン13の前部には、前記リーダ15を前傾させたときにリーダ15の下部後面が当接してリーダ15の前傾角度を規制するとともに、リーダ15を前傾状態に保持するための前傾規制部材である前傾ストッパ34が設けられている。
【0020】
図4及び図5に示すように、輸送状態にある杭打機11は、上部リーダ18が取り外された下部リーダ17の下端部前面に作業装置20が下降し、バックステー16が短縮状態で、スライディングホルダー21がガイドレール22の最下端まで下降して下部係止部26に係止ピン28が係止した状態となっている。杭打機11は、この輸送状態で運搬車両の荷台に積載して輸送可能な大きさに形成されている。
【0021】
この輸送状態の杭打機11を作業状態に切り替える際には、まず、前記輸送状態のまま、上部リーダ18をクレーンで吊り上げて下部リーダ17の上端部に連結し、上部リーダ18の上端部にトップシーブ35を取り付けて図6に示す状態にする。次に、係止ピン28を下部係止部26に係止させた状態のままでバックステー16を僅かに伸長させ、図7に示すように、リーダ15を前傾状態とし、下部リーダ17の下部後面を前傾ストッパ34の前面に当接させ、リーダ15を前傾状態に保持する。このとき、リーダ15の前傾状態を確実に保持するため、必要に応じて連結ピンなどの連結部材にて下部リーダ17と前傾ストッパ34とを連結固定するようにしてもよい。
【0022】
リーダ15を前傾状態とした後、解除シリンダ31を伸長させて下部係止部26から係止ピン28を引き抜き、スライディングホルダー21を移動可能な状態とした後、バックステー16を伸長させてスライディングホルダー21をガイドレール22に沿って上昇させる。このとき、前傾ストッパ34にリーダ15の下部後面を当接させてリーダ15を前傾状態に保持しておくことにより、バックステー16が伸長してスライディングホルダー21をガイドレール22に押し付ける力を、スライディングホルダー21をガイドレール22に沿って上昇させる方向の力として有効に利用することができる。
【0023】
図8に示すように、スライディングホルダー21を下部リーダ後部側のガイドレール22の最下端から上部リーダ後部側のガイドレール22の最上端まで上昇させた後、解除シリンダ31を短縮させるとともにスプリング32の復元力によって係止ピン28をスライディングホルダー21から前方に突出させ、係止ピン28を上部係止部27に挿入してスライディングホルダー21をリーダ15の所定の高さ位置に固定する。そして、バックステー16を作動させてリーダ15の角度を調節することにより、図9に示すように、組み立てたリーダ15を鉛直方向とした作業状態とすることができる。このように、リーダ15の組み立てに際しては、上部リーダ18を吊り上げる1台のクレーンのみを用意すればよく、起伏フレームや補助シリンダなどの補助装置を設ける必要がなくなる。
【0024】
なお、ワイヤーや油圧配管などの着脱は、従来の杭打機と同様に行うことができるので、詳細な説明は省略する。また、上部リーダ18におけるリーダ部材の連結数は任意であり、上部係止部27を有するリーダ部材以外を非連結状態としてリーダ15の長さを変更することができる。さらに、上部リーダ18を連結せずに下部リーダ17のみでも掘削などの作業を行うことが可能である。
【0025】
また、前傾規制部材(前傾ストッパ34)を設けずに他の保持手段でリーダを前傾状態に保持することも可能であり、バックステー16の両端の上下位置関係によっては、リーダ15を前傾させずに鉛直方向に立設した状態のままバックステー16を伸長させてスライディングホルダー21をガイドレール22に沿って上昇させることが可能である。さらに、スライディングホルダー21をクレーンなどで吊り上げることにより、スライディングホルダー21をガイドレール22に沿って上昇させながらバックステー16を伸長させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の杭打機の一形態例を示す作業状態の側面図である。
【図2】スライディングホルダーの部分を示す正面図である。
【図3】図2のIII−III断面図である。
【図4】輸送状態の杭打機を示す側面図である。
【図5】同じく輸送状態の杭打機を示す平面図である。
【図6】下部リーダに上部リーダを連結した状態を示す側面図である。
【図7】リーダを前傾させた状態を示す側面図である。
【図8】スライディングホルダーを上昇させた状態を示す側面図である。
【図9】リーダを作業状態に組み立てた状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0027】
11…杭打機、12…走行部、13…ベースマシン、14…フロントブラケット、15…リーダ、16…バックステー、17…下部リーダ、18…上部リーダ、19…ガイドギブ、20…作業装置、21…スライディングホルダー、22…ガイドレール、23…ホルダ基板、24…スライド部、25…軸着部、26…下部係止部、27…上部係止部、28…係止ピン、29…ガイド筒、30…リンク、31…解除シリンダ、32…スプリング、33…スイッチ、34…前傾ストッパ、35…トップシーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシン前部のフロントブラケットに傾動可能に装着された下部リーダと、該下部リーダの上部に着脱可能に連結される上部リーダとを有するリーダを、ベースマシン後部に設けたバックステーによって起伏可能に支持するとともに、前記リーダに作業装置を昇降可能に装着した杭打機において、前記下部リーダ及び前記上部リーダの後部側に、前記バックステーの先端に設けたスライディングホルダをリーダ長手方向にガイドするガイドレールを連続状態でそれぞれ設けるとともに、前記スライディングホルダーに、前記下部リーダに設けた下部係止部及び前記上部リーダに設けた上部係止部にそれぞれ係脱可能に係止してリーダ長手方向におけるスライディングホルダーの位置を固定する係止手段を設けたことを特徴とする杭打機。
【請求項2】
前記フロントブラケットより下方の前記ベースマシン前部に、前記リーダを前傾させたときにリーダ後面が当接してリーダの前傾角度を規制する前傾規制部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の杭打機。
【請求項3】
請求項1又は2記載の杭打機における前記リーダを輸送状態から作業状態に組み立てる方法であって、前記下部リーダの上端部から前記上部リーダが取り外され、前記スライディングホルダが前記ガイドレールの下端部に下降し、前記係止手段が前記下部係止部に係止した輸送状態の杭打機における前記下部リーダの上端部に前記上部リーダを連結した後、前記係止手段と下部係止部との係止状態を解除してバックステーを伸長させることによりスライディングホルダをガイドレールに沿って上昇させ、前記係止手段を前記上部係止部に係止させて前記リーダを作業状態とすることを特徴とするリーダの組立方法。
【請求項4】
前記輸送状態において、前記下部リーダに作業装置が装着されていることを特徴とする請求項3記載のリーダの組立方法。
【請求項5】
前記スライディングホルダをガイドレールに沿って上昇させる際に、リーダを前傾状態にすることを特徴とする請求項3又は4記載のリーダの組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−293352(P2009−293352A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150688(P2008−150688)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】